説明

管材の加工装置

【課題】
製造効率を大幅に向上させるとともに、製造コストを低減させ、さらに作業者の作業労力負担を軽減し得る管材の加工装置を提供する。
【解決手段】
管材の加工装置は、鋼管の長手方向の所定の離隔位置に該管の孔あけ、切欠、円弧板溶接等の加工部位を有する管材の加工装置である。該装置は、鋼管の転動方向に横送り搬送する搬入部と、送られた鋼管をその長手方向送りラインに沿って送る長手方向送り部と、長手方向送りラインの中途に設けられる加工部と、加工後の鋼管を受け取って鋼管の転動方向に横送り搬送する搬出部と、を備える。加工部は、長手方向送りラインの前段側に設けられた孔あけ・切欠・切断を含む切断類加工を行う切断類装置と、長手方向送りラインの後段側に設けられた円弧板の溶接装置と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅建設用地盤強化用地中打込み鋼管杭等の管材の加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤地域等に住宅を建設させる際の建設用地の地盤強化のために鋼管杭を回転させながら地中に打込む鋼管杭の回転貫入方法が特許文献1,2において知られている。この方法によれば、重機掘削ビットによる掘削後のコンクリート柱の埋設等の作業が不要で、また土留め用矢板打込み時の騒音等がなく、短期で低廉な作業コストによる地盤強化作業を行なえる。
【特許文献1】特開2003−13443号公報
【特許文献2】特開2003−64675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の鋼管杭では、複数の直管からなる杭本体の長手端部どうしを連結接続し、下端寄りの先端部材本体に螺旋翼を設けるとともに、先端にビット部分を形成させたものであり、例えば管径が150mmで、長さが2m〜6m程度の鋼管を脱着可能に接続組立しながら各現場の打込み深さに対応した杭長さを確保するようにしている。図11、12は、鋼管杭の分解図であり、図11に示すように、複数の鋼管501を縦列に接続し、下端寄りの先端部材本体502に螺旋翼503が固定され、さらに、先端部材本体502の先端(下端)にビット部としての切欠504を形成させている。この鋼管杭は、図12に示すように各鋼管501の長手方向離隔位置に互いに嵌合し、かつ回り止めされたように接続させるための接続部が形成されている。例えば図12の鋼管501A(左側)の一端505Aには周壁の対向位置に正対して四角形状となる角U字状の切欠506,506が2個形成され、該切欠残部の周壁の対向位置には貫通孔を形成するようにボルト孔507,507が穿孔されている。そして、この角U字状の回り止め用切欠506,506部分を外面からパッチ状にあてがって覆蓋するように2個の円弧板508がそれぞれの角U字状の回り止め用切欠506,506の切欠部分の外面に覆蓋固定されている。この一端505Aが受端部509とされる。さらに、鋼管501Aと同じ管径で同じ長さの鋼管501Bは、一端510Aからある程度の長さの筒部としての接続嵌合部511を形成しつつ、管長さ方向に中央側寄り位置において、角U字状の切欠506,506よりもやや小さな幅hサイズの円弧板512が周方向略180度対向位置に溶接固定されている。そして、該円弧板取り付け位置の周方向略同じ領域に貫通状にボルト孔513が穿孔されている。これによって、接続嵌合部511を受端部509側から縦に挿入し、接続嵌合部511のストッパとなる円弧板512が、回り止め用切欠506,506の切欠跡空隙部分に係合し、これらの位置でボルトを各ボルト孔に貫入させ締結させることにより、管の長手方向の係合位置と、周方向との係合位置が決まり、鋼管杭全体が1本の杭体のようにして回転地中打込み時に機能する。ところで、これらの軟弱地盤の基礎補強に有効な回転鋼管杭打ち込み方法に用いる鋼管杭の製造については、従来、すべて手作業により行なわれていた。この場合、1本の鋼管が数十キログラムの重量物であり、1本の鋼管の離隔位置において、ボルト孔と、これに対応するストッパ用あるいはカバー用の円弧板の溶接位置を決めて鋼管加工を行なわねばならず、ボール盤加工、切断類、溶接加工が必要でそれぞれの回転位置及び離隔長さ位置を設定された位置で確実に行なう作業に時間が掛かり、作業コストならびに製造コストが高いものとなっていた。また、重量物を取り扱うから作業労力が掛かり作業時間短縮が困難である上に、円筒管で安定性がないから溶接作業が難しくまた、作業時の事故のおそれが高いという問題があった。
