説明

管理装置及びその制御方法、並びにプログラム

【課題】機器自体が消費電力予測を不可能な機器が存在するシステムであっても、システム全体の消費電力を管理可能とする。
【解決手段】管理装置は、記憶手段に記憶された消費電力及び実行に要する時間、これから実行が予定される処理、及び取得された現時点でのシステム全体の消費電力から、システム全体における消費電力を予測し、予測された消費電力が、設定された上限値を上回る場合に、実行が予定されている処理の開始時刻を、上限値を超えないように変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置及びその制御方法、並びにプログラムに関し、特に、システム全体の消費電力の管理を行う管理装置及びその制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートメータと呼ばれる使用電力をリアルタイムで計測し、使用電力データを通信で他の機器に送信する機能を持つ高機能型の電力メータ(以下、「高機能電力計」という)を用いて、建物全体の使用電力を把握し活用することが考えられている。
【0003】
また、一方、ネットワークで接続された複数の機器で、複数の機器のそれぞれの動作スケジュールに基づいた消費電力予測から、複数の機器を同時に動作させた場合、所定の消費電力の上限を超えるか否かを判断する。そして、超えると判断された場合には複数の機器の動作するタイミングをずらすことで所定の消費電力の上限を超えないようにする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−28036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の消費電力制御では、ネットワークに接続され、かつ、消費電力予測を可能な機器だけを制御可能となっている。特許文献1に記載の消費電力制御を行っている機器と消費電力制御を行っていない機器とが混在している電力システムの場合は以下のような問題がある。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載の消費電力制御を行っている複数の機器の消費電力の合計が予め設定された上限を超えないように制御しても、消費電力制御を行っていない複数の機器の消費電力を制御できない。その結果、電力システム全体の消費電力が上限値を上回るという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、機器自体が消費電力予測を不可能な機器が存在するシステムであっても、システム全体の消費電力を管理可能な管理装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の管理装置は、複数の機器が実行する各々の処理ごとに当該処理を実行した場合の消費電力及び実行に要する時間が記憶された記憶手段を有し、前記複数の機器と通信可能であり、前記複数の機器で構成されたシステム全体の消費電力を管理する管理装置であって、現時点での前記システム全体の消費電力を取得する取得手段と、前記システム全体で消費可能な電力の上限値を設定する設定手段と、前記記憶手段に記憶された消費電力及び実行に要する時間、これから実行が予定される処理、及び前記取得手段により取得された現時点での前記システム全体の消費電力から、前記システム全体における消費電力を予測する予測手段と、前記予測手段により予測された消費電力が、前記設定手段により設定された上限値を上回る場合に、前記実行が予定されている処理の開始時刻を、前記上限値を超えないように変更する変更手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機器自体が消費電力予測を不可能な機器が存在するシステムであっても、システム全体の消費電力を管理可能な管理装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタシステムの概略構成を示す図である。
【図2】図1における電力管理サーバーのハードウェア構成を示す図である。
【図3】図1における複合機のハードウェア構成を示す図である。
【図4】図1における電力管理サーバーが管理する未処理ジョブを示す未処理ジョブ表を示す図である。
【図5】図1におけるプリンタシステムの電力上限設定表を示す図である。
【図6】図1おけるプリンタシステムの電力上限設定によるジョブの再スケジュールの一例を示す図である。
【図7】図6におけるジョブスケジューリングを変更した場合のジョブスケジュールを示す図である。
【図8】図1における電力管理サーバーにより実行される電力管理処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】図1における電力管理サーバーにより実行されるスケジュール管理処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図8におけるステップS605の詳細を示すスケジュール調整処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】図10の他の実施の形態を示すスケジュール調整処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】図1における複合機により実行されるジョブ実行制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係るプリンタシステム、及び管理装置の概略構成を示す図である。
【図14】図13における設定記憶部に記憶される設定値を示す図である。
【図15】図13におけるCPUにより実行される同時許可ジョブ数処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】図13におけるCPUにより実行されるジョブ許可処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】図13における複合機により実行される開始要求及び終了通知処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】管理装置と複合機との通信の様子を示すシーケンス図である。
【図19】複合機毎のジョブ実行時電力値を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0012】
本実施の形態では、機器自体が消費電力予測を不可能な機器が存在するシステムとして、プリンタシステムを例にしており、上記機器としては複合機を用いている。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係るプリンタシステム100の概略構成を示す図である。
【0014】
