管体内異物取出装置
【課題】管体内に残存する異物を当該管体内から取り出すことを可能にすることにある。
【解決手段】鉄片Wを捕捉するための作業部2と作業部2を支持する本体部3とを備え、本体部3はこれを鋼管P内の中空位置に支持すると共に鋼管Pの延在する方向に移動可能に支持する支持アーム32を備え、作業部2は本体部3の下方に設けられた回転作業部4と回転作業部4に設けられた揺動アーム(揺動作業部)5と揺動アーム5の下方に設けられた吸着プローブ(吸着作業部)6とを備え、回転作業部4は鋼管Pの周方向に回転駆動されるように構成され、揺動アーム5は基端部から鋼管P内を下方に延在すべく形成されかつ基端部を支点にして鋼管Pの内面に離接する方向に揺動駆動されるように構成され、吸着プローブ6は鉄片Wを磁力や真空による吸引力により吸着するように構成されている。
【解決手段】鉄片Wを捕捉するための作業部2と作業部2を支持する本体部3とを備え、本体部3はこれを鋼管P内の中空位置に支持すると共に鋼管Pの延在する方向に移動可能に支持する支持アーム32を備え、作業部2は本体部3の下方に設けられた回転作業部4と回転作業部4に設けられた揺動アーム(揺動作業部)5と揺動アーム5の下方に設けられた吸着プローブ(吸着作業部)6とを備え、回転作業部4は鋼管Pの周方向に回転駆動されるように構成され、揺動アーム5は基端部から鋼管P内を下方に延在すべく形成されかつ基端部を支点にして鋼管Pの内面に離接する方向に揺動駆動されるように構成され、吸着プローブ6は鉄片Wを磁力や真空による吸引力により吸着するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体内に残留する異物を当該管体内から取り出すための管体内異物取出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管鉄塔等のような既設の鋼管構造物においては、その鋼管(管体)の内面等について調査や補修を行うことがある。その調査、補修に際しては、鋼管における上方開口端から当該鋼管内に調査・補修装置を挿入することによって行う方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。この方法は、鋼管自体の強度を損なうことがなく、かつ大規模な足場作り等を必要としないという利点がある。
【0003】
しかしながら、例えば、図12に示すように、鉄塔における複数の鋼管Pで構成された主柱aの傾斜角度が例えば3段階に変化している場合、その第1傾斜部bの鋼管Pと、第2傾斜部cの鋼管Pとを連結するフランジ継手部eや、第2傾斜部cの鋼管Pと、第3傾斜部dの鋼管Pとを連結するフランジ継手部fは、図13に示すように、その内部が鉄板gによって仕切られて閉塞された構造になっている場合がある。このような鉄板gで閉塞されたフランジ継手部e、fがある場合には、当該フランジ継手部e、fより下方の鋼管P内に調査・補修装置を挿入し、当該鋼管P内の調査等を行うことができない。このため、例えば、プラズマ切断機等の溶断手段を用いて、鉄板gに調査・補修装置を挿入するための貫通孔を空ける技術を開発し、その貫通孔を介して、更に下方の鋼管P内の調査等を行おうとする試みが行われている。
【0004】
一方、上述した貫通孔を空ける際に溶断された鉄片については、下方に落下し、鋼管P内に異物として残存することになる。この場合、鋼管Pやフランジ継手部e、f等は、溶融亜鉛メッキ等による防錆処理が施されているのに対して、落下した鉄片は、その溶断により防錆処理の排除された部分が生じてしまい、その防錆処理のなされていない部分から赤錆等の腐食が発生しやすくなる。このため、溶断後の鉄片が鋼管P内に残っている場合には、その鉄片の腐食に伴って鋼管Pやフランジ継手部e、f等に腐食が進行しやすくなるおそれがある。従って、鋼管P内に残った溶断後の鉄片については、当該鋼管P内から取り出すことが好ましい。
【0005】
しかしながら、上述のような溶断を行うことによって初めて、その溶断後の鉄片が鋼管P内に残ることになるので、従来においては、鋼管P内に残存する鉄片等の異物を当該鋼管P内から取り出すような技術は存在していなかった。なお、鋼管に限らず、他の金属やプラスチック等の材料で形成された管体内に異物が残っている場合にも、当該異物を管体内から取り出すことが好ましいことが多い。
【0006】
【特許文献1】特開2004−011013号公報
【特許文献2】特開2004−286114号公報
【特許文献3】特開2005−090173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、管体内に残存する異物を当該管体内から取り出すことのできる管体内異物取出装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、一方の開口端が上方に位置するように設置された管体における当該上方開口端から当該管体内に挿入して、当該管体内に残留する異物を当該管体内から取り出すための管体内異物取出装置であって、前記異物を捕捉すべく作業を行う作業部と、この作業部を支持する本体部とを備えてなり、前記本体部は、当該本体部を前記管体内の中空位置に支持すると共に、当該本体部を当該管体の延在する方向に移動可能に支持する支持アームを備えており、前記作業部は、前記管体内において前記本体部の下方に位置すべく設けられた回転作業部と、当該回転作業部に設けられた揺動作業部と、当該揺動作業部の下方に位置すべく設けられた吸着作業部とを備えており、前記回転作業部は、前記本体部に対して前記管体の周方向に回転駆動されるように構成され、前記揺動作業部は、前記回転作業部に連結された基端部から前記管体内を下方に延在すべく形成され、かつ前記基端部を支点にして前記管体の内面に離接する方向に揺動駆動されるように構成され、前記吸着作業部は、前記異物を吸着するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記揺動作業部には、前記吸着作業部を索を介して上下方向に移動するためのウインチ機構が備えられていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記吸着作業部は、吸着作用の発揮及び解除が可能な吸着手段を備えており、前記回転作業部には、前記揺動作業部の揺動に伴って移動する当該揺動作業部の先端部の移動可能な範囲内における当該先端部の下方の位置に、吸着作用の解除により前記吸着手段から落下する前記異物を受け入れるための回収容器が備えられていることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記回収容器は、前記回転作業部から下方に延在し、かつその延在方向に伸縮自在に構成された支持部材の下端部に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、作業部、本体部の順で管体内に上方開口端から挿入することにより、当該管体内において、作業部が下方に位置し、本体部が上方に位置する状態になる。その際、作業部及び本体部の全体は、その本体部に設けられた支持アームによって、管体内の中空位置に保持された状態になると共に、当該管体内を上下方向に移動可能な状態になる。このため、例えばロープやワイヤー等の吊持索を本体部の上端部につなげ、この吊持索の繰り出し量を調整することにより、作業部及び本体部の管体内における上下方向の位置を簡単かつ正確に制御することが可能になる。
【0013】
上述した吊持索を利用して、作業部及び本体部を下方に移動させ、吸着作業部によって管体内に残存する異物を捕捉可能な位置まで降下した時点で、その下方への移動を停止させる。そして、回転作業部、揺動作業部及び吸着作業部を用いて異物を捕捉することになる。この際、吸着作業部の管体内における周方向の位置は、回転作業部を回転駆動することによって調整することができ、また当該吸着作業部の管体内面に離接する方向の位置は、揺動作業部を揺動駆動することによって調整することができる。従って、回転作業部及び揺動作業部を用いることにより、吸着作業部を、異物を吸着することが可能な位置まで移動させることができ、これによって当該吸着作業部に当該異物を吸着させることができる。なお、異物を吸着する際、吸着作業部を異物のやや上方に位置させた状態に調整した後、上述した吊持索を下方に繰り出すことにより、当該吸着作業部で異物を吸着することも可能である。
【0014】
異物を吸着作業部で吸着した後は、全体を管体内から引き上げることにより、当該異物を管体内から取り出すことができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、吸着作業部を索を介して上下方向に移動するためのウインチ機構が揺動作業部に備えられているので、吸着作業部が異物の上方に位置するように、回転作業部及び揺動作業部で調整した後、ウインチ機構を用いて吸着作業部を下方に移動させることにより、当該異物を簡単かつ確実に吸着することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、吸着作業部が吸着作用の発揮及び解除が可能な吸着手段を備えたものとなっているので、吸着手段に対する吸着作用の発揮及び解除の制御を行うことにより、吸着作業部に異物を吸着させたり、当該吸着作業部から異物を離脱させたりすることができる。そして、回転作業部には揺動作業部の先端部の移動可能な範囲内における当該先端部の下方位置に、吸着手段による吸着作用の解除により、当該吸着手段から離脱し落下する異物を受け入れる回収容器が備えられているので、異物が管体内に複数残存している場合でも、その複数の異物を回収容器に収容してから、その異物の全体を管体から取り出すことができる。即ち、複数の異物が残存している場合には、当該異物を効率よく取り出すことができるという利点がある。
【0017】
請求項4に記載の発明にれば、例えば、管体が傾斜し、その管体が水平状に広がる床状部分によって閉塞されている場合、その床状部分における管体内面と鋭角に交差する部位に異物が存在する状態になることがあるが、このような場合でも、吸着作業部をウインチ機構によって上方端に位置させた状態で、吸着作業部の管体内における周方向の位置を異物に対応する位置に移動すべく回転作業部を回転駆動し、更に吸着作業部を管体内面に近接した状態となるように移動すべく揺動作業部を揺動駆動してから、全体を管体に沿って下方に移動することにより、吸着作業部の吸着手段によって異物を吸着することが可能となる。但し、このような作業を行った場合には、吸着手段によって異物を吸着する前に、その吸着手段から落下する異物を受け入れるための回収容器が床状部分に当ることになる。しかし、その回収容器を下端部に設けた支持部材が伸縮自在に構成されていることから、その支持部材が縮む方向に変形することにより、吸着手段が異物を吸着可能な状態となる位置まで、全体を下方に移動することができる。
【0018】
そして、吸着手段によって異物を吸着した後に、全体を上方に移動することにより、支持部材がその延在方向に自然に伸びることになるので、回収容器が吸着手段の下方に位置することになり、当該吸着手段で吸着した異物を回収容器に収容することができる。
【0019】
従って、管体が傾斜している場合でも当該管体内の床状部分上に残留する異物を回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態としての一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
