説明

筐体機構

【課題】簡易な構造でいて変位性が高い筐体機構を提供する。
【解決手段】ピンが固定された第1筐体と、第1筐体に対向した対向面に、上記ピンが嵌る第1溝と第2溝と案内穴とがこの順で互いに繋がって設けられた第2筐体とを備え、その第1溝はそのピンをその対向面に沿った第1方向に案内するものであり、その第2溝はそのピンを、その対向面に沿った、第1方向とは異なる第2方向に案内するものであり、その案内穴はピンの回転を案内するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件開示は、筐体機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話機やPHS端末などに代表される携帯情報端末が広く普及している。この携帯情報端末は、電子機器の一種であって通話機能を有している。
【0003】
さらに携帯情報端末は、情報処理装置の一種でもあって、電子メール機能、デジタルカメラ機能、テレビ視聴機能、インターネット視聴機能、ゲーム機能などといった多種の機能を実行可能な装置である。そして、実際にそのような多種の機能を搭載した機種も存在する。
【0004】
携帯情報端末には、上述したような様々な機能を実行するためにユーザが操作する操作部が用意されている。また、携帯情報端末の形状としては、一般的には、使用頻度が高い通話機能における利便性を考慮した縦長形状が採用されている。
【0005】
近年では、液晶ディスプレイなどの表示画面の大型化が進む反面、携帯性の向上のために、携帯情報端末のコンパクト化が求められている。そのため、例えば、表示画面を有する上側筐体と操作部を有する下側筐体とをスライドさせてコンパクトにすることが可能なスライド式の携帯情報端末が知られている。また、上側筐体と下側筐体との間にヒンジを設け、折畳んでコンパクトにすることが可能な折畳み式の携帯情報端末も知られている。
【0006】
ところで、上述したような多種の機能が携帯情報端末で実行可能になるのに従って、一般的な操作子や端末形状では、操作性や視認性に不満が生じる機能も増えている。例えばデジタルカメラ機能やテレビ視聴機能では、縦長の表示画面について視認性に不満が生じる場合がある。また、電子メール機能やゲーム機能では、通話機能用の操作部について操作性に不満が生じる場合がある。
【0007】
このような現状に対し、上側筐体と下側筐体との相対位置を変更する自由度が高い装置構造が提案されている。このような相対位置を変更する自由度のことを以下では「変位性」と称する。変位性が高い装置構造の提案としては、例えば、スライド式の携帯電話機の表示画面を有する上側筐体を、操作部を有する下側筐体に対して回転させて、表示画面を横長配置にする構造が提案されている(特許文献1参照)。また、スライド式の携帯電話機の上側筐体を下側筐体に対して2方向にスライド可能とする構造も提案されている(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−260515号公報
【特許文献2】特表2009−535896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、携帯情報端末の多機能化はますます進む傾向にあり、しかもコンパクト化の要求も依然として存在している。このため、従来提案の技術で実現可能な変位性を越える高い変位性を実現可能な簡易な構造が強く求められている。
【0010】
上述した事情は、通話機能を有した機器に限定されない事情である。更には、操作部や表示画面も上述した事情の背景として必須ではなく、相対位置が変更可能な複数筐体で構成された電子機器であればどのような電子機器についても生じる事情である。
【0011】
上記事情に鑑み、本件開示は、簡易な構造でいて変位性が高い筐体機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する筐体機構は、第1筐体と第2筐体とを備えている。
【0013】
上記第1筐体は、ピンが固定されたものである。
【0014】
上記第2筐体は、第1筐体に対向した対向面に、ピンが嵌る、穴と第1溝と第2溝とがこの順で互いに繋がって設けられたものである。そして、第1溝はピンを上記対向面に沿った第1方向に案内するものである。第2溝はピンを、上記対向面に沿った、第1方向とは異なる第2方向に案内するものである。穴は、第1溝の幅よりも大きな幅を有しピンの回転を案内するものである。そして、ピンの上記対向面に平行な断面の最大外形寸法は、第1溝の幅及び第2溝の幅より大きい。
【発明の効果】
【0015】
本件開示によれば、簡易な構造でいて変位性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】情報処理装置の一例に相当する携帯電話機を示す図である。
【図2】携帯電話機の閉じ状態を示す図である。
【図3】携帯電話機の第1の開き状態を示す図である。
【図4】携帯電話機の第2の開き状態を示す図である。
【図5】携帯電話機の第3の開き状態を示す図である。
【図6】変位機構を示す分解構成図である。
【図7】閉じ状態から第1の開き状態への変位動作を説明する図である。
【図8】閉じ状態から第2の開き状態への変位動作を説明する図である。
【図9】第2の開き状態から第3の開き状態への変位動作を説明する図である。
【図10】第2の開き状態と第3の開き状態における上側筐体および下側筐体の相互位置を表す図である。
【図11】上側筐体内の電子部品とケーブルを示した図である。
【図12】下側筐体内の電子部品とケーブルを示した図である。
【図13】上側筐体と下側筐体との相対的な変位に伴うケーブルへの物理的負荷を説明する図である。
【図14】別実施形態におけるガイド構造等を示す図である。
【図15】別実施形態における、第2の開き状態と第3の開き状態における上側筐体および下側筐体の相互位置を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記説明した筐体機構に対する具体的な実施形態を、以下図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、情報処理装置の一例に相当する携帯電話機を示す図である。
【0019】
図1に示す携帯電話機100は、筐体機構の一実施形態を備えている。この携帯電話機100は、通話機能を有するほかに、電子メール機能、デジタルカメラ機能、テレビ視聴機能、インターネット視聴機能、ゲーム機能も有している。
【0020】
