説明

箱抜き型枠及び箱抜き穴の施工方法

【課題】脱型後の箱抜き穴の仕上がりが良好で、容易に脱型作業を行うことができ、木製であっても複数回の転用を可能にする箱抜き型枠を提供する。
【解決手段】コンクリート構造物に凹状の箱抜き穴13を成形するために用いられ、箱抜き穴13の内面を成形する内面成形部18,20を有している箱抜き型枠である。箱抜き型枠10は、内面成形部18,20の一部である分割内面成形部を有する複数の分割型枠211〜214からなり、複数の分割型枠211〜214は、箱抜き穴13からの脱型順序が定められており、各分割型枠211〜214の分割内面成形部は、隣接する他の分割型枠211〜216の分割内面成形部に対して突き合わされる突き合わせ面を有し、突き合わせ面は、隣接する分割型枠211〜214のうち脱型順序が先行する分割型枠の分割内面成形部を箱抜き穴の内面から離反させる方向に沿って形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等のコンクリート構造物に凹状の箱抜き穴を成形するために用いられる箱抜き型枠及び箱抜き穴の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物であるトンネルには、図16に示すように、非常電話、通報装置、消火器具等の各種設備を設置するための凹状の箱抜き穴313が形成されている。この箱抜き穴313は、例えば覆工コンクリート312の打設時に予め箱抜き型枠をセットしておくことによって覆工コンクリート312と同時に成形される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、箱抜き穴313を成形するために用いられる箱抜き型枠は、従来、鋼製のものや木製のものが用いられている。鋼製の箱抜き型枠は耐久性が高く、多数回の転用が可能であるが、製造コストが高く、重量物であるために運搬や設置が煩雑になるという欠点がある。これに対して木製の箱抜き型枠は、比較的安価に製造することができ、運搬や設置も容易に行うことが可能であるが、耐久性が低く、脱型時に1回きりの使用で取り壊してしまうのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−110347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トンネル内には、トンネルの延長が大きいほど、また交通量が多いほど、多種類の設備を設置することが要求され、その設置間隔も種類毎に定められている。そのため、大規模のトンネルでは多くの箱抜き穴を形成する必要があり、製造コストや設置の煩雑さ等の欠点を考慮したとしても、多数回の転用が可能な鋼製の箱抜き型枠を使用することが有益である。
一方、数回程度の箱抜き型枠の転用が要求される小規模のトンネルにおいて、鋼製の箱抜き型枠を使用することはその利点よりも欠点の方が顕著となるため、専ら、木製の箱抜き型枠が使用される。この場合、箱抜き穴の数に応じて複数個の木製の箱抜き型枠を予め準備しておき、1箇所の箱抜き穴につき1個の箱抜き型枠を使用しているのが現状である。
【0006】
しかし、近年においては、工事費の削減や破壊された箱抜き型枠から生じる廃棄物の削減等の要請から、木製の箱抜き型枠においても数回の転用を可能にする試みがなされつつある。転用を可能にした従来の木製の箱抜き型枠の一例を図17に示す。
この箱抜き型枠310は複数個の分割型枠321を上下左右に間隔をあけて並べることによって構成されており、各分割型枠321の間には発泡スチロール351からなる板材が挿入されている。
【0007】
そして、この箱抜き型枠310の周囲にコンクリートを打設して硬化させた後、各分割型枠321を脱型するには、まず、分割型枠321の間から発泡スチロール351を取り外し、分割型枠321の間に隙間を形成する。そして、この隙間にバール等の工具を挿入しつつ、分割型枠321を隙間内で移動させることによって箱抜き穴313から各分割型枠321を取り外す。これにより、箱抜き型枠321自体は取り壊すことなく箱抜き穴313から脱型することができ、数回程度の転用であれば実用に耐え得るものであった。
【0008】
しかし、分割型枠321の間から発泡スチロール351を引き抜いた後に、箱抜き穴313の底面や内側面に発泡スチロール351の残留物が付着することがあり、成型後の箱抜き穴313の仕上がりが悪くなるという問題があった。また、発泡スチロール351は、コンクリートの硬化に伴う圧縮力を受けて分割型枠321の間から僅かに膨出し、この発泡スチロール351の膨出部分によって箱抜き穴313の底面や内側面には凹状の筋が形成されることがあり、これも箱抜き穴の仕上がりを悪化させる原因となっていた。
