説明

管部材用被覆材熱融着具

【解決手段】内管28の外表面28aを保温材27により被覆した保温材付き流体管において分断した両保温材27を互いに接合する際、互いに開閉することができる上下両加熱部材の閉状態で内管28を固定加熱体6と可動加熱体9との間の挿通孔に嵌め込むと、両側壁21の加熱面22が両保温材27の端面27aに当てがわれてその端面27aを溶融させることができる。固定加熱体6及び可動加熱体9には、両側壁21のうち、一方の側壁21の内面23に面する一方のヒータ24と、他方の側壁21の内面23に面する他方のヒータ25と、両ヒータ24,25間に介在させた断熱材26とを設けている。
【効果】両保温材27間で材質が互いに異なるために熱溶融温度も互いに異なる場合でも、両保温材27の端面27aを共に充分に熱溶融してそれらの端面27a間で熱融着による接合強度を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内管の外表面を保温材により被覆した空調配管などの保温材付き流体管において、その内管の長手方向の両側で分断した両保温材間を接合する際に利用する流体管用保温材熱融着具などの管部材用被覆材熱融着具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空調機器では、運転時に管内を通る冷媒が雰囲気温度よりも急激に温度変化し、特に露点以下に温度低下すると、管の外表面に結露が生じることがある。この結露を防ぐために、円筒状の保温材により被覆された管を建物の構造に合わせて施工している。その施工の際、管同士を接続する場合があり、その接続時に保温材同士も接合している。例えば下記特許文献1では、断熱防水シート間の継ぎ目に継ぎ目シートを巻いている。一般に、結露防止手段を有する保温材付き流体管では、図7に示すように、発泡ポリエチレン等からなる保温材27により内管28の外表面28aを被覆し、内管28の長手方向の両側で分断した両保温材27の端面27a間の継ぎ目29には相対向する両端面27aの外周に粘着テープ35を巻いている。
【特許文献1】特開2001−50481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、施工誤差や施工後の経時変化などが原因して、保温材27が収縮すると、粘着テープ35が剥がれて両保温材27間の継ぎ目29に隙間が生じ、その隙間で内管28の外表面28aが露出してそこに結露が生じることがあった。その結露水が建物に漏れると、漏水が発生する原因になっていた。
【0004】
そこで、本出願人は、平成18年4月6日付け出願(特願2006−105376号)において、内管の長手方向の両側で分断した両保温材の相対向端面を加熱部材により互いに熱融着して接合した継ぎ目を設ける際に利用する流体管用保温材熱融着具を提供している。
【0005】
その流体管用保温材熱融着具においては、内管の長手方向の両側で分断した両保温材間で材質が互いに異なるために熱溶融温度も互いに異なる場合、両保温材の相対向端面のうち一方の端面が充分に熱溶融されても他方の端面の熱溶融が不充分であると、両保温材の相対向端面間で熱融着による接合強度が弱くなるおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような流体管用保温材熱融着具のほか、流体管以外の管部材の内管の外表面を被覆した被覆材のうち内管の長手方向の両側で分断した両被覆材間を接合する際に利用する各種の管部材用被覆材熱融着具において、加熱手段を改良し、異種材の被覆材間でも熱融着よる接合強度を維持できるようにして管部材用被覆材熱融着具の使い勝手を良くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
後記実施形態の図面(図1〜2、図3、図4(a)、図5及び図6に示す第1実施形態、図3、図4(b)及び図6に示す第2実施形態)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる管部材用被覆材熱融着具は、第1〜2実施形態に対応し、下記のように構成されている。
【0008】