この実施の形態で示す管体内異物取出装置1は、図1に示すように、異物としての鉄片Wを捕捉すべく作業を行う作業部2と、この作業部2を支持する本体部3とを備えた構成になっている。この管体内異物取出装置1は、図12に示す鉄塔の主柱aにおける最上位置の鋼管Pの上端開口部を閉塞する閉塞板hを開いて、その上端開口部から当該主柱a内に挿入することが可能に構成されたものである。この場合、管体内異物取出装置1は、図1に示すように、本体部3の上端部に連結されたワイヤ(吊持索)11によって吊下げられた状態になっており、そのワイヤ11の繰り出し量を調整したり、その繰り出しを停止したりすることにより、主柱a内の上下方向における所定の位置に移動したり、その位置に保持したりすることが可能になっている。
【0022】
また、図1に示す管体内異物取出装置1は、主柱aにおける上方に位置するフランジ継手部eの鉄板g(図13)の一部を溶断することによって開口部(図示せず)を形成した後に、その開口部を介して、第2の傾斜部cにおける鋼管P内に挿入され、下方に位置するフランジ継手部fの近傍位置まで移動されると共に、その位置に保持された状態を示している。
【0023】
なお、上述した開口部を形成する際には、その鉄板gの一部を例えばプラズマ切断機によって複数の鉄片Wに分割して溶断し、これにより各鉄片Wをその溶断した後に形成される開口部から容易に取り出すことを可能にしている。また、鉄片Wは、後述する回収容器7内に投入することを考慮して、当該回収容器7に投入可能な大きさに溶断されるようにもなっている。また、各鉄片Wは、図12に示す例えば上方に位置するフランジ継手部eの鉄板gを溶断した場合には、下方に位置するフランジ継手部fの鉄板g上に落下し、その鉄板g上に残留することになる。図1は、フランジ継手部fの鉄板g上に残留している鉄片Wを回収する様子を示したものでもある。
【0024】
本体部3は、図1及び図2に示すように、直線状に長く延在する外郭部31を有すると共に、その一方の端部(上端部)にワイヤ11の接続部31aが設けられている。また、本体部3には、その長手方向の所定の位置に、当該本体部3を鋼管P内の中空位置に支持すると共に、当該本体部3を鋼管Pの延在する方向に沿って移動可能に支持する支持アーム32が少なくとも一組(この例では3組)設けられている。
【0025】
各組みにおける支持アーム32は、本体部3を周方向にほぼ三等分する各位置(図示例では、支持アーム32を周方向に120度離間させて3つ設けているが、周方向に90度離間させて4つ、または周方向に180度離間させて2つ設けるように構成することも可能である。)に配置されている。その各位置に配置された支持アーム32は、図2に示すように、その基端部(上端部)が外郭部31内に位置していると共に、当該基端部に固定された後述するピニオンギヤ32aの回転中心を支点にして鋼管Pの内面に対して離接する方向に揺動駆動されるようになっている。即ち、外郭部31内には、各支持アーム32を揺動駆動するための揺動駆動機構33が設けられている。
【0026】
この揺動駆動機構33は、ステッピングモータ等からなるモータ33aと、このモータ33aから出力される回転運動を直線運動に変換するねじ機構33bと、このねじ機構33bによって直線方向に駆動されるラックギヤ33cとを備えた構成になっている。そして、ラックギヤ33cに噛み合うピニオンギヤ32aが各支持アーム32の基端部に固定されており、モータ33aによって制御される角度で各支持アーム32が揺動駆動されるようになっている。
【0027】
即ち、各支持アーム32は、各ピニオンギヤ32aの回転角度に応じて、全体が外郭部31内に収納された状態になったり、その先端部が種々の径の鋼管Pの内面に当接した状態となるように、揺動駆動されるようになっている。また、各支持アーム32の先端部には、鋼管Pの延在する方向に移動することを可能にする転輪32bが設けられている。
【0028】
なお、図1は軸線が鉛直方向に延在する形状の鋼管P内に管体内異物取出装置1を挿入し、当該管体内異物取出装置1が各支持アーム32によって鋼管Pの軸心位置に保持された状態を示しているが、この鋼管Pが鉄塔における各傾斜部b、c、dの傾斜角度程度まで傾いたものであっても、当該鋼管Pのほぼ軸心位置に当該管体内異物取出装置1を保持することが可能である。また、ピニオンギヤ32aは、その外周部の全体にラックギヤ33cと噛み合う歯を設けた例を示したが、この歯については支持アーム32の揺動可能角度に応じてラックギヤ33cに噛み合う範囲にのみ設けるように構成してもよい。
【0029】
作業部2は、図3に示すように、鋼管P内において、本体部3の下方に位置すべく設けられた回転作業部4と、当該回転作業部4に設けられた揺動アーム(揺動作業部)5と、鋼管P内において、揺動アーム5の下方に位置すべく設けられた吸着プローブ(吸着作業部)6とを備えた構成になっている。
【0030】
回転作業部4は、回転駆動機構41を介して、本体部3に同軸状に連結されていると共に、当該本体部3に対して同軸状に回転駆動されるようになっている。回転駆動機構41は、本体部3の下端部における軸心位置に回転自在に設けられた回転駆動軸41aと、本体部3の下端部内に配置されたステッピングモータ等からなるモータ41bと、このモータ41bの回転駆動力を回転駆動軸41aに伝達する一対のギヤ41c、41dとを備えた構成になっている。これにより、回転作業部4は、モータ41bによって回転駆動される回転駆動軸41aの回転角度に伴った角度で、鋼管Pの周方向に回転駆動されるようになっている。また、回転作業部4は、本体部3と同様の幅に形成され、直線状に長く延在する外郭部42を備えた構成になっている。
【0031】
揺動アーム5は、回転作業部4の外郭部42に対して内方に位置する基端部(上端部)から鋼管P内を下方に長く延在し、当該基端部に固定された後述するピニオンギヤ5aの回転中心を支点にして鋼管Pの内面に対して離接する方向に揺動駆動されるように構成されている。この揺動アーム5は、回転作業部4に設けられた揺動駆動機構51によって揺動駆動されるようになっている。
【0032】
揺動駆動機構51は、回転作業部4内に設けられたステッピングモータ等からなるモータ51aと、このモータ51aから出力される回転運動を直線運動に変換するねじ機構51bと、このねじ機構51bによって直線方向に駆動されるラックギヤ51cとを備えた構成になっている。そして、ラックギヤ51cに噛み合うピニオンギヤ5aが揺動アーム5の基端部に固定されており、モータ51aの回転角度によって制御される角度で揺動アーム5が揺動駆動されるようになっている。また、揺動アーム5は、ピニオンギヤ5aの回転中心部を貫通する回転支持ピンを介して回転作業部4に連結されている。
【0033】
そして、揺動アーム5は、回転作業部4における上下に伸びる幅方向の中心線に沿う位置(即ち、軸心位置)まで揺動することにより、当該回転作業部4の外郭部42の下方への延長線内に収容された状態になると共に、その先端部(下端部)5bの幅方向の中心位置(即ち、後述する吸着プローブ6の軸心位置と同位置)が回転作業部4の軸心位置に達するようになっている。また、揺動アーム5は、鋼管Pの内面側に揺動した際には、回転作業部4の幅方向の中心線に対する角度θ(図6参照)で少なくとも90度まで揺動することが可能になっている。
【0034】
なお、ピニオンギヤ5aについても外周部の全体にラックギヤ51cと噛み合う歯を設けた例を示したが、この歯についても揺動アーム5の揺動可能角度θに応じてラックギヤ33cに噛み合うことになる範囲にのみ設けるように構成してもよい。
【0035】
吸着プローブ6は、磁性体からなる鉄片Wを磁力により吸着するように構成したものであり、その磁力による吸着作用の発揮及び解除が可能な電磁石(吸着手段)61を備えたものとなっている。この電磁石61は、鉄心における一方の磁極61a(例えばN極)が円形状の平面によって形成され、当該鉄心の他方の磁極61b(例えばS極)が一方の磁極61aを所定の間隔をおいて同心状に囲むと共に、当該一方の磁極61aと同一面上に位置する円環状の平面によって形成されている。
【0036】
この電磁石61は、各磁極61a、61bにまたがって吸着される鉄片Wによって磁気閉回路を構成することにより、当該鉄片Wを強力に保持することが可能になっている。また、その磁気閉回路によって、磁気が外部にほとんど漏れなくなることから、電磁石61で鉄片Wを吸着した後は、当該電磁石61が鋼管Pの内面に吸着したり、電磁石61に吸着した後の鉄片Wに、更に、他の鉄片Wが吸着するのを防止することが可能である。
【0037】
また、吸着プローブ6の上端部には、その軸心位置に後述するワイヤ62eによって吊下げるための接続部6aが設けられている。そして、吸着プローブ6がその接続部6aを介してワイヤ62eによって吊下げられた状態において、各磁極61a、61bの平面部分は水平方向を向くようになっている。
【0038】
このように構成された吸着プローブ6は、揺動アーム5に設けられたウインチ機構62によって、揺動アーム5の先端部5bに対して上下方向に移動することが可能になっている。
【0039】
ウインチ機構62は、揺動アーム5に設けられたステッピングモータ等からなるモータ62aと、このモータ62aによって回転駆動されるウォーム62bと、このウォーム62bに噛み合うウォームホイール62cと、このウォームホイール62cによって回転駆動される円筒形状の巻き胴62dと、この巻き胴62dによって巻き取りや巻き戻しがされるワイヤ(索)62eと、このワイヤ62eを揺動アーム5の先端部5bに案内するガイドローラ62f、62gとを備えた構成になっている。
【0040】
そして、ワイヤ62eの先端部が吸着プローブ6の接続部6aに連結されるようになっており、モータ62aの回転角度によって制御される巻き胴62dの回転角度に伴ったワイヤ62eの繰り出し量によって吸着プローブ6が上下方向に移動するようになっている。また、ワイヤ62eの先端部近傍には、当該ワイヤ62eの先端部が揺動アーム5の先端部5bの内方に入るのを防止するストッパ部材62hが固定されている。
【0041】
また、回転作業部4には、揺動アーム5の揺動によって移動する当該揺動アーム5の先端部5bの移動可能な範囲内における当該先端部5bの下方の位置であって、当該先端部5bの幅方向の中心位置が当該回転作業部4の軸心位置と同軸となる位置に、電磁石61の吸着作用の解除により当該電磁石61から離脱して落下する鉄片Wを受け入れるための回収容器7が設けられている。
【0042】
回収容器7は、円筒状に形成された外周部7aを有し、その外周部7a及び底部7bの全体がアルミニウム等の磁石で吸着することができない非磁性体の線材からなる金網によって形成されている。即ち、回収容器7は、非磁性体の材料によって形成されている。外周部7aの外径は、回転作業部4における外郭部42の最大幅と同等に形成されている。また、外周部7aの内径は、吸着プローブ6の外径や鉄片Wより大きなものとなっている。即ち、回収容器7は、鉄片Wを吸着した状態の吸着プローブ6を挿入することが可能な大きさに構成され、当該回収容器内で磁気を切ることにより、鉄片Wを確実に回収することが可能になっている。また、吸着プローブ6を回収容器7の上方に位置させた状態で、当該吸着プローブ6の磁気を切った場合にも、鉄片Wを回収容器7内に落下させることができる。
【0043】
また、回収容器7は、図4に示すように、回転作業部4の下端部に連結された支持部材71の下端部に取り付けられている。支持部材71は、回転作業部4の下端部から外郭部42に沿って下方に延在し、かつその延在方向に伸縮自在に構成されている。即ち、支持部材71は、図5に示すように、スライドレール71aと、このスライドレール71aに同軸状に移動自在に連結されたライナ71bと、このライナ71bがスライドレール71aから脱落するのを防止するストッパ部72とを備えた構成になっている。
