説明

筐体用回動機構

【課題】携帯電話等に用いられる、回動部及び位置決め部の磨耗を抑制可能な筐体用回動機構を提供する。
【解決手段】筐体を基部に対して回動可能に支持する回動軸9と、回動軸9が挿通されて該回動軸9の軸回りに筐体と一体で基部に対して回動する回動部13と、回動軸9が挿通されて基部と一体で筐体に対して回動する位置決め部12とを備え、回動部13と位置決め部12とが当接するように一方を付勢する付勢手段14を設け、回動部13と位置決め部12の互いに当接する一対の当接端面12b,13bの一方に凹部24を形成し、一方の当接端面12bにおける回動軸9に対して対称な位置に一対の凹状係合部27を設け、他方の当接端面13bの回動軸9に対して対称な位置に一対の凸状係合部28を凹状係合部27と同数組設け、一対の凹部24と一対の凸部26が係合している際に、各凹状係合部27が何れかの凸状係合部26に凹凸係合するように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話等に用いられる筐体用回動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、操作ボタンが配置された第1筐体に、基部を介して、液晶画面が設置された第2筐体が折畳み可能に支持された携帯電話等を改良したものとして、第2筐体の液晶画面を第1筐体の操作ボタン側と対向させることが可能な回動位置から180°反転させることができるように第2筐体を前記基部に回動可能に支持し、折畳み回動支点と反転回動支点の2つの回動支点を有する特許文献1,2に示す筐体用回動機構が公知になっている。
【0003】
具体的には、電子部品が内装されて液晶画面を有する筐体(第2筐体)を第1筐体側の基部に対して回動可能に支持する回動軸と、回動軸が挿通されて該回動軸の軸回りに筐体と一体で基部に対して回動する回動部と、回動軸が挿通されて該回動軸の軸回りに基部と一体で筐体に対して回動する位置決め部とを備え、前記回動部及び位置決め部は、互いに当接可能なように配置されるとともに少なくとも一方が回動軸の軸方向に移動可能に支持され、回動部と位置決め部とが当接するように少なくとも一方を弾力的に付勢する付勢手段を設け、回動部と位置決め部の互いに対向して当接する一対の当接端面の一方に凹部を形成するとともに、他方に該凹部と凹凸嵌合する凸部を形成するにあたって、凹部及び凸部を回動軸に対して対称な位置にそれぞれ一対配置し、一対の凸部と一対の凹部との凹凸嵌合する組合せを変更することにより、液晶画面が第1筐体の操作ボタン側と対向する回動位置と、該回動位置から半周分回動されて対向側と反対側に液晶画面が反転された回動位置との2箇所に筐体を位置決め可能な特許文献1,2に示す筐体用回動機構が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−303920号公報(第3−4図)
【特許文献2】特開2009−253232号公報(第2−3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記文献の筐体用回動機構では、一方側の当接端面に形成された一対の凸部が他方側の当接端面と常時擦れ合いながら、筐体が基部に対して回動するため、一対の凸部が時間経過とともに磨耗し易いという課題がある他、凹部と凸部の凹凸嵌合を回動軸回りに所定以上の力を加えて解除する際に必要なトルクや、両者の係合が解除されている状態で筐体を回動軸回りに回動させるのに必要なトルクを、大きくしようとする際には、付勢手段の付勢力を大きくする必要があり、この場合には、凸部等がさらに磨耗し易くなるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、筐体を基部に対して所定回動位置と所定回動位置から180度反転させた反転回動位置で位置決めするために、互いに当接する回動部及び位置決め部を設け、携帯電話等に用いられる筐体用回動機構において、回動部及び位置決め部の磨耗を抑制可能な筐体用回動機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、第1に、電子部品が内装される筐体6を基部7に対して回動可能に支持する回動軸9と、回動軸9が挿通されて該回動軸9の軸回りに筐体6と一体で基部7に対して回動する回動部13と、回動軸9が挿通されて基部7と一体で筐体6に対して回動する位置決め部12とを備え、前記