説明

管理薬物治療のためのポリマーシステム

結合したアルキルエーテルセグメントを高い割合で含むポリマー組成物は、薬物および医薬試剤を制御放出するためのマトリックスおよびメンブランとなる。このポリマー組成物は、エチレン性不飽和アルキルエーテルを含むモノマー類の重合によって生成される。エチレン性不飽和アルキルエーテル含有モノマー類とコモノマー類との共重合体も開示する。薬物を担持させた本発明のポリマー組成物は、制御放出デバイスの構築において特に有用であることが分かった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府は、本発明についてペイドアップライセンス(paid-up license)を有し、また特許権所有者に対して、国立衛生研究所による承認番号第2R44EY13479−02号の約定により規定の妥当な合意に基づき、他者にライセンスを与えるよう、限定的状況下において請求する権利を有する。
【0002】
本発明は、ポリマー組成物と、治療的活性試剤を制御投与するための方法およびデバイスに関する。より詳細には、本発明は、薬物投与デバイスとして所定の放出特性を持つよう設計したポリマー組成物に関する。望ましい実施の形態において、本発明は、哺乳類である患者に対し長期に亘って制御および連続投与するためのデバイスおよび系(システム)に関する。本発明のもうひとつの態様は、このようなデバイスの製造法に関する。
【背景技術】
【0003】
制御放出技術は1960年代に現われ、この技術は、特定の目的を果たすためにシステムにいくつかの活性試剤(active agent)を適用する際に共通する様々な問題を解決する一方、この試薬が引き起こし得る他の何らかの反応を起こさないものと期待された。制御放出を行うための多くの技術が開発され、また検討されており、それらの多くは商業用デバイスまたは処方物として考えられ、あるいは実現されて、既に市販されており、あるいは近々上市される。活性試剤の制御放出に関する概念の大部分は、特許、雑誌、書籍、および講演集録などの文献に述べられている。
【0004】
制御放出技術には広く様々な用途が考えられるが、その大きな部分を医療関連または病害虫管理が占める。制御放出処方物における主要な問題の一つは、状況に最も適合した放出特性を保ちつつ、活性試剤とそのキャリヤとを経済的に混合する方法である。この2つの要求はしばしば相反するため、妥協を余儀なくさせる。所望とする放出特性が活性試剤の一定速度での送達である場合があるが、これはどれだけの量の活性試剤が放出されまたは残存しているかに依存しないため、化学速度論的には“ゼロ次”過程として知られる。しかし、制御放出技術に用いられるデバイスおよび処方物の多くは、この目的に適うものではない。
【0005】
経口投与薬物において成された進展より明らかなように、薬物送達に関する研究の当初から、ポリマー類と活性試剤類とは密接に関連している。経口投与した薬物の胃腸管内での放出制御には、合成および天然いずれのポリマーも用いられる。これらの薬物は多くの場合、丸剤、錠剤、またはカプセル剤として投与される。経口投与での投薬法に用いられるポリマー類は一般に水溶性または生分解性のいずれかである。
【0006】
一方、多少の例外はあるが、非経口投与による投薬法での薬物送達に関する標準的な手法は、例えば、いくつか名を挙げるならば、ポリヒドロキシエチル=メタクリラートヒドロゲル類、シリコーン類、およびエチレン−酢酸ビニルなどの一般的なポリマーマトリックスに、選定した薬物を担持させるものである。放出速度の研究から、理想に最も近い性能特性となるよう、標準ポリマーシステムの一つを選んだ。この手法は実際的であるが、殆ど最良の結果が得られない。しかし、何年にも亘り多くの制御薬物送達デバイスが上市されている。これらのデバイス類の一部をウー(Wu)が挙げており、これを下の表1に示す。



【表1】

【0007】
制御放出系(システム)は、活性試剤の放出メカニズムに従って、簡単に、物理的または物理化学的システム、あるいは、生化学的システムに分類することができる。
【0008】
<物理的または物理化学的システム>
物理的または物理化学的システムとしては、リザーバシステム、マトリックスまたはモノリシックシステム、膨潤制御システムまたはヒドロゲル、浸透システムまたは浸透ポンプ、経皮システム、およびリポソームシステムが挙げられる。
【0009】
<化学的または生化学的システム>
生分解性ポリマーシステム−このカテゴリーには生分解性ポリマーシステムと生物癒着性システムが含まれる。
【0010】
物理化学的システムでは、薬物放出が、拡散、浸透、溶解などの物理化学的過程によって完全に支配される。薬物は、ポリマーメンブランまたは固定化メンブラン中に含まれ、あるいはポリマーまたはその他のキャリヤ材料中に均一に溶解/分散していて、キャリヤ材料を通る薬物の拡散、および/またはキャリヤの分解によって制御された放出を示す。薬物放出は、活性成分により生じる、溶媒の投薬体マトリックスへの拡散を制御する浸透圧によって活性化できる。
【0011】
モノリシックマトリックスは、制御薬物送達に用いられる最も簡単で最も安価なシステムである。これらのシステムの製造工程は一般的な投薬体のそれと同じであり、非常に再現性が高い。薬物をポリマー材料と混合後、これらを一緒に型込め、押し出し、または鋳込みする(casting)ことにより、ポリマーまたは他のキャリヤ材料に薬物を均一に分散させる。ポリマー材料の隙間が薬物の放出を制御する。マトリックス中における薬物の拡散制御の程度は、ポリマーと薬物の性質により決まる。理論的には、薬物はポリマーマトリックス中において2つの状態の一方で存在することができる。薬物がポリマー中に完全に溶解しているか、ポリマーマトリックス中に不連続な固体の薬物粒子として単に分散しているかである。ポリマー中における薬物の溶解度より薬物濃度が遙かに高い場合、後者の状態が優勢である。前者の状態では、薬物はポリマー中にその溶解度で、または溶解度以下で溶解している。2つの状態における薬物の放出動態は異なる。一般に、この用途に用いられるポリマー類は、周囲の環境変化に対応しないものであるか、あるいはゴム状ポリマーである。ゴム状のポリマーはその環境の変化に素早く対応して適合し、ポリマーマトリックス中の全ての物質の拡散過程はフィッキアン(Fickian)である。ポリマーマトリックスからの薬物の拡散に加え、ポリマーの他の物理化学的性質も放出動態に影響する。モノリシックマトリックス系からの放出特性はポリマーの性質、添加物、薬物、およびシステムの形状に応じて変化する。モノリシックマトリックスシステムの放出動態の制御は、他のシステム、つまり被覆したシステムよりも容易である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本件では、動物およびヒトに用いるためのポリマー製品の製造を提示する。より詳細には、本件は、薬物または活性試剤の放出を制御および所定の挙動となるよう調節するデバイスの形とした、ポリマーメンブラン、マトリックス、またはキャリヤに関する。特に、本件は、医学的疾患または障害の治療に用いることのできる治療用活性試剤を含む、デバイスおよびコンポーネントに関する。
【0013】
驚くべきことに、高い割合のアルキルエーテル基を含むポリマー組成物が、広範な薬物を長期に亘って制御放出するデバイスの構築に有用であることが分かった。これは、現在の薬物送達系(ドラッグデリバリーシステム)に見られない多くの長所を持つ。
【0014】
本発明のアルキルエーテルポリマー類は、リザーバシステム、マトリックスまたはモノリシックシステム、膨潤制御システム、浸透システムまたは浸透ポンプ、および経皮システムなど、多くの制御薬物送達デバイスに使用できる。
【0015】
従って、目的の一つは、局所または全身に活性試剤を投与して生理学的または薬学的効果を生じ、更に、先行技術によるデバイスを超えた技術的進歩を示すデバイスの提示である。
【0016】
もうひとつの目的は、その使用において治療計画の最初と最後だけに処置を必要とする、標的部位に特定期間、活性試剤を投与するための投薬治療法の提示である。
【0017】
更に別の目的は、経皮吸収パッチ、浸透ポンプ、眼内挿入物、および眼内イプラントの形とした、薬物送達デバイスの提示である。
【0018】
また更に別の目的は、より優れた機械的および物理的性質を備えたこのような薬物投与デバイスの製造方法を述べることである。
【0019】
本発明の組成物は、様々な眼疾患および障害、例えば感染、炎症、緑内障、糖尿病性黄斑浮腫、および加齢性黄斑変性などの治療における眼科用薬物送達デバイスとした場合に特に有用であることが分かった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本件に開示のデバイスの実施により、予想外にも、例えば拡散による医薬組成物(例えば薬物)などの活性試剤の制御放出のためのデバイスの製造に、ある種のポリマー材料が使用できることが分かった。本願においては、“医薬試剤”または“薬物”とは、例えば医薬などの多くの様々な形とした多種類の活性試剤を指す。
【0021】
本件に開示のポリマー材料は、高濃度の薬物を担持するよう処方でき、また長期に亘って放出を示すため、その使用とそれによって実現される長所は予想を超えるものである。更に、ポリマー材料は、親水性および疎水性いずれのタイプの様々な薬物に合うように処方することができる。本発明のポリマー材料はヒトの組織に適合性である。すなわち、これらの材料は、その場で分解することなく、物質の吸収がなく、また設置した部位の感受性の高い組織に悪影響を及ぼすことがなく、また長期に亘って系を保持するものである。
【0022】
本件に開示の全ての例示的なデバイスの目的に適したポリマー類としては、ポリマー類、共重合体類などが挙げられ、これらを製造し、また、鋳込み(casting)、型込み、押出し、または当該技術で公知の他の加工法で所望の形に成形する。
【0023】
ある例示的な実施の形態に従って、ポリマー材料が、薬物の制御送達のためのマトリックスまたはメンブランとして適していることを示す。ポリマーマトリックスまたはメンブランを形成するポリマー材料は、次の構造式を持つアルキルエーテルセグメントを含むものである。
【化1】