【0009】
本発明は、脱型後の箱抜き穴の仕上がりを悪化させることなく、容易に脱型作業を行うことができ、木製であっても複数回の転用が可能な箱抜き型枠及び箱抜き穴の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、コンクリート構造物に凹状の箱抜き穴を成形するために用いられ、当該箱抜き穴の内面を成形する内面成形部を有している箱抜き型枠であって、
当該箱抜き型枠は、前記内面成形部の一部である分割内面成形部を有する複数の分割型枠から構成され、
各分割型枠の分割内面成形部は、隣接する他の分割型枠の分割内面成形部に対して突き合わされる突き合わせ面を有しており、
複数の分割型枠は、前記箱抜き穴からの脱型順序が所定に定められ、
前記突き合わせ面は、隣接する分割型枠のうち脱型順序が先行する分割型枠の分割内面成形部を前記箱抜き穴の内面から離反させる方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、箱抜き型枠を構成する複数の分割型枠における分割内面成形部は、互いに隣接する他の分割型枠の分割内面成形部に対して突き合わせ面を介して突き合わされるので、図17に示す従来技術のように、箱抜き穴の内面に発泡スチロールの残留物が付着したり凹状の筋が形成されたりすることはなく、成型後の箱抜き穴の仕上がりを良好なものとすることができる。そして、互いに隣接する分割型枠の分割内面成形部同士の突き合わせ面は、脱型順序が先行する分割型枠の分割内面成形部を前記箱抜き穴の内面から離反させる方向に沿って形成されているので、箱抜き型枠を取り壊すことなく、所定の脱型順序にしたがって各分割型枠を箱抜き穴から脱型することができ、箱抜き型枠の転用を可能にすることができる。
【0012】
前記分割内面成形部は、箱抜き穴の底面の一部を成形する分割底面成形部と、箱抜き穴の内側面の一部を成形する分割側面成形部とから構成することができる。
このような構成によって、箱抜き穴の底面と側面との双方において、良好な仕上がりを得ることができる。
【0013】
前記分割型枠は、前記分割底面成型部及び前記分割側面成形部の内側に補強枠材を備えており、
互いに隣接する分割型枠の補強枠材の間には、各分割型枠の分割底面成形部及び分割側面成型部を箱抜き穴の底面及び内側面から離反する方向への移動を許容する隙間が形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明に係る箱抜き穴の施工方法は、上述の箱抜き型枠を使用してコンクリート構造物に箱抜き穴を成型する、箱抜き穴の施工方法であって、
隣接する分割型枠の分割内面成形部同士を互いに突き合わせた状態で複数の分割型枠を連結して箱抜き型枠を組み立て、この箱抜き型枠を箱抜き穴の成形部位にセットするセット工程と、
前記箱抜き型枠の周囲にコンクリートを打設して箱抜き穴を成型する成型工程と、
成型された箱抜き穴から箱抜き型枠を脱型する脱型工程とを含み、
前記脱型工程は、複数の分割型枠の連結を解く工程と、複数の分割型枠のうち、より脱型順序が先行する分割型枠を、隣接する他の分割型枠に対する前記突き合わせ面に沿った方向に移動させて箱抜き穴から取り外す工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の箱抜き型枠及び箱抜き穴の施工方法によれば、脱型後の箱抜き穴の仕上がりを悪化させることなく、容易に脱型作業を行うことができ、木製であっても複数回の転用を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る箱抜き型枠の側面図、(b)は(a)のA部拡大図である。
【図2】箱抜き型枠の正面図である。
【図3】(a)は図2のB部拡大図、(b)は図2のC部拡大図、(c)は図2のD部拡大図、(d)は図2のF部拡大図、(e)は図2のG部拡大図である。
【図4】(a)は箱抜き型枠の上部側の平面図、(b)は(a)のH部拡大図である。
【図5】(a)は箱抜き型枠の下部側の底面図、(b)は(a)のJ部拡大図である。
【図6】箱抜き型枠の上部側の分解斜視図である。
【図7】箱抜き型枠の下部側の分解斜視図である。
【図8】箱抜き型枠の脱型の手順を説明する説明図である。
