説明

筐体の内部および表面の冷却装置を備える電子機器

【課題】 動作時に電子機器の筐体表面を冷やすと同時に筐体内の発熱電子部品を冷やす。
【解決手段】 本発明の電子機器10は、筐体12、14と、筐体内に配置された、電子部品18、電子部品の発熱を筐体へ伝達するための伝熱機構19、20、22、および筐体の外側表面と筐体の内側を冷やすための冷却装置26、30、28、32、36、42、44を備える。本発明の電子機器は、冷却装置としてファン30を含み、ファンからのエアーフロー44を筐体の外側表面29に沿って流すとともに筐体内部の電子部品18へ導くエアーフロー32がある。本発明の電子機器は、動作時に筐体表面29を冷やすことにより、熱伝達の作用で、筐体表面29の温度および筐体内の電子部品18の温度を下げる。さらに、本発明の電子機器は、エアーフロー32により筐体内の電子部品18を冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の内部および表面の冷却装置を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型電子機器(例えば携帯型のパーソナル・コンピュータ(PC)など)では、内部の電子部品の高性能化、高密度化が進んでいる。その高性能化、高密度化にともなって、動作時の内部の電子部品からの発熱が大きな問題となっている。筐体サイズが薄型化、軽量化、小型化する傾向にあるため、筐体内の電子部品が発する熱が筐体内部にこもりやすい。電子部品の性能、信頼性を確保するためには、電子部品からの発熱を速やかに冷却する必要がある。
【0003】
小型電子機器ではその筐体サイズが小さいので、その熱を除去するために、ファンなどの冷却装置を筐体内に配置することは困難である。そのため、銅板、アルミニュウム板、ヒートパイプのような部品を使って、発熱源から放熱可能な場所に熱を移動させる。または性能を犠牲にして、電子部品からの発熱量を抑えることも行われている。
【0004】
筐体内にファンを配置して空冷する場合、ファンのサイズは非常に小さなものとなり、その風量は限られる。高密度であるが故にエアーフローは筐体内を流れにくく、電子部品などを十分に冷やすことができない。電子部品の冷却が十分になされない場合、電子部品の誤動作、故障などが生じ、安全性や信頼性の問題となる。
【0005】
一方、電子部品の熱を筐体に伝達して、筐体表面から外気に熱を逃がす場合、筐体表面からの放熱は、外気と筐体表面の温度差に基づく自然放熱であるため、その放熱効果は十分ではない。さらに、動作時の筐体表面の温度は高温になることから、人がその表面に触れると「熱い」と感じて、非常な不快感を覚える。また、長時間筐体表面に触れていると低温火傷をおこす可能性もある。近年、モバイルPCのように、手で持ち運んだりあるいはひざの上に乗せて使用するというケースが増えている。したがって、この筐体表面の熱(高温)の問題も深刻な問題である。使用者の立場に立った、接触可能な筐体表面の熱対策(低温化、冷却)が必要である。従来、その対策として筺体表面を樹脂などの熱伝導率の低い物質で覆うことなどが行われている。その場合、筺体表面からの放熱量が非常に小さくなり、筐体内の電子部品の冷却効果が軽減される。
【0006】
携帯型のPCの冷却装置の従来技術が、例えば、日本国の登録実用新案公報3064584号、3043379号に開示されている。しかし、これらの公報はいずれもPCの筐体内部の冷却のみを目的とするものであり、筐体表面の温度の冷却を目的とする技術を開示するものではない。
【特許文献1】登録実用新案公報3064584号
【特許文献2】登録実用新案公報3043379号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、筐体内に動作時に発熱する電子部品を有する電子機器において、筐体の表面および内部の電子部品を冷やすことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子機器は、筐体内に配置された、電子部品、電子部品の発熱を筐体へ伝達するための伝熱機構、および電子部品の熱が伝達する筐体の外側表面を冷やすための冷却装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電子機器は、電子部品の熱が伝達する筐体の外側表面を冷やすための冷却装置を有するので、動作時の筐体表面の温度を下げ、同時に筐体内の電子部品の温度を下げる。その冷却効果により、本発明は電子機器の発熱に対する信頼性、安全性を向上させ、さらに使用者の熱に対する不快感を軽減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明について携帯型PCを例にとり説明する。なお、本発明はPCに限定されず、他の電子機器にも適用できることは言うまでもない。図1は、本発明の一実施例である携帯型PC10の背面斜め上から見た図である。図2は図1のPCをA方向から見た断面図である。
