説明

等方圧加圧装置用高圧容器

【課題】圧力容器胴部の長手方向長さを最大限に活用して該長手方向のほぼ全長にわたって被処理品を収納することができて、被処理品の長尺化に対応できるようにした、等方圧加圧装置用高圧容器を提供すること。
【解決手段】被処理品Wが収納され、圧力媒体が供給される高圧室101を内部に形成するための等方圧加圧装置用高圧容器100において、円筒状をなし、鍛造部材が用いられている圧力容器胴部110と、前記圧力容器胴部110の上開口部110aを閉塞する上蓋130と、円筒状をなし、前記圧力容器胴部110の下開口部110bに嵌合され、前記圧力容器胴部110を延長させる胴延長部120と、前記胴延長部120の下開口部120bを閉塞する下蓋140と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱間等方圧加圧装置、冷間等方圧加圧装置などの等方圧加圧装置の高圧容器であって、被処理品が収納され、圧力媒体が供給される高圧室を容器内に形成するための等方圧加圧装置用高圧容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱間等方圧加圧装置、冷間等方圧加圧装置などの等方圧加圧装置は、被処理品が収納され、圧力媒体が供給される高圧室を容器内に形成するための等方圧加圧装置用高圧容器(以下、単に高圧容器ともいう。)を備えている。この高圧容器は、円筒状をなす圧力容器胴部、前記圧力容器胴部の上端開口を閉塞する上蓋、及び前記圧力容器胴部の下端開口を閉塞する下蓋を備えている。
【0003】
高圧容器の前記圧力容器胴部としては、鍛造部材単体構造(鍛造部材単肉構造)、焼嵌めによる多層構造、及び線巻式圧力容器構造などのものが採用されており、いずれの構造においても、鍛造部材が用いられている。鍛造で製作される鍛造部材については、長尺化、大径化するほど強度保証が困難になること、また、自ずと寸法的に製造限界があることなどにより、高圧容器(圧力容器胴部)の長尺化に際し、鍛造材が内筒に限られる前記線巻式圧力容器構造のものが有利となる。
【0004】
線巻式圧力容器構造の圧力容器胴部を有する高圧容器を備えた熱間等方圧加圧装置として、例えば、特公昭56−8718号公報に開示されたものがあり、これを図5を用いて説明する。
【0005】
図5において、2は圧力室(装置本体)である。圧力室2は、高圧シリンダ(高圧容器)10を備えている。高圧シリンダ10は、後述する圧力容器胴部と、シール12付き上方端部閉鎖部材11と、シール15付きリング14と、シール17の付いた底部16からなる下方端部閉鎖部材13とを有している。
【0006】
前記圧力容器胴部は、内部チューブ30と、その周りのワイヤ(ピアノ線)又は帯からなる鞘(線巻層)31とを有し、内部チューブ30と鞘31との間には、内部チューブ30の外周に沿って所定間隔をおいて配置された上下方向に延びる多数のロッド同士の間に冷却水通路が設けられている。
【0007】
前記高圧シリンダ10は、その内部に高圧がかかることから、ワイヤ又は帯をこれに張力を加えながら前記ロッドを介して内部チューブ30の外周に巻き付け、内部チューブ30を圧縮する方向に応力を付与することにより、疲労強度の上昇を図り、圧力容器としての疲労寿命を延ばすようにしている。
【0008】
また、圧力室2の中には、被処理品(被加工物)49を入れた炉空間18がある。端部閉鎖部材11,13に作用する圧力媒体の力は、ヨーク3,4を有するプレス台1によって受け止められる。圧力室2の壁(内部チューブ30)と炉空間18との間に、断熱シリンダ19と断熱蓋20と断熱底部(製品台)21とからなる断熱ケーシングがある。炉空間18は電気加熱要素(電熱ヒータ)22によって囲繞されている。電気加熱要素22には導管23を通してエネルギーが供給される。圧力媒体が、導管24を通して炉空間18の中に導入される。被処理品49は、下方端部閉鎖部材13上に設けられた断熱底部(製品台)21上に載置されている。下方端部閉鎖部材13は、炉空間18に被処理品49を出し入れするために、持ち上げたり下げたりすることができる。下方端部閉鎖部材13は、昇降可能なブラケット25によって支持されている。
