説明

管状部材固定用治具及びこれを用いた管状部材の組み立て方法

【課題】ボルト孔が形成されていない管側フランジが外周面に突出して設けられた管状部材を、管側フランジに当接するフランジ当接板を有する作業台に対して確実に固定する手段を提供する。
【解決手段】本発明に係る管状部材固定用治具100は、外周面に管側フランジ13が突出して設けられた出口側ユニット15を、管側フランジ13に当接するフランジ当接板34aを有する作業台30に固定するために用いるものであって、管側フランジ13及びフランジ当接板34aを一体として厚み方向に挟持する第1治具40と、作業台30に固定され、第1治具40の挟持方向に対して略直交する方向に向かって出口側ユニット15を両側から挟持する第2治具50と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面に管側フランジが突出して設けられた管状部材を、フランジ当接板を有する作業台に固定するために用いる管状部材固定用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンにおいて、燃焼器は、ノズルから供給された燃料と空気とを反応させて燃焼させる部位であり、燃料と空気とを燃焼させる内筒と、燃焼ガスの流速を速めて後段のタービンに導入する尾筒とを有している。そして、この尾筒の周囲には、尾筒を冷却するための冷却用蒸気を供給するとともに、冷却後の温度が上昇した蒸気を回収するための蒸気配管が配設されている。
【0003】
そして、尾筒の外周面には管側フランジが突出して設けられ、管側フランジの一方の面には蒸気配管の一端部が接続されるとともに、管側フランジの他方の面には蒸気供給口及び蒸気回収口がそれぞれ開口して設けられている。そして、この管側フランジが、タービン側に突出して設けられて蒸気供給管及び蒸気回収管がそれぞれ接続されるタービン側フランジに対して当接され、ボルトにより固定される。従って、管側フランジにおける蒸気供給口及び蒸気回収口の周囲には、タービン側フランジとボルト固定するためのボルト孔が複数形成されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ここで、燃焼器の尾筒は、燃焼ガスの流れ方向に向かって上流側の入口側ユニットと下流側の出口側ユニットとが組み立てられてなるものである。そして、尾筒を新設すべく入口側ユニットと出口側ユニットとを組み立てる場合、所定の軸回りに回転可能な回転支持部を有する作業台を用いる。すなわち、まず尾筒の出口側ユニットを、作業台の回転支持部に固定する。そして、作業台を操作して回転支持部に固定された出口側ユニットの向きを調整しつつ、入口側ユニットに対して固定する。
【0005】
ここで、尾筒の出口側ユニットを作業台の回転支持部に固定する際には、出口側ユニットに突出して設けられた管側フランジを利用する。すなわち、出口側ユニットの管側フランジに形成されたボルト孔に対応するようにして、作業台の回転支持部に設けられたフランジ当接板にもボルト孔を予め複数形成しておく。そして、管側フランジのボルト孔及びフランジ当接板のボルト孔に対してボルトをそれぞれ挿通させ、このボルトにナットを締め付けることにより、尾筒の出口側ユニットを作業台の回転支持部に対して回転不能に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−041005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ガスタービンの仕様変更に伴って尾筒を改造する場合、具体的には尾筒の入口側ユニットについては既存のものを残したまま、出口側ユニットだけを既存のものから口径の異なるものに交換する場合、尾筒の新設時に使用する作業台を出口側ユニットの交換作業に使用することができないという問題がある。
【0008】