【0044】
スライドレール71aは、直線状に長く延在するように形成されていると共に、その延在する方向に互いに平行に延びる開口縁部71c、71cを有することにより断面がC字状に形成されたものとなっている。ライナ71bは、直線状に延在するように形成されていると共に、スライドレール71a内に挿入され、当該スライドレール71aの延在する方向に移動自在となる断面形状をしている。
【0045】
ストッパ部72は、スライドレール71aの下端部にボルトや溶接等で固定された固定ストッパ72aと、ライナ71bの上端部にボルトや溶接等で固定された移動ストッパ72bとを備えた構成になっている。固定ストッパ72aは、スライドレール71aにおける開口縁部71c、71c間を閉塞するように当該スライドレール71aに設けられている。移動ストッパ72bは、左右の開口縁部71c、71cに沿って移動可能な幅寸法を有し、かつ下端部に固定ストッパ72aに当って下方への移動を停止させるための凸部を有している。
【0046】
一方、揺動アーム5の先端部5bには、図3に示すように、吸着プローブ6の真上となる範囲から水平方向(図3において紙面に直交する方向)に僅かに外れた位置であって、吸着プローブ6の側方を通して鉛直方向の下方を見下ろすことが可能な位置に、CCD等の撮像素子(イメージセンサ)を備えた第1カメラ81が設けられている。
【0047】
第1カメラ81は、図6に示すように、揺動アーム5の傾斜角度θが変化した場合でも、当該第1カメラ81の撮影方向が鉛直方向の下方となるように維持するブラケット81aを介して揺動アーム5の先端部5bに設けられており、吸着プローブ6のほぼ真下に位置する物体を常時確認することが可能になっている。即ち、第1カメラ81は、吸着プローブ6のほぼ真下に位置する鉄片Wを確認することが可能になっている。
【0048】
また、回転作業部4には、下方に延在するブラケット82aが設けられており、そのブラケット82aの先端部(下端部)にもCCD等の撮像素子(イメージセンサ)を備えた第2カメラ82が設けられている。この第2カメラ82は、上述した第1カメラ81より、鋼管P内の上方の位置すると共に、回収容器7に対して斜め上方に位置した状態となっており、吸着プローブ6や回収容器7を上方から撮影することが可能であることはもちろんのこと、鋼管P内における下方の広い範囲を撮影することが可能になっている。また、第2カメラ82は、金網によって構成された回収容器7を介して下方に位置する鉄片W等を撮影することも可能である。
【0049】
なお、ワイヤ11には、モータ33a等に対する電力の供給や制御等を行うための電線(図示せず)が一緒に配置された状態になっており、ワイヤ62eには吸着プローブ6の電磁石61に電力を供給するための電線(図示せず)が一緒に配置された状態になっている。また、第1カメラ81、82の近傍部分には、これらの第1カメラ81、82の撮影方向の前方を照らすLED等のライト(図示せず)が設けられている。
【0050】
上記のように構成された管体内異物取出装置1においては、図12に示す鉄塔における所定の主柱aの上端開口部に設けられた閉塞板hを開いて、その上端開口部から当該主柱aとしての鋼管P内に、作業部2、本体部3の順で挿入する。これにより、鋼管P内において、作業部2が下方に位置し、本体部3が上方に位置する状態になる。その際、作業部2及び本体部3は、その本体部3に設けられた3組の各支持アーム32によって、鋼管P内の中空位置であって当該鋼管Pのほぼ軸心位置に保持された状態になると共に、当該鋼管P内を上下方向に移動可能な状態になる。このため、ワイヤ11の繰り出し量を調整することにより、鋼管P内における上下方向の位置を簡単かつ正確に制御することが可能になる。なお、フランジ継手部eの鉄板gに開口部を形成した直後であれば、その開口部を形成するのに使用したプラズマ切断機等の溶断手段を主柱aから引き抜いた後、続けて管体内異物取出装置1を主柱a内に挿入するようにしてもよい。
【0051】
また、鋼管P内に挿入した後は、特に第2カメラ82を用いて、回収容器7や鋼管P内の下方を撮影することにより、管体内異物取出装置1の先端側に位置する回収容器7と、フランジ継手部fの鉄板gとの位置関係から、当該鉄板g上に残存する鉄片Wを吸着プローブ6で捕捉することが可能な位置に達したことを確認することが可能になる。
【0052】
そして、ワイヤ11の繰り出しを停止することにより、管P内における鉄片Wを捕捉可能な位置に管体内異物取出装置1を保持することができる。即ち、管体内異物取出装置1は、その上下方向の位置がワイヤ11によって確実に保持された状態になる。また、管体内異物取出装置1は、3組の各支持アーム32によって鋼管Pのほぼ軸心位置に確実に保持された状態にもなる。
【0053】
このようにして管体内異物取出装置1を鋼管P内に保持した状態で、回転作業部4、揺動アーム5及び吸着プローブ6等を用いて鉄板g上に残留する鉄片Wを捕捉することになる。この際、吸着プローブ6の鋼管P内における周方向の位置は、回転作業部4を回転駆動することによって調整することができ、当該吸着プローブ6の鋼管Pの内面に離接する方向の位置は、図6に示すように、揺動アーム5を揺動駆動することによって調整することができる。なお、揺動アーム5を所定の角度傾けるべくモータ51aを作動させた後、当該モータ51aを停止することにより、揺動アーム5に作用する荷重がモータ51a側に逆に伝達することになるが、この荷重についてはねじ機構51bで保持することができ、モータ51aに伝わることがないので、当該モータ51aを停止した後も、揺動アーム5を所定角度傾けた状態に維持することができる。上述のように回転作業部4や揺動アーム5を操作することにより、図6に示すように、吸着プローブ6を、捕捉すべき鉄片Wのほぼ真上に移動することができる。
【0054】
そこで、図7に示すように、ウインチ機構62を作動させてワイヤ62eを巻き胴62dから繰り出すことにより、吸着プローブ6を下方に移動させて、当該吸着プローブ6の電磁石61が鉄片Wに当接した時点、あるいは鉄片Wに近接した時点で、当該電磁石61に励磁電流を供給する。これにより、電磁石61は、鋼管Pの内面等に吸着することなく、鉄片Wのみを簡単かつ確実に吸着することができる。
【0055】
また、鉄片Wが電磁石61の一方の磁極61aと他方の磁極61bにまたがって吸着されることにより、磁気閉回路が構成されることになることから、電磁石61によって鉄片Wを強力に保持することができる。しかも、磁気閉回路が構成されることによって外部への磁気の漏れがほとんどなくなることから、鉄片Wが複数重なった状態で存在する場合でも上側の一の鉄片Wを吸着した後は他の鉄片Wを吸着することがない。従って、過大な負荷がウインチ機構62のモータ62aや、揺動駆動機構51のモータ51a等に作用するのを防止することができる。また、励磁後の電磁石61が鋼管Pの内面に吸着するのも防止することができる。
【0056】
電磁石61で鉄片Wを吸着した後は、ウインチ機構62によってワイヤ62eを巻き胴62dに巻き戻すことによって、吸着プローブ6を上方に移動する。そして、ストッパ部材62hが揺動アーム5の先端部5bに達した時点で図示しないリミットスイッチの作用により、モータ62aの回転が停止し、これにより、吸着プローブ6の移動が停止する。この停止後は、吸着プローブ6及び鉄片Wの荷重がモータ62aに向かって逆に伝達することになるが、この荷重についてはウォーム62bとウォームホイール62cとの噛み合う部分で保持することができるので、モータ62aを停止した後も、吸着プローブ6をその停止した位置に保持することができる。
【0057】
そして、図8に示すように、揺動駆動機構51のモータ51aを作動させることによって、当該揺動アーム5を回転作業部4と同軸状の収納位置まで戻す。これにより、吸着プローブ6の軸心位置が回収容器7の軸心位置と一致した状態になるので、電磁石61の吸着作用を解除する制御を行うことにより、当該電磁石61から鉄片Wを離脱させ、これにより落下する鉄片Wを回収容器7で収容する。なお、鉄片Wを吸着した状態の吸着プローブ6を回収容器7内に挿入した後、電磁石61の磁気を切るようにしてもよい。
【0058】
以下、同様にして、残る鉄片Wを捕捉した後、回収容器7に収容する。そして、全ての鉄片Wあるいは回収容器7で収容可能な数量の鉄片Wを回収容器7に収納した後、ワイヤ11によって、管体内異物取出装置1を主柱aの上端開口部から引き上げることにより、鋼管P内に残存していた鉄片Wを取り出すことができる。この場合、複数の鉄片Wを回収容器7に入れた状態で一度に主柱aから取り出すことができるので、当該鉄片Wを取り出す効率の向上を図ることができる。
【0059】
また、鋼管Pが図9に示すように、傾斜している場合でも、作業部2及び本体部3を、上述した3組の各支持アーム32によって、鋼管Pのほぼ軸心位置に保持しながら、上下方向に移動することができる。但し、図9に示すように、鉄板(床状部分)gにおける鋼管Pの内面と鋭角に交差する部位に鉄片Wが存在している場合には、ウインチ機構62を用いることによっては、鉛直方向の下方に垂れ下がる吸着プローブ6を当該鉄片Wに近づけることが困難になることがある。しかし、このような場合は、吸着プローブ6をウインチ機構62によって上端に巻き上げた状態で、吸着プローブ6の鋼管P内における周方向の位置を鉄片Wに対応する位置に移動すべく回転作業部4を回転駆動し、更に吸着プローブ6を鋼管Pの内面に近接した状態となるように揺動アーム5を揺動駆動してから、管体内異物取出装置1の全体を下方に移動することにより、吸着プローブ6を鉄片Wの位置まで移動させることができる。
【0060】
この際、回収容器7の底部7bが鉄板gやその鉄板g上の鉄片Wに当ることになるが、当該回収容器7は支持部材71が短縮する方向に変形することにより吸着プローブ6に対して相対的に上方に移動することになるので、吸着プローブ6を鉄片Wの位置までほとんど抵抗なく移動させることができ、これによって当該鉄片Wを電磁石61で吸着することができる。
【0061】
そして、その吸着後に、管体内異物取出装置1の全体を上方に移動することにより、支持部材71が伸びる方向に自然に変形し、回収容器7が吸着プローブ6の下方に位置することになるので、揺動アーム5を回転作業部4と同軸状の位置まで戻し、電磁石61の磁力を切ることにより、鉄片Wを回収容器7に収容することが可能になる。
【0062】
即ち、鋼管Pが傾斜している場合であっても、鉄板g上から鉄片Wを回収することができる。
【0063】
なお、上記実施の形態においては、吸着プローブ6を上下方向に駆動するウインチ機構62を設けた例を示したが、このウインチ機構62を設けずに、当該吸着プローブ6を揺動アーム5の先端部5bに単に吊持したり、先端部5bに直接取り付けるようにしてもよい。この場合には、回転作業部4及び揺動アーム5を操作することによって、吸着プローブ6を鉄片Wのほぼ真上に移動させた後、ワイヤ11を若干繰り出して、管体内異物取出装置1の全体を降下させることにより、吸着プローブ6の電磁石61で鉄片Wを吸着することができる。また、吸着プローブ6を揺動アーム5の先端部5bに直接取り付ける場合には、吸着プローブ6の上端部(例えば接続部6a)を揺動アーム5の先端部5bに回転自在に連結することが好ましい。このように構成することにより、揺動アーム5の揺動角度θにかかわらず、電磁石61の吸着面を下方に向けることができ、鉄片Wを確実に吸着して回収することができる。また、吸着面を球面状に形成した電磁石61を揺動アーム5の先端部5bに固定的に取り付けるように構成した場合も、揺動アーム5の揺動角度θにかかわらず、下方に位置する鉄片Wを確実に吸着することができる。
