説明

粉体粒子の熱処理装置及び粉体粒子の製造方法

【課題】転写性とクリーニング性が両立する球形化トナーを大量に安定生産可能な粉体粒子の熱処理装置を提供する。
【解決手段】粉体粒子の熱処理が行われる円筒形状の処理室と;円筒形状の一方の端部から該処理室内に粉体粒子を供給する原料供給手段30と;該原料供給手段からの粉体粒子を処理室内へ拡散する拡散手段400と;該原料供給手段と同端部側から該処理室内に熱風を供給する熱風供給手段100と;該処理室内に、供給された粉体粒子の流れを規制するための手段と;該熱処理された粉体粒子を冷却する冷却手段200と;円筒形状の他方の端部側から熱処理された粉体粒子を回収する手段300とを有し、
該粉体粒子拡散手段は回転体を有し、該熱風供給手段は前記拡散手段の外周側から熱風を螺旋状に流れるように処理室内に供給するものであり、
粉体粒子が、該拡散手段を経て処理室内を螺旋状に流れるように供給され、排出されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体粒子の熱処理装置及び粉体粒子の製造方法に関し、電子写真法、静電記録法、静電印刷法、又はトナージェット方式記録法の如き画像形成方法に用いられるトナー用粉体粒子の球形化に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法、静電写真方及び静電印刷法の如き画像形成方法では、静電荷像を現像するためのトナーが使用される。
【0003】
一般にトナーの製造方法としては、被転写材に定着させるための結着樹脂、トナーとしての色味を出させる各種着色剤、粒子に電荷を付与させるための荷電制御剤を原料とし、更に必要に応じて、例えば、離型剤及び流動性付与剤等の他の添加剤を加える。それらを混合し、溶融混練、冷却固化した後、混練物を粗粉砕し、得られた粗粉砕物を微粉砕することでトナー粒子を得る。得られたトナー粒子は、必要に応じて各種分級機を用いて所望の粒径に揃えられたトナー粒子を得る方法がある。或は、溶剤に溶解したトナー組成物を水中で懸濁し、その後溶剤を留去することによりトナー粒子を得る方法。乳化重合により得られたエマルションに着色剤などの他の材料を添加し、エマルションを凝集、会合させ、トナー粒子を得る方法。また、ビニル系モノマー、着色剤、およびワックス等を均一に溶解または分散し、水系媒体中に造粒して、懸濁重合反応を完結させた後、トナー粒子を濾過、洗浄、乾燥することにより、トナー粒子を得る方法など様々な方法が採用できる。
【0004】
更に、得られたトナー粒子に対しては、必要に応じて流動化剤や滑剤、研磨剤等を添加して乾式混合して、画像形成に供するトナーとしている。また、二成分現像方法に用いるトナーの場合には、各種磁性キャリアと上記トナーとを混ぜ合わせた後、画像形成に供される。
【0005】
しかしながら、近年、複写機やプリンター等の高画質化、高精細化に伴い、現像剤としてのトナーに要求される性能も一段と厳しくなり、トナーの粒子径は小さくなり、トナーの粒度分布としては、粗大な粒子が含有されず且つ超微粒子の少ないシャープなものが要求される様になってきている。
【0006】
更に、カラー機の普及により、転写材としては、従来から用いられて来た普通紙やオーバーヘッドプロジェクター用フィルムに加え、光沢紙等の厚紙やカード類、葉書等の小サイズ紙と多様なマテリアルが用いられるようになり、その対応として、本体側に中間転写体を用いた転写方式が採用される場合が増大している。
【0007】
通常、中間転写体を用いた転写方式においては、顕像化されたトナー像を像担持体から中間転写体に転写後、更に中間転写体から転写材へ転写する為、転写回数が増すことで、トナーに対しては転写効率の向上が求められる。
【0008】
更に、カラー複写機の高速化も求められており、トナーの転写性の向上による弊害として、静電潜像担持体(感光ドラム、ベルト等)上に僅かに残る転写残トナーの除去(クリーニング)に関するケアも必要である。
【0009】
本体側対応としては、除去部材(クリーニングブレード、ローラー、ブラシ等)を用いないで、残余トナーを回収再利用する方法(クリーナーレス)。或は、上記除去部材の感光ドラム等への当接圧を上げることでクリーニング性を確保している。
【0010】
しかし、複写機の高速化、高画質と言った面で、クリーナーレスでの対応には限界がある。また、除去部材の当接圧を上げた場合、感光ドラム等への傷、削れから部材寿命が短くなり、低ランニングコストの面で問題がある。
【0011】
これまでの様々な検討により、トナーを球形化することで転写性は向上させられる。また、トナーを異形化することでクリーニング性は向上させられる。つまり、転写性とクリーニング性はトナーの形状で判断する場合、真逆の方向性に改良のポイントがある。
【0012】
トナーを球形化する方法としては、例えば、懸濁重合や乳化重合等の重合トナーや、粉砕トナーを球形化処理すること等が知られている。しかしながら、既存の粉砕法トナープラントを有する場合には、重合トナーを製造するには、新たなトナープラントが必要となる。更に、重合法故の、材料選定への制限及び製造プロセスによる添加材料の内包状態により、転写性以外の、例えば定着性や現像性に問題が生じる場合がある。
【0013】
また、機械的衝撃処理により球形化する方法の場合、既存のラインへ処理装置を追加するといった簡便さは得られるものの、トナー自体の球形化を向上させることが難しく、生産性の面で問題が生じる場合がある。
【0014】
そのような中、熱風によりトナーを球形化する装置及び方法が提案されている(特許文献1及び2)。特許文献1の装置は、粒子同士の加熱による融着をトナー供給部出口近傍にトナーを分散させる目的で分散ダーゲットを設置することで抑制している。特許文献2の装置は、粒子同士の加熱後の合一を防止する為、旋回流に載せたトナーを外周に設けた熱風旋回流に載せて処理することで、粒子同士の加熱後の合一を防止している。
【0015】
しかしながら、トナー生産性向上を目的としたスケールアップに対しては、トナー粒子一個一個へ均一なエネルギーを与えることが重要であり、装置内でのトナー自体の分散状態によっては、球形化処理に問題が生じる場合がある。更に、高温で瞬間処理を前提としている為に、処理されたトナーは高円形度となる比率が高く、対クリーニングの面で問題がある。
【0016】
以上、トナーを球形化する方法としては、さまざまな提案がなされているが、特に粉砕法で製造されるトナーを球形化する目的で熱風を用いる方法及び装置には、その目的に応じた汎用性の面で、改良の余地がある。
【0017】
尚、本明細書内にて記載される、粉体粒子(トナー粒子)中の粗大粒子、微粒子、超微粒子は以下を示す。
粗大粒子:トナー重量平均径(D4)のおよそ2倍以上の粒子群
微粒子:トナー重量平均径(D4)のおよそ1/2倍以下の粒子群
超微粒子:フロー式粒子像解析装置にて測定される2.0μm以下の粒子群
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2004−276016号公報
【特許文献2】特公平3−52858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、より高精細・高画質なトナーが得られる粉体粒子の熱処理装置及び粉体粒子の製造方法を提供することにある。
【0020】
本発明の目的は、トナーに要求される性能にあわせた処理を行うことが出来る粉体粒子の熱処理装置及び粉体粒子の製造方法を提供することにある。
【0021】
本発明の目的は、転写性とクリーニング性が両立上する球形化トナーを大量に安定生産可能な粉体粒子の熱処理装置及び粉体粒子の製造方法を提供することにある。
【0022】
本発明の目的は、既存の製造プラントに大幅なレイアウト変更を必要としない粉体粒子の熱処理装置及び粉体粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する粉体粒子を熱処理する装置であって、
該熱処理装置は、
(1)粉体粒子の熱処理が行われる円筒形状の処理室と、
(2)円筒形状の一方の端部から該処理室内に粉体粒子を供給する原料供給手段と、
(3)該原料供給手段から供給された粉体粒子を処理室内へ拡散する拡散手段と、
(4)該原料供給手段と同端部側から該処理室内に熱風を供給する熱風供給手段と、
(5)該処理室内に設けられ、供給された粉体粒子の流れを規制するための手段と、
(6)該熱処理された粉体粒子を冷却する冷却手段と、
(7)円筒形状の他方の端部側から熱処理された粉体粒子を回収する手段と、
を少なくとも有し、
