説明

管継手

【課題】リリースを回転させて、押込み可能位置又は押込み不能位置に切り替える際の、リリースの回転抵抗を低減させ得る管継手を提供すること。
【解決手段】相互の位置関係によってリリース3の可動範囲を制御する凹部6と凸部7を有し、前記凹部6と凸部7とが嵌合する相対位置関係においてリリース3が押し込み可能となり、前記リリース3を押し込むことによりロックリング2が変位して配管1の抜き出しが可能になる管継手において、前記凸部7に、リリース押込み方向に可動できる弾性機構(70,71)を付与させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人為的なミスによる配管の不用意な抜け出しを防止することができる一般の空圧用途その他に利用可能な管継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記管継手としては例えば特許文献1があり、その構造は以下に述べる(A)〜(D)の通りである。
(A)配管を把持するロックリングと前記ロックリングを変位させるリリースとを継手本体に有し、前記リリースを押し込むとロックリングの内径を拡径させ配管の抜き出しが可能な状態となり、
(B)前記継手本体に形成された凸部とリリース側に形成された凹部との位置関係によりリリースの可動範囲を制御し、
(C)前記凹部と凸部が嵌合するような相対位置へと操作するとリリースを押し込んで配管を抜き出すことができるようにしてある。
(D)なお、継手本体に対してリリースが不用意に回転して前記凹部と凸部が嵌合状態(リリースの押し込み可能状態)とならないように、リリースにおける継手本体との対向面に上記凸部の先端部のみが嵌り込む窪み部を設けるようにできる。
【0003】
この管継手は、上記の如き構成であるから、凸部がリリースの窪み部に嵌り込むとリリースの押し込み動作を制限し、また、凸部がリリースの凹み部に嵌合するとリリースの押し込みが可能となる。
【0004】
しかしながら、上記のそれぞれの位置への切り替えは、リリースを回転させるようにさせて行うが、回転中に凸部がリリースに干渉する際には、回転トルクが大きくなり、操作感が悪いという問題があった。
【特許文献1】特開2003−28371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明では、リリースを回転させて、押込み可能位置又は押込み不能位置に切り替える際の、リリースの回転抵抗を低減させ得る管継手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1記載の発明)
この発明の管継手は、相互の位置関係によってリリースの可動範囲を制御する凹部と凸部を有し、前記凹部と凸部とが嵌合する相対位置関係においてリリースが押し込み可能となり、前記リリースを押し込むことによりロックリングが変位して配管の抜き出しが可能になる管継手において、前記凸部に、リリース押込み方向に可動できる弾性機構を付与させてある。
(請求項2記載の発明)
この発明の管継手は、配管を把持するロックリングと前記ロックリングを変位させるリリースと前記ロックリングの位置決め固定に寄与するカラーを継手本体に有し、前記リリースを押し込むとロックリングの内径を拡径させ配管の引き出しが可能な状態となると共に、前記継手本体又はカラーとリリースの夫々に形成された凹部と凸部との位置関係によりリリースの可動範囲を抑制し、前記凹部と前記凸部が嵌合するような相対位置へと操作するとリリースを押し込んで配管を抜き出しできるようにした管継手において、前記凸部に、リリース押込み方向に可動できる弾性機構を付与させている。
(請求項3記載の発明)
この発明の管継手は、上記請求項1又は2記載の発明に関し、リリースが不用意に押し込み可能位置とならないように、凸部に形成した山形状の突起が係脱可能に.嵌り込む窪み部を設けてある。
【発明の効果】
【0007】
この発明の管継手では、リリースを回転させて、押込み可能位置又は押込み不能位置に切り替える際の、リリースの回転抵抗を低減させ得ることに成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下にこの発明の管継手を実施するための最良の形態として実施例について詳しく説明する。
【実施例1】
【0009】
この発明の管継手は、図1〜図4に示すように、合成樹脂製の配管1(ホースやチューブ類)を把持する金属製の爪形状のロックリング2と、前記ロックリング2を変位させるための配管挿入側のリリース3(開放スリーブ)とを継手本体4内に有して成るものであり、前記ロックリング2は、図4に示す如く、カラー5により継手本体4内において位置決め固定されている。なお、この実施例では上記継手本体4及びカラー5は共に合成樹脂で構成されている。
【0010】
上記管継手から配管1を外すときは、前記リリース3を奥側に向けて押し込むとロックリング2が倒れこんで押し広げられ、その内径を配管1の外径以上に拡径させ、配管1の引き出しが可能な状態となるようにしてある。