この携帯電話機100は、図1に示すように、表示画面111を有する上側筐体110と、第1操作部121および第2操作部122を有する下側筐体120とを備えている。下側筐体120は、上述した第1筐体の一例に相当する。また、上側筐体110は、上述した第2筐体の一例に相当する。上側筐体110と下側筐体120は、後で詳述する機構によって相互の位置を変更することができる。第2操作部122は、図1では全体の半分程度が見えているが、上側筐体110と下側筐体120との相互配置が別の配置になった場合には全体が見えることになる。上側筐体110が有している表示画面111は、上側筐体110の表面のうち、下側筐体120に対向している対向面とは逆の面に設けられている。一方、下側筐体120が有している第1操作部121および第2操作部122は、下側筐体120の表面のうち、上側筐体110に対向している面に設けられている。
【0021】
下側筐体120が有している第1操作部121も第2操作部122も、操作キーが配列された操作部である。第1操作部121は、通話機能における番号入力操作などに適したキー配列を有する。第2操作部122は、電子メール機能における文字入力操作などに適したキー配列を有する。
【0022】
以下の説明では、図1に示すXYZ座標軸が表す方向を、方向の統一基準として用いる。XYZ座標軸におけるX方向は横方向と称する。そして、X軸の矢印が示す向きを右と称するとともに、その向きの逆向きを左と称する。XYZ座標軸におけるY方向は縦方向と称する。そして、Y軸の矢印が示す向きを前と称するとともに、その向きの逆向きを後と称する。XYZ座標軸におけるZ方向は上下方向と称する。そして、Z軸の矢印が示す向きを上と称するとともに、その向きの逆向きを下と称する。
【0023】
携帯電話機100が備えている上側筐体110および下側筐体120は、いずれも直方体に近い形状となっており、いずれも長さより狭い幅と、幅より狭い厚さとを有している。また、上側筐体110および下側筐体120は、互いに同等な長さと互いに同等な幅とを有している。上側筐体110および下側筐体120の長さ方向は、上述したXYZ座標軸におけるY方向(即ち縦方向)である。また、上側筐体110および下側筐体120の幅方向は、上述したXYZ座標軸におけるX方向(即ち横方向)である。そして、上側筐体110および下側筐体120の厚さ方向は、上述したXYZ座標軸におけるZ方向(即ち上下方向)である。つまり、上側筐体110および下側筐体120は互いに厚さ方向に重なり合っていることとなる。
【0024】
上側筐体110および下側筐体120の相互位置変更(即ち変位)を可能とする機構の説明は後に回して、先に、上側筐体110および下側筐体120が取り得る相互位置について以下説明する。
【0025】
図2は、携帯電話機100の閉じ状態を示す図である。
【0026】
図2に示す閉じ状態は、携帯電話機100として見ると、長さ方向の寸法と幅方向の寸法の双方が最も小さくなった状態である。換言すると、上側筐体110および下側筐体120の相互位置としては、相互の重なりが最も大きい相互位置ということになる。この閉じ状態は、携帯電話機100の持ち運びに適した状態である。上述したように、上側筐体110および下側筐体120は、双方が、長さより狭い幅と、幅より狭い厚さとを有し、互いに、厚さ方向に重なり合ったものとなっている。このため、図2に示す閉じ状態でのコンパクト化が図られている。本実施形態では、この閉じ状態での一層のコンパクト化を図るために、上側筐体110および下側筐体120が、互いに同等な長さと互いに同等な幅とを有するものとなっている。
【0027】
この閉じ状態は、下側筐体120に設けられた上述した第1操作部121および第2操作部122を用いなくても実行可能な、通話履歴やインターネット上の情報等の閲覧、時間の確認などでも利用される。
【0028】
図3は、携帯電話機100の第1の開き状態を示す図である。
【0029】
図3に示す2つの状態のうち、左側に示された状態は上述した閉じ状態である。そして、図3に示す2つの状態のうち、右側に示された状態が第1の開き状態である。この第1の開き状態は、閉じ状態から上側筐体110が下側筐体120に対してX方向(横方向の右向き)にスライド移動した状態である。この第1の開き状態の携帯電話機100では、下側筐体120に設けられている第2操作部122の全体が露わになっている。第1の開き状態では、ユーザは、第2操作部122が横長になる方向に携帯電話機100を持つことで、パーソナルコンピュータにおけるキーボード操作に近い操作を行うことができる。そのため、電子メール機能で比較的長い文を作成する場合などは第1の開き状態が適している。
【0030】
図4は、携帯電話機100の第2の開き状態を示す図である。
【0031】
図4に示す2つの状態のうち、左側に示された状態は上述した閉じ状態である。そして、図4に示す2つの状態のうち、右側に示された状態が第2の開き状態である。この第2の開き状態は、閉じ状態から上側筐体110が下側筐体120に対してY方向(縦方向の前向き)にスライド移動した状態である。
【0032】
この第2の開き状態では、下側筐体120に設けられている第1操作部121の全体が露わになっている。また、携帯電話機100のY方向(長さ方向)の寸法は、この第2の開き状態の場合に最長となる。このため、第2の開き状態は通話機能に適している。
【0033】
図5は、携帯電話機100の第3の開き状態を示す図である。
【0034】
図5に示す3つの状態のうち、左端の状態は上述した第2の開き状態である。そして、図5に示す3つの状態のうち、右端の状態が第3の開き状態である。この第3の開き状態は、第2の開き状態から、図5で真ん中に示された状態を経て、上側筐体110が下側筐体120に対して反時計回りに90度回転移動した状態である。第3の開き状態では、下側筐体120が縦長であるのに対して上側筐体110の表示画面111は横長となっている。このため、第3の開き状態は、ユーザが片手で携帯電話機100を持ってテレビ視聴機能やデジタルカメラ機能を使う場合に適している。
【0035】
以上、図3〜図5を参照して説明したように、本実施形態の携帯電話機100では、上側筐体110は、下側筐体120に対して2方向へのスライド移動と回転移動が可能となっている。つまり、本実施形態の携帯電話機100は変位性が高いと言える。また、図3〜図5を参照して説明した移動の結果、上側筐体110および下側筐体120はいつも同じ面をお互いに向けあっていることとなる。より詳細には、下側筐体120の、第1操作部121および第2操作部122が設けられている面が上側筐体110に対向している。そして、上側筐体110の、表示画面111とは逆の面が下側筐体120に対向している。操作部や表示画面がこのような面に設けられていることにより、下側筐体120に対する上側筐体110の移動で色々な操作形態や表示形態が得られることになる。従って本実施形態の携帯電話機100は色々な機能に対する使い勝手がよい。
【0036】