図1において、プリンタシステム100は、電力管理サーバー10(管理装置)、複合機A20、複合機B30、複合機C40、複合機D50、ホストPC60、及び高機能電力計70を含んでいる。これらは、ネットワーク80、または無線より通信可能となっている。以下の説明では、複合機A20、複合機B30、複合機C40、複合機D50のいずれにも当てはまる説明をする場合には、単に複合機と表現する。
【0015】
ネットワーク80は機器を接続する既知の技術を用いたネットワークであり、本実施の形態ではTCP/IPプロトコルを使用したイーサネット(登録商標)の使用を想定している。
【0016】
電力管理サーバー10は本実施の形態のプリンタサーバーである。電力管理サーバー10はネットワークインターフェイスが具備されており、ネットワーク80を介して各機器に接続されている。
【0017】
また、高機能電力計70は消費電力を測定し、電力管理サーバー10と無線での通信が可能な無線通信インターフェイスを持っている。高機能電力計70は電力管理サーバー10からの要求に対して現在の消費電力を通知する。本実施の形態での通信は無線通信であるが、有線通信でもよく、ネットワーク80に接続された形態でもよい。
【0018】
各複合機は、ネットワーク80を介して電力管理サーバー10とホストPC60と接続してあり、それらと通信可能となっている。
【0019】
ホストPC60は複合機のホストであり、ネットワークインターフェイスが具備されており、ネットワーク80を介して各機器に接続されている。従って、電力管理サーバー10は、複数の複合機と通信可能である。
【0020】
図2は、図1における電力管理サーバー10のハードウェア構成を示す図である。
【0021】
CPU101は、電力管理サーバー全体を制御するコントローラであり、各種の演算などもおこなう。ROM102はブートROMであり、電力管理サーバーのブートプログラムが格納されている。RAM103は、CPU101が動作するためのシステムワークメモリであり、CPU101の演算データや、各種プログラムが記憶される。
【0022】
LAN I/F制御部104はLAN I/Fコネクタ11を介してネットワーク80と接続し、データの送受信を行う。無線通信I/F制御部105は高機能電力計70と通信を行うためのIFで無線通信アンテナ12を介して無線通信を行う。HDD110はサイズの大きなプログラムやデータを保存しておく不揮発の2次記憶装置であり、保存してあるデータやプログラムはRAM103に展開して使用する。そしてこれらはシステムバス111で互いに接続してある。
【0023】
上述したRAM103には、種々の記憶領域が設けられている。ジョブ電力算出プログラム記憶領域108は、各複合機の処理しようとするジョブ(処理)の消費する電力を予測し、算出するプログラムを記憶しておく領域である。また、ジョブ電力算出プログラム記憶領域108は、ジョブの処理時間を算出するプログラムを記憶しておく領域でもある。
【0024】
プリンタシステム電力合算プログラム記憶領域106は、各複合機のジョブ処理にかかる消費電力を予測し、算出した結果をジョブの実行開始時間とジョブの終了時間を考慮して合算処理を行うプログラムを記憶しておく領域である。このプリンタシステム電力合算プログラムは消費電力及び実行に要する時間、これから実行が予定される処理及び現時点でのシステム全体の消費電力からシステム全体における消費電力を予測する予測手段に対応する。
【0025】
プリンタシステム電力上限設定プログラム記憶領域109は、高機能電力計70から算出した現在の消費電力からプリンタシステムが使用できる消費電力上限を設定するプログラムを記憶しておく領域である。
【0026】
ジョブスケジューリング変更プログラム記憶領域107は、プリンタシステム電力上限設定プログラムで設定したプリンタシステムが使用できる消費電力上限を超えないように各複合機のジョブ処理のタイミングを変更するプログラムを記憶する領域である。
【0027】
図3は、図1における複合機のハードウェア構成を示す図である。
【0028】
プリンタコントローラ200は、画像出力デバイスであるプリンタ201と操作部である操作ユニット202、読み取りデバイスであるスキャナ212に接続される。また、プリンタコントローラ200は、複合機のLAN I/Fコネクタ21を介してネットワークに接続し、通信制御を行うネットワークコントローラである。さらに、プリンタコントローラ200は、モジュラージャック22を介してFAX通信制御を行うFAXコントローラでもある。
【0029】
CPU203は、複合機システム全体を制御するコントローラである。ROM204は、ブートROMであり、複合機システムのブートプログラムが格納されている。RAM205はCPU203が動作するためのシステムワークメモリである。また、RAM205は、ホストPC60から送られてきた印刷データなどを送られてきた順番に記憶するための画像メモリとしても使用され、ジョブキュー記憶領域211が確保されている。
【0030】
プリンタI/F206は、プリンタ201に接続され、図示しないプリンタ201のCPUとそれぞれ通信を行い、また、画像データの同期系/非同期系の変換を行う。操作部I/F207は操作ユニット202に接続され、操作ユニット202からユーザーが入力した情報をCPU203に伝える役割をする。
【0031】
LAN I/F制御部208は、LAN I/Fコネクタ21を介してネットワーク80と接続し、データの送受信を行う。スキャナI/F213はスキャナ212と接続され、スキャナ212から読み込んだ画像データをRAM205に取り込む役割を行う。FAX受信部214はモジュラージャック22を介して、電話網と接続され、FAXの送受信を行う。
【0032】
図4は、図1における電力管理サーバー10が管理する未処理ジョブを示す未処理ジョブ表を示す図である。
【0033】
この未処理ジョブ表は、電力管理サーバー10のRAM103に記憶されている。
【0034】
図4において、ジョブ入力順301はプリンタシステム100に入力された順番を示す。ジョブ順番302はジョブ処理する複合機とその複合機で処理する順番を示す。
【0035】
動作303はプリントやSendなどのジョブの内容を示す。消費電力304はジョブ順番302で示された複合機と動作303で示されたジョブ内容とを勘案して、電力管理サーバー10のジョブ電力算出プログラム記憶領域108のプログラムにより算出される。
【0036】
また、実行時間305はジョブ順番302で示された複合機と動作303で示されたジョブ内容とを勘案して、電力管理サーバー10のジョブ電力算出プログラムで算出されたジョブ開始から終了までに要する時間である。
【0037】
Sendやコピーなどのスキャンを行うジョブを実行する場合は、スキャンする枚数を予め設定して、コピーの場合はプリントする枚数も予め設定することにより、電力管理サーバー10がジョブ開始から終了までの時間を算出する。
