説明

管路引き込み用複合管

【課題】既設管路に引き込む際に、管路内面にスケールが付着していても傷がつき難く、しかも外径の増大を抑えて管路内引き込みを容易に行うことができる管路引き込み用複合管を提供する。
【解決手段】押出成形された樹脂製内管1の外周に、保護テープ巻き層4、内圧補強層5、保護テープ巻き層6、防食層7、外傷防止用螺旋管2を順次設ける。外傷防止用螺旋管2は、両側縁が係合可能となるように断面略S字状に屈曲された金属テープ3を、両側縁を係合させつつ螺旋状に巻回することにより形成する。内圧補強層5は、金属テープ8をギャップ巻きすることにより形成する。金属テープ9のギャップ幅Gはテープ幅Wの5〜15%にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路引き込み用複合管に関し、特に老朽管路に引き込んで管路を更新するのに好適な複合管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
老朽化した水道管路、ガス管路、送油管路などを再生する手段として、既設老朽管路内に、その内径より小さい外径を有する可撓管を引き込んで、再び管路として使用できるようにするパイプインパイプ工法が知られている。この工法に適用できる可撓管としては、樹脂管の外周に補強用の外装線材を螺旋巻きし、その外周に外装線材保護用の座床層を設けた複合管が公知である(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−263574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既設老朽管路の内面には、腐食等によるスケールが多量に付着しており、そのような管路内に上記のような複合管を引き込むと、管の最外層がスケールによる突起等で傷つけられて、切れや剥離を生じ、内層側の外装線材や樹脂管が損傷するおそれがある。外装線材や樹脂管が損傷すると、内圧に対する強度が不十分になる可能性がある。
【0005】
また、管路引き込み用の管として、樹脂管の外側に金属コルゲート管を設けたものも知られているが、コルゲート管は可撓性をもたせるために、ある程度以上の波の高さが必要であり、その分、外径が大きくなる。外径が大きくなると、既設管路への引き込み抵抗が大きくなるので、好ましくない。またコルゲート管は、その波形形状からも、老朽管路内面のスケールとの摩擦抵抗が大きくなる要素を有しており、引き込み張力が過大となって管が破壊してしまうおそれもある。
【0006】
本発明の目的は、既設管路に引き込む際に、管路内面にスケールが付着していても傷がつき難く、しかも外径の増大を抑えて管路内引き込みを容易に行うことができる管路引き込み用複合管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る管路引き込み用複合管は、押出成形された樹脂製内管の外側に、両側縁が係合可能となるように断面略S字状に屈曲された金属テープを両側縁を係合させつつ螺旋状に巻回することにより形成された外傷防止用螺旋管を配置したことを特徴とするものである。
【0008】
本発明において、外傷防止用螺旋管は、管路に引き込むときに先端側になる方が硬度の高い金属テープで構成され、後端側になる方が先端側よりも硬度の低い金属テープで構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂製内管の外側に金属製の外傷防止用螺旋管が配置されているため、既設老朽管路に引き込む際に、管路内面のスケールは外傷防止用螺旋管によって削られるから、樹脂製内管が傷つけられるおそれがない。また、樹脂製内管の外側に外傷防止用螺旋管を設けたことにより、螺旋管にテンションメンバーとしての機能をもたせることができるので、複合管全体の引張強度を向上させることができる。また、外傷防止用螺旋管は、樹脂製内管の内圧補強層としても機能するので、内圧に対する強度を高めることもできる。
【0010】
さらに、外傷防止用螺旋管は、管路に引き込むときに先端側になる方を硬度の高い金属テープで構成し、後端側になる方を先端側よりも硬度の低い金属テープで構成することにより、先端側は、老朽管路に引き込むときにスケールと擦れ合っても傷がつき難く、逆にスケールの突起を削り取る機能を高めることができると共に、後端側は、先端側よりも安価な金属テープを使用できるので外傷防止用螺旋管全体の材料コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔実施形態1〕 図1は本発明の一実施形態を示す。この管路引き込み用複合管は、押出成形された樹脂製内管1の外周に、金属製の外傷防止用螺旋管2を設けたものである。外傷防止用螺旋管2は、両側縁が係合可能となるように断面略S字状に屈曲された金属テープ3を両側縁を係合させつつ螺旋状に巻回することにより形成したものである。このようにして形成された外傷防止用螺旋管2は、老朽管路内面のスケール等と擦れ合っても損傷を受け難く、しかも厚さが薄く、可撓性があるという利点がある。
【0012】
樹脂製内管1は、ポリエチレンやナイロン等の熱可塑性樹脂を筒状(この例では円筒状)に押出成形することにより形成される。外傷防止用螺旋管2を構成する金属テープ3としてはステンレステープ、アルミ合金テープ等を使用することができる。
【0013】
筒状(円筒状)に押出成形された樹脂製内管1の外周に外傷防止用螺旋管2を設けると、外傷防止用螺旋管2が、樹脂製内管1の内圧補強層として機能し、また老朽管路へ引き込む時のテンションメンバーとしても機能するので、筒状内管1の強度と相まって高強度で外径の小さい管路引き込み用複合管を構成できる。
【0014】