ところで、本実施形態では、携帯電話機100の各状態が適している機能を実現するアプリケーションを自動的に起動させる工夫が施されている。本実施形態の携帯電話機100には、下側筐体120に対する上側筐体110の位置を検出するセンサが備えられている。このセンサは本実施形態では特に特定しないが、例えば、下側筐体110と上側筐体120の一方に設けられたホールセンサやリードスイッチと、他方に設けられた磁石との組み合わせを採用することができる。携帯電話機100は、このようなセンサで上側筐体110の位置を検出した検出結果を用いて、携帯電話機100が上述した各状態のいずれの状態にあるのかを確認することができる。そして、携帯電話機100は、確認した状態に適した機能を実現するアプリケーションを起動する。ここで、携帯電話機100が起動するアプリケーションについては、各状態において頻繁に使用されると考えられるアプリケーションをメーカなどが予め設定しておいても良い。あるいは、そのようなアプリケーションは、ユーザが自由に設定できるものであってもよい。
【0037】
各状態に対する機能の割り振りとしては、例えば、上記第1の開き状態にはメール作成機能が割り振られ、上記第2の開き状態には通話機能が割り振られ、上記第3の開き状態にはデジタルカメラ機能やテレビ視聴機能が割り振られる割り振りが考えられる。このような割り振りと上述した自動的な起動によって、ユーザが携帯電話機100を変形(変位)させる度に、割り振られた機能が実現する。この結果、本実施形態の携帯電話機100は、ユーザの使い勝手が良好な携帯電話機となっている。
【0038】
以下、上述した各状態を実現するための、上側筐体110および下側筐体120の相互変位を可能とする変位機構について説明する。
【0039】
図6は、変位機構を示す分解構成図である。
【0040】
携帯電話機100には、上側筐体110および下側筐体120の相互変位を可能とする変位機構が組み込まれている。この変位機構が、上述した筐体機構の一実施形態に相当する。上述したように、下側筐体120には、第1操作部121と第2操作部122が設けられている。そして、これらの操作部が設けられた面上には、固定板131が固定される固定部125も設けられている。そして、固定板131には下部フランジ132およびガイドピン133が一体化されている。ガイドピン133は角がやや丸まった略四角柱の形状を有している。そして、このガイドピン133の断面形状は長方形に近い、角がやや丸まった形状をしている。即ち、この断面形状は、互いに平行な1組の短辺と、互いに平行な1組の長辺とを有しているとともに、短辺と長辺とが互いに直交している。このガイドピン133は、下側筐体120に対してZ方向(上下方向)の上向きに突出している。ガイドピン133の断面形状の長方形はY方向(即ち縦方向)に長くX方向(即ち横方向)に短い。
【0041】
変位機構は、上側筐体110の筐体壁に組み込まれたガイド板136を備えている。このガイド板136には、ガイドピン133が嵌るガイド137が設けられている。このガイド137は、ガイド穴137cと第1ガイド溝137aと第2ガイド溝137bとがこの順で連通したL字形状のものである。上側筐体110内には、ガイド137から内部が見えてしまうのを隠すために遮蔽板112が設けられている。上側筐体110内で表示画面111の表示処理などを担っている基板113は遮蔽板112より内側に配備されている。この基板113は、電子部品の一例に相当すると共に、情報を処理する処理回路の一例にも相当する。遮蔽板112にはケーブル穴112aが空いているが、このケーブル穴112aには、後で説明するケーブルが通る。
【0042】
第1ガイド溝137aはY方向(即ち縦方向)に延びた溝である。この第1ガイド溝137aの間隔は、ガイドピン133の断面形状の長方形におけるX方向(即ち横方向)の幅が収まるがガイドピン133の回転はできない程度の間隔となっている。従って第1ガイド溝137aはガイドピン133をY方向(即ち縦方向)に平行に案内する。
【0043】
第2ガイド溝137bはX方向(即ち横方向)に延びた溝である。この第2ガイド溝137bの間隔は、ガイドピン133の断面形状の長方形におけるY方向(即ち縦方向)の幅が収まるがガイドピン133の回転はできない程度の間隔となっている。従って第2ガイド溝137bはガイドピン133をX方向(即ち横方向)に平行に案内する。
【0044】
つまり、ガイド137には、ガイドピン133を上側筐体110の長さ方向に案内する第1ガイド溝137aと、ガイドピン133を上側筐体110の幅方向に案内する第2ガイド溝137bが設けられていることになる。このようなガイド溝が設けられていることにより、本実施形態の携帯電話機100は、操作性が大きく異なる上記第1の開き状態および上記第2の開き状態を実現することができる。
【0045】
ガイド穴137cは円形の穴である。このガイド穴137cは、ガイドピン133の断面形状の長方形における対角方向の長さ(対角長)がちょうど収まる直径を有している。従って、このガイド穴137cは、ガイドピン133の回転を案内する。
【0046】
ガイド137に対するガイドピン133の形状をまとめると次のようになる。
【0047】
ガイドピン133は、略四角柱の形状を有し、第1ガイド溝137aおよび第2ガイド溝137bの溝幅よりも大きく、ガイド穴137c内に収まる対角長を有することとなる。このような形状のガイドピン133が採用されていることにより、本実施形態では、変位機構の構造が簡素で、かつ、ガイド137はガイドピン133をスムーズに案内することができる。
【0048】
ガイドピン133の先端には、ガイドピン133がガイド137の第1ガイド溝137a、第2ガイド溝137b、およびガイド穴137cから抜けるのを防止するために上部フランジ134が固定されている。つまり、ガイド板136は下部フランジ132と上部フランジ134とに挟まれていることになるが、ガイドピン133がガイド137に沿って移動するのを妨げない程度に隙間が空いている。このようなフランジ(特に上部フランジ134)により、変位機構は簡易かつ丈夫な構造となっている。
【0049】
ガイド板136と固定板131との間にはテンションバネ135が設けられている。このテンションバネ135はねじりコイルバネとなっていて両端が広がる方向のテンション(付勢力)を生む。テンションバネ135の一端はガイド板136に固定され他端は固定板131に固定されている。そして、このテンションバネ135が生んだテンションはガイド板136および固定板131を介して上側筐体110および下側筐体120に伝わる。その結果テンションバネ135は上側筐体110および下側筐体120を相対的に付勢している。
【0050】
なお、ここの例ではテンションバネ135としてねじりコイルバネが採用されているが、圧縮コイルバネや圧縮ゴムなどといった他の付勢手段をテンションバネ135に替えて採用することもできる。
【0051】
本実施形態では、下は固定板131から上は上部フランジ134までがモジュール化されている。そして、このモジュール化された部分が上側筐体110および下側筐体120に取り付けられることで携帯電話機100が容易に組み立てられる。なお、そのようなモジュール化を採用せずに、ガイド板136および固定板131が上側筐体110および下側筐体120と一体に形成された構造を採用することもできる。
