説明

筐体のねじ取付部の構造

【課題】筐体取り付け用のねじの頭が筐体外部の凹部内に収容され,この凹部の開口部をラベル等で覆っていても、ラベルのふくらみやへこみ、更にはラベルのこのような部分の剥離を簡単な構成で防止できる筐体のねじ取付部の構造を提供する。
【解決手段】筐体10の表面に開口してねじの頭部を受容する筒状の凹部11と、凹部の底面に開口するねじ貫通穴12とを備えた筐体のねじ取付部において、ねじ貫通穴の周縁の一部に、筒状の凹部の底面からねじ貫通穴に沿って連続する溝13を設け、かつ、溝の深さは少なくとも筒状の凹部の底面となる一端面において、ねじ貫通穴の穴中心から穴径方向の溝底までの距離がねじの頭部の半径よりも大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子機器やキーボードなどに使用される筐体のねじ取付部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から例えば電子機器やキーボードなどに使用される筐体のねじ取付部の構造が知られている(例えば特許文献1参照)。また、筐体へのねじ取付部の構造ではないが、板金へのねじ取付部の構造についても知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の筐体のねじ取付部の構造は、電子機器本体ケースのねじ挿通用貫通穴内へのねじの保持を容易に行うようにすると共に、挿入したねじの先端と制御盤側の雌ねじ部との位置合わせを容易とするものである。そして、電子機器を制御盤に強固に締付け可能とするためのねじの呼び径より小さい穴をもち、かつ穴の周縁から穴の外方へ切込みが形成された可撓性材料からなるシートを貼り付ける構造を有している。
【0004】
また、特許文献2に記載の板金へのねじ取付部の構造は、板金に設けられるねじ穴に臨む薄肉部の開口縁部の一部に切り込み或いは切り欠きの変形促進部を形成する構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−148762号公報
【特許文献2】特開平8−33936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キーボードや電子機器等の筐体においては、例えば筐体本体に筐体カバーを固定したり、筐体に筐体内部のプレートを固定したりする場合に筐体外部からねじ止めを介して行なう場合がある。このような場合にねじの頭が筐体の外側面から突出して見栄を悪くするので外観上好ましくない。また、そのねじ取り付け部を含んだ筐体の表面を製品のIDラベルや検査完了確認のラベル貼り付け面として利用する場合もある。このような観点から、筐体外面のこのねじの取り付け部に円筒状の凹部(開口部が円形をなし一定の深さを有して底部がねじの頭の座部となった凹部)を形成する場合が多い。
【0007】
そして、貼り付けスペースの関係やねじの頭を外部から見えなくする美観上の観点から、上述したようにこのような凹部を覆うようにバーコードやシリアル番号等の情報が描かれた製品ラベルや品質検査の証明ラベルを筐体外部に貼り付ける場合が多い。このようなラベルを筐体の外部に貼り付けることで円筒状の凹部の内部空間がラベルを介して筐体の外部雰囲気と隔離してしまうと、ねじ頭部の座面は凹部のねじ挿通穴用の底面に密着しているため、凹部内の空気が筐体内部や外部と連通することなく密封されてしまう。
【0008】
このような状態で、例えば出荷前にキーボードや電子機器の熱サイクル等をかける評価試験を行うと、筐体外部の温度が低く筐体内部の温度が高くなる場合は、凹部内の空気が膨張し、凹部の開口部に貼られたラベルの部分だけ膨らんでしまう。一方、筐体外部の温度が高く筐体内部の温度が低くなる場合は、凹部内の空気が収縮し、凹部の開口部に貼られたラベルの部分だけへこんでしまう。
【0009】
これが繰り返されると、ラベルとキーボードの外周部の凹部近傍との接着部が剥離してしまう虞がある。このようなことは、製品出荷後における通常の使用状態でも筐体内外の温度差がある場合に生じる虞がある。また、筐体外部の温度がかなり高く筐体内部の温度がかなり低くなる場合は、ラベルの凹部の開口部に貼られた部分だけかなりへこんでしまい、ラベルの一部がねじ頭部の頂部にあたってラベルに穴が開き、ラベルに記載された重要な情報が判別できなくなる虞がある。
【0010】
また、電子機器の内部にパワートランジスタやサイリスタなどの発熱型電子部品が内蔵されていると、筐体外部の周囲雰囲気と筐体内部の加熱された空間との間に温度差が生じて、上述したような不具合が生じ易くなる虞がある。
