説明

管理機

【課題】 トランスミッションケースの真下近傍に耕耘されずに土が残る状態を低減することによって、耕耘の仕上がり性を高めること。
【解決手段】 管理機は、トランスミッションケース12の左右両側に隣接した左右の正転軸62,62と、これら左右の正転軸の左右方向外側に隣接した左右の逆転軸63,63とを同一心上に配列し、左右の正転軸に複数の正転爪121〜124を備え、左右の逆転軸に複数の逆転爪131,132を備えることで、動力源の動力を、トランスミッションケースに収納された動力伝達機構を介して左右の正転軸及び左右の逆転軸に伝達して、正転爪及び逆転爪を回転させるものである。左右の正転軸は、トランスミッションケースの真下近傍に残った土を耕耘する残耕処理爪125,126を、トランスミッションケースの左右両側に隣接させて備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体幅方向に複数の正転爪及び複数の逆転爪を配列して耕耘する管理機の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
管理機には、左右の正転軸及び左右の逆転軸を同心上に配置し、左右の正転軸に複数の正転爪を備えるとともに、左右の逆転軸に複数の逆転爪を備えた耕耘機がある。このような耕耘機には例えばロータリ式作業機がある。ロータリ式作業機は、動力源の下部にトランスミッションケースを設け、このトランスミッションケースにロータリ作業部及び走行輪を設けたものであり、各種知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特公平7−114561号公報(図1、図4、図9)
【0003】
特許文献1に示す従来のロータリ式作業機を、次の図9に基づいて説明する。
図9(a),(b)は従来のロータリ式作業機の概要図であり、(a)は側方から見たロータリ式作業機の構成を示し、(b)は(a)のロータリ作業部をb矢視方向から見た構成を示す。
【0004】
図9(a)に示すように、従来技術のロータリ式作業機200は、エンジン201の下方にトランスミッションケース202を配置し、このトランスミッションケース202に前部の走行駆動軸203並びに後部の作業駆動軸204を収納し、さらにトランスミッションケース202の後部から後上方にハンドル205を延ばした歩行型管理機である。エンジン201の動力を、走行駆動軸203を介して走行輪206へ伝達するとともに、作業駆動軸204を介してロータリ作業部207へ伝達することができる。
【0005】
図9(b)に示すように、作業駆動軸204は、機体中心に配置されたトランスミッションケース202の後部から左右に延びたものであり、トランスミッションケース202の左右両側に隣接した左右の正転軸301,301と、これら左右の正転軸301,301の左右方向外側に隣接した左右の逆転軸311,311とからなる。正転方向R11に回転する左右の正転軸301,301は、各々4つの正転爪302〜305を備える。一方、逆転方向R12に回転する左右の逆転軸311,311は、各々4つの逆転爪312〜315を備える。
【0006】
ところで、トランスミッションケース202のうち後部の収納部分202a、すなわち後部収納部202aは、左右の正転爪302〜305及び左右の逆転爪312〜315に動力を分配するための作業動力分配部を収納している。当然のことながら、後部収納部202aの機幅方向の寸法Wi11(幅寸法Wi11)は、その前方の幅寸法Wi12よりも大幅に大きい。
【0007】
このため、トランスミッションケース202側へ先端を向けた正転爪302,303を単に設けただけでは、トランスミッションケース202の真下近傍に耕耘されずに土が残る状態、いわゆる残耕が生じる心配がある。従って、耕耘の良好な仕上がり性を確保するには改良の余地がある。