【図9】箱抜き型枠の脱型の手順を説明する説明図である。
【図10】箱抜き型枠の脱型の手順を説明する説明図である。
【図11】箱抜き型枠の脱型の手順を説明する説明図である。
【図12】図2のE部拡大図である。
【図13】連結部材(キャンバー)の分解斜視図である。
【図14】本発明の第2の実施形態における連結部材の正面図である。
【図15】同連結部材の平面図である。
【図16】箱抜き穴が形成されたトンネルの一部断面図である。
【図17】従来の箱抜き型枠を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1の実施形態〕
以下、図面を参照して本発明の第1の実施形態を説明する。
図1(a)は本発明の第1の実施形態に係る箱抜き型枠10の側面図、(b)は(a)のA部拡大図である。図2は、箱抜き型枠10の正面図である。
本実施形態の箱抜き型枠10は、トンネル11の覆工コンクリート12の内周面に対して、径方向内方(矢印F方向)に開放する凹状の箱抜き穴13を成形するものである。本実施形態の箱抜き穴13は、その上部側の左右幅、上下高さ、及び深さの各寸法が下部側の各寸法よりも大きく形成されている。したがって、この箱抜き穴13を成形する箱抜き型枠10も、上部側が大きく下部側が小さく形成されている。なお、以下の説明においては、矢印Fで示す方向を前方とし、その反対方向を後方とする。
【0018】
箱抜き型枠10は、木製の板材を組み合わせて接合することによって形成されており、箱抜き穴13の上部側を成形する上側型枠15と、箱抜き穴13の下部側を成形する下側型枠16とを備えている。上側型枠15及び下側型枠16は、それぞれ箱抜き穴13の内面(底面17,内側面19)を成形する内面成形部18,20を有している。また、内面成形部18,20は、箱抜き穴13の底面17を成形する底面成形部18と、箱抜き穴13の内側面を成形する側面成形部20とからなる。
【0019】
箱抜き型枠10は、複数の分割型枠(第1〜第6分割型枠)211〜216を上下左右に並べて連結することによって構成されている。各分割型枠211〜216は、前方Fが開放した略直方体の箱型に形成されている。
【0020】
〔上側型枠15の構成〕
図6は、箱抜き型枠10の上部側(上側型枠15)を背面側から見た分解斜視図である。なお、この図6では、内面成形部18,20の形状をより解りやすくするために、後述する補強枠材24や補強板25(図2参照)の図示を省略している。
【0021】
図2及び図6に示すように、上側型枠15は、合計4個の分割型枠(第1〜第4分割型枠)211〜214から構成されている。各分割型枠211〜214は、縦横(上下、左右)に2個ずつ並設されている。本実施形態では、図2の左上側(図6の右上側)に配置された分割型枠を第1分割型枠211、図2の右上側(図6の左上側)に配置された分割型枠を第2分割型枠212、図2の左下側(図6の右下側)に配置された分割型枠を第3分割型枠213、図2の右下側(図6の左下側)に配置された分割型枠を第4分割型枠214とそれぞれ呼称する。第1〜第4分割型枠211〜214の上下方向の高さは略同一であり、第1,第3分割型枠211,213の左右方向の幅は、第2,第4分割型枠212,214の左右方向の幅よりも小さく形成されている。
【0022】
図6に示すように、第1〜第4分割型枠211〜214は、上側型枠15の底面成形部18を縦横に4つに分割した分割底面成形部(第1〜第4分割底面成形部)181〜184を有している。各分割底面成形部181〜184は、四角形状の板材から形成されている。
【0023】
また、図6に示すように、第1〜第4分割型枠211〜214は、それぞれ側面成型部20を上下左右に4つに分割した分割側面成型部(第1〜第4分割側面成形部)201〜204を有している。各分割型枠211〜214の分割側面成形部201〜204は、略直角に配置された2枚の四角形状の板材から構成されている。従って、各分割型枠211〜214には、1面の分割底面成形部181〜184と2面の分割側面成形部201〜204とが設けられている。
【0024】
図2に示すように、第1〜第4分割型枠211〜214は、それぞれ分割底面成形部181〜184及び分割側面成形部201〜204の内側に固定された補強枠材24を備えている。この補強枠材24は、各分割側面成形部201〜204に対して間隔をあけて略平行に対向して配置されている。
また、各分割型枠211〜214において、分割側面成形部201〜204と補強枠材24との間に形成されるスペースには、横一文字状又は十字状の補強板25が設けられている。