複数の加熱体6,9を互いに開閉することができる加熱部材5,8を備えている。この各加熱体6,9を互いに閉じた閉状態Qでこの各加熱体6,9間に挿通孔20を形成している。この閉状態Qにある各加熱体6,9においてこの挿通孔20の中心線方向の両側でこの挿通孔20の外周に形成した両側壁21の外面22には加熱面を設けている。この両側壁21の加熱面22を加熱する温度を両側壁21間で互いに相違させることができる加熱手段24,25,30を備えている。
【0009】
請求項1の発明では、内管28の外表面28aを被覆材27により被覆した被覆材付き管部材M1,M2において分断した両被覆材27を互いに接合する際、加熱部材5,8の閉状態Qで内管28を加熱体6,9の挿通孔20に嵌め込んで加熱体6,9の外面22を加熱面として被覆材27の端面27aに当てがってその端面27aを溶融させることができる。
【0010】
特に、両被覆材27間で材質が互いに異なるために熱溶融温度も互いに異なる場合でも、両被覆材27の相対向端面27aを共に充分に熱溶融してそれらの相対向端面27a間で熱融着よる接合強度を維持することができる。
【0011】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明(第1実施形態に対応)において、前記加熱手段は、加熱面22を有する両側壁21のうち、一方の側壁21の内面23に面する一方のヒータ24と、他方の側壁21の内面23に面する他方のヒータ25とを備えている。請求項2の発明では、両ヒータ24,25を利用した簡単な加熱構造で、両側壁21の加熱面22を加熱する温度を両側壁21間で互いに相違させることができる。
【0012】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明(第1実施形態に対応)において、一方のヒータ24と他方のヒータ25との間には断熱手段26を介在させた。請求項3の発明では、断熱手段26により、両ヒータ24,25間の熱移動を抑制してそれぞれのヒータ24,25の設定温度を維持することができる。
【0013】
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明(第1実施形態に対応)において、前記断熱手段は断熱材26である。請求項4の発明では、簡単な断熱構造にすることができる。
請求項1の発明を前提とする請求項5の発明(第2実施形態に対応)にかかる加熱手段においては、両側壁21間で両側壁21の内面23に位置するヒータ30を有し、両側壁21の加熱面22のうち、一方の加熱面22とこのヒータ30との間の離間距離TLと、他方の加熱面22とこのヒータ30との間の離間距離TRとを互いに相違させた。請求項5の発明では、ヒータ30に対する両側壁21の加熱面22の離間距離TL,TRを相違させた簡単な加熱構造で、両側壁21の加熱面22を加熱する温度を両側壁21間で互いに相違させることができる。なお、図示しないが、両側壁21の内面23にヒータ30を接触させることなくその内面23とヒータ30との間に空間層を設けることもでき、その場合には、異なる厚みの加熱面22であっても同一の厚みの加熱面22であっても加熱面22の厚みに無関係に、この空間層の厚みの変化によって、加熱面22とヒータ30との間の離間距離TL,TRを調整することができる。
【0014】
請求項1の発明を前提とする請求項6の発明(第2実施形態の別例に対応)にかかる加熱手段においては、加熱面22を有する両側壁21のうち、一方の側壁21の加熱面22を形成する素材の熱伝導率と、他方の側壁21の加熱面22を形成する素材の熱伝導率とを互いに相違させた。請求項6の発明では、ヒータ30に対する両側壁21の加熱面22の離間距離TL,TRを同一にしても、両側壁21の加熱面22を形成する素材(例えばアルミや鉄等の金属)の熱伝導率を相違させた簡単な加熱構造で、両側壁21の加熱面22を加熱する温度を両側壁21間で互いに相違させることができる。
【0015】