【0009】
ここで、前記圧力容器胴部を構成する内部チューブ30は、ワイヤ(ピアノ線)又は帯による残留圧縮応力と、その後の運転に伴い繰り返される高圧の圧力振幅とに耐えるため、通常、高強度で高靭性の鍛造部材が用いられている。そのため、圧力容器胴部の大きさが、ひいては前記高圧シリンダ(高圧容器)10の大きさが、内部チューブ30に用いられる鍛造部材の製造上の寸法限界で制限される。なお、圧力容器胴部に、高強度で高靭性の鍛造部材を用いる前述した鍛造部材単体構造、焼嵌めによる多層構造のものにおいても、同様に、鍛造部材の製造上の寸法限界によって圧力容器胴部の大きさが制限される。
【0010】
ところが、等方圧加圧装置の処理対象となる液晶関連部材やエネルギー関連素材などの長尺化が進んでおり、これらの長尺の被処理品を処理可能な等方圧加圧装置が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭56−8718号公報
【特許文献2】特開2004−37054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の課題は、鍛造部材が用いられている圧力容器胴部を有する等方圧加圧装置用高圧容器において、圧力容器胴部の長手方向長さを最大限に活用して該長手方向のほぼ全長にわたって被処理品を収納することができて、被処理品の長尺化に対応できるようにした、等方圧加圧装置用高圧容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するため、本願発明では、次の技術的手段を講じている。
【0014】
請求項1の発明は、被処理品が収納され、圧力媒体が供給される高圧室を内部に形成するための等方圧加圧装置用高圧容器において、円筒状をなし、鍛造部材が用いられている圧力容器胴部と、前記圧力容器胴部の上開口部を閉塞する上蓋と、円筒状をなし、前記圧力容器胴部の下開口部に嵌合され、前記圧力容器胴部を延長させる胴延長部と、前記胴延長部の下開口部を閉塞する下蓋と、を備えたことを特徴とする等方圧加圧装置用高圧容器である。
【0015】
請求項2の発明は、被処理品が収納され、圧力媒体が供給される高圧室を内部に形成するための等方圧加圧装置用高圧容器において、円筒状をなし、鍛造部材が用いられている圧力容器胴部と、前記圧力容器胴部の上開口部を閉塞する上蓋と、有底円筒状をなし、前記圧力容器胴部の下開口部に嵌合され、前記圧力容器胴部を延長させ、かつ、該延長部分の下端側を閉塞する胴延長部と、を備えたことを特徴とする等方圧加圧装置用高圧容器である。
【0016】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載の等方圧加圧装置用高圧容器において、前記圧力容器胴部が、内筒と線巻層間に冷却水通路を有する線巻式圧力容器構造のものであり、前記胴延長部が鍛造部材単体構造のものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の等方圧加圧装置用高圧容器は、被処理品の長尺化に対応すべく、円筒状をなし、圧力容器胴部の下開口部に嵌合され、該圧力容器胴部を下方へ延長させる胴延長部を備えている。したがって、この胴延長部の部分に被処理品載置用の製品台を収納することで、圧力容器胴部の長手方向長さを最大限に活用できて、該圧力容器胴部の長手方向のほぼ全長にわたるような長尺な被処理品をも収納することができる。
【0018】
請求項2の等方圧加圧装置用高圧容器は、被処理品の長尺化に対応すべく、有底円筒状をなし、圧力容器胴部の下開口部に嵌合され、該圧力容器胴部を下方へ延長させ、かつ、該延長部分の下端側を閉塞する胴延長部を備えている。したがって、この胴延長部の部分に被処理品載置用の製品台を収納することで、圧力容器胴部の長手方向長さを最大限に活用できて、該圧力容器胴部の長手方向のほぼ全長にわたるような長尺な被処理品をも収納することができる。また、有底円筒状をなす前記胴延長部は、下蓋の機能をも果たすので、別途に下蓋を設けなくてすみ、高圧容器の構成部品点数を減らすことで、高圧容器のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による熱間等方圧加圧装置用高圧容器の構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態による熱間等方圧加圧装置用高圧容器の構成を示す縦断面図である。
