説明

管の冷間曲げ方法、冷間曲げ装置およびこれらで加工されたエルボ

【課題】ネック付きの有無に拘わらず、曲げ部の曲げ外周部の減肉が少なく、かつ曲げ内周側のしわ発生を抑制できるエルボを提供する。
【解決手段】ガイドチューブに挿入された素管を挿入側から逐次または連続的に押し抜きながら、縮径加工とともに曲げ加工を施して、目標の軸心曲率を有するエルボを成形する冷間曲げ方法であって、前記縮径加工に際し、前記素管の曲げ外周側の肉厚を曲げ内周側の肉厚に比べて増肉し、引き続いて曲げ加工を施すことを特徴とする管の冷間曲げ方法である。前記縮径加工を偏芯ダイス、ロール径の異なる異形ロール対、または半割りダイスとロールとを組み合わせて行い、前記素管の曲げ外周側の肉厚を曲げ内周側の肉厚に比べ増肉することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管系に使用されるエルボ、または、接続用の直管を端部に設けたネック付きエルボに関し、さらに詳しくは、曲げ部の偏肉特性(周方向の肉厚変動)に優れるとともに曲げ内周側のしわ発生を抑制できる管の冷間曲げ方法、冷間曲げ装置およびこれらを用いて加工されたエルボに関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電および化学プラント配管等に用いられるエルボの加工に際し、直管から曲げ加工された管の外周側では引張応力が作用し、内周側では圧縮応力が作用することから、外周側の肉厚は薄くなり、内周側の肉厚は厚くなるとともにしわを発生し易い。このような傾向は、曲げ半径が小さい場合や薄肉の場合に顕著になる。このため、従来から、曲率半径が小さな薄肉管のエルボ製品の成形加工では、エルボ曲げ部の周方向での肉厚変動が少なく、曲げ内周側でしわを発生させない種々の曲げ加工方法が提案されている。
【0003】
例えば、非特許文献1の41頁、図3.6には、マンドレル拡管曲げ(ハンブルグ曲げ)に関し、曲率半径が小さなエルボの加工法として最も普及している加工法であることが解説されている。このマンドレル拡管曲げでは、素管とマンドレルを加熱した状態で加工が施され、マンドレルの形状は素管外径が製品側に向かって徐々に大きくなるように構成されているのが特徴であり、素管は拡管しながら曲げ成形される。そして、得られたエルボの曲げ外周側の減肉が小さく、また曲げ内周側のしわも抑制されることが経験的に認識されている。
【0004】
しかし、マンドレル拡管曲げは熱間加工によるため、素材の加熱手段が必要になり加熱に要する費用が増大するとともに、加熱状態のばらつきにより形状不良が生じ、これにともなう加工不良が発生し易くなる。さらに、成形時にエルボの内面に疵が入り易く、またマンドレル費用が高価であることや、加熱処理にともない作業性が低下することも問題となる。
【0005】
このため、熱間加工によるエルボの成形加工に替えて、冷間加工による曲げ方法が検討される。非特許文献1の39頁、図3.4には、最も普及している曲げ加工法として引き曲げを解説している。そして、同図3.4には、楕円の減少対策として芯金(マンドレル)を用いること、しわの抑制対策としてワイパーを用いること、さらに曲げ外周側の減肉対策としてブースタを用いて、曲率半径が小さな曲げ加工を可能にすることが示されている。
【0006】
しかし、同図3.4に示す引き曲げであっても、依然として曲げ外周側の減肉量が大きく、曲率半径が小さなエルボとしては満足できる偏肉特性を確保することができない。このため、曲げ外周側の減肉が問題とならない用途や比較的曲率半径が大きなエルボ製品への適用に制限される。
【0007】
さらに、非特許文献1の40頁、図3.5には、型を用いた押し通し曲げを解説している。この押し通し曲げは、曲率半径が小さなエルボの加工法として開発されたものであり、素管の外側には二つ割りの金型を配し、管内面にはマンドレルを挿入して曲げ加工する方法であるが、工具費用が高価となり、さらに素管の先端部分で不整変形が発生し易く、曲げ部において偏肉がでることが問題となる。
【0008】
また、非特許文献2では、ダイスを用いた押し通し曲げ(MOS曲げ加工法)を論説している。このMOS曲げ加工法では、曲げロールに替えて素管外径と同一の穴径を有するダイスを用い、ダイスを傾斜させて配置させ、素管をダイスに押し通すことにより曲げ加工をする。ダイスの傾斜角度の設定により、所定の曲率半径を得ることができることから、MOS曲げ加工法は簡便な加工方法であるが、曲率半径が小さい場合に曲げ部の楕円としわ発生が顕著となり、エルボの成形加工に適用が難しいという問題がある。
【0009】
配管系に使用されるエルボとして、配管の溶接施工性を向上させるため、接続用の直管部を片端または両端に設けたネック付きエルボを効率的に製造することが要請されている。従来の代表的な加工法であるマンドレル拡管曲げ法でネック付きエルボを製造する場合には、前述した装置構成(非特許文献1の41頁、図3.6)により、端部のネック長さを見込んだ長めのエルボ管を成形加工し、次いで、ネック部に相当する部分を金型に入れて直管に矯正加工する。
【0010】
