説明

管路の内張り方法

【課題】下水配管などの埋没配管の内面の補修するための、管路の内張り方法を提供する。
【解決手段】管路1内に柔軟なチューブ7を挿通し、筒状の繊維層の外面に柔軟な気密層を形成し、前記繊維層に反応硬化型樹脂液を含浸してなる内張り材5を、流体圧力により内側が外側となるように裏返しながらチューブ7内に挿通すると共に、裏返った内張り材5を前記流体圧力により膨らませつつ、前記反応硬化型樹脂液を硬化せしめることにより、管路1の内側に剛直なFRP管を形成して内張りする方法において、チューブ7が、ナイロン樹脂よりなる外層と、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂よりなる内層とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス導管、水道管、下水道管、電力線や通信線などの敷設管路などの、主として地中に埋設された管路に対し、補修又は補強の目的で内張りするための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年この種の管路の内張り方法として、筒状織布などの繊維層の外面に柔軟な気密層を形成した内張り材に、前記繊維層に反応硬化型樹脂液を含浸させ、流体圧力により内側が外側となるように裏返しながら管路内に挿通すると共に、裏返った内張り材を前記流体圧力により膨らませ、前記反応硬化型樹脂液を硬化させて、管路の内面に沿って剛直な内張りを形成する方法が行われている。
【0003】
またかかる内張り方法において、予め管路内に柔軟なチューブを挿通しておき、前記内張り材を裏返しながら前記チューブ内に挿通することにより、管路の損傷部や分岐部から反応硬化型樹脂液が漏れ出し、内張り材が十分に剛直に硬化しない事態が生じるのを防止することも行われており、例えば特開平1−182025号公報や、特開平6−143424号公報に示されている。
【0004】
而してこの種の方法において、前記チューブとしてはナイロンチューブが最も適している。すなわちナイロンは強度が高く且つ耐熱性を有しており、前記内張り方法において内張り材の内圧による膨脹を支えることができると共に、反応硬化型樹脂液を硬化させる際の熱にも十分に耐えることができる。またインフレーション成型により容易に任意の径及び厚さのチューブを成型することができる。
【0005】
しかしながらナイロンの特性として、反応硬化型樹脂としてのエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂に対する接着性が極端に悪いと言う問題がある。
【0006】
一方、管路に分岐管が付随しているときには、その管路に内張りを施すことにより、内張り材がその分岐部を閉塞するので、管路に内張りした後その分岐部の内張り材に穿孔し、分岐管を管路に連通せしめることが必要となる。
【0007】
その穿孔は、多くの場合管路の内側から又は分岐管側から、分岐部を塞いだ内張り材をドリルで穿孔するのであるが、前述のようにナイロンチューブの接着性が悪いため、ドリルがナイロンチューブに触れるとチューブが内張り材から剥がれてしまい、綺麗に穿孔することができず、その切れ端が分岐部に残ると流路を阻害する。
【0008】
ナイロンと同程度の耐熱性を有するポリエステル樹脂は、反応硬化型樹脂に対する接着性に優れているが、ナイロンに比べるとインフレーション成型が困難であって、高価になるので好ましくない。
【特許文献1】特開平1−182025号公報
【特許文献2】特開平6−143424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、管路内に柔軟なチューブを挿通し、反応硬化型樹脂液を含浸した内張り材を流体圧力により裏返しながら前記チューブ内に挿通し、前記反応硬化型樹脂液を硬化せして管路の内側に剛直なFRP管を形成して内張りする方法において、前記チューブがナイロンを主体とし、且つ内張り材における反応硬化型樹脂に強固に接着し、内張り後に分岐部において穿孔する際においても、チューブが内張り材から剥がれることなく、きれいに穿孔することのできるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して本発明は、管路内に柔軟なチューブを挿通し、筒状の繊維層の外面に柔軟な気密層を形成し、前記繊維層に反応硬化型樹脂液を含浸してなる内張り材を、流体圧力により内側が外側となるように裏返しながら前記チューブ内に挿通すると共に、裏返った内張り材を前記流体圧力により膨らませつつ、前記反応硬化型樹脂液を硬化せしめることにより、管路の内側に剛直なFRP管を形成して内張りする方法において、前記チューブが、ナイロン樹脂よりなる外層と、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂よりなる内層とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、チューブがナイロン樹脂の外層とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂の内層とを有する多層構造であるので、ナイロンの外層が内張り時の熱に耐えて必要な強度を保持すると共に、内張り時の熱によって内層のEVA樹脂が熔融又は軟化して、外層のナイロンと内張り材とを強固に接着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図1は本発明の方法により管路1に内張りを施す状態を示すものである。2は内張りのための圧力容器であって、その先端には口金3が形成され、後部には導入口4が形成されており、当該導入口4から口金3まで圧力容器2を貫通して、扁平に折り畳まれた状態の柔軟な内張り材5が挿通され、当該内張り材5の先端は外側に折り返されて前記口金3に環状に固定されている。6は導入口4を気密に保持するシール部材である。
