説明

筐体ユニット及び画像形成装置

【課題】ガイドレール等の別部品を設けることなく着脱部材をガイドするとともに、ボックス型の筐体ユニットであっても、任意の位置にガイド構造を形成し、かつ着脱部材の位置決めを容易に行えるようにする。
【解決手段】互いに略平行でかつ対向する状態に配置された一対の遮蔽板7A,7Bと、一対の遮蔽板7A,7Bを連結する支持板8とを一体に有する筐体部材5と、筐体部材5に着脱可能に取り付けられる着脱部材6とを備える筐体ユニット4であって、一対の遮蔽板7A,7Bは、筐体部材5の内部側に凸となる状態で各々の遮蔽板7A,7Bに絞り加工により形成された突条ガイド部9A,9Bを一体に有し、着脱部材6は、突条ガイド部9A,9Bに摺接する摺動体11を有し、支持板8は、摺動体11を突条ガイド部9A,9B側に押圧する押圧部材13を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体ユニットとこれを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、プリンタ等の画像形成装置には、筐体構造の一部として、着脱式のユニット構造体(以下、「筐体ユニット」と記す)が組み込まれている。筐体ユニットは、専ら装置の補修作業を目的に引き出し方式等で開放されることが殆どであるため、一般のユーザが操作することのない装置の背面側に設けられている。
【0003】
筐体ユニットは、主に筐体部材と着脱部材とを用いて構成されている。筐体部材は画像形成装置の本体フレームに取り付けられ、着脱部材は、筐体部材に着脱可能に取り付けられるものである。筐体ユニットの具体例としては、装置制御用のコントローラ基板を実装した実装構造体を着脱部材とし、この着脱部材を筐体部材に着脱可能に取り付けた構成がある。筐体部材に着脱部材を取り付ける場合や、筐体部材から着脱部材を取り外す場合は、着脱部材の移動(押し込み動作、引き出し動作など)を何らかのかたちでガイドする必要がある。そこで従来においては、筐体部材に別部品でガイドレールを取り付け、このガイドレールで着脱部材をガイドするものがある。しかしながら、別部品でガイドレールを取り付けると、部品点数の増加やガイドレール取り付けのための工数が増えるなどの難点がある。
【0004】
そこで、筐体ユニットに関する先行技術として、例えば下記特許文献1には、シャーシ板の左右端にそれぞれ曲げ加工によってガイド溝部及びサイドレール部を一体的に形成し、これらのガイド溝部及びサイドレール部を用いてサブ基板を保持することにより、シャーシ板に取り付けるガイドレールの数を減らす技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−40964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、シャーシ板の曲げ加工によってガイド溝部とサイドレール部を形成する場合に、シャーシ板を細かく何度も折り曲げる必要がある。そのため、曲げ加工の都合上、ガイド溝部及びサイドレール部の形成箇所がシャーシ板の端縁部に限定されてしまう。したがって、全体的にボックス型に形成された筐体ユニットでは、筐体部材(ボックス構造体)の内部に着脱部材を取り付けることになるため、上述のような曲げ加工でガイド構造を形成するものでは適切に対応できない場合がある。また、上記特許文献1に開示された技術では、シャーシ板の内側にガイドレールを別途取り付け、このガイドレールのガイド溝と上記ガイド溝部との間にサブ基板を挿入して保持する構成となっているため、サブ基板を精度良く位置決めするにはガイドレールの取り付け位置を微調整する必要があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ガイドレール等の別部品を設けることなく着脱部材をガイドするとともに、ボックス型の筐体ユニットであっても、任意の位置にガイド構造を形成し、かつ着脱部材の位置決めを容易に行うことができる筐体ユニットとこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る筐体ユニットは、互いに略平行でかつ対向する状態に配置された一対の遮蔽板と、当該一対の遮蔽板を連結する支持板とを有する筐体部材と、この筐体部材に着脱可能に取り付けられる着脱部材とを備え、一対の遮蔽板は、筐体部材の内部側に凸となる状態で各々の遮蔽板に絞り加工により形成された突条ガイド部を一体に有し、着脱部材は、突条ガイド部に摺接する摺動体を有し、支持板は、摺動体を突条ガイド部側に押圧する押圧手段を有するものである。また、本発明に係る画像形成装置は、上記構成の筐体ユニットを備えるものである。
