説明

筒内噴射型内燃機関および内燃機関の制御方法、燃料噴射弁

【課題】燃費向上の為、および/または排気規制をクリアする為に、時速120km/h走行時、および/またはエンジン回転数3200rpmで成層運転を可能にする筒内噴射型内燃機関を提供することを目的とする。
【解決手段】噴射弁から噴霧された燃料噴霧とピストン上面および/または燃焼室内壁面との間に、空気および/または空気流の層を形成し、更にピストン上面にはこの空気流をガイドする工夫された面形状が形成される。
また、寒冷始動(コールドスタート)時、クランキング時にも成層運転が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室に燃料を直接噴射する筒内噴射型内燃機関および内燃機関の制御方法、燃料噴射弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の内燃期間では、ピストンにキャビティと呼ばれる窪みを形成するために、ピストンの上面中央部に突出部が形成されている。そして、内燃機関の圧縮行程の後半に燃料噴射弁からピストンのこのキャビティに向かって燃料を噴射し、キャビティ上で跳ね返った燃料噴霧を点火プラグ方向に集中させている(日本自動車技術会学術講演会前刷集976号、論文番号9740307、1997−10)。
【0003】
これによって燃焼室内で燃料の成層化が達成され、空燃比40前後の希薄混合気でも燃焼が可能となる。通常このような燃焼方法を成層希薄燃焼運転と呼び、内燃機関低負荷時の燃費低減に役立っている。
また、高負荷運転時には吸気行程中に燃料を噴射して燃焼室内に全体に燃料が均質に分布するようにする所謂均質運転に切り替えることが、例えば、特開平7−119507号公報等で知られている。
【0004】
更に、特開平6−81656、特開平10−110660、特開平7−293259、特開平10−30441、特開平10−169447、特開平10−896号公報及び米国特許5850816号明細書等では、燃焼室内にタンブル空気流を生成し、このタンブル空気流で点火プラグ周囲に燃料噴霧を集めることが提案されている。
しかし、上記従来のいずれの燃焼方式を用いても、噴射弁から噴射された燃料の多くが、ピストンや燃焼室内壁面に付着し、成層運転による燃費の向上や排気ガス中の有害成分(例えばハイドロカーボン)の低減に限界があった。
また、80km/h、2400rpm以上では成層運転ができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、ピストン等燃焼室内壁面へ付着する燃料を低減し、排気ガス中のHCを低減することである。
本発明の第2の目的は、均質運転時の出力を向上することを目的とする。
本発明の第3の目的は、ピストンへの燃料の付着量の少ない筒内噴射用燃料噴射弁を提供することである。
本発明の第4の目的は、時速80km/h、エンジン回転数2400rpm以上(例えば時速120km/hあるいはエンジン回転数3200rpmの高回転領域)でも、成層運転を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記第1の目的は、
空気が吸入される燃焼室と、前記燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記燃焼室の容積を変化させるピストンであって、上面中央部が周囲と同じ高さか若しくは低いピストンとを有し、前記燃料噴射弁から噴射される燃料噴霧と前記ピストンとの間に前記吸入された空気の層または空気流の層が介在するように構成することによって達成される。
【0007】
また上記第1の目的は、
内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を備え、前記燃料噴射弁から前記燃焼室に噴射される燃料噴霧のペネトレーションを、燃料の噴射開始から噴射終了までの期間において、前記燃焼室内で往復動するピストンの頂部と前記燃料噴射弁の燃料吐出口との間の距離より短くした筒内噴射型内燃機関によって達成される。
【0008】
また上記第1の目的は、
内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を有し、前記燃料噴射弁が大気圧の雰囲気に燃料を噴射した時の3.8msec後のペネトレーションが60mm以下の燃料噴射弁を有する筒内噴射型内燃機関によって達成される。
【0009】
また、上記第1の目的は、
内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を有し、前記燃料噴射弁がザウター平均粒径が20μm以下の燃料噴霧を噴射する燃料噴射弁を有する筒内噴射型内燃機関によって達成される。
【0010】
また上記第1の目的は、
吸気弁を通して空気が吸入される内燃機関の燃焼室と、前記燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記燃焼室内に空気流を発生させる旋回流生成手段と、前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段とを有し、前記検出された運転状態が低負荷のときには、圧縮行程の後半に燃料を噴射するように前記燃料噴射弁に燃料噴射弁駆動信号を供給する制御装置を有する筒内噴射型内燃機関によって達成される。
【0011】
また上記第2の目的は、
吸気弁を通して空気が吸入される内燃機関の燃焼室と、前記燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記燃焼室内に旋回空気流を発生させる旋回流生成手段と、前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段とを有し、前記検出された運転状態が中負荷のときには、吸気行程に燃料を噴射するように前記燃料噴射弁に燃料噴射弁駆動信号を供給する制御装置を有する筒内噴射型内燃機関によって達成される。
【0012】
また上記第2の目的は、
吸気弁を通して空気が吸入される内燃機関の燃焼室と、前記燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段とを有し、前記検出された運転状態が高負荷のときには、吸気行程であって吸入空気速度が噴霧速度より遅くなる期間に燃料を噴射するように前記燃料噴射弁に燃料噴射弁駆動信号を供給する制御装置を有する筒内噴射型内燃機関によって達成される。
【0013】
また上記第2の目的は、
内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する上流スワール型の燃料噴射弁と、前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段とを有し、前記検出された運転状態が高負荷のときには、吸気行程であって吸入空気速度が噴霧速度より早くなる期間に1回で燃料を噴射するように前記燃料噴射弁に燃料噴射弁駆動信号を供給する制御装置を有する筒内噴射型内燃機関によって達成される。
【0014】
また上記第1の目的は、
筒内噴射型内燃機関の制御方法において、内燃機関の運転状態が低負荷のときには、燃焼室内に旋回空気流を生成させ、圧縮行程前半に燃料を噴射し、前記旋回空気流の内側に濃い混合気層を形成して、成層リーン運転を行うことによって達成される。
【0015】
また上記第2の目的は、
筒内噴射型内燃機関の制御方法において、内燃機関の運転状態が中負荷のときには、燃焼室内に旋回空気流を生成させ、吸気行程に燃料を噴射し、前記旋回空気流によって前記燃焼室内に濃度の均質な混合気を生成して、均質リーン運転を行うことによって達成される。
【0016】
また上記第2の目的は、
筒内噴射型内燃機関の制御方法において、内燃機関の運転状態が高負荷のときには、吸気行程であって、吸入空気速度が噴霧速度より遅くなる期間に理論空燃比を達成し得る量の燃料を噴射し、吸入空気によって燃焼室内に濃度の均質な混合気を生成して、均質ストイキ運転を行うことによって達成される。
【0017】
また上記第3の目的は、
内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁において、前記燃料噴射弁から噴射される燃料噴霧は、大気圧の雰囲気に燃料を噴射した時の3.8msec後のペネトレーションが60mm以下にすることによって達成される。
【0018】
また上記第3の目的は、
内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁において、前記燃料噴射弁から噴射される燃料の噴霧粒径が、ザウター平均粒径が20μm以下にすることによって達成される。
【0019】
更に上記第4の目的は、
空気が吸入される燃焼室と、前記燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、前記燃焼室の容積を変化させるピストンとを有し、前記燃料噴射弁から噴射される燃料噴霧と前記ピストンとの間に前記吸入された空気の層、または空気流の層を形成すべく、燃焼室内に空気の流れを発生させ、また、ピストン上面の流れを噴射弁の直下まで案内するガイド面を形成することによって達成される。