これに対して、作業動力分配部をできるだけ小型にすることが考えられる。しかし、動力を分配する性能を確保するためには、小型化にも限界があり、この結果、後部収納部202aの幅寸法Wi11を小さくするには限界がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、トランスミッションケースの真下近傍に耕耘されずに土が残る状態、いわゆる残耕を低減することによって、耕耘の仕上がり性を高めることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、トランスミッションケースの左右両側に隣接した左右の正転軸と、これら左右の正転軸の左右方向外側に隣接した左右の逆転軸とを同一心上に配列し、左右の正転軸に複数の正転爪を備え、左右の逆転軸に複数の逆転爪を備えることで、動力源の動力を、トランスミッションケースに収納された動力伝達機構を介して左右の正転軸及び左右の逆転軸に伝達して、正転爪及び逆転爪を回転させる管理機において、
左右の正転軸が、トランスミッションケースの真下近傍に残った土を耕耘する残耕処理爪を、トランスミッションケースの左右両側に隣接させて備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、残耕処理爪が、複数の正転爪のうち先端部をトランスミッションケース側へ向けた正転爪に対し、正転方向の直後に位相をずらして配置するとともに、トランスミッションケースに隣接して配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、複数の逆転爪のうち正転軸に隣接した全ての逆転爪が、その先端部を、トランスミッションケース側とは逆向きに向けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、左右の正転軸に、通常の正転爪の他に残耕処理爪をも備え、この残耕処理爪をトランスミッションケースの左右両側に隣接させたので、トランスミッションケースのうち、正転爪及び逆転爪に動力を分配する作業動力分配部を収納した、幅寸法が大きい動力分配部収納部分の真下近傍の土を耕耘することができる。
従って、トランスミッションケース下の残耕をより低減することができ、この結果、耕耘の仕上がり性を高めることができる。しかも、トランスミッションケース下も深く耕耘することができるので、管理機の耕耘性を高めることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、複数の正転爪のうち、先端部をトランスミッションケース側へ向けた正転爪に対して、残耕処理爪を正転方向の直後に位相をずらして配置するとともに、この耕処理爪をトランスミッションケースに隣接して配置したものである。
正転軸を正転させたときに、トランスミッションケース側に先端部を向けた正転爪は、先に動力分配部収納部分の近傍の土に当って衝撃を加える。この結果、当った部分及びその付近の土には亀裂が入る。亀裂が入った部分には、引続いて連続的に耕処理爪が当ることで衝撃が加わる。この結果、土の亀裂が機幅中心側まで入ることで、動力分配部収納部分の真下の土を容易に耕耘、粉砕することができる。従って、トランスミッションケース下の残耕をより一層低減することができ、この結果、耕耘の仕上がり性をより一層高めることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、複数の逆転爪のうち、正転軸に隣接した全ての逆転爪の先端部を、トランスミッションケース側とは逆向きにしたものである。
左右の正転軸に、通常の正転爪の他に残耕処理爪をも備えたので、耕耘された土は機幅中心側へ集り易くなる。
これに対して請求項3では、正転軸に隣接した全ての逆転爪の先端部を、トランスミッションケース側とは逆向きにすることにより、これらの逆転爪で耕耘された土を機幅方向の外側へ分散させることができる。この結果、機幅中心側へ集る土を、外側へ分散する土で相殺することができる。従って、耕耘された土が機幅中心側に盛上がらずに概ね平坦になるので、耕耘の仕上がり性をより一層高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は作業者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側、CLは機幅中心(機体中心)を示す。
【0016】
図1は本発明に係るフロントロータリ式作業機の左側面図である。図2は本発明に係るフロントロータリ式作業機の平面図である。