【0009】
本発明に係る筐体ユニットとこれを備える画像形成装置においては、筐体部材の一対の遮蔽板に絞り加工によって突条ガイド部を一体に形成し、この突条ガイド部に摺動体を摺接させることで着脱部材がガイドされるとともに、筐体部材の支持板に設けた押圧部材で摺動体を突条ガイド部側に押圧することで着脱部材が位置決めされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一対の遮蔽板に絞り加工で突条ガイド部を形成しているため、ボックス形状の筐体ユニットでも、筐体部材の任意の位置にガイド構造を形成することができる。また、筐体部材の支持板に設けた押圧部材が摺動体を押圧することで着脱部材の取り付け位置が決まるため、着脱部材の位置決めを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明が適用される画像形成装置の構成例を示す側面概略図である。図示した画像形成装置1においては、装置の前面側(図の右側)に複数段の引き出し式トレイ部2が設けられている。引き出し式トレイ部2の各トレイには、それぞれ所定サイズの用紙が個別に収容されるようになっている。装置の上部には、原稿押さえ部材3が開閉可能に取り付けられている。また、装置本体の内部には、原稿の画像を読み取るための画像読取機構や、用紙に画像を印刷出力するためのプリンタエンジン、用紙を搬送する用紙搬送機構などが組み込まれている。さらに、装置の背面側(図の左側)には、図示しない筐体ユニットが組み込まれている。
【0013】
図2は本発明の実施形態で採用した筐体ユニットの構成を示す斜視図である。図示した筐体ユニット4は、大きくは筐体部材5と着脱部材6とによって構成されている。
【0014】
筐体部材5は、画像形成装置1の本体フレームに取り付けられるものである。筐体部材5は、全体的に略コ字形に形成された板金(導電性材料)によって構成されている。さらに詳述すると、筐体部材5は、互いに略平行でかつ対向する状態に配置された上下一対の遮蔽板7A,7Bと、当該一対の遮蔽板7A,7Bを連結する支持板8とによって略コ字形に一体形成されている。これら一対の遮蔽板7A,7B及び支持板8は、いずれも矩形状に形成されたもので、一体構造をなす筐体部材5を構成している。遮蔽板7Aは支持板8の上端部から略直角方向に曲げられ、遮蔽板7Bは支持板8の下端部から略直角方向(遮蔽板7Aと同じ方向)に曲げられている。
【0015】
また、一対の遮蔽板7A,7Bには、それぞれ突条ガイド部9A,9Bが一体に形成されている。上側の遮蔽板7Aには下側(筐体部材5の内部側)に凸となる状態で突条ガイド部9Aが形成され、下側の遮蔽板7Bには上側(筐体部材5の内部側)に凸となる状態で突条ガイド部9Bが形成されている。突条ガイド部9Aは、遮蔽板7Aと支持板8との境界部(直角の折り曲げ部)の近傍で、かつ当該境界部から所定の距離を隔てた位置に絞り加工によって形成されている。突条ガイド部9Bは、遮蔽板7Bと支持板8との境界部(直角の折り曲げ部)の近傍で、かつ当該境界部から上記所定の距離と同じ距離を隔てた位置に絞り加工によって形成されている。
【0016】
さらに、各々の突条ガイド部9A,9Bは、それぞれに対応する上記境界部に沿って直線状に形成されるとともに、上記境界部に沿う方向(図の矢印方向)で2つに分割して形成されている。また、各々の突条ガイド部9A,9Bの各端部は、着脱部材6の摺動体(後述)が出し入れされる側で斜め方向に略円弧形状に曲げられ、この曲げ部分で挿入ガイド部10A,10Bを形成している。各々の挿入ガイド部10A,10Bは、支持板8から離れる方向に曲げられている。
【0017】
具体的な加工手順としては、筐体部材5の素材となる平らな板状部材に絞り加工によって突条ガイド部9A,9Bを形成した後、当該板状部材をコ字形に曲げ加工することにより、図例のような筐体部材5が得られる。
【0018】
