説明

箔圧延の圧延荷重予測方法、箔圧延の形状予測方法および箔圧延のパススケジュール決定方法

【課題】軽圧下の圧延において、圧延荷重の予測精度を向上するモデルを提供する。
【解決手段】ヒッチコックの扁平変形とヒルの関数とを用いて圧延荷重を予測するモデルにおいて、ヒッチコックの扁平変形において圧延荷重Pに乗算される補正項F(r)及びヒルの関数に加算される補正項G(r)を導入した。この補正項F(r)及びG(r)は、箔板材を圧延する際の摩擦係数の値が圧下率rに依存せず一定となると共に、圧下率rの変化に対する影響係数の値が実績値と一致するように決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、12段式、20段式等のクラスター型多段圧延機(以下、多段ミルと称す)等を使用し箔材の圧延を行うに際し、箔圧延時の圧延荷重の予測を精度よく行なう方法と、その方法を用いた箔圧延の形状予測方法、および箔圧延のパススケジュール決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
箔材の圧延は、2台の巻回リールで交互に巻取り・巻戻して圧延機を行き来するように極薄の金属板を通板し、この極薄金属板の圧下を繰り返して板厚を減少させることにより行われている。例えば、このような箔材の圧延装置として、多段ミルが用いられる。多段ミルは、ステンレスなどの硬い材料を冷間圧延するためのクラスターロールを持つ圧延機である。多段ミルでは、硬い材料に強圧下を与える目的で、小径のワークロールが用いられる。
【0003】
このような多段ミルを含め、従来の冷間圧延における圧延荷重の予測は、例えば、圧延スタンド毎の入・出側板厚などの圧延パラメータを基に、圧延荷重式(ヒルの式)とロール扁平式(ヒッチコックの式)を連立させて圧延荷重を計算し、この計算値と実績値の比によって得られる補正係数を、次の圧延の設定値として求めた計算圧延荷重に乗じることによって行われていた。さらに、この補正係数をコイル毎、または鋼種毎に学習することにより、摩擦係数の経時的な変動や変形抵抗の推定誤差の影響を小さくして、圧延荷重の予測精度を高めることも行なわれている。
【0004】
ところで、箔圧延では、板厚が薄くなると、圧延荷重が高まるものの圧下量が減少する。このため、圧下が難しくなり、目標板厚まで圧延するためにパス回数を増やす必要がある。また、圧延を実際に行わないとどの程度まで圧下できるかわからないため、圧延パススケジュールの設計ができない難点があった。さらには、このような軽圧下の平坦度が実機とシミュレーションで異なるとの問題があり、非常に高い平坦度を要求される箔圧延において、平坦度制御が非常に難しいものとなっていた。
【0005】
このような箔圧延の軽圧下状況の下において、上述した従来の手法で圧延荷重を計算すると、予測される圧延荷重の精度が極端に低下する現象が認められることが現場の実績としてわかっている。
この現象の原因は、被圧延材の板厚が極端に薄い上に、摩擦係数が大きく圧延荷重が高くなるため、従来の板圧延理論が成立しない領域で圧延が行われると考えられている。実際、ヒルの式の近似精度は、圧下率が10〜60%の範囲以外では低下すると言われ、ヒッチコックの式についても、板厚が薄くかつ摩擦係数が大きい圧延条件では、変形後のロール表面形状が円弧状を保つという前提が成り立たなくなる。このため、特に、圧下率が約5%以下の圧延条件では、ヒルの式の近似精度が低下し、特に、板厚が薄いほど精度が悪くなることがわかっている。
【0006】
特許文献1においては、上述した近似精度の悪化に鑑み、ダルロールを用いるタンデム圧延機の最終パスを対象として、圧延荷重予測精度の向上のために、圧延荷重モデルのロール扁平式に補正係数を導入することにより荷重精度が向上することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−55881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された方法を採用することで、圧延荷重の予測精度の向上は望めるものの、実際の現場に適用できるほどの精度向上は難しいことが実績より明らかとなっている。加えて、特許文献1に開示された方法を用い圧延荷重を算出したとしても、圧延形状の予測精度の向上や圧延パススケジュールの計算には不十分であることも明らかとなっている。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、軽圧下(特に圧下率10%以下)の圧延において、圧延荷重の予測精度を向上させることができると共に、板形状を精度高く予測することができ、且つパススケジュールの設計が可能となる箔圧延の圧延荷重予測方法、箔圧延の形状予測方法および箔圧延のパススケジュール決定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明のある局面に係る箔圧延の圧延荷重予測方法は、箔板材を軽圧下するに際し、圧下率rに依存する補正項F(r),G(r)を備えた圧延荷重モデル(式(1)〜式(5))を用いて圧延荷重を予測する。
【0011】
【数1】