図1に示すように、フロントロータリ式作業機10は、エンジン11の下部にトランスミッションケース12を取付け、トランスミッションケース12に前部の作業駆動軸13及び後部の走行駆動軸14を回転可能に取付け、作業駆動軸13にロータリ作業部15を取付け、走行駆動軸14に走行輪16を取付けることで、エンジン11にてロータリ作業部15及び走行輪16を駆動する小型の歩行型自走式農作業機、すなわち耕耘機(管理機)である。
【0017】
このようにフロントロータリ式作業機10(以下、単に「作業機10」と言う。)は、エンジン11の下方に機体を兼ねたトランスミッションケース12を配置し、さらにトランスミッションケース12の前部から前方へ延ばした支持機構21を介して走行補助輪22を上下に位置調整可能に取付け、トランスミッションケース12の後部から後上方にハンドル23を延ばしたものである。
動力源としてのエンジン11はクランク軸11aを略垂直に延ばした、いわゆるバーチカルエンジンである。走行輪16は、図2に示すように左右2個ある。
【0018】
なお、図1において、24はエアクリーナ、25は燃料タンク、26は燃料タンク給油口用キャップ、27はエンジン11の上方を覆うエンジンカバー、28はトランスミッションケース12の前部及びロータリ作業部15の上方を覆うフェンダ、29は機体ガードである。また、図2において、31は電源スイッチ、32はクラッチレバー、33はシフトレバー、34はエンジン11を手動にて始動させるリコイルスタータ用ノブ、35はエンジン11用スロットルレバー、36はデフロック用レバーである。
【0019】
図3は本発明に係るトランスミッションケース周りを左側方から見た断面図であり、左右二分割構造であるトランスミッションケース12の右半分を示す。
図4は本発明に係るトランスミッションケース及び動力伝達機構を上から見た断面図であり、トランスミッションケース12及びトランスミッション40を前後に展開して表した。
【0020】
図3及び図4に示すように、トランスミッションケース12は前後に細長い左右二分割構造のケースであって、トランスミッション40を収納したものである。
トランスミッション40は、エンジン11の駆動力をロータリ作業部15並びに走行輪16(図4参照)に伝達する動力伝達機構であって、作業用伝動機構50及び走行用伝動機構80からなる。このようなトランスミッション40は、エンジン11のクランク軸11aに同心の垂直な入力軸41、それぞれ機体幅方向に水平な動力伝達軸42、カウンタ軸43、中間軸44及び作業駆動軸13、走行駆動軸14を備える。
【0021】
トランスミッションケース12に対して、ケース前部の作業駆動軸13、カウンタ軸43、ケース中間部の動力伝達軸42、中間軸44並びにケース後部の走行駆動軸14を、前から後へこの順に、互いに平行に配列することで、これらの軸13,14,42〜44をトランスミッションケース12に回転可能に支持し且つ一括収納することができる。
【0022】
図3に示すように入力軸41は、クランク軸11aの下端部に主クラッチ45を介して連結したものである。入力軸41の下端部に設けた駆動ベベルギヤ46と、動力伝達軸42に設けた従動ベベルギヤ47とを噛み合わせることにより、入力軸41から動力伝達軸42へ動力を伝達することができる。主クラッチ45は、クラッチレバー32(図2参照)の操作によってオン・オフ切り換えするものであって、ドラムブレーキ及び遊星歯車の組合せ構造からなる。
【0023】
図4に示すように作業用伝動機構50は、動力伝達軸42から作業駆動軸13へ動力を伝達する機構であって、動力伝達軸42から作業用クラッチ51を介してカウンタ軸43へ動力を伝達するチェーン伝動機構52と、カウンタ軸43から作業駆動軸13へ回転方向を正転並びに逆転に転換しつつ動力を伝達する回転方向転換機構70とからなる。
【0024】
チェーン伝動機構52は、動力伝達軸42に相対回転可能に取付けた駆動スプロケット53と、カウンタ軸43に取付けた従動スプロケット54と、これら駆動・従動スプロケット53,54間に掛けたチェーン55とからなる。
