説明

粉末フィトステロール製剤

本発明は粉末フィトステロール製剤、その製造方法および使用に関する。上記発明の目的は、フィトステロール製剤を水性および油性調製品に配合できるようにすることである。この目的のために、上記の粉末フィトステロール製剤は、平均粒径が0.01〜100μm、好ましくは0.01〜10μm、より良くは0.01〜2μm、および理想的には0.05〜1μmの範囲である、少なくとも1種のタイプのフィトステロールを含む。特に、上記のフィトステロール製剤は、少なくとも1種のタイプのフィトステロールが半アモルファス形で使用されることを特徴とする。好ましい実施形態において、上記のフィトステロール製剤は、上記のフィトステロールが保護コロイドマトリックスに埋め込まれていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末フィトステロール製剤、その製造方法、およびそれらの栄養補助食品への使用、食品および動物飼料への使用ならびに医薬品および化粧品への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フィトステロールは植物および酵母から単離されるステロールである。このクラスの化合物の最も重要なメンバーは、たとえば、スチグマステロール、カンペステロールおよびβ-シトステロール、ならびにカンペスタノールおよびβ-シトスタノールのような水素化誘導体である。フィトステロールはコレステロールに構造的に類似している。たとえば、β-シトステロールはコレステロールの吸収を阻害するので、動脈硬化および高脂血症の予防のための脂肪減少剤として用いられる。
【0003】
コレステロールレベルを下げるために、フィトステロールは食品、たとえばマーガリンの添加物としてしばしば使用されている。
【0004】
フィトステロールは水に不溶性であると同時に、脂肪および油に低い溶解度しか示さない。この限られた溶解度のために、フィトステロールを食品調製品および化粧品の製造に使用することがしばしば困難になる。一方では不十分な活性、および他方では化粧品および食品調製品における低い分散性は、しばしばフィトステロールの溶解度の低さに起因する。
【0005】
フィトステロールを含む製剤を製造するためのさまざまな方法が既に知られている。EP-A-0 289 636には、ポリヒドロキシ化合物または脂肪酸のスクロースエステルの水溶液中に可溶化されたフィトステロールについて記載されている。
【0006】
可溶化剤を用いたフィトステロールの他の液体調製品はUS 3,865,939およびUS 5,244,887に開示されている。
【0007】
EP-A-1 197 153には、非ステロール様乳化剤の存在下でのフィトステロールの水性分散物または懸濁液、およびその食品、たとえばパン用のスプレッドへの使用について記載されている。
【0008】
WO 01/37681は、水溶性タンパク質の存在下、たとえばカゼインの存在下、水中でフィトステロールをホモジナイズすることにより得られるフィトステロールを含む水性組成物、およびそれから製造される水分散性粉末に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、水性の調製品のみならず、油性の調製品にも配合することができるフィトステロールを含む製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
我々は、この目的が、本発明に従って、0.01〜100μmの範囲、好ましくは0.01〜10μmの範囲、特に好ましくは0.01〜2μmの範囲、非常に特に好ましくは0.05〜1μmの範囲の平均粒径を有する少なくとも1種のフィトステロールを含む粉末フィトステロール製剤により達成されることを見出した。
【0011】
本発明の目的のために、フィトステロールは、好ましくはスチグマステロール、カンペステロールおよびβ-シトステロールの3種の化合物、ならびにこれらの水素化誘導体であるスチグマスタノール、カンペスタノールおよびβ-シトスタノールである。特に好ましいのは、ダイズ油から蒸留により製造されるフィトステロール混合物で、主にスチグマステロール、カンペステロールおよびβ-シトステロールからなるものである。
【0012】
植物油から製造されるこれら3種のフィトステロールの典型的な混合物は、約40〜58重量%のβ-シトステロール、20〜30重量%のカンペステロール、および14〜22重量%のスチグマステロールからなる。
【0013】
本発明のフィトステロール製剤は、とりわけ、少なくとも1種のフィトステロールが部分的にアモルファス形として存在することを特徴とする。
【0014】
本発明の製剤中のフィトステロールの結晶化度は、たとえば、X線回折測定により決定することができ、一般的に、80%未満の範囲、好ましくは30〜80%の範囲、特に好ましくは50〜80%の範囲である。
【0015】
さらに好ましいフィトステロール製剤の実施形態において、フィトステロールは保護コロイドマトリックス中に埋め込まれている。
【0016】