すなわち、従来のネック付きエルボの製造では、管の曲げ加工とその後のネック付け加工との2行程からなる加工作業を必要としていた。このため、成形されるネック長さには限界があり、JIS B 2312等では従来の曲げ加工法を前提として短めのネック長さ、例えば、16〜30mm程度を規定している。しかし、実際の配管作業において、ネックに直管を溶接する場合に、JIS規格より長いネック部を設けたエルボを用いることにより、作業性を大幅に改善することができる。このため、従来から長いネック付きエルボの製造が要望されているが、充分に対応することができない。
【0011】
【非特許文献1】チューブフォーミング(管材の二次加工と製品設計)、日本塑性加工学会編、コロナ社、2002年11月25日発行
【非特許文献2】塑性と加工(日本塑性加工学会誌)、31巻第357号(1990年10月)、1202〜1207頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述の通り、配管系に用いられるエルボを冷間曲げ加工で成形する場合、特に、曲率半径が小さな薄肉管のエルボ製品を成形加工する場合に、エルボ曲げ部の周方向での肉厚変動を少なくし、同時に曲げ内周側に発生するしわを抑制することが困難であった。
【0013】
また、溶接施工性の観点から、従来からネック付きエルボの効率的な製造が要請されているのに拘わらず、エルボの曲げ加工とその後のネック付け加工との2行程が必要となり、しかも成形されるネック長さも短く制限されることから、これらの要請に充分に対応できるものではなかった。
【0014】
本発明は、上述したエルボの成形加工における問題点に鑑みてなされたものであり、特に、曲率半径が小さな薄肉管のエルボ製品を成形加工する場合であっても、エルボ曲げ部の偏肉特性(周方向の肉厚変動)に優れるとともに曲げ内周側のしわ発生を抑制したエルボ製品を加工できる、管の冷間曲げ方法および冷間曲げ装置を提供することを目的としている。
【0015】
さらに、素管から接続用の直管を設けたネック付きエルボを成形加工する場合に、1行程からなる押し抜き曲げ加工で効率的に製造できる、管の冷間曲げ方法および冷間曲げ装置を提供することを目的としている。ただし、本発明が対象とするエルボは、曲率半径が小さな製品や薄肉の製品に何ら限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記の課題を解決するため、押し通しによる冷間曲げ加工について検討した結果、効率的にエルボを成形加工するには、偏芯ダイスを用い、素管を押し抜いて縮径加工するとともに曲げ加工を施すことが有効であることに着目した。
【0017】
図1は、本発明で用いた偏芯ダイスの構成を示す図であり、(a)は平面断面図、(b)は正面図である。偏芯ダイス1はダイス穴径の入側中心軸と出側中心軸とが偏芯しているダイスであり、周方向に亘りダイス角度θが変化する。図1に示すように、偏芯ダイス1のA部ではテーパ面が形成されダイス角度θが大きく、B部ではダイス角度θがほぼゼロ(0°)でありテーパ面が形成されない。
【0018】
図2は、偏芯ダイスを用いる素管の縮径加工に引き続いて曲げ加工を施す構成例を模式的に示す図である。エルボ2の成形加工に用いられる素管3は、素材鋼管から製品寸法に相当する短尺寸法に切断され、1本ごとに押し抜き力が加えられ、偏芯ダイス1で縮径加工が行われる。これに引き続いて、金型4内を押し抜かれてエルボ断面の真円を保ちつつ曲げ加工が行われる。
【0019】
このとき、前記図1に示す偏芯ダイス1のA部(ダイス角度θが大きい部位)が曲げ加工で曲げ外周側に位置するように、B部(ダイス角度θを設けない部位)が曲げ内周側に位置するように偏芯ダイス1を配置する。このように配置された偏芯ダイス1を用い、素管3を押し抜いて縮径加工を行うと、A部では素管3が主に塑性変形し外径が縮み肉厚が増えるのに対し、B部では素管3の塑性変形そのものが小さく肉厚変動は殆ど生じない。
【0020】
このため、後続の曲げ加工を施した後には、曲げ外周側(偏芯ダイスA部の配置位置)では、縮径加工にともなう増肉と曲げ加工にともなう減肉とが相殺され減肉が少なくなる。さらに、使用する偏芯ダイスの条件によっては、素管肉厚より増肉したエルボを成形加工することもできる。
【0021】
成形加工で縮径加工と曲げ加工を組み合わせることにより、素管の押し抜き縮径加工によって管断面は塑性変形状態となり、その状態で素管に曲げ加工を加えることにより、成形加工する部位に組み合わせ応力の効果を生じさせることができる。すなわち、塑性変形状態にある素管に曲げ加工を施すことにより、曲げ加工のために新たに加えるべき所要の曲げモーメントを小さくすることができる。
【0022】
さらに付言すれば、素管に加えるべき曲げモーメントを抑制できることは、曲げ外周側の引張応力および曲げ内周側の圧縮応力を小さくできることを意味する。したがって、曲げ内周側に発生するしわは圧縮応力に起因するものであるから、曲げ内周側の圧縮応力を小さくできれば、それにともなってしわ発生を防止できる。
【0023】
言い換えると、適正に配置した偏芯ダイスを用い、素管を押し抜いて縮径加工するとともに曲げ加工を施すことにより、曲げ外周側では縮径加工による増肉と曲げ加工による減肉とが相殺され減肉を少なくできるとともに、曲げ内周側では縮径加工と曲げ加工の組み合わせ応力の効果により、所要の曲げモーメントを小さくでき、圧縮応力に起因するしわ発生を防止できる。
【0024】