具体的には、前記エンジンの燃焼室内にタンブル空気流を生成する空気流生成装置と、燃焼室内に生成された空気流を燃料噴射弁から遠い側からピストン上面に沿って燃料噴射弁の直下に案内するよう工夫された頂面形状を有するピストンと、前記燃料噴射弁から点火プラグに至る前記空気流の外層に燃料噴霧を供給する燃料噴射弁とを備えることによって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に本発明が適用されるエンジンシステムの一例を示す。エンジン11は、コンロッド14およびクランクシャフト15からクランク機構を備え、そのクランク機構に連結されたピストン12とエンジン11のエンジンヘッドによって燃焼室13が形成されている。その燃焼室13はエンジンヘッドに装着されている吸気弁27、排気バルブ29、点火プラグ28および燃料噴射弁26によって密閉される。
【0021】
エンジン11はピストン12の往復動作によって、燃焼に必要な空気を燃焼室13に吸入する。吸入される空気はエアクリーナ18で空気中に含まれる埃やごみが除去され、エアフローセンサ19で燃料噴射量の演算の基となる吸気量が計測される。吸入空気量は、スロットルバルブ20の開度によって制御され、エンジン11の運転状態に応じて主吸気通路21、副吸気通路22を通る。エンジン11を制御するコントロールユニット36には、クランク角度センサ16、17からのクランク角度信号、アクセルポジションセンサ38からのアクセル操作量が入力される。その他にも図2に示すように、エアフローセンサ19からの吸入空気量信号、排気管内に取リ付けられた空燃比センサ31からのA/F信号、温度センサ32からの排気触媒温度信号等、種々の情報が入力される。
【0022】
コントロールユニット36は、クランク角度信号、アクセル操作量等の情報を基にエンジン11の運転状態を検出し、この運転状態に基づいて燃料噴射量と噴射時期および点火時期を決定する。点火コイル34は、コントロールユニット36からの点火信号に応じて高電圧を発生させ、点火プラグ28で点火火花を発生させる。燃料噴射弁駆動装置35は、コントロールユニット36からの噴射信号を増幅して燃料噴射弁26を駆動する。燃料噴射弁26にはエンジン11によって駆動される高圧燃料ポンプ24から燃料配管25を経由して燃料が供給される。
【0023】
エンジン11の運転状態に応じて、燃焼室13内に必要な旋回流を形成するため、主吸気通路21内の分流弁23の開度を制御し、副吸気通路22から導入される空気量を制御する。分流弁の開閉には、エンジンの運転状態に応じた分流弁駆動信号VDがコントロールユニット36から送信される。副吸気通路22を通った空気は、高速で指向性を持ち、燃焼室13内に必要な旋回流を形成する。分流弁23を開くことにより主吸気通路21にも空気が流れるようになり、副吸気通路22を通る空気が少なくなる。以上により燃焼室13内に形成される旋回流の強さを調整する。
【0024】
図2、図3は制御信号の流れを示すブロック図である。これを用いて、エンジンコントロールユニット36内での制御信号の流れを説明する。
ブロック361では、クランク角度信号やアクセル操作量θα等を取り込み保持し、クランク角度信号からエンジン回転数Neを算出し、アクセル操作量θαとエンジン回転数Neからエンジンの目標トルクTを算出する。ブロック362、363、364では、ブロック361に保持されているエンジン回転数と目標トルクから燃料噴射パルス幅Tp、燃料噴射開始時期ITおよび点火時期θAdを決定する。燃料噴射量は燃料噴射パルス幅Tpにほぼ比例する。燃料噴射パルス幅Tpおよび燃料噴射開始時期ITは図4に示すようにエンジン回転数Neと目標トルクTのマップから決定される。燃料噴射パルス幅Tp及び噴射開始時期ITの信号(燃料噴射弁駆動信号)は、燃料噴射弁駆動装置35に送られる。また、ブロック364ではエンジンの運転状態に応じて点火時期を決定し、点火コイル34に出力する。燃料噴射開始時期ITは図10のようにエンジンの運転状態に応じて各運転状態の燃焼方式に対応するように吸気行程から圧縮行程までの間で決定され、噴射回数Nも決定される(図15では4回)。つまり、燃焼室13内での燃焼方法(Tp、IT、θAd等の組み合わせ)を運転状態に基づいて変化させる。
【0025】
低負荷領域A(例えば60km/h定速走行)では、燃焼室13内に強い旋回流(分流弁23を全閉にする)を発生させると共に、燃料を圧縮行程の後半に噴射し、空燃比40前後の成層リーン運転を行う。
中負荷領域B(例えば100km/h定速走行や領域Aからの微加速)では、燃焼室13内に弱い旋回流(分流弁23を半開にする)を発生させると共に、燃料を吸気行程に噴射し、空燃比20〜25前後の成層リーン運転を行う。
高負荷領域C(例えば120km/hを超える定速走行や領域Aからの緩加速)では、燃焼室13内には旋回流を発生させず(分流弁23を全開にする)に、燃料を吸気行程に噴射し、空燃比14.7前後の均質運転を行う。
さらに高回転、高負荷となる領域D(例えば140km/h定速走行や領域Aからの急加速)では、空燃比を14.7よリ小さくする。
旋回流の強さには、強い旋回流と旋回流無しと、その中間の強さである弱い旋回流がある。
【0026】
次に図5を用いてA、B領域で行うリーンバーン運転方法について説明する。
図5に旋回流と噴射された燃料噴霧の関係を示す。主吸気通路21と副吸気通路22および分流弁23によリ発生した旋回流40は燃焼室13内で横方向の旋回流を形成する。
図6に副吸気通路22の設置位置を示す。
図6(a)は副吸気通路22の設置可能範囲21aを示している。副吸気通路は、高負荷時(C、D)に吸気抵抗になるために、なるべく主吸気通路21の端の方に設置した方が良い。そのために吸気弁27のステム27aの軸線より外側の範囲に設置する。
図6(b)は主吸気通路21が二股に分かれている場合の設置方法である。主吸気通路21の片方に副吸気通路22を設けて、その開口部を燃焼室13内に向けることで矢印40のような旋回流が生成する。
図6(c)は主吸気通路21が1つになっている場合の設置方法である。副吸気通路22を燃焼室13の外周の接線に近くなるように設けて、その開口部を燃焼室13内の壁面に沿うように向けることで矢印40のような旋回流が生成する
【0027】
図7(a)は副吸気通路22と燃焼室13内に生成する旋回流40の関係を示したものである。副吸気通路22の水平面からの角度αが大きいと旋回流40の回転中心軸40aは傾き、その結果旋回流40は水平方向の渦ではなく、斜め成分を持った渦になる。この場合、燃焼室の中央に集中した燃料成分が旋回流回転軸の傾きによって、燃焼室の中心軸からズレてしまう。
図7(b)は副吸気通路22の傾き角αを小さくした場合で、副吸気通路22を通過した空気が水平に近い角度で燃焼室に流入するため、旋回流の回転中心軸の傾きが小さくできる。これにより、燃焼室の中央に集中した燃料成分を圧縮行程の後半まで保持できる。
図8(a)は燃料噴霧41と旋回流40の関係を示したものである。燃料噴射弁26の取リ付け角度γ(水平面からの角度)が大きい程、燃料噴霧41を燃焼室の中心に保持しやすい。燃料噴射弁26が点火プラグ28の取リ付け位置にあれば、燃料噴霧は燃焼室中央に確実に保持される。本実施例のように燃料噴射弁が吸気弁の下に設置されている場合は、噴霧の到達距離(ペネトレーション)によっては旋回流40を通り越して燃焼室の周囲に拡散することが考えられるので、旋回流を通り越さない条件を考える必要がある。この条件は後に示す。
図8(b)は燃料噴霧が燃焼室周囲に拡散しないように燃料噴霧の噴射方向を偏向する方法を示している。燃料噴霧41aが燃料噴射弁の取り付け角γよリθ傾いて噴射されるため、旋回流41aに取り込まれやすくなる。アトマイザを用いた噴霧や、図14(b)で示す短いペネトレーションの噴霧と共に用いれば、燃焼室中央への保持がより確実となる。
【0028】
図9に旋回流の別の発生方法を示す。主吸気遁路21は2つの吸気弁27に通じるように、分流弁42が取り付けられた主吸気通路と切リ欠き付きの弁43が取り付けられた副吸気通路の2本に分かれている。この2つの弁は1本のシャフトで連結されていて、シャフトを回転することでバルブの開度を調整できる構成になっている。弁が全閉になっているときは切り欠きがある方の吸気通路のみから空気が導入される。そのため流速が早まり、強い旋回流が燃焼室13内に形成される。弁を全開にすると、双方の通路から空気が導入され、旋回流の発生を停止することができる。図9は主吸気通路と副吸気通路を有しているが、副吸気通路を持たないものも考えられる。
【0029】