【0064】
また、吸着プローブ6として電磁石61を備えたものを示したが、この電磁石61に代えて永久磁石を用いてもよい。この永久磁石を用いた場合にも、一方の磁極及び他方の磁極の形状や位置を同様のものにすることによって、鉄片Wの吸着により磁気閉回路を構成することができる。このため、吸着力の小さな永久磁石を用いた場合でも大きな力で鉄片Wを吸着することができる。しかも、永久磁石の磁力は、その下面における磁極の一部に生じることになるので、永久磁石の側方に位置することになる鋼管Pに当該永久磁石が吸着されるのを極力防止することができる。
【0065】
なお、永久磁石を用いる場合には、磁気閉回路を有効にしたり解除したりすることにより、吸着作用の発揮及び解除が可能なスイッチ機能付き永久磁石(吸着手段)を用いることが好ましい。この場合、吸着プローブ6は、図10に示すように、スイッチ機能付き永久磁石63を備えた構成になる。スイッチ機能付き永久磁石63は、吸着プローブ6の一部を構成する非磁性体6bに固定された一対のヨーク(磁性部材)63a、63bと、マグネット部63cと、マグネット部63cを軸心部63d回りに回転駆動する図示しないステッピングモータ等のモータとを備えた構成になっている。各ヨーク63a、63bは、図10(a)に示すOFF状態においては、マグネット部63cのN極及びS極が接触することがないので、当該マグネット部63cによって磁化されることがない。一方、マグネット部63cが軸心部63d回りに回転駆動されて、図10(b)に示すON状態となると、各ヨーク63a、63bの側面に形成された円弧状の凹部に、当該凹部に合致する形状のマグネット部63cのN極及びS極の各端部が嵌合するようにして接触することになることから、各ヨーク63a、63bがマグネット部63cによって磁化され、当該各ヨーク63a、63bの先端部にN極又はS極の磁極が生じることになる。このため、スイッチ機能付き永久磁石63においては、モータを介してマグネット部63cを回転駆動しON状態にすることによって、各ヨーク63a、63bの先端部で鉄片Wを吸着することができ、更にモータを介してマグネット部63cを回転駆動しOFF状態にすることによって、各ヨーク63a、63bの吸着作用を解除し、鉄片Wを回収容器7(図8参照)内に収容することができる。また、非磁性体6bの頂面の軸心位置には、上述した接続部6aが設けられている。このため、吸着プローブ6は、接続部6aを介してワイヤ62eで吊下げられることによって、各ヨーク63a、63bの先端面が水平方向を向くようになっている。
【0066】
また、上述した電磁石61や、スイッチ機能付き永久磁石63は、磁気閉回路を構成しない通常の磁力を発揮するような電磁石やスイッチ機能付き永久磁石によって構成してもよい。
【0067】
また、吸着プローブ6は、図11に示すように、真空(大気圧より低い圧力の状態)による吸着作用の発揮及び解除が可能な吸引カップ64を備えたものであってもよい。吸引カップ64は、内部に空気がまったくない状態になったとしても、大気圧によって押し潰されることのない剛性を有するゴム質の材料でカップ状に形成されたものであり、円筒部の一端部が球面状の頂面部によって閉塞され、当該円筒部の他端部が半径方向外側に湾曲すると共に、先端に向って漸次薄く形成されたリップ部64aとなって開口しいる。リップ部64aは、吸引カップ64の全体が剛性の高いゴム弾性を有する材料で形成したとしても、容易に弾性変形して、鉄片Wの所定の面に密着するうようになっている。また、吸引カップ64には、頂面部の軸心位置から斜めに逸れた位置に吸引用のホース64cと接続するめの継手部64bが設けられている。ホース64cは、継手部64bの外周面に嵌合した状態で当該継手部64bに締結バンド64dによって固定されている。また、吸着プローブ6は、吸引カップ64における頂面部の軸心位置に、上述したワイヤ62eによって吊り下げるための接続部6aを備えた構成になっており、接続部6aを介してワイヤ62bで吊り下げられた状態において、吸引カップ64のリップ部64aによる開口部が下方を向くようになっている。そして、図11に示す吸着プローブ6においては、吸引カップ64内の空気をホース64c及び継手部64bを介して図示しない真空ポンプで吸引し、当該吸引カップ64内を真空状態にすることにより、リップ部64aに当接する鉄片Wを吸着することができる。また、真空状態にある吸引カップ64内にホース64c及び継手部64bを介して空気を導入することにより、当該真空による吸着状態を解除して、鉄片Wをリップ部64aから離脱させ、これにより当該鉄片Wを回収容器7(図8参照)内に回収することができる。
【0068】
スイッチ機能付き永久磁石63や吸引カップ64を備えた吸着プローブ6についても、揺動アーム5の先端部5bに単に吊持したり、当該先端部5bに直接取り付けるようにしてもよい。この場合も、回転作業部4及び揺動アーム5を操作することによって、吸着プローブ6を鉄片Wのほぼ真上に移動させた後、ワイヤ11を若干繰り出して、管体内異物取出装置1の全体を降下させることにより、吸着プローブ6の永久磁石63や、吸引カップ64で鉄片Wを吸着することができる。また、吸着プローブ6を揺動アーム5の先端部5bに直接取り付ける場合には、吸着プローブ6の上端部(例えば接続部6a)を揺動アーム5の先端部5bに回転自在に取り付けることが好ましい。このように構成することにより、揺動アーム5の揺動角度θにかかわらず、永久磁石63や吸引カップ64の吸着部を下方に向けることができ、鉄片Wを確実に吸着して回収することができる。また、吸着面を球面状に形成した永久電磁(スイッチ機能を有するものでも、有しないものでもよい)を揺動アーム5の先端部5bに固定的に取り付けるように構成した場合も、揺動アーム5の揺動角度θにかかわらず、下方に位置する鉄片Wを確実に吸着することができる。
【0069】
更に、上記実施の形態においては、回収容器7を用いた例を示したが、この回収容器7を用いずに、吸着プローブ6で鉄片Wを吸着するたびに、管体内異物取出装置1を主柱aから引き上げて、当該鉄片Wを主柱a内から回収するようにしてもよい。
【0070】
また、アルミニウム等の非磁性体の線材からなる金網によって回収容器7を構成した例を示したが、この回収容器7としては、磁性体の線材によて金網状に形成したものや、金属以外のプラスチックや繊維等の線材を用いて網状に形成したものであってもよい。更に、回収容器7としては、磁性体やプラスチック等を含む非磁性体の板材に複数の貫通孔を形成したもので構成してもよく、透明性のあるプラスチック等の板材によって構成してもよい。
【0071】
また、異物として、磁性体からなる鉄片Wを示したが、この異物はプラスチック等を含む非磁性体からなるものであってもよい。
【0072】
更に、スライドレール71aとライナ71bとを単に摺動自在なもので構成したが、自由状態において、スライドレール71aとライナ71bとが最も長くなる状態となるように(即ち、移動ストッパ72bが固定ストッパ72aに当接することにより支持部材71が最も長くなる状態となるように)付勢するコイルスプリング等の付勢手段を設けるように構成してもよい。但し、この場合の付勢手段による付勢力は、管体内異物取出装置1の全体を下方に移動した際に、回収容器7が鉄板g等から受ける上方(斜め上方を含む)の力より小さなものにする必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施の形態として示した管体内異物取出装置示す正面図である。
【図2】同管体内異物取出装置における本体部を示す要部破断正面図である。
【図3】同管体内異物取出装置における作業部を示す要部破断正面図である。
【図4】同管体内異物取出装置における作業部を示す背面図であって、(a)は支持部材が自由状態にあって最も長く延在している状態を示す図であり、(b)は支持部材が最も短縮された状態を示す図である。
【図5】同管体内異物取出装置における回収容器及び支持部材を示す図であって、(a)は支持部材が自由状態にあって最も長く延在している状態を示す正面図であり、(b)は同状態における側面図であり、(c)は支持部材が最も短縮された状態を示す側面図であり、(d)は(a)におけるストッパ部を示す要部拡大図であり、(e)は(d)のE−E線に沿う断面図であり、(f)は(d)のF−F線に沿う断面図であり、(g)は(d)のG−G線に沿う断面図である。
【図6】同管体内異物取出装置における作業部の揺動アームの作用を示す要部破断正面図である。
【図7】同管体内異物取出装置における作業部の吸着プローブ及びウインチ機構の作用を示す要部破断正面図である。
【図8】同管体内異物取出装置における作業部の揺動アームを収納状態に戻した状態を示す要部破断正面図である。
【図9】同管体内異物取出装置における傾斜する鋼管内での作業部の作用を示す要部破断正面図である。
【図10】同管体内異物取出装置における磁力により吸着する他の吸着プローブを示す図であって、(a)は磁力による吸着作用がOFF状態となっていることを示す断面図であり、(b)は磁力による吸着作用がON状態になっていることを示す断面図である。
【図11】同管体内異物取出装置における真空による吸着力を用いた他の吸着プローブを示す断面図である。
【図12】同管体内異物取出装置を挿入するための鋼管を有する鉄塔を示す正面図である。
【図13】同鉄塔における所定の位置のフランジ継手部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 管体内異物取出装置
2 作業部
3 本体部
4 回転作業部
5 揺動アーム(揺動作業部)
5b 先端部
6 吸着プローブ(吸着作業部)
7 回収容器
32 支持アーム
61 電磁石(吸着手段)
62 ウインチ機構
62e ワイヤ(索)
63 スイッチ機能付き永久磁石(吸着手段)
64 吸引カップ(吸着手段)
71 支持部材
P 鋼管(管体)
W 鉄片(異物)
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体内に残留する異物を当該管体内から取り出すための管体内異物取出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管鉄塔等のような既設の鋼管構造物においては、その鋼管(管体)の内面等について調査や補修を行うことがある。その調査、補修に際しては、鋼管における上方開口端から当該鋼管内に調査・補修装置を挿入することによって行う方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。この方法は、鋼管自体の強度を損なうことがなく、かつ大規模な足場作り等を必要としないという利点がある。
【0003】
しかしながら、例えば、図12に示すように、鉄塔における複数の鋼管Pで構成された主柱aの傾斜角度が例えば3段階に変化している場合、その第1傾斜部bの鋼管Pと、第2傾斜部cの鋼管Pとを連結するフランジ継手部eや、第2傾斜部cの鋼管Pと、第3傾斜部dの鋼管Pとを連結するフランジ継手部fは、図13に示すように、その内部が鉄板gによって仕切られて閉塞された構造になっている場合がある。このような鉄板gで閉塞されたフランジ継手部e、fがある場合には、当該フランジ継手部e、fより下方の鋼管P内に調査・補修装置を挿入し、当該鋼管P内の調査等を行うことができない。このため、例えば、プラズマ切断機等の溶断手段を用いて、鉄板gに調査・補修装置を挿入するための貫通孔を空ける技術を開発し、その貫通孔を介して、更に下方の鋼管P内の調査等を行おうとする試みが行われている。
【0004】