【0012】
この圧延荷重予測方法によると、ワークロール半径Rを算出する式で、単位幅あたりの圧延荷重pに補正項F(r)が乗算されることで補正がなされ、圧下力関数Qを算出する式で、補正項G(r)が直接加減算されることで補正がなされる。この結果、推定される摩擦係数が一定になり且つ影響係数が実績値と計算値とで一致して、軽圧下における箔圧延に好ましい圧延荷重予測モデルを提案できる。
【0013】
好ましくは、前記箔板材を圧延する際の摩擦係数の値が圧下率に依存せず一定となると共に、圧下率の変化に対する影響係数の値が実績値と一致するように、前記補正項F(r),G(r)を決定し、決定された補正項F(r),G(r)を備えた前記圧延荷重モデルを用いて圧延荷重を予測する。
好ましくは、前記補正項F(r),G(r)が次式で表せることを特徴とする。
【0014】
【数2】

【0015】
本発明の別の局面に係る箔圧延の形状予測方法は、箔圧延の圧延荷重予測方法を用いて、前記箔板材の出側形状予測を行うことを特徴とする。
この形状予測方法によると、軽圧下(特に圧下率10%以下)の圧延において、圧延後の出側の箔材の形状予測精度を向上させることができる。
本発明のさらに別の局面に係る箔圧延のパススケジュール決定方法は、箔圧延の圧延荷重予測方法を用いて、前記箔板材のパススケジュールを決定することを特徴とする。
【0016】
このパススケジュール決定方法によると、設計段階において圧延形状を精度高く予測することができ、最適なパススケジュールの設計が可能となり、合理的な圧延を行い生産性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、軽圧下(特に圧下率10%以下)の圧延において、圧延荷重の予測精度を向上させることができると共に、板形状を精度高く予測することができ、且つパススケジュールの設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る箔圧延の圧延荷重予測方法が適用される多段ミルの概略構成を示す図である。
【図2】図1の多段ミルの箔圧延のメカニズムを説明する図である。
【図3】(a)は圧下率と推定摩擦係数と関係を示した図であり、(b)は圧下率と影響係数と関係を示した図である。
【図4】張力変化と圧延荷重との関係を示す実績値をまとめた図であって、(a)は圧下率12%の場合、(b)は圧下率6%の場合、(c)は圧下率2.4%の場合、(d)は圧下率1.2%の場合。
【図5】圧延荷重モデルにおける補正項を示す図である。
【図6】(a)は圧下率と補正後の推定摩擦係数と関係を示した図であり、(b)は圧下率と補正後の影響係数と関係を示した図である。
【図7】箔圧延の出側板形状の予測方法を示すフローチャートである。
【図8】(a)は従来モデルによる出側板形状の予測結果を示す図であり、(b)は新モデルによる出側板形状の予測結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明の実施の形態に係る箔圧延の圧延荷重予測方法が適用される12段式のクラスター型多段圧延機(多段ミル)の概要について説明する。
図1は、ステンレス等の金属箔(以降、箔材)を圧延する多段ミル1の概略図である。多段ミル1は、1対のワークロール4,4と複数の中間ロール5及びバックアップロール6を有していて、2台の巻回リール2,3の間に配置されている。
【0020】
すなわち、これら2台の巻回リール2,3を交互に巻取り・巻出して多段ミル1を行き来するように箔材7を通板することにより、この極薄金属板の圧下を繰り返して板厚を減少させて、箔材7の圧延が行われる。
多段ミル1と各巻回リール2、3との間には、箔材7の通板方向で上流側から下流方側へ向けて順に、箔材7の板厚を測定する板厚計(図示せず)や、箔材7のパスラインを一定にするデフレクタロール8とが配置されている。
[圧延荷重の予測]
ここで、前述した多段ミル1を用いて箔材7を軽圧下するに際し、圧延状況を従来の圧延荷重予測モデルを用いシミュレートすることを考える。
【0021】
使用した圧延荷重予測モデルは以下の通りである。
【0022】
【数3】