偏芯ダイスを用いた縮径加工によって発揮される効果は、単に偏芯ダイスに限定されるものではなく、これに構成が類似するロール等を用い、素管を押し抜いて縮径加工するとともに曲げ加工を施すことによっても発揮することができる。
【0025】
本発明は、上記の検討結果や知見に基づいて完成されたものであり、下記(1)〜(3)の管の冷間曲げ方法、(4)〜(7)の冷間曲げ装置およびこれらで加工された(8)のエルボを要旨としている。
(1)ガイドチューブに挿入された素管を挿入側から逐次または連続的に押し抜きながら、縮径加工とともに曲げ加工を施して、目標の軸心曲率を有するエルボを成形する冷間曲げ方法であって、前記縮径加工に際し、前記素管の曲げ外周側の肉厚を曲げ内周側の肉厚に比べて増肉し、引き続いて曲げ加工を施すことを特徴とする管の冷間曲げ方法である(エルボの冷間曲げ方法)。
(2)上記(1)の冷間曲げ方法では、前記縮径加工を偏芯ダイス、ロール径の異なる異形ロール対、または半割りダイスとロールとを組み合わせて行い、前記素管の曲げ外周側の肉厚を曲げ内周側の肉厚に比べ増肉することができる。
(3)ガイドチューブに挿入された素管を挿入側から逐次または連続的に押し抜きながら、縮径加工に引き続き、前記素管の管端を曲げアームでクランプすることにより曲げ加工を施して、目標の軸心曲率を有するエルボを成形する冷間曲げ方法であって、前記縮径加工に際し、前記エルボの曲げ外周側の肉厚を曲げ内周側の肉厚に比べて増肉し、前記曲げアームでクランプすることなく所定長さの直管部を押し抜いた後、前記素管の管端を曲げアームでクランプして所定の曲げ角度に至るまで曲げ加工を施し、次いで、前記曲げアームのクランプを開放し所定長さの直管部を押し抜いてネック付きエルボを成形することを特徴とする管の冷間曲げ方法である(両ネック付きエルボの冷間曲げ方法)。
(4)被加工材である素管を挿入するガイドチューブと、前記素管を挿入側から逐次または連続的に押し抜く装置とを備え、前記素管を押し抜いて縮径加工とともに曲げ加工を施し、目標の軸心曲率を有するエルボを成形する冷間曲げ装置であって、前記縮径加工を行うダイス穴径の入側中心軸と出側中心軸とが偏芯し、周方向にダイス角度が異なる偏芯ダイスと、前記曲げ加工を行う前記素管の管端をクランプする曲げアームとを備え、前記偏芯ダイスのダイス角度の最大部位が曲げ外周側に位置するように配置することを特徴とする管の冷間曲げ装置である(偏芯ダイスを用いた冷間曲げ装置)。
(5)被加工材である素管を挿入するガイドチューブと、前記素管を挿入側から逐次または連続的に押し抜く装置とを備え、前記素管を押し抜いて縮径加工とともに曲げ加工を施し、目標の軸心曲率を有するエルボを成形する冷間曲げ装置であって、前記縮径加工を行うロール径の異なる異形ロール対と、前記曲げ加工を行う前記素管の管端をクランプする曲げアームとを備え、前記異形ロール対のうち大径ロールが曲げ外周側に位置するように配置することを特徴とする管の冷間曲げ装置である(異形ロール対を用いた冷間曲げ装置)。
(6)被加工材である素管を挿入するガイドチューブと、前記素管を挿入側から逐次または連続的に押し抜く装置とを備え、前記素管を押し抜いて縮径加工とともに曲げ加工を施し、目標の軸心曲率を有するエルボを成形する冷間曲げ装置であって、前記縮径加工を行う半割りダイスおよびロールと、前記曲げ加工を行う前記素管の管端をクランプする曲げアームとを備え、前記ロールが曲げ外周側に位置するように配置することを特徴とする管の冷間曲げ装置である。ただし、ロールのダイス相当角θeが半割りダイスのダイス角度θより大きいものとする(半割りダイスとロールを組み合わせた冷間曲げ装置)。
(7)上記(1)〜(3)の冷間曲げ方法および上記(4)〜(6)の冷間曲げ装置では、 前記縮径加工の出側で、かつ曲げ内周側の位置にしわ抑え型を配置すること、または前記曲げ加工される素管の内面に芯金を挿入することが望ましい。
(8)上記(1)〜(3)の冷間曲げ方法によって加工され、その曲げ部において曲げ外周部の減肉が少ないことを特徴とするエルボである。ここで規定する「曲げ外周部の減肉」とは、縮径加工および曲げ加工後の肉厚変動であり、下記(1)式で示される減肉率で管理することができる。
【0026】
減肉率={(公称肉厚−最小肉厚)/(公称肉厚)}×100(%) ・・・ (1)
さらに、上記(1)〜(3)の冷間曲げ方法によって加工されたエルボにあっては、エルボ製品の曲げ内周側に発生するしわを防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の冷間曲げ方法および冷間曲げ装置によれば、適正に配置した偏芯ダイスを用い、またはこれに構成が類似するロール等を用い、素管を押し抜いて縮径加工するとともに曲げ加工を施すことにより、曲げ外周側では縮径加工による増肉と曲げ加工による減肉が相殺され減肉が少なくなり、曲げ内周側では縮径加工と曲げ加工の組み合わせ応力の効果により圧縮応力を低減でき、しわ発生を防止できる。これらを用いて加工されたエルボは、その曲げ部において曲げ外周部の減肉が少ないとともに、曲げ内周側でのしわ発生を防止することができる。
【0028】