作業用クラッチ51は、シフトレバー33(図1参照)の操作によって動力伝達軸42と駆動スプロケット53との間をオン・オフ切り換えする機構である。
【0025】
作業駆動軸13は、機体幅方向へ水平に延びた長い逆転駆動軸61と、逆転駆動軸61の長手途中に相対回転可能に取付けた左右の正転軸62,62(想像線にて示す。)と、逆転駆動軸61の左右両端に取付けた左右の逆転軸63,63(想像線にて示す。)とからなる。逆転駆動軸61は中実軸であり、正転軸62,62及び逆転軸63,63は筒状の軸である。なお、逆転駆動軸61、正転軸62,62及び逆転軸63,63は互いに同一心上(作業中心線Pc上)に配列することになる。121〜125はロータリ作業部15の耕耘爪である。
【0026】
回転方向転換機構70は、カウンタ軸43に取付けた逆転用駆動スプロケット71と、逆転駆動軸61に取付けた逆転用従動スプロケット72と、これら逆転用駆動・従動スプロケット71,72間に掛けたチェーン73と、カウンタ軸43の両端に取付けた左右の正転用駆動ギヤ74,74と、これらの正転用駆動ギヤ74,74に噛み合うように左右の正転軸62,62に個別に取付けた左右の正転用従動ギヤ75,75とからなる。
【0027】
一方、走行駆動軸14は、左の走行輪16を取付けた左車軸17Lと、右の走行輪16を取付けた右車軸17Rとからなる。左車軸17L及び右車軸17Rは互いに同心上(走行中心線Pd上)に配列することになる。
【0028】
走行用伝動機構80は、動力伝達軸42から走行駆動軸14へ動力を伝達する機構であって、動力伝達軸42から中間軸44へ変速切り換えしつつ動力を伝達する変速機構81と、中間軸44からチェーン伝動機構82を介して左車軸17L及び右車軸17Rへ動力を伝達する差動装置83(デファレンシャルギヤ装置83)と、差動装置83の差動作用を規制するデフロック機構84とからなる。
【0029】
変速機構81は、シフトレバー33(図1参照)の操作によって、前進の走行速度を3段階に切り換え且つ後進走行に切り換え可能な機構である。差動装置83は、作業機10が旋回するときに左の走行輪16と右の走行輪16との回転差を吸収し、円滑な旋回性を確保する機構である。デフロック機構84は、デフロック用レバー36(図1参照)の操作に応じて差動装置83の機能を停止させ、この結果、左車軸17Lと右車軸17Rとを一体的に回転させる機構である。
【0030】
以上の説明から明らかなように、シフトレバー33にて変速機構81及び作業用クラッチ51を操作することにより、(1)ロータリ作業部15及び走行輪16,16を共に停止状態、(2)走行輪16,16を3段階の走行速度で前進又は後進状態、(3)走行輪16,16を2段階の走行速度で前進させつつ、ロータリ作業部15を回転状態に切り換えることができる。
【0031】
ところで、図4に示すように、トランスミッションケース12のうち、(1)作業駆動軸13、カウンタ軸43及び回転方向転換機構70の組合わせからなる、作業動力分配部77を収納した前部の幅広の収納部分を前部収納部91と言い、(2)走行駆動軸14、動力伝達軸42、中間軸44、駆動・従動ベベルギヤ46,47及び走行用伝動機構80等を収納した後部の幅広の収納部分を後部収納部92と言い、(3)前部収納部91と後部収納部92との間でチェーン55を通した幅狭の部分を中間収納部93と言うことにする。前部収納部91の幅Wi1は、中間収納部93の幅Wi2よりも3〜4倍程度大きい(Wi1>Wi2)。同様に、後部収納部92の幅も中間収納部93の幅Wi2より大きい。
【0032】
ここで、図3に基づき作業駆動軸13、動力伝達軸42、カウンタ軸43、中間軸44及び走行駆動軸14の配置関係について詳しく説明する。
動力伝達軸42に対して、作業駆動軸13は前下方へ下がった位置にある。カウンタ軸43は、動力伝達軸42よりも下位で且つ作業駆動軸13よりも上位にある。この結果、カウンタ軸43は、動力伝達軸42と作業駆動軸13とを通る直線Si1よりも上位にある。
一方、動力伝達軸42に対して中間軸44は若干下位にあり、中間軸44に対して走行駆動軸14は若干下位にある。この結果、動力伝達軸42、中間軸44及び走行駆動軸14は若干後下がりに配列、すなわち概ね同じ高さにある。
【0033】