【0025】
図4(a)は箱抜き型枠10の上部側(上側型枠15)の平面図、(b)は(a)のH部拡大図である。第1〜第4分割型枠211〜214は、互いに隣接する第1〜第4分割底面成形部181〜184の端面同士が突き合わされた状態で連結される。具体的には図6、図1(b)、及び図4(b)に示すように、第1分割型枠211と第2分割型枠212との分割底面成形部181,182の端面31,33同士が突き合わされ、第1分割型枠211と第3分割型枠213の分割底面成形部181,183の端面32,35同士が突き合わされる。また、第2分割型枠212と第4分割型枠214の分割底面成形部182,184の端面34,38同士が突き合わされ、第3分割型枠213と第4分割型枠214の分割底面成形部183,184の端面36,37同士が突き合わされる。
【0026】
図3(a)は図2のB部拡大図、(b)は図2のC部拡大図、(c)は図2のD部拡大図、(d)は図2のF部拡大図、(e)は図2のG部拡大図である。
第1〜第4分割型枠211〜214は、互いに隣接する第1〜第4分割側面成形部201〜204の端面同士が突き合わされた状態で連結される。具体的には、図6及び図3(a)〜(d)に示すように、第1分割型枠211と第2分割型枠212の分割側面成型部201,202の端面71,73同士が突き合わされ、第1分割型枠211と第3分割型枠213の分割側面成型部201,203の端面72,76同士が突き合わされる。また、第2分割型枠212と第4分割型枠214の分割側面成型部202,204の端面74,78同士が突き合わされ、第3分割型枠213と第4分割型枠214の分割側面成形部203,204の端面75,77同士が突き合わされる。
【0027】
第1〜第4分割底面成形部181〜184の突き合わせ面31〜38は、箱抜き穴13の底面17に対して約45°の傾斜を持った傾斜面(テーパー面)とされている。また、第1〜第4分割側面成形部201〜204の突き合わせ面71〜78は、箱抜き穴13の内側面に対して約45°の傾斜を持った傾斜面(テーパー面)とされている。この傾斜面の傾斜方向は、箱抜き穴13からの分割型枠211〜214の脱型順序に関係して設定されており、この詳細については後述する。
【0028】
なお、突き合わせ面31〜38,71〜78の傾斜角度は、約45°に限定されず、これよりも大きく又は小さくすることも可能である。
【0029】
図2に示すように、第1〜第4分割型枠211〜214の隣接する補強枠材24の間には隙間Sが形成されている。そして、第1〜第4分割型枠211〜214は、この隙間Sに配置された連結部材51,58によって互いに連結される。
【0030】
〔下側型枠16の構成〕
図5(a)は箱抜き型枠10の下部側(下側型枠16)の底面図、(b)は(a)のJ部拡大図である。図7は、箱抜き型枠10の下部側(下側型枠16)を背面側から見た分解斜視図である。なお、この図7においても、内面成形部18,20の構造を解りやすくするために、後述する補強枠材43の図示を省略している。
図2、図5、及び図7に示すように、下側型枠16は、合計2個の分割型枠(第5,第6分割型枠)215,216から構成され、各分割型枠215,216は左右に並べて配置されている。本実施形態では、図2の右側(図7の左側)に配置された分割型枠を第5分割型枠215と呼称し、図2の左側(図7の右側)に配置された分割型枠を第6分割型枠216と呼称する。第5,第6分割型枠215,216は、略同一の上下高さを有しており、第5分割型枠215の左右方向の幅は、第6分割型枠216の左右方向の幅よりも小さく形成されている。
【0031】
図7に示すように、第5,第6分割型枠215,216は、底面成形部18を左右2つに分割した分割底面成形部(第5,第6分割底面成形部)185,186を有している。各分割底面成形部185,186は、略四角形状の板材から形成されている。
【0032】
下側型枠16の側面成形部20は、底面成形部18の下辺と左右両側辺から前方Fへ延びる3つの板材(面)から形成されている。そして、第5,第6割型枠215,216は、分割底面成形部185,186の下辺と、左右片側の側辺とから前方Fに延びる分割側面成型部(第5,第6分割側面成形部)205,206を有している。
【0033】
図2に示すように、第5,第6分割型枠215,216は、それぞれ分割底面成形部185,186及び分割側面成形部205,206の内側に固定された補強枠材24を備えている。この補強枠材24は、各分割側面成形部205,206に対して間隔をあけて略平行に対向して配置されている。