さらに、ネック付きエルボを成形加工する場合であっても、両ネックまたは片ネックに拘わらず、1行程からなる押し抜き縮径加工と曲げ加工を組み合わせることにより、ネック長さに拘束されることなく効率的に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図3は、本発明が対象とするエルボ製品を示す図であり、(a)はエルボ形状を、(b)はネック付きエルボ形状を示している。図3(a)に示すように、エルボ2の形状は軸心を基準とする曲率半径R並びに外径D、内径および肉厚tで規定されており、用途によってロングエルボ(曲率半径Rが1.5×外径D)、またはショートエルボ(曲率半径Rが外径D)に区分される。また、図3(b)に示すネック付きエルボは、曲げ部の両端に溶接施工用の直管からなる長さNのネック部を設けている。
【0030】
本発明の冷間曲げ方法は、ガイドチューブに挿入された素管を挿入側から逐次または連続的に押し抜きながら、縮径加工とともに曲げ加工を施して、目標の軸心曲率を有するエルボを成形する方法であり、前記縮径加工に際し、前記エルボの曲げ外周側の肉厚を曲げ内周側の肉厚に比べて増肉し、引き続いて曲げ加工を施すことを特徴としている。
【0031】
本発明の冷間曲げ方法において、「縮径加工とともに曲げ加工を施す」としているのは、縮径加工と同時に曲げ加工を行う場合の他、縮径加工の後にこれとは別個に引き続いて曲げ加工を行う場合も含むものである。前述の通り、縮径加工と曲げ加工を組み合わせることにより、組み合わせ応力の効果を生じさせることができることから、所要の曲げモーメントを小さくするには、縮径加工と同時に曲げ加工を行う場合が有効である。
【0032】
以下で説明する冷間加工方法は、素管の管端を曲げアームでクランプすることにより曲げ加工を行うこととしているが、本発明に適用できる曲げ加工方法はこれに限定されるものではなく、前記図2に示すように、素管を金型内で押し抜いて曲げ加工を施すものであってもよい。
(偏芯ダイスを用いた冷間曲げ方法)
本発明の冷間曲げ方法では、前記図1に示す偏芯ダイスを用いる場合に、偏芯ダイスのダイス角度θの大きいA部が曲げ外周側に位置するように、ダイス角度θを設けないB部が曲げ内周側に位置するように配置する。これにより、素管の縮径加工にともない、A部では材料が主に塑性変形し外径が縮み肉厚が増えるのに対し、B部では材料の塑性変形そのものが小さく肉厚変動は殆ど生じない。
【0033】
このため、引き続いて曲げ加工を行うことにより、曲げ外周側に位置するA部では縮径加工による増肉と曲げ加工による減肉とを相殺させ減肉を少なくできる。さらに、曲げ内周側に位置するB部では縮径加工と曲げ加工の組み合わせ応力の効果により、所要の曲げモーメントは小さくすることができることから、圧縮応力に起因するしわ発生を防止できる。
【0034】
図4は、偏芯ダイスを用いた縮径加工および曲げ加工後の縮径率と増肉率の関係を示す図である。ここで、縮径率および増肉率は下記(2)式および(3)式で定義できる。
【0035】
縮径率={(素管外径−曲げ後の管外径)/(素管外径)}×100(%)・・(2)
増肉率={(曲げ後の管肉厚−素管肉厚)/(素管肉厚)}×100(%)・・(3)
使用した偏芯ダイスA部のダイス角θは20°、同B部のダイス角θは0°とし、成形加工後のエルボはロングエルボ(曲率半径Rが1.5×外径D)であり、t/Dは10%とした。ただし、縮径加工および曲げ加工後の増肉率は、曲げ外周側(A部)および曲げ内周側(B部)に分類して表示する。
【0036】
図4に示す結果から、縮径率10%に対し、縮径加工後のA部の増肉率は10%を超えるのに対し、B部の肉厚はほとんど変化しないことが分かる。一方、縮径加工の前後で素管の長さ変化は小さく無視できるほどであった。これは縮径加工の歪が殆ど偏芯ダイスのA部に集中し、周方向の圧縮歪εθ(<0)がA部の肉厚増加の歪εt(>0)になることを意味する。
【0037】
縮径加工および曲げ加工後には、曲げ外周側(偏芯ダイスA部の配置位置)の肉厚は縮径加工で増肉し、曲げ加工で減肉している。図4に示す条件では、縮径加工および曲げ加工後の曲げ外周側の肉厚は、縮径加工にともなう増肉が曲げ加工にともなう減肉で相殺されても、素管の肉厚よりも増肉している。一方、曲げ内周側(偏芯ダイスB部の配置位置)の肉厚は、縮径加工では肉厚はほとんど変わらず曲げ加工で増肉している。
【0038】
図4に示すように、本発明の冷間曲げ方法における縮径率の望ましい範囲は、5%〜20%である。縮径率が5%未満であると、偏芯ダイスによる縮径加工の効果が小さく偏肉率の改善やしわ防止の効果が少ない。一方、縮径率が20%を超えて大きくなると、曲げ内周側での増肉が過大となり偏肉を増長させるとともに、縮径率が25%の場合に焼き付きを生ずる場合がある。
【0039】
図5は、偏芯ダイスを用いた縮径加工および曲げ加工後における、偏芯ダイスA部のダイス角θ(ただし、偏芯ダイスB部のダイス角θは0°)と増肉率の関係を示す図である。縮径加工での縮径率は10%とし、曲げ加工後のエルボは、図4の場合と同様とし、ロングエルボ(曲率半径Rが1.5×外径D)であり、t/Dは10%とした。縮径加工での縮径率は10%と一定であるが、偏芯ダイスA部のダイス角θが大きいほど、増肉率が増加することが分かる。
【0040】
縮径加工および曲げ加工後には、曲げ外周側(偏芯ダイスA部の配置位置)の肉厚は縮径加工で増肉し、曲げ加工で減肉しているのに対し、曲げ内周側(偏芯ダイスB部の配置位置)の肉厚は、縮径加工では肉厚はほとんど変わらず曲げ加工で増肉している。
