説明

箱型容器

【課題】軽い、安価である、耐水性に優れる、低温衝撃性に優れる等の性能をそのまま維持しながら、重量物を収容しても底面部の撓みが少ない箱型容器を提供することを目的としている。
【解決手段】少なくとも底面部が芯層とこの芯層を上下から挟むように設けられた表面層とを備えるサンドイッチ成形された有底箱型容器において、表面層がブロック共重合ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、成形収縮率が15/1000以上19/1000以下である樹脂組成物(A)で形成され、芯樹脂組成物層がブロック共重合ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、成形収縮率が11/1000以上14/1000以下であるタルク含有樹脂組成物(B)で形成され、かつ、芯層が底面部の総体積の20%以上50%以下の体積を占めることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の搬送用容器として使用される合成樹脂製の箱型容器に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナと一般に称される合成樹脂製の箱型容器が、流通、工場内での製品ほか、仕掛品保管と多くの用途で使用されている。
特に、ポリプロピレン樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる箱型容器は、ポリプロピレン樹脂が、他樹脂と比較し、低価格、高強度、軽量、耐劣化性、耐水性、高外観であることから多くの産業分野で使用されている。
【0003】
ところで、箱型容器の場合、容器の底面部で収容物の荷重が受けられるため、収容物を容器内に収容すると、容器の底面部が、下方に向かって凸となるように撓む。
小さな撓みであれば、収容物を取り除くと元に戻るのであるが、箱型容器には、例えば、ベアリング、ボルト・ナット、釘等金属製品や豆腐、こんにゃく、缶詰等の比重の大きいものが入れられる場合がある。そして、このように比重が大きいものを容器に入れると、当然容器の底面部にかかる荷重も大きくなり、底面部が大きく下方に凸となるように撓み、収容物を容器からとりだしても、完全に撓みが元に戻りきらず、使用回数が増えるにしたがって凸量が増えていく。
【0004】
さらに、金属を切削等によって機械加工して得られる金属製品の場合、製造後直ちに製品を箱型容器に次々と入れていくことがあるが、金属に切削等の機械加工を施すと、加工時に摩擦熱が発生するため、製造直後には、この摩擦熱が製品に蓄積されて、かなり熱い状態となっている。したがって、そのまま箱型容器に入れると、重量に加えて熱によってさらに撓みが大きくなり、少ない使用頻度でも凸量が大きくなる。
【0005】
因みに、従来のポリプロピレン樹脂製箱型容器の場合、常温下(−5℃〜35℃程度)で、箱型容器の内容積をリッターであらわし、その内容積数字にkgをつけた重量以下(例えば内容積9リッターの箱型容器であれば、9kg以下)の軽量な収容物であれば、容器底面部の下方への凸量は小さく(凸量5mm以下)使用上の問題はない。
しかしながら、金層部品等の場合、比重が大きいため、内容量9リッターの容器で、鉄製品を収容する場合、収容物の総重量が計算上は70kg程度(現実には、移動の問題があり25kg程度)となる。
【0006】
そして、このように、箱型容器の底面部の下方への凸量が大きくなってくると、平面上に載置した場合に安定が悪く、例えば、コンベヤに載せて移動させるときに、箱型容器がコンベア上で回り転落したり、コンベアの曲がり部で移動中にコンベアから箱型容器が落ちたりといった搬送トラブルが発生する。
【0007】
また、箱型容器を積み重ねたとき、上段の容器の底面部下面が下段コンテナの収容物に接触することが起きる。
したがって、これらの状況が発生した場合、この箱型容器は使用ができない状態と判断され、廃棄されることになる。
これに対し、底面部の形状を頑丈に(リブの追加、肉厚のアップetc)変更することでも底面部の凸量を小さくすることができるが、金型の新作あるいは改造が必要である。
【0008】
そこで、容器底面部の凸量を低減するためには、曲げ弾性率の高いタルク入りポリプロピレン樹脂組成物を使用することが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、タルク入りポリプロピレン製コンテナでは、低温(−10℃以下の温度)において、小さな衝撃が加わるとクラックが入り、割れるという重大な問題が発生し、タルク入りポリプロピレン樹脂組成物製の容器は低温での使用には向かなかった。しかも、タルク入りポリプロピレン樹脂組成物製の容器の場合、同一サイズの従来のポリプロピレン樹脂製容器と比較して、重いという欠点もあった。
【0009】
一方、ポリプロピレン樹脂用充填材としては、炭酸カルシウム、クレー、ガラス繊維、ガラスビーズ、マイカ、酸化チタン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属粉等もあるが、曲げ弾性率向上効果、材料価格、品質安定性等を考慮するとタルクが優れている。
他方、金属製容器もあるが、製品価格が高い、重量が大きい、錆びる、製品に当たると製品にキズが付きやすい等の別の問題があり、採用は少ない。
【0010】
