説明

管状部品を溶接する方法

【課題】管状部品を接合する簡易化された方法を提供する。
【解決手段】2つの管状部品10、14に一体型端部蓋11、15が提供される。端部蓋11、15は当接する関係で配置され、圧力を加えられて密着状態に保持され、その間管状部品10は回転される。圧力が加えられ、そのことにより摩擦熱が発生する。2つの端部蓋11、15の間の接触面に摩擦溶接接合部18が生じる。溶接工程を完了すると、つぎに機械加工工具が管状部品のいずれかの内部穴(12または16)を通過する。機械加工工具は接合された端部蓋11、15を切削して貫通させ、接合した部品を貫通した単一の均一な穴を形成する。さらなる後処理作業で、押し出されたばり20は外面13、17から取り除かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管状部品を溶接する方法に関し、詳細には摩擦溶接技法またはイナーシャ溶接技法により管を溶接する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦溶接またはイナーシャ溶接において、部品は摩擦により熱が生成される固相接合工程により接合され、信頼性が高い溶接接合部をもたらす。
イナーシャ溶接または摩擦溶接によって、管状部品を接合するときに、内面および外面の両方からばりが押し出される。したがって、溶接工程が完了すると、このばりを内径および外径の両方から取り除く後処理作業が必要である。しかし、この溶接技法中に一般に認められる加熱速度および冷却速度は速いため、ばり材料を取り除くことは困難である。管状区間の内径が小さい場合には、内面からばりを取り除くアクセスおよび容易さはさらに悪化する。したがって、溶接工程中に生成するばりを取り除くことは困難であり、かつ多大な時間を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前述の問題を克服し、管状部品を接合する簡易化された方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、管状部品を接合する方法は、
接合される管状部品のそれぞれの一端に材料としての一体型蓋を設けるステップと、
管状部品の蓋をした端部を当接する関係で配置するステップと、
管状部品の蓋をした端部を当接状態に保持し、圧力を加えて、その間に部品の少なくとも1つを回転させて摩擦熱を生成し、管状部品の蓋をした端部を溶接するステップと、
溶接した蓋材料の内側を機械加工し貫通させ、貫通した内径を提供するステップとを含む。
【0005】
蓋材料の厚さは接合した管状部品の壁厚(T)に依存する。本発明の好ましい実施形態では、それぞれの管状部品の端部の蓋の厚さは、Tがmmで表した完成部品の壁厚であるとき、T/2 + 10% + 3mmである。
【0006】
好ましくは、溶接した蓋材料はドリルによる穴あけ加工または中ぐり加工され、必要な内径を提供する。この作業を実施する機械加工工具は管状部品の1つに挿入されてもよい。
【0007】
溶接された蓋材料の内側を機械加工するに先立ち熱処理を施してもよく、溶接工程の間に押し出されたばりを管状部品の外面から取り除くさらなる機械加工ステップが含まれてもよい。
【0008】
満足のいく溶接を達成するためには、部品の蓋をした端部の表面速度は、1.5〜10m/秒(300〜2000フィート)の範囲にあるべきであり、好ましくは2〜3m/秒(400〜600フィート)である。
【0009】
加えられる圧力は50〜800メートルトンの範囲にあるべきであり、好ましくは400〜600メートルトンの範囲である。
次に添付図面を参照しながら本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】摩擦溶接により接合される本発明による2つの管状部品の断面図である。
【図2】図1に示された2つの部品の摩擦溶接により接合されたあとの断面図である。
【図3】摩擦溶接および最終機械加工したあとの最終組立品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照すると、管状部品10には一体型端部蓋11が、管状部品14には一体型端部蓋15が備えられている。端部蓋11および15は当接する関係で配置され、圧力を加えられて一緒に保持され、その間管状部品10が回転される。管状部品10は図1の矢印Aの方向に回転され、その間圧力が矢印Bの方向に加えられる。これにより摩擦熱が引き起こされ、2つの端部蓋11および15の間の接触面に図2の摩擦溶接接合部18が生じる。
【0012】
溶接工程の間、ばり20として知られる溶接材料が接合部18から押し出される。ばり20は管状部品10および14の外面13および17上に押し出される。
溶接工程が完了すると、2つの端部蓋11および15は接合されている。次に、ドリルまたは他の機械加工工具(図示せず)が管状部品10または14のいずれかの内部穴12または16を通過する。その機械加工工具は端部蓋11および15と接合部18を切削して貫通させ、図3の2つの接合された部品を貫通した単一の均一な穴を生成する。さらなる後処理作業で、押し出されたばり20は外面13および17から取り除かれる。
【0013】
それぞれの管10および14の端部に、材料としての一体型中実蓋11および15を使用することで、摩擦溶接時に品質の良い接合部が得られる。蓋11および15の厚さは、正常な溶接接合部は得られるが、その一方でドリルによる穴あけ加工または中ぐり加工による取り除き工程が容易であるように十分に薄いものが選択される。
【0014】
蓋の厚さは特定の用途および使用される工程要素に依存することを理解されたい。しかし、蓋の厚さは管の寸法に関係づけることもでき、
Tがmmで表示した完成品の壁厚であるとき、好ましい厚さは、
T/2+10%+3mm
で画定される。
【0015】
この割合は、溶接工程におけるアプセット寄り代の量にかかわらず、機械加工の後処理作業で取り除くべき6mmの材料が残るように、管状部品両方の端部の蓋に適用される。
