説明

管内調査装置

【課題】パイプインパイプ工法における既設管内への挿入時の新管の挙動を事前に調査できるようにする。
【解決手段】既設管の内部に新管が挿入されるパイプインパイプ工法における、同既設管の内部を調査するための管内調査装置である。新管に対応した外径を有するとともに、互いに接合された状態で既設管の内部に挿入される、第1の模擬管11および第2の模擬管12を備える。かつ、第1の模擬管11と第2の模擬管12との相対的な姿勢を検査する検査装置22、23、24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管内調査装置に関し、特に、既設管の内部に新管を挿入するパイプインパイプ工法において、既設管内への新管の挿入時の状況を事前に調査するための管内調査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の事前調査の方法として、既設管内に新管の模擬管を通過させて、既設管の特に継手部における新管の通過の可否を判断している(特許文献1)。
【0003】
しかし、継手部において既設管どうしが屈曲していたり段差が発生していたりする場合に、その部分を通過する新管の挙動を明らかにすることができない。
【0004】
このため、新管の仕様は、新管どうしが最大限に屈曲して、管の周方向に沿った一部分のみで片当たりした状態で既設管への挿入すなわち押し込みが行われても、そのときの推力に耐えるように設定されている。したがって仕様が過剰になりやすく、不経済になっているのが実状である。すなわち、既設管の屈曲の程度が不明確である場合は、新管の敷設工事中のトラブルを回避するために安全サイドでの検討を行うと、過剰な仕様となりやすく、不経済となりやすい。一方、事前に既設管の屈曲の程度がわかれば、それに合わせた仕様の新管を適用することができるので、経済的にみて合理的な工事を行うことが可能になる(特許文献2)。
【特許文献1】特開昭58−219401号公報
【特許文献2】特開2005−351429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、このような課題を解決し、パイプインパイプ工法における既設管内への挿入時の新管の挙動を事前に調査できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために本発明は、既設管の内部に新管が挿入されるパイプインパイプ工法における前記既設管の内部を調査するための管内調査装置であって、前記新管に対応した外径を有するとともに互いに接合された状態で既設管の内部に挿入される第1および第2の模擬管と、第1の模擬管と第2の模擬管との相対的な姿勢を検査する検査装置とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
このような構成であると、検査装置によって第1の模擬管と第2の模擬管との相対的な姿勢を検査することで、既設管内への挿入時における模擬管すなわち新管の挙動を調べることができ、これによって新管の仕様を適切に決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の実施の形態の管内調査装置を示す。ここで、11は第1の模擬管、12は第2の模擬管で、これらの模擬管11、12は、パイプインパイプ工法において既設管の内部に挿入されるダクタイル鋳鉄製の新管と同じ構成となるようにされている。すなわち、新管に対応した外径つまり新管と同径に形成されるとともに、望ましくは新管と同長に形成されている。換言すると、その新管を、模擬管11、12として用いることができる。
【0009】
各模擬管11、12は、その一端に受口13を有するとともに他端に挿口14を有し、第1の模擬管11の挿口14を第2の模擬管12の受口13に同心状に挿入した状態で既設管の管内調査に供される。
【0010】
第1の模擬管11における受口13側の内部には固定板15が設けられ、この固定板15は、管径方向に位置された状態で模擬管11の内面に固定される。この固定板15の中心部にはUボルトなどを利用した環体16が設けられ、この環体16には、第2の模擬管12の挿口14の開口から模擬管12、11の内部に挿入されたワイヤロープ17が結び付けられている。したがって、ワイヤロープ17に引張力を作用させると、それによって第1の模擬管11に牽引力が付与され、かつ、第1の模擬管11の挿口14の先端面18が第2の模擬管12の受口13の奥端面19に当たることで、第2の模擬管12にも牽引力が付与される。これによって、第1および第2の模擬管11、12を、第1の模擬管11から第2の模擬管12へ推進力が伝達されるという実際の新管の挿入時の態様で、既設管の中に挿入することができる。
【0011】
第2の模擬管12の先端の挿口14の部分には、受口13のみにて構成された短管20が被せられている。この短管20は、第2の模擬管12の挿口14の部分の管路の外径を、実際の新管による管路の外径に合わせるために用いられるものである。また短管20は、模擬管を既設管に挿入するときの先導スレイとしても機能するとともに、既設管への挿入時における第2の模擬管12の挿口14の浮き上がり防止部材としても機能する。
【0012】
第2の模擬管12における受口13よりもやや奥側の管内には、管12の内周面に固定される環状の変位計取付け部材22が設けられている。この取付け部材22における管の周方向に沿った3箇所以上の位置には、管軸方向の変位を測定可能な変位計23が取り付けられている。
【0013】
第1の模擬管11における挿口14の開口端部の管内には、管11の内周面において管径方向の姿勢で固定される環状の被検出部材24が設けられている。変位計23は、その検出プローブ25の先端が被検出部材24に接触するように設置される。
【0014】
第1の模擬管11の管底部には、変位計23を用いた距離の測定を行うための計測器と、計測器などに電源を供給するためのバッテリーとが設置され、これらは、防塵・防水カバー26にて覆われている。27はケーブルである。防塵・防水カバー26で覆われる計測器とバッテリーとは、第2の模擬管12の管底部に設置することもできる。
【0015】
変位計23が設置されている様子を、図2〜図4を参照して詳細に説明する。変位計取付け部材22には、管径方向に配置された環状板29が設けられており、この環状板29の周方向に沿った4箇所の位置には、それぞれブラケット30が取り付けられている。各ブラケット30は、断面L字形に形成されて、L字を構成する一方の脚部31は環状板29に沿って配置され、他方の脚部32は第2の模擬管12の内面に沿って配置されている。そして、脚部31がボルト33によって環状板29に固定されるとともに、脚部32がボルト33によって第2の模擬管12の内面に固定されることで、環状板29が、第2の模擬管12に対して心出しされた状態で管径方向に設置されている。
【0016】
変位計23は、環状板29の周方向に沿った4箇所の位置であって、ブラケット30の取付け位置を避けた位置において、この環状板29に取り付けられている。詳細には、円柱形状の変位計23が内ばめされるスリーブ34と、スリーブ34以外の位置で変位計23を収容する横断面コ字形の収容部35とを備えた変位計ホルダ36が、ボルト37によって環状板29に取り付けられている。スリーブ34には押しねじとして機能する蝶ねじ38が設けられており、これによって、変位計23を、管軸方向に沿って位置決めした状態でホルダ36により保持可能である。また、環状板29に対するブラケット30の位置を微調整することで、変位計23を、管軸方向の姿勢で、第2の模擬管12に対して心出しされたピッチ円周上に位置決めした状態で設置することができる。
【0017】
被検出部材24は、環状の箱状体39と、この箱状体39を第1の模擬管11の内周面に固定するためのブラケット30とを有している。ブラケット30は、変位計取付け部材22において用いられているものと同じ構成で、一方および他方の脚部31、32と、固定用のボルト33とを備えている。箱状体39は、管径方向に設置される環状板部40を有する。被検出部材24は、環状板部40が第1の模擬管11の挿口14の先端面18を含む平面内に位置するように位置決めされて固定される。
【0018】
変位計取付け部材22および被検出部材24がこのような構成であることにより、図5において模式的に示すように、変位計23は、第1の模擬管11の挿口14の先端面18を含む平面内に位置する環状板部40の表面の位置を、第2の模擬管12と同心状のピッチ円41に沿った90度おきの場所で測定することが可能である。
【0019】
このような構成の管内調査装置を用いて既設管の内部を調査する方法について説明する。詳細には、図1などに示す構成の管内調査装置を、ワイヤロープ17によって牽引することで、既設管の内部に挿入する。その場合において、既設管は必ずしも真直ではなく、特にその継手部において屈曲していることがある。この既設管の屈曲した継手部を通過するときには、図示の管内調査装置における第1の模擬管11の挿口14と第2の模擬管12の受口13とによって構成される継手部42も、それに対応して屈曲する。この屈曲状態を調査することで、新管が既設管の屈曲部を通過するときのこの新管の継手部42の屈曲角を測定して、第1の模擬管11と第2の模擬管12との相対的な姿勢を検査することができる。
【0020】
その測定原理は、次の通りである。すなわち、図5に示すように、ピッチ円41の半径をRとし、ピッチ円41の円周方向に沿って90度おきに設けられた4つの変位計によって検出される変位をZ1、Z2、Z3、Z4とする。ここで、Z1の変位とZ3の変位は円周方向に180度だけ隔たった位置で測定されたものであり、Z2の変位とZ4の変位も、同様に円周方向に180度だけ隔たった位置で測定されたものであるとする。また、継手部42が屈曲しておらず、挿口14の先端面18と受口13の奥端面19とが全周で接しているとき、すなわち第1の模擬管11と第2の模擬管12とが同軸上に一直線状に並んでいるときに各変位計で検出される変位を、基準の変位、たとえば「0」であるとする。すると、Z1〜Z4は変位計23の検出プローブ25の伸びの量として検出することができる。こうしたときに、継手部42の屈曲角、すなわち第1の模擬管11の軸心と第2の模擬管12の軸心とがなす角をθとすると、θは、下記の式によって求めることができる。
【0021】
【数1】