【0023】
図2に、多段ミル1における圧延部分の拡大図を示す。この図に示す如く、ワークロール4,4に挟まれた箔材7は、圧延パスにおいて、厚さh1から厚さh0に圧延加工される。lはワークロール4の接触長さ、Rは扁平変形後のワークロール4の半径、Δhは圧下量(h1−h0)、φ1は接触角であって、圧下率rはΔh/h1で表わされる。
式(8)〜式(12)を用いて計算した結果を、図3に示す。
【0024】
図3(a)は、圧下率rの推移に伴う摩擦係数μの変化を示したものである。この摩擦係数μは計算値であり推定摩擦係数とも呼ぶ。図3(b)で示されるグラフは、圧下率の推移に伴う影響係数(圧延荷重を張力で微分したもの)の変化を示したものであり、○が計算値、●が実績値である。
図3(a)に示すように、摩擦係数μは圧下率rが小さくなるほど、特に、軽圧下領域(r<0.1)において顕著に大きな値となっている。摩擦係数μは、本来であれば圧下率rによらず一定値(図3(a)においては0.1程度)であることが知見されている。すなわち、摩擦係数μは圧下率rが小さい領域では過大であると推察される。
【0025】
一方、影響係数について、実績値と計算値とで比較した。
その結果、図3(b)に示すように、本来は一致する実績値と計算値とが、圧下率r<0.1の軽圧下領域では一致していない。
なお、図3(b)における実績値は、数々の箔圧延の実績データを図4(a)〜図4(d)のようにまとめ、各グラフの傾きを影響係数として求めたものである。
【0026】
図4の箔圧延の実績データは、圧下率r=12%(通常圧延)から圧下率r=1%(軽圧下)までにおけるものであり、入側・出側板厚をAGC(Auto Gap Control)による板厚制御を行い、入側・出側張力を単独で上下動させ、その張力変化に対する荷重変化を、圧下率rを変化させて求めた。
図4(a)に、圧下率r=12%の場合における張力変化に対する荷重変化を示す。図4(b)に、圧下率r=6%の場合における張力変化に対する荷重変化を示す。図4(c)に、圧下率r=2%の場合における張力変化に対する荷重変化を示す。図4(d)に、圧下率r=1%の場合における張力変化に対する荷重変化を示す。なお、図4(a)〜図4(d)に示した張力は、入側・出側張力の和の偏差を示している。これらの図に示すように、圧下率rに関わらず、荷重に対する入側・出側張力の配分はほぼ等しい。
【0027】
以上述べたような「摩擦係数、影響係数が現実の値と不一致」となっている状況を回避するために、本願発明者らは以下の考えに至った。
まず、式(10),式(11)に示すヒッチコックの式では、ワークロール4から箔材7に付与される圧延荷重分布が放物線形状であることを前提とし、接触長さlが円弧変形することを前提としている。しかしながら、軽圧下時の圧延変形の状態をFEM解析すると、軽圧下時には円弧変形では表現できないロール変形が生じていることが知見された。
【0028】
このため、圧下率rによらず摩擦係数μを一定値とし、影響係数を実績値と計算値とで一致させるためには、圧延荷重pに影響を与える補正項が有効であることの考えに至った。より詳しくは、式(11)における(C・P/Δh)に着目して、圧延荷重Pに乗算される項を補正項F(r)とすることが好ましいことを見出した。
次に、影響係数は、圧延荷重を張力で偏微分した値であって、式(8)を張力σで偏微分すると明らかなように、圧下力関数Qとワークロール4の接触長さlとの関数となる。このことを鑑み、影響係数を実績値と計算値とで一致させるためには、接触長さl及び圧下力関数Qを補正する必要がある。
【0029】
ところが、式(10)から接触長さlが扁平変形後のワークロール4の半径Rの関数であるので、接触長さlの補正は、ワークロール4の半径R、すなわち式(11)を補正することによりすでに実現されている。
そこで、圧下力関数Qの補正を行う。圧下力関数Qの補正項G(r)は、式(12)に直接加算することとした。
【0030】
以上の補正項を組み込んだ本願発明にかかる圧延荷重予測式は、式(1)〜式(5)のようになる。
【0031】
【数4】