着脱部材6は筐体部材5に着脱可能に取り付けられるものである。着脱部材6は、摺動体11とコントローラ収納部12とによって構成されている。摺動体11は、全体的に矩形の平らな板金(導電性材料)によって構成されている。ここで、上記所定の距離は、筐体部材5に対して着脱部材6の着脱を許容する距離に設定される。具体的には、摺動体11の厚み寸法(板厚)よりも大きな寸法で所定の距離が設定される。また、摺動体11は、上記筐体部材5の支持板8と略平行な向きで一対の遮蔽板7A,7Bの間に挿入されるとともに、その上下端が突条ガイド部9A,9Bに摺接する状態で図中矢印方向に摺動可能(スライド可能)に取り付けられるものである。
【0019】
コントローラ収納部12は、図示しないコントローラ基板を収納するものである。コントローラ基板は摺動体11の一主面に直に取り付けられ、このコントローラ基板を覆うようにコントローラ収納部12も摺動体11の一主面にネジ止め等で固定されている。また、コントローラ収納部12は、当該コントローラ収納部12を含む着脱部材6を筐体部材5に装着した状態で、筐体部材5の内部(一対の遮蔽板7A,7Bと支持板8によって囲まれる空間部)にコントローラ収納部12自身が収まる程度の大きさに形成されている。
【0020】
また、筐体部材5の支持板8には、着脱部材6の摺動体11を一対の突条ガイド部9A,9B側に押圧するための押圧部材13が設けられている。図3は押圧部材13の構成例を示す斜視図である。図示した押圧部材13は、板金を打ち抜き及び曲げ加工して得られるものである。押圧部材13は、左右一対の押圧片14A,14Bと上下一対の係止片15A,15Bとを一体に有する板バネ部材によって構成されている。一対の押圧片14A,14Bは、押圧部材13の略中央部に設けられた開口部16の両側に配置され、この開口部16で押圧部材13の厚み方向(板厚方向)に弾性変形可能に設けられている。また、一対の押圧片14A,14Bは、押圧部材13の厚み方向に突出する状態で略山形に形成されている。一対の係止片15A,15Bは、押圧部材13の厚み方向でかつ一対の押圧片14A,14Bとは反対方向に突出する状態で略L字形に形成されている。
【0021】
これに対して、筐体部材5の支持板8には、図4に示すように、上記押圧部材13を取り付けるための取付穴17が複数(図例では4つ)設けられている。取付穴17は、支持板8の各コーナー部の近傍に1つずつ設けられている。また、取付穴17は、段付きの穴形状をなし、その段付きの幅広側の上下端部に一対の係止片15A,15Bを係止することで支持板8に押圧部材13が装着される構成となっている。
【0022】
ここで、実際に筐体部材5の支持板8に押圧部材13を取り付けると、図5に示すように、支持板8の取付穴17が、当該取付穴17に装着された押圧部材13によって塞がれた状態となる。また、こうして押圧部材13を取り付けた状態では、図6に示すように、押圧部材13に設けられた一対の押圧片14A,14Bの突出端が、支持板8の厚み方向(図6の上下方向)で突条ガイド部9Bの側縁部に位置的に重なるように配置される。
【0023】
以上のように構成された筐体部材5に着脱部材6を装着する場合は、上記図2に示すような向きで着脱部材6の摺動体11を一対の突条ガイド部9A,9Bに摺接するように筐体部材5の内側に挿入する。このとき、各々の突条ガイド部9A,9Bの挿入ガイド部10A,10Bに摺動体11を突き当てて着脱部材6を押し込むことにより、摺動体11が挿入ガイド部10A,10Bに倣って突条ガイド部9A,9Bの側縁部に摺接した状態となり、さらにこの状態から着脱部材6を押し込むことにより、摺動体11が各々の突条ガイド部9A,9Bに倣って差し込まれる。図7(A),(B)に摺動体11と突条ガイド部9A,9Bの位置関係を示す。
【0024】
摺動体11を差し込む途中では、摺動体11の片面(コントローラ収納部12と反対側の面)に複数の押圧部材13が順に接触する。そして、筐体部材5の内部に着脱部材6が十分に押し込まれた状態では、複数の押圧部材13に設けられた一対の押圧片14A,14Bの弾性変形による反力(バネ圧)で摺動体11が突条ガイド部9A,9B側に押圧され、この押圧力によって着脱部材6が筐体部材6の内部に位置決めされた状態となる。この状態で着脱部材6の動きはある程度抑制されるものの、最終的にはネジ止め等によって着脱部材6が筐体部材5に固定される。また、図示はしないが、コントローラ収納部12に収納されたコントローラ基板のコネクタ端子は、装置本体側のコネクタ端子に電気的かつ機械的に接続された状態となる。
【0025】
