説明

簡易手動自動切り替え装置

【課題】手動自動切り替え装置に関し、断線時の切り替え時に安全性を確保し、自動化制御・運転操作全体が簡素化でき、装置の適用分野を拡大できる。
【解決手段】1)手動自動切り替えスイッチの前の正規化ゲイン設定機能によって、固有周波数等の時間に関する第1正規化を行い、手動自動切り替えスイッチの後の正規化ゲイン設定機能によって、プロセスゲイン等のプロセス量に関する第2正規化を行うように振り分ける。2)プロセス量が閾値を超えたときの処理方式として従来の高負荷(高速)運転系や系統連係時のような群運転系における手動移行時操作量保持処理以外に、低負荷(低速)運転系や単独運転系や条件によって適正モードが異なる系などに対する操作量遮断処理によるプロセスの自動遮断モードの条件選択機能も設ける。3)実機においても、実施例のようなシミュレーションによる確認が行えるテストモードを有する手動自動切り替え機能を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は
計算機制御システムに
おける手動自動切り替え装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の手動自動切り替えステーションはプロセスの起動・停止機能を含む自動化制御用計算機とは独立ハードウエアで、モード切り替えボタンの押下やプロセス量の閾値処理によって、軽故障の場合にもプロセス運転継続のために、制御ループ毎に自動・手動モードを切り替える機能があった。新たな手動
自動 切り替え装置として、ソフト手動
自動切り替え ステーションが注目されており、タッチオペレーションとの融合技術により、使い勝手の良い計算機制御自動化技術として産業用を中心に普及し始めている。従来の手動
自動切り替えステーションにはロジックベースのインターロックが組み込まれており、さまざまな工夫がなされている。従来技術は長年の研鑽により高機能で信頼性が高いものになっているが、そのロジックは複雑で、一般的には構成しづらい。

従来の手動 自動 切り替え装置の特許出願としてはプロセス関係はあまり無く自動車関係のものなどがあるが、
これらはプロセス制御には不向きである。プロセス自動化専門書籍でもインターロックはプラント保護が主で手動 自動 切り替え 装置の詳細記述は見当たらない。