【0052】
以上説明した変位機構による変位動作について以下詳細に説明する。なお、以下の説明で参照する図では、説明の便宜上、上側筐体110の表示画面111等を取り除いて機構部が見える状態での図示となっている。また、変位動作による上側筐体110と下側筐体120との移動は相対的な移動であるが、説明の便宜上、下側筐体120が固定で上側筐体110が移動するものとして説明する。但し、ガイドピン133とガイド137については、逆に、ガイド137に対してガイドピン133が移動するものとして説明する。
【0053】
図7は、閉じ状態から第1の開き状態への変位動作を説明する図である。
【0054】
図7には、図3と同様に、左側に閉じ状態が示されていると共に、右側に第1の開き状態が示されている。閉じ状態では、ガイドピン133は、第1ガイド溝137aと第2ガイド溝137bとが繋がった交点に位置している。この時、ガイドピン133は、互いに直交する2辺で、第1ガイド溝137aおよび第2ガイド溝137bに接している。また、テンションバネ135は、下側筐体120側に固定された第1バネ端135aと、上側筐体110側に固定された第2バネ端135bとを押し広げる。その結果、上側筐体110は下側筐体120およびガイドピン133に対し、左向きかつ後向き(図7の左下方向)に付勢される。そのような付勢により、ガイドピン133の上述した2辺は第1ガイド溝137aおよび第2ガイド溝137bに押し付けられる。その結果、上側筐体110と下側筐体120との相互位置が付勢力で保持されることとなる。上述したように上側筐体110および下側筐体120は互いに同等な長さと互いに同等な幅とを有している。そして、ガイドピン133が上記交点に位置している場合に上側筐体110および下側筐体120は長さ方向と幅方向とに互いの位置が揃う。従って、ガイドピン133が上記交点に位置している閉じ状態では携帯電話機100全体としての縦横寸法は最小となる。また、後述するように、この閉じ状態を起点として縦方向および横方向のそれぞれに、第1ガイド溝137aと第2ガイド溝137bとを最大限に利用した変位が可能となる。
【0055】
閉じ状態から上側筐体110に横方向の右向きの力が加えられると上側筐体110は右向きにスライド移動する。このときガイドピン133は第2ガイド溝137bに案内されて横方向の左向きに平行移動する。この結果、テンションバネ135の第1バネ端135aと第2バネ端135bとの距離は縮められることになる。つまり、閉じ状態からの変位開始時にはテンションバネ135の付勢力に打ち勝つ力が必要である。閉じ状態からの変位の結果、ガイドピン133が第2ガイド溝137bの概ね1/2まで到達すると、テンションバネ135の第1バネ端135aと第2バネ端135bとの距離は最小となる。その後はテンションバネ135の付勢力は、ガイドピン133を第2ガイド溝137bに沿って更に移動させる方向に働く。つまり、閉じ状態から上側筐体110がユーザの力である程度変位させられると、その後はテンションバネ135の付勢力で第1の開き状態まで変位することとなる。テンションバネ135の付勢力は、この第1の開き状態では、上側筐体110を下側筐体120およびガイドピン133に対し、右向きかつ後向き(図7の右下方向)に付勢する。このため、テンションバネ135の付勢力によってガイドピン133が第2ガイド溝137bの左端に押し付けられて第1の開き状態が保持されることとなる。
【0056】
以上説明したテンションバネ135の働きは、閉じ状態でテンションバネ135の第1バネ端135aが第2バネ端135bに対して右側に第2ガイド溝137bの概ね1/2だけずれた位置に固定されているために生じる。
【0057】
図8は、閉じ状態から第2の開き状態への変位動作を説明する図である。
【0058】
図8には、図4と同様に、左側に閉じ状態が示されていると共に、右側に第2の開き状態が示されている。上述したように、閉じ状態では、ガイドピン133は、第1ガイド溝137aと第2ガイド溝137bとが繋がった交点に位置している。
【0059】
閉じ状態から上側筐体110に縦方向の前向き(図8の上向き)の力が加えられると上側筐体110は前向きにスライド移動する。このときガイドピン133は第1ガイド溝137aに案内されて縦方向の後ろ向きに平行移動する。この結果、テンションバネ135の第1バネ端135aと第2バネ端135bとの距離は縮められることになる。つまり、ここでも、閉じ状態からの変位開始時にはテンションバネ135の付勢力に打ち勝つ力が必要である。閉じ状態からの変位の結果、ガイドピン133が第1ガイド溝137aの概ね1/2まで到達すると、テンションバネ135の第1バネ端135aと第2バネ端135bとの距離は最小となる。その後はテンションバネ135の付勢力は、ガイドピン133を第1ガイド溝137aに沿って更に移動させる方向に働く。つまり、閉じ状態から上側筐体110がユーザの力である程度変位させられると、その後はテンションバネ135の付勢力で第2の開き状態まで変位することとなる。テンションバネ135の付勢力は、この第2の開き状態では、上側筐体110を下側筐体120およびガイドピン133に対し、左向きかつ前向き(図8の左上方向)に付勢する。このため、テンションバネ135の付勢力によってガイドピン133が第1ガイド溝137aの後端に繋がったガイド穴137cに押し付けられる。上述したようにガイド穴137cは、ガイドピン133の断面形状の長方形における対角方向の長さ(対角長)がちょうど収まる直径を有している。そして、このガイド穴137cは、ガイドピン133の回転を案内するものである。本実施形態ではテンションバネ135の付勢力は、上側筐体110を下側筐体120に対し、ガイドピン133を中心として右回りに回転させる方向に付勢する。しかし、このような付勢によって上側筐体110が回転移動しないように、上側筐体110内のガイド穴137cの横にはストッパ114が設けられている。このストッパ114に上部フランジ134の第1の角134aが当たることで上側筐体110の回転が止められている。このような構造により、テンションバネ135の付勢力によって第2の開き状態が保持されることとなる。
【0060】
図8を参照して説明したテンションバネ135の働きは、閉じ状態でテンションバネ135の第1バネ端135aが第2バネ端135bに対して前側(図8の上側)に第1ガイド溝137aの概ね1/2だけずれた位置に固定されているために生じる。
【0061】
図7,8で説明したテンションバネ135の働きは、即ち、上側筐体110と下側筐体120とを相対的に付勢することでガイドピン133を第1ガイド溝137aおよび第2ガイド溝137bそれぞれの途中位置から端へと移動させる付勢部材の働きである。このような付勢部材が備えられていることで、閉じ状態、第1の開き状態、および第2の開き状態それぞれが付勢力で保持される。また、それら3つの状態のうちの1つの状態から別の1つの状態への変位も付勢力によってアシストされる。