また、外傷防止用螺旋管2は、管路に引き込むときに先端側になる方を硬度の高い金属テープで構成し、後端側になる方を先端側よりも硬度の低い金属テープで構成することが好ましい。このようにすると、外傷防止用螺旋管2の先端側は、老朽管路に引き込むときにスケールと擦れ合っても傷がつき難く、逆にスケールの突起を削り取る機能を発揮する。また外傷防止用螺旋管2の後端側は、先端側によってスケールの突起が削り取られた後に引き込まれるので、硬度が低くても傷がつき難い。また硬度の低い金属テープは硬度の高い金属テープよりも安価であるので、外傷防止用螺旋管2の全長を硬度の高い金属テープで構成する場合よりも、外傷防止用螺旋管2のコストを大幅に低減することができる。硬度の高い金属テープと硬度の低い金属テープは溶接により接続すればよい。
【0015】
また、外傷防止用螺旋管2は、先端側で金属テープの硬度が最も高く、後端側へ行くに従い段階的に(3段階以上に)金属テープの硬度が低くなるように構成することが、より好ましい。
【0016】
〔実施形態2〕 図2は本発明の他の実施形態を示す。この管路引き込み用複合管は、押出成形された樹脂製内管1の外周に、保護テープ巻き層4、内圧補強層5、保護テープ巻き層6、防食層7、外傷防止用螺旋管2を順次設けたものである。樹脂製内管1及び外傷防止用螺旋管2の構成は実施形態1と同じである。
【0017】
内圧補強層5は、金属テープ8をギャップ巻きすることにより形成される。金属テープ9のギャップ幅Gはテープ幅Wの5〜15%にすることが好ましい。図3はギャップ(%)(テープ幅Wに対するギャップ幅Gの割合)と、樹脂製内管1の内圧補強効率との関係を実験により求めた結果を示す。テープ幅Wに対するギャップ幅Gの割合が、5〜15%の範囲では補強効率0.85以上を確保できるが、25%以上になると補強効率が0.8以下に低下してしまうことが分かる。
【0018】
内圧補強層5は、金属テープ8を、層間でギャップの位置をずらして2層巻き又は3層巻きにして構成することが好ましいが、1層巻きでよい場合もある。
【0019】
防食層7は、内圧補強層5の腐食を防止するもので、ポリエチレン、ナイロン又はポリ塩化ビニル等の樹脂材料からなる。保護テープ巻き層4、6は、内圧補強層5の金属テープ8により樹脂製内管1及び防食層7が傷つくのを防止するためのものである。
【0020】
以上のような構成にすると、実施形態1と同様の効果が得られる上に、内圧補強層5及び防食層7を設けたことにより、腐食環境下でも内圧補強層5の腐食を防止することができ、長期にわたって内圧補強機能を維持することができる。
【0021】
〔実施形態3〕 図4は本発明のさらに他の実施形態を示す。この管路引き込み用複合管は、押出成形された樹脂製内管1の外周に、外傷防止用螺旋管2、保護テープ巻き層9、防食層10を順次設けたものである。樹脂製内管1及び外傷防止用螺旋管2の構成は実施形態1と同じである。
【0022】
このような構成にすると、老朽管路内に引き込むときに、防食層7がスケール等によって損傷するおそれがあるが、外傷防止用螺旋管2が損傷するおそれは少なくなり、防食層7が損傷しても、残存する防食層7によって外傷防止用螺旋管2の腐食を防止することができる。
【0023】
〔実施形態4〕 図5は本発明のさらに他の実施形態を示す。この管路引き込み用複合管は、押出成形された樹脂製内管1の外周に、保護テープ巻き層4、内圧補強層5、保護テープ巻き層6、防食層7、外傷防止用螺旋管2、保護テープ巻き層9、防食層10を順次設けたものである。樹脂製内管1及び外傷防止用螺旋管2の構成は実施形態1と同じである。また、外傷防止用螺旋管2以内の構成は実施形態2と同じであり、それより外側の構成は実施形態3と同じである。
【0024】
〔実施形態5〕 図6は本発明のさらに他の実施形態を示す。この管路引き込み用複合管は、最外層の防食層10の内側に長手方向に連続する外傷検知線11を設けたものである。外傷検知線11としては、金属パイプ12内に光ファイバ13を収納したものを使用することができる。このような外傷検知線11を設けておくと、防食層10が損傷を受けた場合、損傷箇所で光ファイバ13の伝送ロス増や断線が発生するので、OTDRでそれを検出し、損傷を受けたこと及び損傷箇所を確認することができる。
【0025】
上記以外の構成は、図5に示した実施形態5と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る管路引き込み用複合管の一実施形態を示す、(A)は横断面図、(B)は(A)のB−B線拡大断面図。
【図2】本発明に係る管路引き込み用複合管の他の実施形態を示す、(A)は横断面図、(B)は(A)のB−B線拡大断面図。
【図3】内圧補強層の金属テープをギャップ巻きしたときの、テープ幅に対するギャップ幅の割合と補強効率との関係を示すグラフ。
【図4】本発明に係る管路引き込み用複合管のさらに他の実施形態を示す横断面図。
【図5】同じくさらに他の実施形態を示す横断面図。
【図6】同じくさらに他の実施形態を示す横断面図。
【符号の説明】
【0027】
1:樹脂製内管
2:外傷防止用螺旋管
3:金属テープ
4:保護テープ巻き層
5:内圧補強層
6:保護テープ巻き層
7:防食層
8:金属テープ
9:保護テープ巻き層
10:防食層
11:外傷検知線
12:金属パイプ
13:光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形された樹脂製内管の外側に、両側縁が係合可能となるように断面略S字状に屈曲された金属テープを両側縁を係合させつつ螺旋状に巻回することにより形成された外傷防止用螺旋管を配置したことを特徴とする管路引き込み用複合管。
【請求項2】
外傷防止用螺旋管は、管路に引き込むときに先端側になる方が硬度の高い金属テープで構成され、後端側になる方が先端側よりも硬度の低い金属テープで構成されていることを特徴とする請求項1記載の管路引き込み用複合管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−255479(P2007−255479A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78030(P2006−78030)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】