説明

筋力補助装置

【課題】従来の装置よりも大きな補助力をユーザに与えることができる筋力補助装置を提供する。
【解決手段】筋力補助装置100は、腰ハーネス20、背ハーネス10、ガイドプーリ16、及び、ワイヤを巻き上げるための巻き上げ器22を有している。腰ハーネス20は、ユーザの腰に装着される。巻き上げ器22は、腰ハーネス20に取り付けられている。背ハーネス10は、ユーザの背に装着される。ガイドプーリ16は、背ハーネス10に支持されており、ユーザの背中後方に配置される。巻き上げ器22から伸びているワイヤWが、ガイドプーリ16を介してユーザの背の上部に相当する位置で背ハーネス10に固定されている。ガイドプーリ16によって背の上部を後方から引っ張るようにワイヤWを配索するので、背屈方向に大きなモーメントをユーザに与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの背筋力を補助する装着型の筋力補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
重い荷物を持ち上げる作業、或いは、人を抱き上げる作業は重労働である。例えば、患者を抱き上げる介護者は相当な体力的負担を強いられる。作業者(介護者)のそのような負担を軽減するため、前屈姿勢から背屈する動作を補助する装置が例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。そのような装置は、ユーザの主に背筋力を補助する。そのような装置を本明細書では筋力補助装置と称する。
【0003】
特許文献1や特許文献2の筋力補助装置は、ユーザの背と腰に取り付けられるベルト様の装着帯を有している。そして、腰の装着帯に取り付けられたワイヤ巻き上げ器から伸びているワイヤが背の上部で装着帯に結ばれており、ワイヤ巻き上げ器でワイヤを巻き上げることによって、前屈しているユーザが背中を起こす動作(背屈動作)を補助する。なお、本明細書では、ユーザの背に取り付けられる装着帯を背ハーネスと称し、腰に取り付けられる装着帯を腰ハーネスと称する。背ハーネスはジャケットのように着衣する態様であってよいし、腰ハーネスは下着のように履くものであってもよい。また、本明細書では、巻き上げることが可能な可撓体の総称として「ワイヤ」との用語を用いる。従って、本明細書における「ワイヤ」には、紐やベルトも含まれる。また、以下では、「ワイヤ巻き上げ器」を単に「巻き上げ器」と称する。ウインチや電動リールは「巻き上げ器」の一種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−339号公報
【特許文献2】特開2008−67762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来よりも性能が向上した筋力補助装置を提供する。本明細書が開示する技術は、従来よりも大きな補助力をユーザに与えることができる筋力補助装置を提供する。ここで「従来よりも大きな補助力」とは、巻き上げ器の能力が同じであれば、背屈動作を補助するためにユーザに加えることができる補助力が従来の装置よりも大きいことを意味する。別言すれば、従来よりも低い能力の巻き上げ器で、従来の装置と同じ程度の補助力をユーザに加えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ユーザの背屈動作を補助する力とは、ユーザの背の上部に作用するモーメントに相当する。そのようなモーメントは、より詳しく言えば、腰を中心としユーザの背上部(ワイヤの連結点)を作用点としてピッチ軸周りに作用するモーメントである。以下、そのようなモーメントをサポートモーメントと称することにする。サポートモーメントはワイヤの張力に起因する。ところで、特許文献1や特許文献2の筋力補助装置では、ワイヤが巻き取り器から一直線に背ハーネスのワイヤ連結点へ伸びている。即ち、ワイヤは、僅かな隙間をもってユーザの背に沿っている。そのため、背上部を引っ張るワイヤ張力の方向と背骨(体幹中心線)がなす角度が非常に小さい。その角度を大きくすれば、同じ張力でもサポートモーメントを大きくすることができる。本明細書が開示する筋力補助装置は、背上部を引っ張るワイヤの方向と背骨(体幹中心線)がなす角度を従来の装置よりも大きくすることができる構造を備える。そのような構造によって、本明細書が提供する筋力補助装置は、従来の装置よりも大きなサポートモーメントを出力する。