【0011】
筐体は、コア筐体12とクレードル筐体14から構成される。コア筐体12の中には、プリント配線板16上のCPU18、CPU18に熱伝導性弾性体19を介して接続するヒートシンク20、ヒートシンク20をコア筐体16に固定するリブ(LIB)22がある。さらに、コア筐体12は、メモリ、各種制御用IC、HDDなどの電子部品24(詳細は省略)を含む。
【0012】
コア筐体12の端部33には、電気的接続をとるためのコネクタ(図示なし)がある。そのコネクタは、クレードル筐体14の開口40の底部にあるインターフェイス(I/O)46用プリント配線板上にあるコネクタ(図示なし)に脱着可能となっている。コア筐体12はクレードル筐体14のコネクターに結合した状態でPCとして動作する。動作時、コア筐体12の表面の温度は上昇し高温になる。コア筐体12はクレードル筐体14からはずして持ち運びできる。別の場所にあるクレードル筐体に装着することで、PCとして動作する。
【0013】
クレードル筐体14は、主に電源や外部機器(デイスプレイ、キーボード、マウスなど)のインターフェース(I/O)を内蔵する。図1の符号46はI/Oのコネクタ類を示す。クレードル筐体14の中にはファン30がある。ファン30によりクレードル筐体14の開口部36からエアーが筐体内に取り込まれる。ファン30からのエアーはコア筐体12の表面に吹き付けられる。そのエアーの一部がコア筐体12の表面に沿って流れるようにクレードル筐体14の上部に開口42がある。エアーの一部は開口42から出て、矢印44で示されるように、コア筐体12の表面29に沿って流れる。
【0014】
エアーフロー44の風量は、ファン30の容量、開口36、26、28、42の大きさなどに依存する。エアーフロー44は、必ずしもコア筐体12の上端部(符号28の近傍)まで届く必要はないが、少なくともリブ22より伝導した熱の放熱を促進させる必要がある。エアーフロー44の風量は、そのニーズを満たすように決められる。ファン30とクレードル筐体14は、開口36、42以外はできる限り密閉して、エアーフロー44、32(詳細は後述)以外に空気の流れ(漏れ)がないようにする。これによりクレードル筐体14内の圧力は周囲に比べて高くなり、気圧の低いコア筐体内12と上端部28に空気は流れやすくなる。このエアーフロー44により、PC動作時のコア筐体12の表面29が冷やされる。その結果、コア筐体12の表面29の温度が下がる。同時に、CPU18などからヒートシンク20および固定リブ22を介してコア12に伝達する熱の除去(冷却)効果が促進される。
【0015】
ファン30からのエアーの一部は、コア筐体12の開口部26からコア筐体12内に入り上部の開口部28から外へ出るエアーフロー32となってコア筐体12内を流れる。エアーフロー32により動作時のCPU18などの発熱する電子部品、ヒートシンク20と筐体12の裏面が冷やされる。このように、図2のPCでは、エアーフロー44、32が、コア筐体12の表面上および内部の両方に同時に流れる。その結果、筐体内の電子部品の冷却効果がさらに向上すると同時に、筐体表面の温度上昇を抑えることができる。なおエアーフロー36、32、44の向きを図2と逆方向に流しても同様な効果を得ることができる。
【0016】
図2のリブ22は、その断面形状が縦長になっている。その理由は、筐体とヒートシンクとの接触面積を大きくして、ヒートシンク20からコア筐体12への熱伝導をより良くするためである。また、風路に対しても抵抗とならず、放熱作用を効果的に行える構造となっている。
【0017】
図3はヒートシンク上のリブの位置および形状の例を示す平面図である。(a)は符号50で示す4点に円柱状のリブがある例である。(b)は4点のリブをL字型にした例である(符号52)。(c)は図2のPCで採用している2つの縦長リブの例である(符号54)。携帯型PCの筐体の大きさ、内蔵する電子部品からの発熱量、発熱素子の基板上での位置、ファンからの空気の取り入れ位置、ファンからの風量、空気の流れに応じて、リブの形状、大きさ、および体積をその携帯PCにあわせて最適化する。その結果、伝熱量を調整することができ発熱素子からの熱を筐体表面に効率よく伝熱することができる。
【0018】
図2の例では、リブ22の形状を縦長にすることで、ヒートシンク20の筐体への固定強度が増し、CPUとの接続のときに加わる荷重に対して、ヒートシンク20がたわみにくくなる。また、リブ22は少なくとも2つ離間して設けられる。その理由は、コア筐体12内を流れるエアーフロー32の流路を確保するためである。
【0019】
ヒートシンク20、リブ22の材料としては、熱伝導性のよいアルミニュウム合金、銅、ステンレス、マウグネシウム合金などを用いる。伝熱機構としてヒートシンクとヒートパイプを併用するとさらに冷却効果が向上する。
【実施例】
【0020】