該原料供給手段は、円筒形状の処理室の中心軸上に設けられており、該粉体粒子拡散手段は、回転体を少なくとも有し、該熱風供給手段は、前記拡散手段の外周側から熱風を螺旋状に流れるように処理室内に供給するものであり、
粉体粒子が、該拡散手段を経て、処理室内を螺旋状に流れるように供給され、排出されることを特徴とする粉体粒子の熱処理装置に関する。
【0024】
また、本発明は、結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する粉体粒子の熱処理を行う工程を少なくとも有する、重量平均粒径(D4)が3乃至11μmの粉体粒子の製造方法において、
該熱処理工程が、
(1)粉体粒子の熱処理が行われる円筒形状の処理室と、
(2)円筒形状の一方の端部から該処理室内に粉体粒子を供給する原料供給工程と、
(3)該原料供給工程から供給された粉体粒子を処理室内へ拡散する拡散工程と、
(4)該原料供給工程と同端部側から該処理室内に熱風を供給する熱風供給工程と、
(5)該処理室内に設けられ、供給された粉体粒子の流れを規制するための工程と、
(6)該熱処理された粉体粒子を冷却する工程と、
(7)円筒形状の他方の端部側から熱処理された粉体粒子を回収する工程と、
を少なくとも有し、
該原料供給工程は、円筒形状の処理室の中心軸上に設けられており、該粉体粒子拡散工程は、回転体を少なくとも用い、該熱風供給工程は、前記拡散工程の外周側から熱風を螺旋状に流れるように処理室内に供給するものであり、
該粉体粒子が、該拡散工程を経て、処理室内を螺旋状に流れるように供給され、排出されることを特徴とする粉体粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、熱処理方式によるトナーの球形化に対しても、処理量に左右されること無く、均一な処理状態を維持し、且つ、転写性とクリーニング性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の熱処理装置を導入した場合の一例を示すフロー図である。
【図2】熱風供給手段の一例を示す概略図である。
【図3】冷風供給手段の一例を示す説明図である。
【図4】冷風供給手段の一例を示す説明図である。
【図5】冷風供給手段に4つの導入部を設けた場合の例を示す図である。
【図6】本発明による熱処理装置の一例を示した断面図である。
【図7】熱処理装置における粉体粒子拡散手段の説明図である。
【図8】比較例の熱処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
我々は樹脂粉体粒子であるトナーの球形度をコントロールする目的において、熱処理を用いたトナーの製造装置に関する研究を進めた結果、トナーの製造装置の生産性を上げる為には、トナー粒子間で発生する、固着や融着と言った合一現象を抑制することが重要である。更に、処理前のトナー自体を均一に分散すること、装置内の温度分布をコントロールすることがトナーの製造装置には重要であると判断した。
【0028】
トナーの均一分散に関しては、過去多数の提案を実施している。回転体を用いて、装置内に均一にトナーを分散する方法(特開2009−20386号公報)もその一つである。しかしながら、本体への適応を考えた場合、先述した通り、特に高速カラー複写機用トナーとしては、転写性を向上させる円形度とクリーニング性が保たれるトナー形状とに大きな隔たりがあり、この部分に関する研究を更に進めることで本発明に行き着いた。
【0029】
つまり、本発明は、転写性が向上するトナー平均円形度を達成し、且つ、クリーニング性を悪化させる高円形度品の比率は上昇させない熱処理を可能とした。
【0030】
具体的には、トナーは重量平均粒径が3乃至11μmであるが、良好な転写性を確保する為には、熱処理されたトナー或はトナー粒子の平均円形度は0.960以上であることが好ましい。更に、好ましくは0.965以上である。また、ブレード等のクリーニング部材を用いて、感光体上から残余トナーを除去する本体への対応を考えた場合、円形度0.990以上となる粒子含有率を低めにする事が好ましい。更に好ましくは、平均円形度の上昇に対して0.990以上の粒子含有率の増加が緩慢である事である。
【0031】
次に、本発明においてその目的を達成するに好ましい装置の構成を以下に詳述する。
【0032】
まず、本装置を導入した場合のフローに関して説明する。図1は本発明による、トナーの製造装置を導入した場合の1つの例を示したフロー図である。
【0033】
原料ストッカー(1)にはその処理の目的に応じ、種々の製法で作製された粉体粒子(トナー粒子)またはトナーが入れられ、定量供給機(2)により、トナー粒子の熱処理装置(3)へ導入する為、粉体導入管へ供給される。この時、気流供給機(9)からトナーの製造装置(3)への粉体導入管へ気流が導入される。気流により加速されたトナー粒子またはトナーは粉体導入管出口より粉体拡散用回転体へ供給され、回転体により、装置内へ遠心力を受けながら分散される。
【0034】
或は、回転体上部に垂直方向に粉体導入管をたて、定量供給機から直接粉体導入管へトナー粒子またはトナーを供給して、後述の粉体供給手段(図3の30)より粉体拡散手段(図4の400)へ供給され、回転体により、装置内へ遠心力を受けながら分散される。
【0035】
この時、気流には除湿された圧縮エアーまたはN2ガスを用いることが出来る。導入される気流の温度は、トナーTg以下、好ましくはTgマイナス10℃以下、更に好ましくはTgマイナス20℃以下である。気流に用いる気流自体の温度がトナーのTgよりも高いと、粉体導入管および出口、装置内等で融着が起こり、装置の安定性に問題が生じる場合がある。
【0036】
この時、回転体は熱風と同一方向に、回転周速2.5m/s以上25.0m/s以下で、好ましくは回転周速4.1m/s以上20.0m/s以下で回転している。
【0037】
回転周速を2.5m/s未満とした場合、粒子の分散の面では十分であっても、回転体から打ち出されたトナー粒子またはトナーが下記熱風の旋回に載らないことがあり、均一処理や合一防止、高円形度比率抑制の面で効果が出ない場合がある。
【0038】
回転周速を25.0m/s超えとした場合、粒子の分散の面では十分であっても、回転体から打ち出されたトナー粒子またはトナーが下記熱風の旋回に載らない、或は、回転体自体が巻き起こす旋回が熱風の旋回を乱すことで、乱流化して、均一処理や合一防止、高円形度比率抑制の面で効果が出ない場合がある。
【0039】
熱風供給機(10)から供給された熱風を装置内に導入する熱風供給手段(100)の一例を図2に示す。
【0040】
熱風供給手段(100)は該原料供給手段の外周部に距離を隔てて環状に設けられている。これは、粉体拡散用の回転体が熱風に直当たりして熱せられ、蓄熱することで回転体へトナーが融着することを防止する為の処置である。
【0041】
熱風供給手段(100)は出口部に熱風が処理室内に傾斜且つ旋回するように供給される為の気流調整部(100A)が設けられており、複数の板状のルーバーで構成されている。
【0042】
該ルーバーの角度は、処理する対象物により、任意に調整可能とした。具体的には、該ルーバーの角度は、鉛直方向とルーバーのなす角度が、20度以上70度以下の範囲が好ましい。更に好ましい範囲は30度以上60度以下である。
【0043】
角度20度未満とした場合、処理室内での熱風の旋回が弱まり、処理量を増加させた場合の合一粒子の発生が抑制できない場合がある。更に、高円形度品の発生頻度も高くなる場合がある。
【0044】
また、角度70度超えとした場合、処理室内での熱風の旋回は強化されるが、装置上部、つまり拡散用回転部材近傍温度が上昇して、融着が発生する場合がある。
【0045】
熱風供給手段(100)から導入する熱風は100℃以上450℃以下である。但し、本発明の様に転写性とクリーニング性を両立させる処理を目的とする場合には、140℃以上250℃以下とすることが好ましい。
【0046】
温度140℃未満とした場合には、処理装置内で十分な熱履歴を受けられず、形状制御されずに排出はせるトナー粒子またはトナーが激増する場合がある。
【0047】
温度250℃超えとした場合、処理量及び装置内に滞留させる時間にもよるが、高円形度品の発生頻度が高くなる場合がある。
【0048】
気流供給機(11)から供給された冷風を装置内に導入する冷風供給手段(200)の一例を図3及び図4に示す。
【0049】
冷却手段(11)から冷風が装置上部及び/または装置側面から供給されることで、任意の熱エネルギーを受けられるように調整された後、円筒形状の他方の端部側から熱処理された粉体粒子を回収する手段(12)を経て、回収装置(4)へ吸引輸送される。
【0050】