すなわち、新たな出口側ユニットを作業台に固定する場合、新たな出口側ユニットの管側フランジに複数のボルト孔を予め形成すれば、この管側フランジを作業台のフランジ当接板にボルト固定することが可能である。しかし、新たな出口側ユニットの管側フランジに予めボルト孔を形成すると、既存の入口側ユニットに対して新たな出口側ユニットを固定し、更には尾筒の周囲に蒸気配管を配設した後、管側フランジとタービン側フランジとを固定すると、尾筒側の蒸気配管とタービン側の蒸気供給管及び蒸気回収管との相対位置関係にずれが生じ、両者が同軸で連通せず蒸気漏れ等が発生する。従って、尾筒の出口側ユニットを交換する場合、管側フランジのボルト孔は、既存の入口側ユニットに対して新たな出口側ユニットを固定し、尾筒の周囲に蒸気配管を配設した後に、全体の組み付け関係に応じて位置を調整して穿設する必要がある。このため、既存の入口側ユニットと新たな出口側ユニットとを固定するに先立って、新たな出口側ユニットの管側フランジを作業台のフランジ当接面に固定しようとしても、出口側ユニットの管側フランジにはボルト孔が未だ存在しないため、管側フランジとフランジ当接面とをボルト固定することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、ボルト孔が形成されていない管側フランジが外周面に突出して設けられた管状部材を、管側フランジに当接するフランジ当接板を有する作業台に対して位置ズレすることなく確実に固定する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。すなわち、本発明に係る管状部材固定用治具は、外周面に管側フランジが突出して設けられた管状部材を、前記管側フランジに当接するフランジ当接板を有する作業台に固定するために用いる管状部材固定用治具であって、前記管側フランジ及び前記フランジ当接板を一体として厚み方向に挟持する第1挟持部と、前記作業台に固定され、前記第1挟持部の挟持方向に対して略直交する方向に向かって前記管状部材を両側から挟持する第2挟持部と、を備えるものである。
【0011】
このような構成によれば、第1挟持部が管側フランジ及びフランジ当接板を一体として厚み方向に挟持するので、管状部材が作業台に対して管側フランジの厚み方向、すなわち軸方向へ位置ズレするのを防止することができる。
また、作業台に固定された第2挟持部が、第1挟持部の挟持方向に対して略直交する方向に向かって管状部材を挟持するので、管状部材が作業台に対して軸回りに回転するように位置ズレするのを防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る管状部材固定用治具は、前記第1挟持部と前記第2挟持部とが別部材としてそれぞれ設けられたことを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、管状部材や作業台の各部寸法によらず、第1挟持部による管側フランジ及びフランジ当接板の挟持と、第2挟持部による管状部材の挟持とを容易且つ確実に行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る管状部材固定用治具は、前記第2挟持部が、前記管状部材の径方向に進退可能に設けられた相対向する一対のボルトであることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、一対のボルトをそれぞれ進退させることにより、径の大きさによらず管状部材を容易且つ確実に挟持することができる。
【0016】
また、本発明に係る管状部材固定用治具は、前記作業台に固定され、前記第1挟持部の挟持方向及び前記第2挟持部の挟持方向の両方に対して略直交する方向に向かって、前記作業台と共に前記管状部材を挟持する第3挟持部を更に備えることを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、第3挟持部及び作業台が、第1挟持部の挟持方向及び第2挟持部の挟持方向の両方に略直交する方向に向かって管状部材を挟持するので、管状部材が作業台に対して軸回りに回転するように位置ズレするのを一層確実に防止することができる。
【0018】
また、本発明に係る管状部材固定用治具は、前記第2挟持部と前記第3挟持部とが一体部材として設けられたことを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、第2挟持部及び第3挟持部の作業台への固定作業を簡略化することができる。
【0020】