以上の2つの旋回流生成方法とも、燃焼室13のシリンダ壁面近傍の空気流速は速く、中心部の流速は遅い。旋回流が強くなる圧縮行程前半以降(旋回流が確立したところ)に燃料を噴射すると、燃焼室13の中心付近に噴射された燃料噴霧41は拡散せずに、旋回流の中に集中する。このときの燃料噴霧41は燃焼室中心付近で減速し、反対側のシリンダ壁まで到達しないことが重要である。そのための噴霧としては、大気圧の雰囲気に燃料を噴射した時の3.8msec後のペネトレーションを60mm以下とすることが望ましい。また、このときの噴霧粒径はザウター平均粒径D32で20μm以下が望ましい。
ザウター平均粒径とは、噴霧粒子を完全な球形と仮定した時の、その体積と表面積から算出される粒径として定義される。PDPA(Phase Dopp1er Particle Ana1yzer)やマルバーン等の計測装置を用いて容易に計測できる。実施例で示している数値は、ノズル先端から50mm下の位置で計測したザウター平均粒径である。
【0030】
このような燃料噴霧特性を得るには、図17〜図32に示すようなアトマイザを用いることが望ましい。このようなアトマイザを用いると噴霧貫通力が弱くなる傾向がある。アトマイザ自体については後でまとめて説明する。
アトマイザを使用する場合について説明する。
図10にリーンバーン運転時の制御方法を示す。横軸はエンジンのクランク角度で、吸気行程から圧縮行程までの期間を表わしている。縦軸は燃焼室内に生成される旋回流の強さを表わしている。燃焼室内の旋回流は吸気行程中は吸気弁の開度の影響を受け、吸気行程後半から圧縮行程前半にかけて最も強くなる。その後、旋回流の強さは減衰していく。
【0031】
領域Aでは成層燃焼運転をするため、燃焼室内の旋回流が確立したところで51のように燃料を噴射する。燃料噴射量と噴射時期はHCの排出量が増加しないように決められている。
領域Bでは均質リーンバーン運転を行う。この時の空燃比は20〜25で、NOx排出量を低減するために52のように吸気行程に噴射する。吸気行程中に噴射された燃料は旋回流によって攪拌されて燃焼室内に拡散し、均一に混合する。
図11に筒内噴射エンジン用の燃料噴霧特性を示す。横軸は噴霧の平均粒径で、一般的にザウター平均粒径D32で表示する。縦軸はペネトレーションすなわち噴霧到達距離で噴射後3.8msの噴霧長さを表わす。現在筒内噴射エンジン用に広く用いられている上流スワール旋回式インジェクタの噴霧特性は燃料圧力、噴霧角度、噴霧旋回力を変化させることで55で示す範囲にある。アトマイザを用いることによって、噴霧特性は56に示す範囲のものとなり、微粒化が優れている。しかし、このような噴霧では全開出力時に燃料噴霧が吸入空気に流され、混合気が不均一になるという問題が発生する。
【0032】
図12にエンジンの燃焼室内の噴霧挙動観察結果の概略を示す。図12(a)は噴霧貫通力が強い場合で、図12(b)は弱い場合を示す。高負荷時は旋回流生成装置の動作を停止、つまり分流弁を全開にする。すると吸気量が多くなる。吸気弁の上側を通ってきた流れと、下側を通ってきた流れによって、燃焼室13内には縦形の旋回流40aと40bが生じる。40aは吸気弁の上側を通ってきた空気の流れで、40bは吸気弁の下側を通ってきた流れである。噴霧貫通力が強い図12(a)の場合には、噴霧自体の貫通力でシリンダ内に広がり、空気流40aの流れに乗ってシリンダ内に均一に拡散するので良い燃焼が得られる。このように良い燃焼が得られると、投入した燃料に対して高効率で出力を取り出すことができる、しかし、噴霧貫通力が弱い図12(b)の場合には、噴霧は空気流40bの流れに流されてしまい、シリンダ内に広く拡散できずに混合気分布が不均一になる(均質ではなくなる)という問題が発生する。そこで、図13に示すように噴射時期を工夫する。
【0033】
図13に高負荷時の吸気速度と噴射パルスの関係を示す。横軸はエンジンのクランク角度で、吸気行程を表わしている。縦軸は吸気弁の開いた面積を通過する吸入空気のおおよその速度を表わしている。吸気弁の開いた面積は、最初は小さいので速度が速くなり、その後減速する。吸気行程の中程では吸気量が多くなるため再び速度が増加する。その後、速度は再度低下し、吸気弁が閉じる前に速度が増加して吸気弁が閉じる。自然吸気での充填効率は70〜80%程度なので、まだ吸気できる余地があり、閉じる直前でも流速は大きい。図11で示した領域56のようなアトマイザを用いた噴霧特性の噴霧では、噴霧速度が低い(貫通力が弱い)ため吸入空気に流されやすい。噴霧速度が吸気速度より大きければ、吸入空気流によって噴霧が流されるのを防止できる。噴霧速度は、ノズル構造と燃圧によって決まり、エンジン回転数には依存しない。したがって、吸気速度が変動し噴霧速度より低くなる上記のようなタイミングで噴射すれば吸入空気の噴霧への影響を少なくできる。吸気速度は60のように変動するために、ノズル構造と燃圧によって決まる噴霧速度より小さくなったときが噴射可能範囲となる。このように制御することで噴射した燃料の片寄りを防止でき、均質な混合気を形成できる。噴射可能範囲が短く1回で必要な燃料量を噴射できない時は、61に示すように追加して噴射することもできる。
【0034】
噴霧速度は、燃料噴射弁から燃料噴霧を大気中に噴射した時の燃料噴霧の速度であり、この噴霧速度は高速度カメラで撮影した場合に燃料噴射弁の先端から噴霧先端までの長さを単位時間毎に計測することで算出できる。また、吸気速度は吸気バルブの開口部を通過するときの吸入空気の流速であり、バルブ開度によって変化する。そのため吸気速度を測定するには、エンジンヘッドに定常の空気流を流し、バルブ開度を変化させて熱線流速計等で計測する。
【0035】
次にアトマイザを使用せず、上流スワール旋回式インジェクタを、用いた場合の実施例を図14〜図16に示す。これは噴霧貫通力が強い場合に相当する。
図14(a)は上流スワール旋回式インジェクタで1回の噴射で燃料を噴射した場合の噴霧の成長の様子を示したものである。噴霧41aの先端部分は空気抵抗を受けて、次第に減速していく。しかし、続けて噴霧が噴射されているため、後から噴射された噴霧に押し流されて、ペネトレーションは長くなる。この時のペネトレーションは図11で示した噴霧特性55の範囲にある。
図14(b)は同じ噴射量を4回で噴射した場合を示している。最初に噴射した噴霧41aは空気抵抗を受けて減速する。燃料を多段階に噴射するため、41aは連続的に押し流されない分ペネトレーションが短くなる。その後に噴射する噴霧41b、41c、41dについても同様の作用が働き、噴霧全体のペネトレーションは1回で噴射した場合より短くなる。
図15に燃焼室内の旋回流の強さと噴射パルスの関係を示す。成層燃焼を行う領域Aでは、旋回流が確立したところに燃料を噴射する。この時、噴射を何回かに分割して噴射することによりペネトレーションが短くなるので、燃料噴霧が旋回流の中に収まり、拡散することを防止できる。均質リーン運転を行う領域Bでは、旋回流が確立する前に燃料を噴射し、噴射した燃料が均質に混合するようにする。この時も噴射を分割して噴射することによりペネトレーションを抑え、ピストンやシリンダ壁への付着を防止できる。
図16に高負荷時(C、D)の吸気速度と噴射パルスの関係を示す。高負荷時には噴霧貫通力が強い方が空気との混合が良くなるため分割噴射を停止し、噴射時期を71のように、吸気冷却によって吸気量が最も増える時期に設定し、出力を向上することができる。
【0036】
以上のように燃焼室13内での燃焼方法を運転状態に基づいて変化させることによって、リーンバーン運転を行う領域A、Bで燃料がピストンに付着しHCの排出量が増加することを防止できるとともに、均質運転を行う領域C、Dで燃焼室内の混合気分布を均一にし、出力を向上できる。その際、アトマイザや分割噴射を用いることによってペネトレーションを短くでき、この短くなったペネトレーションとピストン頂面の間に空気の層が形成されることになり、燃料の付着が抑制できる。また、旋回流を用いてピストン頂面上、燃焼室内壁面上に空気流の層を積極的に形成すると更に燃料の付着を少なくできる。このように空気の層または空気流の層を形成することによってピストンヘの燃料付着量を抑制することができる結果、燃料の未燃分の減少やピストンの冷却作用が低減できる。キャビティのついたピストンよりも、キャビティのないフラットピストンを用いた方が空気流の層を形成しやすい。また、燃料噴霧を微粒化して旋回流の影響を受けやすくすることによって、旋回流の中に燃料噴霧を確保し、安定した良い燃焼を得ることができる。
【0037】
クランク角度信号とアクセル操作量に加えて、エンジンコントロールユニット36に吸入空気量Qまたは吸気管内圧力Pと空燃比A/Fを取り込む場合には、空燃比A/Fが一定値(例えば、14.7)になるようにフィードバック制御してエンジントルクを目標トルクになるように制御することもできる。また、燃焼室内圧力またはノックセンサ信号を取り込む場合には、ノッキング発生の有無を検出し点火時期の制御に使用することもできる。また、水温を取り込む場合には、エンジンが早期に暖気されるように点火時期を遅角する制御に使用できる。