【0034】
また、各分割型枠215,216において、分割側面成形部205,206と補強枠材24との間に形成されるスペースには、横一文字状の補強板43が設けられている。
また、図2に示すように第5,第6分割型枠215,216の上面(補強枠材24)は、上側型枠15の下面に当接されているため、直接、箱抜き穴13の内側面を成形するためには利用されていない。
【0035】
図5(b)に示すように、第5分割型枠215と第6分割型枠216とは、分割底面成形部185,186の端面47,48同士が互いに突き合わされている。この突き合わせ面47,48は、箱抜き穴13の底面17に対して約45°傾斜する傾斜面(テーパー面)とされている。
【0036】
また、図3(e)(図2のG部拡大図)に示すように、第5分割型枠215と第6分割型枠216の分割側面成型部205,206の端面45,46同士が互いに突き合わされている。この突き合わせ面45,46は、箱抜き穴13の内側面19に対して約45°する傾斜面(テーパー面)とされている。
突き合わせ面47,48,45,46の傾斜方向は、箱抜き穴13からの分割型枠215,216の脱型順序に関係して設定されており、この詳細については後述する。
【0037】
図2に示すように、第5,第6分割型枠215,216の隣接する補強枠材24の間には隙間Sが形成されている。そして、この隙間Sに配置された連結部材51,58によって第5,第6分割型枠215,216が相互に連結される。
【0038】
〔連結部材51,58の構成〕
図2に示すように、互いに隣接する分割型枠211〜216の補強枠材24同士は、連結部材51,58によって連結されている。この連結部材51,58は、隣接する補強枠材24の間に配置されるキャンバー51と、このキャンバー51を介して隣接する補強枠材24を連結する連結具58とによって構成されている。なお、図2においてはキャンバー51をわかりやすく示すためにハッチングを施している。
【0039】
以下、連結部材51,58について、図2のE部に配置されたものを例に詳細に説明する。図12は、図2のE部拡大図である。図13は、キャンバー51の分解斜視図である。
このキャンバー51は、木製の2つの分割体53を重ね合わせることによって構成され、全体として略直方体のブロック形状に形成されている。このキャンバー51の厚さtは、隣接する補強枠材24間に形成される隙間Sの寸法と同一寸法とされている。また、キャンバー51の2つの分割体53の重合面55は、厚さt方向に垂直な面に対して傾斜する傾斜面とされている。したがって、2つの分割体53を傾斜面55に沿って幅方向外側(図13の矢印a方向)にずらすことにより、キャンバー51の厚さtを縮小することができる。
【0040】
キャンバー51には、2つの分割体53に渡って貫通するボルト挿通孔59bが形成されている(図13)。そして、連結具58を構成するボルトを、隣接する補強枠材24とキャンバー51のボルト挿通孔59bとに貫通させてナットに締結することによって、隣接する分割型枠211〜214を相互に連結することができる。
【0041】
また、キャンバー51は、2つの分割体53が連結具58により連結されることによって、分割型枠213,214の枠本体部24間の隙間S寸法に一致するように厚さtが保持される。そして、この連結具58を取り外せば、2つの分割体53の相対位置規制が解かれるので、図13の矢印a方向への相対移動により厚さ寸法tを縮小することができ、隣接する補強枠材24の間からキャンバー51を容易に抜き取ることができる。
【0042】
なお、キャンバー51に形成されたボルト挿通孔59bは、連結具58を構成するボルトの直径とほぼ同じ内径に形成され、両者の間にほとんど隙間が生じないように形成されている。これによって、連結具58によって連結された2つの分割体53の相対位置がガタツキなく定まり、厚さtを正確に設定することが可能となる。
【0043】
図2に示すように、連結部材51,58は、補強枠材24の角部や、補強枠材24に補強板25が突き合わされている部分に対応して配置されている。このような配置によって、コンクリートの硬化に伴う圧縮力で、補強枠材24の間に挟まれたキャンバー51の存在により補強枠材24が撓んでしまうことがなく、補強枠材24の変形を防止し、脱型の際のキャンバー51の取り外しも容易に行うことができる。
【0044】