式中、nは2〜約10であり、mは1〜約50である。
【0024】
アルキルエーテルセグメントは、重合反応に関与することが可能で一般に次の構造を持つ、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を含む。
【化2】

式中、Pは、次の中から選ばれる重合可能なエチレン性不飽和基である。
【化3】

Yは、次の中から選ばれるスペーサ基である(但し、これらに限定するものではない)。
【化4】

【0025】
エチレン性不飽和アルキルエーテル組成物の例としては次のものが挙げられる(但し、これらに限定するものではない)。
【化5】

式中、Pは重合可能なエチレン性不飽和基であり、
Yはスペーサ基であり、
Tは末端基であって、アルキル基またはP−Y−基であり、
xは2〜約6の整数であり、
yは2〜約8の整数であり、
nは0〜約50の整数である。
【0026】
本発明の組成物での使用に適したアルキルエーテル含有モノマー類の例としては次のものが挙げられる。
【化6】

式中、Qはそれぞれアルキル基またはP−Y−であり、
Pは重合可能なエチレン性不飽和基であり、
Yはスペーサ基であり、
Rは水素またはアルキルであり、
少なくとも1つのQ基はP−Y−であって、
x、y、およびzはそれぞれ1〜約50の整数である。
あるいは、
【化7】

式中、Qはそれぞれアルキル基またはP−Y−であり、
Pは重合可能なエチレン性不飽和基であり、
Yはスペーサ基であり、
w、x、yおよびzはそれぞれ1〜約50の整数であって、
少なくとも1つのQ基はP−Y−である。
あるいは、
【化8】

式中、Qはそれぞれアルキル基またはP−Y−であり、
Pは重合可能なエチレン性不飽和基であり、
Yはスペーサ基であり、
w、x、y、およびzはそれぞれ1〜約50の整数であって、
少なくとも1つのQ基はP−Y−である。
あるいは、
【化9】

式中、Qはそれぞれアルキル基またはP−Y−であり、
Pは重合可能なエチレン性不飽和基であり、
Yはスペーサ基であり、
xおよびyはそれぞれ1〜約50の整数であって、
少なくとも1つのQ基はP−Y−である。
あるいは、
【化10】

式中、Tは末端基であって、アルキル基であり、
nは1〜約50の整数である。
あるいは、
【化11】

式中、Tは末端基であって、アルキル基であり、
nは1〜約50の整数である。
あるいは、
【化12】

式中、Rは水素またはメチルであり、
Tは末端基であって、アルキル基であり、
nは1〜約50の整数である。
あるいは、
【化13】

式中、Tは末端基であって、アルキル基であり、
nおよびmはそれぞれ1〜約50の整数である。
あるいは、
【化14】

式中、nは1〜約50の整数である。
あるいは、
【化15】

式中、Rは水素またはメチルであり、
nは1〜約50の整数である。
【0027】
ある実施の形態によれば、望ましいアルキルエーテル含有モノマー類としては次のものが挙げられる。
【化16】