【0038】
これらのジョブはホストPCなどから各複合機に入力され、各複合機のジョブキュー記憶領域211に記憶された後、各複合機が電力管理サーバー10に通信でジョブの内容を送付し、電力管理サーバー10が未処理ジョブ表を作成してもよい。
【0039】
その場合には各複合機が各ジョブ開始時には各複合機が電力管理サーバー10に対して、ジョブ実行許可を求めて、電力管理サーバー10が許可を行ってからジョブを実行する。
【0040】
各複合機で実行する全てのジョブは、一旦、電力管理サーバー10に入力され、ジョブ実行時に各複合機にジョブを送付する方法でもよい。いずれの方法でも図4の未処理ジョブ表は電力管理サーバー10が管理し、ジョブ実行の開始タイミングを各複合機に通知する。
【0041】
図5は、図1におけるプリンタシステム100の電力上限設定表を示す図である。
【0042】
図5において、高機能電力計値601はプリンタがジョブを実行する直前に高機能電力計70から読み取った消費電力値であり、建物全体の消費電力値を示す。
【0043】
建物上限値602は、建物で使用できる電力値を示し、ユーザーの設定値でもよく、高機能電力計70からの取得値でもよい。
【0044】
プリンタシステム電力603は現在のプリンタシステム全体で消費している消費電力の予測値であり、電力管理サーバー10が算出した値である。プリンタシステム上限値604は高機能電力計値601と建物上限値602とプリンタシステム電力603から算出したプリンタシステム100が消費できる電力値の上限値を示す。
【0045】
図6は、図1おけるプリンタシステム100の電力上限設定によるジョブの再スケジュールの一例を示す図である。
【0046】
図6に示されるグラフは、実行するジョブが図4の未処理ジョブ表に示される場合の未処理ジョブを電力管理サーバー10がスケジュールしたときの様子を示し、縦軸が電力値、横軸が時間をそれぞれ示している。また、図6では、説明を簡単にするために、便宜的にスタンバイ状態もジョブとして表現している。
【0047】
このグラフは、プリンタシステム100に入力された情報から対象ジョブの開始時間と終了時間と消費する電力をジョブ電力算出プログラムが算出し、その情報をもとにプリンタシステム電力合算プログラムによりグラフ化されたものである。また、このグラフは、ジョブがプリンタシステムに入力された時に消費電力の予測として電力管理サーバー10で作成される。
【0048】
ジョブ401は、図4のジョブ入力順301の1のジョブで複合機A20が処理する1番目のジョブを示し、横軸が時間、縦軸が消費電力の予測値を表している。以下の各ジョブにおいても、横軸がそのジョブに要する時間、縦軸が消費電力の予測値を示している。
【0049】
同様にジョブ402はジョブ入力順301の2のジョブ、ジョブ403がジョブ入力順301の3のジョブ、ジョブ404がジョブ入力順301の4のジョブでの処理時間と予測値を示している。ジョブ405が複合機Aでジョブ処理を行わない時のスタンバイ状態時の予測値を示している。
【0050】
さらに、ジョブ406がジョブ入力順301の5のジョブ、ジョブ407がジョブ入力順301の6のジョブ、ジョブ408がジョブ入力順301の7のジョブでの処理時間と予測値を示している。
【0051】
また、ジョブ409が複合機B30のジョブ処理を行わない時のスタンバイ状態時の予測値を示し、この消費電力は、ジョブ投入やスリープ移行などの状態変化が起こらない限り、同じ電力値が続く。
【0052】
ジョブ410がジョブ入力順301の8のジョブ、ジョブ413がジョブ入力順301の9のジョブ、ジョブ411がジョブ入力順301の10でのジョブ処理時間と予測値を示している。
【0053】
ジョブ412が複合機C40のジョブ処理を行わない時のスタンバイ状態の予測値を示し、この予測値はジョブ投入やスリープ移行などの状態変化が起こらない限り、同じ電力値が続く。
【0054】
同様に、ジョブ414は複合機D50のジョブ処理を行わない時のスタンバイ状態の予測値を示し、この予測値はジョブ投入やスリープ移行などの状態変化が起こらない限り、同じ電力値が続く。
【0055】
タイミング417はジョブ413の開始タイミングを示し、タイミング418はジョブ414の開始タイミングを示している。
【0056】
また、タイミング419はジョブ413の終了タイミングを示している。上限値415はタイミング417が示すタイミングで電力管理サーバー10のプリンタシステム電力上限設定プログラムで算出されたプリンタシステムが消費できる電力値を示す。
【0057】
また、上限値416はタイミング418が示すタイミングで電力管理サーバー10のプリンタシステム電力上限設定プログラムで算出し直したプリンタシステム100が消費できる電力値を示す。
【0058】
図6において、タイミング418で算出し直した上限値416を消費電力が超えると予測されるため、電力管理サーバー10のジョブスケジューリング変更プログラムがジョブのスケジュールを変更する。
【0059】
図7は、図6におけるジョブスケジューリングを変更した場合のジョブスケジュールを示す図である。
【0060】
図7において、上限値416を超える電力で処理しているジョブのうち、図4で示すジョブ入力順301で入力された順番が遅いジョブの開始時刻を遅らせることによって上限値416を超えないようにジョブのスケジュールを変更している。
【0061】
ジョブ502は図6のジョブ411を、消費電力が上限値416を超えないように実行時間をずらしものとなっている。ジョブ501はジョブ502の開始時刻を遅らせたため、ジョブ410の終了からジョブ502の開始までスタンバイしている。
【0062】
このように、図4で示すジョブ入力順301で入力された順番が遅いジョブの開始時刻を遅らせることにより、プリンタシステム100で消費できる電力を超えないようにジョブのスケジュールを変更する。
【0063】
また、その他の方法として、プリンタシステム100で消費できる電力を超えるタイミングにジョブ実行するジョブのうち、ジョブの再スケジュール前のスケジュールで実行開始時間が最も遅いジョブを遅らせる再スケジュール方法でもよい。
【0064】
さらに、ジョブ実行を遅らせる場合、ジョブ実行を遅らせる時間が最も短いジョブを遅らせるような再スケジュール方法でもよい。
【0065】
図8は、図1における電力管理サーバー10により実行される電力管理処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、CPU101により実行される。
【0066】
図8において、各複合機がジョブを実行するか否か判別する(ステップS601)。具体的に、ステップS601では、各複合機からの、ジョブ実行の許可を求めるジョブ実行許可申請を受信したか否かで判別する。
【0067】