図17〜図32に多層プレートから成るアトマイザを用いた燃料虞射弁の先端形状を示す。その基本構成は厚さ0.1〜0.5mmの薄いプレートを数枚重ね合わせたもので、各プレートには図に示すような加工が施されている。多層プレートの1層目は燃料を横方向に広げ、燃料の貫通力を低減させる作用を持つ。2層目以降のプレートの孔の形状が噴霧形状を制御するとともに微粒化に役立つ。また、厚さ1.0〜1.5mmの1枚のプレートの両側からレーザ加工や放電加工で穿孔し、上記多層プレートの上面から側方に至る燃料通路孔と同じような燃料通路孔を、形成することもできる。各図中の2は燃料噴射弁のノズルで、1のような単口の穴が開けられている。その先端に様々な形状をした多層プレートが取り付けられる。
【0038】
多層プレートの材質としては、ステンレス材が望ましく。数枚のプレート同士は溶接により接合されることが望ましい。また、別の方法としてはシリコンウエハーをエッチングで加工したものを接着剤で接合することもできる。
図17は4孔拡散式で、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間室5で横方向に広がり、プレート4内に開けられた噴口6から噴出する。噴口数が4個のものについて示したが2個以上でも構わない。噴口は7で示すように燃料が外側に噴出するような角度がついており、噴出した燃料同士が衝突することはない。
【0039】
図18は噴口位置ズレ式で、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間室5で横方向に広がり、プレート4内に開けられた噴口6を通り、プレート8内に開けられた噴口7から噴出する。噴口数が4個のものについて示したが2個以上でも構わない。噴口6と7の位置は僅かにズレるように配置されており、その開口面積の合計は単口1の断面積と等しいか小さくなるように決められる。
図19は多孔式で、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間室5で横方向に広がり、プレート4内に開けられた噴口6から噴出する。噴口数が12個のものにつけて示したが2個以上でも構わない、噴口6はノズル中心軸と平行に開けられているが、噴口の方向を傾けても構わない。
【0040】
図20は流路変化式で、1から流れ出た燃料はプレート3および4内に形成された中間室5、6で横方向に広がり、プレート8内に開けられた噴口7から噴出する。噴口数が4個のものについて示したが2個以上でも構わない。プレート4に開けられた中間室の形状は6のようになっており、プレート3に設けられた中間室は6の形状に5のような出っ張りが加わった形になっている。プレート8内に開けられた噴口7はこの出っ張りの下になるように位置が決められているので、1から流れてきた燃料は直接噴口7に到達することはなく、中間室5および6内で流路が変化してから噴出される。中間室内で流路が変化することで、燃料に乱れエネルギが与えられる。
図21では、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間室5で横方向に広がり、プレート4内に設けられた角穴の噴口6から噴出する。このノズルの場合は、1を流れてくる燃料を旋回させた方が燃料微粒化の効果が大きい。
図22では、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間室5で横方向に広がり、プレート4内に開けられた噴口6から噴出する。噴口数が4個のものについて示したが2個以上でも構わない。このノズルの場合も、1を流れてくる燃料を旋回させた方が燃料微粒化の効果が大きい。
【0041】
図23はスリット式で、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間室5で横方向に広がり、プレート4内に開けられたスリット6を通り、プレート8に開けられたスリット7から噴出する。スリット6からスリット7に流れ込んだ燃料は、一旦スリット7内を横方向に広がってから噴出するため噴出される燃料噴霧の形状は非常に薄い膜状になる。スリットの交差角度は90度が望ましい。
図24は4孔スリット式で、図12に示したスリット式と同様の考え方で、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間室5で横方向に広がり、さらにプレート4内に開けられた4本のスリット6を通り、プレート8に開けられた4本のスリット7から噴出する。スリット6からスリット7に流れ込んだ燃料は、一旦スリット7内を横方向に広がってから噴出する。スリットの交差角度は90度が望ましい。
図25は4本スリット式で、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間室5で横方向に広がり、プレート4内に開けられたスリット6から噴出する。このノズルの場合は、1を流れてくる燃料を旋回させた方が燃料微粒化の効果が大きい。
【0042】
図26は2孔スリット式で、図12に示したスリット式と同様の考え方で、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間室5で横方向に広がり、プレート4内に開けられたスリット6を通り、プレート8に開けられたスリット7から噴出する。スリット6からスリット7に流れ込んだ燃料は、一旦スリット7内を横方向に広がってから噴出するため、1つのスリットから噴出される燃料噴霧の形状は非常に薄い膜状になる。したがって噴霧全体では厚みのある噴霧が形成される。スリットの交差角度は90度が望ましい。
図27は4孔独立旋回式で、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間溝5で横方向に広がり、プレート4内に開けられた噴口6を通り、プレート8に設けられた旋回溝7を通り、旋回力を与えられて、プレート9に開けられた噴孔10から噴出する。噴口数が4個のものについて示したが2個以上でも構わない。
【0043】
図28は4孔衝突式で、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間室5で横方向に広がり、プレート4内に開けられた噴口6から噴出する。噴口数が4個のものについて示したが2個以上でも構わない。噴口は7で示すように燃料が内側に噴出するような角度がついており、噴出した燃料同士はノズル先端近傍で衝突する。
図29は8孔衝突式で、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間溝5で横方向に広がり、プレート4内に開けられた噴口6から噴出する。噴口数が8個のものについて示したが2個以上でも構わない。8つの噴口は、噴出した燃料が7で衝突するような角度がついている。
図30は噴霧共振式で、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間室5で横方向に広がるとともに、プレート4内に開けられた噴口6から噴出する。中間室5で横方向に広がった燃料と噴口6から噴出する燃料が共振して、燃料に乱れエネルギを与える。中間室の大きさによって、その共振する波長が変化する。
【0044】
図31も噴霧共振式で、1から流れ出た燃料はプレート4内に形成された中間室6で横方向に広がるとともに、プレート8内に開けられた噴口7から噴出する。プレート3内には1と同じ内径の単口が設けられていて、燃料噴射弁のバルブシートから中間室6まで距離を変化させている。これにより、横方向に広がった燃料と噴口7から噴出する燃料の共振周波数が変化する。
図32は流路変化式で、1から流れ出た燃料はプレート3内に形成された中間室5で横方向に広がり、プレート4内に開けられたスリット6を通り、プレート8に設けられた中間室7に流入する。中間室7の形状は中間室5に出っ張り部7が加わった形をしており、スリット6を通ってきた燃料は中間室7の外周部に沿う流れと、中央から出っ張り部に沿う流れに分かれる。この2つの流れによって、プレート9内に設けられた噴口10の人り口付近では燃料が旋回する。
尚、以上の実施例で、プレート3,4,8,9の厚みは、それぞれ0.1〜0.3mm程度にすることができる。
微粒化の方式としては、薄膜微粒化、衝突微粒化、旋回微粒化および乱れを利用した微粒化方式がある。図23〜図26は薄膜微粒化、図28〜図29は衝突微粒化、図20〜図22、図27、図32は旋回微粒化、図17〜図19、図30〜図31は乱れを利用した微粒化方式にそれぞれ分類される。
【0045】
本発明の他の実施例を図33以下の図面に基づいて説明する。