【0022】
換言すると、θは、第2の模擬管12における管径方向の仮想的な面に対する、第1の模擬管11における管径方向の仮想的な面、つまり具体的には被検出部材24の環状板部40の面の傾き角を表わす。
【0023】
上記の(i)式では、Z1〜Z4の4つの値すなわち円周方向に沿った4箇所における値を用いてθの値を求めている。これに対しθの値は、下記の(ii)式を用いればZ1〜Z4のうちの任意の3つの値つまり円周方向に沿った3箇所における値を用いて求めることができる。
【0024】
【数2】

【0025】
そこで、(i)式により求められる1つの値と、(ii)式により求められる4つの値とがほぼ同じ値になるかどうかにより、θの値の確かさを確認することができる。
【0026】
そして、管内検査装置を既設管の内部で移動させながら、模擬管11、12どうしの継手部42の屈曲角θを連続的なデータとして取得することで、既設管の全長にわたって、継手部42の屈曲角θがどのようになるかを調査することができる。それにより、既設管の内部に挿入するダクタイル鋳鉄製の新管の有効長、推力伝達の方式、推力値などを求めることができて、新管の仕様についての最適設計を行うことができる。このため、施工の安全性を図ることができるとともに、管材料費についてのコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の管内調査装置の全体図である。
【図2】図1における要部の詳細図である。
【図3】図2における被検出部材の側面図である。
【図4】図2における変位計取付け部材の側面図である。
【図5】屈曲角の計算に使用する値について示す図である。
【符号の説明】
【0028】
11 第1の模擬管
12 第2の模擬管
22 変位計取付け部材
23 変位計
24 被検出部材
42 継手部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管の内部に新管が挿入されるパイプインパイプ工法における前記既設管の内部を調査するための管内調査装置であって、前記新管に対応した外径を有するとともに互いに接合された状態で既設管の内部に挿入される第1および第2の模擬管を備え、第1の模擬管と第2の模擬管との相対的な姿勢を検査する検査装置を備えたことを特徴とする管内調査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−209239(P2008−209239A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46336(P2007−46336)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】