【0062】
図9は、第2の開き状態から第3の開き状態への変位動作を説明する図である。
【0063】
図9には、図5と同様に、左端に第2の開き状態、右端に第3の開き状態、そして中間に第2の開き状態から第3の開き状態に至る途中の状態が示されている。
【0064】
上述したように、第2の開き状態では、ガイドピン133は第1ガイド溝137aの後端に繋がったガイド穴137cに押し付けられている。第2の開き状態から上側筐体110に左回転の力が加えられると上側筐体110は左回りに回転移動する。このときガイドピン133はガイド穴137cに案内されて右回りに回転移動する。この結果、テンションバネ135の第1バネ端135aと第2バネ端135bとの距離は縮められることになる。つまり、第2の開き状態からの変位開始時にも、テンションバネ135の付勢力に打ち勝つ力が必要である。第2の開き状態からの変位の結果、ガイドピン133がガイド穴137cに沿って90度回転すると第3の開き状態に達する。上部フランジ134の第2の角134bは、この第3の開き状態でストッパ114に当たっている。これにより、第3の開き状態から更に上側筐体110が左回りに回転移動することが防がれている。テンションバネ135の第1バネ端135aと第2バネ端135bとの距離は第2の開き状態から第3の開き状態に達する前の途中位置で最小となる。その後はテンションバネ135の付勢力は、ガイドピン133をガイド穴137cに沿って更に回転移動させる方向に働く。つまり、第2の開き状態から上側筐体110がユーザの力である程度変位させられると、その後はテンションバネ135の付勢力で第3の開き状態まで変位することとなる。テンションバネ135の付勢力は、この第3の開き状態では、上側筐体110を下側筐体120に対し、ガイドピン133を中心に左回りに回転させる方向に付勢する。このため、テンションバネ135の付勢力によって上部フランジ134の第2の角134bはストッパ114に押し付けられる。この結果、テンションバネ135の付勢力によって第3の開き状態が保持されることとなる。
【0065】
図9を参照して説明したテンションバネ135の働きは、第2の開き状態でテンションバネ135の第1バネ端135aが第2バネ端135bに対し、ガイドピン133を中心として左回りに鋭角にずれている位置に固定されているために生じる。なお、このずれの角度が概ね45度であると、第2の開き状態と第3の開き状態とのほぼ中間で付勢方向が反転することとなる。
【0066】
図9で説明したテンションバネ135の働きは、即ち、上側筐体110と下側筐体120とを相対的に付勢することでガイドピン133を、ガイド穴137cに案内される回転の途中位置から回転端へと移動させる付勢部材の働きである。このような付勢部材が備えられていることで、第2の開き状態および第3の開き状態それぞれが付勢力で保持される。また、それら2つの状態のうちの一方から他方への変位も付勢力によってアシストされる。
【0067】
このような変位機構により、本実施形態の携帯電話機100は、高い変位性を有している。その結果、携帯電話機100が有する各種の機能それぞれに適した変位状態を実現することができる。つまり、本実施形態の携帯電話機100は各種機能の使い勝手がよい。
【0068】
ところで、本実施形態では、第2の開き状態における上側筐体110および下側筐体120の相互位置と、第3の開き状態における上側筐体110および下側筐体120の相互位置とが、以下説明する関係となっている。
【0069】
図10は、第2の開き状態と第3の開き状態における上側筐体110および下側筐体120の相互位置を表す図である。
【0070】
図10の左には第2の開き状態が示されていて右には第3の開き状態が示されている。
【0071】
第2の開き状態と第3の開き状態とで、上側筐体110から下側筐体120が後ろ側(図10の下側)にはみ出した長さが等しくなっている。このような相互位置は、携帯電話機100の操作性から望ましい相互位置である。また、第3の開き状態では、上側筐体110が下側筐体120から左右それぞれにはみ出した長さA,Bが互いに等しくなっている。このような相互位置は、携帯電話機100を持つときのバランスから望ましい相互位置である。これら2つの相互位置をいずれも満足させるためには、第2の開き状態から第3の開き状態への回転移動における回転中心が特定位置に存在する必要がある。
【0072】
その特定位置は、第3の開き状態では上側筐体110の右後ろに位置するポイントP1が、第2の開き状態では、第3の開き状態における上側筐体110と下側筐体120との交点となっているポイントP2に重なるという条件から一意に求められる。即ち、第3の開き状態におけるポイントP1から左前方45°に延びる線と、ポイントP2から右前方45°に延びる線との交点がその特定位置である。そして、ガイド穴137cおよびガイドピン133はその特定位置が中心となるように設けられている。
【0073】
次に、上側筐体110内の電子部品と下側筐体120内の電子部品とを電気的に繋ぐケーブルについて説明する。
【0074】
図11は、上側筐体110内の電子部品とケーブルを示した図である。また、図12は、下側筐体120内の電子部品とケーブルを示した図である。なお、図11では、図示の便宜上、上述した遮蔽板112は省略されている。また、図12には、下側筐体120の内部を、操作部が設けられている上面の裏側から見た状態が示されている。
【0075】
図11に示す基板113は、上述したように、上側筐体110が有する表示画面111の表示処理などを担っている。また、図12に示す基板123は、下側筐体120が有する第1操作部121および第2操作部122を介した情報入力の処理などを担っている。図11および図12には、各基板113,123に、各コネクタ115,124を介して電気的かつ物理的に接続されたケーブル138が示されている。ケーブル138は、上側筐体110の基板113のコネクタ115の近くで、遮蔽板112のケーブル穴112a(図6参照)を通っている。また、このケーブル138は、上側筐体110から下側筐体120まで貫通した貫通孔139内を通っている。この貫通孔139は、上述した変位機構の固定板131、下部フランジ132、ガイドピン133、および上部フランジ134を貫通している。そして、貫通孔139が貫通している位置は、ガイドピン133および各フランジの中央部である。このような貫通孔139をケーブル138が通っていることにより、以下説明するように、上側筐体110と下側筐体120との相対的な変位に伴うケーブル138への物理的負荷は小さい。
【0076】
図13は、上側筐体110と下側筐体120との相対的な変位に伴うケーブル138への物理的負荷を説明する図である。
【0077】
