説明

粉体計測用静電容量センサー

【課題】微小な粉体量を高感度に正確に測定できるようにする為、温度変化による金属電極の熱膨張及び空気の比誘電率の変化による影響を低減してコスト・ダウンを計る。
【解決手段】静電容量センサーの電極構造を平行平面板コンデンサーの構造にして、静電容量センサー電極3a、3bとガード電極4a、4bとに分離して、一方の静電容量センサー電極3aとガード電極4aを交流発振器2aに接続して、もう一方の静電容量センサーの電極3bは増幅機21の入力に接続し、もう一方のガード電極4bは増幅機21の出力に接続して、非常に小さい静電容量値を実現する。さらに、対向電極間の電界強度分布極めて均一な構造を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体の流量を静電容量の変化として測定する粉体計測用静電容量計測装置に関し、特に、粉体を通過させる測定用静電容量センサーの静電容量値を可能な限り微小にすると同時に静電容量センサー内の電界強度分布が一様な強度分布を得る事が出来る構造及び交流発振器と増幅器との接続に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉体の量に応じた静電容量測定する為、対向する電極の間に粉体を通過させ、その通過する間に静電容量の変化を測定する粉体計測用静電容量計測装置は、より微小な粉体量の場合は測定電極の静電容量の変化分も微小になり、より高感度な粉体計測用静電容量計測装置が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
粉体量の測定に用いられる静電容量センサーの容量値は0.数pF〜約1pFのものが多い。これは静電容量電極の構成及び製作方法から得られている値である。微小な粉体をより高感度に行うとすると、その容量値の変化分は前記、静電容量センサーの容量値の1万分の1ないし10万分の1の容量値を検出する必要がある。このような値を検出する為には、粉体量を計測する環境においても、静電容量センサーの容量値の安定度が必要になる事を意味する。しかしながら、粉体量を計測する環境は必ずしも良くなく、特に粉体を搬送するには主に空気が用いられていて、また、温度の安定な環境とはいえない。静電容量センサーを回りの環境から遮蔽して温度調節は可能であるが、その分コストが上昇するし、また、粉体を搬送する空気を遮蔽する事は不可能である。静電容量センサーの容量値の不安定要素は温度による金属電極の熱膨張と空気の比誘電率の変動によるものが考えられる。
【0004】
静電容量センサーの容量値を仮に1pFとすると、その1万分の1ないし10万分の1の容量値は0.1〜0.01fFの容量値となる。このような容量変化を検出する為に静電容量センサーの容量値を10fF程度の値に製作すると、その変化分は百分の1〜千分の1になり、環境条件の変化に対して大幅に改善される事になる。
【0005】
粉体量の測定に用いられる静電容量センサーは図4に示すような電極を螺旋状に形成されるものが多く用いられている。これは粉体がパイプの円筒軸の中心に対して偏って通過しても、螺旋電極の場合、粉体は必ず対向した電極の間を通過する事になり、粉体を必ず検出する。これは螺旋の周期が多いほど確実となる。また、一方の電極を半周期の間だけ螺旋を形成すると、もう一方の電極の螺旋を180度対向させると360度の範囲で必ず対向する電極を形成する事が出来る。しかしながら、このような構造では静電容量センサーの容量値を小さくする事が出来ない。また、螺旋の周期を小さくすれば、螺旋構造の意味がなくなるばかりでなく、電界強度を通過する粉体に対して一様にする事は極めて困難で不可能に近い。
【課題を解決するための手段】
【0006】
静電容量センサーの電極構造を平行平面板コンデンサーの構造にして、静電容量センサー電極とガード電極に分離をする。これらの電極を粉体を通過させる円筒状パイプの筒方向の中心軸に対称に、また、円筒の中心点に対称に配置する構造とする。この電極の一方は静電容量センサー電極とガード電極は交流発振器に接続して、もう一方の電極は静電容量センサーの変化を電圧として検出する増幅機の入力に接続してガード電極は増幅機の出力に接続する。これにより、螺旋形状電極に比べて格段に小さい静電容量値に出来きる。さらに、曲線形状の螺旋形状電極に対して直線的な形状をしている為、その電極間の電界強度分布の相違を非常に小さく出来る構造が実現可能となる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、粉体量を計測する環境や粉体を搬送の空気の誘電率変化による影響を軽減する為、静電容量センサーの容量安定化のための温度調節器など新たに付加させる事がないので、その分のコストを上昇させる事なく、容量センサーの容量値の不安定原因である温度や湿度の環境変化の影響を受けないで粉体量を正確に測定できる。
【発明を実施するための最良な形態】
【0008】
図2に示す平面電極は静電容量センサー電極は横方向すなわち粉体が通過する円筒状パイプの直径方向と同じ程度の長さにして、縦方向すなわちパイプの長さ方向は出来る限り短い長さにする。本実施例では約1mmである。平面電極は静電容量センサー電極の周囲をガード電極が形成されていて、パイプの横方向の端はある角度を持って対向する電極の方向に前記パイプ直径の2〜3割程度の長さを有している。これらの電極は通常電子回路に使用されているプリント基板で作成されている。図では電極のみを示しているがパイプの長さ方向には機械寸法的には余裕があり、ガード電極のパターンが無いところで対向する2枚の電極を固定する。図1に示すように、対向する電極の一方の静電容量センサー電極とガード電極は交流電源に接続して、もう一方の静電容量センサー電極は静電容量センサーに流れる電流を電圧に変換するインピーダンスZ及び増幅器の入力に接続され、ガード電極は増幅器の出力に接続にされる。これらの静電容量センサー電極とガード電極はさらにシールドされていて、回路のアース電位に接続されている。この接続における等価回路を図5及び図6に示す。図6に示すCが静電容量センサーの容量値となリガード電極の容量値は粉体が通過しても容量値変化に寄与しない。この関係を図6を参照して以下の計算式に示す。