【0032】
補正項F(r),G(r)の具体的な式は、以下のようにして求めている。
まず、図3(a)において、圧下率rが可変となったとしても、摩擦係数μが略一定の値(例えば、μ=0.1)をとると共に、図3(b)において、圧下率rが変わったとしても、影響係数の計算値と実績値とが一致するように、補正項F(r),G(r)の数値を決定する。
【0033】
具体的には、圧下率r=12%の圧延を行った際の状況を、式(1)〜式(5)を用いてシミュレートし、「摩擦係数μが略一定」且つ「影響係数の計算値と実績値とが一致する」ようなF(r),G(r)の数値を求める。同様に、圧下率r=6%、圧下率r=2%、圧下率r=1%の圧延をシミュレートし、各圧下率rでのF(r),G(r)を求める。これらの計算には収束計算の手法を用いるとよい。
【0034】
図5の●のグラフは、求まったF(r)の値がプロットされたもので、これらの点を基にした回帰式により、F(r)は式(6)のように決定される。
図5の○のグラフは、求まったG(r)の値がプロットされたもので、これらの点を基にした回帰式により、G(r)は式(7)のように決定される。
【0035】
【数5】

【0036】
図6には、式(1)〜式(7)(新モデルと呼ぶこともある)を用いて、箔圧延をシミュレートした結果が示されている。
図6(a)の「補正後のグラフ」に示されるように、摩擦係数μは、圧下率rによらずほぼ一定である。また、影響係数に関しては、図6(b)に示される如く、圧下率rが変化したとしても、新モデルによる計算値と実績値とが略一致するものとなっている。
【0037】
これにより、新モデルは、箔材の軽圧下であっても確実に圧延状況を再現でき、圧延荷重等を精確に予測することができるものとなる。
[出側板形状の予測]
次に、上述した式(1)〜式(7)が適用される新モデルを用いた、箔圧延の出側板形状の予測方法について説明する。
【0038】
図7は、この箔圧延の形状予測方法を示すフローチャートである。なお、予測される形状とは、圧延材の出側板形状である。
まず、ステップS10にて、ワークロール4直下での圧延材の荷重分布p(x)、ロールギャップS(x)、板幅方向の張力分布σ(x)を仮定する。
ステップS20にて、ワークロール4やバックアップロール6間の力の釣り合いやロール表面の適合条件から、ロール間の接触面圧q(x)を計算する。
【0039】
ステップS30にて、圧延材の荷重分布p(x),ロール間接触面圧q(x)、すなわちp(x)・q(x)から各ロール(ワークロール4やバックアップロール6)のたわみ量を算出する。
ステップS40にて、計算されたたわみ量からワークロール4の表面変位を計算する。
ステップS50にて、得られたワークロール4の表面変位を基に、板厚分布、張力分布σ(x)を算出する。
【0040】
ステップS60にて、板厚分布から得られる圧下量Δh、張力分布σ(x)などを基に、新モデル(式(1)〜式(7))を用いて、圧延荷重分布p(x)を求める。
以上のようなステップS20〜ステップS50を、例えば計算値が収束するまで、繰返し計算する。
なお、ステップS50において、入側及び出側板厚から板幅方向の圧下率ε(x)を計算し、この圧下率ε(x)すなわち伸び率ε(x)を出側板形状とする。さらに、圧下率ε(x)の偏差Δε(x)を計算した上で、張力分布σ(x)をσ(x)=σ(x)+Ε・(1−ξ)・Δε(x)で算出する。ここで、ξは形状変化係数である。
【0041】
このようにして算出された結果を、図8を用いて説明する。
図8(a)は、従来モデル(式(8)〜式(12))を用いた形状予測結果であり、図8(b)は、新モデル(式(1)〜式(7))を用いた形状予測結果である。各図とも、圧下率r=1%にて圧延した場合であって、その縦軸は、圧延後の平坦度である。
新モデルを用いると、圧下率rによらず、ほぼ一定の摩擦係数となるとともに、軽圧下領域においても、板形状の予測精度が向上していることがわかる。
[圧延パススケジュールの決定]
なお、圧下率rが小さい箔材7の圧延において、そのパススケジュールを上述した圧延荷重予測方法、つまり新モデルを用いて算出するようにすることは非常に好ましい。以下、このパススケジュールの決定方法について説明する。
【0042】