式中、Rは水素またはメチルであり、
Tは末端基であって、アルキル基であり、
nは1〜約50の整数である。
あるいは、
【化17】

式中、Rは水素またはメチルであり、
Tは末端基であって、アルキル基であり、
nは1〜約50の整数である。
あるいは、
【化18】

式中、Rは水素またはメチルであり、
nは1〜約50の整数である。
あるいは、
【化19】

式中、Rは水素またはメチルであり、
nは1〜約50の整数である。

より望ましいアルキルエーテル含有モノマー類としては次のものが挙げられる。
【化20】

式中、Rは水素またはメチルであり、
Tは末端基であって、アルキル基であり、
nは1〜約50の整数である。
あるいは、
【化21】

式中、Rは水素またはメチルであり、
nは1〜約50の整数である。
【0028】
最も望ましいアルキルエーテル含有モノマー類としては次のものが挙げられる。
メトキシエチル=アクリラートおよびメタクリラート
メトキシプロピル=アクリラートおよびメタクリラート
メトキシブチル=アクリラートおよびメタクリラート
メトキシエトキシエチル=アクリラートおよびメタクリラート
エトキシエチル=アクリラートおよびメタクリラート
エトキシエトキシエチル=アクリラートおよびメタクリラート
トリエチレングリコールモノメチルエーテル=アクリラートおよびメタクリラート
ジ(エチレングリコール)2−エチルヘキシルエーテル=アクリラートおよびメタクリラート
エチレングリコール=ジアクリラートおよびジメタクリラート
ジエチレングリコール=ジアクリラートおよびジメタクリラート
トリエチレングリコール=ジアクリラートおよびジメタクリラート
テトラエチレングリコール=ジアクリラートおよびジメタクリラート
ポリエチレングリコール=ジアクリラートおよびジメタクリラート
1,4−ブタンジオール=ジアクリラートおよびジメタクリラート
ジ(1,4−ブタンジオール)=ジアクリラートおよびジメタクリラート
トリ(1,4−ブタンジオール)=ジアクリラートおよびジメタクリラート
テトラ(1,4−ブタンジオール)=ジアクリラートおよびジメタクリラート
ポリ(1,4−ブタンジオール)=ジアクリラートおよびジメタクリラート
【0029】
更に、ポリアルキルエーテルジオール類から調製したマクロマー類(macromers)も用いられる。ジオールを、2モル当量のジイソシアナート、例えば、ジイソホロンジイソシアナートまたはトルエンジイソシアナートと反応させる。このプレポリマーは、末端にエチレン性反応基を持つ。ここに述べるビニル反応性マクロマー類は本発明の実行において有用である。
【0030】
ポリマーマトリックスおよびメンブランの調製においては、多くの場合、アルキルエーテル含有モノマーと1種類以上のコモノマー類との共重合体の形成が望ましい。これらの共重合体マトリックスまたはメンブランからの薬物放出特性は、コモノマー(類)を選ぶことによって大きく変えることができる。例えば、疎水性コモノマー(類)をアルキルエーテル含有モノマーと共に用いると、疎水性である薬物と相溶性のマトリックスまたはメンブランができる。一方、親水性コモノマー(類)を用いると、親水性薬物とより相溶性のマトリックスおよびメンブランが生成する。本発明に述べるマトリックスまたはメンブランからの薬物放出特性は架橋度によっても変えることができる。架橋度の高いマトリックスまたはメンブランは、マトリックスまたはメンブランからの薬物の拡散を妨げるため放出速度は遅くなる。
【0031】
薬物放出デバイスの製造に用いるポリマー類中に存在可能なモノマー類は、共重合可能などのようなビニルモノマーであっても良い。以下は使用可能なコモノマー類の代表的な群であるが、これは例示のためであって、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0032】
適当なコモノマー類としては、アルキル=アクリラート類およびメタクリラート類、特に、C〜C20アルキル=アクリラート類およびC〜C20アルキル=メタクリラート類、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、等;アルカン酸(alkonoic)ビニルエステル類、特に、C〜Cアルカン酸ビニルエステル類、例えば、酢酸ビニル、酪酸ビニル、等;アルケン類、特に、C〜Cアルケン類、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、等;スチレン類、特に、スチレンおよびα−メチルスチレン;ビニルエーテル類、特に、C〜Cアルキル=ビニル=エーテル類、例えば、メチル=ビニル=エーテル、エチル=ビニル=エーテル、ブチル=ビニル=エーテル、等;ジアルキル=マレアート類、フマラート類、またはイタコナート類、特に、C〜Cジアルキル=マレアート類、フマラート類、またはイタコナート類、例えば、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、等;アリルエーテル類およびエステル類、特に、アリル=C〜Cアルキル=エーテル類およびC〜Cアルカン酸アリルエステル類、例えば、アリル=メチル=エーテル、アリル=エチル=エーテル、酢酸アリル、等;パーフルオロC〜Cアルキル=アクリラート類またはメタクリラート類;パーフルオロアルコキシル化ビスアクリラート類またはメタクリラート類;ポリまたはオリゴアルキルシロキサン=アクリラート類またはメタクリラート類、等が挙げられる。
【0033】
また、ポリマーの薬物放出特性、安定性、および機械的性質を変えるため、少量の架橋剤が一般に用いられる。適当な架橋剤としては、例えば、C〜Cアルキレン=ジメタクリラート類およびアクリラート類、グリセリン=トリメタクリラート、アリル=アクリラートまたはメタクリラート、ジビニルベンゼン、ポリまたはオリゴアルキルシロキサン=ジアクリラートまたはメタクリラート、等が挙げられる。
【0034】
適当な親水性コモノマー類は、ヒドロキシル置換低級アルキル=アクリラート類およびメタクリラート類、アクリルアミド、メタクリルアミド、(低級アルキル)=アクリルアミド類およびメタクリルアミド類、N,N−ジアルキル=アクリルアミド類、エトキシル化アクリラート類およびメタクリラート類、ポリエチレングリコール=モノ(メタ)アクリラート類およびポリエチレングリコールモノメチルエーテル=(メタ)アクリラート類、ヒドロキシル置換(低級アルキル)=アクリルアミド類およびメタクリルアミド類、ヒドロキシル置換低級アルキル=ビニル=エーテル類、ビニルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−ビニルピロール、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニルオキサゾリン、2−ビニル−4,4−ジアルキルオキサゾリン−5−オン、2−および4−ビニルピリジン、アミノ(低級アルキル)−(“アミノ”には4級アンモニウムも含まれる)、モノ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)、およびジ(低級アルキルアミノ)(低級アルキル)=アクリラート類およびメタクリラート類、アリルアルコール、等である。好ましいものとしては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリルアミド、ジメチル=アクリルアミド、メタクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル=アクリラートおよびメタクリラート、3−(ジメチルアミノ)プロピル=アクリラートおよびメタクリラート、2−(ジエチルアミノ)エチル=アクリラートおよびメタクリラート、3−(ジメチルアミノ)プロピル=アクリルアミドおよびメタクリルアミド、ヒドロキシル置換低級アルキル=アクリラート類およびメタクリラート類、ヒドロキシル置換(低級アルキル)=アクリルアミド類およびメタクリルアミド類、および合計3〜5個の炭素原子を持つビニル性不飽和カルボン酸類、特にアクリル酸およびメタクリル酸が挙げられる。
【0035】
適当なフッ素化モノマー類としては、1,1,2,2−テトラヒドロパーフルオロデシル=アクリラートおよびメタクリラート、1,1,2,2−テトラヒドロパーフルオロオクチル=アクリラートおよびメタクリラート、および1,1,2,2−テトラヒドロパーフルオロオクチル=メタクリルアミドまたはアクリルアミド、2,2,2−トリフルオロエチル=アクリラートおよびメタクリラート、ヘキサフルオロイソプロピル=アクリラート、ヘキサフルオロイソプロピル=メタクリラート、パーフルオロシクロヘキシル=メタクリラート、および2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン;フルオロアルキル置換アミドアルコール類、例えば、C15CON(C)COH のアクリラート類およびメタクリラート類;スルホンアミドアルコール類、例えば、C17SON(CH)−COH および C17SON(C)−COH のアクリラート類およびメタクリラート類;パーフルオロエーテルアルコール類、例えば、C−O(CO)CF(CF)−CHOH または (CFCFO(CFCF−CHCHOH のアクリラート類およびメタクリラート類;および、CF(CF)fCHCHSCHCHCHOHの構造を持つフッ素化チオエーテルアルコール類のアクリラート類及びメタクリラート類;スルホンアミドアミン類、例えば、RfSONH(CH)CHCHN(CH)−(CHNH および RfCHSONH(CH のアクリラート類およびメタクリラート類;アミドアミン類、例えば、RfCONH(CHNH のアクリラート類およびメタクリラート類;更に、このような前述のフッ素化アルコール類及びアミン類と、2−イソシアナトエチル=アクリラートまたはメタクリラート、あるいは、m−イソプロペニル−1,1−ジメチルベンジル=イソシアナートとの反応より得られるビニルモノマー類が挙げられる。
【0036】
適当なシリコーン含有ビニルモノマー類は、2〜10個のSi原子を含むオリゴシロキサニル−シリルアルキル=アクリラート類およびメタクリラート類である。具体例としては、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピル=(メタ)アクリラート、トリフェニルジメチル−ジシロキサニルメチル=(メタ)アクリラート、ペンタメチル−ジシロキサニルメチル=(メタ)アクリラート、tert−ブチル−テトラメチル−ジシロキサニルエチル=(メタ)アクリラート、メチル−ジ(トリメチルシロキシ)シリルプロピル−グリセリル=(メタ)アクリラート;ペンタメチル−ジシロキサニルメチル=メタクリラート;ヘプタメチル−シクロテトラシロキシメチル=メタクリラート;ヘプタメチル−シクロテトラシロキシプロピル=メタクリラート;(トリメチルシリル)−デカメチル−ペンタシロキシプロピル=メタクリラート;ドデカメチル−ペンタシロキシプロピル=メタクリラートが挙げられる。
【0037】
共重合は、生成するポリマーを、活性試剤を制御拡散するものとするために好ましい手段であるが、可塑剤を用いることもできる。可塑剤を本発明のポリマーマトリックスまたはメンブランに混合すると、活性試剤の拡散特性が変わる。可塑剤をポリマーマトリックスまたはメンブランに混合すると、活性試剤の拡散速度が上がると予想される。可塑剤の使用はポリマーマトリックスまたはメンブランの機械的性質も変える。本発明の実施において使用可能な可塑剤の代表的な種類としては、アジピン酸エステル類、クエン酸エステル類、マレイン酸エステル類、フタル酸エステル類、トリメリト酸エステル類が挙げられる(但し、これらに限定するものではない)。
【0038】
薬物送達のひとつの用途、すなわち経皮投与においては、浸透増強剤を用いても良い。浸透増強剤は皮膚などの組織の細胞構造を緩めて、活性試剤が組織構造に拡散し易くする。本発明の実施において使用可能な浸透増強剤の代表的な種類としては、スルホキシド類、アセトアミド類、ホルムアミド類、トルアミド類(toluamides)、ピロリドン類、および高級飽和および不飽和カルボン酸類が挙げられる(但し、これらに限定するものではない)。高級カルボン酸類は、チモロールなどのアミンを含む薬物と酸/塩基対を形成するため、特に興味深い。例を挙げるならば、ヘプタン酸、オクタン酸、ラウリン酸、2−エチルヘキサン酸、ソルビン酸、およびエライジン酸は、この機能において有用である。
【0039】