【特許文献1】1) 特許公開平6-31299 乾燥汚泥溶融炉装置 2)特許公開2008-51262 自動変速機のモード切り替え制御装置 3)特許公開平5-319297 四輪操舵制御装置 4)特許公表2010-528237自動車の手動切替え可能な段階式トランスミッション 5)特許公開平6-138901デジタル制御装置 6)特許公開平9-235100 有人オートガイダンス車のハンドルクラッチ装置
【非特許文献1】(特許法30条第1項に基づく新規性喪失文献:申請書と共に別途郵送)1) M.Katoh: Static and Dynamic Robust Parameters and PI Control Tuning of TV-MITE Model for Controlling the Liquid Level in a Single Tank, SICE Annual Conference 2010, (2010) 2)加藤・井村:1次のモデル誤差を有する非線形低次系に対する簡易ロバスト正規化 I P 制御とリスク利害同定、第53回自動制御連合講演会(2010)
【非特許文献2】1) 火力原子力発電技術協会編:「計測制御と自動化」(1994) 2) 中村:IT時代の空調制御理論と制御系設計ツール、空気調和・衛生工学第80巻第7号、533-542(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は正規化制御の実施におけるリスク利害同定における必要機能から類推して簡易構築したソフト手動
自動
ステーションのロジック部分を整理することによって、大型プロセス計算機制御以外にも使えるように、群行動軽故障時のプロセス運転継続を目的とした手動移行のみならず、単独運転重故障時の安全確保を目的とした自動遮断モードの条件選択機能の枠組みを追加し、正規化ゲイン振り分け設定機能も含めて、新たな自動化制御を実現する際の安全確保と運転継続の選択を可能とする枠組みを、1次遅れ+むだ時間系に対する正規化IP制御を実施例として、与えることが解決すべき課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
構造・条件:操作量切り替え用総合スイッチを切り替えるために、
1)手動モード時には操作量、2)自動モード時には調節量、3)統合スイッチングロジック、3ブロックとの接続構造を有する。
統合スイッチングロジックを有効に駆動するために、
1)手動スイッチによるリセット付き自己保持ロジック、2)手動
自動遮断 切り替えに関する条件ロジック、3)プロセス量に関する条件ロジック、4)テストモード切り替えスイッチの4ブロックとの接続構造を有する。
手動 自動遮断 切り替えに関する条件ロジックを有効に機能させるために、
1)マニュアルスイッチによる自己保持ロジックのリセット、2)オートスイッチによる統合スイッチングロジックの自動モード移行のブロック接続構造を有する。
機能:スイッチによる自動・手動・停止切り替え機能、プロセス量の閾値処理による手動モード移行機能、同手動モード移行時の操作量保持機能と操作量遮断機能などを含む。
手段:手動
自動 切り替えスイッチの前の正規化ゲイン設定機能によって、固有周波数等の時間に関する第1正規化を行い、手動
自動切り替えスイッチの後の正規化ゲイン設定機能によって、プロセスゲイン等のプロセス量に関する第2正規化を行うように振り分ける。
手段:プロセス量が閾値を超えたときの処理方式として従来の高負荷(高速)運転系や系統連係時のような群運転系における手動移行時操作量保持処理以外に、低負荷(低速)運転系や単独運転系や条件によって適正モードが異なる系などに対する操作量遮断処理によるプロセスの自動遮断モードの条件選択機能も設ける。
手段:テストモードを有効に機能させるために、1)実プロセス量とテスト用プロセス量を切り替えてプロセス量に関する条件ロジックに伝えるスイッチ構造を有する。
【発明の効果】
【0005】
1)自動・手動切り替えロジックが簡易化・整理されて、判り易くなった。

2)プロセス量が閾値を超えたときの処理方式として従来の高負荷(高速)運転系や系統連係時のような群運転系における手動移行時操作量保持処理以外に、低負荷(低速)運転系や単独運転系や条件によって適正モードが異なる系などに対する操作量遮断処理によるプロセスの自動遮断モードの切り替えスイッチと条件選択機能も設けたことにより、手動モードから自動モードへの再投入が不要となり、自動化制御・運転操作全体が簡素化・低コスト化できるだけでなく、装置の適用分野がプロセス以外の低負荷運転系や単独運転系や条件によって適正モードが異なる系などにも広げられ、同一分野でも単独運転時から群管理運転時まで、軽故障時から重故障時まで適用範囲が広げられる特徴が得られる。
3)手動 自動 切り替えスイッチの前の正規化ゲイン設定機能によって、固有周波数等の時間に関する第1正規化を行い、手動 自動 切り替えスイッチの後の正規化
ゲイン設定機能によって、プロセスゲイン等のプロセス量に関する第2正規化を行うように振り分けることによって、断線時の切り替え後のモード移行後も第2正規化を有効に残し、安全性を増す効果が期待できる。
4)手動切り替えテスト機能を設けたことにより、実際のプロセス量が閾値を越えなくても、実施例のような手動移行のシミュレーションテストができるようになり、手動移行後のプロセスへの影響を早く確認できるようになり、装置による切り替えの信頼性が増すと予想される。