図12に示すように、4つの分割型枠211〜214の補強枠材24の角部が集中する位置には、キャンバー51だけでなく、支持部材61が設けられている。第1,第3分割型枠211,213の間、及び第2,第4分割型枠212,214の間にはキャンバー51が設けられているが、第1,第2分割型枠211,212の間、及び第3,第4分割型枠213,214の間には支持部材61が設けられている。
【0045】
支持部材61の幅方向の両端部にはハの字状にテーパー面61aが形成され、第1〜第4分割型枠211〜214の補強枠材24の角部にも、テーパー面61aに適合するテーパー面24aがそれぞれ形成されている。また、支持部材61は、キャンバー51と補強枠材24とによって挟まれることによって保持され、取り付けのためにボルト等の連結具は用いられていない。
そして、この支持部材61は、第1,第3分割型枠211,213の間、及び第2,第4分割型枠212,214の間からそれぞれキャンバー51を取り外すことによって容易に取り外すことができる。
【0046】
本実施形態では、分割型枠211〜214の角部が集中する箇所において、キャンバー51が集中して配置されるのを防ぎ、構造が簡単で連結具が不要な支持部材61で代替することにより、箱抜き型枠10の組み立てや脱型をより容易に行うことができる。
【0047】
〔箱抜き型枠の脱型手順〕
【0048】
以上のように構成された箱抜き型枠10は、トンネル11内において覆工コンクリート12を打設する前にトンネル11内に設置され、覆工コンクリート12の打設時に同時に箱抜き穴13を成形する。また、箱抜き型枠10の底面成形部18及び側面成形部20には、成形後の箱抜き穴13からの脱型を容易にするために、剥離剤が塗布される。
【0049】
覆工コンクリート12が硬化した後、箱抜き型枠10は以下の手順で箱抜き穴13から脱型することができる。
まず、図2に示すように、分割型枠211〜216の補強枠材24同士を連結する全ての連結部材51,58を取り外す。連結部材51,58のキャンバー51は、箱抜き型枠10の周囲のコンクリートが硬化に伴い収縮することによって補強枠材24から圧縮力を受けるが、キャンバー51は、図13に示すように各分割体53の位置を傾斜面55に沿って幅方向にずらすことで厚さtを縮小することができるので、隣接する連結枠材24の隙間Sから簡単に取り外すことができる。
【0050】
全ての連結部材51,58を取り外した後、各分割型枠211〜216を箱抜き穴13から脱型する。この手順を図8〜図11を参照して説明する。図8〜図11は、箱抜き型枠10の上側型枠15の脱型の手順を説明する図であり、特に、図8(a)は、箱抜き型枠(上側型枠15)の正面図、(b)は同平面図、(c)は同左側面図である。図9(a)は同正面図、(b)は同右側面図である。図10(a)は同正面図、(b)は同底面図である。図11は同正面図である。
【0051】
本実施形態では、第1分割型枠211〜第6分割型枠216の順番で脱型を行うように順序が定められている。
まず、第1分割型枠211を脱型するには、図8に示すように、各分割型枠211〜214の補強枠材24間に形成された隙間Sにバール等の工具を挿入して第1分割型枠211に引っ掛け、この第1分割型枠211を隙間Sの範囲で矢印I方向に移動させる。
【0052】
この際、図8(b)(c)に示すように、第1分割型枠211の第1分割底面成形部181の端面31,32は、それぞれ第2分割底面成形部182の端面33、及び第3分割底面成形部183の端面35に突き合わされ、第1分割側面成形部201の端面71,72は、それぞれ第2分割側面成形部202の端面73及び第3側面成形部203の端面76に突き合わされているが、これらの突き合わせ面は傾斜面(テーパー面)とされている。そして、この傾斜面は、いずれも第1分割型枠211の移動方向(矢印I方向)に沿った面、つまり、第1分割型枠211の分割底面成形部181及び分割側面成形部201を、それぞれ箱抜き孔13の底面17及び側面19から同時に離反させることができる方向に沿った面となっている。そのため、第1分割型枠211は、これに隣接する第2分割型枠212や第3分割型枠213が障害となることなく容易に脱型することができる。
【0053】
次いで、第2分割型枠212を脱型するには、図9(a)(b)に示すように、第2分割型枠212を隙間Sの範囲で矢印II方向に移動させる。