【0013】
内張り材5は、筒状織布などの繊維層の外面に気密層を形成したものであって、当該内張り材5内には反応硬化型樹脂液が注入され、前記繊維層に含浸せしめられている。また一方前記管路1内には、柔軟なチューブ7が挿通されている。
【0014】
この状態で圧力容器2の圧力流体送入口8から圧力流体を送入すると、前記内張り材5は前記口金3への環状固定部分において内側が外側となるように裏返って折り返し部分5aが形成され、未反転の内張り材5を導入口4から引き込みつつ、その内張り材5は折り返し部分5aにおいて内側が外側となるように裏返り、その折り返し部分5aは口金3から突出する。
【0015】
その折り返し部分5aを前記チューブ7内に導入し、当該チューブ7内を進行させて、内張り材5をその全長に亙って裏返してチューブ7内に挿通すると共に、裏返った内張り材5を前記流体圧力により膨らませ、前記チューブ7を介して管路1の内面に圧接するのである。
【0016】
内張り材5をその全長に亙って裏返し、チューブ7内に挿通して膨らませた状態で、繊維層に含浸された前記反応硬化型樹脂液を硬化させ、管路1の内面に強固なFRP管を形成する。この状態が図2に示されている。
【0017】
而して本発明においては、前記チューブ7が、ナイロン樹脂よりなる外層と、EVA樹脂よりなる内層とを有する、少なくとも二層を有している。図3はそのチューブ7の一例を示すものであって、最外面にナイロン樹脂よりなる外層9が形成され、最内面にはEVA樹脂よりなる内層10が形成されている。
【0018】
チューブ7における外層9は、内張り時に内張り材5の繊維層に含浸された反応硬化型樹脂液が管路の損傷部から流出するのを防止し、加熱下において内張り材5の形状を保持するものであるから、内張りのための加熱下においても十分な強度を有することが必要であり、その厚みは0.05〜0.2mmとするのが適当である。
【0019】
内層10は、内張り材5とチューブ7の外層9とを接着するものであるから、その両者を強固に接着し得るものであることが必要であり、その厚みは0.05〜0.2mm程度が適当である。
【0020】
本発明においては、チューブ7の外層9として、強度が大きく耐熱性に優れたナイロン樹脂が使用されているので、チューブ7は内張り時の熱に十分に耐えることができ、管路の損傷部から反応硬化型樹脂液が流出するのを防止して、内張り材5の形状を保持することができる。
【0021】
またチューブ7の内層10として、熱によって容易に熔融して接着力を発揮するEVA樹脂が使用されているので、内張り時の熱によってこの内層10のEVAが熔融又は軟化し、内側の内張り材5に強力に接着する。
【0022】
従って本発明によれば、ナイロンの外層9が内張り時の熱に耐えて必要な強度を保持し、反応硬化型樹脂液の流出を防止して内張り材5の形態を保持すると共に、内張り時の熱によって内層10のEVA樹脂が熔融又は軟化して、チューブ7を内張り材5に強固に接着し、管路の分岐部において内張り材5に穿孔する際にも、チューブ7が剥がれることなく、きれいに穿孔することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明により管路に内張りする状態を示す中央縦断面図
【図2】本発明の方法により内張りした管路の横断面図
【図3】本発明におけるチューブの拡大縦断面図
【符号の説明】
【0024】
1 管路
5 内張り材
7 チューブ
9 外層
10 内層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路(1)内に柔軟なチューブ(7)を挿通し、筒状の繊維層の外面に柔軟な気密層を形成し、前記繊維層に反応硬化型樹脂液を含浸してなる内張り材(5)を、流体圧力により内側が外側となるように裏返しながら前記チューブ(7)内に挿通すると共に、裏返った内張り材(5)を前記流体圧力により膨らませつつ、前記反応硬化型樹脂液を硬化せしめることにより、管路(1)の内側に剛直なFRP管を形成して内張りする方法において、前記チューブ(7)が、ナイロン樹脂よりなる外層(9)と、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂よりなる内層(10)とを有することを特徴とする、管路の内張り方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−160762(P2007−160762A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361222(P2005−361222)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【出願人】(392008884)芦森エンジニアリング株式会社 (36)
【Fターム(参考)】