回動部13及び位置決め部12は、互いに当接可能なように配置されるとともに少なくとも一方が回動軸9の軸方向に移動可能に支持され、回動部13と位置決め部12とが当接するように少なくとも一方を弾力的に付勢する付勢手段14を設け、回動部13と位置決め部12の互いに対向して当接する一対の当接端面12b,13bの一方に凹部24を形成するとともに、他方に該凹部24と凹凸嵌合する凸部26を形成するにあたって、凹部24及び凸部26を回動軸9に対して対称な位置にそれぞれ一対配置し、一対の凹部24と一対の凸部26との凹凸嵌合する組合せを変更することにより、筐体6を基部7に対して所定の回動位置と、該所定の回動位置から半周分回動させた回動位置との2箇所で位置決め可能な筐体用回動機構において、一方の当接端面12bにおける回動軸9に対して対称な位置に配される一対の凹状係合部27を一組以上設けるとともに、他方の当接端面13bにおける回動軸9に対して対称な位置に配される一対の凸状係合部28を凹状係合部27と同数組設け、一対の凹部24と一対の凸部26がそれぞれ係合している際に各凹状係合部27が何れかの凸状係合部26に凹凸係合するように各凹状係合部27及び各凸状係合部28を凹部24及び凸部26とは別体で配置したことを特徴としている。
【0008】
第2に、各凹状係合部27を凹部24側の当接端面12bに設けるとともに、各凸状係合部28を凸部26側の当接端面13bに設けたことを特徴としている。
【0009】
第3に、凸部24と凹状係合部27とが係合しないように両者を形成するとともに、凹部26と凸状係合部28とが係合しないように両者を形成したことを特徴としている。
【0010】
第4に、凹状係合部27を凹部24の回動軌跡上に配置するとともに、凸状係合部28を凸部26の回動軌跡上に配置してなることを特徴としている。
【0011】
第5に、凹状係合部27及び凸状係合部28を一組づつ設け、各凹状係合部27を一方の凹部24から他方の凹部24に至る上記回動軌跡の中間部に配置するとともに、各凸状係合部28を一方の凸部26から他方の凸部26に至る上記回動軌跡の中間部に配置してなることを特徴としている。
【0012】
第6に、筐体6と一体回転するように筐体6側に固定された固定片11を備え、回動軸9を挿通させる挿通孔22aを固定片11に穿設し、回動軸9の周囲を切欠いて係合部18aを形成するとともに回動軸9の周囲の係合部18a以外の箇所に軸方向に延びる係合溝18bを凹設し、回動軸9の断面形状と同一形状に挿通孔22aを形成し、回動軸9を挿通孔22aに嵌合状態で挿通することにより固定片11側の筐体6と回動軸9とを一体回転させることを特徴としている。
【0013】
第7に、回動軸9の軸心に対して対称な位置に配置された一対の係合部18aを一組以上形成するとともに、回動軸9の軸心に対して対称な位置に配置された一対の係合溝18bを一組以上形成してなることを特徴としている。
【0014】
第8に、一対の係合部18aを2組以上することにより回動軸9の断面を多角形状に形成するとともに、多角形状の断面の各頂部側に係合溝18bが位置するように係合部18aと同数組の係合溝18bを設けてなることを特徴としている。
【0015】
第9に、係合部18aを3つ以上形成して回動軸9の断面を多角形状に形成するとともに、多角形状の断面の各頂部側に係合溝18bが位置するように係合部18aと同数の係合溝18bを設けてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記構成によれば、一方の当接端面に形成された一対の凸部を他方の当接端面に押圧する付勢手段からの付勢力が、一対の凸状係合部によって分散されるため、凸部の磨耗を抑制できるとともに、筐体に対して回動軸回りに所定以上の力を加えて凹部と凸部の凹凸嵌合を解除する際に必要なトルクや、両者の係合が解除されている状態で筐体を回動軸回りに回動させるのに必要なトルクが、凸状係合部と凹状係合部との凹凸係合や、凸状係合部と当接端面との当接によって大きくなるため、上記付勢手段による付勢力を大きくすること無く、上記設定トルクを大きく設定できる。
【0017】
また、各凹状係合部を凹部側の当接端面に設けるとともに、各凸状係合部を凸部側の当接端面に設け、凸部と凹状係合部とが係合しないように両者を形成するとともに、凹部と凸状係合部とが係合しないように両者を形成し、凹状係合部を凹部の回動軌跡上に配置するとともに、凸状係合部を凸部の回動軌跡上に配置することにより、凹状係合部及び凸状係合部を形成する箇所を別途設ける必要が無いので、一対の当接端面をよりコンパクトに形成できる。