【0011】
上述した特許文献1に記載の発明は、その公報段落(0005)に記載されたように、本発明の解決すべき課題と全く異なる課題を有した発明である。また、特許文献2に記載の発明は、金属板にねじを取り付ける構造のもので、本発明と技術分野及び解決すべき課題が全く異なっている。
【0012】
本発明の目的は、筐体取り付け用のねじの頭が筐体外部の凹部内に収容され,この凹部の開口部をラベル等で覆っていても、ラベルのふくらみやへこみ、更にはラベルのこのような部分の剥離を簡単な構成で防止できる筐体のねじ取付部の構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る筐体のねじ取付部の構造は、
筐体の表面に開口してねじの頭部を受容する筒状の凹部と、凹部の底面に開口するねじ貫通穴とを備えた筐体のねじ取付部において、
前記ねじ貫通穴の周縁の一部に、前記筒状の凹部の底面から前記ねじ貫通穴に沿って連続する溝を設け、かつ、前記溝の深さは少なくとも前記筒状の凹部の底面となる一端面において、前記ねじ貫通穴の穴中心から穴径方向の溝底までの距離が前記ねじの頭部の半径よりも大きいことを特徴としている。
【0014】
本発明の請求項1に係る筐体のねじ取付部の構造によると、ねじ貫通穴の周縁の一部に、筒状の凹部の底面からねじ貫通穴に沿って連続する溝が設けられている。また、この溝の深さは、溝の深さが筒状の凹部の底面となる一端面において、ねじ貫通穴の穴中心から穴径方向の溝底までの距離がねじの頭部の半径よりも大きくなっている。
【0015】
これによって、筐体の凹部と筐体内部とが、ネジを筐体に取り付けた状態においても溝を介して連通するようになる。その結果、筒状の凹部の開口部がラベル等で覆われても、凹部内が完全に独立した空間とならなくて済む。これによって、筐体外部の温度が低く筐体内部の温度が高くなる場合は、凹部内の膨張した空気がこの溝を介して筐体内部に出ていくので、ラベルの凹部の開口部に貼られた部分だけ膨らむことがない。一方、筐体外部の温度が高く筐体内部の温度が低くなる場合であっても、凹部内の空気の収縮に伴う空気不足分が筐体内部からこの溝を介して凹部に入り込むので、ラベルの凹部の開口部に貼られた部分だけへこむことがない。その結果、筐体に熱サイクル等をかける環境試験を行っても、また、製品出荷後の筐体自体と筐体外部の雰囲気温度が一致しない使用状態においても、このようなラベルの膨らみやへこみが生じることなく、ラベルとキーボードの外周部の凹部近傍との接着部が剥離してしまうこともない。また、筐体内部に発熱体が実装されたような電子機器を長期にわたって使用しても、ラベルの凹部の部分が膨らんだりへこんだりすることがなく、ラベルとキーボードの外周部の凹部近傍との接着部が剥離してしまうこともない。
【0016】
また、本発明の請求項2に係る筐体のねじ取付部の構造は、請求項1に記載の筐体のねじ取付部の構造において、
前記筒状の凹部の底面から前記ねじ貫通穴に沿って連続する前記溝が前記ねじ貫通穴の端面まで延びていることを特徴としている。
【0017】
本発明の請求項2に係る筐体のねじ取付部の構造によると、請求項1において記載した作用に加えて、溝の形成がし易くなるという作用を有している。
【0018】
また、本発明の請求項3に係る筐体のねじ取付部の構造は、請求項1又は請求項2に係る筐体のねじ取付部の構造において、
前記筒状の凹部の底面から前記ねじ貫通穴に沿って連続する前記溝が少なくとも1本設けられていることを特徴としている。
【0019】
本発明の請求項3に係る筐体のねじ取付部の構造によると、請求項1や請求項2に記載した作用に加えて、必要に応じて溝の数を変更することができ、本発明の作用をより発揮し易くすることができる。
【0020】
また、本発明の請求項4に係る筐体のねじ取付部の構造は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の筐体のねじ取付部の構造において、
前記ねじ貫通穴の周面に、ねじがたてられていることを特徴としている。
【0021】
本発明の請求項4に係る筐体のねじ取付部の構造によると、請求項1乃至請求項3に記載した作用に加えて、ねじ貫通穴にねじが形成された構成であっても本発明の作用を十分発揮することが可能である。
【0022】
また、本発明の請求項5に係るキーボード装置は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の筐体のねじ取付部の構造を用いたことを特徴としている。
【0023】