また、本発明に係る管状部材固定用治具は、前記管状部材の一端開口部が断面略矩形に形成され、前記第2挟持部が前記一端開口部の相対向する2辺を挟持し、前記第3挟持部が前記一端開口部の相対向する他の2辺を挟持することを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、管状部材の一端開口部が断面略矩形に形成され、その相対向する2辺を第2挟持部で挟持するので、一端開口部が断面略円形に形成される場合と比較すると、第2挟持部と管状部材との間に滑りが生じにくく、確実なる管状部材の挟持が可能となる。同様に、第3挟持部と管状部材との間にも滑りが生じにくく、確実なる管状部材の挟持が可能となる。
【0022】
また、本発明に係る管状部材の組み立て方法は、内部を流通する流体の流れ方向に向かって上流側の入口側ユニットと下流側の出口側ユニットとが組み立てられてなる管状部材の組み立て方法であって、請求項1から5のいずれか1項に記載の管状部材固定用治具を用いて前記出口側ユニットを前記作業台に固定する工程と、前記出口側ユニットが前記作業台に固定された状態で、前記入口側ユニットと前記出口側ユニットとの相対位置を調整する工程と、前記入口側ユニットと前記出口側ユニットとを接続する工程と、を含むものである。
【0023】
このような方法によれば、管状部材固定用治具を用いることにより、管状部材の出口側ユニットを作業台に対して軸方向及び径方向の両方向への位置ズレを防止しながら確実に固定することができる。これにより、出口側ユニットと入口側ユニットとの相対位置を正確に決定することができ、正確なる管状部材の組み立てが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る管状部材固定用治具によれば、ボルト孔が形成されていない管側フランジが外周面に突出して設けられた管状部材を、管側フランジに当接するフランジ当接板を有する作業台に対して位置ズレすることなく確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る管状部材固定用治具を用いて作製した尾筒を有するガスタービンを示す概略側面図である。
【図2】燃焼器の周辺を拡大した部分拡大断面図である。
【図3】尾筒の外観を示す図であり、(a)は概略平面図、(b)は概略側面図である。
【図4】作業台に尾筒を固定した状態を示す概略平面図である。
【図5】作業台に尾筒を固定した状態を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。まず、本実施形態に係る管状部材固定用治具を用いて作製する尾筒について説明する。図1は、本実施形態に係る尾筒を有するガスタービン1を示す概略側面図である。
【0027】
ガスタービン1は、図1に示すように、圧縮空気を生成する圧縮機2と、この圧縮機2で生成された圧縮空気に燃料を混合して燃焼させることにより燃焼ガスを生成する複数の燃焼器3と、この燃焼器3で生成された燃焼ガスにより駆動するタービン4と、を備えるものである。また、燃焼器3の周囲を取り囲むようにして、燃焼器3に燃料を供給するための燃料供給管、燃焼器3を冷却するための冷却空気供給管等の多数の各種配管5が設置されている。
【0028】
図2は、燃焼器3の周辺を拡大した部分拡大断面図である。燃焼器3は、圧縮空気と燃料が供給され燃焼される内筒6と、この内筒6で生成された燃焼ガスをタービン4の燃焼ガス流路7に導入する尾筒8(管状部材)と、を備えるものである。そして、このように構成される燃焼器3は、図1に示すように、図示しないタービンロータを囲むようにして車室19に対して周方向に所定間隔で複数配列されている。
【0029】
図3は、尾筒8の外観を示す図であり、図3(a)は概略平面図、図3(b)は概略側面図である。尾筒8は、中空の管本体10と、この管本体10の外周面に配管サポート11を介して配設された蒸気配管12と、管本体10の外周面に突出して設けられて蒸気配管12の一端が接続された管側フランジ13と、を具備している。
【0030】
管本体10は、図3に示すように、燃焼ガスの流れ方向に向かって上流側の入口側ユニット14と下流側の出口側ユニット15とが組み立てられてなるものである。ここで、入口側ユニット14は、直線状に延びる管状の部材であって、略円形の断面形状を有し、その径は長手方向に渡って一定に形成されている。一方、出口側ユニット15は、長手方向中間部で湾曲した管状の部材であって、その径は上流側から下流側に向かって徐々に小さくなっている。そして図3(a)に示すように、出口側ユニット15の下流側端部には、断面略矩形の開口部15aが設けられている。
【0031】