ここで、動力伝達軸42の中心線を駆動中心線Paとし、カウンタ軸43の中心線をカウンタ中心線Pbとする。作業駆動軸13の中心線を作業中心線Pcとし、走行駆動軸14の中心線を走行中心線Pdとする。各中心線Pa,Pb,Pc,Pdは互いに平行な水平線である。駆動中心線Paは、クランク軸11aの中心及び入力軸41の中心を通る鉛直線Pe(エンジン中心Pe)に直交する。
また、駆動中心線Paから作業中心線Pcまでの水平距離を作業側距離L11とし、駆動中心線Paから走行中心線Pdまでの水平距離を走行側距離L12とする。作業側距離L1は走行側距離L2よりも大きい(L11>L12)。
【0034】
このように作業駆動軸13、カウンタ軸43、動力伝達軸42、中間軸44及び走行駆動軸14を配列したので、トランスミッションケース12を図3に示すように側面視略「へ」の字状を呈した形状にすることができる。すなわち、トランスミッションケース12は、機体幅中心CL上(図4参照)を前後に延びるものであって、前後に長く且つ車幅方向に狭いケースであり、前半部分が前下がりに傾斜し、後半部分が略水平である。
【0035】
さらにトランスミッションケース12は、ケース下面12aのうち、カウンタ軸43と作業駆動軸13との間に凹部12bを設けたことを特徴とする。より具体的には、前半部分と後半部分との境に凹部12bを形成した。凹部12bは前後に円弧状を呈する。
【0036】
図5は本発明に係る作業駆動軸及びロータリ作業部を正面から見た断面図である。左右の正転軸62,62は、トランスミッションケース12の左右両側に隣接して配列し、一方、左右の逆転軸63,63は、左右の正転軸62,62の左右方向外側に隣接して配列している。なお、正転軸62,62は、逆転駆動軸61に嵌合している逆転軸63,63の一部(機幅中心CL側)を、相対回転可能に囲ったものである。
【0037】
ロータリ作業部15は、左右の正転軸62,62に備えた複数の正転爪121〜126と、左右の逆転軸63,63に備えた複数の逆転爪131,132とからなる。正転爪121〜126及び逆転爪131,132は耕耘爪である。正転爪121〜126及び逆転爪131,132を互いに逆に回転させて耕耘作業をなすことができる。以下、ロータリ作業部15について詳しく説明する。
【0038】
ロータリ作業部15は、機体幅方向に第1爪群101から第6爪群106までの6列に配置したものである。
第1爪群101は、左内側の正転軸62の取付板111に取付けた正転爪121〜126からなる。第2爪群102は、右内側の正転軸62の取付板112に取付けた正転爪121〜126からなる。第3爪群103は、左外側の逆転軸63における内側取付板113に取付けた逆転爪131,132からなる。第4爪群104は、右外側の逆転軸63における内側取付板114に取付けた逆転爪131,132からなる。第5爪群105は、左外側の逆転軸63における外側取付板115に取付けた逆転爪131,132からなる。第6爪群106は、右外側の逆転軸63における外側取付板116に取付けた逆転爪131,132からなる。
なお、各取付板111〜116は、板面を機体幅方向に向けた側面視略正方形の鋼板である。
【0039】
図6(a),(b)は本発明に係るロータリ作業部の構成図である。(a)は正面から見たロータリ作業部15を分解して表した図である。(b)は(a)における第1爪群101をb矢視方向から見て表した図である。なお、理解を容易にするために、上記図5に示す正転軸62,62及び逆転軸63,63については省略する。
【0040】
正転爪121〜126は、作業機10(図1参照)の前進方向Ruの前上から地面へ向う方向R1、すなわち正転方向R1に回転する爪である。逆転爪131,132は、前進方向Ruの後上から地面へ向う方向R2、すなわち逆転方向R2に回転する爪である。
【0041】
第1爪群101は、作業中心線Pcを基準にして計6個の正転爪121〜126の各基部を概ね井桁状に重ね合わせて1組とする。詳しく述べると、第1爪群101は、取付板111の下部から前方(すなわち、作業機10の前進方向Ru)へ延びる第1正転爪121、取付板111の上部から後方へ延びる第2正転爪122、取付板111の前部から上方へ延びる第3正転爪123、取付板111の後部から下方へ延びる第4正転爪124、取付板111の前部から後上方へ延びる第5正転爪125、取付板111の後部から前下方へ延びる第6正転爪126の組合せからなる。