ステップS601の判別の結果、ジョブ実行許可申請を受信すると(ステップS601でYES)、高機能電力計70から現在の建物全体の消費電力値などの情報を取得する(ステップS602)。このステップS602は、現時点でのシステム全体の消費電力を取得する取得手段に対応する。
【0068】
次いで、プリンタシステム100で消費できる上限電力を設定し直す(ステップS603)。このステップS603は、システム全体で消費可能な電力の上限値を設定する設定手段に対応する。
【0069】
図6に示すようなプリンタシステムの消費電力の予測値とステップS603で算出した上限電力とを比較する。すなわち、電力推移予測を参照し、プリンタシステム100の消費電力が、上限電力を上回るか否か判別する(ステップS604)。
【0070】
ステップS604の判別の結果、プリンタシステム100の消費電力が上限電力を上回るとき(ステップS604でYES)、プリンタシステムの消費電力が上限電力を超えないようにジョブ実行のスケジュールを調整して(ステップS605)、本処理を終了する。このステップS605は、後述する図10、図11でより詳細に説明される。
【0071】
一方、ステップS604の判別の結果、プリンタシステム100の消費電力が上限電力を上回らないとき(ステップS604でNO)、複合機にジョブ実行許可を出して(ステップS606)、本処理を終了する。
【0072】
なお、上記電力管理処理では、ステップS603のタイミングで上限値を設定しているが、以下のタイミングでもよい。すなわち、上限値を設定するタイミングは、複合機がジョブを実行する直前のタイミング、複合機がジョブを終了した直後のタイミング、及び実行が予定されていたジョブの実行が消滅したタイミングのうちの少なくとも1つのタイミングであってもよい。上記ジョブの実行が消滅とはジョブのキャンセルを意味する。
【0073】
さらに、スマートメータなどにより、電力供給元からプリンタシステム100への電力供給量が予め定められた電力量を下回ることが通知された場合に、上限値を設定するようにしてもよい。また、プリンタシステム100が使用可能な電力量と、プリンタシステム100全体での消費電力量との差の絶対値が、予め定められた値よりも小さくなった場合に、上限値を設定するようにしてもよい。このプリンタシステム100が使用可能な電力量として、例えば電力会社との契約上限値が挙げられる。さらに、プリンタシステム100が予め定められた期間内で消費した平均電力量が、プリンタシステム100に許可された電力量を超えた場合に、上限値を設定するようにしてもよい。この予め定められた期間とは、例えば直近の30分などが挙げられる。
【0074】
また、プリンタシステム100に許可された電力量を超えた場合に、実行が予定されている処理のうち、処理に必要となる消費電力が他の処理と比較して小さい処理を優先して実行させるように処理の開始時刻を変更するようにしてもよい。
【0075】
その他の方法として、ジョブがプリンタシステム100に入力された時にジョブのスケジュールを変更してもよい。または、ジョブの終了時に実行されていない残りのジョブのスケジュールを変更してもよい。さらに、機器が省エネモードで動作可能な場合、当該機器を省エネモードで動作させるようにしてもよい。本実施の形態の場合は、機器が複合機であるので、省エネモードとしては、例えば印刷速度を低減させることが挙げられる。
【0076】
図8の処理によれば、記憶された消費電力及び実行に要する時間、これから実行が予定されるジョブ、及び取得された現時点でのシステム全体の消費電力から、システム全体における消費電力を予測する。そして、予測された消費電力が、設定された上限値を上回る場合に、実行が予定されているジョブの開始時刻を、上限値を超えないように変更する。その結果、機器自体が消費電力予測を不可能な機器が存在するシステムであっても、システム全体の消費電力を管理可能となる。
【0077】
図9は、図1における電力管理サーバー10により実行されるスケジュール管理処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、CPU101により実行される。
【0078】
図9において、ジョブが電力管理サーバー10に入力されたか否か判別する(ステップS701)。他の方法としては、各複合機に入力されたジョブを複合機が電力管理サーバー10に転送したときを入力されたときとしてもよい。また、電力管理サーバー10がジョブスケジュールを作成するのに必要な複合機のジョブ処理時間と消費電力情報などの情報を転送してもよい。
【0079】
ステップS701の判別の結果、ジョブが入力されないとき(ステップS701でNO)、ジョブが実行されていないため、スタンバイ状態またはスリープとして消費電力を算出し(ステップS702)、ステップS701に戻る。なお、複合機の電源がOFFされている場合は、電源OFFとして電力を算出する。
【0080】
ステップS701の判別の結果、ジョブが入力されたとき(ステップS701でYES)、電力管理サーバー10が入力されたジョブの消費電力とジョブ実行時間を算出する(ステップS703)。なお、電力管理サーバー10は、ジョブの消費電力とジョブ実行時間を算出する基礎データを、予めユーザーから設定されていたり、複合機からデータを入手しておくことで例えばHDD110に備えている。従って、電力管理サーバー10は、複数の複合機が実行する各々のジョブごとに当該ジョブを実行した場合の消費電力及び実行に要する時間が記憶された記憶手段を有する。
【0081】
次いで、ジョブを実行する複合機のジョブキューに未処理ジョブがあるか否か判別する(ステップS704)。これは、図4に示した未処理ジョブ表により判別できる。
【0082】
ステップS704の判別の結果、未処理ジョブがないとき(ステップS704でNO)、ジョブが実行できる最初の時刻にジョブの開始時刻を設定し(ステップS706)、本処理を終了する。つまり、すぐに実行可能であれば、現時刻をジョブ実行開始時間に設定し、すぐにジョブ実行のためのフローを実行する。
【0083】
一方、ステップS704の判別の結果、未処理ジョブがあるとき(ステップS704でYES)、実行中のジョブが終了する時刻のあとにジョブの開始時刻を設定し(ステップS705)、本処理を終了する。このステップS705のケースは、複合機に対するジョブがいくつか先に設定されたときのケースであり、この場合は入力されたジョブの直前のジョブの終了時刻を入力されたジョブの実行開始時刻として設定することとなる。
【0084】
図10は、図8におけるステップS605の詳細を示すスケジュール調整処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、CPU101により実行される。
【0085】
ジョブの実行によってプリンタシステム100全体の消費電力が上限値を超えるタイミングでジョブを実行するジョブの中で最も遅くプリンタシステム100に入力されたジョブの開始時刻を他の複合機のジョブが終了する時刻の後に設定する(ステップS801)。