【特許文献1】特開平6−157867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて、軽い、安価である、耐水性に優れる、低温衝撃性に優れる等の性能をそのまま維持しながら、重量物を収容しても底面部の撓みが少ない箱型容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明にかかる箱型容器は、少なくとも底面部が芯層とこの芯層を上下から挟むように設けられた表面層とを備えるサンドイッチ成形された有底箱型容器において、表面層がブロック共重合ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、成形収縮率が15/1000以上19/1000以下である樹脂組成物(A)で形成され、芯樹脂組成物層がブロック共重合ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、成形収縮率が11/1000以上14/1000以下であるタルク含有樹脂組成物(B)で形成され、かつ、芯層が底面部の総体積の20%以上50%以下の体積を占めることを特徴としている。
【0013】
本発明において、ブロック共重合ポリプロピレン系樹脂とは、主として少量のエチレンが共重合され、エチレンプロピレンゴム成分を含有する樹脂であり、通常、15/1000〜19/1000程度の成形収縮率、1200〜1700MPa程度の曲げ弾性率、5〜30g/10分のMFRを示すものである。
【0014】
本発明において、芯層を構成する樹脂組成物の成形収縮率が11/1000以上14/1000以下に限定されるが、その理由は、成形収縮率が11/1000未満では、成形された箱型容器の底部が平坦にならず、凹凸形状になり、14/1000を越えると、撓み低減効果が期待できないためである。
なお、成形収縮率とは、図1に示すように100mm□の平板金型1の一辺の中心部から樹脂を射出し、できた成形品2の樹脂の流れに垂直方向の「成形品寸法1」と、樹脂の流れ方向の「成形品寸法2」とを測定し、以下の式で求めたものである。
成形収縮率=(100−「成形品寸法1」)+(100−「成形品寸法2」)÷2÷100
【0015】
本発明において、底面部とは、図2に示す箱型容器3の破線より図で見て下側の部分全体を意味する。図2中、4は芯層、5は表面層である。
なお、底面部における芯層の体積は、底面部全体の20%以上50%以下に限定されるが、その理由は、20%未満では十分な撓み低減効果が発揮できず、50%を超えると、低温時の耐衝撃性に問題が生じる。すなわち、低温で割れが生じやすくなるためである。
また、上記樹脂組成物中には、タルク以外に、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて、樹脂成形に用いられる公知の他の無機充填材、顔料、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、核剤、難燃剤、分散剤等を配合することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる箱型容器は、以上のように、少なくとも底面部が芯層とこの芯層を上下から挟むように設けられた表面層とを備えるサンドイッチ成形された有底箱型容器において、表面層がブロック共重合ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、成形収縮率が15/1000以上19/1000以下である樹脂組成物(A)で形成され、芯樹脂組成物層がブロック共重合ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、成形収縮率が11/1000以上14/1000以下であるタルク含有樹脂組成物(B)で形成され、かつ、芯層が底面部の総体積の20%以上50%以下の体積を占めるように構成されているので、重量物を収容しても底面部の撓みが少なく、耐久性に優れている。
【0017】
すなわち、表面層が成形収縮率15/1000〜19/1000のブロック共重合ポリプロピレン系樹脂で形成されており、芯層の成形収縮率が表面層の成形収縮率より小さいので、芯層は、表面層の縮まろうとする力により圧縮力を受けた状態で存在している。
したがって、底面部に荷重がかかっても、この圧縮力により底面部の撓みを少なくすることができ、底面部が使用不可状態になる凸量になるまでの使用回数を大幅に延ばすことができ、箱型容器の寿命が延びる。
【0018】
しかも、金型を変更する必要が無く、それまで使用していた金型をそのまま使用でき、設備コストを抑えることができる。
また、表面層および芯層がそれぞれブロック共重合ポリプロピレン系樹脂を主成分としているので、回収材が、芯層用原料として使用可能である。したがって、リサイクル性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明を、その実施例を参照しつつ詳しく説明する。
【0020】
(実施例1)
以下の表層材1および芯層材1を用いて底面部の芯層が底面部体積の20%である図3に示す、内容量9リットルの箱型容器をサンドイッチ射出成形により成形した。
表層材1:成形収縮率16/1000のブロック共重合ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製商品名BC3L)
芯層材1:成形収縮率12.5/1000のタルク入りブロック共重合ポリプロピレン系樹脂(カルプ工業社製商品名4700G)
【0021】
(実施例2)
底面部の芯層体積を底面部体積の50%とした以外は、実施例1と同様にして内容量9リットルの箱型容器をサンドイッチ射出成形により成形した。
【0022】
(実施例3)
上記芯層材1に代えて、以下の芯層材2を用いた以外は、実施例2と同様にして内容量9リットルの箱型容器をサンドイッチ射出成形により成形した。
芯層材2:成形収縮率11.5/1000のタルク入りブロック共重合ポリプロピレン系樹脂(カルプ工業社製商品名4200G)
【0023】
(比較例1)