請求項1から請求項6のうちいずれかの請求項の発明を前提とする請求項7の発明(第1〜2実施形態に対応)において、前記加熱部材5,8は取付部1aで相対回動可能に支持されて互いに開閉される一対の加熱体6,9を備え、閉状態Qにある両加熱体6,9で取付部1aにおける回動中心線4aを中心とする回動方向Rで相対向する割縁部11には前記挿通孔20を形成するための割孔12を形成した。請求項7の発明では、加熱部材5,8をコンパクトにまとめることができる。
【0016】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項2または請求項3または請求項4の発明を前提とする管部材用被覆材熱融着具(第1実施形態に対応する第8の発明に該当)においては、両側壁21の加熱面22のうち一方の加熱面22の温度を検出する一方の温度センサ31と、両側壁21の加熱面22のうち他方の加熱面22の温度を検出する他方の温度センサ32と、両ヒータ24,25のうち一方のヒータ24を一方の温度センサ31からの検出信号に基づき設定温度に調節するように駆動制御するとともに、両ヒータ24,25のうち他方のヒータ25を他方の温度センサ32からの検出信号に基づき設定温度に調節するように駆動制御する制御手段34とを備えている。第8の発明では、両ヒータ24,25の設定温度を被覆材27の材質に応じて容易に設定することができる。
【0017】
請求項7の発明を前提とする管部材用被覆材熱融着具(第1〜2実施形態に対応する第9の発明に該当)において、前記加熱部材5,8はホルダ1に設けた取付部1aに支持され、このホルダ1には両加熱体6,9を互いに開閉させる開閉操作手段13を設けている。第9の発明では、ホルダ1を把持して開閉操作手段13を操作すると、両加熱体6,9を互いに開閉させることができる。
【0018】
第9の発明を前提とする管部材用被覆材熱融着具(第1〜2実施形態に対応する第10の発明に該当)において、前記ホルダ1は、前記加熱部材5,8を支持した取付部を有する頭部1aと、その頭部1aから屈曲して延びる把持部1bとを備え、前記両加熱体は、その頭部1aの取付部で、回動不能に支持された固定加熱体6と、この固定加熱体6に対し開閉するように回動可能に支持された可動加熱体9とからなり、この固定加熱体6は前記把持部1bの延設向き側に配設され、この可動加熱体9はその延設向きに対する反対側に配設されている。第10の発明では、加熱部材5,8をコンパクトにまとめることができるとともに、加熱部材5,8の閉状態Qで内管28や両被覆材27を両加熱体6,9の割孔12に嵌め込み易い。
【0019】
請求項1から請求項7のうちいずれかの請求項の発明または第8の発明または第9の発明または第10の発明を前提とする管部材用被覆材熱融着具(第1〜2実施形態に対応する第11の発明に該当)において、前記加熱部材5,8で加熱体6,9の加熱面22の表側には、例えば、被加熱面に対する分離性の良いフッ素樹脂等の樹脂を表面に有するシート22aを貼着するか、または、被加熱面に対する分離性の良いフッ素樹脂等の樹脂を表面にコーティングして、被加熱面に対する分離性の良い樹脂を有する表面を設けている。第11の発明では、図3(c)に示す両被覆材27の端面27aに加熱体6,9の加熱面22を当てがった際にその被加熱面から加熱面22を分離させ易い。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、両被覆材27間の継ぎ目29に隙間が生じにくい管部材M1,M2を製造するために被覆材27の端面27aを容易に溶融させる管部材用被覆材熱融着具を提供することができる。さらにそればかりではなく、被覆材27の材質が互いに異なるために熱溶融温度も互いに異なる場合でも、両被覆材27の端面27aを共に充分に熱溶融してそれらの端面27a間で熱融着よる接合強度を維持することができるので、その管部材用被覆材熱融着具の使い勝手を良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
まず、本発明の第1実施形態にかかる流体管用保温材熱融着具について図1〜2、図3、図4(a)、図5及び図6を参照して説明する。