図33に他の実施例の構成図を示す。図33は本実施例のエンジンの透視図である。主な構成部品は燃焼室13内に空気流動を発生させる空気流動生成装置として切り欠き弁43、シャフト43a、仕切板44と、燃焼室13内に燃料を噴射する燃料噴射弁26と、十分なタンブル強度が得られるような頂面形状をしたピストン12である。燃焼室13の上部、すなわちピストン12と対向する側に2つの吸気バルブ27と2つの排気バルブ29および点火プラグ28、燃料噴射弁26が取付けられている。それらによって形成された燃焼室13はピストン12の往復運動により、その容積が変化する。吸気バルブ27が開いた状態でピストン12が下降運動すると吸気ポート21から空気が吸入される。燃焼室13に吸入された空気量は図示しない空気量センサで計測されて、その値を基にして燃料噴射弁28から噴射される燃料量が決定される。空気を吸入するための吸気バルブ27は吸入空気量を多くする目的から2つ備えている。吸気ポート21は2つの吸気バルブ27に繋がる流路を形成する。燃料噴射弁26はこの流路の間、すなわち2つの吸気バルブ27の間に取付けられる。14aはエンジンのクランクシャフトで、4気筒エンジンの例を示している。14bはクランクシャフト14aの中心軸、14cはピストン12のピストンピンの中心軸を表している。燃料噴射弁26はその中心軸がピストンピン中心軸14cまたはクランクシャフト中心軸14bに直行するように取り付けられる。燃焼室13の上部に取りつけられた点火プラグ28の周囲に燃料が集まり易いように、燃料噴射弁26の中心軸は点火プラグ28の下部に向かって傾斜している。このように取り付けることで、吸気行程噴射では燃焼室13内に燃料を広く分散させることが出来るとともに、圧縮行程後半の噴射では噴霧を点火プラグ28方向に集め易く出来る。燃焼室内に生成されたタンブル流はピストン12上に空気流の層と成り、空気の壁を作る。この空気流により燃料噴霧は点火プラグ方向に搬送される。さらに空気の壁にガイドされているので、ピストン頂面に燃料噴霧が付着するのを防止する。この方式をタンブルエアガイド式と呼ぶ。燃料噴霧は点火プラグ28のプラグギャップ周辺に到達しやすいように噴霧形状、噴射方向が設定される。
【0046】
図34〜37にタンブル生成装置の構成例を示す。図34は吸気ポート21に副吸気通路22を設けた構成である。吸気弁27が開き、ピストン12が下降すると吸気ポート21および副吸気通路22から空気が吸入される。図示していないが吸気ポート21に設置された弁を閉じることにより、空気は吸気ポート21からの流れは弱くなり、副吸気通路22からの流れが強くなる。副吸気通路22は、その口径が吸気ポート21より小さく設定されているため、副吸気通路22を流れる空気の流速は大きくなる。その主流は矢印40のようになり、それは周囲空気40cに影響を及ぼし、概ねタンブル流動が形成される。
図35は吸気ポート21に副吸気通路22を設けた構成であるが、副吸気通路22が短い場合である。この場合は、副吸気通路22を出た空気の主流は40のようになり周囲空気40cも搬送するものの、比較的速度の遅い40dのような流れも生じてしまう。この結果、副吸気通路22が長い場合と比較して指向性の悪い空気流動となってしまい、タンブルエアガイド式に必要なタンブル流動が形成されなくなってしまう。
【0047】
図36は吸気ポート21の途中に切り欠き弁43を設けた構成である。切り欠き弁43は吸気ポート壁を貫通しているシャフト43aに固定されていて、シャフト43aを回転させることで開閉する。切り欠き弁43が閉まった状態では吸気ポート21の開口部の下半分の通路が塞がれる。これにより、吸気流速が速くなる。切り欠き弁43aを設置する位置はエンジンヘッドの構造上、吸気バルブ27から離れた位置にならざるを得ず、主流は40のようになるものの切り欠き弁43を通過直後から流れが膨らみ、40dのような流れが生じてしまい指向性の悪い空気流動となってしまう。
【0048】
図37は吸気ポート21の途中に切り欠き弁43を設けた構成であるが、切り欠き弁43を通過後に流れが拡散しないように仕切板44を設けた場合である。これにより、空気通路は吸気ポート21より小さい状態のまま吸気弁27近くまで形成されるため、空気流速は大きくなる。その主流は矢印40のようになり、それは周囲空気40cに影響を及ぼし、概ねタンブル流動が形成される。切り欠き弁43をタンブル制御弁と呼ぶ。
図38にタンブル生成装置の性能比較結果を示す。縦軸のタンブル比は、ピストンが1往復する間(すなわち吸気から圧縮行程間)に空気流動が縦方向に何回転するかで定義される。したがって、数値が大きい方がタンブル空気流動が強いことを表している。副吸気通路の場合は副吸気通路22が長い方が、タンブル制御弁43の場合は仕切板44が有る方がタンブル比が大きくなっている。これは吸気弁の近くまで流入空気の拡散を防止する構造となっているためである。したがって、上記のような構成にすれば本発明のエアガイド式に必要なタンブル空気流動を生成することができる。
【0049】
図39にピストン頂面がフラットな場合の燃焼室13内に生成するタンブル空気流動を示す。図34から37に示したタンブル生成装置の目的は指向性のあるタンブル空気流動40を燃焼室13内に生成することであるが、実際の吸気行程では吸気バルブ27の下側を通過して流入する空気流動40bが存在する。この空気流動40bは40とは逆方向の流れ、すなわち逆タンブル流であり、本発明のタンブルエアガイド式に必要なタンブル流を弱めてしまう。この逆タンブル流40bを少なく、または影響を小さくすることが望ましい。しかし、吸気ポートの形状によっては、逆タンブル流40bを少なくすることが困難な場合もある。タンブル空気流動40をより強く生成できれば、逆タンブル流40bの影響を小さくすることができる。
図39(a)は吸気行程の下死点(180degBTDC)での空気流動の模式図を示している。タンブル生成装置を通過して来た指向性のある空気流動40は排気側のシリンダ壁に沿って流れ、ピストン頂面で方向変換する。このときピストン頂面形状がフラットの場合、空気流動40は約90度の方向変換することになり、流れがスムーズでなくなる。したがって、図39(b)に示すように圧縮行程後半(60degBTDC)では40と40bの流れが打ち消し合うようになってしまう。そのため空気流動40を強くする工夫が必要である。
【0050】
図40に空気流動40を強くするための改良されたピストン頂面形状を示す。燃料噴射弁26と点火プラグ28はエンジンヘッドに取り付けられている位置関係を表している。
(a)はピストン頂面上での流れをスムーズにするために、頂面にRをつけたものである。一点鎖線47はエンジンのクランク軸と平行であり、一点鎖線46は47と直行する方向である。一点鎖線45は46と同一平面上にあり、燃料噴射弁26の中心を通っている。ピストン12の頂面形状12aは点48を中心とする円弧R状の構造になっている。その結果、ピストン頂面外周部12bは12cのようになる。この形状により、タンブル空気流動40はスムーズに方向変換し流動が弱まることがなくなる。
また、(b)はピストン頂面上でタンブル空気流動40が一点鎖線47方向へ拡散するのを防止するための溝12dを設けたものである。溝12dは一点鎖線46と平行であり、空気流動40が燃料噴射弁26方向に吹き上がるように設けられている。このようなピストン頂面形状にすることにより、空気流動40の方向変換をスムーズにし、流動が弱まることを防止できる。その効果として、ピストン頂面上には空気層を形成でき、燃料噴霧がピストンに付着することを防止できるとともに、燃料噴霧を点火プラグ方向に搬送できる。
図41は本発明のエアガイド式筒内噴射エンジンにおける燃焼室13内の混合状態を示す模式図である。吸気ポート21内に設置されたタンブル生成装置は、切り欠き弁43、シャフト43a、仕切板44で構成されている。
【0051】
切り欠き弁43が閉じている場合には、吸気行程中の吸入空気のほとんどは仕切板44の上側を通り燃焼室に流入する。その結果、燃焼室13内にはタンブル空気流動40が形成される。吸気バルブ27が開いている吸気行程中に流入して空気は、燃料噴射弁26から遠い側、すなわち排気バルブ29側の燃焼室壁面に沿って流れる。ピストン頂面は空気流動40がスムーズに流れるように円弧状になっており、さらに拡散防止のための溝が設けられている。このような構成にすることにより、ピストン頂面上には空気層が形成され、燃料付着を防止できる。さらに空気流動40は燃料噴射弁26方向に吹き上がり、燃料噴射弁26取付け側の燃焼室壁面、さらに燃焼室13の上部壁、すなわち天井壁に沿って流れ、旋回流を形成する。燃料噴霧41はこの旋回流によって点火プラグ方向に搬送される。その結果、噴霧はピストン位置に関係無く、すなわちエンジン回転数に関係無く、点火プラグ28のプラグギャップに到達することができる。その関係は燃料噴射位置からプラグギャップまでの距離と噴霧速度のみで決定されるので、高回転領域(3200rpm)まで成層運転が可能となる。
【0052】
本発明で用いているタンブル空気流動40は、吸気バルブから流入した後、一旦燃焼室13内の排気バルブ側の燃焼室壁面まで到達し、ピストン頂面形状に沿って吸気側に戻ってくる流れである。そのため吸気バルブ27の間に取付けられた燃料噴射弁26から噴射された燃料噴霧41はその流れに乗って最短距離で点火プラグ28に到達する。もし、燃料噴射弁26が排気バルブ29側にあった場合には、燃料噴霧41はピストン頂面に沿って吸気バルブ側まで流れ、点火プラグ28に到達することになるので、噴射してから点火プラグまでに到達する時間は長くなってしまう。さらにピストン頂面上に燃料が付着する可能性があり好ましくない。