【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】発明の構成図 記号の説明Pv : センサ計測プロセス量 Av: 実プロセス量Cv : 調節量 Mv : 操作量 Sp: 目標値A : 自動モードスイッチ M : 手動モードスイッチ O:遮断モードスイッチT : テストモードスイッチ
【図2】発明の実施例のブロック線図 (破線は2自由度制御におけるローカルフィードバック制御でプロセス特性を変更する機能)
【図3】発明の第2の機能のシミュレーション比較例示図 (左図 所定のプロセス値高による自動モードから自動遮断の例、右図 所定のプロセス値高による自動モードから手動モード移行の例)
【図4】発明の実施例の想定制御対象(1タンクの液位制御)の制御システム構成図
【図5】発明の実施例のロジック線図
【図6】発明の実施例の構成図
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、発明を実施するための最良の形態の1部を予想するために 各請求項毎の運転リスクの予想の主要例を次に示す。
Major Operation Risk after Installing it 1
種別 影響の評価 対策
1)正規化用パラメタの変動または誤差 1)安定余裕を悪化させる方向でも所定 1)応答の変動時に調整ガイドを出す
の範囲内のものならば問題はない
Major Operation Risk after Installing it 2
種別 影響の評価 対策
1)運転モードの誤認 1)群行動時に自動遮断することによる他のプロセス運転への影響が大きい 1)群行動を行う対象には遮断スイッチを設けない
2)故障レベルの誤認 2)重故障を軽故障と誤認して運転継続の手動移行を選択し、故障悪化 2)気がついた時点で手動遮断できるスイッチを設ける
軽故障を重故障と誤認して運転停止の遮断を選択し、稼働率低下 安全確認が取れた時点で速やかな再起動ガイド
3)遮断スイッチの誤操作 3)群行動時に遮断スイッチを誤操作することによる他のプロセス運転への影響大 3)遮断スイッチの2重化
Major Operation Risk after Installing it 3
種別 影響の評価 対策
1)テスト信号とプロセス信号のミスマッチ 1)装置の作動テストは問題はない 1)テスト信号の大きさも閾値も調整可とする。
異常検知が甘くなる方向の閾値の 閾値の初期設定は自動に入らない方向で限界値
ミスマッチは重大問題
これらの実施後のリスク予想も加えて、発明を実施するためのインターフェイスの最良の機能を次のように予想した。
1)単独行動か群行動か現在の運転モード表示と異常時の軽故障か重故障か故障レベル表示と手動移行か自動遮断かのモード選択を始めとする各種モード選択スイッチや手動時の操作量の変更ダイアル・上げ下げボタン・数値入力などの調整精度の異なるビジュアルなヒューマンインターフェイスを備えていること
2)操作量と制御量と設定値の棒グラフやリアルタイムトレンド・ヒストリカルトレンドなどの結果の判りやすい表示機能(プロセスアニメ表示等)を備えていること
3)正規化ゲインの設定変更がビジュアルに確認しながらできるヒューマンインターフェイスを備えていること
4)センサ故障や設置忘れなどのフィードバックライン切断検出を容易にするために、信号伝送を1−5 Vもしくは4−20mAなどのバイアス方式か、0−5Vもしくは0−100mAなどのバイアスレス信号逆転アサイン方式を用いていること
5)上記の信号逆転によるフィードバックライン切断検出機能を用いて、遮断モードで切断時の操作量表示は上限飽和のまま、操作量遮断することにより、警告とする機能を備えていること
6)遮断スイッチの2重化と群行動時のロック機能
7)テスト信号に対する応答変動時の正規化パラメタの調整ガイド
8)各ステーションには対応するプロセス値の表示ができ、手動移行・自動遮断の閾値が調整可能で初期設定は自動にならない方向の限界値設定機能
【実施例】
【0008】
一般にプラント安全のために定性的・定量的なリスクアセスメントが行われているが,
制御に的を絞って制御対象の安全のための簡易なオペラビリテイスタデイ的なリスク同定を行った結果の対策として次のようなプラント運転における手動モードへの自動移行と自動遮断を抽出した。
Major Process Interests before Installing it 1

利害の種別 利点・有益点 欠点・有害点
制御対象と制御器の正規化 1つの回答が多くの対象に適用できる 正規化パラメタの変動が所定の範囲を超えると調整が必要
Major Process Risk before Installing it 2