【0011】
ここで、この管継手では、図1や図2に示すように、継手本体4側には凸部7を、リリース3側には凹部6を、それぞれ合成樹脂により一体的成形してある。
【0012】
凸部7は、図2や図5に示すように、継手本体4からリリース3側に向かって180°間隔で突設してあり、具体的には、継手本体4に対して片持ち状態(片持ち部分を70で示す)としてあると共に押し込み代71を設けることにより押込み可能としてある。また、この凸部7には、図1〜図3に示すように、継手本体4の頂上として山型状の突起72を具えており、前記突起72のみが図2や図3に示すように、上記凹部6及び後述する窪み部8に嵌入されるようにしてある。なお、この実施例では、上記凸部7に対して片持ち部分70及び押し込み代71により弾性機構を付与してある。
【0013】
凹部6は、図1に示すように、リリース3の外周部分を180°間隔で内側に凹ますようにして形成してあり、その円周方向幅は凸部7が余裕をもって嵌入される大きさとなっている。
【0014】
また、窪み部8は、図1に示すように、逆山形状に形成されており、上記リリース3において凹部6と90°間隔で設けられている。
【0015】
そして、前記凹部6と凸部7との位置関係により配管挿脱方向のリリース3の可動範囲を制御し、前記凹部6と凸部7が嵌合するような相対位置関係へと操作するとリリース3を押込んで配管1を引き出すことができるようにしてある。逆に、凸部7の突起72が、図3に示すように、リリース3の窪み部8に嵌り込んでいるときには、凸部7と窪み部8の構成壁との係止によりリリース3の回転ずれは生じないので、配管1が不用意に引き出されるようなことはない。
【0016】
次に、この実施例の管継手の具体的使用について説明する。
【0017】
配管1を管継手から分離するときは、ロック状態の位置(図3、4参照)から継手本体4に対してリリース3を1/4(90°)回転させる。すると、ロック解除状態(図1、2参照)に移行し、凸部7と凹部6の位置が合ってリリース3と凸部7とが衝突することなく前記リリース3は押圧可能な状態となる。したがって、このリリース3の押し込みにより配管1を引き出すことができる。
【0018】
ここで、この管継手では、ロック状態の位置(図3、4参照)から継手本体4に対してリリース3を1/4(90°)回転させる場合、リリース3を指で摘んで行うことになるが、その回転力により突起72の傾斜面と窪み部8の傾斜面とのカム機構的対偶により窪み部8から突起72が抜け出ると同時に凸部7が押し込み代71と同一又は少なめに押し込まれ、その状態を維持したままで突起72の端部とリリース3とが摺動する態様で相対移動することになる。
【0019】
したがって、この管継手の如き構造にすると、押込み可能位置又は押込み不能位置に切り替える際のリリース3の回転抵抗を低減させることができる。
【0020】
つまり、この管継手では、(1)突起72と窪み部8の構成壁とが係合しているときにはリリース3はしっかりとした押し込み不能状態が維持され、(2)凹部6と凸部7が嵌合しているときにはリリース3は自由に押し込み可能な状態が維持され、(3)前記(1)〜(2)の間では上記背景技術の欄に記載した管継手と比較して小さな力で移動できる(操作感がよい)。
【実施例2】
【0021】
次に、実施例2を実施例1との相違点を中心に説明する。
【0022】
この実施例1の管継手では、図1や図2に示すように、継手本体4a側には凸部7を、リリース3b側には凹部6a及び窪み部8aを、それぞれ一体的に構成してあるが、この実施例2の管継手では、図6や図7に示すように、継手本体4a側には凹部6aを、リリース3側には凸部7aをそれぞれ設けるようにしてある。
【0023】
この実施例2の管継手では、図6、図7に示すように、(1)突起72aと窪み部8aの構成壁とが係合しているときにはリリース3aはしっかりとした押し込み不能状態が維持され、(2)凹部6aと凸部7aが嵌合しているときにはリリース3aは自由に押し込み可能な状態が維持され、(3)前記(1)〜(2)の間では上記背景技術の欄に記載した管継手と比較して小さな力で移動できる(操作感がよい)。
【実施例3】
【0024】
次に、実施例3の管継手を、実施例1との相違点を中心に説明する。
【0025】
上記実施例1の管継手では凸部7bを継手本体4bに設けているのに対して、この実施例3では図8〜図10に示すように、突起72bを具えた凸部7bをカラー5bに設けている。また、実施例1の管継手では凹部6bはチューブ差込方向に貫通させてあるのに対して、この実施例3では図8〜図10に示すように、リリース3bを厚手にすると共に凹部6bはチューブ差込方向に貫通しないものとしてある。
【0026】
ここで、リリース3bのカラー5bとの対向面側には、図8〜図10に示すように、90°間隔で高い部分と低い部分(凹部6b)を交互に設けてあり、前記高い部分には上記突起72bが嵌り込む窪み部8bを設けてある。なお、凸部7bの構成については実施例1と若干相違するが、図8〜図10に示すように、片持ち部分70b、押し込み代71b及び突起72bを有している点は同様である。