図13には、上記説明した、閉じ状態、第1の開き状態、第2の開き状態、および第3の開き状態という4つの状態が示されている。これら4つの状態それぞれに携帯電話機100が変位した場合であっても、図13に示すように、ケーブル138は変位に十分に追随することができる。このように、ガイドピン133等を貫通した貫通孔139をケーブル138が通っていることで、変位に伴うケーブル138への物理的負荷は小さくなっている。このため、ケーブル138による接続の信頼性は高いので、携帯電話機100の耐久性も高い。
【0078】
以上説明した実施形態とはガイドの構造やガイドピンの固定箇所が異なる別実施形態について以下説明する。この別実施形態は、ガイドの構造やガイドピンの固定箇所を除く他の要素については上述した実施形態が有する要素と同様の要素を備えた実施形態であるので、以下では重複説明は省略してガイドの構造やガイドピンに着目した説明を行う。
【0079】
図14は、別実施形態におけるガイド構造等を示す図である。
【0080】
図14に示す別実施形態の携帯電話機200も、上側筐体210は下側筐体120に対し、上述した閉じ状態、第2の開き状態、および第3の開き状態に相当する各状態に変位することができるので、この別実施形態の説明でも同じ状態名を用いて説明する。即ち、図14の左端には第3の開き状態が示されている。また図14の央部下方には閉じ状態、央部上方には第2の開き状態がそれぞれ示されている。更に、図14の右端には、図6に示す実施形態では生じない新たな第4の開き状態が示されている。そして、閉じ状態と第3の開き状態との間には中間的な状態が示されている。この中間的な状態も、図6に示す実施形態では生じない状態である。
【0081】
図14に示す別実施形態でもガイドピン201の形状は図6に示す実施形態のガイドピン133の形状と同様であるが、別実施形態での下側筐体120に対するガイドピン201の固定位置は、図6に示す実施形態での固定位置とは異なっている。また、別実施形態のガイド202は、図6に示す実施形態のガイド137と同様に、ガイド穴202cと第1ガイド溝202aと第2ガイド溝202bとがこの順で連通したものである。各ガイド溝が延びた方向や、ガイド溝やガイド穴の寸法なども、図14に示す別実施形態と図6に示す実施形態とで同様となっている。しかし、図6に示す実施形態のガイド137がL字形状のものであるのに対して別実施形態のガイド202は逆L字形状のものとなっている。即ち、第1ガイド溝202aは、第2ガイド溝202bとの交点から縦方向の前方へと延びている。また、ガイド穴202cは第1ガイド溝202aの前端側(図14の上側)に位置している。
【0082】
このような構造の違いにより、図14に示す別実施形態の場合は、閉じ状態でガイドピン201が、第1ガイド溝202aの前端に繋がったガイド穴202cに押し付けられている。つまりこの別実施形態では、上側筐体210と下側筐体120は、ガイドピン201が第1ガイド溝202aに案内されてガイド穴202cに達した場合に、長さ方向と幅方向とに互いの位置が揃う。このため別実施形態の場合は、上述した第4の開き状態が実現できる。
【0083】
ガイド穴202cは、ガイドピン201の回転を案内するものである。また、図14に示す別実施形態ではテンションバネ203の付勢力は、上側筐体210を下側筐体120に対し、ガイドピン201を中心として左回りに回転させる方向に付勢する。しかし、このような付勢によって上側筐体210が回転移動しないように、上側筐体210内のガイド穴202cの横にはストッパ204が設けられている。このような構造により、テンションバネ203の付勢力によって閉じ状態が保持されることとなる。
【0084】
閉じ状態から上側筐体210に縦方向の前向き(図14の上向き)の力が加えられると上側筐体210は前向きにスライド移動する。このときガイドピン201は第1ガイド溝202aに案内されて縦方向の後ろ向きに平行移動する。この結果、テンションバネ203の第1バネ端203aと第2バネ端203bとの距離は縮められることになる。つまり、閉じ状態からの変位開始時にはテンションバネ203の付勢力に打ち勝つ力が必要である。閉じ状態からの変位の結果、ガイドピン201が第1ガイド溝202aの概ね1/2まで到達すると、テンションバネ203の第1バネ端203aと第2バネ端203bとの距離は最小となる。その後はテンションバネ203の付勢力は、ガイドピン201を第1ガイド溝202aに沿って更に移動させる方向に働く。つまり、この別実施形態でも、閉じ状態から上側筐体210がユーザの力である程度変位させられると、その後はテンションバネ203の付勢力で第2の開き状態まで変位することとなる。テンションバネ203の付勢力は、この第2の開き状態では、上側筐体210を下側筐体120およびガイドピン201に対し、左向きかつ前向き(図14の左上方向)に付勢する。このため、テンションバネ203の付勢力によってガイドピン201は、第1ガイド溝202aと第2ガイド溝202bとが繋がった交点に保持される。そして、ガイドピン201の互いに直交する2辺はその付勢力で第1ガイド溝202aおよび第2ガイド溝202bに押し付けられる。その結果、テンションバネ203の付勢力は第2の開き状態を保持することとなる。
【0085】
閉じ状態から第2の開き状態に至るまでのテンションバネ203の働きは、閉じ状態でテンションバネ203の第1バネ端203aが第2バネ端203bに対して後側(図14の下側)に第1ガイド溝202aの概ね1/2だけずれた位置に固定されているために生じる。
【0086】
第2の開き状態から上側筐体210に横方向の右向きの力が加えられると上側筐体210は右向きにスライド移動する。このときガイドピン201は第2ガイド溝202bに案内されて横方向の左向きに平行移動する。この結果、テンションバネ203の第1バネ端203aと第2バネ端203bとの距離は縮められることになる。つまり、第2の開き状態からの変位開始時にもテンションバネ203の付勢力に打ち勝つ力が必要である。第2の開き状態からの変位の結果、ガイドピン201が第2ガイド溝202bの概ね1/2まで到達すると、テンションバネ203の第1バネ端203aと第2バネ端203bとの距離は最小となる。その後はテンションバネ203の付勢力は、ガイドピン201を第2ガイド溝202bに沿って更に移動させる方向に働く。つまり、第2の開き状態から上側筐体210がユーザの力である程度変位させられると、その後はテンションバネ203の付勢力で第4の開き状態まで変位することとなる。テンションバネ203の付勢力は、この第4の開き状態では、上側筐体210を下側筐体120およびガイドピン201に対し、右向きかつ前向き(図14の右上方向)に付勢する。このため、テンションバネ203の付勢力によってガイドピン201が第2ガイド溝202bの左端に押し付けられて第4の開き状態が保持されることとなる。
【0087】
この第4の開き状態では、下側筐体120に設けられている第1操作部121および第2操作部122の双方の全体が露わになっている。このため第4の開き状態では、パーソナルコンピュータにおけるキーボードおよびテンキーの操作に近い操作を行うことができる。つまり、第4の開き状態は、複雑なキー操作を伴うような機能にも対応可能な状態である。
