説明

箱及びそのブランクシート

【課題】外力がICタグに作用することを防止でき、さらに箱外表面に露呈しないようにICタグを備えた、箱及びそのブランクシートを提供する。
【解決手段】糊代部15と糊代部15を貼り付けられた被貼付部3とを有する箱において、被貼付部3における糊代部15が貼り付けられる面であって、糊代部15と被貼付部3とが重なる領域内に、ICタグ20を設け、ICタグ20は、ICチップ部21とICチップ部21に接続したアンテナ部22とを備え、糊代部15はICチップ部21に対する荷重、衝撃などの外力を低減する低減部30を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを備えた箱及びそのブランクシートに関する。
【背景技術】
【0002】
商品などの被運搬物の搬出,搬入などの管理のために、近年、ICタグが利用されている。例えば、特許文献1には無線ICタグシステムが開示されている。この無線ICタグシステムでは、被運搬物にICタグを付し、このICタグとの無線通信により被運搬物の運搬状況を管理している。
【0003】
このような無線ICタグシステムにおいて、例えば商品を入れた箱などが被運搬物として管理されることも考慮され、そのための工夫もなされている。
【0004】
例えば、特許文献2にはICタグ付き梱包箱が開示されている。このICタグ付き梱包箱は、梱包箱の内容物に係わらず、指向性を一定にし、効率の良い送受信を行なうことを目的としており、箱の表面にICタグを配置していることを特徴としている(特許文献2の請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−211396号公報
【特許文献2】特開2006−143259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
商品梱包箱をICタグで管理する場合、特許文献2の梱包箱のように箱の外表面にICタグを設けることが多い。しかし、箱外表面にICタグを設けた場合には、積込み、搬送時の取扱い時に外表面のICタグに荷重、衝撃などの外力が加わり、ICタグの故障の原因となるおそれがある。
【0007】
さらに、特許文献2のように箱の外表面にICタグを設けた場合、ICタグ領域におけるデザイン、つまり箱自体の意匠の自由度が制約される。さらに、箱の外表面のICタグは、外部から露出しているため、不正行為が行われるおそれもある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題を考慮して創作されたものであり、ICタグに作用する荷重、衝撃などの外力を低減でき、さらに箱外表面に露呈しないようにICタグを備えた、箱及びそのブランクシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、糊代部と糊代部を貼り付けられた被貼付部とを有する箱において、被貼付部における糊代部が貼り付けられる面であって糊代部と被貼付部とが重なる領域内にICタグを設け、ICタグはICチップ部とICチップ部に接続したアンテナ部とを備え、糊代部はICチップ部に対する外力を低減させる低減部を備え、糊代部が貼付部に貼り付けられた状態で低減部はICチップ部に重なることを特徴としている。なお、本願では、『外力の低減』には、ICチップ部自体、又はICチップ部とアンテナ部との接続部に作用する荷重、衝撃などの外力を低減することを含む意味で使用している。
【0010】
本発明の箱において、外力の低減部は前記糊代部に形成された開口又は凹部である。
【0011】
本発明の箱において、好ましくは、箱材の折り畳み状態で糊代部に当接する箱内面の部位にICチップ部の書き込みを防止するための書込防止部材が設けられる。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、糊代部と糊代部が貼り付けられる被貼付部とを有する箱のブランクシートにおいて、被貼付部における糊代部が貼り付けられる面であって糊代部と被貼付部とが重なる領域内にICタグを設置する領域が設けられ、糊代部はICタグのICチップ部に対する荷重、衝撃などの外力を低減する低減部を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、箱体内のICタグに加わる荷重、衝撃などの外力が低減される。また、ICタグを糊代領域内に収まるように設けることで、ICタグが外部に露出せず、存在が感知され難いため、外観デザイン上の制約が少ない、つまり意匠選択の自由度を向上できる。また、ICタグに対する不正防止が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る箱の斜視図である。
【図2】図1の箱を構成する箱材を示す平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る箱の箱材を示す平面図である。
【図4】図3の箱材の折り畳み状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る箱の箱材の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に示した実施形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態に係る箱100の斜視図であり、図2は図1の箱100を構成する箱材1の正面図である。なお、図2は箱100の内側から見た展開図である。
【0016】
図1及び図2において、2は正面板部、3は正面板部2の右端から延出した右側面板部、4は正面板部2の左端から延出した左側面板部、5は左側面板部の左端から延出した背面板部、6は正面板部の上縁から延出した天井板部、8は底部、9〜15は糊代部、である。以下、これらの箱材1を構成する要素を紙片と呼ぶ場合がある。各紙片は折り筋17を境界に繋がっている。なお、本願では、箱材1を構成する複数の紙片だけからなるシート、つまり後述のICタグ20及び書込防止部材40を取り付ける前のシート、をブランクシートと呼ぶ。