【0007】
本明細書が開示する技術の一態様の筋力補助装置は、腰ハーネス、背ハーネス、巻き上げ器に加えてプーリを備えている。プーリは、腰ハーネスと背ハーネスの一方に支持されており、ユーザの背の後方に配置される。そして、ワイヤ巻き上げ器から伸びているワイヤが、そのプーリを介してユーザの背の上部に相当する位置で背ハーネスに連結されている。プーリはその回転軸がユーザのピッチ方向(体側方向)に伸びており、ワイヤは背から遠い側でプーリを通ってユーザの背の上部に相当する位置で背ハーネスに連結されている。なお、後述するように、プーリは、腰ハーネスと背ハーネスの双方を連結する多リンク機構に支持されていてもよい。即ちプーリは、腰ハーネスと背ハーネスの少なくとも一方に支持されていればよい。
【0008】
上記の筋力補助装置では、ワイヤがプーリを介することによって、背ハーネスのワイヤ連結点を頂点として背骨とワイヤがなす角度が従来の装置よりも大きくなる。従って、ワイヤの張力に対するサポートモーメントの比率が従来の装置よりも大きくなる。即ち上記の筋力補助装置は、従来の装置よりも大きなサポートモーメントを出力することができる。
【0009】
本明細書が開示する筋力補助装置の他の態様では、プーリは、背ハーネスから後方に向かって伸びている支柱に支持されているとよい。支柱はユーザの背骨の後ろに位置するから、そのような構造によれば、ワイヤ張力がプーリと支柱を介してユーザの背を押す。これによって、サポートモーメントを加える際、ワイヤ張力がユーザの背すじを伸ばすように作用する。前屈状態から背すじが曲がったまま上半身を起こす動作は腰に大きな負担をかける。上記の筋力補助装置は、背すじを伸ばしながら上半身を起こすように力を加えることができ、ユーザの負担を一層軽減する。
【0010】
本明細書が開示する筋力補助装置の他の態様では、ユーザの体幹中心線(即ち背骨)の左右両側の夫々にワイヤ巻き上げ器とプーリが配置されていることが好ましい。出力が小さい巻き上げ器であっても複数の巻き上げ器を用いることでトータルとして充分なサポートモーメントを与えることができる。また、左右夫々の巻き上げ器の出力を異ならせることによって、即ち、左右のワイヤで異なる張力を与えることによって、上半身にロール軸周りのサポートモーメントを加えることが可能となる。
【0011】
本明細書が開示する筋力補助装置のさらに他の態様は、ユーザの背側で腰ハーネスと背ハーネスを連結する多リンク機構を備えているとよい。この場合、多リンク機構のそれぞれのリンクに前記プーリが設けられているとよい。さらに、多リンク機構の端部が背ハーネスに、上下方向にスライド可能に連結されているとよい。多リンク機構の各ジョイントはピッチ軸方向の回転軸を有しており、多リンク機構全体がピッチ軸交差面内で湾曲することができる。ワイヤだけでなく機械的なリンク構造で腰ハーネスと背ハーネスを連結することによって、安定してサポートモーメントを加えることができる。また、ワイヤを多リンク機構のリンク内部を通すように構成すれば、ワイヤへの指挟みを防止できる。
【0012】
なお、体幹中心線とは、背骨に沿って伸びる直線に相当する。別言すれば、頭部と腰を結ぶ直線に相当する。また、「ピッチ軸」、「ロール軸」との用語は、ロボットの技術分野で用いられる用語であり、体幹の左右方向に伸びる直線が「ピッチ軸」に相当し、体幹の前後方向に伸びる直線が「ロール軸」に相当する。
【発明の効果】
【0013】
本明細書が開示する技術によれば、従来の装置よりも大きな補助力をユーザに与えることができる筋力補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1(A)は、第1実施例の筋力補助装置の側面図を示す。図1(B)は第1実施例の筋力補助装置の背面図を示す。
【図2】前屈した状態における筋力補助装置の側面図を示す。