【0018】
さらに、凹状係合部及び凸状係合部を一組づつ設け、各凹状係合部を一方の凹部から他方の凹部に至る上記回動軌跡の中間部に配置するとともに、各凸状係合部を一方の凸部から他方の凸部に至る上記回動軌跡の中間部に配置することにより、一対の当接端面が常時バランス良く当接可能になり、筐体の姿勢切換をスムーズに行うことが可能になる。
【0019】
一方、筐体と一体回転するように筐体側に固定された固定片を備え、回動軸を挿通させる挿通孔を固定片に穿設し、回動軸の外周面を切欠いて係合部を形成するとともに回動軸の係合部以外の箇所に軸方向に延びる係合溝を凹設し、回動軸の断面形状と同一形状に挿通孔を形成し、回動軸を挿通孔に嵌合状態で挿通すれば、係合溝と係合部によって、固定片と回動軸との連結強度が向上し、安定的に一体回転するようになるため、基部に対して筐体をより安定的に回動させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した回動機構を備えた折畳み式の携帯電話の斜視図である。
【図2】回動機構の平面図である。
【図3】回動機構の正面図である。
【図4】回動機構の底面図である。
【図5】回動機構の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明を適用した回動機構を備えた折畳み式の携帯電話の斜視図である。図示する携帯電話1は、複数のボタン2a等からなる操作部2が一方側の面に形成されて内部にマイコン等の電気部品が内装された方形板状の第1筐体3と、一方側の面に液晶画面(表示部)4等が配されて内部に液晶画面4用のバックライトやその他の電子部品が内装された方形板状の第2筐体(筐体)6とを備えている。
【0022】
第1筐体3の短辺側端部には、図示しないヒンジ(折畳み機構)を介して横方向に延びる中空状の基部7が自身の軸方向である横軸X回りに回動自在に支持されており、第2筐体6は、回動機構8を介して、自身の横方向中心部を貫通する縦軸Y回りに回動可能に、基部7に支持されている。
【0023】
すなわち、第2筐体6は、ヒンジによって、第1筐体3側に折畳まれた折畳み姿勢と、折畳み側と反対側に展開された展開姿勢とに姿勢切換可能に構成される。これに加えて、該第2筐体6は、回動機構8によって、液晶画面4と操作部2とが向き合った状態で折畳み姿勢に切換えられる閉状態と、液晶画面4が操作部2と対向する側と反対側に向けられた状態で折畳み姿勢に切換えられる視認状態とに切換可能に構成される。
【0024】
言換えると、第2筐体6は、回動機構8によって、折畳み姿勢時に液晶画面4と操作部2が近接又は当接状態で平行に向い合う初期回動位置(所定の回動位置)から、折畳み姿勢時に液晶画面4が操作部と対向する側と反対側を向く反転回動位置へ180°(半周分)回動させることが可能に構成されている。
【0025】
そして、第2筐体6を初期回動位置に回動させて展開姿勢に切換えた際には、通話やメール作成操作等を行い、第2筐体を反転回動位置に回動させて折畳み姿勢に切換えた際(視認状態時)には、テレビ等の視聴を行うことが可能になる他、携帯電話の非使用時には、第2筐体を初期回動位置に回動させるとともに折畳み姿勢に切換える(閉状態に切換える)。
【0026】
次に、図2乃至5に基づき回動機構の構成を説明する。
図2乃至4は、回動機構の平面図、正面図及び底面図であり、図5は、回動機構の分解斜視図である。回動機構8は、縦軸Yと同一軸心となって基部7側から第2筐体6側に至る円筒状の回動軸9と、第2筐体6にボルト固定されたブラケット(固定片)11と、基部7側に固定された方形板状部材である位置決めプレート(位置決め部,カム板)12と、円形リング状の回動体(回動部,フォロワ)13と、回動軸9に外装されたコイル状の圧縮スプリング(付勢手段)14と、回動軸9の軸回りの回動を規制する規制機構16とを備えている。
【0027】
上記回動軸9は、基部7側の端部が他の部分(本体部18)に比べて径が大きくなるように形成されることにより係止端部17をなしている。一方、本体部18の周囲には係止端部17側から第2筐体6側端に至る範囲をフラットに切欠いた係合部18aが形成されるとともに、該周囲の係合部18a以外の箇所に回動軸9の軸方向に延びて中途部から第2筐体6側端に至る係合溝18bが凹設されている。