該冷風供給手段(200−1)を図3に示すように、熱風供給手段(100)外周に設ける場合には、冷風が処理室内に傾斜且つ旋回するように供給される為の気流調整部(200A)が設けられており、複数の板状のルーバーで構成されている。
【0051】
該ルーバーの角度は、処理する対象物により、任意に調整可能とした。具体的には、該ルーバーの角度は、鉛直方向とルーバーのなす角度が20度以上70度以下の範囲が好ましい。更に好ましい範囲は30度以上60度以下である。
【0052】
角度20度未満とした場合、処理室内での冷風の旋回が弱まり、処理量を増加させた場合の合一粒子の発生が抑制できない場合がある。更に、高円形度品の発生頻度も高くなる場合がある。
【0053】
また、角度70度超えとした場合、処理室内での冷風の旋回は強化されるが、装置上部における熱風と回転体が起こす旋回流との間で乱流化して、装置天板への融着が発生したり、高円形度品の制御が出来なくなる場合がある。
【0054】
更に、熱風供給手段に設けられたルーバー角度をKA、冷風供給手段の設けられたルーバー角度をKBとした場合、KA≦KBとする方が、外側への旋回力が強まり、供給されたトナーまたはトナー粒子を広範囲で処理することができる。
【0055】
更に、該冷風供給手段(200−2)及び/または(200−3)を図4に示すように、装置側面に設ける場合には、トナー製造装置内への導入部はスリット状やルーバー形状、メッシュ形状等での設計が可能である。該冷風は該熱風の旋回方向と同方向となるよう、装置壁面に沿うようになっている。
【0056】
更に、該冷風供給手段は、図5に示すように、同一周面上に4つの気体導入部を設けても良い。
【0057】
気流供給機(11)から導入される気体は、除湿され、温度は−30℃以上60℃以下であることが好ましく、更に好ましくは−20℃以上20℃以下である。温度自体が高すぎても、低すぎても、熱処理に過剰なエネルギーが必要な場合があり、更に、処理自体が不均一になる場合がある。
【0058】
回収手段(図6の300)は装置下部に設けられ、トナーまたはトナー粒子の螺旋状流れに対して同方向に引けるように一つ以上設けられている。
【0059】
回収装置(4)では、目的とする粉体を製品ストッカー(5)へ回収装置(4)下部に設けた配管及び/またはダンパー、ダブルダンパー、ロータリーバルブ等を介して回収される。回収装置で回収されなかった粉体はバグ(6)に設けた濾布等により回収され、バグストッカー(7)へ集められる。集まられたバグ粉体は再利用が可能である。
【0060】
つぎに、粉体粒子(トナー粒子)の熱処理装置について説明する。
【0061】
図6は本発明による、熱処理装置の一例を示した断面図である。装置外周は最大径が500mm、下部装置底面から天板(粉体導入管出口)までの高さがおよそ1200mmで設計されている。
【0062】
尚、以下に記載する装置構成及び運転条件の範囲は、上記装置スケールとした場合を前提とする。
【0063】
装置外周には冷却ジャケット(60)が設けられており、5℃の冷媒が2.0l/min以上で流れている。装置中心部の底面からトナー供給部出口下に設置された拡散用回転体は、回転体と回転体駆動部を接続する為のシャフトが冷却ジャケット(60−1)に覆われている。該冷却ジャケットにも、5℃の冷媒が2.0l/min以上で流れている。拡散用回転体に関しては、後述する。
【0064】
装置天板(トナー供給面)には、処理室の中心軸上にトナーを供給する為の供給部と、その外周に近接する位置に装置内に熱風を旋回させる為の規制手段を設けた熱風供給部を有している。該熱風供給手段からは、100℃以上450℃以下の熱風が5m3/min以上20m3/min以下で装置内に供給される。
【0065】
装置天板からおよそ150mm下方側面から冷却用冷風が4方向に設けられた、冷風供給手段(200−2)から熱風の旋回方向と同方向になるように導入される。該冷風供給手段(200−2)導入位置は天板下方、50mm以上300mm以下の位置であることが好ましい。該冷風供給手段(200−2)からは−20℃以上50℃以下の冷風が総量で2m3/min以上10m3/min以下で装置内に供給される。
【0066】
更に、装置天板からおよそ700mm下方側面から冷却用冷風が4方向に設けられた、冷風供給手段(200−3)から熱風の旋回方向と同方向になるように導入される。該冷風供給手段(200−3)導入位置は天板下方、400mm以上1000mm以下の位置であることが好ましい。更に、該冷風供給手段(200−3)からは−30℃以上20℃以下の冷風が総量で2m3/min以上10m3/min以下で装置内に供給される。
【0067】
上記構成及び条件にて装置を運転した場合、トナー供給部から拡散回転体に供給されたトナーまたはトナー粒子は、回転体の回転力により装置外周方向へ均一に旋回力を受けながら分散する。この分散したトナーまたはトナー粒子は、供給部外周に設けられた、熱球供給手段から装置内に旋回導入された熱風の旋回流に載り、装置内を螺旋状に下方向に運ばれる。この時、装置内は天板下方側面から導入される冷風により、供給されたトナーが任意の円形度及び高円形度比率となるよう温度分布がコントロールされている。
【0068】
処理後の平均円形度を0.970以上として、高円形度(円形度0.990以上)比率を低下させる場合、熱風の温度を200℃以下、導入風量を10m3/min以上とする必要がある。この時、冷風は導入手段(200−2)、(200−3)どちらも、同温度、同風量としても良いが、天板側冷風温度を高く、排出側冷風温度を低くした方が、高円形度(円形度0.990以上)比率を調整しやすい。
【0069】
また、一般的な、処理後の平均円形度及び高円形度比率をどちらも高める方向とする場合には、熱風温度を高く、風量を少なくし、冷風の温度を低く、風量を多くすることで調整可能である。
【0070】
上記処理を受けたトナーまたはトナー粒子は、装置下部側面に設けられた回収手段から、装置内の流れと同方向に系外に排出される。
【0071】
つぎに、トナーの製造装置に装備した粉体粒子拡散手段について説明する。
【0072】
図7は本発明による、装置下部から粉体導入管出口へ回転部材を保持する場合の該粉体粒子拡散手段の一例を示した断面図である。
【0073】
本装置において用いた拡散手段(400)は直径160mmとした。拡散手段(400)は回転駆動用動力モーター(401)から伸びる、円筒状のシャフト(402)(Φ10mm)及びシャフトガイド(403)(Φ20mm)、ジャケット(60−1)(Φ50mm)により保持された円盤上に、厚さ0.1mm以上3mm以下の板状ブレードを外周上で隣り合うブレードの間隔を0.5mm以上50mm以下に等間隔に配した回転盤から構成されている。
【0074】
また、シャフトガイト外周のジャケット(60−1)を該粉体粒子の流れを規制する手段とすることも可能である。本仕様を兼ねる場合には、ジャケット(60−1)の外径を拡散用回転体外径と同等にすることが好ましい。
【0075】
該回転盤上部に設けられた粉体導入口径は粉体導入管出口径とほぼ等しく、該回転盤外周は気流E供給ゾーン(111)外周とほぼ等しい。また、該円盤上には、導入された粉体を外側に促す目的で円錐状の導入部材(404)が置かれている。
【0076】
粉体導入口から供給されたトナー粒子またはトナーは導入部材(404)により外周へ促され、回転駆動モーター(401)により、周速2.0m/s以上25.0m/s以下で回転する拡散手段(400)に設けられた板状ブレードの隙間から装置内部へ供給される。この時、回転体の周速が2.0m/s未満の場合には供給されたトナー粒子またはトナーが外周に供給された熱風の旋回流に載れない場合がある。また、周速が25.0m/s超えとなる場合には、回転手段からの旋回流により、装置内の流体挙動が不安定となる場合がある。
【0077】
更に、本発明においては、粉流体加速手段の内面及び/または、拡散手段、導入手段に用いられる部材を少なくとも表面に多数の凹凸面を形成させた後に、少なくとも炭化クロムを含有するクロム合金メッキによりコーティングを施しても良い。該コーティングにより、粉体の粉流体加速手段の内面付着や拡散部材、導入部材への付着を防止することで、凝集体が装置内で出来難くする効果がより発揮される場合がある。
【0078】
また、本装置の粉流体加速手段出口に少なくとも複数の穴を持つ拡散部材を更に追加して使用することも出来る。該拡散部材により、導入手段や拡散手段である回転体へ粉体が供給される前に凝集体をほぐす効果が発揮される場合がある。
【0079】
次に、本発明においてその目的を達成するに好ましいトナーの構成を以下に詳述する。