【図3】実施例の筋力補助装置の効果を説明する図である。図3(A)は、プーリがない場合のワイヤ張力とサポートモーメントの関係を示す図である。図3(B)は、プーリがある場合のワイヤ張力とサポートモーメントの関係を示す図である。
【図4】第2実施例の筋力補助装置の側面図である。
【図5】第3実施例の筋力補助装置の背面図である。
【図6】第4実施例の筋力補助装置の側面図である。
【図7】第4実施例の筋力補助装置の側面図である(前屈状態)。
【実施例1】
【0015】
図1に、第1実施例の筋力補助装置100の模式図を示す。図1は、ユーザが装着している状態での筋力補助装置100を示している。図1(A)は、筋力補助装置100の側面図を示す。図1(B)は、筋力補助装置100の背面図を示す。筋力補助装置100は、ユーザが装着する背ハーネス10と腰ハーネス20がワイヤで繋がれた構造を有している。背ハーネス10は、ユーザの上半身(主に背中)に装着される。腰ハーネス20は、ユーザの腰に装着される。なお、「ハーネス」とは、体に装着する装着帯一般を表す言葉である。筋力補助装置100における腰ハーネス20は、巻き上げ器22を腰後方に固定する役割を有する。背ハーネス10は、巻き上げ器22から伸びるワイヤWを背の上部左右に連結する役割を有する。筋力補助装置100は、巻き上げ器22でワイヤWを巻き上げることによって、ユーザの背屈動作を補助する力、別言すれば背屈方向作用するサポートモーメントをユーザに付与することができる。
【0016】
筋力補助装置100の構造を詳しく説明する。腰ハーネス20には、ユーザの腰後部に相当する位置に腰プレート21が取り付けられている。腰プレート21には、巻き上げ器22とテンショナ25が固定されている。図1に示すように、巻き上げ器22は、ユーザの腰後部に相当する位置で腰ハーネス20に取り付けられている。テンショナ25は、ワイヤWが緩まないように最低限の張力をワイヤWに付与するデバイスである。テンショナ25は、3個のプーリ24a、24b、及び24cを有しており、真ん中のプーリ24bがバネ(不図示)で付勢されている。ワイヤWは、3個のプーリ24a、24b、及び、24cに交互に巻き掛けられており、バネによって最低限の張力がワイヤに付与される。
【0017】
背ハーネス10には、ユーザの背中に相当する位置に背プレート12が取り付けられている。背プレート12からユーザの後方に向かって支柱14が伸びている。支柱14の先端にガイドプーリ16が回転自在に取り付けられている。別言すると、ユーザの背中後方にガイドプーリ16が配置されている。ガイドプーリ16の回転軸は、ピッチ軸方向に伸びている。別言すると、ガイドプーリ16はピッチ軸周りに自在に回転する。「ピッチ軸方向」とはユーザの左右方向に相当する。「ピッチ軸」はロボットの技術分野で良く用いる技術用語であり、ロボット(本実施例の場合はユーザの身体)の左右方向に伸びる軸を表す。
【0018】
巻き上げ器22から伸びているワイヤWは、ユーザの背中から遠い側でガイドプーリ16を通り、ユーザの背の上部に相当する位置で背ハーネス10に連結されている。より詳しくは、図1(B)に示されているように、巻き上げ器22から伸びるワイヤWは、ガイドプーリ16を介して上方(腰から頭部へ向かう方向)へと伸びており、ガイドプーリ16よりも上方でカラビナ19bを介して2方向に別れ、それぞれがユーザの背上部の左右で背ハーネス10に結ばれている。ワイヤWの先端はカラビナ19aを介して背ハーネス10に結ばれている。
【0019】
支柱14は、ユーザの体幹中心線に沿ってスライド可能に背プレート12に取り付けられている。支柱14は、外部から加わる力(ワイヤWの張力)によって受動的にスライドする。支柱14がスライドすることによる効果を説明する。図2は、ユーザが前屈したときの筋力補助装置100の側面図を示している。ユーザが前屈すると、巻き上げ器22と背上部ワイヤ連結位置との位置関係が変化する。ユーザが前屈する前は、支柱14はポジションP1で背プレート12に連結していたが、ユーザが前屈すると支柱14の連結点はポジションP2へ移動する。支柱14は、巻き上げ器22から伸びているワイヤWの長さが最も小さくなるポジションP2に受動的に移動する。このとき、ガイドプーリ16の両側に作用するワイヤWの張力の合力の方向が支柱の長手方向に一致する。すなわち、ワイヤWに作用する張力が支柱14を倒すようには作用しない。支柱14をスライド可能に構成することによって、ワイヤWの張力が支柱14を倒す方向に作用しないようにすることできる。