適当な保護コロイドは、荷電したポリマー(高分子電解質)および天然高分子の両方である。典型的な例は、とりわけ、ウシ、ブタおよび魚ゼラチンのようなゼラチン、デンプン、オクテニルコハク酸デンプンのような加工デンプン、デキストリン、ダイズタンパク質のような植物タンパク質(加水分解されていてもよい)、ペクチン、グアーガム、キサンタン、アラビアゴム、カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、リグノスルホン酸塩、またはこれらの混合物である。また、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、シートセラック(sheet shellac)およびアルギン酸塩も用いることができる。他の適当な化合物は、天然、カチオンまたはアニオンモノマーをベースとするホモポリマーおよびコポリマーであって、上記モノマーの例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、アクリル酸、無水マレイン酸、乳酸、N-ビニルピロリドン、酢酸ビニル、α-およびβ-アスパラギン酸が挙げられる。さらに詳細には、R.A.Morton, 「脂溶性ビタミン、食物および栄養のIntern.百科事典、第9巻」(Fat Soluble Vitamins, Intern. Encyclopedia of Food and Nutrition, Vol. 9), Pergamon Press 1970, pp.128-131を参照されたい。
【0017】
好ましい保護コロイドは、ウシ、ブタおよび魚ゼラチンのようなゼラチン、植物タンパク質、ペクチン、カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、アラビアゴムおよび加工デンプンからなる群より選択される化合物である。特に好ましい保護コロイドは、ペクチン、カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、アラビアゴム、加工デンプンおよび/または魚ゼラチンである。
【0018】
本発明の製剤中のフィトステロール含有量は、0.1〜80重量%、好ましくは1〜50重量%、特に好ましくは3〜35重量%、非常に好ましくは5〜25重量%の範囲である。重量パーセントは乾燥した粉末に基づく。
【0019】
使用される保護コロイドの量は、0.1〜80重量%、好ましくは5〜70重量%、特に好ましくは10〜60重量%の範囲である。重量パーセントは乾燥したフィトステロール製剤に基づく。
【0020】
これに加えて、フィトステロール製剤はさらに、粉末の機械的安定性を増すための1種またはそれ以上の可塑剤を含んでもよい。適当な可塑剤は、たとえば、スクロース、グルコース、ラクトース、転化糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトールまたはグリセロールのような糖および糖アルコールである。可塑剤は、乾燥したフィトステロール製剤に基づいて、0.1〜70重量%、好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは20〜50重量%の量で存在し得る。
【0021】
これに加えて、製剤は、1種またはそれ以上の低分子量界面活性化合物(乳化剤)を、乾燥したフィトステロール製剤に基づいて0.01〜70重量%、好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%の濃度で含んでもよい。これに適しているのは、第一級両親媒性化合物またはこのような化合物の混合物である。原理上は、使用することができるのは食品または飼料に使用されるすべての界面活性剤で、薬理学的および皮膚科学的に安全で、5〜20のHLB値を有するものである。これに相当する使用することができる界面活性物質は、たとえば、長鎖脂肪酸のアスコルビン酸とのエステル、脂肪酸のモノおよびジグリセリドおよびそのエトキシル化産物、脂肪酸モノグリセリドの酢酸、クエン酸、乳酸またはジアセチル酒石酸とのエステル、脂肪酸のポリグリセロールエステル、たとえばトリグリセロールのモノステアリン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびレシチンである。好ましくはアスコルビルパルミテートを用いる。
【0022】
これに加えて、製剤はさらに、抗酸化剤および/または保存剤のような1種またはそれ以上の低分子量安定化剤を含んでもよい。適当な抗酸化剤または保存剤は、たとえば、α-トコフェロール、アスコルビン酸、tert-ブチルヒドロキシトルエン、tert-ブチルヒドロキシアニソール、レシチン、エトキシキン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸または安息香酸ナトリウムである。抗酸化剤または保存剤は、乾燥したフィトステロール製剤に基づいて、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%、非常に好ましくは1〜10重量%の量で存在し得る。
【0023】
フィトステロールに加えて、本発明の製剤はさらにカロチノイドおよびビタミンを含むことができる。カロチノイドの例は、とりわけ、β-カロテン、ビキシン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、シトラナキサンチン、カンタキサンチン、β-アポ-4-カロテナール、β-アポ-8-カロテナール、β-アポ-8-カロテン酸エステル、アスタキサンチン、リコペンまたはルテインであって、個々に、または混合物として用いられる。