図1〜2に示すように、ホルダ1の頭部1a(取付部)内において、固定支持腕2が取着されて位置決めされているとともに、この固定支持腕2よりも上側で可動支持腕3が支軸4により上下方向Zへ回動可能に支持されている。図1〜2に示す下側の加熱部材5においては、固定加熱体6が固定連結腕7に支持され、その固定連結腕7が前記固定支持腕2に対し着脱可能に連結されている。図1〜2に示す上側の加熱部材8においては、可動加熱体9が可動連結腕10に支持され、その可動連結腕10が前記可動支持腕3に対し着脱可能に連結されている。
【0022】
ホルダ1の頭部1a(取付部)に対する前後方向Xの外側で、下側の加熱部材5はこの頭部1aから屈曲して下方へ延びる把持部1bの延設向き(下向き)側に配設された前記固定加熱体6を備え、上側の加熱部材8はその延設向きに対する反対向き(上向き)側に配設された前記可動加熱体9を備えている。この固定加熱体6と可動加熱体9とは、それぞれ、半円の外周縁を有する板状をなす。支軸4の回動中心線4aを中心とする回動方向Rで相対向する固定加熱体6及び可動加熱体9の割縁部11には半円状の割孔12が形成されている。
【0023】
前記ホルダ1内に組み付けられた開閉操作手段13(リンク機構)においては、把持部1bに対しその外側で隣接する操作レバー14が支軸15を中心に回動可能に支持され、前記可動支持腕3で左右方向Yの両側に支持された連動軸16に連動リンク17が回動可能に支持されているとともに、この操作レバー14と一体的に回動する連動レバー18とこの連動リンク17とが連動軸19により互いに回動可能に連結されている。従って、この操作レバー14をばね15aの弾性力に抗して把持部1b側へ押すと、連動レバー18と連動リンク17とを介して可動支持腕3が支軸4の回動中心線4aを中心に上方へ回動し、可動加熱体9が固定加熱体6に対し上方へ回動して上下両加熱部材8,5が互いに開く開状態Pとなる。また、この操作レバー14を離すと、ばね15aの弾性力により操作レバー14が復帰して、連動レバー18と連動リンク17とを介して可動支持腕3が支軸4の回動中心線4aを中心に下方へ回動し、可動加熱体9が固定加熱体6に対し下方へ回動して上下両加熱部材8,5が互いに閉じる閉状態Qとなる。
【0024】
この上下両加熱部材8,5の閉状態Qでは、固定加熱体6及び可動加熱体9が割縁部11で互いに重合されて円板状をなし、固定加熱体6と可動加熱体9との間の中央部で割縁部11の割孔12により環状(円形状)の挿通孔20が形成される。この固定加熱体6及び可動加熱体9において挿通孔20の中心線方向(左右方向Y)の両側で挿通孔20の外周全体には図4(a)に示すように半円形状の側壁21が加熱し易い金属等により形成されている。この固定加熱体6及び可動加熱体9の両側壁21の外面22には、図1(c)に示すように、フッ素樹脂やシリコーン樹脂など、被加熱面に対する分離性の良い樹脂をコーティングしたシート22aが貼着されている。また、フッ素樹脂やシリコーン樹脂など、被加熱面に対する分離性の良い樹脂をその両側壁21の外面22にコーティングしてもよい。
【0025】
前記固定加熱体6内及び可動加熱体9内には、図4(a)に示すように、両側壁21のうち一方の側壁21の内面23に面して接触しまたは空間層を介して面するように位置する加熱手段としての一方のヒータ24と、両側壁21のうち他方の側壁21の内面23に面して接触しまたは空間層を介して面するように位置する加熱手段としての他方のヒータ25とが嵌め込まれ、一方のヒータ24と他方のヒータ25との間には両ヒータ24,25間の熱移動を抑制するとともに電気絶縁性も有する断熱手段として断熱材26が介在されている。ちなみに、この断熱材26は、ポリウレタンやシリコーン等の発泡体、グラスウール及びセラミックなどにより成形されている。これらのヒータ24,25としては、例えば、熱線を巻いた熱板を両電気絶縁板間で挟持したものあるいはセラミックヒータなどを利用している。一方のヒータ24により両側壁21の外面22が発熱して加熱面として機能するとともに、他方のヒータ25により両側壁21の外面22が発熱して加熱面として機能する。
【0026】
前記上下両加熱部材8,5の開状態Pでは、固定加熱体6及び可動加熱体9の割縁部11が互いに離間するとともに、閉状態Qで前記挿通孔20を形成する割孔12も互いに離間し、この割縁部11間に挿脱許容空間Sを形成することができる。