本発明のエアガイド式筒内噴射エンジンを用いた実験では、回転数1400rpm、図示平均有功圧力Pi320kPaの運転条件において、安定して運転できる噴射時期(41図(a))と点火時期(41図(b))はそれぞれ70degBTDC、35degBTDCである。この時の噴射から点火までの時間は約3msecである。回転数3200rpm、図示平均有功圧力Pi350kPaの運転条件では、それぞれ90degBTDC、30degBTDCである。この時の噴射から点火までの時間は約3.12msecである。従って本発明のエアガイド式筒内噴射エンジンでは、エンジン回転数によらず噴射から点火までの時間は概ね約3msec前後である。
【0053】
次に本発明のエアガイド式に使用する燃料噴霧について説明する。
図42はエンジンに取り付けられた燃料噴射弁26から噴射された燃料噴霧の状態を模式的に示したものである。燃料噴霧41は周囲雰囲気が大気圧の時の噴霧形状であり、41pは0.6Mpaの時の噴霧形状である。吸気行程や圧縮行程の前半は燃焼室13内の圧力は大気圧程度であるので、燃料噴霧は41のようになる。圧縮行程後半では燃焼室13はピストン12の上昇によりその容積が小さくなり圧力が高くなる。噴射時期により雰囲気圧力は0.1から1.0Mpa程度まで変化するが、噴霧形状を特定するために0.6Mpaの時の噴霧形状で整理している。大気圧下での燃料噴霧41の噴霧角度はX1+X2で、加圧下での燃料噴霧41pの噴霧角度はY1+Y2で表す。
噴霧角度の測定方法を図44に示す。燃料噴射弁26のノズル先端Aとそこから25mm下の位置での噴霧外形点で三角形を作り、その角度を噴霧角度とする。燃料噴霧41の場合は点B−A−Eを結んでできた角度であり、41pの場合は点C−A−Dを結んでできた角度である。
【0054】
図42において、燃料噴射弁26は水平面に対して角度Aでエンジンに取り付けられている。角度Aを取り付け角度と呼ぶ。吸気バルブ27を含む燃焼室上壁は水平線に対して角度Bの位置にあり、点火プラグ28のプラグギャップは水平線に対して角度Cの位置にある。本発明のエアガイド式では成層運転をするために、燃料噴霧が点火プラグのプラグギャップ周辺に到達することが重要である。また、HC低減のために燃焼室上壁に燃料が付着することを防止することも重要である。したがって、点火プラグ側の噴霧外形位置をプラグギャップに対する角度で表すと分かり易い。プラグギャップ位置を表す角度Cと噴霧外形位置を表す角度(X1−A)を用いて次式で定義する角度を上端角Jと呼ぶ。
【0055】
上端角 J=(X1−A)−C (1)
式(1)は大気圧下での上端角を表していて、加圧下での上端角J‘は次式で定義する。
上端角 J‘=(Y1−A)−C (2)
上端角は噴霧角度、燃料噴射弁の取り付け角度とプラグギャップ位置で表されるので、特定のエンジンだけではなく多様なエンジンに対して一般的に使用できる。
図43に上端角とエンジン性能の関係を実験的に求めた結果を示す。横軸は加圧下の上端角J‘で、左側の縦軸は燃焼変動率Cpi、右側の縦軸はハイドロカーボン(HC)の排出濃度を表している。Cpiは100から1000サイクル程度の平均燃焼圧力からの変動を表しており、数値が小さい方が燃焼安定性が良いことを表している。上端角0度は噴霧外形位置が点火プラグギャップ位置と同じ位置にあることを表している。それより小さい場合は噴霧外形位置がプラグギャップに到達していないことを表しており、燃焼変動率Cpiは大きくなっている。上端角が−2(deg)以上でCpiの許容範囲以下となる。上端角−2(deg)では噴霧がプラグギャップに届いていないが、本発明の場合タンブル空気流動の作用で噴霧がプラグギャップ方向に噴き上がるので、実際には噴霧はプラグギャップに到達している。一方、HC濃度は低い方が良い。上端角が大きいと噴霧外形位置が燃焼室上壁に届いてしまい燃料が付着し、HC排出濃度が多くなってしまう。図43では上端角が+2(deg)以上でHC濃度が上昇しており、燃料が燃焼室上壁に付着していることが判る。上端角の定義には燃焼室上壁位置を表す角度Bが入っていないが、HCの排出挙動で上端角の上限値を推定できる。したがって、加圧下上端角が−2から+2(deg)の範囲で燃焼変動率CpiとHC排出濃度を両立できる。
【0056】
次にスワール/タンブル空気流動の測定方法を示す。スワール/タンブル空気流動の強度は、エンジンが1回転する間にスワールまたはタンブル空気流動が何回転かするかというスワール比またはタンブル比で定義される。ここでエンジン角速度をωN、スワール、タンブル流動をωS、ωTとすると、スワール比Sr、タンブル比Trは次式で表される。
Sr=ωS/ωN、 Tr=ωT/ωN
例えば、スワール比Sr=1では、エンジン1回転に対して、スワール流動が1回転することを表している。
図45にスワール空気流動の測定方法を示す。インパルススワールメータ450の上流にエンジンヘッド(スワールやタンブル空気流動を生成する被測定物)を取付ける。測定したいエンジン回転数に相当する空気量が流れるように下流に接続したブロワーで空気を引き、インパルススワールメータ450でスワールやタンブル空気流動の回転トルクを測定する。インパルススワールメータ450にはハニカムコア451があり、スワールやタンブル空気流動の角運動エネルギがそのハニカムコア451に加わり、ハニカムコア451を回転させようとする。その時の回転トルクをシャフト452から取り出して測定し、その値からスワール強度を計算する。
【0057】
図46は本発明を用いた筒内噴射エンジンの一例の透視斜視図である。また、図47は図46を燃焼室上方から見た概念図である。
ピストン12の上面には溝12aが形成されている。この溝12aは燃料噴射弁26から遠い位置から燃料噴射弁26の下部までピストン12の上面を横切って形成されている。
燃焼室13に吸入される空気の入口つまり、吸気口27pは燃焼室13上部の燃料噴射弁26に近い側に設けられている。
吸気口27pから燃焼室13に吸入される空気の流れ(太い一点鎖線で示す)は、燃料噴射弁26から遠い側に向かって流入し、ピストン12の上面に設けた溝12aに沿って燃料噴射弁26の下部に戻り、更に燃料噴射弁26の取り付け側の燃焼室壁面に沿って燃焼室13の天井壁に向かって上昇する縦旋回流を呈する。
また、燃焼室13の上部には空気を吸入する2個の吸気口27pが形成されており、燃料噴射弁26は2個の吸気口27pの間に取り付けられている。
燃料噴射弁26の中心軸は燃焼室上部に取り付けられた点火プラグ28の下部に向かって傾斜している。
点火プラグ28は燃焼室上部の中心から排気弁30側に少しずれている。これは燃料噴射弁26から点火プラグ28まで燃料を運ぶのにちょうど適当は距離を確保するためである。エンジンの種類によってはプラグ28が燃焼室上部の中心に位置すると、距離が短すぎて正常な点火次期より早く燃料がプラグを通り過ぎてしまうかもしれない。
【0058】
更に、燃料噴射弁26の中心軸は、コンロッド14とピストンとの連結ピンの中心軸に直行するように配置されており、結果的にピストン上面の溝12aはこの連結ピンを挿入するための孔14cに対して直角に形成されている。
これは、ピストンの質量のバランスを保つのに効果がある。また、溝を設けてもピストンの温度分布がさほどアンバランスにならない利点がある。
2つの吸気口27pから燃焼室13内に流入した空気流40L,40Rは対面する壁に向かって流れるが、幾分双方とも内側に志向していて、壁にぶつかる頃には一つの流れ40cに合流する。
合流した後は、壁に沿って下方に移動し、ピストン12の溝12aを形成する一対の壁面(図47に破線で示す)によって燃料噴射弁26の下方まで案内される。
そこで燃料噴射弁26側の壁にぶつかって上方に流れ、燃焼室13の天井、二つの吸気弁27,27、あるいは2つの吸気口27p,27pから流入する2本の空気流40L,40Rにガイドされ、2本の空気流40L,40Rの間を通って燃料噴射弁26から点火プラグまで流れ、やがて空気流40cに吸収される。
燃料噴射弁26は、このようなタンブル空気流40の内の燃料噴射弁26から点火プラグ28までの流れに燃料を噴射し、その空気流によって燃料噴射弁26から点火プラグ28まで搬送する。
【0059】
この方法だと、燃料の搬送距離が短く、燃焼室内の壁面などに燃料が付着する可能性が少ない。
特にピストンに対しては、溝12aで案内されて燃料噴射弁26側に流れる空気の層と、燃料噴射弁26からプラグ28に向かって流れる空気の層との二つの空気層によって隔離されるので、燃料はほとんどピストン12へは届かない。
このように構成された実施例では先に説明した高負荷、高回転数領域だけでなく、クランキング時或いは寒冷始動時のような過酷な条件下でもタンブルガイドによる成層運転が可能である事を実験で確認した。
クランキング時或いは寒冷始動時に成層運転できるので、最初の爆発から確実な着火ができ、始動時の最初の一発目の失火がまったくなかった。その結果、排気ガスの有害成分を低減できた。
【0060】
産業上の利用可能性