一方、上述した貫通孔を空ける際に溶断された鉄片については、下方に落下し、鋼管P内に異物として残存することになる。この場合、鋼管Pやフランジ継手部e、f等は、溶融亜鉛メッキ等による防錆処理が施されているのに対して、落下した鉄片は、その溶断により防錆処理の排除された部分が生じてしまい、その防錆処理のなされていない部分から赤錆等の腐食が発生しやすくなる。このため、溶断後の鉄片が鋼管P内に残っている場合には、その鉄片の腐食に伴って鋼管Pやフランジ継手部e、f等に腐食が進行しやすくなるおそれがある。従って、鋼管P内に残った溶断後の鉄片については、当該鋼管P内から取り出すことが好ましい。
【0005】
しかしながら、上述のような溶断を行うことによって初めて、その溶断後の鉄片が鋼管P内に残ることになるので、従来においては、鋼管P内に残存する鉄片等の異物を当該鋼管P内から取り出すような技術は存在していなかった。なお、鋼管に限らず、他の金属やプラスチック等の材料で形成された管体内に異物が残っている場合にも、当該異物を管体内から取り出すことが好ましいことが多い。
【0006】
【特許文献1】特開2004−011013号公報
【特許文献2】特開2004−286114号公報
【特許文献3】特開2005−090173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、管体内に残存する異物を当該管体内から取り出すことのできる管体内異物取出装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、一方の開口端が上方に位置するように設置された管体における当該上方開口端から当該管体内に挿入して、当該管体内に残留する異物を当該管体内から取り出すための管体内異物取出装置であって、前記異物を捕捉すべく作業を行う作業部と、この作業部を支持する本体部とを備えてなり、前記本体部は、当該本体部を前記管体内の中空位置に支持すると共に、当該本体部を当該管体の延在する方向に移動可能に支持する支持アームを備えており、前記作業部は、前記管体内において前記本体部の下方に位置すべく設けられた回転作業部と、当該回転作業部に設けられた揺動作業部と、当該揺動作業部の下方に位置すべく設けられた吸着作業部とを備えており、前記回転作業部は、前記本体部に対して前記管体の周方向に回転駆動されるように構成され、前記揺動作業部は、前記回転作業部に連結された基端部から前記管体内を下方に延在すべく形成され、かつ前記基端部を支点にして前記管体の内面に離接する方向に揺動駆動されるように構成され、前記吸着作業部は、前記異物を吸着するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記揺動作業部には、前記吸着作業部を索を介して上下方向に移動するためのウインチ機構が備えられていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記吸着作業部は、吸着作用の発揮及び解除が可能な吸着手段を備えており、前記回転作業部には、前記揺動作業部の揺動に伴って移動する当該揺動作業部の先端部の移動可能な範囲内における当該先端部の下方の位置に、吸着作用の解除により前記吸着手段から落下する前記異物を受け入れるための回収容器が備えられていることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記回収容器は、前記回転作業部から下方に延在し、かつその延在方向に伸縮自在に構成された支持部材の下端部に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、作業部、本体部の順で管体内に上方開口端から挿入することにより、当該管体内において、作業部が下方に位置し、本体部が上方に位置する状態になる。その際、作業部及び本体部の全体は、その本体部に設けられた支持アームによって、管体内の中空位置に保持された状態になると共に、当該管体内を上下方向に移動可能な状態になる。このため、例えばロープやワイヤー等の吊持索を本体部の上端部につなげ、この吊持索の繰り出し量を調整することにより、作業部及び本体部の管体内における上下方向の位置を簡単かつ正確に制御することが可能になる。
【0013】
上述した吊持索を利用して、作業部及び本体部を下方に移動させ、吸着作業部によって管体内に残存する異物を捕捉可能な位置まで降下した時点で、その下方への移動を停止させる。そして、回転作業部、揺動作業部及び吸着作業部を用いて異物を捕捉することになる。この際、吸着作業部の管体内における周方向の位置は、回転作業部を回転駆動することによって調整することができ、また当該吸着作業部の管体内面に離接する方向の位置は、揺動作業部を揺動駆動することによって調整することができる。従って、回転作業部及び揺動作業部を用いることにより、吸着作業部を、異物を吸着することが可能な位置まで移動させることができ、これによって当該吸着作業部に当該異物を吸着させることができる。なお、異物を吸着する際、吸着作業部を異物のやや上方に位置させた状態に調整した後、上述した吊持索を下方に繰り出すことにより、当該吸着作業部で異物を吸着することも可能である。
【0014】
異物を吸着作業部で吸着した後は、全体を管体内から引き上げることにより、当該異物を管体内から取り出すことができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、吸着作業部を索を介して上下方向に移動するためのウインチ機構が揺動作業部に備えられているので、吸着作業部が異物の上方に位置するように、回転作業部及び揺動作業部で調整した後、ウインチ機構を用いて吸着作業部を下方に移動させることにより、当該異物を簡単かつ確実に吸着することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、吸着作業部が吸着作用の発揮及び解除が可能な吸着手段を備えたものとなっているので、吸着手段に対する吸着作用の発揮及び解除の制御を行うことにより、吸着作業部に異物を吸着させたり、当該吸着作業部から異物を離脱させたりすることができる。そして、回転作業部には揺動作業部の先端部の移動可能な範囲内における当該先端部の下方位置に、吸着手段による吸着作用の解除により、当該吸着手段から離脱し落下する異物を受け入れる回収容器が備えられているので、異物が管体内に複数残存している場合でも、その複数の異物を回収容器に収容してから、その異物の全体を管体から取り出すことができる。即ち、複数の異物が残存している場合には、当該異物を効率よく取り出すことができるという利点がある。
【0017】
請求項4に記載の発明にれば、例えば、管体が傾斜し、その管体が水平状に広がる床状部分によって閉塞されている場合、その床状部分における管体内面と鋭角に交差する部位に異物が存在する状態になることがあるが、このような場合でも、吸着作業部をウインチ機構によって上方端に位置させた状態で、吸着作業部の管体内における周方向の位置を異物に対応する位置に移動すべく回転作業部を回転駆動し、更に吸着作業部を管体内面に近接した状態となるように移動すべく揺動作業部を揺動駆動してから、全体を管体に沿って下方に移動することにより、吸着作業部の吸着手段によって異物を吸着することが可能となる。但し、このような作業を行った場合には、吸着手段によって異物を吸着する前に、その吸着手段から落下する異物を受け入れるための回収容器が床状部分に当ることになる。しかし、その回収容器を下端部に設けた支持部材が伸縮自在に構成されていることから、その支持部材が縮む方向に変形することにより、吸着手段が異物を吸着可能な状態となる位置まで、全体を下方に移動することができる。
【0018】
そして、吸着手段によって異物を吸着した後に、全体を上方に移動することにより、支持部材がその延在方向に自然に伸びることになるので、回収容器が吸着手段の下方に位置することになり、当該吸着手段で吸着した異物を回収容器に収容することができる。
【0019】
従って、管体が傾斜している場合でも当該管体内の床状部分上に残留する異物を回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態としての一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
この実施の形態で示す管体内異物取出装置1は、図1に示すように、異物としての鉄片Wを捕捉すべく作業を行う作業部2と、この作業部2を支持する本体部3とを備えた構成になっている。この管体内異物取出装置1は、図12に示す鉄塔の主柱aにおける最上位置の鋼管Pの上端開口部を閉塞する閉塞板hを開いて、その上端開口部から当該主柱a内に挿入することが可能に構成されたものである。この場合、管体内異物取出装置1は、図1に示すように、本体部3の上端部に連結されたワイヤ(吊持索)11によって吊下げられた状態になっており、そのワイヤ11の繰り出し量を調整したり、その繰り出しを停止したりすることにより、主柱a内の上下方向における所定の位置に移動したり、その位置に保持したりすることが可能になっている。
【0022】
また、図1に示す管体内異物取出装置1は、主柱aにおける上方に位置するフランジ継手部eの鉄板g(図13)の一部を溶断することによって開口部(図示せず)を形成した後に、その開口部を介して、第2の傾斜部cにおける鋼管P内に挿入され、下方に位置するフランジ継手部fの近傍位置まで移動されると共に、その位置に保持された状態を示している。
【0023】
なお、上述した開口部を形成する際には、その鉄板gの一部を例えばプラズマ切断機によって複数の鉄片Wに分割して溶断し、これにより各鉄片Wをその溶断した後に形成される開口部から容易に取り出すことを可能にしている。また、鉄片Wは、後述する回収容器7内に投入することを考慮して、当該回収容器7に投入可能な大きさに溶断されるようにもなっている。また、各鉄片Wは、図12に示す例えば上方に位置するフランジ継手部eの鉄板gを溶断した場合には、下方に位置するフランジ継手部fの鉄板g上に落下し、その鉄板g上に残留することになる。図1は、フランジ継手部fの鉄板g上に残留している鉄片Wを回収する様子を示したものでもある。
【0024】
本体部3は、図1及び図2に示すように、直線状に長く延在する外郭部31を有すると共に、その一方の端部(上端部)にワイヤ11の接続部31aが設けられている。また、本体部3には、その長手方向の所定の位置に、当該本体部3を鋼管P内の中空位置に支持すると共に、当該本体部3を鋼管Pの延在する方向に沿って移動可能に支持する支持アーム32が少なくとも一組(この例では3組)設けられている。
【0025】
各組みにおける支持アーム32は、本体部3を周方向にほぼ三等分する各位置(図示例では、支持アーム32を周方向に120度離間させて3つ設けているが、周方向に90度離間させて4つ、または周方向に180度離間させて2つ設けるように構成することも可能である。)に配置されている。その各位置に配置された支持アーム32は、図2に示すように、その基端部(上端部)が外郭部31内に位置していると共に、当該基端部に固定された後述するピニオンギヤ32aの回転中心を支点にして鋼管Pの内面に対して離接する方向に揺動駆動されるようになっている。即ち、外郭部31内には、各支持アーム32を揺動駆動するための揺動駆動機構33が設けられている。
【0026】
この揺動駆動機構33は、ステッピングモータ等からなるモータ33aと、このモータ33aから出力される回転運動を直線運動に変換するねじ機構33bと、このねじ機構33bによって直線方向に駆動されるラックギヤ33cとを備えた構成になっている。そして、ラックギヤ33cに噛み合うピニオンギヤ32aが各支持アーム32の基端部に固定されており、モータ33aによって制御される角度で各支持アーム32が揺動駆動されるようになっている。