【0004】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その1つの目的は、製造効率を大幅に向上させるとともに、製造コストを低減させ、さらに作業者の作業労力負担を軽減し得る管材の加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は、鋼管の長手方向の所定の離隔位置に該管の孔あけ、切欠、円弧板溶接等の加工部位(511、509)を有する管材の加工装置(1)であり、鋼管(501)の転動方向に横送り搬送する搬入部(12)と、送られた鋼管を受け取ってその長手方向送りライン(140)に沿って送る長手方向送り部(14)と、長手方向送りラインの中途に設けられて鋼管の長手方向離隔複数位置を加工する加工部(16)と、加工後の鋼管を受け取って鋼管の転動方向に横送り搬送する搬出部(18)と、を備え、加工部(16)は、長手方向送りライン(140)の前段側に設けられた孔あけ・切欠・切断を含む切断類加工を行う切断類装置(17)と、長手方向送りラインの後段側に設けられた円弧板の溶接装置(19)と、を含むことを特徴とする管材の加工装置(1)から構成される。一方向に長い鋼管を加工ラインとしての長手方向送りラインに搬入、搬出する搬入部12あるいは搬出部18の横送り構成はチェーンコンベアに限らず、実用に耐える範囲でベルト送り、ギア送り、とすることができる。
【0006】
その際、長手方向送りライン(140)は、切断類装置(17)により鋼管を加工できるように該鋼管を長手方向に押出す押出しライン(141)と、切断類装置(17)による加工後の鋼管をさらに長手方向に押出して待機させる待機ライン(142)と、待機ラインに平行に併設され待機ラインで待機する鋼管を移載により受けて所要の円弧板の溶接加工を行なう溶接ライン(143)と、を備えるとよい。
【0007】
また、溶接ライン(143)には、切断類加工後の鋼管を該鋼管の長手軸周り方向に回転自在に受ける回転受部(56)と、鋼管(501)の端部近縁に配置されて該端部に穿孔された穴(507、513)を介して鋼管の回転方向位置決めを行なう位置決め手段(58)と、を備えるとよい。
【0008】
さらに、長手方向送りライン(140)の押出しライン(141)と、待機ライン(142)とで離隔2箇所の孔あけ・切断を行い、溶接ライン(143)で穿孔や切断切欠と同じ周回り部位に設定された円弧板溶接を行なうようにするのが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の管材の加工装置は、鋼管の長手方向の所定の離隔位置に該管の孔あけ、切欠、円弧板溶接等の加工部位を有する管材の加工装置であり、鋼管の転動方向に横送り搬送する搬入部と、送られた鋼管を受け取ってその長手方向送りラインに沿って送る長手方向送り部と、長手方向送りラインの中途に設けられて鋼管の長手方向離隔複数位置を加工する加工部と、加工後の鋼管を受け取って鋼管の転動方向に横送り搬送する搬出部と、を備え、加工部は、長手方向送りラインの前段側に設けられた孔あけ・切欠・切断を含む切断類加工を行う切断類装置と、長手方向送りラインの後段側に設けられた円弧板の溶接装置と、を含む構成である。また、長手方向送りラインは、切断類装置により鋼管を加工できるように該鋼管を長手方向に押出す押出しラインと、切断類装置による加工後の鋼管をさらに長手方向に押出して待機させる待機ラインと、待機ラインに平行に併設され待機ラインで待機する鋼管を移載により受けて所要の円弧板の溶接加工を行なう溶接ラインと、を備えたことを特徴とする。これによって、不安定で扱いにくい円筒重量物の管であって長手方向離隔位置でしかも管の周方向位置が決まっているような鋼管を効率よく量産でき、製造コストの低減を達成し得る。また、手作業による労力がなくなり作業上の危険性を回避することが可能である。
【0010】