【0028】
具体的には、回動軸9の軸心に対して対称な位置に配置された一対一組の同一形状の係合部18aを、等ピッチで複数組(図示する例では90°間隔で二組)満遍無く回動軸9の周囲に配置することにより、回動軸9の断面形状が正多角形状(図示する例では正方形状)をなし、係合部18aが設けられていない正多角形状断面の円弧状の各頂部位置に係合溝18bが設けられている。ちなみに、一対の係合部18aは2乃至4組設けることが好ましい。なお、回動軸9の周囲に同一形状の係合部18aを3つ以上満遍なく等ピッチで形成することにより、回動軸9の断面形状を正多角形状に成形し、係合部18aが設けられていない正多角形状断面の円弧状の各頂部位置に係合溝18bを設けてもよい。ちなみに、この場合には、係合部18aを3乃至8つ設けることが好ましい。
【0029】
また、この回動軸9の内周側のスペース及び基部7の中空スペースを利用して、第1筐体3内部の電子部品と、第2筐体6内部の電子部品とを電気的に接続する配線が行われる。
【0030】
上記位置決めプレート12の中央部側には、回動軸9の本体部18から係合部18a及び係合溝18bを省いた円形状断面と同一形状の挿通孔12aが穿設されており、該挿通孔12aには回動軸9が自身の軸回りに回動自在且つ自身の軸方向に移動自在に挿通支持されている。
【0031】
上記回動体13の内周面側は、回動軸9の本体部18から係合溝18bを省いて頂部が円弧状の正多角形状(図示する例では正方形状)となる断面と略同一形状の挿通孔13aとなり、該挿通孔13aに回動軸9が軸方向に移動自在に嵌合状態で挿通されることにより、該回動体13が回動軸9と一体で回動軸9の軸回りに回動するように構成される。ちなみに、この回動体13と位置決めプレート12は、互いに対向して当接するように回動軸9上に隣接配置されている他、係止端部17と位置決めプレート12との当接によって回動軸9が位置決めプレート12に所定深さ以上挿通されないように規制される。
【0032】
上記ブラケット11は、位置決めプレート12と略平行な平行部22と、平行部22から第2筐体6の短辺方向両側にそれぞれ延設された一対の取付座23とから構成されている。一対の取付座23は、夫々、平行部22に対して垂直方向に形成され且つ第2筐体6の短辺側端部にボルト固定される。平行部22の中央部には、係合部18a及び係合溝18bを有する回動軸9の本体部18と略同一形状(具体的には、正多角形状の各頂部から内側に突起部が突出形成された形状)の挿通孔22aが穿設されており、該挿通孔22aには回動軸9の第2筐体6側端部が嵌合挿入されることにより、このブラケット11と回動軸9は一体回転するように構成されている。
【0033】
すなわち、回動体13は、基部7に対して、第2筐体6及びブラケット11と一体で、縦軸Y回りに回動自在に構成される一方で、位置決めプレート12は、基部7と一体で、第2筐体6及びブラケット11に対して、縦軸Y回りに回動自在に構成されている。言換えると、位置決めプレート12は基部に対して回動軸9の軸回りに回動されないように支持されている。
【0034】
また、平行部22から第2筐体6側に突出した回動軸9の端部はかしめられ、回動軸9の平行部22からの抜出しが防止される。このようにして位置決めプレート12及びブラケット11からの抜出しが防止された回動軸9における回動体13と平行部22との間には、上述した圧縮スプリング14が外装されており、この圧縮スプリング14によって、回動体13は位置決めプレート12と当接する側に常時弾力的に付勢されている。
【0035】
回動体13及び位置決めプレート12の互いに対向する側の一対の端面は、上述のようにして当接する一対の当接端面12b,13bになり、この一対の当接端面12b,13bには、凹凸嵌合する凹部24及び凸部26と、凹凸係合する凹状係合部27及び凸状係合部28が形成されている。
【0036】
具体的には、位置決めプレート12側当接端面12bの挿通孔12a周縁における回動軸9の軸心に対して対称な箇所には、回動軸9の軸回りに円弧状をなす前記凹部24がそれぞれ形成されている一方で、回動体13側当接端面13bの挿通孔13a周縁における回動軸9の軸心に対して対称な箇所には、回動軸9の軸回りに円弧状をなす前記凸部26がそれぞれ形成されている。この一対1組の凹部24,24及び凸部26,26は、回動軸9を軸回りに回動させると、該軸回りに円形状の移動軌跡を描く。
【0037】