【0020】
筋力補助装置100の機能を説明する。最初、巻き上げ器22は、ワイヤWの張力が第1閾値に一致するように制御される。第1閾値は小さい値に設定されている。ユーザが前屈しようとすると、巻き上げ器22は張力を一定に維持するようにワイヤWを繰り出す。ユーザは、背屈しようとするときにコントローラ(不図示)を操作し、巻き上げ器22を作動させる。巻き上げ器22がワイヤWを巻き上げることによって、ユーザの背屈動作を補助する。なお、このとき巻き上げ器22は、ワイヤWの張力が第1閾値よりも顕著に大きい第2閾値に一致するように制御される。そのような制御によって、ユーザを背屈させる向きにほぼ一定のトルク(サポートモーメント)をユーザに加えることができる。
【0021】
ガイドプーリ16の効果について説明する。図1(A)によく示されているように、腰後部の巻き取り器22から伸びているワイヤWは、ガイドプーリ16によって背の後方へと導かれてから背の上部へ向かう。この状態を模式的に示したのが図3である。図3は、筋力補助装置100を装着したユーザを線画で模式的に表した図である。図3(A)はガイドプーリ16がない場合を示しており、図3(B)はガイドプーリ16がある場合を示している。記号s1はユーザの背の上部後方のワイヤ連結点を示している。図3(A)では、ワイヤWは巻き上げ器22からワイヤ連結点s1へ一直線に伸びている。図3(B)では、ワイヤWは巻き上げ器22からガイドプーリ16を通って連結点s1へ伸びている。
【0022】
図3における他の記号の意味を説明する。記号s2は、腰の中心を示している。記号Lは、腰中心s2とワイヤ連結点s1までの長さを示している。記号Tはワイヤ張力を示している。記号A1とA2は、ユーザの体幹から後方へ伸びる垂線とワイヤWがなす角度を示している。Mgはユーザに作用する重力を示している。Mt1とMt2は張力Tによってユーザに作用する腰中心s2回りのモーメントを示している。モーメントMt1とMt2が、筋力補助装置がユーザに与えるサポートモーメントに相当する。Mt1はガイドプーリ16がない場合のサポートモーメントを表し、Mt2はガイドプーリ16がある場合のサポートモーメントを表している。図3から明らかなとおり、Mt1=L・TcosA1であり、Mt2=L・TcosA2である。腰から伸びるワイヤWがガイドプーリ16を介することによって角度A2が角度A1よりも小さくなる。その結果、張力Tが同じであるならガイドプーリ16がある方がない場合よりもサポートモーメントが大きくなる。すなわち、ガイドプーリ16が、腰から伸びるワイヤWを背の後方へ一旦導いてから背の上部の連結点s1へ向かわせることによって、大きなサポートモーメントを発生させている。
【0023】
ガイドプーリ16が背から伸びている支柱14によって支えられていることは、次の利点も与える。図3(B)に示すように、ワイヤWの張力Tに起因して、ガイドプーリ16には背へ向かう力T2が発生する。この力T2は、ユーザの背のほぼ中央を押す。ユーザが前屈状態から背屈する際、この力T2がユーザの背を押す。この力T2は、上半身の姿勢が真っ直ぐになるように作用する。この力T2が背屈時に背すじを伸ばすように作用するので、筋力補助装置100はユーザの腰に加わる負担をより一層低減する。
【実施例2】
【0024】
図4に、第2実施例の筋力補助装置200の側面図を示す。第2実施例の筋力補助装置200は、ガイドプーリ16が、腰プレート21から伸びる支柱214によって支持されている。この筋力補助装置200は、第1実施例の筋力補助装置100が備えていた背プレート12を不要とし、ユーザへの装着が容易となる。
【実施例3】
【0025】