【0027】
次に、この実施例3の管継手の具体的使用について説明する。
【0028】
配管1を管継手から分離するときは、ロック状態の位置(図8参照)からカラー5bに対してリリース3bを1/4(90°)回転させる。すると、図9の状態を経てロック解除状態(図10参照)に移行し、凸部7bと凹部6bの位置が合ってリリース3bと凸部7bとが衝突することなく前記リリース3bは押圧可能な状態となる。したがって、このリリース3bの押し込みにより配管1を引き出すことができる。
【0029】
ここで、この管継手では、ロック状態の位置(図8参照)からカラー5bに対してリリース3bを1/4(90°)回転させる場合、リリース3bを指で摘んで行うことになるが、その回転力により突起72bの傾斜面と窪み部8bの傾斜面とのカム機構的対偶により窪み部8bから突起72bが抜け出ると同時に凸部7bが押し込み代71bと同一又は少なめに押し込まれ(図9参照)、その状態を少しだけ維持した後、突起72bはリリース3bの凹部6bと隙間を開けた状態のまま相対移動することになる。
【0030】
したがって、この管継手の如き構造にすると、押込み可能位置又は押込み不能位置に切り替える際のリリース3bの回転抵抗を低減させることができる。
【0031】
つまり、この管継手では、(1)突起72bと窪み部8bの構成壁とが係合しているときにはリリース3bはしっかりとした押し込み不能状態が維持され、(2)凹部6bと凸部7bが嵌合しているときにはリリース3bは自由に押し込み可能な状態が維持され、(3)前記(1)〜(2)の間における突起72bと窪み部8bの構成壁との係合を解くとき以外では、上記背景技術の欄に記載した管継手と比較して小さな力で移動できる(操作感がよい)。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1を管継手におけるロック状態解除の斜視図。
【図2】図1の管継手のロック解除状態の側面図。
【図3】図1の管継手のロック状態の側面図。
【図4】図1の管継手の半断面図。
【図5】図1の管継手においてリリースにより凸部が押し込まれた状態を示す側面図。
【図6】実施例2の管継手のロック状態解除の斜視図。
【図7】図6の管継手においてリリースと一体の凸部が凹部以外のところで押し込まれた状態を示す側面図。
【図8】実施例3を管継手におけるロック状態を示す側面図。
【図9】図8の管継手においてリリースにより押し込まれたカラー側の突起を示す側面図。
【図10】図8の管継手におけるロック状態解除の側面図。
【符号の説明】
【0033】
1 配管
2 ロックリング
3 リリース
3a リリース
3b リリース
4 継手本体
4a 継手本体
4b 継手本体
5 カラー
5a カラー
5b カラー
6 凹部
6a 凹部
6b 凹部
7 凸部
7a 凸部
7b 凸部
70 片持ち部分
70a 片持ち部分
70b 片持ち部分
71 押し込み代
71a 押し込み代
71b 押し込み代
72 突起
72a 突起
72b 突起
8 窪み部
8a 窪み部
8b 窪み部















【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互の位置関係によってリリースの可動範囲を制御する凹部と凸部を有し、前記凹部と凸部とが嵌合する相対位置関係においてリリースが押し込み可能となり、前記リリースを押し込むことによりロックリングが変位して配管の抜き出しが可能になる管継手において、前記凸部に、リリース押込み方向に可動できる弾性機構を付与させたことを特徴とする管継手。
【請求項2】
配管を把持するロックリングと前記ロックリングを変位させるリリースと前記ロックリングの位置決め固定に寄与するカラーを継手本体に有し、前記リリースを押し込むとロックリングの内径を拡径させ配管の引き出しが可能な状態となると共に、前記継手本体又はカラーとリリースの夫々に形成された凹部と凸部との位置関係によりリリースの可動範囲を抑制し、前記凹部と前記凸部が嵌合するような相対位置へと操作するとリリースを押し込んで配管を抜き出しできるようにした管継手において、前記凸部に、リリース押込み方向に可動できる弾性機構を付与させたことを特徴とする管継手。
【請求項3】
リリースが不用意に押し込み可能位置とならないように、凸部に形成した山形状の突起が係脱可能に.嵌り込む窪み部を設けてあることを特徴とする請求項1又は2記載の管継手。




















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−309280(P2008−309280A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159300(P2007−159300)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(000247258)ニッタ・ムアー株式会社 (61)
【Fターム(参考)】