本発明のアルキルエーテル含有モノマー類単独での、あるいはコモノマー類との重合は、エチレン性不飽和モノマー類の重合において一般的に用いられているような、活性化エネルギーを加えると遊離基を発生する開始剤を用いて行うことができる。遊離基開始剤の中でも特に、アゾ化合物類、有機過酸化物類、有機ヒドロペルオキシド類など、一般的な熱活性化開始剤である。このような開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、過安息香酸tert−ブチル、ペルオキシ二炭酸(peroxydicarbonate)ジイソプロピル、クメンヒドロペルオキシド、アゾビス(イソブチロニトリル)、等が挙げられる。一般に、約0.01〜5重量%の熱的開始剤を用いる。
【0040】
UV開始重合は、光開始剤を用いて行う。このような開始剤は公知であり、例えば、重合技術においては、例えば、カルバート(Calvert)およびピッツ(Pitts)著,“Photochemistry”, John Wiley & Sons (1966)、第2章に述べられている。望ましい開始剤は光開始剤であって、これは組成物に光を照射すると重合を促進する。このような開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾイン=メチル=エーテル、ベンゾイン=エチル=エーテル、ベンゾイン=イソプロピル=エーテル、ベンゾイン=イソブチル=エーテル、およびα−メチルベンゾインなどの、アシロインとその誘導体;ベンジルおよびビアセチルなどのジケトン類;アセトフェノン、α,α,α−トリブロモアセトフェノン、α,α−ジエトキシアセトフェノン(DEAP)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、o−ニトロ−α,α,α−トリブロモアセトフェノン、ベンゾフェノン、およびp,p’−テトラメチルジアミノベンゾフェノンなどのケトン類;ベンジル−(O−エトキシカルボニル)−α−モノオキシムなどのα−アシルオキシムエステル類;ベンゾフェノン/N−メチルジエタノールアミン、ベンゾフェノン/トリブチルアミン、およびベンゾフェノン/ミヒラーケトンなどの、ケトン/アミン配合物;ベンジル=ジメチル=ケタール、ベンジル=ジエチル=ケタール、および2,5−ジクロロベンジル=ジメチル=ケタールなどの、ベンジルケタール類が挙げられる。通常、光開始剤の使用量は全組成物の約0.01〜5重量%である。
【0041】
可視光重合は、可視光、特に青色光で活性化される開始剤を用いて行う。具体例としては、フェロセニウム塩類、アリールジアゾニウム塩類、ジアリールヨードニウム塩類、およびトリアリールスルホニウム塩類、カンファーキノン系および染料/共開始剤系が挙げられる。
【0042】
重合は、一般的な方法でのバルクで、あるいは溶媒存在下で行うことができる。薬物などを加える場合には、これらの成分を相溶化させるために溶媒が必要なことがある。コモノマー類および薬物がある場合、溶媒の量はそれらの性状と相対量に応じて変わる。相溶化に有用な溶媒類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサンなどのケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはエチルセロソルブなどのアルコール類;エチレングリコールまたはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸エチルまたは酢酸イソプロピルなどのエステル類;ジメチルスルホキシド;N−メチルピロリドン;N,N−ジメチルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド、等が挙げられる。
【0043】
重合は型の中で行うことができる。型は、プラスチックス、ガラス、金属、あるいはその他適当な材料から成るもので、例えば、フィルム、シート、または棒状など、どのような形状であっても良い。
【0044】
モノマー混合物は、そのまま重合させても、あるいは含まれる薬物と共に重合させても良い。重合後、キャスティング(casting)を型から外し、存在する溶媒を従来の手法で全て除去する。
【0045】
重合混合物に薬物が含まれない場合には、薬物担持工程が必要である。これは通常、適当な溶媒(例えば、マトリックスポリマーを膨潤させるもの)に薬物を溶解し、この溶液中にマトリックスポリマーを置いて薬物を取り込ませることによって行う。平衡に達したら、薬物を担持したマトリックスを溶媒から取り出して乾燥させる。
【0046】
本発明の送達デバイスと共に使用可能な適当な薬物または活性試剤としては次のものが挙げられるが、これは例示のためであって制限するものではない。
【0047】
抗感染薬:テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシンB、グラミシジン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、およびエリスロマイシンなどの抗生物質;スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾールなどのスルホンアミド類;オフロキサシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、スポルフロキサシン(sporfloxacin)などのキノロン類;アミカシン、トブラマイシン、ゲンタマイシンなどのアミノ配糖体類;セファロスポリン類;抗生物質の組み合わせ;イドクスウリジン、トリフルリジン、ビダラビン、シドフォビル、ホスカネットナトリウム、ガンシクロビルナトリウム、およびアシクロビルなどの抗ウイルス薬;アンホテリシンB、ナイスタチン、フルシトシン、フルコナゾール、ナタマイシン、ミコナゾール、およびケトコナゾールなどの抗真菌薬;ニトロフラゾン、およびプロピオン酸ナトリウムなどのその他の抗感染薬。
【0048】
抗アレルギー薬:アンタゾリン、メタピリレン、クロルフェニラミン、ピリラミンおよびプロフェンピリダミン、エメダスチン、ケトロラク、レボカバスチン、ロドキサミド、ロテプレドノール、ナファゾリン/アンタゾリン、ナファゾリン/フェニラミン、オロパタジン、およびクロモリンナトリウムなど。
【0049】
抗炎症薬:ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン21−リン酸、フルオシノロン、メドリゾン、プレドニゾロン、プレドニゾロン21−リン酸、酢酸プレドニゾロン、フルオロメトロン、酢酸フルオロメトロン、メドリゾン、ロテプレドノールエタボネート、リメキソロン(rimexolone)など。
【0050】
非ステロイド系抗炎症薬:フルルビプロフェン、スプロフェン、ジクロフェナク、インドメタシン、ケトプロフェン、およびケトロランクなど。
【0051】
鬱血除去薬:フェニレフリン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、およびテトラヒドラゾリンなど。
【0052】
縮瞳薬および抗コリンエステラーゼ薬:ピロカルピン、サリチル酸エセリン、カルバコール、フルオロリン酸ジイソプロピル、フォスフォリンアイオダイド、および臭化デメカリウムなど。
【0053】
散瞳薬:硫酸アトロピン、シクロペントレート、ホマトロピン、スコポラミン、トロピカミド、オイカトロピン、およびヒドロキシアンフェタミンなど。
【0054】
更に、次のような活性試剤も本発明のデバイスにおいて有用である。
【0055】
抗緑内障薬:エピネフリンおよびジピベフリン、ホウ酸エピネフリンなどの、アドレナリン作用薬;レボブノロール、ベタキソロール、メチプラノロール、チモロール、カルテオロールなどの、β−アドレナリン遮断薬;アプラクロニジン、クロニジン、ブリモニジンなどの、α−アドレナリン作用薬;ピロカルピン、カルバコールなどの副交感神経作用薬;イソフルロフェート、臭化デメカリウム、ヨウ化エコチオフェートなどの、コリンエステラーゼ阻害薬;ジクロルフェナミド、アセタゾラミド、メタゾルアミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド(brinzolamide)、ジクロルフェナミドなどの、炭酸脱水素酵素阻害薬;ラタノプロスト、トラバタン(travatan)、ビマトプロスト(bimatoprost)などの、プロスタグランジン類;ジコノソイド類(diconosoids)、等、および、例えば、β−アドレナリン遮断薬と炭酸脱水素酵素阻害薬などの、上記の物質の組み合わせ、など。
【0056】
抗白内障薬:トレレスタット(tolerestat)、スタトール(statol)、ソルビニルなどの、アルドースレダクターゼ阻害薬;アスコルビン酸、ビタミンEなどの、抗酸化薬;グルタチオンおよび亜鉛などの栄養補助物、など。
【0057】
潤滑剤:グリセリン、プロピレングリコール、 ポリエチレングリコール、およびポリグリセリン類など。
【0058】
本発明は、医薬試剤を含み、特定の症状および疾病の治療のための医療用デバイスとしたポリマーキャリヤを提示する。このため本発明を、ある実施の形態において、哺乳動物に制御および維持しながら治療的効果与えるため、薬剤を含むデバイスを前記哺乳動物に投与する工程を含む、前記哺乳動物における医学的障害および疾病の治療方法として述べる。本発明の態様は更に、哺乳動物への所定の方法での投与によって、前記哺乳動物に連続的治療を施す方法である。本発明のある望ましい実施の形態では、デバイスを受け入れる哺乳動物または患者はヒトまたは動物である。別の望ましい実施の形態では、デバイスは眼科用デバイスである。更に別の望ましい実施の形態では、本発明に記述の眼科用デバイスおよび方法は、薬剤組成物を含むポリマーマトリックスである。本件に開示のように、また本発明の組成物および方法に用いられているように、眼科用デバイスは、生物浸食性または非浸食性ポリマー系のどちらから処方および製造しても良い。本件に記述の効果的な投薬は、約0.01〜約50.0mg/用量の量の医薬化合物を眼科用デバイスの形で一定期間に亘って送達するものである(但し、これに限定するものではない)。医薬化合物は、数日間、数週間または数ヶ月に亘って、本発明の眼科用デバイスから持続的に放出される。
【0059】
製剤技術においては、患者がヒトであるか動物であるかに応じて、また障害または疾病の種類と重症度に応じて医薬試剤を処方することは公知である。本発明の眼科用デバイスは、当該技術の従業者の手技に好適である。別の言い方をするなら、効果的な用量、効果的な量は、ある実施の形態において、感染または炎症などの病的状態を根治するために有効な量として記述される。あるいは、本発明の眼科用デバイスは、緑内障などの眼科的障害および疾病の治療と管理に用いることができる。
【0060】
ある態様において、本発明は、眼科的状態および疾病の処置または治療に十分な濃度の医薬試剤または医薬試剤配合物を含有する、薬学的眼科用デバイスを含むものである。更にある態様では、本発明は、動物における眼科的状態および疾病の治療に使用可能な獣医用デバイスを含むものである。
【0061】
本発明の態様はまた、医学的状態、障害、または疾病に対して治療を受ける哺乳動物へ投薬するための、または投薬に用いるための治療用パッケージとしても記述される。眼科的状態または疾病の治療に用いるデバイスの場合、治療用パッケージは次のものを含む。
(1)ガラスまたはプラスチック製の容器に収められた規定量の医薬試剤を含む医療用デバイス。このデバイスは、パッケージ内において無菌または非無菌状態のいずれでも良い。投薬体は、所定の期間に亘って投与された場合に、医学的症状、障害、または疾病の緩和、安定化、または根治に効果的な十分な医薬試剤を含む。
(2)これにより完成した薬剤容器またはパッケージ。前記容器は次のものを含む。
(a)医薬試剤を含む医療用デバイス
(b)前記パッケージの前記哺乳動物の治療における使用を指示するラベル
【0062】
医薬試剤を含む医療用デバイスの形とした、前記医薬試剤の連続的、持続的な放出のための本発明の組成物は、適当な容器中に包装することができる。医師または患者は所定の投薬計画に従って包装済製品を使用すると考えられる。一般に、眼科用デバイスの場合、医師がデバイスを上瞼または下瞼の中に挿入する。他の場合、患者がこのデバイスを上瞼または下瞼の中に挿入する。眼科用デバイスは、その位置に所定の期間保持される。地方、連邦、および外国政府の規制に従って、製品容器と付随するパッケージには、識別票、情報、および使用説明書を添付する。一般に“パッケージ挿入物”を入れる必要もある。“パッケージ挿入物”は、内容物、作用、適用、禁忌、警告、供給法(how sapplied)、安全情報および予防法、更に、使用法に関する情報を示すものである。
【0063】
以下の実施例は、活性試剤の制御送達のための本発明のキャリヤを明示するものであり、実施例はいかなる方法であってもその範囲を制限しようとするものではない。
【0064】
実施例1〜実施例10で使用する成分の略号を表2に示す。
【表2】