【図3】図2に示す熱間等方圧加圧装置用高圧容器の要部の横断面を示す図である。
【図4】本発明の別の実施形態による熱間等方圧加圧装置用高圧容器の構成を示す縦断面図である。
【図5】従来技術を示す図であって、線巻式圧力容器構造の圧力容器胴部を有する高圧容器を備えた熱間等方圧加圧装置の構成を一部断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施形態による熱間等方圧加圧装置用高圧容器の構成を示す縦断面図である。本実施形態では、等方圧加圧装置として熱間等方圧加圧装置に備えられる熱間等方圧加圧装置用高圧容器について説明する。
【0022】
図1において、110は、円筒状をなし、上下に開口部110a,110bを有する圧力容器胴部である。この圧力容器胴部110は、鍛造部材が用いられた鍛造単体構造(鍛造単肉構造)のものである。111は、圧力容器胴部110の外周周りに設けられた冷却水ジャケットであり、圧力容器胴部110の過熱を防止するためのものである。
【0023】
130は前記圧力容器胴部110の上開口部110aを閉塞する上蓋である。この上蓋130は、フランジ部130aを有し、圧力容器胴部110の上開口部110aに挿脱可能に嵌合されている。上蓋130の外周溝には、圧力容器胴部110と上蓋130間をシールするためのシール部材としてのパッキン131が取り付けられている。
【0024】
120は円筒状をなし、小径部120aが圧力容器胴部110の下開口部110bに嵌合され、圧力容器胴部110を下方へ延長させる胴延長部である。この胴延長部120の前記小径部120aには、圧力容器胴部110と胴延長部120間をシールするためのシール部材としてのパッキン121が取り付けられている。胴延長部120は、鍛造部材単体でなる鍛造部材単体構造のものである。
【0025】
また、140は前記胴延長部120の下開口部120bを閉塞する下蓋である。この下蓋140は、フランジ部140aを有し、前記胴延長部120の下開口部120baに挿脱可能に嵌合されている。下蓋140の外周溝には、胴延長部120と下蓋140間をシールするためのシール部材としてのパッキン141が取り付けられている。
【0026】
このように、水冷が施される前記圧力容器胴部110、前記胴延長部120、前記上蓋130及び前記下蓋140によって高圧容器100が構成され、高圧容器100の内部に高圧室101が形成されている。上蓋130と下蓋140は、運転時には高圧室101の内圧を受け止めるための、図示しないプレス枠のプレスフレーム(ヨークフレーム)によって上下から挟みつけられるようになっている。
【0027】
そして、高圧室101内には、断面中空円形で倒立コップ状をなし、圧力容器胴部110のほぼ長手方向長さに相当する長さを有する断熱体(断熱層)12が、胴延長部120の前記小径部120aの上端面に載置された状態で設けられている。この断熱体52の内側に、高圧室101内を昇温するためのヒータエレメント53が設けられている。
【0028】
また、下蓋140上に、高圧室101における胴延長部120内にちょうど収納される状態で製品台51が載置されており、この製品台51上に被処理品Wが載置されるようになっている。被処理品Wは、下蓋140を下方へ取り外すことで、製品台51とともに高圧室101内から取り出されるようになっている。
【0029】
このように、本実施形態による高圧容器100は、被処理品の長尺化に対応すべく、円筒状をなし、圧力容器胴部110の下開口部110bに嵌合され、該圧力容器胴部110を下方へ延長させる胴延長部120を備えている。したがって、高圧室101におけるこの胴延長部120の部分に被処理品載置用の製品台51を収納することで、圧力容器胴部110の長手方向長さを最大限に活用できて、該圧力容器胴部110の長手方向のほぼ全長にわたるような長尺な被処理品をも収納することができる。