この方法の利点は、ばりを管状部品の外面から取り除くだけでよいことである。したがって、この接合方法によるといずれの内面からもばりを取り除く困難は解消される。
【0016】
この方法の予期せぬ利点は、材料を切削して貫通させ、中実の端部蓋から材料を取り除く方が、押し出されたばりを内面から取り除くよりも容易であることが分かったことである。さらに、完成部品の材料は管状の端部を接合する場合より材料の流れによる影響が少ないので、冶金および応力プロファイルは管の外径から内径までより均質になる。
【0017】
さらに付加的な利点は、材料が異なる環状部品が接合される場合、一体型蓋が障壁を設け、その障壁により異なった熱処理を施すことが可能になることである。したがって、接合部の一方ともう一方で異なった溶接後処理を施すことができ、溶接での材料特性をより最適化させることが可能になる。次に、熱処理が施されたあと、中央充填部分が蓋から取り除かれる。
【0018】
記述した蓋をした管状の形状は、摩擦溶接またはイナーシャ溶接される部品の生産で一般に使用される任意の鋼、ニッケルまたはチタン合金に適用できることは当業者には理解されよう。蓋をした管状部品は、鍛造、押し出し加工、または機械加工により製造が可能である。
【0019】
航空宇宙用途に使用されるイナーシャ溶接または摩擦溶接された部品にとって、正常な溶接を得るために使用される回転速度は50〜400RPMの範囲であり、軸などの中空部品には、この回転速度は200〜400RPMであることが好ましい。これは、すべての部品にとっては1.5〜10m/秒(毎分約300〜2000フィート)の表面速度に匹敵し、軸にとっては2〜3m/秒(毎分400〜600フィート)の表面速度に匹敵する。対応した圧力はすべての部品にとっては50〜800メートルトンの負荷により得られ、中空軸にとっては400〜600メートルトンの負荷により得られる。
【符号の説明】
【0020】
10、14 管状部品
11、15 蓋
12、16 内部穴
13、17 外面
18 溶接接合部
20 ばり
A 回転方向
B 圧力方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状部品(10,14)を接合する方法において、
接合される前記管状部品(10,14)のそれぞれの一端に材料としての一体型の蓋(11,15)を設けるステップと、
前記管状部品(10,14)の前記蓋をした端部(11,15)を当接する関係で配置するステップと、
前記管状部品(10,14)の前記蓋をした端部(11,15)を当接状態に保持し、圧力を加えて、その間に前記部品のうちの少なくとも1つを回転させて摩擦熱を生成させ、前記管状部品(10,14)の前記蓋をした端部(11,15)を溶接するステップと、
前記溶接した蓋材料の内側を機械加工し、貫通した内径を提供するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
材料としての各蓋(11,15)が前記接合した管状部品(10,14)の壁の厚さ(T)に依存する厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Tが前記管の壁の厚さであるとき、前記蓋(11,15)の厚さが
T/2 + 10% + 3mm
で画定されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶接された蓋材料(11,15)が、機械加工工具を前記管状部品(10,14)のうちの1つに挿入して機械加工されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記溶接された蓋材料(18)がドリルによる穴あけ加工されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記溶接された蓋材料(18)が中ぐり加工されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記溶接された蓋材料(18)の内側を機械加工するに先立ち熱処理が施されることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記蓋(11,15)が摩擦溶接されたあと、さらに機械加工作業を実施して、前記溶接工程中に押し出されたばりを取り除くことを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ばりが前記管状部品(10,14)の外面から取り除かれることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記部品(10,14)のうちの少なくとも1つが、前記部品(10,14)の前記蓋をした端部(11,15)での表面速度が1.5〜10m/sの範囲にある速度で回転することを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記表面速度が2〜3m/sであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記加えられる圧力が50〜800メートルトンの範囲であることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記圧力が400〜600メートルトンの範囲であることを特徴とする、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−194711(P2010−194711A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−38168(P2010−38168)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(591005785)ロールス・ロイス・ピーエルシー (88)
【氏名又は名称原語表記】ROLLS−ROYCE PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】