【0086】
具体的に、図6の例では、ステップS801で実行しようとするジョブを411としたとき、プリンタシステム100全体の消費電力が上限を超えるタイミングで実行している他の複合機のジョブはジョブ402,407,413である。
【0087】
この3つのジョブの中で終了する時刻が最も早いジョブがジョブ413であり、最も遅くプリンタシステム100に入力されたジョブはジョブ411である。従って、ジョブ413が終了した直後にジョブ411の開始時刻を設定する。図6のタイミング418の時点でジョブ411の実行を許可した場合、タイミング418からタイミング419までの電力合計はジョブ402の500Wとジョブ407の500Wとジョブ413の400Wとジョブ411の500Wで合計1900Wとなる。従って、ステップS603で設定した上限値1500Wを超えると判断し、ジョブ411の開始時刻をタイミング419の時点とする。開始タイミングを移動されたジョブはそのジョブの開始タイミングに再び図8で示した電力管理処理でタイミング調整される。
【0088】
次いで、対象ジョブ実行開始までスタンバイ状態として電力を算出して(ステップS802)、本処理を終了する。
【0089】
具体的に、図7の例では、ジョブ501に示されるように、複合機Cの商品電力は、ジョブ401の終了からジョブ502の開始まで、スタンバイ状態として算出されている。もちろん、スタンバイ状態よりも電力消費量が少ないスリープや電源OFF状態とすれば、それらの電力で電力算出を行ってもよい。
【0090】
図11は、図10の他の実施の形態を示すスケジュール調整処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、CPU101により実行される。
【0091】
ジョブの実行によってプリンタシステム100全体の消費電力が上限値を超えるタイミングでョブを実行するジョブの中で最も遅くジョブを実行するジョブの開始時刻を他の複合機のジョブが終了する時刻の後に設定する(ステップS901)。
【0092】
具体的には図7の例では、ジョブ502の実行時に、ジョブ404、ジョブ408、ジョブ502、ジョブ414が動作するタイミングで上限値を超えると判断された場合は、以下のようにする。すなわち、ジョブ実行が最も遅いジョブ404をジョブ502の終了後に実行するように設定する。
【0093】
次いで、ジョブの開始時刻まで複合機がスタンバイ状態として電力を算出し(ステップS902)、本処理を終了する。もちろん、スタンバイ状態よりも電力消費量の少ない状態に遷移できればその状態での電力を算出してもよい。
【0094】
上述した図10、及び図11のスケジュール調整処理は、予測された消費電力が、設定された上限値を上回る場合に、実行が予定されているジョブの開始時刻を、上限値を超えないように変更する変更手段に対応する。
【0095】
図12は、図1における複合機により実行されるジョブ実行制御処理の手順を示すフローチャートである。この処理は、CPU203により実行される。
【0096】
まず、現に実行していたジョブが終了すると(ステップS1001でYES)、ジョブキュー記憶領域211に示される次のジョブの実行をLAN I/F制御部208を通して電力管理サーバー10に申請する(ステップS1002)。
【0097】
次いで、ジョブの実行が許可されたか否か判別する(ステップS1003)。ステップS1003の判別の結果、ジョブの実行が許可されなかったとき(ステップS1003でNO)、複合機をスタンバイ状態にして(ステップS1005)、ステップS1003に戻る。なお、電力管理サーバー10からのジョブ実行が許可されたとき、すぐにジョブの実行が行うことができれば、スタンバイ状態に限らずスリープ状態や電源OFFの状態でもよい。
【0098】
一方、テップS1003の判別の結果、ジョブの実行が許可されたとき(ステップS1003でYES)、ジョブを実行して(ステップS1004)、本終了する。
【0099】
ジョブの管理を電力管理サーバー10が行っている場合は、ジョブキューを複合機が持つのではなく、実行許可の代わりに電力管理サーバー10からジョブを入力するようにしてもよい。
【0100】
[第2の実施の形態]
図13は、本発明の第2の実施の形態に係るプリンタシステム1001、及び管理装置1000の概略構成を示す図である。
【0101】
図13において、プリンタシステム1001は、管理装置1000、高機能電力計1080、複数(図では3台)の複合機1091,1092,1093で構成される。
【0102】
また、管理装置1000は、CPU1010、RAM1030、パネル制御部1050、操作部1070、通信部1060、設定記憶部1040、ROM1020で構成される。
【0103】
CPU1010は、管理装置1000の各部を制御する。ROM1020は、制御プログラムが格納される。
【0104】
RAM1030は、制御プログラムの実行領域やワークデータ領域である。RAM1030におけるウェイトキュー1031は、FIFO(先入れ先出しメモリ)方式のキューである。稼働ジョブ数1032は、現在実施しているジョブの数を示す。同時許可ジョブ数1033は、同時に実施可能なジョブの数を示す。
【0105】
設定記憶部1040は、管理装置1000が管理する同時実行ジョブ数の最大値、最小値、ジョブステップ数が記憶される。パネル制御部1050は、操作部1070への表示を制御するとともに、操作部1070から入力された情報をRAM1030や設定記憶部1040に記憶させる。操作部1070は、ユーザーへ情報を表示したり、ユーザーからの指示が入力される。
【0106】
高機能電力計1080は、スマートメータに代表される通信機能などを備え、電力会社が電力負荷を下げるよう要求する負荷低減要求信号、電力負荷を上げることを許可する負荷復帰許可信号を管理装置1000に送信する機能を持つ。
【0107】
図14は、図13における設定記憶部1040に記憶される設定値を示す図である。
【0108】
図14において、ジョブ数最大値1200は同時実行可能なジョブ数の最大値を示している。ジョブ数最小値1201は同時実行可能なジョブ数の最小値を示している。また、ジョブステップ数1202は、電力会社から高機能電力計1080を経由して、管理装置1000が負荷制御信号を受信する毎に増減させるジョブ数を示している。
【0109】
これらの設定値は、本実施の形態に係る負荷制御を行う前に操作部1070を用いてユーザーが予め入力したものであり、これらはパネル制御部1050を経由してCPU1010が設定記憶部1040に記憶させておく。
【0110】
以下の説明では、ジョブ数最大値1200が複合機台数分である3、ジョブ数最小値1201が1、ジョブステップ数1202が1として設定されているものとする。
【0111】