製品の識別番号や評価試験結果などを記載したシールを特に張り付ける機会の多いキーボードにこの発明を適用することで、本発明の作用をより効果的に発揮することができる。具体的には、キーボードを構成する筐体は一般に平たい横長の形状を有しており、通常机に載せて使用する。そのため、筐体と机との接触面を介して筐体自体の温度が机とほぼ等しくなる。一方、キーボードの周囲は、使用者の使用環境に合わせてエアコン等により冷房や暖房を行うことで温度が変わる。そのため、キーボードの筐体自体の温度とキーボード周囲の温度との温度差が生じ易くなる。従って、本発明をキーボードの筐体に適用することで、本発明特有の作用を十分に発揮することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、筐体取り付け用のねじの頭が筐体外部の凹部内に収容され,この凹部の開口部をラベル等で覆っていても、ラベルのふくらみやへこみ、更にはラベルのこのような部分の剥離を簡単な構成で防止できる筐体のねじ取付部の構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造を示す断面図である。
【図2】図1に示した筐体のねじ取付部にねじを備えると共に、筐体表面にラベルを貼った状態を示す断面図である。
【図3】図1及び図2に示した筐体のねじ取付部の構造の変形例を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造を示す、図2に対応する断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造を示す、図2に対応する断面図である。
【図6】図5に示した筐体のねじ取付部の構造の変形例を示す断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造を示す、図2に対応する断面図である。
【図8】本発明の各実施形態及びその変形例をシートを取り去った状態でねじの頭側から示す平面図(図8(a))及びこれらの変形例を示す平面図(図8(b))である。
【図9】本発明の各実施形態及びその変形例に係る筐体のねじ取付部の構造を適用する一例としてのキーボードを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の第1の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造を示す断面図である。また、図2は、図1に示した筐体のねじ取付部にねじを備えると共に、筐体表面にラベルを貼った状態を示す断面図である。
【0027】
本発明の第1の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造は、例えばキーボードの筐体や電子部品等を内蔵した電子機器の筐体に適用可能である。そして、第1の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造は、筐体10の表面に開口してねじ頭部51aを収容する筒状の凹部11と、凹部11の底面11bに開口するねじ貫通穴12とを備えている。そして、凹部11とねじ貫通穴12により筐体内外が連通している。
【0028】
筐体10は、本実施形態の場合、成形性と強度に優れた適当な樹脂材でできている。凹部11は、筒状、即ち筐体外側に形成された開口部が平面視で円形をなし一定の深さを有して底面11bがねじ頭部51aの座部となった形状を有している。なお、ねじ貫通穴12の内径は、ねじ51の雄ねじ部の外径よりも若干大きくかつねじ頭部51aの外径よりも小さくなっており、これによって凹部11の底面11bのねじ貫通穴周囲がねじ頭部51aの座面をなしている。
【0029】
ねじ貫通穴12の周縁の一部には、筒状の凹部11の底面11bからねじ貫通穴12に沿って連続する溝13が形成されている。本実施形態の場合、溝13は、ねじ貫通穴12の周方向1箇所に形成されている(図8(a)参照)。この溝13の深さ、即ちねじ直径方向に対応する溝13の奥行きは、筒状の凹部11の底面11bとなる一端面において、ねじ貫通穴12の穴中心から穴径方向の溝底13aまでの距離dがねじ頭部51aの半径rよりも大きくなっている(図2参照)。また、溝13は、筒状の凹部11の底面11bからねじ貫通穴12に沿ってねじ貫通穴12の筐体内側端部まで一定の深さで連続的に延びている。
【0030】
この溝13によって凹部11と筐体内部10aとは連通し、ねじ貫通穴12にねじ51を挿通してねじ頭部51aを凹部11の底面11bにぴったりと密着させた状態においても、凹部内の空気が筐体内に自由に出入りできるようになっている。