蒸気配管12は、尾筒8に対して冷却用蒸気を供給するとともに、冷却後の温度が上昇した蒸気を回収するためのものである。この蒸気配管12は、図3(a)に示すように、その一端部が管側フランジ13の一方の面に接続されている。
【0032】
管側フランジ13は、図3(a)に示すように、略矩形の平板部材であって、その一方の面には前述のように蒸気配管12が接続されるとともに、その他方の面には蒸気配管12に連通する蒸気供給口16及び蒸気回収口17がそれぞれ開口している。また、蒸気供給口16及び蒸気回収口17の周囲には、タービン4側への固定用に用いる複数のボルト孔18が、管側フランジ13を貫通してそれぞれ形成されている。
【0033】
このように構成される尾筒8は、図2に示すように、燃焼器3の車室19の内部に収容され、入口側ユニット14の上流側端部が内筒6の下流側端部に接続されるとともに、出口側ユニット15の下流側端部がタービン4側に設けられた燃焼ガス流路7に接続されている。
【0034】
そしてこの状態において、尾筒8の管側フランジ13は、タービン4側に突出して設けられたタービン側フランジ20に当接している。このタービン側フランジ20は、図に詳細は示さないが管側フランジ13と略同形状であって、タービン4側の面には蒸気供給管や蒸気回収管がそれぞれ接続されるとともに、尾筒8側の面には蒸気供給管や蒸気回収管に連通する蒸気供給口及び蒸気回収口がそれぞれ開口して設けられている。そして、管側フランジ13及びタービン側フランジ20が、蒸気供給口16及び蒸気回収口17が開口された側の面を互いに当接させることにより、尾筒8側に設けられた蒸気配管12とタービン4側に設けられた蒸気供給管及び蒸気回収管とが互いに連通した状態となる。
【0035】
次に、本実施形態に係る尾筒8の組み立てに用いる作業台について説明する。ここで、図4及び図5は、管状部材固定用治具100を用いて作業台30に尾筒8を固定した状態を示す図であり、図4は概略平面図、図5は概略側面図である。作業台30は、移動可能な本体部31と、この本体部31によって回転可能に支持されて不図示のモータで回転駆動される円盤部材32と、この円盤部材32に固定された回転軸33と、この回転軸33に固定されて尾筒8の出口側ユニット15を支持する回転支持部34と、を備えるものである。
【0036】
ここで、回転支持部34は、図5に示すように側面視で略U字型に形成され、その上端部には、尾筒8の管側フランジ13に当接させるためのフランジ当接板34aが、斜め上方へ突出して設けられている。
【0037】
このように構成される作業台30によれば、尾筒8の出口側ユニット15を回転支持部34に固定した状態で円盤部材32を回転駆動することにより、出口側ユニット15をその軸回りに回転させて、その姿勢を任意に調整することができる。
【0038】
次に、本実施形態に係る管状部材固定用治具100を構成する第1治具について説明する。図4及び図5に示すように、第1治具40(第1挟持部)は、断面略U字型の基部41と、この基部41に螺合されて進退可能に設けられた締め付けボルト42と、を具備している。このように構成される第1治具40によれば、挟持すべき対象物を基部41の開口41aに配置し、締め付けボルト42を回して対象物の側へ進出させることにより、基部41と締め付けボルト42の先端とによって対象物を挟持することができる。
【0039】
次に、本実施形態に係る管状部材固定用治具100を構成する第2治具について説明する。図4及び図5に示すように、第2治具50は、作業台30の回転支持部34に固定するための固定部51と、この固定部51の両側面51aにそれぞれ螺合されて進退可能に設けられた側面ボルト対52(第2挟持部)と、固定部51の上面51bにそれぞれ螺合されて進退可能に設けられた上面ボルト対53(第3挟持部)と、を具備している。ここで、側面ボルト対52の進退方向と上面ボルト対53の進退方向とは、互いに略直交している。
【0040】
ここで、図4及び図5に示すように、固定部51の上面51bには、作業台30の回転支持部34への固定用に用いる4個のボルト孔54が、固定部51を貫通してそれぞれ形成されている。また、固定部51の上面51bには、固定部51の曲げ剛性を高めるための補強リブ55が突出して設けられている。
【0041】