図5に、第3実施例の筋力補助装置300の背面図を示す。筋力補助装置300は、ユーザの体幹中心線(背骨に相当)の左右両側に付加的なワイヤ巻き上げ器322R、322Lとガイドプーリ16R、16Lを備えている。右側の巻き上げ器322Rから伸びたワイヤWRは、体幹中心線にほぼ平行に伸び、ガイドプーリ16Rを介して背の上部右側のカラビナ19bに結ばれている。左側の巻き上げ器322Lから伸びたワイヤWLは、体幹中心線にほぼ平行に伸び、ガイドプーリ16Lを介して背の上部左側のカラビナ19bに結ばれている。ガイドプーリ16R、16Lは、先に示した第1実施例のガイドプーリ16と同様に背プレート12から伸びる支柱14R、14Lによって支持されている。なお、図5のワイヤWCは第1実施例のワイヤWに対応し、図5のガイドプーリ16Cと支柱14Cは、第1実施例のガイドプーリ16と支柱14に夫々対応している。添え字「C」は、左右のワイヤWR,WL等と区別するために付加したものである。
【0026】
筋力補助装置300は、3本のワイヤWC、WL、及び、WRの張力を調整することによって、上体の背屈だけでなく、横曲げ方向や捻り方向(及び、横曲げと捻りが組み合わさった方向)にも補助力を付与することできる。また、筋力補助装置300は、ワイヤを巻き上げる駆動力を3個の巻き上げ器22、322R、及び322Lに分散できる利点もある。
【実施例4】
【0027】
図6と図7を参照して第4実施例の筋力補助装置400を説明する。図6は筋力補助装置400の側面図である。図7は、ユーザが前屈した状態における筋力補助装置400の側面図である。筋力補助装置400は、腰ハーネス20と背ハーネス10をユーザの背中側で連結する多リンク機構50を備えている。多リンク機構50は、4個のリンク51、52、53、及び、54を有しており夫々のリンクにガイドプーリ61、62、63、及び、64が取り付けられている。図6の符号C1、C2、C3、及び、C4はリンクの揺動軸を示しており、各ガイドプーリは揺動軸に同軸に取り付けられている。リンクの揺動軸C1等はピッチ軸方向に伸びている。ガイドプーリ61等はピッチ軸方向に伸びる回転軸を有している。他の揺動軸とガイドプーリについても同様である。多リンク機構50の下端は基部50aに相当し、この基部50aが腰プレート21に取り付けられている。基部50aにはまた巻き上げ器22が取り付けられている。多リンク機構50の背ハーネス側の端部(リンク54の先端)は、背プレート12(背ハーネス10)に取り付けられている。巻き上げ器22から伸びるワイヤWは、各ガイドプーリを介して背プレート12に連結されている。ワイヤWは、背プレート12によって、ユーザの背上部に相当する位置で背ハーネス10に連結されている。符号70は、ワイヤWをガイドする補助ガイドプーリを示している。補助ガイドプーリ70は、各リンクに取り付けられている。符号71はスプリング72によって付勢されている可動プーリを示している。可動プーリ71とスプリング72も各リンクに備えられている。ワイヤWは、各リンクが備える補助ガイドプーリ70と可動プーリ71にも接している。スプリング72によって付勢されている可動プーリ71はワイヤWが緩むのを防止するテンショナに相当する。
【0028】
図7によく示されているように、多リンク機構50の背ハーネス側端部(リンク54の先端)が、背プレート12(背ハーネス10)にスライド可能に連結されている。より詳しくは、背プレート12にはガイドレール55が取り付けられており、リンク54の先端がこのガイドレール55スライド可能に取り付けられている。多リンク機構50の背ハーネス側端部は、ガイドレール55に沿って、ユーザの体幹中心線(頭部と腰を結ぶ直線)に沿ってスライドする。図7によく示されているように、ユーザが前屈をすると、それまでポジションP1で背プレート12(背ハーネス10)と連結していたリンク先端はポジションP2へと移動する。多リンク機構50の先端をスライド可能としたのは、背プレート12(背ハーネス10)と多リンク機構50の連結を維持したまま、ユーザの前屈を許容するためである。この筋力補助装置400も、第2実施例の筋力補助装置200と同様の効果を奏する。
【0029】
以上、本発明の好適な実施例を説明した。実施例の筋力補助装置についての留意点を述べる。支柱14は長さが調整できるように構成されているとよい。第4実施例における多リンク機構50は、ロール軸方向に伸びる揺動軸を有していてもよい。ロール軸方向とは、ユーザの前後方向に相当する。ロール軸方向に伸びる揺動軸を有していれば、多リンク機構50はユーザの横曲げを許容することができる。