【0030】
すなわち、圧力容器胴部、上蓋及び下蓋からなる従来高圧容器では、圧力容器胴部の長手方向長さ内において断熱体に加えて製品台の収納長さをも確保する必要があり、高圧室内に収納できる被処理品は、その長手方向長さ(高圧容器軸方向長さ)が圧力容器胴部長手方向長さの50〜60%程度のものであった。これに対して、本実施形態による高圧容器100では、胴延長部120の部分に製品台51を収納するようにしたものであるから、圧力容器胴部110長手方向長さの80〜90%程度という従来に比べて長尺な被処理品を高圧室101内に収納することができる。
【0031】
例えば、圧力容器胴部に用いられる高強度の円筒状鍛造部材は、内径2000mmとすると長手方向長さが7000mm程度の大きさのものが現時点での製造限界であり、この場合、高圧室内に収納可能な被処理品の長さ寸法を、従来は4000〜4500mmであったものを、本発明の高圧容器によれば6000〜6500mm程度にまで長尺化することができる。
【0032】
なお、胴延長部120の冷却については、圧力容器胴部110での温度上昇が前記ヒータエレメント53が設けられている範囲に限られること、前記断熱体52の外側空間ではガス対流により上部ほど温度が高いことから、基本的には胴延長部120には冷却を施す必要はない。必要としても圧力容器胴部110に比べて大幅に少量の冷却水による冷却ですむ。
【0033】
図2は本発明の別の実施形態による熱間等方圧加圧装置用高圧容器の構成を示す縦断面図、図3は図2に示す熱間等方圧加圧装置用高圧容器の要部の横断面を示す図である。本実施形態では、等方圧加圧装置として熱間等方圧加圧装置に備えられる熱間等方圧加圧装置用高圧容器について説明する。
【0034】
図2において、211は、円筒状をなし、上下に開口部211a,211bを有し、鍛造部材が用いられてなる内筒である。213は冷却水通路214を形成するためのスペーサ部材である。スペーサ部材214は、ほぼ矩形の断面形状で内筒211よりわずかに短い長さを有している。そして、多数本(図3の例では12本)のスペーサ部材214が、内筒211の外周面に内筒円周方向に所定間隔を隔てて、かつ、内筒外周面に沿って内筒軸線方向に延びるように配置されており(図3参照)、これらのスペーサ部材2はピアノ線からなる線巻層212によって締め付けられて固定されている。
【0035】
線巻層212は、内筒211の外側に内筒211と同軸心状に設けられおり、内筒211との間に前記スペーサ部材213を挟むようにして内筒211の外側周りに、張力が付与されたピアノ線をスペーサ部材213の長手方向ほぼ全長にわたり、かつ、所定の厚みとなるよう多層に巻き付けて形成されている。線巻層212は、内筒211の内部に加わる高圧力に抗するように内筒211に残留圧縮力を与えるものである。
【0036】
そして、隣り合うスペーサ部材213の間ごとに内筒211の外周面と線巻層212の内周面との間に、内筒軸線方向に延びる冷却水通路214が形成されている(図3参照)。前記線巻層212の外側に、各冷却水通路214から線巻層212側へ滲みだして溜まる冷却水を収容するため、線巻層214を囲繞するジャケット215が設けられている。
【0037】
また、内筒211の下端部外周面には、冷却水供給源からの冷却水が供給される冷却水室217aを有し、該冷却水室217aから冷却水を各冷却水通路214に分配して供給する円環状の下部冷却水マニホールド217が設けられている。217bは冷却水入口である。同様に、内筒211の上端部外周面には、各冷却水通路214を通過してきた冷却水が集められる冷却水室216aを有し、集められた冷却水を冷却水室216aから外部へ排出する円環状の上部冷却水マニホールド216が設けられている。216bは冷却水出口である。
【0038】
圧力容器胴部210は、前記内筒211及び前記線巻層214を備え、内筒211と線巻層214間に冷却水通路214を有する線巻式圧力容器構造のものである。
【0039】