【0041】
図5に示すように、本発明の冷間曲げ方法に適用できるダイス角θの望ましい範囲は、10°〜30°である。ダイス角θが10°未満であると、偏芯ダイスによる縮径加工の効果が小さく偏肉率の改善効果が制限される。一方、ダイス角θが30°を超えると、ダイステーパ面での縮径加工が困難になり焼き付きを発生し易くなる。
(ロール等を用いた冷間曲げ方法)
本発明の冷間曲げ方法では、後述する図8に示すように、偏芯ダイスに替えてロール径の異なる異形ロール対を用いて縮径加工を行う場合には、異形ロール対のうち大径ロールが曲げ外周側に位置するように配置する。これにより、素管の縮径加工にともない、大径ロール側では外径が縮み肉厚が増えるのに対し、小径ロール側では塑性変形が小さく肉厚変動は殆ど生じない。
【0042】
このため、引き続いて曲げ加工を行うことにより、大径ロールを配置する曲げ外周側では縮径加工による増肉と曲げ加工による減肉とを相殺させ減肉を少なくできる。さらに、小径ロールを配置する曲げ内周側では縮径加工と曲げ加工の組み合わせ応力の効果により、所要の曲げモーメントは小さくすることができ、圧縮応力に起因するしわ発生を防止できる。
【0043】
本発明の冷間曲げ方法では、後述する図9に示すように、偏芯ダイスに替えて半割りダイスとロールとを組み合わせて縮径加工を行う場合には、ロールが曲げ外周側に位置するように配置する。これにより、素管の縮径加工にともない、ロール側では外径が縮み肉厚が増えるのに対し、半割りダイス側では塑性変形が小さく肉厚変動は殆ど生じない。
【0044】
このため、引き続いて曲げ加工を行うことにより、ロールを配置する曲げ外周側では縮径加工による増肉と曲げ加工による減肉とを相殺させ減肉を少なくでき、さらに、半割りダイスを配置する曲げ内周側ではしわ発生を防止できる。ただし、このときの構成は、次に説明するロールのダイス相当角θeが、半割りダイスのダイス角度θより大きいものとする。
【0045】
ロール等を用いた冷間曲げ方法において、偏芯ダイスのダイス角度θに相当する角度として、後述する図8および図9に示す構成において、ロール入り側での噛み込み点Pとロール出側Qと結ぶ線PQが作る角度θe(ダイス相当角θe)として把握できる。
【0046】
このように、ロール等を用いた冷間曲げ方法における偏芯ダイスのダイス角度θに相当する角度として、ダイス相当角θeが認識できることから、前述の図5に示すダイス角θの望ましい範囲10°〜30°とほぼ同等となるように、ダイス相当角θeを選択し、それぞれのロールの外径寸法を決定すればよい。
(ネック付きエルボの冷間曲げ方法)
図6は、両ネック付きエルボの冷間曲げ方法を説明する図であり、(a)は先端側ネックを形成する工程を示し、(b)は曲げ部を形成する工程を示し、(c)は後端側ネックを形成する工程を示している。ネック付きエルボの成形加工には、素管3を案内するガイドチューブ5と、素管3を挿入側から逐次または連続的に押し抜く装置6とを備えて、縮径加工に引き続き、素管3の管端を曲げアーム7でクランプすることにより曲げ加工を施すことが前提となる。
【0047】
図6に示す冷間曲げ方法は、縮径加工に偏芯ダイス1を用いて両ネック付きエルボを成形加工する方法が示されているが、縮径加工は偏芯ダイスに限定されるものではなく、ロール径の異なる異形ロール対や半割りダイスとロールの組み合わせによるものでもよく、さらに、片ネック付きエルボの成形加工にも適用できる。以下では、図6(a)〜(c)に沿って、両ネック付きエルボの冷間曲げ方法を説明する
図6(a)に示すように、先端側のネック成形は、ガイドチューブ5に挿入された素管3を挿入側から逐次または連続的に押し抜きながら、偏芯ダイス1を用いて縮径加工を行い、素管3の曲げ外周側を増肉させつつ、曲げアーム7で素管の管端をクランプすることなくネック長さN1に相当する直管部を押し抜く。
【0048】
次に、図6(b)に示すように、曲げ部の成形は、所定長さN1のネック部の押し抜きが終了したのち、素管3の管端を曲げアーム7でクランプし曲げ加工に移行し、所定の曲げ角度に至るまで曲げ加工を行う。素管3は曲げアーム7の曲げ半径Rで曲げ加工されるが、このときに要する曲げモーメントは押し抜き装置6からの管押し込み力で与えられる。図示する曲げアーム7は駆動力を有するものでないが、必要に応じて旋回駆動力を有するものであってもよい。
【0049】
さらに、図6(c)に示すように、後端側のネック成形は、曲げ加工が所定の曲げ角度に至るまで進行したのち、素管3の管端から曲げアーム7のクランプを開放し、ネック長さN2の直管部を押し抜く。素管長さは両端ネック部と曲げ部の長さを勘案して設計しておけば、定尺に切断した素管3を順次挿入し、逐次または連続的に押し抜くようにすれば、ネック付きエルボ管を効率よく製造できる。
(本発明のエルボ製品)
本発明の冷間曲げ方法によって加工されエルボ製品は、その曲げ部において曲げ外周部の減肉を少なくすることができる。例えば、JIS B 2312では管継手の厚さ許容差を−12.5%(+規定しない)と規定するが、本発明のエルボ製品であれば−6%未満を満足できることを確認している。
【0050】