【0031】
筐体10の内部にはこの筐体10の内側面と平行となるようにパネル15が所定間隔隔てて対向配置されている。パネル15には、ここでは詳細に説明しないが、筐体10がキーボードの筐体の場合、例えば入力用の多数のキーが配置されている。また、筐体10が電子機器の筺体の場合、抵抗やコンデンサ等の受動素子、パワートランジスタやサイリスタ等の発熱型の能動素子等が実装されている。そして、パネルには、筐体10のねじ貫通穴12と対向する部分にねじ51が螺合する雌ねじ部15bが形成されている。
【0032】
筐体10とパネル15との寸法関係は、筐体10の凹部11の開口部からねじ51をねじ貫通穴12に挿通してねじ51の雄ねじ部51bをパネル15の雌ねじ部15bに螺合させると、ねじ頭部51aが凹部11の底面11bに押し付けられると共に、パネル15が筐体10の内面側に引き寄せられ、パネル15のここでは図示しない突起部が筐体10の内面に突き当たって両者がしっかりと固定される寸法関係となっている。
【0033】
一方、筐体10の表面には、凹部11の開口部11aを覆うように紙や薄いプラスチックでできたラベル19が適当な接着剤を介して貼り付けられている。筐体10が例えばキーボードや電子機器の筐体をなす場合、ラベル19には、その本体の型番(ID番号)や検査記録を示すバーコード情報、シリアル番号等の情報が明記されている。ラベル19がこのように筐体表面に貼られることによって、凹部11の開口部はラベル19によって完全に覆われ、凹部内の空気は筐体外部に出ないようになっている。
【0034】
続いて、上述した第1の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造の作用について説明する。この第1の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造によると、溝13の深さ、即ちねじ51の直径方向に対応する溝13の奥行きがねじ51の中心軸線から見てねじ頭部51aの半径よりも大きくなっている。言い換えると、筒状の凹部11の底面11bとなる一端面において、ねじ貫通穴12の穴中心から穴径方向の溝底13aまでの距離がねじ頭部51aの半径よりも大きくなっている。これによって、ねじ貫通穴12にねじ51を挿通してねじ頭部51aを凹部11の底面11bにぴったりと密着させた状態においても、凹部11と筐体内部とが溝13を介して連通する。その結果、凹部11の開口部11aがラベル19で覆われていても、凹部内の空気が溝13を介して筐体内部に出入りすることが可能となる。このような、本発明特有の構成によって、以下の作用を奏する。
【0035】
筐体外部の温度が低く筐体内部の温度が高くなる場合は、凹部内の膨張した空気が溝13を介して筐体内部10aに一部出ていくので(図2における矢印F1参照)、ラベル19の、凹部11の開口部11aを覆った部分が従来のように膨らまなくなる。一方、筐体外部の温度が高く筐体内部の温度が低くなる場合は、凹部内の空気の収縮に伴う空気不足分が筐体内部から溝13を介して入り込むので(図2における矢印F1と逆方向)、ラベル19の、凹部11の開口部11aを覆った部分が従来のようにへこまなくなる。その結果、筐体10に熱サイクルなどの環境試験を行っても、また、その後に筐体自体と筐体周囲の雰囲気との温度が生じる環境において使用しても、更には、筐体内部10aに発熱体が実装された電子機器を長期にわたって使用しても、ラベル19のこの部分が膨らんだりへこんだりすることがなく、また、ラベル19と筐体の外周部の凹部近傍との接着部が剥離してしまうことがなくなる。その結果、製品の外観品質を常に高く保つことができる。
【0036】
図3は、図1に示した筐体のねじ取付部の構造の変形例を示す断面図である。図3においては、上述した第1の実施形態のパネル部分の構成が異なっており、それ以外の構成については同等となっている。具体的には、パネル16の、ねじ貫通穴12に対向する部分に、ねじ貫通穴12に向かって突出部17が形成され、この突出部17にねじ51に螺合する雌ねじ部17aが形成されている。本変形例がこのような構造を有することで、上述した第1の実施形態の作用に加えて、パネル16を筐体10にしっかりと固定する付加的な作用を奏する。
【0037】