【0042】
第1・第2正転爪121,122は、先端部121a,122aを第3爪群103側へ向けて湾曲しつつ逆転方向R2にも湾曲した、なた爪である。第3・第4正転爪123,124は、先端部123a,124aを第2爪群102側へ向けて湾曲しつつ逆転方向R2にも湾曲した、なた爪である。第5正転爪125は、第3正転爪123に対して、回転方向(正転方向R1)の直後に位相をずらして配置した残耕処理爪である。例えば、第3正転爪123に対して逆転方向R2(正転方向R1とは逆の方向)へ略45°だけ位相をずらして第5正転爪125を配置した。第6正転爪126は、第4正転爪124に対して、回転方向の直後に位相をずらして配置した残耕処理爪である。例えば、第4正転爪124に対して逆転方向R2へ略45°だけ位相をずらして第6正転爪126を配置した。
【0043】
このような第5・第6正転爪125,126は、先端部125a,126aを第2爪群102側へ向けて湾曲しつつ逆転方向R2にも湾曲した、なた爪である。
ここで、残耕処理爪とは、トランスミッションケース12(図5参照)の真下近傍に残った土を耕耘する耕耘爪のことである。従って、第5・第6正転爪125,126のことを、適宜「残耕処理爪125,126」と言うことにする。
【0044】
以下、第1爪群101を基準にして、第2爪群102〜第6爪群106について説明する。
第2爪群102は、第1爪群101と左右対称形に構成するとともに、第1爪群101に対して正転方向R1へ位相を約90゜ずらして配置した群である。すなわち、第2爪群102も第1爪群101と同様に作業中心線Pcを基準にして計6個の正転爪121〜126の各基部を概ね井桁状に重ね合わせて1組とする。
【0045】
第3爪群103は、作業中心線Pcを基準にして計2個の逆転爪131,132を相反するように配置して1組とする。すなわち、第3爪群103は、取付板113の前部から下方へ延びる第1逆転爪131、及び、取付板113の後部から上方へ延びる第2逆転爪132の組合せからなる。第1・第2逆転爪131,132は、先端部131a,132aを第5爪群105側へ向けて湾曲しつつ正転方向R1にも湾曲した、なた爪である。
【0046】
第4爪群104は、第3爪群103と左右対称形に構成するとともに、第3爪群103に対して逆転方向R2へ位相を約45゜ずらして配置した群である。第1・第2逆転爪131,132は、先端部131a,132aを第6爪群106側へ向けて湾曲しつつ正転方向R1にも湾曲した、なた爪である。
【0047】
第5爪群105は、第3爪群103と左右対称形に構成するとともに、第3爪群103に対して逆転方向R2へ位相を約90゜ずらして配置した群である。第1・第2逆転爪131,132は、先端部131a,132aを第3爪群103側へ向けて湾曲しつつ正転方向R1にも湾曲した、なた爪である。
【0048】
第6爪群106は、第4爪群104と左右対称形に構成するとともに、第4爪群104に対して正転方向R1へ位相を約90゜ずらして配置した群である。第1・第2逆転爪131,132は、先端部131a,132aを第4爪群104側へ向けて湾曲しつつ正転方向R1にも湾曲した、なた爪である。
【0049】
このように、各爪群101〜106の位相は互いに不一致である。但し、一致させることは任意である。なお、当然のことながら、各正転爪121〜126及び各逆転爪131,132の向きは、作業駆動軸13(図5参照)の回転に応じて変化する。
【0050】
以上の各爪群101〜106をまとめると、次の通りである。
図5及び図6に示すように、左右の正転軸62,62は、それぞれ4つの通常の正転爪121〜124の他に2つの残耕処理爪125,126をも備える。
これらの残耕処理爪125,126は、トランスミッションケース12の左右両側に隣接している。さらに残耕処理爪125,126は、複数の正転爪121〜124のうち、先端部123a,124aをトランスミッションケース12側へ向けた正転爪123,124に対し、正転方向R1の直後に位相をずらして配置するとともに、トランスミッションケース12に隣接して配置したものである。