【0027】
次に、第1実施形態にかかる流体管用保温材熱融着具を利用して接合した保温材付き流体管及びその接合手順についてについて図3,5を参照して説明する。
図3(a)に示すように、発泡ポリエチレン等の断熱材からなる円筒状の被覆材としての保温材27により、樹脂や銅等からなる内管28の外表面28aを被覆した管部材としての流体管M1,M2は、内管28の長手方向の両側で分断されている。内管28の外表面28aと保温材27の内周面との間に隙間Gをあけることにより、拡管部や曲がり部において内管28を保温材27に挿通し易くしている。これらの流体管M1,M2を互いに接続する際には、まず、図3(b)に示すように、内管28に対し保温材27を長手方向へ移動させて両保温材27の相対向する端面27aを互いに離すとともに、両保温材27間で露出した内管28を互いに連結する。次に、図2(b)に示すように前記熱融着具の上下両加熱部材8,5を開状態Pにして固定加熱体6及び可動加熱体9の割縁部11間で挿脱許容空間Sに内管28を挿入した後、この上下両加熱部材8,5を閉状態Qにすると、内管28が挿通孔20に嵌め込まれる。その後、図3(c)及び図4(a)に示すように固定加熱体6及び可動加熱体9の両側壁21の加熱面22に両保温材27の端面27aを押し当てると、それらの端面27aが同時に加熱されて溶融される。次に、上下両加熱部材8,5を開状態Pにして固定加熱体6及び可動加熱体9の割縁部11間の挿脱許容空間Sから内管28を離脱させると、図3(d)に示すように、溶融状態にある両保温材27の端面27aが長手方向で相対向する。このようにして熱融着具の上下両加熱部材8,5を両保温材27の端面27aから取り外した後瞬時に、溶融状態にある両保温材27の端面27aを互いに押し当てると、図6に示すように、その両端面27aが互いに熱融着されて接合され、内管28の外周全体に熱融着による継ぎ目29が生じる。
【0028】
上記熱融着具を利用すれば、両保温材27の端面27aが互いに熱融着されて接合されるので、それらの端面27aが互いに分離しにくくなり、両保温材27間の継ぎ目29に隙間が生じにくくなり、内管28の外表面28aに結露が生じにくくなって漏水の発生を防止することができる。その継ぎ目29においては、内管28の外周全体で両保温材27の端面27aが熱融着されるので、隙間がより一層生じにくくなる。また、固定加熱体6及び可動加熱体9の閉状態Qで内管28を挿通孔20に嵌め込むので、固定加熱体6及び可動加熱体9を内管28に対し安定して保持した状態で、固定加熱体6及び可動加熱体9を両保温材27の端面27aに当てがってその端面27aを溶融させることができ、作業が行い易くなる。さらに、ホルダ1を把持して開閉操作手段13を操作すると、固定加熱体6及び可動加熱体9に直接的に触れることなく固定加熱体6及び可動加熱体9を互いに開閉させることができ、作業が行い易くなる。
【0029】
図5に示すように、両側壁21の外面22(加熱面)のうち一方の外面22(加熱面)の温度を検出する一方の温度センサ31と他方の外面22(加熱面)の温度を検出する他方の温度センサ32と、両ヒータ24,25の設定温度をそれぞれ数段階に設定することができるヒータ温度設定部33とが、制御手段としてのコントローラ34に接続されている。コントローラ34は、一方の温度センサ31及びヒータ温度設定部33からの検出信号に基づき一方のヒータ24を設定温度に調節するように駆動制御するとともに、他方の温度センサ32及びヒータ温度設定部33からの検出信号に基づき他方のヒータ25を設定温度に調節するように駆動制御する。そのため、この両側壁21の加熱面22を加熱する温度を両側壁21間で互いに変更して相違させることができる。その際、断熱材26により、両ヒータ24,25間の熱移動を抑制してそれぞれのヒータ24,25の設定温度を維持することができる。従って、両保温材27間で材質が互いに異なるために熱溶融温度も互いに異なる場合でも、両保温材27の相対向端面27aを共に充分に熱溶融してそれらの相対向端面27a間で熱融着よる接合強度が維持することができる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態にかかる流体管用保温材熱融着具について第1実施形態との相違点を中心に図3、図4(b)及び図6を参照して説明する。