また、溶接ラインには、切断類加工後の鋼管を該鋼管の長手軸周り方向に回転自在に受ける回転受部と、鋼管の端部近縁に配置されて該端部に穿孔された穴を介して鋼管の回転方向位置決めを行なう位置決め手段と、を備えた構成である。また、長手方向送りラインの押出しラインと、待機ラインとで離隔2箇所の孔あけ・切断を行い、溶接ラインで穿孔や切断切欠と同じ周回り部位に設定された円弧板溶接を行なう構成である。これによって、長手方向離隔位置でしかも管の周方向位置が決まっているような鋼管を効率よく量産でき、製造コストの低減の達成を実効化あらしめる。また、手作業による労力がなくなり作業上の危険性を回避することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明するが加工対象物としての鋼管は従来技術において示したものと同様であるので、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。図1ないし図9は、本発明の実施の形態を示しており、本実施形態の管材の加工装置1は、鋼管の長手方向の所定の離隔位置に該管の孔あけ、切欠、円弧板溶接等の加工部位を有する管材の加工装置である。本実施形態において、管材の加工装置1は、鋼管501の搬入部12と、送られた鋼管をその長手方向送りライン140に沿って送る長手方向送り部14と、鋼管の長手方向離隔複数部位を加工する加工部16と、加工後の鋼管を送り搬送する搬出部18と、を備えている。さらに、加工部16は、長手方向送りラインの前段に設けられた孔あけ・切欠・切断を含む切断類装置17と、長手方向送りラインの後段に設けられた円弧板の溶接装置19と、を含むことにより、離隔位置において孔あけ、周方向の位置決め精度、溶接接合工程を必要とする重量長尺鋼管の効率的な加工と、労力軽減を実現する。
【0012】
図1において、大きな四角形面状の搬入部12と、該搬入部の送り終端縁に隣接して平行に設けられ、一方向に延長された長手方向送りライン140と、長手方向送りラインの送り端部側に隣接して平行に設けられ搬入部12と同様の大きな四角形面状の搬出部18と、により、平面視コ字状となるように各部が配置され、例えば6メートル程度の長尺で重量物であってもその長手方向送りできるように省スペースで本装置が屋内に設置し得るように配置される。
【0013】
本実施形態において、搬入部12は、鋼管501の転動方向に横送り搬送するチェーンコンベアからなり、X方向を軸長手方向とする離隔対向位置に配置された複数のスプロケット20にそれぞれチェーン22が調帯され駆動モータ24及び共通軸23を介してそれらのチェーンの上面となるコンベア面26をY1方向に向けて移動させるようになっている。チェーンの連結鎖子にはL字状に曲げられて連接されたL字片が固定されており、上面に物体を載置させやすくなっている。これによって、チェーンコンベヤの上面側において面状に長尺物体を受けることができる。該面状の搬入部12の投入縁側にはY1方向に向けて開いたL字板状の鋼管投入用ベース28が複数個取付けられている。チェーンコンベアは図2に示すように、支持フレーム30により例えば床面FLから1メートル程度の高さで支持されている。
【0014】
該搬入部12の送り端側には転動方向に送られてきた1個または複数の鋼管を直線状の搬入部の四角形搬送面の送り端側縁部に沿うように平行に設けられた長手方向送りライン140側に移載する移載部32が設置されている。移載部32は、転動方向に横送りされた鋼管501を横送り状に移動させて隣接する長手方向送りライン140側に載せ変える移載装置であり、本実施形態において、移載部32は、図示しないモータを内蔵した駆動ベース34と、駆動ベースに水平方向に移動自在に支持されたスライダ部材36とスライダ部材の先端側において受部38付きロッドを上下動自在に支持するエアシリンダ40と、を含む。搬入部12の送り端側に設けられた落下防止用エンドフレーム42の縦壁に鋼管が存在することを図示しないセンサにより検出し、主制御盤44からの移載指示を受けて移載作動する。本実施形態では、エンドフレームに突き当たる1個ずつの鋼管を長手方向送りライン140側に移載する。
【0015】
長手方向送り部14は、搬入部12から移載された鋼管501を受けとってその長手方向送りラインに沿って送る長手方向送り装置であり、実施形態において、該長手方向送り部14は、例えば6メートル程の長尺鋼管を縦長の構成要素で受けてそのまま長手直線方向に移動案内する案内装置としての長手方向送りライン140と、長手方向送りライン140上を走行するように駆動させる走行駆動装置46と、を含む。
【0016】
長手方向送りライン140は、支持フレーム48により床面から所定高さ位置で支持された転動受部50を備えており、該転動受部50の載置転動部上に直管としての鋼管が受けられてX1方向に向けて直線走行案内される。実施形態において、転動受部50は、V字状に開いた各軸を中心に自由転動自在に設けられた一対のローラを含むローラ受部52と、三角錘台コマの頂部どうしを対向させた状態で横軸周りに回転自在に支持された一対の回転コマを含む回転コマ受部54と、を交互に配置して構成されており、それぞれV溝状の受部を有して安定して鋼管を直線走行案内移動させる。