続いて、本発明の第2の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造について説明する。この第2の実施形態に関して、第1の実施形態と同等の構成については対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造を示す断面図である。第2の実施の形態に係る筐体のねじ取付部の構造が第1の実施形態と異なる点は、筐体内部20aにパネルを有さず、筐体20のねじ貫通穴22に長手方向全体に亘って雌ねじ部22aが形成されていることにある。また、ねじ貫通穴22の長手方向全体に亘って1本の溝23が形成されている点にある。なお、溝23は、その深さが筒状の凹部21の底面21aとなる一端面において、ねじ貫通穴22の穴中心から穴径方向の溝底23aまでの距離、即ち溝23の深さがねじ頭部52aの半径よりも大きくなっている点で第1の実施形態と同様の構成となっている。
【0039】
なお、第2の実施形態においては、ねじ52を介して筐体20に取り付ける被取付対象物が示されていないが、例えばねじ52と凹部21の底面21aとの間に図示しないブラケットの一端を挟み込んで、ブラケットの他端に部品を装着するような使用態様が考えられる。そして、第2の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造においても、図4において矢印F2で示す空気の流れ又はこの逆方向の空気の流れを積極的に生じさせることができ、上述した第1の実施形態と同等の作用を発揮することができる。
【0040】
続いて、本発明の第3の実施形態に係る筺体のねじ取付部の構造について説明する。なお、第1の実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造を示す断面図である。第3の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造は、第1の実施形態とは異なり、溝33の底部33aがテーパ状をなして形成されている。即ち、溝33は、その長手方向においてねじ頭部53aに対応する深さが最も深く、ねじ53の先端に向かうに従って浅くなり、ねじ貫通穴32の長手方向途中で溝がなくなっている。なお、溝33の、凹部31の底面31aにおけるねじ頭部53aとの寸法関係は、上述した各実施形態と同等の寸法関係を有している。
【0042】
これによっても、図5において矢印F3で示す空気の流れ又はこの逆方向の空気の流れを積極的に生じさせることができ、上述した第1の実施形態と同等の作用を発揮することができる。
【0043】
図6は、図5に示した第3の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造の変形例を示す断面図である。この変形例は、図3に示した第1の実施形態の変形例と同等の構成を有している。具体的には、パネル36の、ねじ貫通穴32に対向する部分に、ねじ貫通穴32に向かって突出部37が形成され、この突出部37にねじ53に螺合する雌ねじ部37aが形成されている。本変形例がこのような構造を有することで、第3の実施形態に係る作用に加えて、パネル36を筐体30にしっかりと固定する付加的な作用を発揮する。
【0044】
続いて、本発明の第4の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造について説明する。なお、上述した実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造を示す断面図である。この第4の実施形態が第2の実施形態と異なる点は、溝43がねじ貫通穴42の筐体内側端部まで達しておらず、途中で終わっている点にある。なお、ねじ貫通穴42の長手方向全てに亘って雌ねじ部42aが切られているが、このような構成の場合も全長が短いねじ54を用いると、溝43の下端部はねじ54の先端よりも図のように下方に位置するようになる。従って、長さの短いねじを本発明の構造に用いる場合は、本実施形態のようにねじ貫通穴42の下端面まで溝43をわざわざ形成させずに済む。
【0046】
そして、第4の実施形態に係る筐体のねじ取付部の構造においても、図7において矢印F4で示す空気の流れ又はこの逆方向の空気の流れを積極的に生じさせることができ、上述した第1の実施形態と同等の作用を発揮することができる。
【0047】
図8は、本発明の各実施形態及びその変形例をシートを取り去った状態でねじの頭側から示す平面図(図8(a))及びこれらの変形例を示す平面図(図8(b))である。
【0048】
上述の各実施形態やその変形例は図8(a)に示すように、溝13(23〜43)がねじ貫通穴の周囲に1箇所設けられていた。しかしながら、必ずしもこのような形態に限定されず、図8(b)に示すように、ねじ貫通穴の周囲に2箇所以上(図8(b)においてはねじ貫通穴周囲に溝(13−1〜13−3等)を等間隔で3箇所)設けていても良い。このように、必要に応じて溝の数を変更することで、本発明の作用をより発揮し易くしても良い。