前記固定加熱体6内及び可動加熱体9内には、両側壁21のうち一方の側壁21の内面23に面して接触しまたは空間層を介して面するように位置するとともに他方の側壁21の内面23に面して接触しまたは空間層を介して面するように位置する加熱手段としてのヒータ30が嵌め込まれている。両側壁21の外面22(加熱面)のうち、一方の外面22(加熱面)とこのヒータ30との間の離間距離TLと、他方の外面22(加熱面)とこのヒータ30との間の離間距離TR(<TL)とを互いに相違させ、一方の離間距離TLを他方の離間距離TR(<TL)よりも大きくしている。このヒータ30の設定温度を数段階に調節するように設定することができる。このヒータ30に対する離間距離TLが大きい加熱面22は、このヒータ30に対する離間距離TRが小さい加熱面22よりも、ヒータ30の熱が伝わりにくくなって低い温度になる。そのため、このヒータ30の設定温度に応じて、この両側壁21の加熱面22を加熱する温度を両側壁21間で互いに相違させることができる。
【0031】
また、第2実施形態の別例では、前記固定加熱体6及び可動加熱体9の両側壁21のうち、加熱面22を有する一方の側壁21を形成する素材(例えばアルミや鉄等の金属)の熱伝導率と、加熱面22を有する他方の側壁21を形成する素材(例えばアルミや鉄等の金属)の熱伝導率とが互いに相違している。その場合、ヒータ30に対する両側壁21の加熱面22の離間距離TL,TRを同一にし、一方の熱伝導率を他方の熱伝導率よりも小さくしている。熱伝導率の小さい側壁21の加熱面22は、熱伝導率の大きい側壁21の加熱面22よりも、ヒータ30の熱が伝わりにくくなって低い温度になる。そのため、この両側壁21の加熱面22を加熱する温度を両側壁21間で互いに相違させることができる。
【0032】
従って、第2実施形態及びその別例では、両保温材27間で材質が互いに異なるために熱溶融温度も互いに異なる場合でも、両保温材27の相対向端面27aを共に充分に熱溶融してそれらの相対向端面27a間で熱融着による接合強度が維持することができる。
【0033】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 第1実施形態において、両ヒータ24,25間の断熱手段としては、断熱材26に代えて空気層を利用する。
【0034】
・ 上側加熱部材8の加熱体9を固定するとともに下側加熱部材5の加熱体6を回動させたり、それらの加熱体6,9を共に回動させたりしてもよい。
・ 加熱部材としては、開状態で互いに分離可能な複数の加熱体を閉状態で互いに組み付けて内管28に装着する。
【0035】
・ 加熱部材5,8に対する開閉操作手段13としては、前述したリンク機構に代えて、加熱体6,9を互いに開閉させることができる指当て摘みを設ける。
・ 前記各実施形態では加熱部材5,8の加熱体6,9は180度の円周角度を有しているが、例えば加熱体6,9を90度の円周角度で形成してもよい。その場合、閉状態Qでこの加熱体6,9間に生じる挿通孔20は外側に開放された空間となり、その空間に挿入された内管28がこの加熱体6,9により挟まれる。この加熱体6,9の加熱面22を保温材27の端面27aに当てがった状態で加熱部材5,8を回動させてその端面27aを溶融させる。
【0036】
・ 図3(a)に示すように円筒状の保温材27により内管28の外表面28aを被覆した流体管M1,M2は内管28の長手方向の両側で分断されているが、この内管28は長手方向で一連につながっていてもよく保温材27のみが長手方向の両側で分断されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態にかかる流体管用保温材熱融着具において上下両加熱部材の閉状態を示す右側面図であり、(b)は同じく閉状態を示す左側面図であり、(c)は(a)を正面側から見て上下両加熱部材のみを示す部分正面図である。