【0017】
糊代部9〜11は右側面板部3、左側面板部4、底部8の各下縁から延出しており、糊代部12〜14は右側面板部3、左側面板部4、天井板部6の各上縁から延出しており、糊代部15は背面板部5の左縁から延出している。これらの糊代部の内、糊代部9,10は底部8の裏面に接着され、糊代部11は背面板部5の下部裏面に接着され、糊代部12,13は天井板部6の裏面に接着され、糊代部14は背面板部5の上部裏面に接着され、糊代部15は右側面板部3の右端部裏面に接着される。
【0018】
第1実施形態に係る箱材1はICタグ20を備えている。このICタグ20は、図2に示すように、ICチップ21と、このICチップ21に接続したアンテナ22と、を備えている。なお、本実施形態では、これらのICチップ21とアンテナ22とをPETフィルムなどの樹脂基材に設けてなるインレットを利用する。
【0019】
このように構成されたインレット、つまりICタグ20は、図2に示すように、箱材1の右側面板部の裏面に設けられている。具体的には、右側面板部(被貼付部)における糊代部15が貼り付けられる面(裏面)であって、糊代部15と右側面板部3とが重なる領域(ICタグ設置領域)内に、ICタグ20が設けられる。このように、糊代部15によってICタグ20の全体が覆われるよう、糊代部15と右側面板部3との間で、それらが重なる領域内に収容されることで、外部からの視認性を十分に低減することができる。
【0020】
さらに、本第1実施形態の糊代部15は、図2に示すように、ICチップ21に対する荷重、衝撃などの外力を低減する低減部30、具体的には開口31を備えている。ICチップ21は、糊代部15を右側面板部3に貼付した状態で、開口31を右側面板部3に投影した仮想領域内に配設される。
【0021】
箱材1の各折り筋17を境に各紙片を折り、糊代部9〜15を対応部位に接着剤などの接合手段によって接着させて、図1に示すように製函、つまり立体的に組み立てる。この製函状態において、ICチップ21は、糊代部15と右側面板部3との間に挟持されないよう、糊代部15に形成した開口31内に配設される。糊代部15は、開口31を通して箱内部に露呈する。
【0022】
このように、本発明の第1実施形態に係る箱100によれば、特許文献2と比較すると明らかなように、箱外表面にICタグを設けることなく、図1の破線で示すようにICタグ20を、箱内側であって、糊代部15と右側面板部3との間に設けている。箱100は、ICチップ21分の厚みを逃すよう、糊代部15に開口31を形成して当該開口31内にICチップ21を配設することで、箱100の積込み、搬送時の取扱い時にICタグ21に加わる外力を低減することができる。
【0023】
包装箱デザインはブランド価値を高めるための重要な要素であるため、特許文献2のような従来の箱ではICタグが箱表面の一部を占め、その分の箱自体の意匠の自由度を制限しているが、本発明の第1実施形態に係る箱材1及び箱100によれば、ICタグ20が箱外表面に現れないため、箱自体の意匠の自由度を向上することができる。さらに、箱100の内側にICタグ20を設けて外部に露出させないことで、ICタグ20への不正行為を防止することができる。
【0024】
〔第2実施形態〕
図3は本発明の第2実施形態に係る箱の箱材1Aを示す平面図である。
本実施形態に係る箱材1Aにおいて、前述の箱材1と同一又は同様の構成については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0025】
本第2実施形態に係る箱材1Aには、図3に示すように、書込防止部材40が設けられている。
この書込防止部材40は、箱材1Aの折り畳み状態、例えば図4に示すように、正面板部2と右側面板部4との境界の折り筋17(他の折り筋と区別するため、図3では符号17Aを付している。)で箱材1Aを二つ折りに畳んだ状態で、ICタグ20に当接する箱内面の部位、図示例では、ICタグ20に近接する背面板部5の左端部に設けられている。なお、図4では、ICタグ20と書込防止部材40とが重なっていることを明示するために、書込防止部材40が部分的に重なる状態を便宜的に示しているが、好ましくは、書込防止部材40はICタグ20の全体を覆うようにサイズが選定されている。
【0026】
この書込防止部材40は磁性材料からできており、本実施形態では背面板部5に印刷処理された磁性体印刷部41で形成されている。なお、背面板部5に直接印刷した磁性体印刷部41に代えて、別途製造した磁性テープを背面板部5に貼付してもよいことは勿論である。磁性テープには、例えば、ICタグ20に入力された情報、或いは品質管理に必要な情報が記録されていてもよい。
【0027】
箱材1Aの折り畳み状態(図4)において、書込防止部材40が、ICタグ20に近接することで、ICチップ21への書き込み防止の機能を発揮する。このような機能は、磁性材料によって、当該ICタグ20のアンテナ22周辺の電磁界が変化して一時的にアンテナ22のインピーダンス整合が崩れることに拠る。この場合、ICチップ21にデータを書き込む程度のパワーが発生しない。
【0028】
このように本実施形態に係る第2実施形態に係る箱材1Aによれば、製函前の折り畳んだ状態で、ICタグ20のアンテナ22に書込防止部材40が近接することで、ICタグ20の通信機能を低減させることができる。これにより、ICタグ20の誤読を防止できる効果も発揮する。
【0029】
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態に係る箱材1Bは、第1実施形態及び第2実施形態に係る開口31に代えて、低減部として凹部32を備えている。ここで、図5は図2のA−A線に沿った箱材1Bの対応部位の断面図であり、特に凹部32を示している。この凹部32は、例えば紙片を部分的に薄肉、つまり凹部周辺の厚みよりも薄くなるように形成されている。