【0027】
即ち、各支持アーム32は、各ピニオンギヤ32aの回転角度に応じて、全体が外郭部31内に収納された状態になったり、その先端部が種々の径の鋼管Pの内面に当接した状態となるように、揺動駆動されるようになっている。また、各支持アーム32の先端部には、鋼管Pの延在する方向に移動することを可能にする転輪32bが設けられている。
【0028】
なお、図1は軸線が鉛直方向に延在する形状の鋼管P内に管体内異物取出装置1を挿入し、当該管体内異物取出装置1が各支持アーム32によって鋼管Pの軸心位置に保持された状態を示しているが、この鋼管Pが鉄塔における各傾斜部b、c、dの傾斜角度程度まで傾いたものであっても、当該鋼管Pのほぼ軸心位置に当該管体内異物取出装置1を保持することが可能である。また、ピニオンギヤ32aは、その外周部の全体にラックギヤ33cと噛み合う歯を設けた例を示したが、この歯については支持アーム32の揺動可能角度に応じてラックギヤ33cに噛み合う範囲にのみ設けるように構成してもよい。
【0029】
作業部2は、図3に示すように、鋼管P内において、本体部3の下方に位置すべく設けられた回転作業部4と、当該回転作業部4に設けられた揺動アーム(揺動作業部)5と、鋼管P内において、揺動アーム5の下方に位置すべく設けられた吸着プローブ(吸着作業部)6とを備えた構成になっている。
【0030】
回転作業部4は、回転駆動機構41を介して、本体部3に同軸状に連結されていると共に、当該本体部3に対して同軸状に回転駆動されるようになっている。回転駆動機構41は、本体部3の下端部における軸心位置に回転自在に設けられた回転駆動軸41aと、本体部3の下端部内に配置されたステッピングモータ等からなるモータ41bと、このモータ41bの回転駆動力を回転駆動軸41aに伝達する一対のギヤ41c、41dとを備えた構成になっている。これにより、回転作業部4は、モータ41bによって回転駆動される回転駆動軸41aの回転角度に伴った角度で、鋼管Pの周方向に回転駆動されるようになっている。また、回転作業部4は、本体部3と同様の幅に形成され、直線状に長く延在する外郭部42を備えた構成になっている。
【0031】
揺動アーム5は、回転作業部4の外郭部42に対して内方に位置する基端部(上端部)から鋼管P内を下方に長く延在し、当該基端部に固定された後述するピニオンギヤ5aの回転中心を支点にして鋼管Pの内面に対して離接する方向に揺動駆動されるように構成されている。この揺動アーム5は、回転作業部4に設けられた揺動駆動機構51によって揺動駆動されるようになっている。
【0032】
揺動駆動機構51は、回転作業部4内に設けられたステッピングモータ等からなるモータ51aと、このモータ51aから出力される回転運動を直線運動に変換するねじ機構51bと、このねじ機構51bによって直線方向に駆動されるラックギヤ51cとを備えた構成になっている。そして、ラックギヤ51cに噛み合うピニオンギヤ5aが揺動アーム5の基端部に固定されており、モータ51aの回転角度によって制御される角度で揺動アーム5が揺動駆動されるようになっている。また、揺動アーム5は、ピニオンギヤ5aの回転中心部を貫通する回転支持ピンを介して回転作業部4に連結されている。
【0033】
そして、揺動アーム5は、回転作業部4における上下に伸びる幅方向の中心線に沿う位置(即ち、軸心位置)まで揺動することにより、当該回転作業部4の外郭部42の下方への延長線内に収容された状態になると共に、その先端部(下端部)5bの幅方向の中心位置(即ち、後述する吸着プローブ6の軸心位置と同位置)が回転作業部4の軸心位置に達するようになっている。また、揺動アーム5は、鋼管Pの内面側に揺動した際には、回転作業部4の幅方向の中心線に対する角度θ(図6参照)で少なくとも90度まで揺動することが可能になっている。
【0034】
なお、ピニオンギヤ5aについても外周部の全体にラックギヤ51cと噛み合う歯を設けた例を示したが、この歯についても揺動アーム5の揺動可能角度θに応じてラックギヤ33cに噛み合うことになる範囲にのみ設けるように構成してもよい。
【0035】
吸着プローブ6は、磁性体からなる鉄片Wを磁力により吸着するように構成したものであり、その磁力による吸着作用の発揮及び解除が可能な電磁石(吸着手段)61を備えたものとなっている。この電磁石61は、鉄心における一方の磁極61a(例えばN極)が円形状の平面によって形成され、当該鉄心の他方の磁極61b(例えばS極)が一方の磁極61aを所定の間隔をおいて同心状に囲むと共に、当該一方の磁極61aと同一面上に位置する円環状の平面によって形成されている。
【0036】
この電磁石61は、各磁極61a、61bにまたがって吸着される鉄片Wによって磁気閉回路を構成することにより、当該鉄片Wを強力に保持することが可能になっている。また、その磁気閉回路によって、磁気が外部にほとんど漏れなくなることから、電磁石61で鉄片Wを吸着した後は、当該電磁石61が鋼管Pの内面に吸着したり、電磁石61に吸着した後の鉄片Wに、更に、他の鉄片Wが吸着するのを防止することが可能である。
【0037】
また、吸着プローブ6の上端部には、その軸心位置に後述するワイヤ62eによって吊下げるための接続部6aが設けられている。そして、吸着プローブ6がその接続部6aを介してワイヤ62eによって吊下げられた状態において、各磁極61a、61bの平面部分は水平方向を向くようになっている。
【0038】
このように構成された吸着プローブ6は、揺動アーム5に設けられたウインチ機構62によって、揺動アーム5の先端部5bに対して上下方向に移動することが可能になっている。
【0039】
ウインチ機構62は、揺動アーム5に設けられたステッピングモータ等からなるモータ62aと、このモータ62aによって回転駆動されるウォーム62bと、このウォーム62bに噛み合うウォームホイール62cと、このウォームホイール62cによって回転駆動される円筒形状の巻き胴62dと、この巻き胴62dによって巻き取りや巻き戻しがされるワイヤ(索)62eと、このワイヤ62eを揺動アーム5の先端部5bに案内するガイドローラ62f、62gとを備えた構成になっている。
【0040】
そして、ワイヤ62eの先端部が吸着プローブ6の接続部6aに連結されるようになっており、モータ62aの回転角度によって制御される巻き胴62dの回転角度に伴ったワイヤ62eの繰り出し量によって吸着プローブ6が上下方向に移動するようになっている。また、ワイヤ62eの先端部近傍には、当該ワイヤ62eの先端部が揺動アーム5の先端部5bの内方に入るのを防止するストッパ部材62hが固定されている。
【0041】
また、回転作業部4には、揺動アーム5の揺動によって移動する当該揺動アーム5の先端部5bの移動可能な範囲内における当該先端部5bの下方の位置であって、当該先端部5bの幅方向の中心位置が当該回転作業部4の軸心位置と同軸となる位置に、電磁石61の吸着作用の解除により当該電磁石61から離脱して落下する鉄片Wを受け入れるための回収容器7が設けられている。
【0042】
回収容器7は、円筒状に形成された外周部7aを有し、その外周部7a及び底部7bの全体がアルミニウム等の磁石で吸着することができない非磁性体の線材からなる金網によって形成されている。即ち、回収容器7は、非磁性体の材料によって形成されている。外周部7aの外径は、回転作業部4における外郭部42の最大幅と同等に形成されている。また、外周部7aの内径は、吸着プローブ6の外径や鉄片Wより大きなものとなっている。即ち、回収容器7は、鉄片Wを吸着した状態の吸着プローブ6を挿入することが可能な大きさに構成され、当該回収容器内で磁気を切ることにより、鉄片Wを確実に回収することが可能になっている。また、吸着プローブ6を回収容器7の上方に位置させた状態で、当該吸着プローブ6の磁気を切った場合にも、鉄片Wを回収容器7内に落下させることができる。
【0043】
また、回収容器7は、図4に示すように、回転作業部4の下端部に連結された支持部材71の下端部に取り付けられている。支持部材71は、回転作業部4の下端部から外郭部42に沿って下方に延在し、かつその延在方向に伸縮自在に構成されている。即ち、支持部材71は、図5に示すように、スライドレール71aと、このスライドレール71aに同軸状に移動自在に連結されたライナ71bと、このライナ71bがスライドレール71aから脱落するのを防止するストッパ部72とを備えた構成になっている。
【0044】
スライドレール71aは、直線状に長く延在するように形成されていると共に、その延在する方向に互いに平行に延びる開口縁部71c、71cを有することにより断面がC字状に形成されたものとなっている。ライナ71bは、直線状に延在するように形成されていると共に、スライドレール71a内に挿入され、当該スライドレール71aの延在する方向に移動自在となる断面形状をしている。
【0045】
ストッパ部72は、スライドレール71aの下端部にボルトや溶接等で固定された固定ストッパ72aと、ライナ71bの上端部にボルトや溶接等で固定された移動ストッパ72bとを備えた構成になっている。固定ストッパ72aは、スライドレール71aにおける開口縁部71c、71c間を閉塞するように当該スライドレール71aに設けられている。移動ストッパ72bは、左右の開口縁部71c、71cに沿って移動可能な幅寸法を有し、かつ下端部に固定ストッパ72aに当って下方への移動を停止させるための凸部を有している。
【0046】
一方、揺動アーム5の先端部5bには、図3に示すように、吸着プローブ6の真上となる範囲から水平方向(図3において紙面に直交する方向)に僅かに外れた位置であって、吸着プローブ6の側方を通して鉛直方向の下方を見下ろすことが可能な位置に、CCD等の撮像素子(イメージセンサ)を備えた第1カメラ81が設けられている。
【0047】
第1カメラ81は、図6に示すように、揺動アーム5の傾斜角度θが変化した場合でも、当該第1カメラ81の撮影方向が鉛直方向の下方となるように維持するブラケット81aを介して揺動アーム5の先端部5bに設けられており、吸着プローブ6のほぼ真下に位置する物体を常時確認することが可能になっている。即ち、第1カメラ81は、吸着プローブ6のほぼ真下に位置する鉄片Wを確認することが可能になっている。
【0048】
また、回転作業部4には、下方に延在するブラケット82aが設けられており、そのブラケット82aの先端部(下端部)にもCCD等の撮像素子(イメージセンサ)を備えた第2カメラ82が設けられている。この第2カメラ82は、上述した第1カメラ81より、鋼管P内の上方の位置すると共に、回収容器7に対して斜め上方に位置した状態となっており、吸着プローブ6や回収容器7を上方から撮影することが可能であることはもちろんのこと、鋼管P内における下方の広い範囲を撮影することが可能になっている。また、第2カメラ82は、金網によって構成された回収容器7を介して下方に位置する鉄片W等を撮影することも可能である。
【0049】
なお、ワイヤ11には、モータ33a等に対する電力の供給や制御等を行うための電線(図示せず)が一緒に配置された状態になっており、ワイヤ62eには吸着プローブ6の電磁石61に電力を供給するための電線(図示せず)が一緒に配置された状態になっている。また、第1カメラ81、82の近傍部分には、これらの第1カメラ81、82の撮影方向の前方を照らすLED等のライト(図示せず)が設けられている。
【0050】