このように構成される第2治具50によれば、作業台30の回転支持部34に固定した状態において、挟持すべき対象物を固定部51の開口51cに配置し、側面ボルト対52を回して対象物の側へそれぞれ進出させることにより、側面ボルト対52によって対象物を両側方から挟持することができる。また、上面ボルト対53を回して対象物の側へそれぞれ進出させることにより、上面ボルト対53と作業台30の回転支持部34とによって対象物を上下方向に挟持することができる。
【0042】
次に、本実施形態に係る尾筒8の組み立て手順、より詳細には尾筒8を構成する既存の入口側ユニット14を残したまま、出口側ユニット15だけを口径の異なる新たなものに交換する作業手順について説明する。まず作業者は、図1に示すガスタービン1から、燃焼器3を構成する内筒6を車室19から取り出す。すなわち作業者は、尾筒8の上流側端部に挿入された内筒6の下流側端部を引き抜くことにより、燃焼器3を内筒6と尾筒8とに分解する。そして作業者は、タービン側フランジ20と管側フランジ13との固定を解除することにより、車室19から尾筒8を抜き出す。
【0043】
次に作業者は、尾筒8の外周面から蒸気配管12を除去する。この際、作業者は、図3(a)に示す状態から、配管サポート11による固定を解除するとともに、管側フランジ13への接続を解除することにより、蒸気配管12を除去可能な状態とすることができる。
【0044】
次に作業者は、尾筒8を入口側ユニット14と出口側ユニット15とに分解する。すなわち作業者は、入口側ユニット14と出口側ユニット15とを固定する不図示の固定具等を解除した後、出口側ユニット15を入口側ユニット14から切り離す。
【0045】
次に作業者は、作業台30に対して第2治具50を固定する。すなわち作業者は、図4及び図5に示すように、第2治具50の固定部51を作業台30の回転支持部34に装着し、固定部51に形成した4個のボルト孔54に挿通させた4本のボルト56によって、固定部51を回転支持部34に固定する。
【0046】
次に作業者は、交換すべき新たな出口側ユニット15を作業台30に配置する。すなわち作業者は、図4及び図5に示すように、新たな出口側ユニット15に突出して設けられた管側フランジ13を、作業台30の回転支持部34に突出して設けられたフランジ当接板34aに対して当接させるとともに、新たな出口側ユニット15の開口部15aを、作業台30に装着した第2治具50の内部に配置する。
【0047】
そして作業者は、第1治具40を用いて出口側ユニット15を作業台30に固定する。すなわち作業者は、図4及び図5に示すように、当接した状態の管側フランジ13及びフランジ当接板34aが基部41の開口41aに位置するようにして、第1治具40を配置する。そして、基部41に螺合された締め付けボルト42を回してフランジ当接板34aの側へ進出させることにより、一体化した管側フランジ13及びフランジ当接板34aを、基部41と締め付けボルト42の先端とによって挟持する。これにより、出口側ユニット15がその軸方向に移動することによって、作業台30に対して位置ズレするのを防止することができる。
【0048】
尚、本実施形態では、締め付けボルト42でフランジ当接板34aを押圧し、基部41で管側フランジ13を押圧するように第1治具40を配置したが、これとは逆に、締め付けボルト42で管側フランジ13を押圧し、基部41でフランジ当接板34aを押圧するように第1治具40を配置してもよい。
【0049】
更に作業者は、第2治具50を用いて出口側ユニット15を作業台30に固定する。すなわち作業者は、図4及び図5に示すように、第2治具50の側面ボルト対52を回して出口側ユニット15の側へそれぞれ進出させることにより、出口側ユニット15が有する略矩形の開口部15aの相対向する2辺を、側面ボルト対52によって水平方向に挟持する。これにより、出口側ユニット15がその軸回りに回転することによって、作業台30に対して位置ズレするのを防止することができる。ここで、図3(a)に示すように、出口側ユニット15の開口部15aが略矩形に形成されているので、開口部15aが略円形である場合と比較すると、側面ボルト対52と出口側ユニット15との間に滑りが生じにくく、確実なる出口側ユニット15の挟持が可能となる。
【0050】