図15は、図13におけるCPU1010により実行される同時許可ジョブ数処理の手順を示すフローチャートである。
【0112】
この同時許可ジョブ数処理は、ROM1020に記憶されたプログラムか、RAM1030に展開されたプログラムに従って、CPU1010が実行する。
【0113】
図15において、まず同時許可ジョブ数1033として設定記憶部1040に記憶された同時実行可能なジョブ数最大値1200を設定する(ステップS1101)。
【0114】
次いで、同時許可ジョブ数がジョブ数最小値1201と等しいか否か判別する(ステップS1102)。
【0115】
ステップS1102の判別の結果、同時許可ジョブ数がジョブ数最小値1201と等しいとき(ステップS1102でYES)、ステップS1106に進む。一方、同時許可ジョブ数がジョブ数最小値1201と等しくないとき(ステップS1102でNO)、通信部1060を介して、高機能電力計1080から負荷低減要求信号を受信したか否か判別する(ステップS1103)。
【0116】
ステップS1103の判別の結果、負荷低減要求信号を受信していないとき(ステップS1103でNO)、ジョブステップ数1202を読みとる(ステップS1104)。次いで、同時許可ジョブ数1033からジョブステップ数1202を減算する(ステップS1105)。
【0117】
次いで、同時許可ジョブ数がジョブ数最大値1200と等しいか否か判別する(ステップS1106)。ステップS1106の判別の結果、同時許可ジョブ数がジョブ数最大値1200と等しいとき(ステップS1106でYES)、ステップS1110に進む。
【0118】
一方、同時許可ジョブ数がジョブ数最大値1200と等しくないとき(ステップS1106でNO)、通信部1060を介して、高機能電力計1080から負荷復帰許可信号を受信したか否か判別する(ステップS1107)。
【0119】
ステップS1107の判別の結果、負荷復帰許可信号を受信していないとき(ステップS1107でNO)、ジョブステップ数1202を読みとる(ステップS1108)。次いで、同時許可ジョブ数1033にジョブステップ数1202を加算する(ステップS1109)。
【0120】
その後、この同時許可ジョブ数処理を終了するか否か判別する(ステップS1110)。ステップS1110の判別の結果、同時許可ジョブ数処理を終了するときは(ステップS1110でYES)、本処理を終了し、同時許可ジョブ数処理を終了しないときは(ステップS1110でNO)、ステップS1102の処理に戻る。
【0121】
図16は、図13におけるCPU1010により実行されるジョブ許可処理の手順を示すフローチャートである。
【0122】
図16におけるジョブ許可処理は、管理装置1000と複合機1091を例にしている。なお管理装置1000と複合機1092、または複合機1093の組み合わせに関しても処理の内容は同じである。
【0123】
図16において、まず稼働ジョブ数1032を0とする(ステップS1200)。次いで、複合機1091からジョブ実施許可要求であるReq信号を受信したか否か判別する(ステップS1201)。
【0124】
ステップS1201の判別の結果、Req信号を受信していないときは(ステップS1201でNO)、ステップS1206に進む。一方、Req信号を受信しているときは(ステップS1201でYES)、現在の稼働ジョブ数1032が同時許可ジョブ数1033未満か否か判別する(ステップS1202)。
【0125】
ステップS1201の判別の結果、稼働ジョブ数1032が同時許可ジョブ数1033未満のときは(ステップS1201でYES)、Req信号を送信した複合機1091に対し、ジョブ実施許可を示すAck信号を送信する(ステップS1203)。そして、稼働ジョブ数1032に1を加算する(ステップS1204)。
【0126】
一方、ステップS1201の判別の結果、稼働ジョブ数1032が同時許可ジョブ数1033以上のときは(ステップS1201でNO)、複合機1091に対するAck信号をウェイトキュー1031に格納する(ステップS1205)。
【0127】
次いで、ウェイトキュー1031に複合機1091に対するAck信号が存在するか否か判別する(ステップS1206)。ステップS1206の判別の結果、Ack信号が存在しないとき(ステップS1206でNO)、ステップS1211に進む。
【0128】
一方、Ack信号が存在するとき(ステップS1206でYES)、稼働ジョブ数1032が同時許可ジョブ数1033未満か否か判別する(ステップS1207)。ステップS1207の判別の結果、稼働ジョブ数1032が同時許可ジョブ数1033以上のときは(ステップS1207でNO)、ステップS1211に進む。
【0129】
一方、稼働ジョブ数1032が同時許可ジョブ数1033未満のときは(ステップS1207でYES)、ウェイトキュー1031からAck信号を取り出し(ステップS1208)、取りだしたAck信号を送信する(ステップS1209)。そして、稼働ジョブ数1032に1を加算する(ステップS1210)。
【0130】
次いで、複合機1091からジョブ実施終了を示す終了通知End信号を受信したか否か判別する(ステップS1211)。ステップS1211の判別の結果、終了通知End信号を受信していないときは(ステップS1211でNO)、ステップS1213に進む。一方、終了通知End信号を受信したときは(ステップS1211でYES)、稼働ジョブ数1032から1を減算する(ステップS1212)。
【0131】
その後、このジョブ許可処理を終了するか否か判別する(ステップS1213)。ステップS1213の判別の結果、ジョブ許可処理を終了するときは(ステップS1213でYES)、本処理を終了し、ジョブ許可処理を終了しないときは(ステップS1213でNO)、ステップS1201の処理に戻る。
【0132】
なお、ステップS1202、1207に係る説明において、稼働ジョブ数1032が同時許可ジョブ数1033以上と表現しているが、実際には稼働ジョブ数1032が同時許可ジョブ数1033と等しいということとなる。
【0133】
図17は、図13における複合機1091により実行される開始要求及び終了通知処理の手順を示すフローチャートである。
【0134】
図17における開始要求及び終了通知処理は、複合機1092,1093においても処理の内容は同じである。
【0135】
図17において、ネットワーク経由で印刷ジョブを通信部1060から受信したか、または操作部1070からコピー等のジョブ指示を受信したか否か判別する(ステップS1300)。
【0136】
ステップS1300の判別の結果、印刷ジョブ及びジョブ指示のいずれも受信していないときは(ステップS1300でNO)、ステップS1305に進む。一方、印刷ジョブ及びジョブ指示のいずれかを受信したときは(ステップS1300でYES)、管理装置1000にReq信号を送信する(ステップS1301)。
【0137】