【0017】
走行駆動装置46は、長手方向送りライン140に沿って平行に設けられた軌道461と、長手方向送りライン140上に移載された鋼管501を検出してクランプし、その状態で長手方向送りライン140上を搬送させる搬送駆動装置462と、を備えている。搬送駆動装置462は、2本の平行レールを含む軌道461上に設置されてモータ463により自走する自走体464と、自走体464に支持されて隣りの長手方向送りライン140側にアームを伸ばし、該アームの先端に取り付けられたクランプ装置465と、を含む。クランプ装置465の先端部には図示しないマイクロスイッチが取付けられており、後方側から進行して鋼管の後端に当り管端の一部をチャック部材で挟み込んだ状態で鋼管を走行駆動させる。
【0018】
長手方向送りライン140を詳述すると、該長手方向送りライン140は、押出しライン141と、待機ライン142と、溶接ライン143と、を備えている。押出しライン141は、搬入部12の直線状送り端縁において鋼管を移載可能に離隔して平行に設けられた上面側に転動受部を配置させた搬送案内手段であり、特にこの押出しライン141は、起動56に離隔して平行に配置され走行駆動装置46による鋼管を掴んで走行駆動させる際の案内ラインである。この案内ライン上を長手方向に押出して走行移動させることにより切断類装置17による鋼管の切断類加工を行なう。
【0019】
待機ライン142は、切断類装置により加工された後の鋼管をさらに長手方向に押出して待機させる待機案内手段であり、押出しライン141と同じ転動受部50の高さであり、かつ直線状に延長配置され押出しライン141から送られる鋼管をそのまま連続的に直線移動案内する。この待機ライン142には図8に示すように、複数のモータ駆動による駆動ローラ53が設置され、押出しラインから押出された鋼管をプラズマ溶接機の加工部位から離脱させて待機位置まで搬送させる。本実施形態において、押出しライン141と待機ライン142との間はある程度(例えば、ライン全長長さを17mとして約1m程度)間隙が設けられており、この間隙部分近傍に切断類装置17が設置されて長手方向送りライン140上を走行する鋼管の略両端部分を連続的に加工する。
【0020】
溶接ライン143は、待機ライン142に平行に搬出横送り側に併設され、待機ラインで待機する鋼管501を移載により受けて所要の円弧板512の溶接加工を行なう溶接加工台ラインであり、待機ライン142と同じ高さで平行に配置され押出しラインおよび軸回り転動受部56を有している。待機ライン142で待機中の鋼管は、後述する移載装置110により搬出方向に向けて横送り移載されて、溶接ライン143の軸回り転動受部56上に載置される。軸周り転動受部56は、鋼管の軸長手方向に自由回転自在に受けるのではなく、鋼管の長手軸回り方向に自由回転自在に鋼管を受ける。
【0021】
溶接ライン143の一端近傍には該溶接ライン上に配置された鋼管の回転位置決め装置58が設置されている。回転位置決め装置58は、切断類装置17により孔あけ、切欠、切断等された鋼管の所定の離隔位置での管周り位置に対して円弧板512を溶接接合させる際の位置決め手段であり、本実施形態では、図1、4に示すように、回転位置決め装置58は、シリンダ機構により上下、左右に移動調整可能な支持基台60に支持されて横軸周りに回転駆動可能に設けられた回転体62と、回転体に支持されて軸周り転動受部56上の鋼管のボルト孔513に係合して鋼管を所定の管周り位置に設定させる位置決め機構64と、ボルト孔を検出するセンサ66と、を含む。位置決め機構64は、エアシリンダ装置等からなる駆動手段により駆動されて相互に先端どうしを対向配置させ、進退自在に駆動される挿入ロッド68を有し、該挿入ロッド68の先端がボルト孔に挿入されて、所定の管周り方向溶接位置で係止保持させる位置決め手段である。センサ66は、挿入ロッド68の先端部に取付けられて孔の位置を検出する。軸周り転動受部56は、溶接ラインの長手方向を軸として転動自在な2個一対の平行ローラ561,561を含む。
【0022】