続いて作業者は、第2治具50の上面ボルト対53を回して出口側ユニット15の側へそれぞれ進出させることにより、出口側ユニット15が有する略矩形の開口部15aの相対向する他の2辺を、作業台30の回転支持部34と上面ボルト対53とによって上下方向に挟持する。これにより、出口側ユニット15がその軸回りに回転することによって、作業台30に対して位置ズレするのを一層確実に防止することができる。ここでも、図3(a)に示すように、出口側ユニット15の開口部15aが略矩形に形成されているので、上面ボルト対53と出口側ユニット15との間に滑りが生じにくく、確実なる出口側ユニット15の挟持が可能となる。
【0051】
尚、本実施形態では、第2治具50の側面ボルト対52で出口側ユニット15を挟持した後、上面ボルト対53で出口側ユニット15を挟持したが、これとは逆に、上面ボルト対53で出口側ユニット15を挟持した後、側面ボルト対52で出口側ユニット15を挟持してもよい。また、本実施形態では、第1治具40で出口側ユニット15を挟持した後、第2治具50で出口側ユニット15を挟持したが、これとは逆に、第2治具50で出口側ユニット15を挟持した後、第1治具40で出口側ユニット15を挟持してもよい。更には、側面ボルト対52による挟持と、上面ボルト対53による挟持との間に、第1治具40による挟持を行ってもよい。
【0052】
ここで、新たな出口側ユニット15の管側フランジ13には、固定用のボルト孔が形成されていない。これは前述のように、新たな出口側ユニット15の管側フランジ13に固定用のボルト孔を予め形成すると、管側フランジ13とタービン側フランジ20とを固定する際に尾筒8側の蒸気配管12とタービン4側の蒸気供給管及び蒸気回収管との相対位置関係にずれが生じ、両者が同軸で連通せず蒸気漏れ等が発生するからである。しかし、このように管側フランジ13にボルト孔が形成されていない出口側ユニット15であっても、第1治具40と第2治具50とを用いることにより、作業台30の回転支持部34に対して確実に固定することができる。
【0053】
次に作業者は、新たな出口側ユニット15と既存の入口側ユニット14との相対位置を調整する。すなわち作業者は、まず既存の入口側ユニット14を任意の手段を用いて移動不能に固定する。そして作業者は、この入口側ユニット14に対して作業台30の本体部31を近接し又は離間するように移動させることにより、作業台30に固定された出口側ユニット15と移動不能に固定された入口側ユニット14との相対距離を調整する。更に作業者は、作業台30の円盤部材32を回転駆動し、回転支持部34に固定された出口側ユニット15を軸回りに回転させることにより、出口側ユニット15と入口側ユニット14との相対角度を調整する。
【0054】
尚、新たな出口側ユニット15と既存の入口側ユニット14との相対位置を調整する手段としては、本実施形態とは逆に、出口側ユニット15を固定した作業台を移動不能とした状態において、任意の手段を用いて入口側ユニット14を移動させてもよい。
【0055】
次に作業者は、相対位置の調整が完了した出口側ユニット15と入口側ユニット14とを接続し、完成した管本体10の外周面に前述のように事前に取り外した蒸気配管12を再度取り付ける。これにより、既存の入口側ユニット14を残したまま出口側ユニット15だけを交換した新たな尾筒8が完成する。これにより、尾筒8の組み立て作業が完了する。最後に作業者は、完成した尾筒8を作業台30から取り外し、図1に示す車室19の内部へと戻す。そして、内筒6を尾筒8に取り付けて一体化することにより、燃焼器3を再構築する。これにより、燃焼器3の改造が完了する。
【0056】
尚、本実施形態では、第1治具40と第2治具50とを別部材として構成したが、これらを一体部材として構成することも可能である。但し、本実施形態のように別部材として構成した方が、出口側ユニット15や作業台30の各部寸法に応じて、第1治具40及び第2治具50の装着位置を適宜変更することができるという利点がある。
【0057】
また、本実施形態では、本発明に係る第2挟持部及び第3挟持部の両方の機能を第2治具50に持たせたが、これに限られず、第2治具50に第2挟持部の機能だけを持たせ、第3挟持部の機能だけを持つ第3治具(不図示)を第2治具50とは別に設けてもよい。しかし、本実施形態のように第2治具50に第3挟持部の機能も持たせた方が、第3治具を別に設ける場合と比較して部品点数が削減される分、コストダウン及び管理の容易化を図ることができるという利点がある。
【0058】