上記のように構成された管体内異物取出装置1においては、図12に示す鉄塔における所定の主柱aの上端開口部に設けられた閉塞板hを開いて、その上端開口部から当該主柱aとしての鋼管P内に、作業部2、本体部3の順で挿入する。これにより、鋼管P内において、作業部2が下方に位置し、本体部3が上方に位置する状態になる。その際、作業部2及び本体部3は、その本体部3に設けられた3組の各支持アーム32によって、鋼管P内の中空位置であって当該鋼管Pのほぼ軸心位置に保持された状態になると共に、当該鋼管P内を上下方向に移動可能な状態になる。このため、ワイヤ11の繰り出し量を調整することにより、鋼管P内における上下方向の位置を簡単かつ正確に制御することが可能になる。なお、フランジ継手部eの鉄板gに開口部を形成した直後であれば、その開口部を形成するのに使用したプラズマ切断機等の溶断手段を主柱aから引き抜いた後、続けて管体内異物取出装置1を主柱a内に挿入するようにしてもよい。
【0051】
また、鋼管P内に挿入した後は、特に第2カメラ82を用いて、回収容器7や鋼管P内の下方を撮影することにより、管体内異物取出装置1の先端側に位置する回収容器7と、フランジ継手部fの鉄板gとの位置関係から、当該鉄板g上に残存する鉄片Wを吸着プローブ6で捕捉することが可能な位置に達したことを確認することが可能になる。
【0052】
そして、ワイヤ11の繰り出しを停止することにより、管P内における鉄片Wを捕捉可能な位置に管体内異物取出装置1を保持することができる。即ち、管体内異物取出装置1は、その上下方向の位置がワイヤ11によって確実に保持された状態になる。また、管体内異物取出装置1は、3組の各支持アーム32によって鋼管Pのほぼ軸心位置に確実に保持された状態にもなる。
【0053】
このようにして管体内異物取出装置1を鋼管P内に保持した状態で、回転作業部4、揺動アーム5及び吸着プローブ6等を用いて鉄板g上に残留する鉄片Wを捕捉することになる。この際、吸着プローブ6の鋼管P内における周方向の位置は、回転作業部4を回転駆動することによって調整することができ、当該吸着プローブ6の鋼管Pの内面に離接する方向の位置は、図6に示すように、揺動アーム5を揺動駆動することによって調整することができる。なお、揺動アーム5を所定の角度傾けるべくモータ51aを作動させた後、当該モータ51aを停止することにより、揺動アーム5に作用する荷重がモータ51a側に逆に伝達することになるが、この荷重についてはねじ機構51bで保持することができ、モータ51aに伝わることがないので、当該モータ51aを停止した後も、揺動アーム5を所定角度傾けた状態に維持することができる。上述のように回転作業部4や揺動アーム5を操作することにより、図6に示すように、吸着プローブ6を、捕捉すべき鉄片Wのほぼ真上に移動することができる。
【0054】
そこで、図7に示すように、ウインチ機構62を作動させてワイヤ62eを巻き胴62dから繰り出すことにより、吸着プローブ6を下方に移動させて、当該吸着プローブ6の電磁石61が鉄片Wに当接した時点、あるいは鉄片Wに近接した時点で、当該電磁石61に励磁電流を供給する。これにより、電磁石61は、鋼管Pの内面等に吸着することなく、鉄片Wのみを簡単かつ確実に吸着することができる。
【0055】
また、鉄片Wが電磁石61の一方の磁極61aと他方の磁極61bにまたがって吸着されることにより、磁気閉回路が構成されることになることから、電磁石61によって鉄片Wを強力に保持することができる。しかも、磁気閉回路が構成されることによって外部への磁気の漏れがほとんどなくなることから、鉄片Wが複数重なった状態で存在する場合でも上側の一の鉄片Wを吸着した後は他の鉄片Wを吸着することがない。従って、過大な負荷がウインチ機構62のモータ62aや、揺動駆動機構51のモータ51a等に作用するのを防止することができる。また、励磁後の電磁石61が鋼管Pの内面に吸着するのも防止することができる。
【0056】
電磁石61で鉄片Wを吸着した後は、ウインチ機構62によってワイヤ62eを巻き胴62dに巻き戻すことによって、吸着プローブ6を上方に移動する。そして、ストッパ部材62hが揺動アーム5の先端部5bに達した時点で図示しないリミットスイッチの作用により、モータ62aの回転が停止し、これにより、吸着プローブ6の移動が停止する。この停止後は、吸着プローブ6及び鉄片Wの荷重がモータ62aに向かって逆に伝達することになるが、この荷重についてはウォーム62bとウォームホイール62cとの噛み合う部分で保持することができるので、モータ62aを停止した後も、吸着プローブ6をその停止した位置に保持することができる。
【0057】
そして、図8に示すように、揺動駆動機構51のモータ51aを作動させることによって、当該揺動アーム5を回転作業部4と同軸状の収納位置まで戻す。これにより、吸着プローブ6の軸心位置が回収容器7の軸心位置と一致した状態になるので、電磁石61の吸着作用を解除する制御を行うことにより、当該電磁石61から鉄片Wを離脱させ、これにより落下する鉄片Wを回収容器7で収容する。なお、鉄片Wを吸着した状態の吸着プローブ6を回収容器7内に挿入した後、電磁石61の磁気を切るようにしてもよい。
【0058】
以下、同様にして、残る鉄片Wを捕捉した後、回収容器7に収容する。そして、全ての鉄片Wあるいは回収容器7で収容可能な数量の鉄片Wを回収容器7に収納した後、ワイヤ11によって、管体内異物取出装置1を主柱aの上端開口部から引き上げることにより、鋼管P内に残存していた鉄片Wを取り出すことができる。この場合、複数の鉄片Wを回収容器7に入れた状態で一度に主柱aから取り出すことができるので、当該鉄片Wを取り出す効率の向上を図ることができる。
【0059】
また、鋼管Pが図9に示すように、傾斜している場合でも、作業部2及び本体部3を、上述した3組の各支持アーム32によって、鋼管Pのほぼ軸心位置に保持しながら、上下方向に移動することができる。但し、図9に示すように、鉄板(床状部分)gにおける鋼管Pの内面と鋭角に交差する部位に鉄片Wが存在している場合には、ウインチ機構62を用いることによっては、鉛直方向の下方に垂れ下がる吸着プローブ6を当該鉄片Wに近づけることが困難になることがある。しかし、このような場合は、吸着プローブ6をウインチ機構62によって上端に巻き上げた状態で、吸着プローブ6の鋼管P内における周方向の位置を鉄片Wに対応する位置に移動すべく回転作業部4を回転駆動し、更に吸着プローブ6を鋼管Pの内面に近接した状態となるように揺動アーム5を揺動駆動してから、管体内異物取出装置1の全体を下方に移動することにより、吸着プローブ6を鉄片Wの位置まで移動させることができる。
【0060】
この際、回収容器7の底部7bが鉄板gやその鉄板g上の鉄片Wに当ることになるが、当該回収容器7は支持部材71が短縮する方向に変形することにより吸着プローブ6に対して相対的に上方に移動することになるので、吸着プローブ6を鉄片Wの位置までほとんど抵抗なく移動させることができ、これによって当該鉄片Wを電磁石61で吸着することができる。
【0061】
そして、その吸着後に、管体内異物取出装置1の全体を上方に移動することにより、支持部材71が伸びる方向に自然に変形し、回収容器7が吸着プローブ6の下方に位置することになるので、揺動アーム5を回転作業部4と同軸状の位置まで戻し、電磁石61の磁力を切ることにより、鉄片Wを回収容器7に収容することが可能になる。
【0062】
即ち、鋼管Pが傾斜している場合であっても、鉄板g上から鉄片Wを回収することができる。
【0063】
なお、上記実施の形態においては、吸着プローブ6を上下方向に駆動するウインチ機構62を設けた例を示したが、このウインチ機構62を設けずに、当該吸着プローブ6を揺動アーム5の先端部5bに単に吊持したり、先端部5bに直接取り付けるようにしてもよい。この場合には、回転作業部4及び揺動アーム5を操作することによって、吸着プローブ6を鉄片Wのほぼ真上に移動させた後、ワイヤ11を若干繰り出して、管体内異物取出装置1の全体を降下させることにより、吸着プローブ6の電磁石61で鉄片Wを吸着することができる。また、吸着プローブ6を揺動アーム5の先端部5bに直接取り付ける場合には、吸着プローブ6の上端部(例えば接続部6a)を揺動アーム5の先端部5bに回転自在に連結することが好ましい。このように構成することにより、揺動アーム5の揺動角度θにかかわらず、電磁石61の吸着面を下方に向けることができ、鉄片Wを確実に吸着して回収することができる。また、吸着面を球面状に形成した電磁石61を揺動アーム5の先端部5bに固定的に取り付けるように構成した場合も、揺動アーム5の揺動角度θにかかわらず、下方に位置する鉄片Wを確実に吸着することができる。
【0064】
また、吸着プローブ6として電磁石61を備えたものを示したが、この電磁石61に代えて永久磁石を用いてもよい。この永久磁石を用いた場合にも、一方の磁極及び他方の磁極の形状や位置を同様のものにすることによって、鉄片Wの吸着により磁気閉回路を構成することができる。このため、吸着力の小さな永久磁石を用いた場合でも大きな力で鉄片Wを吸着することができる。しかも、永久磁石の磁力は、その下面における磁極の一部に生じることになるので、永久磁石の側方に位置することになる鋼管Pに当該永久磁石が吸着されるのを極力防止することができる。
【0065】
なお、永久磁石を用いる場合には、磁気閉回路を有効にしたり解除したりすることにより、吸着作用の発揮及び解除が可能なスイッチ機能付き永久磁石(吸着手段)を用いることが好ましい。この場合、吸着プローブ6は、図10に示すように、スイッチ機能付き永久磁石63を備えた構成になる。スイッチ機能付き永久磁石63は、吸着プローブ6の一部を構成する非磁性体6bに固定された一対のヨーク(磁性部材)63a、63bと、マグネット部63cと、マグネット部63cを軸心部63d回りに回転駆動する図示しないステッピングモータ等のモータとを備えた構成になっている。各ヨーク63a、63bは、図10(a)に示すOFF状態においては、マグネット部63cのN極及びS極が接触することがないので、当該マグネット部63cによって磁化されることがない。一方、マグネット部63cが軸心部63d回りに回転駆動されて、図10(b)に示すON状態となると、各ヨーク63a、63bの側面に形成された円弧状の凹部に、当該凹部に合致する形状のマグネット部63cのN極及びS極の各端部が嵌合するようにして接触することになることから、各ヨーク63a、63bがマグネット部63cによって磁化され、当該各ヨーク63a、63bの先端部にN極又はS極の磁極が生じることになる。このため、スイッチ機能付き永久磁石63においては、モータを介してマグネット部63cを回転駆動しON状態にすることによって、各ヨーク63a、63bの先端部で鉄片Wを吸着することができ、更にモータを介してマグネット部63cを回転駆動しOFF状態にすることによって、各ヨーク63a、63bの吸着作用を解除し、鉄片Wを回収容器7(図8参照)内に収容することができる。また、非磁性体6bの頂面の軸心位置には、上述した接続部6aが設けられている。このため、吸着プローブ6は、接続部6aを介してワイヤ62eで吊下げられることによって、各ヨーク63a、63bの先端面が水平方向を向くようになっている。
【0066】
また、上述した電磁石61や、スイッチ機能付き永久磁石63は、磁気閉回路を構成しない通常の磁力を発揮するような電磁石やスイッチ機能付き永久磁石によって構成してもよい。
【0067】