また、筐体部材5から着脱部材6を取り外す場合は、筐体部材5に着脱部材6を固定しているネジ等を緩めた状態で、先程の取付時と逆方向に着脱部材6(摺動体11)を引き込む。これにより、着脱部材6の摺動体11は、複数の押圧部材13の押圧力を受けて突条ガイド部9A,9Bに摺接しつつ移動し、この移動によって筐体部材5から着脱部材6が完全に引き抜かれる。
【0026】
以上の実施形態においては、一対の遮蔽板7A,7Bに絞り加工で突条ガイド部9A,9Bを形成しているため、上記図2に示すようなボックス形状の筐体ユニット4であっても、筐体部材5の任意の位置に着脱部材6のガイド構造を形成することができる。また、筐体部材5の支持板8に設けた押圧部材13が摺動体11を押圧することで着脱部材6の取り付け位置が決まるため、着脱部材6の位置決めを容易に行うことができる。
【0027】
また、コントローラ収納部12の周囲が筐体部材5によって囲まれるため、コントローラ収納部12に収納された電子部品等の防塵性を確保することができる。また、筐体部材5、摺動体11及び押圧部材13をそれぞれ導電性材料(本例では板金)によって構成することにより、ノイズ放射抑制性能を向上させることができる。特に、支持板8の面内に複数の押圧部材13を均一に点在させることにより、摺動体11と支持板8とを複数の押圧部材13で電気的に接続し、筐体全体として均一な接地構造を実現することができる。
【0028】
さらに、筐体部材5の他の構成として、図8に示すように、遮蔽板7Bの面内に突条ガイド部9Bを広い面積で環状に形成することにより、遮蔽板7Bの面強度を向上させることができる。この点は遮蔽板7Aと突条ガイド部9Aの関係についても同様である。
【0029】
なお、上記実施形態においては、押圧手段となる押圧部材13を筐体部材5とは別部品で支持板8の取付穴17に装着するものとしたが、本発明はこれに限らず、支持板8と一体構造で押圧手段を形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明が適用される画像形成装置の構成例を示す側面概略図である。
【図2】本発明の実施形態で採用した筐体ユニットの構成を示す斜視図である。
【図3】押圧部材の構成例を示す斜視図である。
【図4】押圧部材を取り付ける前の筐体部材を示す図である。
【図5】押圧部材を取り付けた後の筐体部材を示す図である。
【図6】押圧部材と突条ガイド部の位置関係を示す図である。
【図7】摺動体と突条ガイド部の位置関係を示す図である。
【図8】筐体部材の他の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1…画像形成装置、4…筐体ユニット、5…筐体部材、6…着脱部材、7A,7B…遮蔽板、8…支持板、9A,9B…突条ガイド部、10A,10B…挿入ガイド部、11…摺動体、12…コントローラ収納部、13…押圧部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに略平行でかつ対向する状態に配置された一対の遮蔽板と、当該一対の遮蔽板を連結する支持板とを有する筐体部材と、
前記筐体部材に着脱可能に取り付けられる着脱部材とを備え、
前記一対の遮蔽板は、前記筐体部材の内部側に凸となる状態で各々の遮蔽板に絞り加工により形成された突条ガイド部を一体に有し、
前記着脱部材は、前記突条ガイド部に摺接する摺動体を有し、
前記支持板は、前記摺動体を前記突条ガイド部側に押圧する押圧手段を有する
ことを特徴とする筐体ユニット。
【請求項2】
前記摺動体が出し入れされる側において、前記突条ガイド部の端部を斜め方向に曲げて挿入ガイド部を形成してなる
ことを特徴とする請求項1記載の筐体ユニット。
【請求項3】
前記筐体部材、前記摺動体及び前記押圧手段を、それぞれ導電性材料によって構成してなる
ことを特徴とする請求項1記載の筐体ユニット。
【請求項4】
請求項1記載の筐体ユニットを備えることを特徴とする画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−72062(P2006−72062A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256562(P2004−256562)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】