さらに、本発明のエルボ製品は、曲率半径が小さいまたは薄肉の寸法であっても、曲げ加工にともなう曲げモーメントを抑制できることから、通常、曲げ内周側に発生し易いしわをなくすことができる。
【0051】
本発明のネック付きエルボ製品は、両ネックまたは片ネックに拘わらず、1行程からなる成形加工で効率的に製造できるだけでなく、JIS B 2312等で規定するネック長さ16〜30mmに限定されることなく製造できることから、従来から強く要請されている、例えば、1000mmを超えるような長いネック付きエルボの製造に対応することができる。製造可能なネック長さが、設備ストロークに応じて確保することができる。
【実施例】
【0052】
本発明の冷間曲げ方法に適用できる冷間曲げ装置を、偏芯ダイスを用いた装置構成、異径ロール対を用いた装置構成、および半割りダイスとロールを組み合わせた装置構成に区分して説明する。
(実施例1)
図7は、本発明の冷間曲げ方法を偏芯ダイスを用いて実施するための装置構成例を示す図である。素管3を挿入するガイドチューブ5と素管3を挿入側から逐次または連続的に押し抜くための押し抜き装置6が配置される。そして、ガイドチューブ5の先端側に縮径加工を施す偏芯ダイス1と、曲げ加工を施す曲げアーム7が配置される。
【0053】
このとき、偏芯ダイス1はダイス角度θが大きいA部が曲げ外周側に位置し、ダイス角度θを設けないB部が曲げ内周側に位置するように配置され、曲げアーム7は偏芯ダイス1の出側面に一致する面上で支持されるように配置される。前述の通り、図示する曲げアーム7は駆動力を有するものでないが、必要に応じて旋回駆動力を有するものであってもよい。
【0054】
素材鋼管から設計寸法に切断された素管3は、ガイドチューブ5に挿入され、ガイドチューブ5の後端側に配置された押し込み装置6の油圧シリンダーの作動によって、偏芯ダイス1に押し込まれる。このとき縮径加工された素管3は、偏芯ダイス1のダイス角度θが大きいA部で増肉加工される。次いで、偏芯ダイス1の出側面から出てきた管端を曲げアーム7でクランプし、所定の曲率半径Rが得られるように曲げ加工が施される。
【0055】
曲率半径Rが小さなエルボ、または薄肉エルボを成形加工する場合には、曲げ内周側にしわが発生したり、管偏平を発生し易くなる。このような場合には、偏芯ダイス1出側であって曲げ内周側の位置にしわ抑え型8を設置することにより、しわ発生の防止に有効である。さらに、管の内面形状に略一致した曲げに追従可能な芯金9、例えば、複数の数珠玉状の芯金を支持棒10を介して配置することにより、内面を拘束しつつ圧縮曲げ加工を行うことができることから、偏平を効果的に防止できるとともに曲げ加工限界を拡大することが可能になる。
【0056】
縮径加工において、ダイス面での摩擦状態が厳しいことから、素管外面は加工前に化成潤滑処理やその他の潤滑剤を塗布しておくか、またはダイスに入る前に管外面に潤滑剤を塗布するのが望ましい。特に、摩擦状況が厳しいのは増肉加工が施される偏芯ダイスA部であることから、潤滑処理をA部およびこの近傍部に限定することができる。なお、偏芯ダイスB部では塑性変形そのものが小さいことから、B部の摩擦状況はA部に比べ格段に良好であるから、低級の潤滑剤を使用できる。
(実施例2)
図8は、本発明の冷間曲げ方法を異径ロール対を用いて実施するための装置構成例を示す図であり、全体構成を示すとともに、押し抜かれる素管の断面形状(断面X視野)、および縮径加工後のロール孔型形状および素管の断面形状(断面Y視野)を示している。
【0057】
図8に示す装置構成では、縮径加工に用いる偏芯ダイスに替えて、ロール径の異なる異径ロール対11a、11bを用いる。このため、ガイドチューブ5の先端側に縮径加工を施す異径ロール対11と、曲げ加工を施す曲げアーム7が配置され、ガイドチューブ5の後端側には押し抜き装置6が配置される。このとき、異径ロールのうち大径側ロール11bが曲げ外周側に配置され、縮径加工にともなって増肉を行う。
【0058】
偏芯ダイスに替えて異径ロール対11を用い縮径加工を施す場合には、加工中の工具面での摩擦状況は、偏芯ダイスを使用するのに比べ格段に改善される。このため、異径ロール対11を用いることにより、潤滑処理を行わない場合であっても焼き付きの発生を抑制することができる。
【0059】
縮径加工後のロール孔型形状および素管の断面形状(断面Y視野)に示すように、異径ロール対11を用いた装置構成では、ロール対で構成する孔型形状は外径寸法が製品外径に等しいほぼ真円状の孔型である。一方、素管3外径は製品外径より縮径加工に相当する分だけ外径は大きくなっている。このため、真円の素管3をそのままロールに押し込むとロールのフランジ側(図中のC部)で噛み出しを生じ、疵発生や加工不能の事態が予想される。
【0060】
そこで、押し抜かれる素管の断面形状(断面X視野)に示すように、このような事態を回避するため、素管3に楕円加工を施してロールのフランジ側での噛み出しを防止するのが有効である。素管に施す楕円量の指標として、楕円加工した素管の短径寸法2aoとし、これがロール孔型径Drと同等かロール孔型径Drより若干小さくすれば噛み出しを防止できる。
【0061】
すなわち、楕円加工した素管の短径寸法2aoとロール孔型径Drとの関係を、0.85<2ao/Dr<1の範囲にするのが望ましい。これは、(2ao/Dr)の値が0.85未満であると、曲げ加工後も素管に楕円形状が残り品格が悪くなることによる。素管を楕円加工する方法は慣用される方法でよく、プレスによる楕円加工、ロール圧延による楕円加工であっても適用できる。