また、位置決めプレート12側当接端面12bの挿通孔12a周縁における回動軸9の軸心に対して対称な2箇所には、それぞれ回動軸9の軸回りに円弧状をなす前記凹状係合部27が凹部24と別体で形成されるとともに、回動体13側当接端面13bの挿通孔13a周縁における回動軸9の軸心に対して対称な2箇所には、それぞれ回動軸9の軸回りに円弧状をなす前記凸状係合部28が凸部26と別体で形成される。
【0038】
一対の凹部24,24は同一形状に形成され、同一形状に形成された一対の凸部26,26の何れとも係脱自在に凹凸嵌合可能に構成されている一方で、一対の凹状係合部27,27は同一形状に形成され、同一形状に形成された一対の凸状係合部28,28の何れとも係脱自在に凹凸係合可能に構成されている。
【0039】
各凹状係合部27は、凹部24と同一の深さを有し且つ凹部24よりも小さいサイズに形成されて凸部26とは係合しないように構成されるとともに、各凸状係合部28は、凸部26と同一の突出量を有し且つ凸部26よりも小さいサイズに形成されて凹部26とは係合しないように構成されている他、この凹部24、凸部26、凹状係合部27及び凸状係合部28における回動方向両端部はそれぞれ傾斜形成されて当接端面12b,13bの他の部分と滑らかに連接されている。
【0040】
さらに、各凹部24を何れかの凸部26にそれぞれ凹凸係合させることにより、各凹状係合部27が何れかの凸状係合部28にそれぞれ凹凸嵌合するように凹部24、凸部26、凹状係合部27及び凸状係合部28が配置構成されている。
【0041】
具体的には、一対の凹状係合部27,27は、一方の凹部24から他方の凹部24に至る円弧状の回動軌跡の中間に配置され、これによって凹部24及び凹状係合部27は、位置決めプレート12側の当接端面12bの上記円形移動軌跡上に90°間隔で相互に配置されるとともに、一対の凸状係合部28,28は、一方の凸部26から他方の凸部26に至る円弧状の回動軌跡の中間に配置され、これによって凸部26及び凸状係合部28は、回動体13側の当接端面13bの上記円形移動軌跡上に90°間隔で相互に配置される。ちなみに、凹部24及び凹状係合部27は、位置決めプレート12の挿通孔12aの周面と一体的に連接されている。
【0042】
該構成の回動体13及び位置決めプレート12によれば、一方の凹部24と一方の凸部26を凹凸嵌合させる(その結果、他方の凹部24と他方の凸部26が凹凸嵌合するとともに、一方の凹状係合部27と一方の凸状係合部28、及び他方の凹状係合部27と他方の凸状係合部28がそれぞれ凹凸係合する)ことにより、第2筐体6が初期回動位置で位置決めされ、該一方の凹部24と該他方の凸部26を凹凸嵌合させる(その結果、該他方の凹部26と該一方の凸部が凹凸嵌合するとともに、該一方の凹状係合部と該他方の凸状係合部及び該他方の凹状係合部と該一方の凸状係合部がそれぞれ凹凸係合する)ことにより第2筐体が反転回動位置で位置決めされる。
【0043】
このように、凹部24と凸部26の凹凸嵌合及び凹状係合部27と凸状係合部28の凹凸係合によって、初期回動位置又は反転回動位置に位置決めされた第2筐体6に、回動軸9の軸回りに所定(脱出トルク)以上の回動力を加えることにより、凹部24と凸部26の嵌合が解除され且つ凹状係合部27と凸状係合部28の係合が解除され、この解除状態で、第2筐体6に対して回動軸9の軸回りに所定(中間トルク)以上の回動力を加えることにより第2筐体6をY軸回りに回動操作可能であり、この際には、各凸部26及び各凸状係合部28が、位置決めプレート12の凹部24及び凹状係合部27以外の当接端面12bに当接して、回動軸9の軸回りにスライド移動する。
【0044】
第2筐体6は、上述したように、半周分回動させる毎に、初期回動位置と、反転回動位置とで位置決めされ、前記規制機構16が設けられていない場合、一回転以上、回動軸の軸回りに回動させることも可能であるが、このように、何回転も第2筐体6を回動させた場合、回動軸9の内周側に通した配線が捩れて破損してしまう虞があるため、回動軸9の回動範囲は、規制機構16によって、一回転未満の所定範囲に制限されている。
【0045】
上記規制機構16は、位置決めプレート12の当接端面12bと反対側の面に重ね合わされてピン29又はボルト(図示する例ではピン29)によって位置決めプレート12に固定された板状の規制部材31と、回動軸9の係止端部17から径方向外側に向って一体的に突出形成された被規制部17aとから構成されている。