上記表層材1のみを用いて図3に示す内容量9リットルの箱型容器を射出成形により成形した。
【0024】
(比較例2)
上記芯層材1に代えて、以下の芯層材3を用いた以外は、実施例2と同様にして内容量9リットルの箱型容器をサンドイッチ射出成形により成形した。
芯層材2:成形収縮率10.5/1000のタルク入りブロック共重合ポリプロピレン系樹脂(カルプ工業社製商品名4300G)
【0025】
(比較例3)
底面部の芯層体積を底面部体積の5%とした以外は、比較例2と同様にして内容量9リットルの箱型容器をサンドイッチ射出成形により成形した。
【0026】
(比較例4)
上記芯層材1に代えて、以下の芯層材4を用いた以外は、実施例2と同様にして内容量9リットルの箱型容器をサンドイッチ射出成形により成形した。
芯層材4:成形収縮率9.5/1000のタルク入りブロック共重合ポリプロピレン系樹脂(カルプ工業社製商品名4600G)
【0027】
(比較例5)
底面部の芯層体積を底面部体積の5%とした以外は、比較例4と同様にして内容量9リットルの箱型容器をサンドイッチ射出成形により成形した。
【0028】
(比較例6)
上記表層材1に代えて、以下の表層材2を用いた以外は、実施例2と同様にして内容量9リットルの箱型容器をサンドイッチ射出成形により成形した。
表層材2:成形収縮率17/1000のポリプロピレンホモポリマー(プライムポリマー社製商品名J−3003GV)
【0029】
(比較例7)
底面部の芯層体積を底面部体積の5%とした以外は、比較例6と同様にして内容量9リットルの箱型容器をサンドイッチ射出成形により成形した。
【0030】
(比較例8)
上記芯層材1のみを用いて図3に示す内容量9リットルの箱型容器を射出成形により成形した。
【0031】
(比較例9)
上記芯層材1に代えて、以下の芯層材5を用いた以外は、実施例2と同様にして内容量9リットルの箱型容器をサンドイッチ射出成形により成形した。
芯層材5:成形収縮率9.5/1000のタルク入りブロック共重合ポリプロピレン系樹脂(カルプ工業社製商品名4350G)
【0032】
上記実施例1〜3および比較例1〜9で得られた箱型容器について、以下の評価1〜5を行い、その結果を表1に示した。
【0033】
評価1:雰囲気温度−20℃の恒温室内に箱型容器を入れた状態で、1kg錘を容器の底面部に高さ1mから落下させて割れの有無を調べた。
評価2:図4に示すように、箱型容器3を定盤6上に底面を上にして静置し、鋼尺7を底面に沿っておき、底面と鋼尺7との隙間8の値を底面の凹凸とした。なお、プラスは底面が容器外側に膨らんでいること、マイナスは底面が容器内側に凹んでいることを示す。
評価3:図5に示すように、箱型容器3内に鉄球9を20kg分入れて、底部に20kgの荷重をかけ、24時間後に図5に示す底面部凸量10を測定した。
評価4:雰囲気温度23℃の恒温室内で、箱型容器3内に鉄球9を10kg分入れて底面部に8時間10kgの荷重をかけたのち、鉄球を取り除き、無荷重状態で16時間保つサイクルを50回繰り返した後に図5に示す底面部凸量10を測定した。
評価5:雰囲気温度60℃の恒温室内で、箱型容器3内に鉄球9を10kg分入れて底面部に8時間10kgの荷重をかけたのち、鉄球9を取り除き、無荷重状態で16時間保つサイクルを50回繰り返した後に図5に示す底面部凸量10を測定した。
【0034】
【表1】

【0035】
上記表1から本発明の箱型容器が、低温での耐衝撃性に優れるとともに、大きな荷重が底面部にかかっても、撓みが少なく、耐久性に優れていることがよくわかる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の箱型容器は、産業用コンテナ、食品用コンテナ等の有底容器で、特に、比重の大きい貴金属製品、自動車用金属部品、容器入り液物製品等の比重の大きな材料からなる製品、部品の一時保管やコンベア上での移動、陸上輸送、海上輸送に好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】成形収縮率を測定する方法を説明する説明図である。
【図2】底面部を説明する箱型容器の断面図である。
【図3】実施例および比較例で作製した箱型容器の斜視図である。
【図4】底面部凹凸の測定方法を説明する図である。
【図5】底面部凸量測定方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0038】
3 箱型容器
4 芯層
5 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底面部が芯層とこの芯層を上下から挟むように設けられた表面層とを備えるサンドイッチ成形された有底箱型容器において、
表面層がブロック共重合ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、成形収縮率が15/1000以上19/1000以下である樹脂組成物(A)で形成され、
芯樹脂組成物層がブロック共重合ポリプロピレン系樹脂を主成分とし、成形収縮率が11/1000以上14/1000以下であるタルク含有樹脂組成物(B)で形成され、
かつ、芯層が底面部の総体積の20%以上50%以下の体積を占めることを特徴とする有底箱型容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−308219(P2008−308219A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159922(P2007−159922)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(390033112)積水テクノ成型株式会社 (48)
【Fターム(参考)】