230は、前記圧力容器胴部210の上開口部210aを閉塞する上蓋である。この上蓋230は、フランジ部230aを有し、圧力容器胴部210の上開口部210aに挿脱可能に嵌合されている。上蓋230の外周溝には、圧力容器胴部210(内筒211)と上蓋230間をシールするためのパッキン231が取り付けられている。
【0040】
220は円筒状をなし、小径部220aが圧力容器胴部210の下開口部210bに嵌合され、圧力容器胴部210を下方へ延長させる胴延長部である。この胴延長部220の前記小径部220aには、圧力容器胴部210(内筒211)と胴延長部220間をシールするためのパッキン221が取り付けられている。胴延長部220は、この実施形態では鍛造部材単体構造のものである。
【0041】
また、240は、前記胴延長部220の下開口部220bを閉塞する下蓋である。この下蓋240は、フランジ部240aを有し、前記胴延長部220の下開口部220bに挿脱可能に嵌合されている。下蓋240の外周溝には、胴延長部220と下蓋240間をシールするためのパッキン141が取り付けられている。
【0042】
このように、水冷が施され、前記内筒211及び前記線巻層214を有する前記圧力容器胴部210、前記胴延長部220、前記上蓋230及び前記下蓋240によって高圧容器200が構成され、高圧容器200の内部に高圧室201が形成されている。上蓋230と下蓋240は、運転時には高圧室201の内圧を受け止めるための、図示しないプレス枠のプレスフレーム(ヨークフレーム)によって上下から挟みつけられるようになっている。
【0043】
そして、高圧室201内には、圧力容器胴部210の線巻層214のほぼ長手方向長さに相当する長さを有する断熱体52が、胴延長部220の小径部220aの上端面に載置された状態で設けられている。この断熱体52の内側に、高圧室201内を昇温するためのヒータエレメント53が設けられている。
【0044】
また、下蓋240上に、高圧室201における胴延長部220内にちょうど収納される状態で製品台51が載置されており、この製品台51上に被処理品Wが載置されるようになっている。被処理品Wは、下蓋240を下方へ取り外すことで、製品台51とともに高圧室201内から取り出されるようになっている。
【0045】
このように、本実施形態による高圧容器200は、被処理品の長尺化に対応すべく、円筒状をなし、圧力容器胴部210の下開口部210bに嵌合され、該圧力容器胴部210を下方へ延長させる胴延長部220を備えている。したがって、高圧室201におけるこの胴延長部220の部分に被処理品載置用の製品台51を収納することで、圧力容器胴部210の長手方向長さを最大限に活用できて、該圧力容器胴部210の長手方向のほぼ全長にわたるような長尺な被処理品をも収納することができる。
【0046】
なお、圧力容器胴部210のような内筒211と線巻層214間に冷却水通路214を有する線巻式圧力容器構造のものは、鍛造部材単体構造や焼嵌めによる多層構造のような胴部外周から水冷を施すものに比べて、処理後の高圧室内の放熱を速めることができるので、急速冷却機構を備えた熱間等方圧加圧装置に適用される。この場合でも、高圧室上部での放熱が大きいことから、胴延長部220は、冷却水通路を有する線巻式圧力容器構造とする必要はなく、図2に示すように、鍛造部材単体構造としてよい。
【0047】
図4は本発明の別の実施形態による熱間等方圧加圧装置用高圧容器の構成を示す縦断面図である。
【0048】
この実施形態による高圧容器200’は、胴延長部が異なっている点以外は、前記図2,図3に示す高圧容器200と同一構成なので、該高圧容器200と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略し、異なる点について説明する。
【0049】
図4において、250は有底円筒状をなし、小径部250aが圧力容器胴部210の下開口部210bに挿脱可能に嵌合され、圧力容器胴部210を下方へ延長させ、かつ、該延長部分の下端側を閉塞する胴延長部である。この胴延長部250の前記小径部250aには、圧力容器胴部210(内筒211)と胴延長部250間をシールするためのパッキン251が取り付けられている。胴延長部250は、鍛造部材単体構造のものである。