次いで、管理装置1000からAck信号を受信すると(ステップS1302でYES)、ジョブの実行を開始し(ステップS1303)ジョブがすると管理装置1000に対しEnd信号を送信する(ステップS1304)。
【0138】
その後、この開始要求及び終了通知処理を終了するか否か判別する(ステップS1305)。ステップS1305の判別の結果、開始要求及び終了通知処理を終了するときは(ステップS1305でYES)、本処理を終了し、開始要求及び終了通知処理を終了しないときは(ステップS1305でNO)、ステップS1300の処理に戻る。
【0139】
図18は、管理装置1000と複合機1091,1092,1093との通信の様子を示すシーケンス図である。
【0140】
図18においては、上述した同時許可ジョブ数処理、ジョブ許可処理、開始要求及び終了通知処理におけるステップを用いて説明している。
【0141】
図18において、管理装置1000はステップS101にて同時許可ジョブ数1033にジョブ数最大値1200が設定されている。そして、今の場合、同時許可ジョブ数が3に設定されたとする。
【0142】
ジョブ要求3011を受信(ステップS1300)した複合機1091は、管理装置1000に対し、Req信号3012を送信する(ステップS301)。
【0143】
複合機1091からReq信号3012を受信(ステップS1201)した管理装置1000は、同時許可ジョブ数1033の3と稼働ジョブ数1032の0とを比較する(ステップS1202)。
【0144】
その結果、同時許可ジョブ数1033のほうが大きいと判別し、複合機1091にAck信号3013を送信する(ステップS1203)。
【0145】
管理装置1000からのAck信号3013を受信した複合機1091は、ジョブ3014の実行を開始する(ステップS3003)。
【0146】
ジョブ3014が終了すると複合機1091は管理装置1000に対し、End信号3015を送信する(ステップS3004)。End信号3015を受信した管理装置1000は、稼働ジョブ数から1を減算する(S1212)。
【0147】
同様にジョブ要求3021、ジョブ要求3031に対しても各複合機と管理装置1000でReq信号、Ack信号、End信号を用いて処理が行われる。ジョブ要求3011,3021,3031によるそれぞれのReq信号が管理装置1000に送信された時点では同時許可ジョブ数1033は3である。従って、それぞれの複合機1091,1092,1093に対するAck信号は即座に送信される。これにより、各複合機1091,1092,1093でのジョブはほぼ並行して実行される。
【0148】
次いで、電力会社3000から負荷低減要求信号308が、高機能電力計1080経由で管理装置1000に送信される。負荷低減要求信号308を受信した管理装置1000は同時許可ジョブ数1033からジョブステップ数1202を減算し、同時許可ジョブ数1033は2となる。
【0149】
このため、ジョブ3044に続き、ジョブ3055を開始した時点で管理装置1000の稼働ジョブ数1032は同時許可ジョブ数1033と等しくなる。
【0150】
この状態で、ジョブ要求3061を受信した複合機1093からReq信号3062を受信した管理装置1000は、同時許可ジョブ数1033と稼働ジョブ数1032とが等しいと判別する。その結果、Ack信号をウェイトキュー1031に格納する(ステップS1205)。
【0151】
次いで、ジョブ3044の終了によりEnd信号3045を受信した管理装置1000は稼働ジョブ数1032から1を減算する(ステップS1212)。それにより、管理装置1000は、稼働ジョブ数1032が同時許可ジョブ数1033未満と判別する。そして、管理装置1000は、ウェイトキュー1031にある複合機1093へのAck信号3063を複合機1093に送信する(ステップS1209)。Ack信号3063を受信した複合機1093はジョブ3064の実行を開始する。
【0152】
管理装置1000では、さらなる負荷低減要求信号により同時許可ジョブ数が1になる。そして、管理装置1000は、ジョブ3074が実行されている時点でジョブ要求3081によるReq信号3082を受信する。
【0153】
管理装置1000は、稼働ジョブ数1032が同時許可ジョブ数1033未満ではないので、複合機1091へのAck信号をウェイトキュー1031に格納する。
【0154】
そして、電力会社3000が送信した負荷復帰許可信号3089を受信した管理装置1000は、同時許可ジョブ数1033にジョブステップ数1202を加算し、同時許可ジョブ数1033は2となる。
【0155】
このとき、ウェイトキュー1031には、複合機1091へのAck信号が存在するため(ステップS1206)、同時許可ジョブ数1033と稼働ジョブ数1032が比較される(ステップS1207)。
【0156】
そして負荷復帰許可信号3089の受信により同時許可ジョブ数1033が増えた結果、稼働ジョブ数1032が同時許可ジョブ数1033未満と判別される。
【0157】
その後、取りだされたAck信号3083が複合機1091に送信される。Ack信号3083を受信した複合機1091はジョブ3084の実行を開始する。
【0158】
このようにして、管理装置1000にて電力会社3000からの負荷低減要求信号、負荷復帰許可信号に応じて同時許可ジョブ数1033の増減が行われ、複数の複合機において同時に実施されるジョブ数の制御が行われる。
【0159】
上述した第2の実施の形態において、ジョブステップ数1202の値は予めユーザーによる設定値を用いていたが、ジョブステップ数1202を管理装置1000が算出してもよい。例えば、負荷低減要求信号に負荷削減量としてパーセントでの指定がされた場合のジョブステップ数1202の算出方法を以下に説明する。
【0160】
負荷低減要求信号により負荷削減量x[%]が指定された場合、全複合機台数にx[%]を乗算した値の小数点以下を繰り上げした値をジョブステップ数1202として設定する。すなわちジョブステップ数1202の計算式は以下ようになる。
ジョブステップ数=(複合機の台数×N[%])の小数点繰り上げ値
例えば、負荷低減要求信号により負荷低減量60[%]を指定され、複合機台数が3台である場合は、以下のようになる。
【0161】
ジョブステップ数=3×0.6=1.8
従って、小数点以下を繰り上げした整数値としてジョブステップ数1202は2と算出される。
【0162】
次いで、負荷低減要求信号における負荷削減量としてワット数での指定がされた場合のジョブステップ数1202の算出方法を以下に説明する。
【0163】
図19は、複合機毎のジョブ実行時電力値を示す図である。
【0164】
図19に示される内容は、予め管理装置1000の設定記憶部1040またはRAM1030に記憶されている。
【0165】