加工部16は、長手方向送りライン140の中途に設けられて鋼管の長手方向離隔複数位置を加工する加工装置であり、該加工部16は、切断類装置17と、溶接装置19と、を備えている。切断類装置17は、長手方向送りライン140の前段側に設けられ、孔あけ・切欠・切断等の切断類加工を行う切断類加工装置であり、前述したように、本実施形態では、押出しライン141と、待機ライン142との中間位置に配置され、押出しラインの走行駆動装置46による直線送り動作で離隔位置を決め、さらにそれらの離隔位置で図11、図12のボルト孔513あけ、並びにU字状の切り欠き506形成を行う。実施形態において、切断類装置17はいわゆるプラズマ溶接機が用いられ、図3に示すように複数の軸関節を有してその先端アーム70の支持端72を略全方向に移動調整可能なロボット本体74と、支持端72に一部を把持されて任意方向にプラズマアークを放射させるトーチ部76を含む。トーチ部76は電極棒、プラズマガス放出口等を有し、高熱、高速のプラズマアークを加工材へ放射して高精度の切断等を行う。本実施形態では、図12のようなボルト孔あけ、周り止め用U字切り欠き、ならびに鋼管長さを一定にする為の切断加工を行う。なお、図1,7において、切断類装置17の近傍にはライン上を直線状に送られる鋼管の先端部位置を検出するセンサ77が設けられている。
【0023】
溶接装置19は、長手方向送りラインの後段側に設けられて待機ライン142から溶接ライン143に移載された鋼管の所定の離隔、管周位置に円弧板512を溶接接合させる溶接加工装置であり、本実施形態では、図4に示すように、複数の軸関節を有してその先端アーム78の支持端80を略全方向に移動調整可能なロボット本体82と、支持端80に一部を把持されて任意方向に電極、イナートガス、ワイヤ供給部を組み込んだアーク溶接機が適用されている。特に、本実施形態の溶接装置19は、その先端アーム78の支持端80から分岐支持させた円弧板512のハンドリング装置84が取付けられており、その管アクセス部86により、少なくとも図5上、円弧板512を把持した状態で管への進退方向R1と水平方向移動R2とを自在に行なわせる機能と、グリップ部88により円弧板508を幅方向から進退移動して掴み、離し動作を行う機能と、を有する。管アクセス部86は、グリップ部88を支持する伸縮ロッド90を有するエアシリンダ装置からなるとともに、グリップ部88は、エアシリンダにより進退駆動される挟み部材92を有している。本実施形態においては、溶接装置19は、案内レール83上を図示しないモータを介して押出しラインに沿って直線移動自在に設けられている。
【0024】
図1、6において、搬出部18は、溶接ライン143において円弧板の溶接加工後の鋼管を受け取って鋼管の転動方向に横送りする横送り搬送、あるいは払い出し手段であり、搬送方向が搬入部12と逆方向である点以外は略同じ構成である。すなわち、搬入部と同程度の面的大きさを有する四角形状の搬送面を有するチェーンコンベア構造からなり、モータ94により駆動される。
【0025】
さらに、図1、6において、待機ライン142から溶接ライン143側へ、あるいは溶接ライン143から搬出部18への横送り移載を行う移載装置110が設けられている。本実施形態の移載装置110は、図示しないモータを内蔵した駆動ベース96と、駆動ベースに水平方向に移動自在に支持されたスライダ部材98とスライダ部材の先端側離隔2箇所において受部100付きロッドを上下動自在に支持する2個のエアシリンダ102A、102Bと、を含む。エアシリンダ102A、102Bの間隔は等間隔に設定された待機ライン142と、溶接ライン143間、及び溶接ライン143と搬出部18の縁部側エンドフレーム104との間と同一の間隔で上下動可能に取り付けられている。これによって、図6に示すように、受部100に鋼管を受けた状態において、スライダ部材98の一回の横移動動作で待機ライン上〜溶接ラインへ、及び溶接ラインから搬送部への移載を行える。
【0026】
なお、図1、3上、106は、加工部の装置による加工時の長手方向送りライン上の鋼管をシリンダの駆動により下降して抑えるクランプ部材108を有する押さえ装置、図1上、111は、切断時の廃棄物収容箱、112は、複数の円弧板508を格納したマガジンであり、レール上を長手方向送りラインに沿って移動自在に設けられている。また、114は、溶接装置19、回転位置決め装置58の動きを司る補助制御盤、116は、走行駆動装置46、移載部の動きを司る補助制御盤であり、それぞれ装置全体の動きを制御する主制御盤44に電気的に接続されている。主制御盤44は、搬入部12、搬出部18のコンベアの駆動タイミング、その他装置全体の動きを制御する。