【実施例】
【0065】
<実施例1>
次の実施例では、本発明のデバイス(例えば、キャリヤ類)用の、例示的な処方物に用いられるモノマー類の精製について詳述する。不純物と阻害剤を酸化アルミニウム上に吸着させて、入手のモノマー類から除去した。その手順は次のとおりである。約2.0gの酸化アルミニウム(活性化、塩基性)を100mlの広口瓶に加えた後、約20.0gのモノマーを加えた。瓶に磁気回転子を加えて蓋をし、内容物を約2日間穏やかに撹拌した。0.45μmのシリンジフィルタに通して濾過し、精製したモノマーを取り出した。精製モノマーは使用まで冷蔵保存した。メタクリル酸は、その酸としての性質のため、使用前に蒸留した。
【0066】
<実施例2>
次の手順は、ある例示的な組成物の処方と重合を示すものである。これは本発明のデバイスの実施において使用可能な多くの手法の一つであって、本発明を制限するものと考えてはならないことは理解されよう。
【0067】
開始剤と薬物とを精製モノマーまたはモノマー混合物に直接溶解し、透明な溶液とした。あるいは、開始剤と薬物とを適当な溶媒に溶解した後、精製モノマーまたはモノマー類と混合した。次に処方物を小型の試験管、一般に10mm×75mmの試験管に移した。処方物を窒素でパージして酸素を除いた。次に試験管に栓をし、50℃の湯浴中に約3日間置いて重合させた。この後、試験管からポリマーを取り出し、溶媒が残っているようならば室温で5〜7日間蒸発させた。こうして薬物放出試験用のポリマー/薬物配合物を準備した。
【0068】
<実施例3>
次の処方は、薬物の制御送達のためのメンブランまたはマトリックスとして有用なポリマービヒクルを示す。
【表3】