図19において、複合機A,B,Cにおけるジョブ実行時電力値は、ジョブを実行した際の消費電力見積もり値が最も大きい最大消費電力値である。また、合計1802は、全複合機のジョブを実行した際の電力値を加算した消費電力合計値である。
【0166】
負荷低減要求信号により、負荷低減量y[W]を指定された場合、管理装置1000は、合計1802からy[W]を減算した値を、ジョブ実行時電力値のうち、最大の電力値である消費電力最大値1801で除算した商(整数部分)を算出する。算出された値を、ジョブステップ数1202として設定する。
【0167】
すなわちジョブステップ数1202の計算式は以下のようになる。
ジョブステップ数=(合計―y[W])/(最大消費電力値)
例えば、負荷低減信号として負荷低減量100[W]を指定された場合、図8における合計1802は212[W]、消費電力最大値1801は90[W]であるため
ジョブステップ数=(212―100)/90=1.24
商は1であるので、ジョブステップ数1202は1と算出される。
【0168】
(他の実施の形態)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【符号の説明】
【0169】
10 電力管理サーバー
20 複合機A
30 複合機B
40 複合機C
50 複合機D
60 ホストPC
70,1080 高機能電力計
100 プリンタシステム
101,203,1010 CPU
102,204,1020 ROM
103,205,1030 RAM
104,208 LAN I/F制御部
105 無線通信I/F制御部
106 プリンタシステム電力合算プログラム記憶領域
107 ジョブスケジューリング変更プログラム記憶領域
108 ジョブ電力算出プログラム記憶領域
109 プリンタシステム電力上限設定プログラム記憶領域
211 ジョブキュー記憶領域
1000 管理装置
1031 ウェイトキュー
1032 稼働ジョブ数
1033 同時許可ジョブ数
1040 設定記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機器が実行する各々の処理ごとに当該処理を実行した場合の消費電力及び実行に要する時間が記憶された記憶手段を有し、前記複数の機器と通信可能であり、前記複数の機器で構成されたシステム全体の消費電力を管理する管理装置であって、
現時点での前記システム全体の消費電力を取得する取得手段と、
前記システム全体で消費可能な電力の上限値を設定する設定手段と、
前記記憶手段に記憶された消費電力及び実行に要する時間、これから実行が予定される処理、及び前記取得手段により取得された現時点での前記システム全体の消費電力から、前記システム全体における消費電力を予測する予測手段と、
前記予測手段により予測された消費電力が、前記設定手段により設定された上限値を上回る場合に、前記実行が予定されている処理の開始時刻を、前記上限値を超えないように変更する変更手段と
を備えたことを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記設定手段が上限値を設定するタイミングは、前記機器が処理を実行する直前のタイミング、前記機器が処理を終了した直後のタイミング、及び実行が予定されていた処理の実行が消滅したタイミングのうちの少なくとも1つのタイミングであることを特徴とする請求項1記載の管理装置。
【請求項3】
前記システムへの電力供給量が予め定められた電力量を下回ることが通知された場合に、前記設定手段は上限値を設定することを特徴とする請求項1記載の管理装置。
【請求項4】
前記システムが使用可能な電力量と、前記システム全体での消費電力量との差の絶対値が、予め定められた値よりも小さくなった場合に、前記設定手段は上限値を設定することを特徴とする請求項1記載の管理装置。
【請求項5】
前記システムが予め定められた期間内で消費した平均電力量が、前記システムに許可された電力量を超えた場合に、前記設定手段は上限値を設定することを特徴とする請求項1記載の管理装置。
【請求項6】
前記平均電力量が、前記システムに許可された電力量を超えた場合に、前記変更手段は、実行が予定されている処理のうち、処理に必要となる消費電力が他の処理と比較して小さい処理を優先して実行させるように処理の開始時刻を変更することを特徴とする請求項5記載の管理装置。
【請求項7】
前記機器が省エネモードで動作可能な場合、当該機器を省エネモードで動作させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項8】
複数の機器が実行する各々の処理ごとに当該処理を実行した場合の消費電力及び実行に要する時間が記憶された記憶手段を有し、前記複数の機器で構成されたシステム全体の消費電力を管理する管理装置の制御方法であって、
現時点での前記システム全体の消費電力を取得する取得ステップと、
前記システム全体で消費可能な電力の上限値を設定する設定ステップと、
前記記憶手段に記憶された消費電力及び実行に要する時間、これから実行が予定される処理、及び前記取得ステップにより取得された現時点での前記システム全体の消費電力から、前記システム全体における消費電力を予測する予測ステップと、
前記予測ステップにより予測された消費電力が、前記設定ステップにより設定された上限値を上回る場合に、前記実行が予定されている処理の開始時刻を、前記上限値を超えないように変更する変更ステップと
を備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
複数の機器が実行する各々の処理ごとに当該処理を実行した場合の消費電力及び実行に要する時間が記憶された記憶手段を有し、前記複数の機器で構成されたシステム全体の消費電力を管理する管理装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
現時点での前記システム全体の消費電力を取得する取得ステップと、
前記システム全体で消費可能な電力の上限値を設定する設定ステップと、
前記記憶手段に記憶された消費電力及び実行に要する時間、これから実行が予定される処理、及び前記取得ステップにより取得された現時点での前記システム全体の消費電力から、前記システム全体における消費電力を予測する予測ステップと、
前記予測ステップにより予測された消費電力が、前記設定ステップにより設定された上限値を上回る場合に、前記実行が予定されている処理の開始時刻を、前記上限値を超えないように変更する変更ステップと
を備えたことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−66141(P2013−66141A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277057(P2011−277057)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】