また、第3挟持部は本発明に必須の構成ではなく、管状部材固定用治具100を第1挟持部及び第2挟持部だけで構成してもよい。しかし、管状部材固定用治具100に第3挟持部の機能も持たせた方が、出口側ユニット15がその軸回りに回転することによって作業台30に対して位置ズレするのを一層確実に防止することができる。これにより、出口側ユニット15と入口側ユニット14の相対位置の調整作業を、より高い精度で行うことができるという利点がある。
【0059】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 ガスタービン
2 圧縮機
3 燃焼器
4 タービン
5 各種配管
6 内筒
7 燃焼ガス流路
8 尾筒(管状部材)
10 管本体
11 配管サポート
12 蒸気配管
13 管側フランジ
14 入口側ユニット
15 出口側ユニット
15a 開口部
16 蒸気供給口
17 蒸気回収口
18 ボルト孔
19 車室
20 タービン側フランジ
30 作業台
31 本体部
32 円盤部材
33 回転軸
34 回転支持部
34a フランジ当接板
40 第1治具(第1挟持部)
41 基部
41a 開口
42 締め付けボルト
50 第2治具
51 固定部
51a 側面
51b 上面
51c 開口
52 側面ボルト対(第2挟持部)
53 上面ボルト対(第3挟持部)
54 ボルト孔
55 補強リブ
56 ボルト
100 管状部材固定用治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に管側フランジが突出して設けられた管状部材を、前記管側フランジに当接するフランジ当接板を有する作業台に固定するために用いる管状部材固定用治具であって、
前記管側フランジ及び前記フランジ当接板を一体として厚み方向に挟持する第1挟持部と、
前記作業台に固定され、前記第1挟持部の挟持方向に対して略直交する方向に向かって前記管状部材を両側から挟持する第2挟持部と、
を備えることを特徴とする管状部材固定用治具。
【請求項2】
前記第1挟持部と前記第2挟持部とが別部材としてそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1に記載の管状部材固定用治具。
【請求項3】
前記第2挟持部が、前記管状部材の径方向に進退可能に設けられた相対向する一対のボルトであることを特徴とする請求項1又は2に記載の管状部材固定用治具。
【請求項4】
前記作業台に固定され、前記第1挟持部の挟持方向及び前記第2挟持部の挟持方向の両方に対して略直交する方向に向かって、前記作業台と共に前記管状部材を挟持する第3挟持部を更に備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管状部材固定用治具。
【請求項5】
前記第2挟持部と前記第3挟持部とが一体部材として設けられたことを特徴とする請求項4に記載の管状部材固定用治具。
【請求項6】
前記管状部材の一端開口部が断面略矩形に形成され、前記第2挟持部が前記一端開口部の相対向する2辺を挟持し、前記第3挟持部が前記一端開口部の相対向する他の2辺を挟持することを特徴とする請求項4又は5に記載の管状部材固定用治具。
【請求項7】
内部を流通する流体の流れ方向に向かって上流側の入口側ユニットと下流側の出口側ユニットとが組み立てられてなる管状部材の組み立て方法であって、
請求項1から5のいずれか1項に記載の管状部材固定用治具を用いて前記出口側ユニットを前記作業台に固定する工程と、
前記出口側ユニットが前記作業台に固定された状態で、前記入口側ユニットと前記出口側ユニットとの相対位置を調整する工程と、
前記入口側ユニットと前記出口側ユニットとを接続する工程と、
を含むことを特徴とする管状部材の組み立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−141033(P2012−141033A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539(P2011−539)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【特許番号】特許第4885314号(P4885314)
【特許公報発行日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】