【0046】
規制部材31からは係止端部17側に向って規制部31aが突出形成されており、この規制部31aの突出端側は係止端部17に近接状態で沿う円弧面状に形成されている。そして、この規制部31aにおける回動軸9の軸回り方向両端部の一方に被規制部17aが当接する位置から、他方に被規制部17aが当接する位置までが、回動軸9(第2筐体6)を回動させることが可能な範囲になる。
【0047】
具体的には、第2筐体6を正転側(図2における反時計方向)に半周分回動させることにより、初期回動位置から反転回動位置まで回動可能であるとともに、初期回動位置から逆転側に45°分回動させることが可能であるとともに、反転回動位置から正転側に45°分回動させることが可能であって、合計で4分の3周(270°)分、第2筐体6を回動させることが可能である。
【0048】
以上のように構成される該回動機構8によれば、回動軸9に係合部18aと係合溝18bを設けた場合、回動軸9に係合部18aのみを設けた場合と比較して、ブラケット11と回動軸9との連結強度が向上する。ちなみに、図5に示す回動機構8と、図5に示すものから係合溝18bを省いた回動機構8とのそれぞれについて、回動軸9を固定してブラケット11のみを回動軸9の軸回りに回動させる力を作用させた場合における回動軸9及びブラケット11が破損しない限界の回転力(限界トルク)を計測すると、係合溝18bを設けたものが、係合溝18bを設けないものと比べて、1.5〜2.0倍程度、限界トルクが大きく、大きな強度差が見られた。
【0049】
また、図5に示す回動機構8に対して、初期回動位置から反転回動位置への切換(0°→180°)を1万回、3万回、5万回、10万回行った場合のそれぞれについて、脱穀トルクの低下率を測定するとともに、反転回動位置から初期回動位置への切換(180°→0°)を1万回、3万回、5万回、10万回行った場合のそれぞれについて、脱穀トルクの低下率を測定した。その結果は下記表1に示す通りである。
【0050】
【表1】

【0051】
表1によれば、通常(凹状係合部27及び凸状係合部28を設けていない場合)であれば、10万回の上記切換操作によって脱出トルクが40%程度低下するところ、この脱出トルクの低下が殆どみられず、高い耐久性が示される結果となった。
【0052】
また、図5に示す回動機構8に対して、初期回動位置から30°正転側に回動させた回動位置から、初期回動位置から120°正転側に回動させた回動位置まで正転方向に回転させる操作(30°→120°)を1万回、3万回、5万回、10万回行った場合のそれぞれについて、中間トルクの低下率を測定するとともに、初期回動位置から120°正転側に回動させた回動位置から、初期回動位置から30°正転側に回動させた回動位置まで逆転方向に回転させる操作(120°→30°)を1万回、3万回、5万回、10万回行った場合のそれぞれについて、中間トルクの低下率を測定した。その結果は下記表2に示す通りである。
【0053】
【表2】

【0054】
表2によれば、通常(凹状係合部27及び凸状係合部28を設けていない場合)であれば、10万回の上記操作によって中間トルクが40%程度低下するところ、この中間トルクの低下が殆どみられず、高い耐久性が示される結果となった。
【0055】
なお、この回動機構8は折畳み式の携帯電話8の他、液晶パネル等の表示部側筐体を180°反転させるデジタルカメラや動画撮影機等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
6 第2筐体(筐体)
7 基部
8 回動機構(筐体用回動機構)
9 回動軸
11 ブラケット(固定片)
12 位置決めプレート(位置決め部,カム板)
12a 当接端面
13 回動体(回動部,フォロワ)
13b 当接端面
14 圧縮スプリング(付勢手段)
18a 係合部
18b 係合溝
22a 挿通孔
24 凹部
26 凸部
27 凹状係合部