種別
影響の評価
対策
1)
フィードバックラインの切断
1)
閾値を超えたスピルオーバー
1)
高負荷(高速)運転系や群管理系の手動自動切り替え装置によ る手動モードへの自動移行による運転継続
2) 限界値を超えたオーバーシュート
2) 材料の弱点や触媒に対するアタック 2)
低負荷(低速)系や単独行動系の自動遮断による安全確保
Major Process Interests before Installing it 3

利害の種別 利点・有益点 欠点・有害点
1)手動移行・自動遮断のテストモード 1)プロセス値が異常にならなくてもモード 1)通常の切り替え閾値の設定のみならずテスト信号の設定
移行のテストができて安全安心 必要労力とコストが倍になる。

このようなリスク対策のために考案した簡易ソフト手動自動切り替え装置の機能検証シミュレーションを実施した結果を説明する。

次のような制御対象(図4のタンクの液位制御系を想定)と次のフィードバック要素のモデル誤差(センサおよびシグナルコンデショナーを想定)に対して、図2の実線のように比例項はむだ時間の半分に、ループゲインは理論限界感度法を用いて限界ゲインの半分に設定した簡易ロバスト正規化 制御系を 構成し 、センサ校正ゲインおよびシグナルコンデショナーゲインによって計測値を変換し、時間に関する正規化ゲインを手動自動ステーション前に設定しプロセスゲインに関する正規化ゲインを手動自動切り替えステーション後に設定する。ここで、手動自動遮断切り替えステーションは図5のロジックで図6に示す構成である。これらを組み合わせて図1に示すテストモードでのシミュレーションによって、所定のプロセス値である液位がセンサ異常によって閾値を越えた際に自動遮断モードにした場合と手動移行モードにした場合の比較を行った結果が図3である。
1)制御対象:1次遅れ+むだ時間系;

2)1次のフィードバック要素のモデル誤差;センサーおよびシグナルコンデショナ

3)制御器;IP制御

4)センサ校正およびシグナルコンデショナーゲイン

5)手動自動切り替えステーション前の正規化ゲイン

6)手動自動切り替えステーション後の正規化ゲイン


シミュレーションの結果、異常発生時に遮断モードでは操作量が遮断されて運転停止となり安全確保が可能となった。実プロセス量もセンサ計測プロセス量も分離しながらも減少するのに対して、手動移行モードでは現状を保持して運転を継続することができた。産業応用においては,
ここで触れた手動 自動 切り替え装置 の設置だけではなく,
具体的な対象毎および詳細な制御種別毎の特性に応じて,
さらに詳細で定量的でプラント統合的なリスク・利害アセスメントと対策を講じた上でのリスク・利害アセスメントに基づいて,
適切な制御設計を行う必要がある.
これらの検討結果は最良の実施形態の項に記述した。
【産業上の利用可能性】
【0009】
1)小型産業用プラントの自動手動切り替え装置
2)船舶・農業機械・物流装置・ FA用移動装置・工作機械・建築土木などの低速装置の手動・自動切り替え装置
3)自動車のような速度(負荷)と故障の程度によって遮断か手動移行かが変わるプロセスの切り替え装置
4)メカトロ・サーボ・ロボットなどの装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動自動切り替えスイッチの前か後に正規化ゲイン設定機能を有する手動自動切り替え機能
を特徴とする手動自動切り替え装置
【請求項2】
監視検出量が閾値を超えた際に、操作量遮断処理による制御対象の自動遮断モードを有する手動自動切り替え機能

を特徴とする手動自動切り替え装置
【請求項3】
実機においても、シミュレーションによる確認が行えるテストモードを有する手動自動切り替え機能
を特徴とする手動自動切り替え装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−123435(P2012−123435A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270984(P2010−270984)
【出願日】平成22年12月5日(2010.12.5)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り SICE Annual Conference 2010,社団法人計測自動制御学会、2010/08/18
【出願人】(709000480)
【Fターム(参考)】