【0030】
実施例1の筋力補助装置100は、支柱14が背プレート12に対してスライドするように取り付けられている。このスライド機構は備えられていることが好ましいが、備えられていなくともよい。また、例えば、支柱14は、予め定められた力閾値を超える力が加わると背プレート12に対してスライドするように取り付けられることも好適である。そのような構成は、何らかの要因で筋力補助装置100が過大な力を発生した場合に、ユーザにその過大な力が加わることを防止する。
【0031】
実施例の筋力補助装置100は、ユーザが直接コントローラを操作することによって巻き上げ器が作動する。筋力補助装置は、センサの信号によって自動的に巻き上げ器が作動するように構成されてもよい。例えば、筋力補助装置は、ユーザの腰曲げ角度や、或いは、腰の曲げ角速度/角加速度を検知するセンサを備え、センサの値が所定の閾値を超えたら巻き上げ器が作動するように構成されることも好適である。
【0032】
実施例の筋力補助装置では、ワイヤ巻き上げ器が、ユーザの腰後部に相当する位置で腰ハーネスに固定されている。ワイヤ巻き上げ器の配置は腰後部に相当する位置に限られない。例えば、ワイヤ巻き上げ器は、ユーザの体の前に配置してもよい。ユーザの体の前に配置することによって、ヨー軸周りのサポートモーメントをユーザに加えることが可能となる。
【0033】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0034】
10:背ハーネス
12:背プレート
14、14C、14R、14L:支柱
16、16C、16R、16L:ガイドプーリ
19a、19b:カラビナ
20:腰ハーネス
21:腰プレート
22:ワイヤ巻き上げ器
24a、24b、24c:プーリ
25:テンショナ
50:多リンク機構
322R、322L:ワイヤ巻き上げ器
100、200、300、400:筋力補助装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの腰に装着される腰ハーネスと、
腰ハーネスに取り付けられているワイヤ巻き上げ器と、
ユーザの背中に装着される背ハーネスと、
腰ハーネスと背ハーネスの一方に支持されており、ユーザの背中後方に配置されるプーリと、
を備えており、
ワイヤ巻き上げ器から伸びているワイヤがプーリを介してユーザの背中上部に相当する位置で背ハーネスに結ばれていることを特徴とする筋力補助装置。
【請求項2】
前記プーリは、背ハーネスから伸びている支柱に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の筋力補助装置。
【請求項3】
前記支柱がユーザの体幹中心線の伸びている方向に沿ってスライド可能に背ハーネスに取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の筋力補助装置。
【請求項4】
ユーザの体幹中心線の左右両側にワイヤ巻き上げ器とプーリが配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の筋力補助装置。
【請求項5】
ユーザの背中側で腰ハーネスと背ハーネスを連結する多リンク機構を備えており、
多リンク機構のそれぞれのリンクに前記プーリが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の筋力補助装置。
【請求項6】
多リンク機構の背ハーネス側の端部が、背ハーネスに対してユーザ体幹中心線の伸びている方向に沿ってスライド可能に連結されていることを特徴とする請求項5に記載の筋力補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−251001(P2011−251001A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126903(P2010−126903)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(500539561)株式会社テムザック (19)
【Fターム(参考)】