本発明の内燃機関の制御方法では、成層燃焼時にピストンに燃料が付着することがないため排気ガスを浄化できるとともに、均質運転時には混合気を均一に混合でき出力を向上できる優れた効果を有しているので、内燃機関、噴射弁、その他の類似装置として有用であり、また、120km/h走行時あるいは3200rpmのような高回転時における成層リーン運転や燃費を向上するのに適している。本発明は、軽トラック荷台カバーシートのリモートコントロールによる自動開閉装置に関するものである。
「軽トラック用カバーシート制御装置」より便利性と技術上の簡易性を提供するために開発されたこの「軽トラック荷台カバーシートのリモートコントロールによる自動開閉装置」は一連の作業を一段と容易かつ迅速に処理できるように様々な仕様を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】エンジンシステム図である。
【図2】ブロック図(1)である。
【図3】ブロック図(2)である。
【図4】運転領域マップを示す図である。
【図5】燃焼室内での旋回流を示す図である。
【図6】副吸気通路の設置位置を示す図である。
【図7】副吸気通路と旋回流の関係を示す図である。
【図8】噴射方向と旋回流の関係を示す図である。
【図9】別の旋回流発生方法を示す図である。
【図10】リーンバーン運転時の制御方法を示す図である。
【図11】燃料噴霧特性を示す図である。
【図12】噴霧挙動観察結果の概略を示す図である。
【図13】全開運転時の吸気速度と噴霧パルスの関係を示す図である。
【図14】単発噴射と分割噴射の比較を示す図である。
【図15】旋回流の強さと噴射パルスの関係を示す図である。
【図16】全開運転時の吸気速度と噴射パルスの関係を示す図である。
【図17】4孔拡散式ノズルの構成図である。
【図18】噴口位置ズレ式ノズルの構成図である。
【図19】多孔式ノズルの構成図である。
【図20】流路変化式ノズルの構成図である。
【図21】角穴を持った内燃旋回式ノズルの構成図である。
【図22】丸穴を持った燃料旋回式ノズルの構成図である。
【図23】スリット式ノズルの構成図である。
【図24】4孔スリット式ノズルの構成図である。
【図25】別の4本スリット式ノズルの構成図である。
【図26】2孔スリット式ノズルの構成図である。
【図27】4孔独立旋回式ノズルの構成図である。
【図28】4孔衝突式ノズルの構成図である。
【図29】8孔衝突式ノズルの構成図である。
【図30】噴霧共振式ノズルの構成図である。
【図31】別の噴霧共振式ノズルの構成図である。
【図32】流路変化式ノズルの構成図である。
【図33】本実施例のエンジン構成を示す透視図である。
【図34】空気流動生成装置の一例(長副吸気通路)を示す上面図と側面図である。
【図35】空気流動生成装置の一例(短副吸気通路)を示す上面図と側面図である。
【図36】空気流動生成装置の一例(切り欠き弁)を示す上面図と側面図である。
【図37】空気流動生成装置の一例(切り欠き弁+仕切板)を示す上面図と側面図である。
【図38】空気流動生成装置のタンブル比比較図である。
【図39】フラットピストンの場合の燃焼室内空気流動を示す透視図である。
【図40】改良型ピストン形状を示す斜視図である。
【図41】本実施例の燃料噴霧の搬送挙動を示す模式図である。
【図42】エンジン形状と燃料噴霧の関係を示す側面図である。
【図43】加圧下上端角とエンジン性能の関係を示す図である。
【図44】噴霧角度定義の説明図である。
【図45】インパルススワールメータの構成を示す図である。
【図46】本発明を用いた筒内噴射エンジンの一例の透視斜視図である。
【図47】図46を燃焼室上方から見た概念図である。
【符号の説明】
【0062】
3,4,8 プレート
5 中間室
6、7 噴口、スリット
11 エンジン
12 ピストン
13 燃焼室
14 コンロッド
15 クランクシャフト
16、17 クランク角度センサ
18 エアクリーナ
19 エアフローセンサ
20 スロットルバルブ
21 主吸気通路
22 副吸気通路
23 分流弁
24 高圧燃料ポンプ
25 燃料配管
26 燃料噴射弁
27 吸気弁
28 点火プラグ
29 排気バルブ
31 空燃比センサ
32 温度センサ
35 燃料噴射弁駆動装置
36 コントロールユニット
38 アクセルポジションセンサ
40 旋回流
41 燃料噴霧
42 分流弁
43 切り欠き付きの弁
44 仕切板
450 インパルススワールメータ
451 ハニカムコア
452 シャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が吸入される燃焼室と、
前記燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記燃焼室の容積を変化させるピストンを有し、
当該ピストンは前記燃料噴射弁に対面する燃焼室内壁面側から当該燃料噴射弁直下に向う空気の流れを許す面を備え、
前記燃料噴射弁から噴射される燃料噴霧と前記燃料噴射弁取付け側の燃焼室内壁面との間及び前記燃料噴霧と前記ピストンの上面との間に前記吸入された空気の層、または空気流の層が介在するように構成した筒内噴射型内燃機関。
【請求項2】
内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を備え、
前記燃料噴射弁から前記燃焼室に噴射される燃料噴霧のペネトレーションが、燃料の噴射開始から噴射終了までの期間において、前記燃焼室内で往復動するピストンの上面部と前記燃料噴射弁の燃料吐出口との間の距離より短く設定されている筒内噴射型内燃機関。
【請求項3】
内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を有し、
前記燃料噴射弁は、大気圧の雰囲気に燃料を噴射した時の3.8msec後の燃料噴霧のペネトレーションが60mm以下である燃料噴射弁で構成されている筒内噴射型内燃機関。
【請求項4】
内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁を有し、
前記燃料噴射弁はザウター平均粒径が20μm以下の燃料噴霧を噴射する燃料噴射弁で構成されている筒内噴射型内燃機関。
【請求項5】
請求の範囲第3項または第4項において、
前記燃料噴射弁は、円形または多角形の孔を有するプレートを複数枚重ねたアトマイザを備えた燃料噴射弁であることを特徴とする筒内噴射型内燃機関。
【請求項6】
吸気弁を通して空気が吸入される内燃機関の燃焼室と、
前記燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記燃焼室内に旋回空気流を発生させる旋回流生成手段と、
前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段とを有し、
前記検出された運転状態が中負荷のときには、吸気行程に燃料を噴射するように前記燃料噴射弁に燃料噴射弁駆動信号を供給する制御装置を有する筒内噴射型内燃機関。
【請求項7】
吸気弁を通して空気が吸入される内燃機関の燃焼室と、
前記燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段とを有し、
前記検出された運転状態が高負荷のときには、吸気行程であって吸入空気速度が噴霧速度より遅くなる期間に燃料を噴射するように前記燃料噴射弁に燃料噴射弁駆動信号を供給する制御装置を有する筒内噴射型内燃機関。
【請求項8】
請求の範囲第7項の筒内噴射型内燃機関において、
前記燃料噴射弁は、円形または多角形の孔を有するプレートを複数枚重ねたアトマイザを備えた燃料噴射弁であり、
前記制御装置は、前記吸気弁が全開となるタイミングの前後で燃料を複数回噴射するように前記燃料噴射弁に燃料噴射弁駆動信号を供給することを特徴とする筒内噴射型内燃機関。
【請求項9】
内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する上流スワール型の燃料噴射弁と、
前記内燃機関の運転状態を検出する運転状態検出手段とを有し、
前記検出された運転状態が高負荷のときには、吸気行程であって吸入空気速度が噴霧速度より早くなる期間に1回で燃料を噴射するように前記燃料噴射弁に燃料噴射弁駆動信号を供給する制御装置を有する筒内噴射型内燃機関。
【請求項10】
筒内噴射型内燃機関の制御方法において、
内燃機関の運転状態が低負荷のときには、
燃焼室内に旋回空気流を生成させ、
圧縮行程前半に燃料を噴射し、
前記旋回空気流の内側に濃い混合気層を形成して、
成層リーン運転を行うことを特徴とする内燃機関の制御方法。
【請求項11】
筒内噴射型内燃機関の制御方法において、
内燃機関の運転状態が中負荷のときには、
燃焼室内に旋回空気流を生成させ、
吸気行程に燃料を噴射し、
前記旋回空気流によって前記燃焼室内に濃度の均質な混合気を生成して、
均質リーン運転を行うことを特徴とする内燃機関の制御方法。
【請求項12】
筒内噴射型内燃機関の制御方法において、
内燃機関の運転状態が高負荷のときには、
吸気行程であって、吸入空気速度が噴霧速度より遅くなる期間に理論空燃比を達成し得る量の燃料を噴射し、吸入空気によって燃焼室内に濃度の均質な混合気を生成して、
均質ストイキ運転を行うことを特徴とする内燃機関の制御方法。
【請求項13】