【0049】
図9は、本発明の各実施形態及びその変形例に係る筐体のねじ取付部の構造を適用する一例としてのキーボードを示す斜視図である。本発明に係る筐体のねじ取付部の構造は、ここでは詳細に示さないがこのキーボードの裏面に設けられ、更にはキーボードの凹部の開口部をふさぐように製品IDラベルが貼られている。
【0050】
キーボード100を構成する筐体は一般に平たい横長の形状を有しており、通常机に載せて使用する。そのため、筐体と机との接触面を介して筐体自体の温度が机とほぼ等しくなる。一方、キーボード100の周囲は、使用者の使用環境に合わせてエアコン等により冷房や暖房を行う。そのため、キーボード100の筐体自体の温度とキーボード周囲の温度との温度差が生じ易くなる。従って、本発明をキーボード100の筐体に適用することで、本発明特有の作用を十分に発揮することができる。
【0051】
以上説明したように、従来においては筐体のねじ取付穴を覆うように、製品IDラベルなどが貼られていると、温度変化などで穴部近傍のラベルが膨らんだり、凹んだりして変形してしまうことが発生していた。その対策として、本発明においては、ねじ取付穴の座面からねじ貫通穴にかけて空気抜きの貫通溝を設けて、空気を逃がすことでこの問題を解決できた。
【0052】
また、本発明によると製品認識ラベルを貼って試験をする際に、ラベルが変形することからに起因する外観NGを回避することができ、製品の製造効率を高めることができる。
【0053】
なお、本発明はあらゆる樹脂物に対してラベルを貼る時の空気逃げとして適用可能である。また、筐体は、樹脂に限らず金属のような筐体であっても良い。金属の筐体は熱伝導率が良いので、その取付部の温度や内部発熱体の温度と同等となり易く、周囲雰囲気の温度との温度差が大きくなる。従って、本発明を適用することのメリットが大きいと言える。
【0054】
また、凹部は円筒状のへこみではなく、開口部が平面視で四角又は多角形の筒状をなしても良い。
【符号の説明】
【0055】
10 筐体
10a 筐体内部
11 凹部
11a 開口部
11b 底面
12 ねじ貫通穴
13(13−1〜13−3) 溝
13a 溝底
19 ラベル
20 筐体
20a 筐体内部
21 凹部
21a 底面
22 ねじ貫通穴
22a 雌ねじ部
23 溝
23a 溝底
30 筐体
31 凹部
31a 底面
32 ねじ貫通穴
33 溝
33a 底部
37a 雌ねじ部
42 ねじ貫通穴
42a 雌ねじ部
43 溝
51 ねじ
51b 雄ねじ部
52,53,54 ねじ
100 キーボード



【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の表面に開口してねじの頭部を受容する筒状の凹部と、凹部の底面に開口するねじ貫通穴とを備えた筐体のねじ取付部において、
前記ねじ貫通穴の周縁の一部に、前記筒状の凹部の底面から前記ねじ貫通穴に沿って連続する溝を設け、かつ、前記溝の深さは少なくとも前記筒状の凹部の底面となる一端面において、前記ねじ貫通穴の穴中心から穴径方向の溝底までの距離が前記ねじの頭部の半径よりも大きいことを特徴とする筐体のねじ取付部の構造。
【請求項2】
前記筒状の凹部の底面から前記ねじ貫通穴に沿って連続する前記溝が前記ねじ貫通穴の端面まで延びていることを特徴とする請求項1に記載の筐体のねじ取付部の構造。
【請求項3】
前記筒状の凹部の底面から前記ねじ貫通穴に沿って連続する前記溝が少なくとも1本設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の筐体のねじ取付部の構造。
【請求項4】
前記ねじ貫通穴の周面に、ねじがたてられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の筐体のねじ取付部の構造。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の筐体のねじ取付部の構造を用いたことを特徴とするキーボード装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−233791(P2011−233791A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104616(P2010−104616)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】