28 凸状係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が内装される筐体(6)を基部(7)に対して回動可能に支持する回動軸(9)と、回動軸(9)が挿通されて該回動軸(9)の軸回りに筐体(6)と一体で基部(7)に対して回動する回動部(13)と、回動軸(9)が挿通されて基部(7)と一体で筐体(6)に対して回動する位置決め部(12)とを備え、前記回動部(13)及び位置決め部(12)は、互いに当接可能なように配置されるとともに少なくとも一方が回動軸(9)の軸方向に移動可能に支持され、回動部(13)と位置決め部(12)とが当接するように少なくとも一方を弾力的に付勢する付勢手段(14)を設け、回動部(13)と位置決め部(12)の互いに対向して当接する一対の当接端面(12b),(13b)の一方に凹部(24)を形成するとともに、他方に該凹部(24)と凹凸嵌合する凸部(26)を形成するにあたって、凹部(24)及び凸部(26)を回動軸(9)に対して対称な位置にそれぞれ一対配置し、一対の凹部(24)と一対の凸部(26)との凹凸嵌合する組合せを変更することにより、筐体(6)を基部(7)に対して所定の回動位置と、該所定の回動位置から半周分回動させた回動位置との2箇所で位置決め可能な筐体用回動機構において、一方の当接端面(12b)における回動軸(9)に対して対称な位置に配される一対の凹状係合部(27)を一組以上設けるとともに、他方の当接端面(13b)における回動軸(9)に対して対称な位置に配される一対の凸状係合部(28)を凹状係合部(27)と同数組設け、一対の凹部(24)と一対の凸部(26)がそれぞれ係合している際に各凹状係合部(27)が何れかの凸状係合部(26)に凹凸係合するように各凹状係合部(27)及び各凸状係合部(28)を凹部(24)及び凸部(26)とは別体で配置した筐体用回動機構。
【請求項2】
各凹状係合部(27)を凹部(24)側の当接端面(12b)に設けるとともに、各凸状係合部(28)を凸部(26)側の当接端面(13b)に設けた請求項1に記載の筐体用回動機構。
【請求項3】
凸部(24)と凹状係合部(27)とが係合しないように両者を形成するとともに、凹部(26)と凸状係合部(28)とが係合しないように両者を形成した請求項2に記載の筐体用回動機構。
【請求項4】
凹状係合部(27)を凹部(24)の回動軌跡上に配置するとともに、凸状係合部(28)を凸部(26)の回動軌跡上に配置してなる請求項3に記載の筐体用回動機構。
【請求項5】
凹状係合部(27)及び凸状係合部(28)を一組づつ設け、各凹状係合部(27)を一方の凹部(24)から他方の凹部(24)に至る上記回動軌跡の中間部に配置するとともに、各凸状係合部(28)を一方の凸部(26)から他方の凸部(26)に至る上記回動軌跡の中間部に配置してなる請求項4に記載の筐体用回動機構。
【請求項6】
筐体(6)と一体回転するように筐体(6)側に固定された固定片(11)を備え、回動軸(9)を挿通させる挿通孔(22a)を固定片(11)に穿設し、回動軸(9)の周囲を切欠いて係合部(18a)を形成するとともに回動軸(9)の周囲の係合部(18a)以外の箇所に軸方向に延びる係合溝(18b)を凹設し、回動軸(9)の断面形状と同一形状に挿通孔(22a)を形成し、回動軸(9)を挿通孔(22a)に嵌合状態で挿通することにより固定片(11)側の筐体(6)と回動軸(9)とを一体回転させる請求項1乃至5の何れか一に記載の筐体用回動機構。
【請求項7】
回動軸(9)の軸心に対して対称な位置に配置された一対の係合部(18a)を一組以上形成するとともに、回動軸(9)の軸心に対して対称な位置に配置された一対の係合溝(18b)を一組以上形成してなる請求項6に記載の筐体用回動機構。
【請求項8】
一対の係合部(18a)を2組以上することにより回動軸(9)の断面を多角形状に形成するとともに、多角形状の断面の各頂部側に係合溝(18b)が位置するように係合部(18a)と同数組の係合溝(18b)を設けてなる請求項7に記載の筐体用回動機構。
【請求項9】
係合部(18a)を3つ以上形成して回動軸(9)の断面を多角形状に形成するとともに、多角形状の断面の各頂部側に係合溝(18b)が位置するように係合部(18a)と同数の係合溝(18b)を設けてなる請求項6に記載の筐体用回動機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−236954(P2011−236954A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107953(P2010−107953)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(502383177)株式会社山本精密 (15)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】