この際、第2分割型枠212の第2分割底面成形部182の端面34は、第4分割底面成形部184の端面38に突き合わされ、第2分割側面成形部202の端面74は、第4分割側面成形部204の端面78に突き合わされ、これらの突き合わせ面は傾斜面(テーパー面)とされている。そして、この傾斜面はいずれも第2分割型枠の移動方向(矢印II方向)に沿った面、つまり、第2分割型枠212の分割底面成形部182及び分割側面成形部202を、それぞれ箱抜き孔の底面17及び側面19から同時に離反させることができる方向に沿った面となっている。そのため、第2分割型枠212は、これに隣接する第4分割型枠214が障害となることなく適切に脱型することができる。
【0054】
第3分割型枠213を脱型するには、図10(a)(b)に示すように、第3分割型枠213を隙間Sの範囲内で矢印III方向に移動させる。
この際、第3分割型枠213の第3分割底面成形部183の端面36は、第4分割底面成形部184の端面37に突き合わされ、第3分割側面成形部203の端面75は、第4分割側面成形部204の端面77に突き合わされ、これらの突き合わせ面は傾斜面(テーパー面)とされている。そして、この傾斜面は、いずれも第3分割型枠213の移動方向(矢印III方向)に沿った面、つまり、第3分割型枠213の分割底面成形部183及び分割側面成形部203を、それぞれ箱抜き孔13の底面17及び側面19から同時に離反させる方向に沿った面となっている。そのため、第3分割型枠213は、これに隣接する第3分割型枠214が障害となることなく容易に脱型することができる。
【0055】
次いで、第4分割型枠214を脱型するには、図11に示すように、第4分割型枠214を矢印IV方向、すなわち、第4分割型枠214の分割底面成形部184及び分割側面成形部204が、それぞれ箱抜き孔13の底面17及び内側面19から離反する方向に移動させる。この際、第1〜第3分割型枠211〜213は既に脱型されているので、第4分割型枠214を何ら障害なく脱型することができる。
【0056】
上記と同様の要領で、残りの第5分割型枠215及び第6分割型枠216についてもこの順で脱型する。この場合、図2、図3(e)、図5(b)、及び図7に示すように、第5分割型枠215における分割底面成形部185の端面47及び分割側面成形部205の端面45と、第6分割型枠216の分割底面成形部186の端面48及び分割側面成形部206の端面46とが傾斜面で突き合わされ、この傾斜面は、第5分割型枠215の分割底面成型部185及び分割側面成形部205を箱抜き穴13の底面17及び内側面19から同時に離反させる方向に沿った面とされている。そのため、同方向に第5分割型枠215を移動させることで、第6分割型枠216が障害となることなく簡単に第5分割型枠215を脱型することができる。そして、第5分割型枠215を脱型した後は、第6分割型枠216を単独で脱型することができる。
【0057】
以上に説明した本実施形態によれば、箱抜き型枠10は、複数の分割型枠211〜216から構成され、各分割型枠211〜216の分割底面成形部及び分割側面成形部が互いに突き合わされている。そのため、分割型枠211〜216の間に相当する箱抜き穴13の内面に残留物が付着したり筋が形成されたりすることがなく、成形後の箱抜き穴の仕上がりを良好なものとすることができる。
【0058】
また、複数の分割型枠211〜216は、脱型順序が所定に定められており、分割型枠211〜216の分割底面成形部181〜186の端面同士、及び分割側面成形部201〜206の端面同士の突き合わせ面は、より脱型順序が先の分割型枠における分割底面成形部及び分割側面成形部を、箱抜き穴13の底面17及び内側面19から離反させる方向に沿って形成された傾斜面とされている。そのため、予め定められた脱型順序で複数の分割型枠211〜216を適切に脱型することができ、脱型作業に要する時間や労力を低減できるとともに、箱抜き型枠10を取り壊すことなく脱型することができるので、複数回の転用が可能となり、小・中規模のトンネル工事にも効率的に利用することができる。
【0059】
〔第2の実施形態〕
図14は、本発明の第2の実施形態における連結部材の正面断面図、図15は、同平面図である。
図14(a)及び図15(a)は、連結部材91,58によって隣接する分割型枠の補強枠材24を連結した状態を示す。本実施形態の連結部材は、上述のようなキャンバー51を使用せず、木製等の直方体形状のブロック91を使用し、このブロック91を介して隣接する補強枠材24をボルト及びナットからなる連結具58で固定している。ブロック91は、その長手方向が前後に向くように配置され、その前端部及び後端部と、補強枠材24との間には、金属製や木製等の前後一対のプレート92が挿入されている。