(実施例3)
図9は、本発明の冷間曲げ方法を半割りダイスとロールを組み合わせて実施するための装置構成例を示す図であり、全体構成を示すとともに、押し抜かれる素管の断面形状(断面X視野)、および縮径加工後のロール孔型形状および素管の断面形状(断面Y視野)を示している。
【0062】
図9に示す装置構成では、半割りダイス12aとロール12bを組み合わせて縮径加工を施す。このため、ガイドチューブ5の先端側に縮径加工を行う半割りダイス12aおよびロール12bと、曲げ加工を行う曲げアーム7が配置され、ガイドチューブ5の後端側には押し込み装置6が配置される。このとき、ロール12bを曲げ外周側に配置し、半割りダイス12aを曲げ内周側に配置することにより、縮径加工にともなって素管の曲げ外周側に増肉を発生させる。ただし、ロール12bのダイス相当角θeが半割りダイス12aのダイス角度θより大きいものとする
半割りダイス12aとロール12bを組み合わせて縮径加工を施す場合に、工具面での摩擦状況が厳しい曲げ外周側でロールを用いることにより、摩擦状況が大幅に改善され、潤滑処理を行わない場合でも加工が可能となる。一方、曲げ内周側に配置される半割りダイス11aのダイス角度をほぼ0°(ゼロ)とすれば、加工の負荷は曲げ外周側に比べ極めて軽度になることから、水溶性潤滑剤等の潤滑性の比較的悪いものを用いることができる。
【0063】
縮径加工後のロール孔型形状および素管の断面形状(断面Y視野)に示すように、半割りダイス12aとロール11bを組み合わせて用いる場合であっても、縮径加工後のダイス/ロール孔型形状は外径寸法が製品外径に等しいほぼ真円状の孔型となり、前記図8に示す装置構成の場合と同様に、楕円加工した素管3の短径寸法2aoとし、これがロール孔型径Drと同等かロール孔型径Drより若干小さくすることにより、素管3の噛み出しを防止できる。
【0064】
押し抜かれる素管の断面形状(断面X視野)に示すように、素管3に楕円加工を施して半割りダイス12aとロール11bの間での噛み出しを防止するため、素管3に施す楕円量は、楕円加工した素管の短径寸法2aoとし、これがダイス/ロール孔型径Drと同等かDrより若干小さくするのがよい。すなわち、楕円加工した素管の短径寸法2aoとダイス/ロール孔型径Drとの関係を、0.85<2ao/Dr<1の範囲にするのが望ましい。また、素管を楕円加工する方法は慣用される方法でよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の管の冷間曲げ方法および冷間曲げ装置によれば、適正に配置した偏芯ダイスを用い、またはこれに構成が類似するロール等を用い、素管を押し抜いて縮径加工するとともに曲げ加工を施すことにより、曲げ外周側では縮径加工による増肉と曲げ加工による減肉が相殺され減肉が少なくなり、曲げ内周側では縮径加工と曲げ加工の組み合わせ応力の効果により圧縮応力を低減でき、しわ発生を防止できる。これらを用いて加工されたエルボは、その曲げ部において外周部の減肉を少なくするとともに、曲げ内周側でのしわ発生を防止できる。
【0066】
さらに、ネック付きエルボを冷間曲げ加工する場合であっても、両ネックまたは片ネックに拘わらず、1行程からなる押し抜き縮径加工と曲げ加工を組み合わせることにより、ネック長さに拘束されることなく効率的に製造できる。これによりエルボ配管に用いられるエルボの成形方法として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明で用いた偏芯ダイスの構成を示す図であり、(a)は平面断面図、(b)は正面図である。
【図2】偏芯ダイスを用いる素管の縮径加工に引き続いて曲げ加工を施す構成例を模式的に示す図である。
【図3】本発明が対象とするエルボ製品を示す図であり、(a)はエルボ形状を、(b)はネック付きエルボ形状を示している。
【図4】偏芯ダイスを用いた縮径加工および曲げ加工後の縮径率と増肉率の関係を示す図である。
【図5】偏芯ダイスを用いた縮径加工および曲げ加工後における、偏芯ダイスA部のダイス角θと増肉率の関係を示す図である。
【図6】両ネック付きエルボの冷間曲げ方法を説明する図であり、(a)は先端側ネックを形成する工程を示し、(b)は曲げ部を形成する工程を示し、(c)は後端側ネックを形成する工程を示している。
【図7】本発明の冷間曲げ方法を偏芯ダイスを用いて実施するための装置構成例を示す図である。
【図8】本発明の冷間曲げ方法を異径ロール対を用いて実施するための装置構成例を示す図であり、全体構成を示すとともに、押し抜かれる素管の断面形状(断面X視野)、および縮径加工後のロール孔型形状および素管の断面形状(断面Y視野)を示している。
【図9】本発明の冷間曲げ方法を半割りダイスとロールを組み合わせて実施するための装置構成例を示す図であり、全体構成を示すとともに、押し抜かれる素管の断面形状(断面X視野)、および縮径加工後のロール孔型形状および素管の断面形状(断面Y視野)を示している。
【符号の説明】
【0068】
1:偏芯ダイス、 2:エルボ
3:素管、 4:金型
5:ガイドチューブ、 6:押し抜き装置