【0051】
図5に示すように、ロータリ作業部を正面から見たときに、トランスミッションケース12側を向いた左右の正転爪123,123,124,124において、各先端部123a,123a,124a,124aの先端間の間隔、すなわち第1間隔をCr1と言う。また、左右の残耕処理爪125,125,126,126において、各先端部125a,125a,126a,126aの先端間の間隔、すなわち第2間隔をCr2と言う。
【0052】
第1間隔Cr1は、前部収納部91の幅Wi1より小さい。一方、正転爪123,123,124,124に対して、残耕処理爪125,125,126,126は、トランスミッションケース12側へ偏った構成(オフセットした構成)である。従って第2間隔Cr2は、第1間隔Cr1より小さく、中間収納部93の幅Wi2より若干大きい。
【0053】
複数の逆転爪131・・・,132・・・のうち、第3・第4爪群103,104の爪、すなわち、正転軸62,62に隣接した全ての逆転爪131,131,132,132は、その先端部131a,131a,132a,132aを、トランスミッションケース12側とは逆向き(図5の左右方向)に向けたものである。
【0054】
以上の構成からなるフロントロータリ式作業機10(管理機10)の作用について、図7及び図8に基づき説明する。図7(a)〜(d)は本発明に係るフロントロータリ式作業機の第1作用図である。
【0055】
図7(a)に示すように、左右の正転軸62,62にそれぞれ通常の正転爪121〜124(図5も参照)の他に残耕処理爪125,126をも備え、この残耕処理爪125,126をトランスミッションケース12の左右両側に隣接させたので、トランスミッションケース12のうち、幅寸法が大きい前部収納部91(動力分配部収納部分91)の真下近傍の土Erを耕耘することができる。
従って、トランスミッションケース12下の残耕をより低減することができ、この結果、耕耘の仕上がり性を高めることができる。しかも、トランスミッションケース12下も深く耕耘することができるので、フロントロータリ式作業機10の耕耘性を高めることができる。
【0056】
さらに本発明では、図7(a)に示すように、複数の正転爪121〜124のうち、先端部123a,124aをトランスミッションケース12側へ向けた正転爪123,124に対して、残耕処理爪125,126を正転方向R1の直後に位相をずらして配置するとともに、この耕処理爪125,126をトランスミッションケース12に隣接して配置したものである。
【0057】
図7(a),(b)に示すように、正転軸62,62を正転させたときに、トランスミッションケース12側に先端部123a,124aを向けた正転爪123,124は、先に前部収納部91(動力分配部収納部分91)の近傍の土Erに当って衝撃を加える。この結果、当った部分及びその付近の土Erには亀裂Cra・・・が入る。
【0058】
亀裂Cra・・・が入った部分には、図7(c)に示すように、引続いて連続的に耕処理爪125,126が当ることで衝撃が加わる。この結果、図7(a),(c)に示すように、土の亀裂Cra・・・が機幅中心CL側まで入ることで、前部収納部91の真下の土Erを容易に耕耘、粉砕することができる。
正転軸62,62の正転が進行することで、図7(c)の状態から図7(d)の状態へ進むことにより、トランスミッションケース12下も深く耕耘することができる。
【0059】
このようにして、トランスミッションケース12下の残耕をより一層低減することができ、この結果、耕耘の仕上がり性をより一層高めることができる。
【0060】
図8は本発明に係るフロントロータリ式作業機の第2作用図であり、図5に対応させて表した。
図8に示すように、左右の正転軸62,62に、それぞれ通常の正転爪121〜124の他に残耕処理爪125,126をも備えたので、耕耘された土Erは機幅中心CL側へ集り易くなる。