【0027】
次に、図7ないし図9、及び図10を参照しながら、本実施形態の管材の加工装置の加工手順について説明しつつ併せて作用を説明する。図10において、例えば管径14mm、6m程度の長さの鋼管を搬入部12に投入し、チェーンコンベアにより横送り搬送し搬入端側のエンドフレーム42に先端の鋼管を衝合させる(S1、S2)。搬入部12の送り端側に設けられた落下防止用エンドフレーム42の縦壁に鋼管が存在することを図示しないセンサにより検出し、主制御盤44からの移載指示を受けて第1の移載装置が作動し、1個ずつの鋼管を押出しライン141側に移載する(S3)。次に、走行駆動装置46の搬送駆動装置462が先端のグリップ部材で鋼管の後端をブリップ(S3)し、モータ463を介して図7のように、押出しライン上において鋼管を前方に押出す(S5)。図7の状態からさらに鋼管が進行すると、センサ77がその先端部(510A)位置(図12参照)を検出し(S6)、押さえ装置106のクランプ部材108が下降して鋼管を押さえる。この状態で、管端510Aから数十センチメートル程度の位置でボルト孔513を直径方向に穿孔する(S7)。この後、鋼管押さえを離し、搬送駆動装置462を介して鋼管を長手方向に送り、後端部分をセンサが検出すると、停止させる(S8)。次に、切断類装置17のプラズマトーチを駆動して同じ鋼管の他端側である受端部509側を加工する。この受端部509部分では、図12の回り止め用U字状切欠506(S9)及びその非切欠き部分へのボルト孔穿孔加工が行われる(S10)。次に、通常、6m長の鋼管は20mm〜30mm程度余長をもって供給されるから、センサ77により検出された管端から6m長さ位置で鋼管を輪切り状に切断する(S11)。これにより、切断類加工作業は終了し、次に溶接装置による溶接加工に送られる。
【0028】
切断類加工を終了した鋼管類は、駆動ローラ53により駆動されて鋼管の中途部分までの載置状態から切断類装置を離れて完全に待機ライン142上に位置される(S12)。先に溶接ラインに供給された鋼管についての円弧板の溶接接合作業が終了した時点で、移載装置110が作動し、待機ライン上の鋼管は溶接ライン上に移載されるとともに、溶接ライン上の溶接済みの鋼管は搬出部18の搬出面側に同時に移載される。溶接ライン143上の鋼管は、軸回り転動受部56により、軸回り自在に支持されており、このとき、回転位置決め装置58のセンサ66、回転体62により穿孔すべき孔位置を検出し(S14)、検出後、鋼管の孔位置に挿入ロッド68を挿入し、所要角度周方向回転させて軸周り溶接位置に鋼管をセットする(S15)(図9参照)。次に、溶接装置19は、ハンドリング装置84を介してマガジン内の円弧板512を把持し(S16)、図5に示すように例えば円弧板を水平方向にセットするような位置に配置させる。そして、鋼管の挿入端部側のストッパ用円弧板を溶接接合する(S17)。この位置は、ボルト孔513の周方向領域と同じ部分である。次に、溶接装置19は、案内レール83上を押出しライン方向に戻るように移動し、鋼管の受端部509側の円弧板508の溶接加工を行なう。このとき、円弧板508は、U字状切欠506の外面から被覆するように溶接され、該円弧板の円弧内面が鋼管の外面と曲面が連続するような位置に接合される(S18)。したがって、U字状切欠の部分は円弧板を外嵌状に溶接固定した場合には、図11のように、それに対応した円弧状凹部となっている。溶接加工終了信号を受けて主制御版は、移載装置110を作動し、待機ライン上の鋼管は新たに溶接を行う為に溶接ラインへ、さらに、溶接後の鋼管は、全体の加工作業を終了して搬出部18の搬出面へ移載される(S19)(S20)。以下、同様の処理が連続的に行われ、能率的に特殊品の鋼管の加工を実現させる。なお、実施形態では搬入部、加工処理用の長手方向送りライン及び搬出部をコ字状に配置させた構成としているが、搬出部の搬出方向は搬入部と同じ鋼材の転動方向としてZ字状となるように払い出す構成としてもよい。また、例えば工場内のスペース余裕によりこれらを任意に組み合わせた構成としてもよい。
【0029】
以上詳細に説明したように、本実施形態の管材の加工装置では、不安定で扱いにくい円筒重量物の管であって長手方向離隔位置でしかも管の周方向位置が決まっているような管材を転動搬入、長手方向送り、転動搬出の順序で材料供給、加工、材料搬出を行ない、しかも、長手方向送り工程で離隔位置で、かつ周回り位置に精度を要する作業を効率よく量産することができる。また、加工用のラインを待機ラインを介して平行にずらす位置に設定しているから、切断類加工と円弧板の溶接加工を作業上の時間ロスを少なくして効率よく加工製造し得る。さらに、ボルト挿入用の孔を利用して管材の軸周り位置を位置決めし溶接するから、位置決めを短時間で円滑、確実に行なうことが出来、作業時間短縮に資する。