圧延材のパススケジュールとして、各圧延機で最大圧延荷重を超えない制約条件下で、圧下率をなるべく大きくし生産性を上げる条件(評価関数)で圧延を行うものを考える。このパススケジュールは、例えば、以下の手順で求める。
(手順1) 複数存在する圧延機のそれぞれにおいて、最大圧延荷重(圧延機の耐荷重)PMAXを決める。
【0043】
(手順2) 圧延機での元板厚hin,製品板厚houtを決める。
(手順3) 圧延機のワークロール4の半径R、及び過去の実績値から推定した摩擦係数μを決定すると共に、iパス目の圧下率r(i)を仮定する。
(手順4) iパス目の入側板厚hin(i)から圧下率r(i)を基に出側板厚hout(i)を求める。なお、i=1の場合は、hin(1)=hinとする。
【0044】
(手順5) hin(i),r(i)から圧延材の変形抵抗Kを求める。
(手順6) 変形抵抗K,iパス目の入側板厚hin(i)から、入側張力σin,出側張力σoutを決定する。
(手順7) 摩擦係数μ、入側張力σin,出側張力σout、変形抵抗K、入側板厚hin(i)、出側板厚hout(i)を、新モデル(式(1)〜式(7))に代入し、iパス目の予測圧延荷重Pcalを求める。
【0045】
(手順8) Pcal(i)>PMAXの場合には、設定した圧下率r(i)=r(i)+δrとして、手順4へ戻る。
(手順9) Pcal(i)<PMAXの場合には、設定した圧下率r(i)=r(i)・αとして、手順4へ戻る。ただし、α<1.0である予め決められた値である。
(手順10) 前回の荷重計算Pcal(i-1)>PMAX、且つPcal(i)<PMAXの場合は、iパス目の圧下率r(i)とし、hin(i+1)=hout(i)、且つi=i+1とする。
【0046】
(手順11) hout(i)>houtの場合、手順4へ戻る。
(手順12) hout(i)<houtの場合、iパスを最終パスとする。この場合の圧下率r(i)は(hin(i)−hout)/hin(i)である。
以上のようにすると、圧下率rが小さい箔材7の圧延のパススケジュールを的確に決定することができる。
【0047】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0048】
1 多段ミル
2 巻回リール
3 巻回リール
4 ワークロール
5 中間ロール
6 バックアップロール
7 箔材
8 デフレクタロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箔板材を軽圧下するに際し、圧下率rに依存する補正項F(r),G(r)を備えた圧延荷重モデル(式(1)〜式(5))を用いて圧延荷重を予測することを特徴とする箔圧延の圧延荷重予測方法。
【数6】

【請求項2】
前記箔板材を圧延する際の摩擦係数の値が圧下率に依存せず一定となると共に、圧下率の変化に対する影響係数の値が実績値と一致するように、前記補正項F(r),G(r)を決定し、
決定された補正項F(r),G(r)を備えた前記圧延荷重モデルを用いて圧延荷重を予測することを特徴とする請求項1に記載の箔圧延の圧延荷重予測方法。
【請求項3】
前記補正項F(r),G(r)が次式で表せることを特徴とする請求項2に記載の箔圧延の圧延荷重予測方法。
【数7】

【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載された箔圧延の圧延荷重予測方法を用いて、前記箔板材の出側形状予測を行うことを特徴とする箔圧延の形状予測方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載された箔圧延の圧延荷重予測方法を用いて、前記箔板材のパススケジュールを決定することを特徴とする箔圧延のパススケジュール決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−240353(P2011−240353A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113113(P2010−113113)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(306032316)新日鉄マテリアルズ株式会社 (196)
【Fターム(参考)】