【0080】
本発明に用いられる結着樹脂としては、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でもビニル系樹脂とポリエステル系樹脂が帯電性や定着性でより好ましい。特にポリエステル系樹脂を用いた場合には本装置の導入による効果は大きい。
【0081】
本発明において、ビニル系モノマーの単重合体または共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂等を、必要に応じて前述した結着樹脂に混合して用いることができる。
【0082】
2種以上の樹脂を混合して、結着樹脂として用いる場合、より好ましい形態としては分子量の異なるものを適当な割合で混合するのが好ましい。
【0083】
結着樹脂のガラス転移温度は好ましくは45乃至80℃、より好ましくは55乃至70℃であり、数平均分子量(Mn)は2,500乃至50,000、重量平均分子量(Mw)は10,000乃至1,000,000であることが好ましい。
【0084】
結着樹脂としては以下に示すポリエステル樹脂も好ましい。
【0085】
ポリエステル樹脂は、全成分中45乃至55mol%がアルコール成分であり、55乃至45mol%が酸成分である。
【0086】
ポリエステル樹脂の酸価は好ましくは90mgKOH/g以下、より好ましくは50mgKOH/g以下であり、OH価は好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下であることが良い。これは、分子鎖の末端基数が増えるとトナーの帯電特性において環境依存性が大きくなる為である。
【0087】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は好ましくは50乃至75℃、より好ましくは55乃至65℃であり、さらに数平均分子量(Mn)は好ましくは1,500乃至50,000、より好ましくは2,000乃至20,000であり、重量平均分子量(Mw)は好ましくは6,000乃至100,000、より好ましくは10,000乃至90,000であることが良い。
【0088】
本発明のトナーを磁性トナーとして用いる場合、磁性トナーに含まれる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライトの如き酸化鉄、及び他の金属酸化物を含む酸化鉄;Fe,Co,Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl,Co,Cu,Pb,Mg,Ni,Sn,Zn,Sb,Be,Bi,Cd,Ca,Mn,Se,Ti,W,Vのような金属との合金、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0089】
具体的には、磁性材料としては、四三酸化鉄(Fe34)、三二酸化鉄(γ−Fe23)、酸化鉄亜鉛(ZnFe24)、酸化鉄イットリウム(Y3Fe512)、酸化鉄カドミウム(CdFe24)、酸化鉄ガドリニウム(Gd3Fe512)、酸化鉄銅(CuFe24)、酸化鉄鉛(PbFe1219)、酸化鉄ニッケル(NiFe24)、酸化鉄ネオジム(NdFe23)、酸化鉄バリウム(BaFe1219)、酸化鉄マグネシウム(MgFe24)、酸化鉄マンガン(MnFe24)、酸化鉄ランタン(LaFeO3)、鉄粉(Fe)、コバルト粉(Co)、ニッケル粉(Ni)等が挙げられる。上述した磁性材料を単独で或いは2種以上の組合せて使用する。特に好適な磁性材料は、四三酸化鉄又はγ−三二酸化鉄の微粉末である。
【0090】
これらは結着樹脂100質量部に対して、磁性体20乃至150質量部、好ましくは50乃至130質量部、更に好ましくは60乃至120質量部使用するのが良い。
【0091】
本発明で使用される非磁性の着色剤としては、以下のものが挙げられる。
【0092】
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調整したものが挙げられる。
【0093】
マゼンタトナー用着色顔料しては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、150、163、166、169、177、184、185、202、206、207、209、220、221、238、254、269;C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35が挙げられる。
【0094】
着色剤には、顔料単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点から好ましい。
【0095】
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.Iソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27、C.I.ディスパーバイオレット1の如き油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40、C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28などの如きの塩基性染料。
【0096】
シアントナー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー1、2、3、7、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66;C.I.バットブルー6、C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチルを1乃至5個置換した銅フタロシアニン顔料。
【0097】
イエロー用着色顔料としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74,83、93、95、97,109、110、111、120、127、128、129、147、155、168、174、180、181、185、191;C.I.バットイエロー1、3、20が挙げられる。また、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、ソルベントイエロー162などの染料も使用することができる。
【0098】
また、上記トナーにおいて、結着樹脂に予め、着色剤を混合し、マスターバッチ化させたものを用いることが好ましい。そして、この着色剤マスターバッチとその他の原材料(結着樹脂及びワックス等)を溶融混練させることにより、トナー中に着色剤を良好に分散させることが出来る。
【0099】
結着樹脂に着色剤を混合し、マスターバッチ化させる場合は、多量の着色剤を用いても着色剤の分散性を悪化させず、また、トナー粒子中における着色剤の分散性を良化し、混色性や透明性等の色再現性が優れる。また、転写材上でのカバーリングパワーが大きいトナーを得ることが出来る。また、着色剤の分散性が良化することにより、トナー帯電性の耐久安定性が優れ、高画質を維持した画像を得ることが可能となる。
【0100】
着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して好ましくは0.1乃至30質量部であり、より好ましくは0.5乃至20質量部であり、最も好ましくは3乃至15質量部である。
【0101】
本発明のトナーは、その帯電性をさらに安定化させる為に必要に応じて荷電制御剤を用いることができる。荷電制御剤は、結着樹脂100質量部当り0.5乃至10質量部使用するのが好ましい。0.5質量部未満となる場合には、十分な帯電特性が得られない場合があり好ましくなく、10質量部を超える場合には、他材料との相溶性が悪化したり、低湿下において帯電過剰になったりする場合があり好ましくない。
【0102】
荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。
【0103】
トナーを負荷電性に制御する負荷電性制御剤として、例えば有機金属錯体又はキレート化合物が有効である。モノアゾ金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属錯体、芳香族ジカルボン酸系の金属錯体が挙げられる。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、その無水物、又はそのエステル類、又は、ビスフェノールのフェノール誘導体類が挙げられる。
【0104】