【0030】
以上説明した本発明の管材の加工装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の管材の加工装置は、住宅建設用地盤強化用地中打込み鋼管杭等の管材の加工に好適に適用されるが、それ以外にも、管類でその両端側に加工部位を有する建造物、構造物の部材等の加工にも適用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る管材の加工装置の平面レイアウト図である。
【図2】図1の装置のA−A線矢視図である。
【図3】図1のB−B線矢視図である。
【図4】図1のC−C線矢視図である。
【図5】回転位置決め装置方向を見て溶接ラインを断面して示した一部省略拡大断面図である。
【図6】図1のD−D線矢視図である。
【図7】押出しライン部分での作用説明図である。
【図8】待機ライン部分での作用説明図である。
【図9】溶接ライン部分での作用説明図である。
【図10】図1の装置の実施形態の動作のフローチャート図である。
【図11】加工対象の管材の一部省略縦断面説明図である。
【図12】図11の管材の一部省略分解斜視説明図である。
【符号の説明】
【0033】
12 搬入部
14 長手方向送り部
16 加工部
17 切断類装置
18 搬出部
19 溶接装置
32 移載部
58 回転位置決め装置
64 位置決め機構
68 挿入ロッド
84 ハンドリング装置
110 移載装置
140 長手方向送りライン
141 押出しライン
142 待機ライン
143 溶接ライン
501 鋼管
506 U字状切欠
508、512 円弧板
507、513 ボルト孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管の長手方向の所定の離隔位置に該管の孔あけ、切欠、円弧板溶接等の加工部位を有する管材の加工装置であり、
鋼管の転動方向に横送り搬送する搬入部と、
送られた鋼管を受け取ってその長手方向送りラインに沿って送る長手方向送り部と、
長手方向送りラインの中途に設けられて鋼管の長手方向離隔複数位置を加工する加工部と、
加工後の鋼管を受け取って鋼管の転動方向に横送り搬送する搬出部と、を備え、
加工部は、長手方向送りラインの前段側に設けられた孔あけ・切欠・切断を含む切断類加工を行う切断類装置と、長手方向送りラインの後段側に設けられた円弧板の溶接装置と、を含むことを特徴とする管材の加工装置。
【請求項2】
長手方向送りラインは、切断類装置により鋼管を加工できるように該鋼管を長手方向に押出す押出しラインと、
切断類装置による加工後の鋼管をさらに長手方向に押出して待機させる待機ラインと、
待機ラインに平行に併設され待機ラインで待機する鋼管を移載により受けて所要の円弧板の溶接加工を行なう溶接ラインと、を備えたことを特徴とする請求項1記載の管材の加工装置。
【請求項3】
溶接ラインには、切断類加工後の鋼管を該鋼管の長手軸周り方向に回転自在に受ける回転受部と、
鋼管の端部近縁に配置されて該端部に穿孔された穴を介して鋼管の回転方向位置決めを行なう位置決め手段と、を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の管材の加工装置。
【請求項4】
長手方向送りラインの押出しラインと、待機ラインとで離隔2箇所の孔あけ・切断を行い、
溶接ラインで穿孔や切断切欠と同じ周回り部位に設定された円弧板溶接を行なうことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の管材の加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−35351(P2006−35351A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216742(P2004−216742)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(504285350)株式会社石丸工業 (1)
【Fターム(参考)】