また、吸着プローブ6は、図11に示すように、真空(大気圧より低い圧力の状態)による吸着作用の発揮及び解除が可能な吸引カップ64を備えたものであってもよい。吸引カップ64は、内部に空気がまったくない状態になったとしても、大気圧によって押し潰されることのない剛性を有するゴム質の材料でカップ状に形成されたものであり、円筒部の一端部が球面状の頂面部によって閉塞され、当該円筒部の他端部が半径方向外側に湾曲すると共に、先端に向って漸次薄く形成されたリップ部64aとなって開口しいる。リップ部64aは、吸引カップ64の全体が剛性の高いゴム弾性を有する材料で形成したとしても、容易に弾性変形して、鉄片Wの所定の面に密着するうようになっている。また、吸引カップ64には、頂面部の軸心位置から斜めに逸れた位置に吸引用のホース64cと接続するめの継手部64bが設けられている。ホース64cは、継手部64bの外周面に嵌合した状態で当該継手部64bに締結バンド64dによって固定されている。また、吸着プローブ6は、吸引カップ64における頂面部の軸心位置に、上述したワイヤ62eによって吊り下げるための接続部6aを備えた構成になっており、接続部6aを介してワイヤ62bで吊り下げられた状態において、吸引カップ64のリップ部64aによる開口部が下方を向くようになっている。そして、図11に示す吸着プローブ6においては、吸引カップ64内の空気をホース64c及び継手部64bを介して図示しない真空ポンプで吸引し、当該吸引カップ64内を真空状態にすることにより、リップ部64aに当接する鉄片Wを吸着することができる。また、真空状態にある吸引カップ64内にホース64c及び継手部64bを介して空気を導入することにより、当該真空による吸着状態を解除して、鉄片Wをリップ部64aから離脱させ、これにより当該鉄片Wを回収容器7(図8参照)内に回収することができる。
【0068】
スイッチ機能付き永久磁石63や吸引カップ64を備えた吸着プローブ6についても、揺動アーム5の先端部5bに単に吊持したり、当該先端部5bに直接取り付けるようにしてもよい。この場合も、回転作業部4及び揺動アーム5を操作することによって、吸着プローブ6を鉄片Wのほぼ真上に移動させた後、ワイヤ11を若干繰り出して、管体内異物取出装置1の全体を降下させることにより、吸着プローブ6の永久磁石63や、吸引カップ64で鉄片Wを吸着することができる。また、吸着プローブ6を揺動アーム5の先端部5bに直接取り付ける場合には、吸着プローブ6の上端部(例えば接続部6a)を揺動アーム5の先端部5bに回転自在に取り付けることが好ましい。このように構成することにより、揺動アーム5の揺動角度θにかかわらず、永久磁石63や吸引カップ64の吸着部を下方に向けることができ、鉄片Wを確実に吸着して回収することができる。また、吸着面を球面状に形成した永久電磁(スイッチ機能を有するものでも、有しないものでもよい)を揺動アーム5の先端部5bに固定的に取り付けるように構成した場合も、揺動アーム5の揺動角度θにかかわらず、下方に位置する鉄片Wを確実に吸着することができる。
【0069】
更に、上記実施の形態においては、回収容器7を用いた例を示したが、この回収容器7を用いずに、吸着プローブ6で鉄片Wを吸着するたびに、管体内異物取出装置1を主柱aから引き上げて、当該鉄片Wを主柱a内から回収するようにしてもよい。
【0070】
また、アルミニウム等の非磁性体の線材からなる金網によって回収容器7を構成した例を示したが、この回収容器7としては、磁性体の線材によて金網状に形成したものや、金属以外のプラスチックや繊維等の線材を用いて網状に形成したものであってもよい。更に、回収容器7としては、磁性体やプラスチック等を含む非磁性体の板材に複数の貫通孔を形成したもので構成してもよく、透明性のあるプラスチック等の板材によって構成してもよい。
【0071】
また、異物として、磁性体からなる鉄片Wを示したが、この異物はプラスチック等を含む非磁性体からなるものであってもよい。
【0072】
更に、スライドレール71aとライナ71bとを単に摺動自在なもので構成したが、自由状態において、スライドレール71aとライナ71bとが最も長くなる状態となるように(即ち、移動ストッパ72bが固定ストッパ72aに当接することにより支持部材71が最も長くなる状態となるように)付勢するコイルスプリング等の付勢手段を設けるように構成してもよい。但し、この場合の付勢手段による付勢力は、管体内異物取出装置1の全体を下方に移動した際に、回収容器7が鉄板g等から受ける上方(斜め上方を含む)の力より小さなものにする必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施の形態として示した管体内異物取出装置示す正面図である。
【図2】同管体内異物取出装置における本体部を示す要部破断正面図である。
【図3】同管体内異物取出装置における作業部を示す要部破断正面図である。
【図4】同管体内異物取出装置における作業部を示す背面図であって、(a)は支持部材が自由状態にあって最も長く延在している状態を示す図であり、(b)は支持部材が最も短縮された状態を示す図である。
【図5】同管体内異物取出装置における回収容器及び支持部材を示す図であって、(a)は支持部材が自由状態にあって最も長く延在している状態を示す正面図であり、(b)は同状態における側面図であり、(c)は支持部材が最も短縮された状態を示す側面図であり、(d)は(a)におけるストッパ部を示す要部拡大図であり、(e)は(d)のE−E線に沿う断面図であり、(f)は(d)のF−F線に沿う断面図であり、(g)は(d)のG−G線に沿う断面図である。
【図6】同管体内異物取出装置における作業部の揺動アームの作用を示す要部破断正面図である。
【図7】同管体内異物取出装置における作業部の吸着プローブ及びウインチ機構の作用を示す要部破断正面図である。
【図8】同管体内異物取出装置における作業部の揺動アームを収納状態に戻した状態を示す要部破断正面図である。
【図9】同管体内異物取出装置における傾斜する鋼管内での作業部の作用を示す要部破断正面図である。
【図10】同管体内異物取出装置における磁力により吸着する他の吸着プローブを示す図であって、(a)は磁力による吸着作用がOFF状態となっていることを示す断面図であり、(b)は磁力による吸着作用がON状態になっていることを示す断面図である。
【図11】同管体内異物取出装置における真空による吸着力を用いた他の吸着プローブを示す断面図である。
【図12】同管体内異物取出装置を挿入するための鋼管を有する鉄塔を示す正面図である。
【図13】同鉄塔における所定の位置のフランジ継手部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1 管体内異物取出装置
2 作業部
3 本体部
4 回転作業部
5 揺動アーム(揺動作業部)
5b 先端部
6 吸着プローブ(吸着作業部)
7 回収容器
32 支持アーム
61 電磁石(吸着手段)
62 ウインチ機構
62e ワイヤ(索)
63 スイッチ機能付き永久磁石(吸着手段)
64 吸引カップ(吸着手段)
71 支持部材
P 鋼管(管体)
W 鉄片(異物)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の開口端が上方に位置するように設置された管体における当該上方開口端から当該管体内に挿入して、当該管体内に残留する異物を当該管体内から取り出すための管体内異物取出装置であって、
前記異物を捕捉すべく作業を行う作業部と、この作業部を支持する本体部とを備えてなり、
前記本体部は、当該本体部を前記管体内の中空位置に支持すると共に、当該本体部を当該管体の延在する方向に移動可能に支持する支持アームを備えており、
前記作業部は、前記管体内において前記本体部の下方に位置すべく設けられた回転作業部と、当該回転作業部に設けられた揺動作業部と、当該揺動作業部の下方に位置すべく設けられた吸着作業部とを備えており、
前記回転作業部は、前記本体部に対して前記管体の周方向に回転駆動されるように構成され、
前記揺動作業部は、前記回転作業部に連結された基端部から前記管体内を下方に延在すべく形成され、かつ前記基端部を支点にして前記管体の内面に離接する方向に揺動駆動されるように構成され、
前記吸着作業部は、前記異物を吸着するように構成されていることを特徴とする管体内異物取出装置。
【請求項2】
前記揺動作業部には、前記吸着作業部を索を介して上下方向に移動するためのウインチ機構が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の管体内異物取出装置。
【請求項3】
前記吸着作業部は、吸着作用の発揮及び解除が可能な吸着手段を備えており、
前記回転作業部には、前記揺動作業部の揺動に伴って移動する当該揺動作業部の先端部の移動可能な範囲内における当該先端部の下方の位置に、吸着作用の解除により前記吸着手段から落下する前記異物を受け入れるための回収容器が備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管体内異物取出装置。
【請求項4】
前記回収容器は、前記回転作業部から下方に延在し、かつその延在方向に伸縮自在に構成された支持部材の下端部に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の管体内異物取出装置。
【請求項1】
一方の開口端が上方に位置するように設置された管体における当該上方開口端から当該管体内に挿入して、当該管体内に残留する異物を当該管体内から取り出すための管体内異物取出装置であって、
前記異物を捕捉すべく作業を行う作業部と、この作業部を支持する本体部とを備えてなり、
前記本体部は、当該本体部を前記管体内の中空位置に支持すると共に、当該本体部を当該管体の延在する方向に移動可能に支持する支持アームを備えており、
前記作業部は、前記管体内において前記本体部の下方に位置すべく設けられた回転作業部と、当該回転作業部に設けられた揺動作業部と、当該揺動作業部の下方に位置すべく設けられた吸着作業部とを備えており、
前記回転作業部は、前記本体部に対して前記管体の周方向に回転駆動されるように構成され、
前記揺動作業部は、前記回転作業部に連結された基端部から前記管体内を下方に延在すべく形成され、かつ前記基端部を支点にして前記管体の内面に離接する方向に揺動駆動されるように構成され、
前記吸着作業部は、前記異物を吸着するように構成されていることを特徴とする管体内異物取出装置。
【請求項2】
前記揺動作業部には、前記吸着作業部を索を介して上下方向に移動するためのウインチ機構が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の管体内異物取出装置。
【請求項3】
前記吸着作業部は、吸着作用の発揮及び解除が可能な吸着手段を備えており、
前記回転作業部には、前記揺動作業部の揺動に伴って移動する当該揺動作業部の先端部の移動可能な範囲内における当該先端部の下方の位置に、吸着作用の解除により前記吸着手段から落下する前記異物を受け入れるための回収容器が備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管体内異物取出装置。
【請求項4】
前記回収容器は、前記回転作業部から下方に延在し、かつその延在方向に伸縮自在に構成された支持部材の下端部に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の管体内異物取出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−36274(P2010−36274A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199695(P2008−199695)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(306033025)日本鉄塔工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(306033025)日本鉄塔工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]