なお、本実施形態に係る箱材1Bにおいて、前述の箱材1,1Aと同一又は同様の構成については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0030】
本第3実施形態に係る凹部32は、前述の開口31と同様に、ICチップ21に対して非接触であり、糊代部15を右側面板部3に貼付した状態で凹部32を右側面板部3に投影した仮想領域内にICチップ21は配設されている。なお、凹部32はICチップ21の上方へ間隙を置いた位置で当該ICチップ21を覆う。
【0031】
このような凹部32によっても、糊代部15と右側面板部3との間において、ICチップ21分の厚みを逃すよう、糊代部15に凹部32を形成して当該凹部32内にICチップ21を配設することで、箱の積込み、搬送時の取扱い時にICタグ20に加わる荷重、衝撃などの外力を低減できる。
【0032】
以上詳述したが、本発明は発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。
【0033】
前述の説明では、前記書込防止部材40が、箱材を折り畳んだ状態においてICタグ20の通信機能を低減させる場合を説明したが、書込防止部材40は、箱材1Aを製函した後、例えば図1に示した形態において、この箱100を折り畳んだ状態においても、ICタグ20の通信機能を低減させるよう利用されてもよいことは勿論である。
【0034】
前述の図3に示す箱材では折り筋17Aで箱材を折り畳んだ際にICタグ20が当接する位置にだけ書込防止部材40を備えているが、他の折り筋17B(図3参照)で箱材を折り畳んだ場合にもICタグ20の通信機能を低減させるよう、書込防止部材40が図3に破線で示す位置に設けられてもよい。このように、一つの箱材に二つの書込防止部材40を備えることで、折り筋位置に拘わらず、確実に書き込みを防止することができる。
【0035】
上記実施形態では、ICチップ21とアンテナ22とがPETフィルムなどを樹脂基材に設けてなるインレットを利用した場合を例示したが、ICタグはインレットに限定されるものではない。例えば、アンテナ部として、印刷アンテナ、巻き線アンテナの他、アルミエッチング或いはアルミ蒸着させて作製されたアンテナを利用してもよい。この場合、アンテナ部は箱体自体に設けられてもよい。
【0036】
本発明のブランクシートは、紙材料に限らず、プラスチックなどであってもよい。
【0037】
本発明を適用可能なブランクシート、箱材、箱の各形状や各寸法は図示例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
1,1A,1B 箱材
2 正面板部
3 右側面板部
4 左側面板部
5 背面板部
6 天井板部
8〜11 折込板部
12〜15 糊代部
17,17A 折り筋
20 ICタグ
21 ICチップ
22 アンテナ
30 低減部
31 開口
32 凹部
40 書込防止部材
41 磁性体印刷部
100 箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糊代部と、
上記糊代部を貼り付けられた被貼付部と、を有する箱において、
上記被貼付部における上記糊代部が貼り付けられる面であって、上記糊代部と上記被貼付部とが重なる領域内に、ICタグを設け、
上記ICタグは、ICチップ部と、上記ICチップ部に接続したアンテナ部と、を備え、
上記糊代部は、上記ICチップ部に対する外力を低減させる低減部を備え、
上記糊代部が上記貼付部に貼り付けられた状態で上記低減部が上記ICチップ部に重なることを特徴とする、箱。
【請求項2】
前記低減部が前記糊代部に形成された開口であり、
上記開口を前記被貼付部に投影した仮想領域内に前記ICチップ部が配設されていることを特徴とする、請求項1に記載の箱。
【請求項3】
前記低減部が前記糊代部における前記ICタグと接触する面に形成された凹部であり、
上記凹部が前記ICチップ部の上方へ間隙を置いた位置で当該ICチップ部を覆っていることを特徴とする、請求項1に記載の箱。
【請求項4】
箱材の折り畳み状態で、上記糊代部に当接する箱内面の部位に、前記ICチップ部の書き込みを防止するための書込防止部材が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の箱。
【請求項5】
糊代部と、上記糊代部を貼り付けられる被貼付部と、を有する箱のブランクシートにおいて、
上記被貼付部における上記糊代部が貼り付けられる面であって、上記糊代部と上記被貼付部とが重なる領域内に、ICタグを設置する領域が設けられ、
上記糊代部は、上記ICタグのICチップ部に対する外力を低減させる低減部を備えていることを特徴とする、ブランクシート。
【請求項6】
前記低減部が前記糊代部に形成された開口であり、
上記開口を前記被貼付部に投影した仮想領域内に前記ICチップ部が配設されることを特徴とする、請求項5に記載のブランクシート。
【請求項7】
前記低減部が前記糊代部における前記ICタグと接触する面に形成された凹部であり、
上記凹部が前記ICチップ部の上方へ間隙を置いた位置で当該ICチップ部を覆っていることを特徴とする、請求項5に記載のブランクシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−201567(P2011−201567A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70841(P2010−70841)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】