これに対して本発明では、複数の逆転爪131,132のうち、正転軸62,62に隣接した全ての逆転爪131,132の先端部131a,132aを、トランスミッションケース12側とは逆向きにすることにより、これらの逆転爪131,132で耕耘された土Erを機幅方向の外側(図8の左右方向)へ分散させることができる。この結果、機幅中心CL側へ集る土Erを、外側へ分散する土Erで相殺することができる。従って、耕耘された土Erが機幅中心CL側に盛上がらずに概ね平坦になるので、耕耘の仕上がり性をより一層高めることができる。
【0061】
なお、本発明は実施の形態では、動力源はエンジン11に限定されるものではなく、例えば電動モータであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の管理機は、動力源11の下方にトランスミッションケース12を配置し、トランスミッションケース12の前部に正転爪121〜124及び逆転爪131,132からなるロータリ作業部15を設け、トランスミッションケース12の後部に左右の走行輪16,16を設けたフロントロータリ式作業機に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】発明に係るフロントロータリ式作業機(管理機)の左側面図である。
【図2】本発明に係るフロントロータリ式作業機の平面図である。
【図3】本発明に係るトランスミッションケース周りを左側方から見た断面図である。
【図4】本発明に係るトランスミッションケース及び動力伝達機構を上から見た断面図である。
【図5】本発明に係る作業駆動軸及びロータリ作業部を正面から見た断面図である。
【図6】本発明に係るロータリ作業部の構成図である。
【図7】本発明に係るフロントロータリ式作業機の第1作用図である。
【図8】本発明に係るフロントロータリ式作業機の第2作用図である。
【図9】従来のロータリ式作業機の概要図である。
【符号の説明】
【0064】
10…管理機(フロントロータリ式作業機)、11…動力源(エンジン)、12…トランスミッションケース、13…作業駆動軸、14…走行駆動軸、15…ロータリ作業部、16…走行輪、40…動力伝達機構(トランスミッション)、42…動力伝達軸、43…カウンタ軸、62…正転軸、63…逆転軸、91…動力分配部収納部分(前部収納部)、121〜124…正転爪、121a〜124a…正転爪の先端部、125,126…残耕処理爪、125a,126a…残耕処理爪の先端部、131,132…逆転爪、131a,132a…逆転爪の先端部、Cra…亀裂、Er…土、R1…正転方向、R2…逆転方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッションケースの左右両側に隣接した左右の正転軸と、これら左右の正転軸の左右方向外側に隣接した左右の逆転軸とを同一心上に配列し、前記左右の正転軸に複数の正転爪を備え、前記左右の逆転軸に複数の逆転爪を備えることで、動力源の動力を、トランスミッションケースに収納された動力伝達機構を介して左右の正転軸及び左右の逆転軸に伝達して、正転爪及び逆転爪を回転させる管理機において、
前記左右の正転軸は、前記トランスミッションケースの真下近傍に残った土を耕耘する残耕処理爪を、前記トランスミッションケースの左右両側に隣接させて備えたことを特徴とする管理機。
【請求項2】
前記残耕処理爪は、前記複数の正転爪のうち先端部を前記トランスミッションケース側へ向けた正転爪に対し、正転方向の直後に位相をずらして配置するとともに、前記トランスミッションケースに隣接して配置したことを特徴とする請求項1記載の管理機。
【請求項3】
前記複数の逆転爪のうち前記正転軸に隣接した全ての逆転爪は、その先端部を、前記トランスミッションケース側とは逆向きに向けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の管理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−55129(P2006−55129A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242774(P2004−242774)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】