【0069】
実施例1に詳述の手法でモノマー類を精製し、実施例2に示した方法で処方物を重合させた。生成したポリマーはいずれも透明であった。試料Aは可撓性であったが、試料Bは有意に硬いものであった。
【0070】
<実施例4>
次の処方は、薬物の制御送達のためのメンブランまたはマトリックスとして有用なポリマービヒクルを示す。
【表4】

【0071】
実施例1に詳述の方法でモノマー類を精製し、実施例2に示した方法で処方物を重合させた。生成したポリマーは透明で、試料Aから試料Dに向かって次第に軟らかくなった。
【0072】
<実施例5>
次の処方は、緑内障薬チモロールの制御放出のためのマトリックス薬物送達系を示す。
【表5】

【0073】
実施例1に詳述の方法でモノマー類を精製し、実施例2に示した方法で処方物を重合させた。生成したポリマーは透明でゴム状であった。
【0074】
<実施例6>
次の処方は、本発明のポリマーマトリックス系における様々な薬物の使用を示す。
【表6】

【0075】
実施例1に詳述の方法でモノマー類を精製し、実施例2に示した方法で処方物を重合させた。乾燥後得られたポリマーはゴム状であった。試料Aは半透明、試料Bは僅かに茶色、試料Cは僅かに黄色であった。
【0076】
<実施例7>
次の処方は、緑内障薬チモロールの制御放出のためのマトリックス薬物送達系を示す。
【表7】

【0077】
実施例1に詳述の方法でモノマー類を精製し、実施例2に示した方法で処方物を重合させた。生成したポリマーは透明で可撓性であった。
【0078】
<実施例8>
次の処方は、緑内障薬ブリモニジンの制御放出のためのマトリックス薬物送達系を示す。
【表8】

【0079】
実施例1に詳述の方法でモノマー類を精製し、実施例2に示した方法で処方物を重合させた。生成したポリマーは黄色透明で可撓性であった。
【0080】
<実施例9>
次の実施例では、本発明の、より詳細には実施例5および実施例7に開示のポリマー/薬物組成物からの薬物放出の測定に用いる方法を詳述する。
【0081】
濃度範囲5〜1,000ppmの、マレイン酸チモロールの、ユニゾール(Unisol)(登録商標)4緩衝液(ユニゾール(登録商標)4は、アルコン・ラボラトリーズ(Alcon Laboratories)製の、保存料を含まないpH調節塩類溶液である)溶液を調製した。UV走査分光計を用いて、マレイン酸チモロール(λmax=294)の濃度(g/ml)対吸光度の検量線を作成した。次に、チモロール遊離塩基の検量線を作成した。
【0082】
重さ100〜150mgで同じ形状の薬物担持ポリマーの試料を、4mlのバイアルに入れた。このバイアルに2.0mlのユニゾール(登録商標)4緩衝液を加えた。37℃で24時間置いた後、試料を取り出して別の4mlのバイアルに入れ、新たな2.0mlのユニゾール(登録商標)4緩衝液に浸した。24時間放出させたバイアルに栓をし、ラベルを付けて分析用に保存した。この手順を更に4回繰り返し、1日、2日、3日、4日、および5日間放出のデータを取った。その後のサンプリング間隔は3〜5日毎に広くした。放出試験は全部で90日間まで行った。
【0083】
薬物放出試料をUV分光法で分析し、読み取った吸光度を検量線を用いて薬物重量に変換した。放出された薬物の累積重量を時間に対してプロットした。
【0084】
<実施例10>
次の実施例は、実施例5に述べたポリマーマトリックスからのチモロールの制御放出を示す。実施例5に述べたポリマーマトリックスのチモロール放出特性を、実施例9に定めた方法で求めた。累積放出量(μg)を経過時間(日)に対してプロットした。比較のため、結果は試料重量0.150gに換算した。
【表9】