内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁において、
前記燃料噴射弁から噴射される燃料噴霧は、大気圧の雰囲気に燃料を噴射した時の3.8msec後のペネトレーションが60mm以下であることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項14】
内燃機関の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁において、
前記燃料噴射弁から噴射される燃料の噴霧粒径は、ザウター平均粒径が20μm以下であることを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項15】
請求の範囲第13項または第14項において、
前記燃料噴射弁の燃料噴出部に燃料が通過する円形または多角形の孔を有するプレートを複数枚重ねたアトマイザを備えた燃料噴射弁。
【請求項16】
空気が吸入される燃焼室と、
前記燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記燃焼室の容積を変化させるピストンとを有し、
前記ピストンの上面には溝が形成されており、
前記溝は前記燃料噴射弁から遠い位置から当該燃料噴射弁の下部まで前記ピストンの上面を横切って形成されており、
前記燃焼室に吸入される空気の入口は前記燃焼室上部の前記燃料噴射弁に近い側に設けられており、
前記入口から前記燃焼室に吸入される空気の流れは、前記燃料噴射弁から遠い側に向かって流入し、前記ピストンの上面に設けた前記溝に沿って前記燃料噴射弁の下部に戻り、更に前記燃料噴射弁取り付け側の燃焼室壁面に沿って当該燃焼室の天井壁に向かって上昇する旋回流を呈する
筒内噴射型内燃機関。
【請求項17】
前記燃焼室上部に設けた空気の入口の上流側に、吸入空気の流速を高める為の絞りを形成するバルブ装置を備えた請求の範囲第16項の筒内噴射型内燃機関。
【請求項18】
空気が吸入される燃焼室と、
前記燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記燃焼室の容積を変化させるピストンとを有し、
前記ピストンの上面には窪みが形成されており、
前記窪みは前記燃料噴射弁から遠い側及び当該燃料噴射弁に近い側で凸部を有し二つの凸部の中間部で深い凹部を有し、
前記燃焼室に吸入される空気の入口は前記燃焼室上部の前記燃料噴射弁に近い側に設けられており、
前記入口から前記燃焼室に吸入される空気の流れは、前記燃料噴射弁から遠い側に向かって流入し、前記ピストンの上面に設けた前記窪みに沿って前記燃料噴射弁の下部に戻り、更に前記燃料噴射弁取り付け側の燃焼室壁面に沿って当該燃焼室の天井壁に向かって上昇する旋回流を呈する
筒内噴射型内燃機関。
【請求項19】
空気が吸入される燃焼室と、
前記燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記燃焼室の容積を変化させるピストンとを有し、
前記燃焼室に吸入される空気の入口は前記燃焼室上部に取り付けられた前記燃料噴射弁を挟んで両側に各一つ設けられており、
前記二つの入口から前記燃焼室に吸入される空気の流れは、前記燃料噴射弁から遠い側に向かって流入し、前記ピストンの上面に沿って前記燃料噴射弁の下部に戻り、更に前記燃料噴射弁取り付け側の燃焼室壁面に沿って当該燃焼室の天井壁に向かって上昇する旋回流を呈する
筒内噴射型内燃機関。
【請求項20】
空気が吸入される燃焼室と、
前記燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記燃焼室の容積を変化させるピストンとを有し、
前記燃焼室の上部には空気を吸入する2個の吸気口が形成されており、前記燃料噴射弁は前記2個の吸気口の間に取り付けられており、
前記燃料噴射弁の中心軸は燃焼室上部に取り付けられた点火プラグの下部に向かって傾斜しており、
前記入口から前記燃焼室に吸入される空気の流れは、前記燃料噴射弁から遠い側に向かって流入し、前記ピストンの上面に沿って前記燃料噴射弁の下部に戻り、更に前記燃料噴射弁取り付け側の燃焼室壁面に沿って当該燃焼室の天井壁に向かって上昇する旋回流を呈する
筒内噴射型内燃機関。
【請求項21】
空気が吸入される燃焼室と、
前記燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、
前記燃焼室の容積を変化させるピストンとを有し、
前記燃焼室の上部には空気を吸入する2個の吸気口が形成されており、前記燃料噴射弁は前記2個の吸気口の間に取り付けられており、
前記燃料噴射弁の中心軸はエンジンのコンロッドまたはピストンピンの中心軸に直行するように配置されており、
前記入口から前記燃焼室に吸入される空気の流れは、前記燃料噴射弁から遠い側に向かって流入し、前記ピストンの上面に沿って前記燃料噴射弁の下部に戻り、更に前記燃料噴射弁取り付け側の燃焼室壁面に沿って当該燃焼室の天井壁に向かって上昇する旋回流を呈する
筒内噴射型内燃機関。
【請求項22】
請求の範囲第16項から第21項に記載のいずれか1項の筒内噴射型内燃機関において、
燃料噴射時期が点火時期より3.0msec±0.5msec前に設定される
筒内噴射型内燃機関。
【請求項23】
ピストンが往復動する燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、燃料に点火する点火プラグとを備えた筒内噴射型内燃機関であって、
前記ピストンの上面に沿って前記燃料噴射弁下部に至り、前記燃焼室周壁に沿って上昇して燃料噴射弁部から前記点火プラグ部に向かう空気流動を形成するタンブル空気流生成装置を備え、
前記燃料噴射弁から供給された燃料を前記空気流動により前記点火プラグ方向へ搬送する筒内噴射型内燃機関。
【請求項24】
ピストンが往復動する燃焼室内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁が二つの吸気口の間に装着されており、前記燃焼室の天井壁中央部には点火プラグが装着されている筒内噴射型内燃機関に用いるものであって、
前記吸気口上流の空気通路内にあって機関の特定の運転状態で操作され、前記吸気口が開いたとき、前記二つの吸気口から導入された二つの空気流を前記燃料噴射弁から遠い側の燃焼室周壁面に向けて指向させる制御弁を備え、
且つ前記ピストンの頂面で前記二つの空気流をガイドして前記燃料噴射弁の下方から前記燃料噴射弁と点火プラグを結ぶ線に沿って旋回する一本のタンブル空気流として合流させる筒内噴射型内燃機関に用いるタンブル空気流生成装置。
【請求項25】
ピストンが往復動する燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、当該燃料噴射弁が位置する側の燃焼室天井壁に開口し、吸気バルブによって開閉される吸気口と、
前記燃料噴射弁の位置から遠い側の前記燃焼室の天井壁に開口し排気バルブによって開閉される排気口と、
前記排気口と吸気口との間の燃焼室天井壁に装着された点火プラグとを備えた筒内噴射型内燃機関であって、
前記吸気口の上流の空気通路内に設けられていて機関の特定の運転状態で操作され、前記吸気弁が開いたとき前記吸気口を通って前記燃料噴射弁から遠い側の燃焼室周壁面に向けて空気を供給するよう空気を指向させる制御弁を備え、
前記燃料噴射弁から供給された燃料を前記燃料噴射弁部から前記点火プラグ部に向かう空気流動に乗せて前記点火プラグ部に搬送すると共に、
前記機関の特定の運転状態では、前記点火プラグの着火タイミングと前記インジェクタの燃料噴射タイミングとの間隔が、前記特定の運転状態以外の両タイミングの間隔に比べ機関の回転数の変動に対する変化が小さくなるよう特徴付けられている筒内噴射型内燃機関。
【請求項26】
ピストンが往復動する燃焼室内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁と、燃料に点火する点火プラグとを備えた筒内噴射型内燃機関であって、
前記燃料噴射弁の噴射燃料と前記ピストンとの間に、前記ピストンの上面を通って前記燃料噴射弁方向に向かう空気流と、前記燃料噴射弁から前記点火プラグ方向に向かう空気流との、互いに流動方向が逆向きの二つの空気流を有する筒内噴射型内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【公開番号】特開2007−187166(P2007−187166A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63019(P2007−63019)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【分割の表示】特願2000−556140(P2000−556140)の分割
【原出願日】平成11年6月22日(1999.6.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】