【0088】
第2の開き状態から第4の開き状態に至るまでのテンションバネ203の働きは第2の開き状態でテンションバネ203の第1バネ端203aが第2バネ端203bに対して左側に第2ガイド溝202bの概ね1/2だけずれた位置に固定されているために生じる。
【0089】
ここまで説明したテンションバネ203の働きも、即ち、上側筐体210と下側筐体120とを相対的に付勢することでガイドピン201を第1ガイド溝202aおよび第2ガイド溝202bそれぞれの途中位置から端へと移動させる付勢部材の働きである。このような付勢部材が備えられていることで、閉じ状態、第2の開き状態、および第4の開き状態それぞれが付勢力で保持される。また、それら3つの状態のうちの1つの状態から別の1つの状態への変位も付勢力によってアシストされる。
【0090】
ところで、上述した閉じ状態から上側筐体210に右回転の力が加えられると上側筐体210は右回りに回転移動する。このときガイドピン201はガイド穴202cに案内されて左回りに回転移動する。この結果、テンションバネ203の第1バネ端203aと第2バネ端203bとの距離は縮められることになる。つまり、ここでも、閉じ状態からの変位開始時には、テンションバネ203の付勢力に打ち勝つ力が必要である。閉じ状態からの回転変位の結果、ガイドピン201がガイド穴202cに沿って90度回転すると第3の開き状態に達する。ストッパ204は、第3の開き状態から更に上側筐体210が右回りに回転移動することを防いでいる。テンションバネ203の第1バネ端203aと第2バネ端203bとの距離は閉じ状態から第3の開き状態に至る概ね中間で最小となる。その後はテンションバネ203の付勢力は、ガイドピン201をガイド穴202cに沿って更に回転移動させる方向に働く。つまり、閉じ状態から上側筐体210がユーザの力である程度回転させられると、その後はテンションバネ203の付勢力で第3の開き状態まで変位することとなる。テンションバネ203の付勢力は、この第3の開き状態では、上側筐体210を下側筐体120に対し、ガイドピン201を中心に右回りに回転させる方向に付勢する。このため、テンションバネ203の付勢力によって上部フランジはストッパ204に押し付けられる。この結果、テンションバネ203の付勢力によって第3の開き状態が保持されることとなる。
【0091】
閉じ状態から第3の開き状態に至るまでのテンションバネ203の働きは、閉じ状態でテンションバネ203の第1バネ端203aが第2バネ端203bに対し、ガイドピン201を中心として左回りに概ね45度ずれた位置に固定されているために生じる。
【0092】
閉じ状態から第3の開き状態に至るまでのテンションバネ135の働きは、即ち、上側筐体210と下側筐体120とを相対的に付勢することでガイドピン201を、ガイド穴202cに案内される回転の途中位置から回転端へと移動させる付勢部材の働きである。このような付勢部材が備えられていることで、閉じ状態および第3の開き状態それぞれが付勢力で保持される。また、それら2つの状態のうちの一方から他方への変位も付勢力によってアシストされる。
【0093】
以上説明したように、別実施形態の携帯電話機200も、高い変位性を有している。その結果、携帯電話機200が有する各種の機能それぞれに適した変位状態を実現することができる。つまり、この別実施形態の携帯電話機200も各種機能の使い勝手がよい。
【0094】
この別実施形態でも、第2の開き状態における上側筐体210および下側筐体120の相互位置と、第3の開き状態における上側筐体210および下側筐体120の相互位置とは、図10で説明した関係と同様な関係になっている。但し、その関係を実現するためのガイド穴202cやガイドピン201などの位置については図10で説明した特定位置とは異なる位置になる。
【0095】
図15は、別実施形態における、第2の開き状態と第3の開き状態における上側筐体210および下側筐体120の相互位置を表す図である。
【0096】
図15の左には第2の開き状態が示されていて右には第3の開き状態が示されている。
【0097】
第2の開き状態と第3の開き状態とで、上側筐体210から下側筐体120が後ろ側(図15の下側)にはみ出した長さが等しくなっている。このような第1の相互位置は、携帯電話機200の操作性から望ましい相互位置である。また、第3の開き状態では、上側筐体210が下側筐体120から左右それぞれにはみ出した長さA,Bが互いに等しくなっている。このような第2の相互位置は、携帯電話機200を持つときのバランスから望ましい相互位置である。
【0098】
この別実施形態の場合には、上記第2の相互位置を満足させるためには、閉じ状態から第3の開き状態への回転移動における回転中心が以下説明する位置に存在すればよい。
【0099】
この別実施形態の場合にも、回転中心の位置を決めるために2つのポイントP3,P4を基準とする。1つめのポイントP3は、第3の開き状態における上側筐体210の左端の延長線と下側筐体120の後端の延長線との交点である。また、2つめのポイントP4は、第3の開き状態における上側筐体210と下側筐体120との交点である。回転中心は、ポイントP3から右前方45°に延びる線とポイントP4から左前方45°に延びる線との交点に存在すればよい。この回転中心の位置が、即ちガイド穴202cおよびガイドピン201の中心位置である。
【0100】
一方、第2の開き状態で上側筐体210から下側筐体120が後ろ側にはみ出す長さは第1ガイド溝202aの長さで決まる。このため、この別実施形態では、第1ガイド溝202aの長さは、第3の開き状態で上側筐体210から下側筐体120が後ろ側(図15の下側)にはみ出した長さに依存した、上記第1の相互位置を満たす長さとなっている。
【0101】
以下、上述した形態を含む種々の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0102】
(付記1)
ピンが固定された第1筐体と、
第1筐体に対向した対向面に、前記ピンが嵌る穴と第1溝と第2溝とがこの順で互いに繋がって設けられた第2筐体とを備え、
該第1溝は該ピンを該対向面に沿った第1方向に案内するものであり、該第2溝は該ピンを、該対向面に沿った、該第1方向とは異なる第2方向に案内するものであり、、該穴は、該ピンの回転を案内するものであり、前記ピンの前記対向面に平行な断面の最大外形寸法は、前記第1溝の幅及び前記第2溝の幅より大きいことを特徴とする筐体機構。
【0103】
(付記2)
前記ピンが、略四角柱の形状を有し、前記第1及び第2の溝幅より大きく、前記穴内に収まる対角長を有するものであることを特徴とする付記1記載の筐体機構。
【0104】
(付記3)
前記ピンの先に設けられ、前記第1溝、前記第2溝、および前記穴からの該ピンの抜けを防ぐフランジを備えたことを特徴とする付記1または2記載の筐体機構。
【0105】