【0085】
DEGEMAホモポリマーと、DEGEMAとTRISとの共重合体は、ほぼ同じ放出動態を示した。20〜30日間は、チモロールがやや急速に放出された。DEGEMAとメタクリル酸との共重合体は、30〜40日間のチモロールの放出がより遅かった。DEGEMAとフルオロモノマー(TFEMA)との共重合体は、約5〜60日間、比較的一定したチモロールの放出を示した。
【0086】
<実施例11>
次の実施例は、実施例7に述べたポリマーマトリックスからのチモロールの制御放出を示す。実施例7に述べたポリマーマトリックスのチモロール放出特性を、実施例9に定めた方法で求めた。累積放出量(μg)を経過時間(日)に対してプロットした。比較のため、結果は試料重量0.150gに換算した。
【表10】

【0087】
試料Aおよび試料Bはいずれも、約5〜約40日の間、比較的一定でゆっくりとしたチモロールの放出を示した。チモロール濃度を倍とした試料Aは、予想どおり時間の経過と共に倍量のチモロールを放出した。
【0088】
<実施例12>
本発明の処方物は、当該技術で公知の方法を用いて光重合させることができる。重合は、UV・プロセス・サプライ・インク(UV Process Supply, Inc.)製のCL−1000L型などの、UV硬化チャンバ内で行う。このチャンバは、UV波長365nmで稼動し、最大UVエネルギー露光を999,900μJ/cmに設定可能である。UVエネルギー露光と露光時間は、重合効率が最大となるよう変えることができる。UV開始剤を含む処方物をバイアルに入れた後、窒素でパージして酸素を除いた。再び酸素が入り込まないようバイアルに素早く栓をした。処方物の密栓バイアルを2個のポリプロピレン製型枠の半身と共にグローブボックスに入れた。次にグローブボックスを窒素でパージして酸素を除いた。こうしておいてから処方物を開封し、所定量の処方物をポリプロピレン製型枠の下側の半身にピペットで入れた。型枠の下側に鋳型のもうひとつの半身とカバーとを取り付けて処方物を密閉し、所望のデバイスの外形とした。次に、充填した型枠をUVチャンバに入れ、所定の時間、所定のエネルギー強度で露光した。次に、重合したデバイスを型枠から取り外した。
【0089】
<実施例13>
次の処方は、薬物の制御送達のためのメンブランまたはマトリックスとして有用なポリマービヒクルを示す。
【表11】

【0090】
実施例1に詳述の方法でモノマー類を精製し、実施例12に示した方法で処方物を重合させた。UV露光エネルギーは120,000μJ/cm、露光時間は30分間であった。生成したポリマーは透明で、様々な可撓度を示した。
【0091】
<実施例14>
次の処方は、緑内障薬チモロールの制御放出のためのマトリックス薬物送達系を示す。
【表12】

【0092】
実施例1に詳述の方法でモノマー類を精製し、実施例12に示した方法で処方物を重合させた。UV露光エネルギーは60,000μJ/cm、露光時間は30分間であった。生成したポリマーは透明で可撓性であった。
【0093】
<実施例15>
次の実施例では、実施例14に述べたポリマーマトリックスからのチモロールの制御放出を示す。実施例14に述べたポリマーマトリックスのチモロール放出特性を、実施例9に定めた方法で求めた。累積放出量(μg)を経過時間(日)に対してプロットした。比較のため、結果は試料重量0.150gに換算した。
【表13】

【0094】
この結果より、酸性モノマー(この場合、メタクリル酸)は、チモロールの放出速度を劇的に低下させることが分かった。これは、ポリマーマトリックス中で酸/塩基錯体ができ、これがチモロールの放出速度を著しく低下させたためである。この考えは、酸性または塩基性いずれかのモノマーをポリマーマトリックス中に加えて酸/塩基錯体を形成することによって、酸性または塩基性いずれの他の薬物にも応用できる。
【0095】
<実施例16>
次の処方は、緑内障薬チモロールの制御放出のためのマトリックス薬物送達系を示す。
【表14】

【0096】
2−エチルヘキサン酸(EHA)は入手したものをそのまま用いた。モノマー類は実施例1に詳述の方法で精製し、処方物は実施例12に示した方法で重合させた。UV露光エネルギーは120,000μJ/cm、露光時間は30分間であった。生成したポリマーは透明で可撓性であった。
【0097】
この実施例では、チモロールと内部酸/塩基錯体を形成する有機酸成分の使用を示す。更に、2−エチルヘキサン酸は、薬物チモロールの浸透性増強剤としても作用する。
【0098】
本件に開示および請求の全ての組成物および方法は、本明細書に照らして不適当な実験を行うことなく、製造および実行可能である。望ましい実施の形態として本発明の組成物および方法を述べたが、本発明の概念、意図、および範囲から外れることなく、組成物および/または方法に、また、本件に記述の方法の工程、または一連の工程に、変更を加えても良いことは当業者には明らかであろう。より詳細には、同一または同様な結果が得られるならば、本件に述べた試剤を、化学的および生理学的に同類の別の試剤で代用しても良いことは明らかである。当業者に明白なこれら同様な代用物および変更は全て、添付の請求項に定義された本発明の意図、範囲、および概念に含まれるものと考える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性試剤の制御送達のためのキャリヤであって、前記キャリヤは、重合可能なエチレン性不飽和基を含む少なくとも1種類のモノマーから誘導された、アルキルエーテルを含むポリマーマトリックスを含むことを特徴とするキャリヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャリヤであって、
前記アルキルエーテルは次の構造式を持ち、
【化1】

式中、nは2〜約6の整数であり、
mは1〜約100の整数であって、
前記アルキルエーテルは、1種類以上のモノマー類から誘導されたものである、
ことを特徴とするキャリヤ。
【請求項3】
活性試剤の制御送達のためのキャリヤであって、
前記キャリヤは、次の構造式を持ち、
【化2】