トナーを正荷電性に制御する正荷電性制御剤としては、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の4級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのキレート顔料として、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、燐タングステン酸、燐モリブデン酸、燐タングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン酸、フェロシアン化合物等)、高級脂肪酸の金属塩として、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキシド等のジオルガノスズオキサイドやジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレートが挙げられる。
【0105】
本発明において、必要に応じて一種又は二種以上の離型剤を、トナー粒子中に含有させてもかまわない。離型剤としては次のものが挙げられる。
【0106】
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス、また、酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、または、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したものなどが挙げられる。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;長鎖アルキルアルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの)、また、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;また、ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、また、植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0107】
離型剤の量は、結着樹脂100質量部あたり0.1乃至20質量部、好ましくは0.5乃至10質量部が好ましい。
【0108】
また、該離型剤の示差走査型熱量計(DSC)で測定される昇温時の最大吸熱ピーク温度で規定される融点は、65乃至130℃であることが好ましい。より好ましくは80乃至125℃であることがよい。融点が65℃未満の場合は、トナーの粘度が低下し、感光体へのトナー付着が発生しやすくなり、融点が130℃超の場合は、低温定着性が悪化してしまう場合があり好ましくない。
【0109】
本発明のトナーには、トナー粒子に外添することにより、流動性が添加前後を比較すると増加し得る微粉体を流動性向上剤として用いてもかまわない。例えば、フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、微粉末酸化チタン、微粉末アルミナ等をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理を施し、疎水化処理したものであり、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30乃至80の範囲の値を示すように処理したものが特に好ましい。
【0110】
流動化剤は、BET法で測定した窒素吸着による比表面積が30m2/g以上、好ましくは50m2/g以上のものが良好な結果を与える。
【0111】
本発明のトナーには、研摩効果に加え、帯電性付与性及び流動性付与、クリーニング助剤として、上述以外の無機微粉体を添加しても良い。無機微粉体は、トナー粒子に外添することにより、添加前後を比較するとより効果が増加し得るものである。本発明に用いられる無機微粉体としては、マグネシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、ストロンチウム、セリウム、カルシウム、バリウム等のチタン酸塩及び/又はケイ酸塩が挙げられる。
【0112】
本発明における無機微粒子は、トナー100質量部に対して、0.1乃至10質量部、好ましくは0.2乃至8質量部用いるのが良い。
【0113】
本発明のトナーは、磁性一成分、非磁性一成分、キヤリアと混合使用する二成分に用いることが出来るが、より本発明の効果を発揮させる為には、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが好ましい。
【0114】
磁性キャリアとしては、例えば、表面を酸化した鉄粉、或いは、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライト等の磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)、一般に公知のものを使用できる。
【0115】
本発明のトナーを磁性キャリアとを混合して二成分系現像剤として使用する場合、その際のキャリア混合比率は、現像剤中のトナー濃度として、2質量%以上15質量%以下、好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると通常良好な結果が得られる。トナー濃度が2質量%未満では画像濃度が低下しやすく、15質量%を超えるとカブリや機内飛散が発生しやすい。
【0116】
次に、以下の実施例中で測定した各種物性データの測定方法に関して以下に説明する。
【0117】
(1)粒度分布の測定
粒度分布については、種々の方法によって測定できるが、本発明においてはコールター・カウンターのマルチサイザーを用いて行った。
【0118】
<重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行ない、算出した。
【0119】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0120】
尚、測定、解析を行なう前に、以下のように専用ソフトの設定を行なった。
【0121】
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0122】
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0123】
具体的な測定法は以下の通りである。
【0124】
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
【0125】
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
【0126】
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
【0127】
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
【0128】
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
【0129】
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行なう。
【0130】
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、分析/個数統計値(算術平均)画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0131】
<微粉量の算出方法>
トナー中の個数基準の微粉量(個数%)は、以下のようにして算出する。例えば、トナー中の4.0μm以下の粒子の個数%は、前記のMultisizer 3の測定を行なった後、(1)専用ソフトでグラフ/個数%に設定して測定結果のチャートを個数%表示とし、(2)書式/粒径/粒径統計画面における粒径設定部分の「<」にチェック、その下の粒径入力部に「4」を入力する。そして、(3)分析/個数統計値(算術平均)画面を表示したときの「<4μm」表示部の数値が、トナー中の4.0μm以下の粒子の個数%である。
【0132】
<粗粉量の算出方法>
トナー中の体積基準の粗粉量(体積%)は、以下のようにして算出する。例えば、トナー中の10.0μm以上の粒子の体積%は、前記のMultisizer 3の測定を行なった後、(1)専用ソフトでグラフ/体積%に設定して測定結果のチャートを体積%表示とし、(2)書式/粒径/粒径統計画面における粒径設定部分の「>」にチェック、その下の粒径入力部に「10」を入力する。そして、(3)分析/体積統計値(算術平均)画面を表示したときの「>10μm」表示部の数値が、トナー中の10.0μm以上の粒子の体積%である。