7:曲げアーム、 8:しわ抑え型
9:芯金、 10:支持棒
11a、11b:ロール対
12a:半割ダイス、 12b:ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドチューブに挿入された素管を挿入側から逐次または連続的に押し抜きながら、縮径加工とともに曲げ加工を施して、目標の軸心曲率を有するエルボを成形する冷間曲げ方法であって、
前記縮径加工に際し、前記素管の曲げ外周側の肉厚を曲げ内周側の肉厚に比べて増肉し、引き続いて曲げ加工を施すことを特徴とする管の冷間曲げ方法。
【請求項2】
前記縮径加工をダイス穴径の入側中心軸と出側中心軸とが偏芯しているダイスを用いて行い、前記素管の曲げ外周側の肉厚を曲げ内周側の肉厚に比べ増肉することを特徴とする請求項1に記載の管の冷間曲げ方法。
【請求項3】
前記縮径加工をロール径の異なる異形ロール対を用いて行い、前記素管の曲げ外周側の肉厚を曲げ内周側の肉厚に比べ増肉することを特徴とする請求項1に記載の管の冷間曲げ方法。
【請求項4】
前記縮径加工を半割りダイスとロールとを組み合わせて行い、前記素管の曲げ外周側の肉厚を曲げ内周側の肉厚に比べ増肉することを特徴とする請求項1に記載の管の冷間曲げ方法。
【請求項5】
ガイドチューブに挿入された素管を挿入側から逐次または連続的に押し抜きながら、縮径加工に引き続き、前記素管の管端を曲げアームでクランプすることにより曲げ加工を施して、目標の軸心曲率を有するエルボを成形する冷間曲げ方法であって、
前記縮径加工に際し、前記素管の曲げ外周側の肉厚を曲げ内周側の肉厚に比べて増肉し、前記曲げアームでクランプすることなく所定長さの直管部を押し抜いた後、前記素管の管端を曲げアームでクランプして所定の曲げ角度に至るまで曲げ加工を施し、次いで、前記曲げアームのクランプを開放し所定長さの直管部を押し抜いてネック付きエルボを成形することを特徴とする管の冷間曲げ方法。
【請求項6】
前記縮径加工の出側で、かつ曲げ内周側の位置にしわ抑え型を配置することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の管の冷間曲げ方法。
【請求項7】
前記曲げ加工される素管の内面に芯金を配置することを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の管の冷間曲げ方法。
【請求項8】
被加工材である素管を挿入するガイドチューブと、前記素管を挿入側から逐次または連続的に押し抜く装置とを備え、前記素管を押し抜いて縮径加工とともに曲げ加工を施し、目標の軸心曲率を有するエルボを成形する冷間曲げ装置であって、
前記縮径加工を行うダイス穴径の入側中心軸と出側中心軸とが偏芯し、周方向にダイス角度θが異なる偏芯ダイスと、前記曲げ加工を行う前記素管の管端をクランプする曲げアームとを備え、前記偏芯ダイスのダイス角度θの最大部位が曲げ外周側に位置するように配置することを特徴とする管の冷間曲げ装置。
【請求項9】
被加工材である素管を挿入するガイドチューブと、前記素管を挿入側から逐次または連続的に押し抜く装置とを備え、前記素管を押し抜いて縮径加工とともに曲げ加工を施し、目標の軸心曲率を有するエルボを成形する冷間曲げ装置であって、
前記縮径加工を行うロール径の異なる異形ロール対と、前記曲げ加工を行う前記素管の管端をクランプする曲げアームとを備え、前記異形ロール対のうち大径ロールが曲げ外周側に位置するように配置することを特徴とする管の冷間曲げ装置。
【請求項10】
被加工材である素管を挿入するガイドチューブと、前記素管を挿入側から逐次または連続的に押し抜く装置とを備え、前記素管を押し抜いて縮径加工とともに曲げ加工を施し、目標の軸心曲率を有するエルボを成形する冷間曲げ装置であって、
前記縮径加工を行う半割りダイスおよびロールと、前記曲げ加工を行う前記素管の管端をクランプする曲げアームとを備え、前記ロールが曲げ外周側に位置するように配置することを特徴とする管の冷間曲げ装置。
ただし、ロールのダイス相当角θeが半割りダイスのダイス角度θより大きいものとする
【請求項11】
前記縮径加工の出側で、かつ曲げ内周側の位置にしわ抑え型を配置することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の管の冷間曲げ装置。
【請求項12】
前記曲げ加工される素管の内面に芯金を配置することを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の管の冷間曲げ装置。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の冷間曲げ方法によって加工され、その曲げ部において曲げ外周部の減肉が少ないことを特徴とするエルボ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−173648(P2008−173648A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7118(P2007−7118)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000182926)住金機工株式会社 (7)
【Fターム(参考)】