式中、Pは、次の基から成る群より選ばれる重合可能なエチレン性不飽和基であり、
【化3】

Yは、次の基から成る群より選ばれるスペーサ基であり、
【化4】

Tは末端基であって、水素、アルキル基、またはP−Y−基であり、
xは2〜約6の整数であり、
yは2〜約8の整数であり、
nは0〜約50の整数である、
少なくとも1種類のモノマーから誘導された、アルキルエーテルを含むポリマーマトリックスを含むことを特徴とするキャリヤ。
【請求項4】
請求項3に記載のキャリヤであって、
前記アルキルエーテルは、次の構造式を持ち、
【化5】

式中、Rは水素またはメチルであり、
Tは、水素およびアルキル基から成る群より選ばれる末端基であり、
nは2〜約6の整数であり、
mは1〜約100の整数である、
モノマーから誘導されることを特徴とするキャリヤ。
【請求項5】
請求項3に記載のキャリヤであって、
前記アルキルエーテルは、次の構造式を持ち、
【化6】

式中、Rは水素またはメチルであり、
Tは、水素およびアルキル基から成る群より選ばれる末端基であり、
nは1〜約100の整数である、
少なくとも1種類のモノマーから誘導されることを特徴とするキャリヤ。
【請求項6】
請求項3に記載のキャリヤであって、
前記アルキルエーテルは、次の構造式を持ち、
【化7】

式中、Rは水素またはメチルであり、
Tは、水素およびアルキル基から成る群より選ばれる末端基であり、
nは2〜約6の整数であり、
mは1〜約100の整数である、
モノマーから誘導されることを特徴とするキャリヤ。
【請求項7】
請求項3に記載のキャリヤであって、
前記アルキルエーテルは、次の構造式を持ち、
【化8】

式中、Rは水素またはメチルであり、
nは1〜約50の整数である、
モノマーから誘導されることを特徴とするキャリヤ。
【請求項8】
請求項3に記載のキャリヤであって、前記アルキルエーテルは、他のモノマー類と共重合して共重合体を生成される、エチレン性不飽和アルキルエーテルモノマー類を含むことを特徴とするキャリヤ。
【請求項9】
請求項8に記載のキャリヤであって、
前記共重合体は、
次の構造式を持ち、
【化9】

式中、Rは水素またはメチルであり、
Tはアルキル基であり、
nは1〜約10の整数である、
モノマーから成る群より選ばれる30〜95重量%のモノマーと、
5〜70重量%のエチレン性不飽和モノマーと、
を含むことを特徴とするキャリヤ。
【請求項10】
請求項9に記載のキャリヤであって、
前記共重合体は、
次の構造式を持ち、
【化10】

式中、nは2〜約6の整数であり、
Tは望ましくはアルキル末端基である、
モノマーより選ばれるポリエチレングリコール=モノメタクリラートである50〜95重量%のモノマーと、
5〜50重量%のエチレン性不飽和モノマーと、
を含むことを特徴とするキャリヤ。
【請求項11】
請求項10に記載のキャリヤであって、
前記共重合体は、
次の構造式を持ち、
【化11】

式中、Rは水素またはメチルであり、
Tは末端基であって、望ましくはアルキル基であり、
nは2〜約10の整数である、
モノマーから成る群より選ばれる50〜95重量%のモノマーと、
5〜50重量%のフッ素含有エチレン性不飽和モノマーと、
を含むことを特徴とするキャリヤ。
【請求項12】
請求項11に記載のキャリヤであって、前記フッ素含有エチレン性不飽和モノマーは、メタクリル酸トリフルオロエチルまたはメタクリル酸ヘキサフルオロイソプロピルであることを特徴とするキャリヤ。
【請求項13】
活性試剤の制御送達のためのキャリヤであって、
前記キャリヤは、他のモノマー類と共重合して共重合体を生成するエチレン性不飽和アルキルエーテルモノマー類を含むポリマーマトリックスを含み、
前記エチレン性不飽和アルキルエーテルモノマー類は、
次の構造式を持ち、
【化12】

式中、nは2であり、
Tはエチル基である、
ジ(エチレングリコール)エチルエーテル=メタクリラートである60〜70重量%のモノマーと、
0〜10重量%のテトラエチレングリコール=ジメタクリラートと、
を含み、
他のモノマー類は、
25〜35重量%のメタクリル酸トリフルオロエチルと、
0〜5重量%のメタクリル酸と、
を含むことを特徴とするキャリヤ。
【請求項14】
請求項3に記載のキャリヤであって、前記活性試剤は前記ポリマーマトリックス中に溶解していることを特徴とするキャリヤ。
【請求項15】
請求項3のキャリヤであって、前記活性試剤はポリマーマトリックス中に分散していることを特徴とするキャリヤ。
【請求項16】
請求項3に記載のキャリヤであって、前記キャリヤは医療用デバイスとして成形されていることを特徴とするキャリヤ。
【請求項17】
眼科用デバイスの形状に成形した、請求項3に記載のキャリヤを含む眼科用デバイス。
【請求項18】
請求項17に記載の眼科用デバイスであって、含まれている前記活性試剤は、抗緑内障薬チモロールであることを特徴とする眼科用デバイス。
【請求項19】
請求項3に記載のキャリヤであって、前記活性試剤は、本質的に、抗感染薬、抗アレルギー薬、抗炎症薬、鬱血除去薬、縮瞳薬、抗コリンエステラーゼ薬、散瞳薬、抗緑内障薬、および抗白内障薬から成る群より選ばれることを特徴とするキャリヤ。
【請求項20】
請求項3に記載のキャリヤであって、前記アルキルエーテルは、エチレン性不飽和アルキルエーテルを含むモノマー類のみから誘導されることを特徴とするキャリヤ。
【請求項21】
請求項3に記載のキャリヤであって、前記キャリヤは、50重量%以上のアルキルエーテルセグメントを含むことを特徴とするキャリヤ。
【請求項22】
医学的状態、障害、または疾患の治療に適した医療用デバイスを哺乳類である患者に投与するための治療用パッケージであって、
前記治療用パッケージは、医学的状態、障害、または疾患の治療に十分な量の所定量の医薬試剤を長期に亘って制御送達するための、キャリヤの形状とした医療用デバイスを含み、
前記キャリヤは、重合可能なエチレン性不飽和基を含むモノマーから誘導された、アルキルエーテルを含むポリマーマトリックスを含み、
これによって、完成した薬剤容器は、医療用デバイスと、更にラベルとを含み、
前記ラベルは、医学的状態、障害、または疾患の治療における、患者が治療を必要とする日数に近い期間に亘って医薬試剤の送達を制限する治療計画での、前記パッケージの使用を指示する、
ことを特徴とする治療用パッケージ。

【公表番号】特表2007−503441(P2007−503441A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524718(P2006−524718)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/026775
【国際公開番号】WO2005/023181
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501344500)ヴィスタ サイエンティフィック エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】