【0133】
(2)トナー粒子の平均円形度の測定
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000型」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定・解析条件で測定した。
【0134】
具体的な測定方法としては、イオン交換水20mlに、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.05ml加えた後、測定試料0.02gを加え、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製など)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とした。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
【0135】
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測して、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径2.00μm以上200.00μm以下に限定し、トナー粒子の平均円形度を求めた。
【0136】
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えばDuke Scientific社製5200Aをイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
【0137】
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用し、解析粒子径を円相当径2.00μm以上200.00μm以下に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
【0138】
(3)ワックスの融点測定
示差熱分析測定装置(DSC測定装置),DSC−7(パーキンエルマー社製)を用い測定する。測定はASTM D3418−82に準じておこなう。測定試料2乃至10mgを精秤してアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。この昇温過程で、温度30乃至200℃の範囲におけるメインピークの吸熱ピークが得られる。この吸熱メインピークの温度をもってワックスの融点とする。
【0139】
(4)ガラス転移温度(Tg)の測定
示差走査熱量計(DSC測定装置),DSC−7(パーキンエルマー社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
【0140】
測定試料は5乃至20mg、好ましくは10mgを精密に秤量する。これをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで常温常湿下で測定を行う。この昇温過程で、温度40乃至100℃の範囲におけるメインピークの吸熱ピークが得られる。このときの吸熱ピークが出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を本発明におけるガラス転移温度Tgとする。
【0141】
(5)結着樹脂の分子量分布の測定
GPCによるクロマトグラムの分子量は次の条件で測定される。
【0142】
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流す。試料をTHFに溶解後0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用いる。試料濃度として0.05乃至0.6質量%に調整した樹脂のTHF試料溶液を50乃至200μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製あるいは、東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102,2.1×103,4×103,1.75×104,5.1×104,1.1×105,3.9×105,8.6×105,2×106,4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0143】
カラムとしては、103乃至2×106の分子量領域を適確に測定するために、市販のポリスチレンゲルカラムを複数組合せるのが良い。例えば、Waters社製のμ−styragel 500,103,104,105の組合せや、昭和電工社製のshodex KA−801,802,803,804,805,806,807の組合せが好ましい。
【0144】
(6)樹脂の酸価の測定
結着樹脂の「酸価」は以下のように求められる。基本操作は、JIS−K0070に準ずる。
【0145】
試料1g中に含有されている遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を酸価といい、次によって試験を行う。
【0146】
[1]試薬
(a)溶剤エチルエーテル−エチルアルコール混液(1+1または2+1)またはベンゼン−エチルアルコール混液(1+1または2+1)で、これらの溶液は使用直前にフェノールフタレインを指示薬としてN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液で中和しておく。
(b)フェノールフタレイン溶液 フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。
(c)N/10水酸化カリウム−エチルアルコール溶液 水酸化カリウム7.0gをできるだけ少量の水に溶かしエチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2乃至3日放置後ろ過する。標定はJIS K 8006(試薬の含量試験中滴定に関する基本事項)に準じて行う。
【0147】
[2]操作 試料1乃至20gを正しくはかりとり、これに溶剤100mlおよび指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、試料が完全に溶けるまで十分に振る。固体試料の場合は水浴上で加温して溶かす。冷却後これをN/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定し、指示薬の微紅色が30秒間続いたときを中和の終点とする。
【0148】
[3]計算式 つぎの式によって酸価を算出する。
【0149】
【数1】

[A:酸価
B:N/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
C:N/10水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g) ]
【0150】
(7)結着樹脂の水酸基価の測定
結着樹脂の「水酸基価」は以下のように求められる。基本操作は、JIS=K0070に準ずる。
【0151】
試料1gを規定の方法によってアセチル化するとき水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を水酸基価といい、つぎの試薬、操作および計算式によって試験を行う。
【0152】
[1]試薬
(a)アセチル化試薬 無水酢酸25gをメスフラスコ100mlに入れ、ピリジンを加えて全量を100mlにし、十分に振りまぜる(場合によっては、ピリジンを追加しても良い)。アセチル化試薬は、湿気、炭酸ガスおよび酸の蒸気に触れないようにし、褐色びんに保存する。
(b)フェノールフタレイン溶液 フェノールフタレイン1gをエチルアルコール(95v/v%)100mlに溶かす。
(c)N/2水酸化カリウム−エチルアルコール溶液 水酸化カリウム35gをできるだけ少量の水に溶かし、エチルアルコール(95v/v%)を加えて1リットルとし、2乃至3日間放置後ろ過する。標定はJIS K 8006によって行う。
【0153】
[2]操作