筐体表面を流れるエアーフロー44のよる冷却効果について調べるために、以下の実験をおこなった。図4は、図2のPCにおいて、クレードル筐体14の中にダクト34を設けて、ファンからのエアーフローが開口42から外へ出ていかないようにしたPC10'の断面図である。図4のPC10'では、ファンからのエアーは、開口部26からコア筐体12内に入り上部の開口部28から外へ出るエアーフロー32となってコア筐体12内を流れる。
【0021】
図2、図4のPCについて、同一の縦長のリブ22(サイズ:2mm x 25mm x 1mm、材料はAl5052)をヒートシンク(サイズ:50mm x 100mm x 0.5mm、材料:Al1050)に2本取り付け、筐体表面を流れるエアーフロー44による冷却効果について調べた。その結果、エアーフロー32と44を有する図2のPC10では、エアーフロー44が無く、エアーフロー32だけの図4のPC10'に比べて、筐体表面29の温度を約2℃、CPU18の温度を約4℃低くすることができた。下記にそのときのデータを示す。

・CPUクロック:1GHz
・ファン :4200rpm
・筐体表面温度 :エアーフロー44有り:48.9℃
エアーフロー44無し:50.8℃
・CPU温度 :エアーフロー44有り:77.2℃
エアーフロー44無し:81.3℃
・環境温度 :35℃
【0022】
本発明について、図1−図4のPCを例にとり説明をした。しかし、本発明はこれに限られるものではない。例えば、本発明の冷却装置としては、ファンを用いたエアーフローを利用する以外に、筐体表面に配置された細い配管に冷媒を流す方式、あるいは特に熱くなる部分(ヒート・スポット)にペルチェ素子のような冷却素子を配置する方式なども利用可能である。本発明では、電子機器の形状やサイズ、発熱状態などを考慮して、適切な冷却装置を採用することができる。いずれの冷却装置を採用するにしても、筐体内の発熱電子部品の冷却と筐体表面の冷却の双方を同時におこなうことにより、本発明はより冷却効果を発揮する。この本発明の趣旨を逸脱しない範囲でいかなる変形が可能であることは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のPCの斜め背面図である。
【図2】図1の本発明のPCの断面を示す図である。
【図3】ヒートシンク上のリブの位置、形状の例を示す平面図である。
【図4】図2の本発明のPCにダクト34をつけた断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10、10' PC
12 コア筐体
14 クレードル筐体
16 プリント配線板
18 CPU
19 熱弾性体
20 ヒートシンク
22 リブ
26、28、36、42 開口
30 ファン
34 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体内に配置された、電子部品、前記電子部品の発熱を前記筐体へ伝達するための伝熱機構、および前記電子部品の熱が伝達する筐体の外側表面を冷やすための冷却装置を備える、電子機器。
【請求項2】
前記伝熱機構は、前記電子部品に接続するヒートシンクと、前記ヒートシンクを前記筐体に接続するリブを含む、請求項1の電子機器。
【請求項3】
前記リブはヒートシンクの一部をなす、請求項2の電子機器。
【請求項4】
前記冷却装置はファンを含み、前記筐体は、前記ファンからのエアーフローを、前記リブが固定する筺体の外側表面に沿って流すための開口を含む、請求項2の電子機器。
【請求項5】
前記ファンからのエアーフローは、同時に前記筐体内部の電子部品へ流れる、請求項3の電子機器。
【請求項6】
前記リブは、前記電子部品の近傍のヒートシンク部分に設けられる、請求項2の電子機器。
【請求項7】
前記伝熱機構は、さらに前記電子部品に接続するヒートパイプを含む、請求項2の電子機器。
【請求項8】
前記筐体は、前記電子部品および伝熱機構を内蔵するコア筐体部と、前記冷却装置を内蔵するクレードル筐体部を含み、 前記開口は前記コア筐体部と前記クレードル筐体部が接合する領域に設けられる、請求項4の電子機器。
【請求項9】
前記電子部品はCPUを含み、前記電子機器は小型コンピュータ(PC)である、請求項8の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−85422(P2006−85422A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269416(P2004−269416)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(390009531)インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション (4,084)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MASCHINES CORPORATION
【出願人】(501443168)株式会社住友金属マイクロデバイス (9)
【Fターム(参考)】