【0060】
連結部材91,58を取り外すには、図14(b)及び図15(b)に示すように、連結具58を緩め、この連結具58を中心にブロック91を約90°回転させる。これにより、ブロック91がプレート92から離脱する。そのため、プレート92の厚さ分だけ、補強枠材24とブロック91との間の隙間が増え、この状態で連結具58を取り外すことによって、隣接する補強枠材24の間からブロック91を容易に抜き取ることができる。
【0061】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。
例えば、箱抜き型枠10を構成する分割型枠211〜216の大きさ、個数、並べ方等は、成型する箱抜き穴13の大きさや形状等に応じて適宜変更することができる。また、使用するキャンバー51やブロック91の大きさや個数についても適宜変更可能である。
【0062】
本発明の箱抜き型枠10の構成は、木製の箱抜き型枠10だけでなく、鋼製の箱抜き型枠10にも適用することが可能である。また、本発明は、トンネル11に限らず、各種コンクリート構造物用の箱抜き型枠10として適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 箱抜き型枠
11 トンネル
13 箱抜き穴
17 箱抜き穴の底面
18 底面成形部
181〜186 分割底面成形部
19 箱抜き穴の内側面
20 側面成形部
201〜206 分割側面成形部
211〜216 分割型枠
31〜38 突き合わせ面
45〜48 突き合わせ面
71〜78 突き合わせ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物に凹状の箱抜き穴を成形するために用いられ、当該箱抜き穴の内面を成形する内面成形部を有している箱抜き型枠であって、
当該箱抜き型枠は、前記内面成形部の一部である分割内面成形部を有する複数の分割型枠から構成され、
各分割型枠の分割内面成形部は、隣接する他の分割型枠の分割内面成形部に対して突き合わされる突き合わせ面を有しており、
複数の分割型枠は、前記箱抜き穴からの脱型順序が所定に定められ、
前記突き合わせ面は、隣接する分割型枠のうち脱型順序が先行する分割型枠の分割内面成形部を前記箱抜き穴の内面から離反させる方向に沿って形成されていることを特徴とする箱抜き型枠。
【請求項2】
前記分割内面成形部は、前記箱抜き穴の底面の一部を成形する分割底面成形部と、前記箱抜き穴の内側面の一部を成形する分割側面成形部とからなる請求項1に記載の箱抜き型枠。
【請求項3】
前記分割型枠は、前記分割底面成型部及び前記分割側面成形部の内側に補強枠材を備えており、
互いに隣接する分割型枠の補強枠材の間には、各分割型枠の分割底面成形部及び分割側面成型部を前記箱抜き穴の底面及び内側面から離反する方向への移動を許容とする隙間が形成されている請求項2に記載の箱抜き型枠。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の箱抜き型枠を使用してコンクリート構造物に箱抜き穴を成型する、箱抜き穴の施工方法であって、
隣接する分割型枠の分割内面成形部同士を互いに突き合わせた状態で複数の分割型枠を連結して箱抜き型枠を組み立て、この箱抜き型枠を箱抜き穴の成形部位にセットするセット工程と、
前記箱抜き型枠の周囲にコンクリートを打設して箱抜き穴を成型する成型工程と、
成型された箱抜き穴から箱抜き型枠を脱型する脱型工程とを含み、
前記脱型工程は、複数の分割型枠の連結を解く工程と、複数の分割型枠のうち、より脱型順序が先行する分割型枠を、隣接する他の分割型枠に対する前記突き合わせ面に沿った方向に移動させて箱抜き穴から取り外す工程とを含むことを特徴とする箱抜き穴の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−41719(P2012−41719A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183411(P2010−183411)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(509245832)光洋商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】