試料0.5乃至2.0gを丸底フラスコに正しくはかりとり、これにアセチル化試薬5mlを正しく加える。フラスコの口に小さな漏斗をかけ、95乃至100℃のグリセリン浴中に底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首が浴の熱をうけて温度が上がるのを防ぐために、中に丸い穴をあけた厚紙の円盤をフラスコの首の付根にかぶせる。1時間後フラスコを浴から取り出し、放冷後漏斗から水1mlを加えて振り動かして無水酢酸を分解する。さらに分解を完全にするため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱し、放冷後エチルアルコール5mlで漏斗およびフラスコの壁を洗い、フェノールフタレイン溶液を指示薬としてN/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液で滴定する。なお、本試験と並行して空試験を行う。場合によっては、指示薬としてKOH−THF溶液にしても構わない。
【0154】
[3]計算式 つぎの式によって水酸基価を算出する。
【0155】
【数2】

[A:水酸基価
B:空試験のN/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
C:本試験のN/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液の使用量(ml)
f:N/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液のファクター
S:試料(g)
D:酸価 ]
【実施例】
【0156】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0157】
〔実施例1〕
<トナーの製造>
・結着樹脂(ポリエステル樹脂):100質量部
(Tg58℃、酸価25mgKOH/g、水酸基価20mgKOH/g、分子量:Mp5500、Mn2800、Mw50000)
・C.I.ピグメントブルー15:3:5質量部
・1,4−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物:0.5質量部
・フィッシャートロプシュワックス:5質量部
(日本精蝋社製、商品名FT−100、融点98℃)
上記の処方の材料を、ヘンシェルミキサー(FM−75J型、三井鉱山(株)製)でよく混合した後、温度130℃に設定した2軸混練機(PCM−30型、池貝鉄鋼(株)製)にて10kg/hrのFeed量で混練(吐出時の混練物温度は約150℃)した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルで粗砕した後、機械式粉砕機(T−250:ターボ工業(株)製)にて15kg/hrのFeed量で微粉砕し、重量平均粒径が5.5μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が55.6個数%、且つ粒径10.1μm以上の粒子を0.8体積%含有するトナー微粉砕品B−1を得た。
【0158】
得られたトナー微粉砕物B−1を回転式分級機(TTSP100、ホソカワミクロン(株)製)にて、4.2kg/hrのフィード量で微粉及び粗粉をカットする分級を行い、重量平均粒径が5.6μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が25.6個数%、且つ粒径10.1μm以上の粒子を0.2体積%含有するトナー粒子A−1を得た。
【0159】
トナー粒子A−1を、FPIA3000にて円形度を測定した結果、平均円形度が0.937、2μm以下粒子含有率が11.0%であった。
【0160】
次に、上記トナー粒子A−1を、トナーの製造装置である図1のフローにて、図6構成にて、18.0kg/hrのフィード量で処理を行いトナー粒子C−1を得た。この時、拡散手段である回転部材は図7の外周板ブレードタイプ(ブレード厚み1mm、枚数60枚)として周速15.0m/sで回転させた。また、装置運転時のトナー粒子搬送用インジェクションエアーは、25℃,1.2m3/min、熱風は整流ブレードを介して(角度50°、ブレード厚み1mm、枚数36枚)150℃,12.0m3/min,冷風は(200−2)から、0℃,2.0m3/min、(200−3)から、0℃,4.0m3/min、ブロワ−風量を21.0m3/minとした。
【0161】
得られたトナー粒子C−1は重量平均粒径が5.8μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が24.3個数%、且つ粒径10.1μm以上の粒子が1.6体積%であった。また、FPIA3000にて測定した平均円形度は0.970、円形度0.990以上の粒子含有率が26.3%となった。
【0162】
次に、得られたトナー粒子C−1をホソカワミクロン社製ATP100分級機を用いて、粗粉カットを行い重量平均径が5.6μm、粒径4.0μm以下の粒子が25.0個数%、粒径10.1μm以上の粒子が0.1体積%のトナー粒子D−1を得た。また、FPIA3000にて測定した平均円形度は0.971、円形度0.990以上の粒子含有率が26.5%となった。
【0163】
上記トナー粒子D−1(シアントナー粒子)100質量部に対して、アナターゼ型酸化チタン微粉末(BET比表面積80m2/g、イソブチルトリメトキシシラン12質量%処理)1.0質量部、オイル処理シリカ微粒子(BET比表面積95m2/g、シリコーンオイル15質量%処理)1.0質量部をヘンシェルミキサーにより外添した後、#200メッシュを載せた振動篩で粗粒除去を行い、トナー1とした。
【0164】
次に、下記製法で得られた磁性キャリア1の90質量部に対し、トナー1を10質量部加え、常温常湿(23℃、50%RH)の環境において、V型混合機により混合し、スタート用現像剤T−1とした。
【0165】
<磁性微粒子分散型樹脂コア(A)の製造>
マグネタイト微粒子(比抵抗5×107(Ω・cm))と、ヘマタイト微粒子(比抵抗3×108(Ω・cm))に対して、それぞれ3.5質量%、2.0質量%のシラン系カップリング剤(3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)を加え、容器内で120℃以上で高速混合撹拌し、それぞれの微粒子を親油化処理した。
・フェノール 10質量部
・ホルムアルデヒド溶液(ホルムアルデヒド37質量%水溶液) 6質量部
・上記処理したマグネタイト微粒子 74質量部
・上記処理したヘマタイト微粒子 10質量部
上記材料と、28質量%アンモニア水5質量部及び水10質量部をフラスコに入れ、撹拌、混合しながら45分かけて85℃まで昇温・保持し、3時間重合反応させて硬化させた。その後、30℃まで冷却し、更に水を添加した後上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。次いで、これを減圧下(5hPa以下)、60℃の温度で乾燥して、磁性微粒子が分散された状態の磁性微粒子分散型樹脂コア(A)を得た。得られた磁性微粒子分散型樹脂コアは、個数平均粒子径が35μm、BET比表面積が0.07(m2/g)であった。
【0166】
<磁性キャリアの製造>
先述の磁性微粒子分散型樹脂コア(A)をコーター内に投入し、加湿窒素を流入させ水分量0.3質量%に調整した。その後、トルエン溶媒を用いて希釈したγ−アミノプロピルトリメトキシシラン3質量%を剪断応力を連続して印加しつつ、コア表面に処理した。乾燥窒素気流下で溶媒を揮発させながら行い、置換基がすべてメチル基であるストレートシリコーン樹脂0.5質量%及び、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.015質量%の混合物をトルエンを溶媒として磁性微粒子分散型樹脂コアに被覆した。乾燥窒素気流下で溶媒を揮発させながら行なった。さらに、この磁性コートキャリアを140℃で焼き付け、100メッシュの篩で、凝集した粗大粒子をカットし、次いで多分割風力分級機で微粉及び粗粉を除去して粒度分布を調整した。その後23℃,60%内で保たれたホッパー内で100時間調湿して磁性キャリアを得た。
【0167】
(評価−1):転写効率(転写残濃度)
スタート用現像剤T−1を用いて、キヤノン製フルカラー複写機iRC5180(サンプリング等に対応可能に改造した)で常温低湿(23℃、5%RH)環境下で耐久画出し評価(A4横、10%印字比率、2万枚)を行った。耐久初期及び2万枚後に、ベタ画像(画像のトナー載り量を0.6mg/cm2となりように調整)を出力し、ベタ画像形成時の感光体ドラム上の転写残トナーを、透明なポリエステル製粘着テープによりテーピングして剥ぎ取り、該テープを紙に貼った後、X−Riteカラ−反射濃度計(500シリーズ)を用いて濃度測定して濃度Gとした。同じ紙に透明なポリエステル製粘着テープのみを貼った後、同様に濃度を測定して濃度Hとした。転写効率は濃度Gと濃度Hの差を用いて、以下の評価基準にて判断した。