(付記4)
前記第1筐体と前記第2筐体の双方が、内部に電子部品を収納するものであり、
前記ピンが、前記第1筐体から前記第2筐体まで貫通した、該第1筐体内の電子部品と該第2筐体内の電子部品とを電気的に接続する接続配線を通す貫通穴が空いたものであることを特徴とする付記1から3のうちいずれか1項記載の筐体機構。
【0106】
(付記5)
前記第1筐体と前記第2筐体は、双方が、長さより狭い幅と、幅より狭い厚さとを有し、互いに、厚さ方向に重なり合ったものであることを特徴とする付記1から4のうちいずれか1項記載の筐体機構。
【0107】
(付記6)
前記第1溝は、前記ピンを前記第2筐体の長さ方向に案内する溝であり、
前記第2溝は、前記ピンを前記第2筐体の幅方向に案内する溝であることを特徴とする付記5記載の筐体機構。
【0108】
(付記7)
前記第1筐体と前記第2筐体は、互いに同等な長さと互いに同等な幅とを有し、前記ピンが前記第1溝と前記第2溝とが繋がった箇所にある場合に、長さ方向と幅方向とに互いの位置が揃うものであることを特徴とする付記6記載の筐体機構。
【0109】
(付記8)
前記穴は、前記ピンが前記第1溝に案内されて該穴に達した第1の位置と、該第1の位置から該ピンが90度回転した第2の位置とで、前記第2筐体から前記第1筐体が長さ方向にはみ出した長さが互いに同等になるとともに、該第2の位置では、該第1筐体から該第2筐体が幅方向にはみ出した長さが左右それぞれで同等になる箇所に設けられたものであることを特徴とする付記7記載の筐体機構。
【0110】
(付記9)
前記第1筐体と前記第2筐体は、互いに同等な長さと互いに同等な幅とを有し、前記ピンが前記第1溝に案内されて前記穴に達した場合に、長さ方向と幅方向とに互いの位置が揃うものであることを特徴とする付記6記載の筐体機構。
【0111】
(付記10)
前記穴は、前記ピンが前記第1溝に案内されて該穴に達した第3の位置から更に該ピンが90度回転した第4の位置で、前記第1筐体から前記第2筐体が幅方向にはみ出した長さが左右それぞれで等しくなる箇所に設けられたものであり、
前記第1溝が、前記第3の位置と前記第4の位置とで、前記第2筐体から前記第1筐体が長さ方向にはみ出した長さが互いに等しくなる溝長を有するものであることを特徴とする付記9記載の筐体機構。
【0112】
(付記11)
前記第1筐体は、操作を受ける操作子が前記第2筐体側の表面に配設されたものであることを特徴とする付記1から10のうちいずれか1項記載の筐体機構。
【0113】
(付記12)
前記第2筐体は、表示画面が、前記対向面とは逆の面に設けられたものであることを特徴とする付記1から11のうちいずれか1項記載の筐体機構。
【0114】
(付記13)
前記第1筐体と前記第2筐体とを相対的に付勢することで前記ピンを前記第1溝および前記第2溝それぞれの途中位置から端へと移動させる付勢部材を備えたことを特徴とする付記1から12のうちいずれか1項記載の筐体機構。
【0115】
(付記14)
前記第1筐体と前記第2筐体とを相対的に付勢することで前記ピンを、前記穴に案内される回転の途中位置から回転端へと移動させる付勢部材を備えたことを特徴とする付記1から13のうちいずれか1項記載の筐体機構。
【符号の説明】
【0116】
100,200 携帯電話機
110,210 上側筐体
111 表示画面
112 遮蔽板
112a ケーブル穴
113,123 基板
114,204 ストッパ
115,124 コネクタ
120 下側筐体
121 第1操作部
122 第2操作部
125 固定部
131 固定板
132 下部フランジ
133,201 ガイドピン
134 上部フランジ
134a 第1の角
134b 第2の角
135,203 テンションバネ
135a,203a 第1バネ端
135b,203b 第2バネ端
136 ガイド板
137,202 ガイド
137a,202a 第1ガイド溝
137b,202b 第2ガイド溝
137c,202c ガイド穴
138 ケーブル
139 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンが固定された第1筐体と、
第1筐体に対向した対向面に、前記ピンが嵌る穴と第1溝と第2溝とがこの順で互いに繋がって設けられた第2筐体とを備え、
該第1溝は該ピンを該対向面に沿った第1方向に案内するものであり、該第2溝は該ピンを、該対向面に沿った、該第1方向とは異なる第2方向に案内するものであり、該穴は、該ピンの回転を案内するものであり、前記穴は、前記ピンの回転を案内するものであり、前記ピンの前記対向面に平行な断面の最大外形寸法は、前記第1及び第2溝の幅よりも大きいことを特徴とする筐体機構。
【請求項2】
前記ピンが、略四角柱の形状を有し、前記第1及び第2の溝幅よりも大きく、前記穴内に収まる対角長を有するものであることを特徴とする請求項1記載の筐体機構。
【請求項3】
前記第1筐体と前記第2筐体の双方が、内部に電子部品を収納するものであり、
前記ピンが、前記第1筐体から前記第2筐体まで貫通した、該第1筐体内の電子部品と該第2筐体内の電子部品とを電気的に接続する接続配線を通す貫通穴が空いたものであることを特徴とする請求項1または2記載の筐体機構。
【請求項4】
前記第1筐体と前記第2筐体は、双方が、長さより狭い幅と、幅より狭い厚さとを有し、互いに、厚さ方向に重なり合った、互いに同等な長さと互いに同等な幅とを有するものであり、
前記第1溝は、前記ピンを前記第2筐体の長さ方向に案内する溝であり、
前記第2溝は、前記ピンを前記第2筐体の幅方向に案内する溝であり、
前記第1筐体と前記第2筐体は、前記ピンが前記第1溝と前記第2溝とが繋がった箇所にある場合に、長さ方向と幅方向とに互いの位置が揃うものであり、
前記穴は、前記ピンが前記第1溝に案内されて該穴に達した第1の位置と、該第1の位置から該ピンが90度回転した第2の位置とで、該第2筐体から前記第1筐体が長さ方向にはみ出した長さが互いに同等になるとともに、該第2の位置では、該第1筐体から該第2筐体が幅方向にはみ出した長さが左右それぞれで同等になる箇所に設けられたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の筐体機構。
【請求項5】
前記第1筐体と前記第2筐体とを相対的に付勢することで前記ピンを前記第1溝および前記第2溝それぞれの途中位置から端へと移動させる付勢部材を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の筐体機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−95024(P2012−95024A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239566(P2010−239566)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】