から、上式を整理すると

となり、計算を簡単にする為、非反転増幅器の利得を1、オフセット電圧・電流を零と仮定して、e=eとすると上式は

となる。Cは増幅器の正帰還ループに組み込まれて、利得が1の為、電流が流れないのでインピーダンスが無い事と等価になる。この時の静電容量センサーの容量値Cは以下の定数を用いて、
ε:真空の誘電率で約8.85×10−12
ε:空気の比誘電率で約1。
d :横方向の電極の長さ(単位mm)
t :縦方向の電極の長さ(単位mm)

となり、約9fFとなる。
【0009】
次にこれらの電極内部の電界強度分布を説明する。図7、図8は図2の静電容量センサーを横方向から見た場合の電界強度を示す。
図7の升目で最外周から5升目のところはアース電位にしており遮蔽されている事を前提に計算された図である。なお、電極に印加した電圧は+1Vと−1Vである。
図8は電極部分の電界強度を拡大したものを示す。図中に電界強度の歪が見られるのは静電容量センサー電極とガード電極を分離したところであり、分離間隔は少ない方が電界強度の歪が少なく出来る事を示す。
しかしながら、円筒の長さ方向にガード電極を配置した効果で電極間の電位は相当に均一化される。図11に電極間の電位分布の数値表示を示す。+1Vの電極から−1Vの電極に架けて、電位が直線的に変化している事が分かる。
図9、図10は上から下へと見た場合の電界強度を示す。この場合も上記同様に図9は升目で最外周から5升目のところはアース電位にしており遮蔽されている。
図10は電極部分の電界強度を拡大したものを示す。
上から見た場合、ガード電極はある角度を持って対向する電極の方向に前記パイプ直径の2〜3割程度の長さを有している、いわゆるコの字状の形状をして、この形状により、電極内部の電界強度分布を相当に均一化される事が分かる。図12に電極間の電位分布の数値表示を示す。
【0010】
参考として、ガード電極と遮蔽が無く、周囲を無限空間とした場合の電界強度分布を図13〜図16に示す。
図13は正方形の形状で2枚の電極を対向させた場合の電位分布を示す。図14は電極間の電位を拡大したものである。電界強度の歪の程度が分かる。
図15は、電極間距離は図13と同じだが、電極の長さを3割程度の長さにした形状の場合の電位分布を示す。図16は電極間の電位を拡大したものである。図13に比べて、さらに、電界強度の歪が大きくなる事が分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施例の概略を示す図である。
【図2】図2は図1の電極部分を抜き取り拡大した図である。
【図3】図3は本発明の実施例の概略を示す図である。
【図4】図4は従来の螺旋電極を静電容量センサーを示す図である。
【図5】図5は図1で示した各電極の接続から等価回路を展開する為の図である。
【図6】図6は本発明の等価回路を示す図である。
【図7】図7は静電容量センサーを横方向から見た場合の電界強度を示す図である。
【図8】図8は図7の電極部分の電界強度を拡大したものを示す図である。
【図9】図9は静電容量センサーを縦方向から見た場合の電界強度を示す図である。
【図10】図10は図9の電極部分の電界強度を拡大したものを示す図である。
【図11】図11は図7の静電容量センサー電極部分の電界強度分布の数値表示を示す。
【図12】図12は図8の静電容量センサー電極部分の電界強度分布の数値表示を示す。
【図13】図13は正方形の形状で2枚の電極を対向させた場合の電界強度分布を示す。
【図14】図14は図13の電極部分の電界強度を拡大したものを示す図である。
【図15】図15は図13の電極の長さを3割程度の長さの電極を対向させた場合の電界強度分布を示す。
【図16】図16は図13の電極部分の電界強度を拡大したものを示す図である。
【符号の説明】
1 :第1平面板
2 :第2平面板
3a、3b :静電容量センサー電極
4a、4b :ガード電極
5a、5b :L字状電極
6a、6b :L字状電極
11a、11b :円筒状パイプを通す穴
12 :円筒状パイプ
20 :交流電源
21 :増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定体の粉体を円筒状のパイプを通して対向する電極間に通過させて電極間の静電容量変化により粉体量を計測する粉体計測用静電容量センサーにおいて、
静電容量センサー電極とガード電極を有する第1平面形状板及び静電容量センサー電極とガード電極を有する第2平面形状板からなり、前記第1平面形状板と第2平面形状板とが、各々、前記円筒状パイプの筒方向の中心軸に対称に配置された構成の粉体計測用静電容量センサー。
【請求項2】
請求項1の粉体計測用静電容量センサーにおいて、
前記第1平面形状板と第2平面形状板とが前記円筒状のパイプの軸方向にL字状の形状を有する構成からなる粉体計測用静電容量センサー。
【請求項3】
請求項1ないし請求項2の粉体計測用静電容量センサーにおいて、
対向する一方の電極側はガード電極と静電容量センサー電極と共に交流発振器に接続し、もう一方の電極側の静電容量センサー電極は前記増幅器の入力に接続して、ガード電極は増幅器の出力に接続される構成の粉体計測用静電容量センサー。
【請求項4】
被測定体の粉体を円筒状のパイプを通して対向する電極間に通過させて電極間の静電容量変化により粉体量を計測する粉体計測用静電容量センサーにおいて、
前記第1平面形状板と第2平面形状板間に有する粉体を通過させる前記円筒状のパイプを除き、その全体をシールド電極で覆われて、アース電位に接続される構成の粉体計測用静電容量センサー

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−3333(P2006−3333A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206582(P2004−206582)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(504268881)
【Fターム(参考)】