【0168】
(評価基準)
A:濃度差 0.05未満
B:濃度差 0.05以上0.08未満
C:濃度差 0.08以上0.15未満
D:濃度差 0.15以上0.20未満
E:濃度差 0.20以上
【0169】
(評価−2):クリーニング性評価(べた白画像汚れ)
スタート用現像剤T−1を用いて、キヤノン製フルカラー複写機iRC3580(クリーニングブレード当接圧を30%低下させた)を用いた。
【0170】
高温高湿環境下(30℃/80%RH)において、画像印字比率100%のハーフトーン画像をA4紙連続10枚通紙し、その後、印字比率0%の画像をA4紙10枚通紙し、得られた印字比率0%の画像10枚を目視で観察することにより評価した。
【0171】
(評価基準)
A:全く汚れが発生しない(非常に優れている)
B:1乃至2枚に汚れが発生する(良好である)
C:3乃至5枚に汚れが発生する(本発明では問題ない)
D:5乃至10枚に汚れが発生する。(本発明では許容できない)
【0172】
評価−1,2の結果より、本件のトナーの製造装置を使用した場合、高転写性のトナーであっても、クリーニング性能を低下させることは無い。トナー粒子の物性及び評価結果は表1に、トナーの製造装置の構成及び運転条件は表2、3に記載した。
【0173】
〔実施例2乃至24〕
実施例1において、装置構成を表2記載の通りに変更した以外は同様にして、評価用トナーT−2乃至T−24を得、実施例1同様に評価を行い、表1の結果を得た。
【0174】
尚、トナー粒子D−2乃至D−24の作製に際し、回転式分級機の条件を調整して、重量平均径が5.4μm乃至5.6μm、粒径4.0μm以下の粒子が22.5個数%乃至27.5個数%、粒径10.1μm以上の粒子が0.5体積%以下のトナー粒子とした。
【0175】
また、実施例5、6においては、装置天板を図3に置き換えて処理を実施した。
【0176】
〔実施例25乃至32〕
実施例1において、装置運転条件を表3記載の通りに変更した以外は同様にして、評価用トナーT−25乃至T−32を得、実施例1同様に評価を行い、表1の結果を得た。
【0177】
〔比較例1〕
実施例1において、トナーの熱処理装置を図8(先の特開2009−20386号公報の装置)に変更した。
【0178】
15.0kg/hrのフィード量で処理を行いトナー粒子E−1を得た。この時、装置内へのトナー粒子供給口はΦ25mm円形状とした。また、装置運転時のトナー粒子搬送用インジェクションエアーは、25℃,1.2m3/min、熱風は整流ブレードを外した状態で(801)から260℃,8.0m3/min、冷風は(802)から、0℃,2.0m3/min、(803)から、0℃,2.0m3/min、(804)から、25℃、5.0m3/min、ブロワ−風量を20.0m3/minとした。
【0179】
得られたトナー粒子E−1は重量平均粒径が6.2μmであり、粒径4.0μm以下の粒子が23.3個数%、且つ粒径10.1μm以上の粒子が3.6体積%であった。また、FPIA3000にて測定した平均円形度は0.972、円形度0.990以上の粒子含有率が35.7%となった。
【0180】
次に、得られたトナー粒子E−1をホソカワミクロン社製ATP100分級機を用いて、粗粉カットを行い重量平均径が5.8μm、粒径4.0μm以下の粒子が23.8個数%、粒径10.1μm以上の粒子が0.3体積%のトナー粒子F−1を得た。また、FPIA3000にて測定した平均円形度は0.972、円形度0.990以上の粒子含有率が35.8%となった。
【0181】
得られたトナー粒子F−1を用いて、実施例1同様に評価用トナーT−33を作成し評価を行なった所、転写性はCランクとなったが、クリーニング性はDランクとなった。
【0182】
〔比較例2乃至5〕
比較例1において、導入する熱風の温度を200℃、230℃、280℃、310℃と変更した以外は比較例1と同様にしてトナー粒子F−2乃至F−5を得、さらに評価用トナーT−34乃至T−37を作製して評価した。表1の結果を得た。
【0183】
【表1】

【0184】
【表2】

【0185】
【表3】

【符号の説明】
【0186】
1 原料ストッカー、2 定量供給機、3 熱処理装置(表面改質装置)、4 回収装置、5 製品ストッカー、6 バグ、7 バグストッカー、8 ブロワー、9 気流供給機、10 気流供給機、11 気流供給機、12 排出部、30 粉体供給手段、60 冷却ジャケット、100 熱風供給手段、100A 気流調整部、200 冷風供給手段、200A 気流調整部、200−1 冷風供給手段、200−2 冷風供給手段、200−3 冷風供給手段、300 回収手段、400 拡散手段、401 回転用モーター、402 シャフト、403 シャフトガイド、800 粉体供給手段、801 熱風供給手段、802 冷風供給手段、803 冷風供給手段、804 搬送気流供給手段、805 冷却ジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する粉体粒子を熱処理する装置であって、
該熱処理装置は、
(1)粉体粒子の熱処理が行われる円筒形状の処理室と、
(2)円筒形状の一方の端部から該処理室内に粉体粒子を供給する原料供給手段と、
(3)該原料供給手段から供給された粉体粒子を処理室内へ拡散する拡散手段と、
(4)該原料供給手段と同端部側から該処理室内に熱風を供給する熱風供給手段と、
(5)該処理室内に設けられ、供給された粉体粒子の流れを規制するための手段と、
(6)該熱処理された粉体粒子を冷却する冷却手段と、
(7)円筒形状の他方の端部側から熱処理された粉体粒子を回収する手段と、
を少なくとも有し、
該原料供給手段は、円筒形状の処理室の中心軸上に設けられており、該粉体粒子拡散手段は、回転体を少なくとも有し、該熱風供給手段は、前記拡散手段の外周側から熱風を螺旋状に流れるように処理室内に供給するものであり、
粉体粒子が、該拡散手段を経て、処理室内を螺旋状に流れるように供給され、排出されることを特徴とする粉体粒子の熱処理装置。
【請求項2】
該熱風供給手段は該原料供給手段の外周に近接あるいは距離を隔てた位置に、環状に設けられ、該熱風供給手段の出口には、熱風が装置内を旋回する為の気流調整部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の粉体粒子の熱処理装置。
【請求項3】
該粉体粒子の流れを規制する手段は装置中心部に円筒状のシャフトが設けられ、該シャフト上端に該拡散手段である回転体が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体粒子の熱処理装置。
【請求項4】
該冷却手段は該原料供給手段及び該熱風供給手段より粉体粒子の回収手段に近い位置に設けられ、装置外周から少なくとも1箇所の気体導入部を有し、且つ、該気体導入部から導入される気体が装置内で熱風と同一方向に旋回する為の気流調整部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の粉体粒子の熱処理装置。
【請求項5】
結着樹脂及び着色剤を少なくとも含有する粉体粒子の熱処理を行う工程を少なくとも有する、重量平均粒径(D4)が3乃至11μmの粉体粒子の製造方法において、
該熱処理工程が、
(1)粉体粒子の熱処理が行われる円筒形状の処理室と、
(2)円筒形状の一方の端部から該処理室内に粉体粒子を供給する原料供給工程と、
(3)該原料供給工程から供給された粉体粒子を処理室内へ拡散する拡散工程と、
(4)該原料供給工程と同端部側から該処理室内に熱風を供給する熱風供給工程と、
(5)該処理室内に設けられ、供給された粉体粒子の流れを規制するための工程と、
(6)該熱処理された粉体粒子を冷却する工程と、
(7)円筒形状の他方の端部側から熱処理された粉体粒子を回収する工程と、
を少なくとも有し、
該原料供給工程は、円筒形状の処理室の中心軸上に設けられており、該粉体粒子拡散工程は、回転体を少なくとも用い、該熱風供給工程は、前記拡散工程の外周側から熱風を螺旋状に流れるように処理室内に供給するものであり、
該粉体粒子が、該拡散工程を経て、処理室内を螺旋状に流れるように供給され、排出されることを特徴とする粉体粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−171160(P2012−171160A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34253(P2011−34253)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】