【図2】(a)は図1(a)の一部切欠き右側面図であり、(b)は上記流体管用保温材熱融着具において上下両加熱部材の開状態を示す一部切欠き右側面図である。
【図3】(a)(b)(d)は分断された保温材付き流体管を第1実施形態の流体管用保温材熱融着具を利用して互いに接合する過程を正面側から見て示す部分縦断面図であり、(c)は同じく部分平面図である。
【図4】(a)は分断された保温材付き流体管を第1実施形態の流体管用保温材熱融着具を利用して互いに接合する過程で図3(c)の状態を正面側から見て示す部分縦断面図であり、(b)は分断された保温材付き流体管を第2実施形態の流体管用保温材熱融着具を利用して互いに接合する過程で図3(c)の状態を正面側から見て示す部分縦断面図である。
【図5】第1実施形態の流体管用保温材熱融着具においてヒータ温度制御に関する概略的電気ブロック回路図である。
【図6】本実施形態にかかる保温材付き流体管の一部を示す縦断面図である。
【図7】従来の保温材付き流体管の一部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…ホルダ、1a…ホルダの取付部としての頭部、4a…上側加熱部材の回動中心線、5…下側加熱部材、6…固定加熱体、8…上側加熱部材、9…可動加熱体、11…割縁部、12…割孔、20…挿通孔、21…加熱体の側壁、22…加熱面である側壁の外面、23…側壁の内面、24,25…加熱手段としてのヒータ、26…断熱手段としての断熱材、30…加熱手段としてのヒータ、P…両加熱体の開状態、Q…両加熱体の閉状態、Y…挿通孔の中心線方向、R…上側加熱部材の回動方向、TL,TR…離間距離。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の加熱体を互いに開閉することができる加熱部材を備え、この各加熱体を互いに閉じた閉状態でこの各加熱体間に挿通孔を形成し、この閉状態にある各加熱体においてこの挿通孔の中心線方向の両側でこの挿通孔の外周に形成した両側壁の外面には加熱面を設け、この両側壁の加熱面を加熱する温度を両側壁間で互いに相違させることができる加熱手段を備えたことを特徴とする管部材用被覆材熱融着具。
【請求項2】
前記加熱手段は、加熱面を有する両側壁のうち、一方の側壁の内面に面する一方のヒータと、他方の側壁の内面に面する他方のヒータとを備えていることを特徴とする請求項1に記載の管部材用被覆材熱融着具。
【請求項3】
一方のヒータと他方のヒータとの間には断熱手段を介在させたことを特徴とする請求項2に記載の管部材用被覆材熱融着具。
【請求項4】
前記断熱手段は断熱材であることを特徴とする請求項3に記載の管部材用被覆材熱融着具。
【請求項5】
前記加熱手段においては、両側壁間で両側壁の内面に位置するヒータを有し、両側壁の加熱面のうち、一方の加熱面とこのヒータとの間の離間距離と、他方の加熱面とこのヒータとの間の離間距離とを互いに相違させたことを特徴とする請求項1に記載の管部材用被覆材熱融着具。
【請求項6】
前記加熱手段においては、加熱面を有する両側壁のうち、一方の側壁の加熱面を形成する素材の熱伝導率と、他方の側壁の加熱面を形成する素材の熱伝導率とを互いに相違させたことを特徴とする請求項1に記載の管部材用被覆材熱融着具。
【請求項7】
前記加熱部材は取付部で相対回動可能に支持されて互いに開閉される一対の加熱体を備え、閉状態にある両加熱体において取付部における回動中心線を中心とする回動方向で相対向する割縁部には前記挿通孔を形成するための割孔を形成したことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれかの請求項に記載の管部材用被覆材熱融着具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−12416(P2009−12416A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179409(P2007−179409)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】