【0050】
高圧容器200’は、前記圧力容器胴部210、前記胴延長部250、前記上蓋230及び前記下蓋240によって構成され、その内部に高圧室201’が形成されている。
【0051】
そして、胴延長部250の底部(高圧容器下蓋に相当する)上に、高圧室201’における胴延長部250内にちょうど収納される状態で製品台51が載置されており、この製品台51上に被処理品Wが載置されるようになっている。被処理品Wは、胴延長部250を下方へ取り外すことで、製品台51とともに高圧室201内から取り出されるようになっている。
【0052】
このように、本実施形態による高圧容器200’は 被処理品の長尺化に対応すべく、有底円筒状をなし、圧力容器胴部210の下開口部210bに挿脱可能に嵌合され、該圧力容器胴部210を下方へ延長させ、かつ、該延長部分の下端側を閉塞する胴延長部250を備えている。したがって、この胴延長部250の部分に被処理品載置用の製品台51を収納することで、圧力容器胴部210の長手方向長さを最大限に活用できて、該圧力容器胴部210の長手方向のほぼ全長にわたるような長尺な被処理品をも収納することができる。また、前記胴延長部250は、下蓋の機能をも果たすので、別途に下蓋を設けなくてすみ、高圧容器の構成部品点数を減らすことで、高圧容器のコストダウンを図ることができる。
【符号の説明】
【0053】
51…製品台 52…断熱体 53…ヒータエレメント W…被処理品
100…高圧容器 101…高圧室
110…圧力容器胴部 110a…上開口部 110b…下開口部
111…冷却水ジャケット
120…胴延長部 120a…小径部 120b…下開口部
121…パッキン
130…上蓋 130a…フランジ部 131…パッキン
140…下蓋 140a…フランジ部 141…パッキン
200,200’…高圧容器 201,201’…高圧室
210…圧力容器胴部 210a…上開口部 210b…下開口部
211…内筒 212…線巻層 213…スペーサ部材
214…冷却水通路 215…ジャケット
216…上部冷却水マニホールド
217…下部冷却水マニホールド
220…胴延長部 220a…小径部 220b…下開口部
221…シールリング
230…上蓋 230a…フランジ部 231…パッキン
240…下蓋 240a…フランジ部 241…パッキン
250…胴延長部 250a…小径部 251…パッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理品が収納され、圧力媒体が供給される高圧室を内部に形成するための等方圧加圧装置用高圧容器において、円筒状をなし、鍛造部材が用いられている圧力容器胴部と、前記圧力容器胴部の上開口部を閉塞する上蓋と、円筒状をなし、前記圧力容器胴部の下開口部に嵌合され、前記圧力容器胴部を延長させる胴延長部と、前記胴延長部の下開口部を閉塞する下蓋と、を備えたことを特徴とする等方圧加圧装置用高圧容器。
【請求項2】
被処理品が収納され、圧力媒体が供給される高圧室を内部に形成するための等方圧加圧装置用高圧容器において、円筒状をなし、鍛造部材が用いられている圧力容器胴部と、前記圧力容器胴部の上開口部を閉塞する上蓋と、有底円筒状をなし、前記圧力容器胴部の下開口部に嵌合され、前記圧力容器胴部を延長させ、かつ、該延長部分の下端側を閉塞する胴延長部と、を備えたことを特徴とする等方圧加圧装置用高圧容器。
【請求項3】
前記圧力容器胴部が、内筒と線巻層間に冷却水通路を有する線巻式圧力容器構造のものであり、前記胴延長部が鍛造部材単体構造のものであることを特徴とする請求項1又は2記載の等方圧加圧装置用高圧容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−240713(P2010−240713A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94073(P2009−94073)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】