【0024】
ビタミンの中では、ビタミンE、ビタミンE誘導体、たとえばトコフェリルアセテートまたはトコフェリルパルミテート、およびKビタミン類、ビタミンAおよび誘導体、たとえば、ビタミンAアセテート、ビタミンAプロピオネートまたはビタミンAパルミテート、ビタミンD2およびビタミンD3および混合物のような脂溶性ビタミンが好ましい。本発明の目的のために、ビタミンEという用語は、天然または合成のα-、β-、γ-またはδ-トコフェロール、好ましくは天然または合成のα-トコフェロール、およびトコトリエノールを意味する。
【0025】
本発明のフィトステロール製剤は、とりわけ、これらが油系のみならず水系、たとえば、飲料にも容易に分散可能な点を特徴とする。
【0026】
本発明はまた、下記のa1)からc)のステップを含む、上記の粉末フィトステロール製剤の製造方法に関する。
【0027】
a1) 1種またはそれ以上のフィトステロールを水混和性有機溶媒、または水および水混和性有機溶媒の混合物に溶解する、または
a2) 1種またはそれ以上のフィトステロールを水非混和性有機溶媒に溶解する、および、
b) a1)またはa2)により得られた溶液を、保護コロイドの水性分子分散物またはコロイド分散物と、フィトステロールの疎水相が分散相を形成するように混合する、および、
c) 得られた分散物から溶媒および水を除去し、コーティング物質を存在させて、または存在させずにこれを乾燥して、乾燥粉末を製造する。
【0028】
使用する溶媒のタイプに応じて、ステップb)の分散相は固体のナノパーティクル(懸濁液)またはナノドロップレット(乳液)であってよい。
【0029】
ステップa1)において用いられる水混和性溶媒は、アルコール、エーテル、エステル、ケトンおよびアセタールのような本質的に水混和性で、熱に安定な、炭素、水素および酸素のみを含む揮発性の溶媒である。10%までの水混和性であり、200度より低い沸点を有し、および/または10個未満の炭素を有する溶媒を用いるのが適切である。特に、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1,2-ブタンジオール1-メチルエーテル、1,2-プロパンジオール1-n-プロピルエーテル、テトラヒドロフランおよび/またはアセトンが好ましく、n-プロパノール、イソプロパノールおよび/またはアセトンが非常に好ましい。
【0030】
本発明の目的のために、「水非混和性有機溶媒」は、大気圧において10%未満の水溶解度を有する有機溶媒である。ここで用いることができる溶媒は、とりわけ、ハロゲン化脂肪族炭化水素、たとえば、塩化メチレン、クロロホルムおよび四塩化炭素、カルボン酸エステル、たとえば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチルまたは酢酸イソプロピル、およびエーテル、たとえばメチルtert-ブチルエーテルである。好ましい水非混和性有機溶媒は、炭酸ジメチル、炭酸プロピレン、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよびメチルtert-ブチルエーテルからなる群より選択される化合物である。
【0031】
ステップb)において使用される保護コロイドは上で既に述べた化合物である。
【0032】
ある状況においては、溶媒相にさらに生理学的に許容される油、たとえばゴマ油、トウモロコシ胚芽油、綿実油、ダイズ油またはピーナッツ油、および中鎖植物脂肪酸のエステルを、フィトステロールに基づいて0〜500重量%、好ましくは10〜300重量%、特に好ましくは20〜100重量%の濃度で加えると有利である。次いでこれを水層と混合する際に、活性化合物および上記の添加物と共に非常に微細に分割された形で沈殿させる。
【0033】
本発明の方法の好ましい実施形態は以下の通りである。
【0034】
a) 1種またはそれ以上のフィトステロールを水混和性有機溶媒、または水および水混和性有機溶媒の混合物に50℃〜240℃の範囲、好ましくは100℃〜200℃の範囲、特に好ましくは140℃〜180℃の範囲の温度で溶解する、
b) 得られた溶液を、ペクチン、カゼイン、カゼイン塩、アラビアゴム、加工デンプンおよび魚ゼラチンからなる群より選択される保護コロイドの水性分子分散物またはコロイド分散物と、混合物の温度が約35℃〜80℃になるようにして混合する、および
c) 得られた分散物から乾燥粉末を製造する。
【0035】
特に好ましくは、この方法を、スチグマステロール、カンペステロールおよびβ-シトステロールの混合物の乾燥粉末を調製するために用いる。
【0036】
高温の効果により、ある状況において、望まれるフィトステロールの含有量が減少する。フィトステロールはできる限り迅速に、たとえば、秒の範囲で、たとえば0.1〜10秒以内に、特に好ましくは1秒未満以内に溶解される。分子分散物を迅速に製造するために、決められた圧力、たとえば20バール〜80バール、好ましくは30〜60バールの範囲の圧力を使用すると有利である。
【0037】
次に、得られた分子分散物を、場合によっては冷却している保護コロイドの水性分子分散物またはコロイド分散物と、混合物の温度が約35℃〜80℃になるようにして直接混合する。
【0038】
溶媒成分が水相に移り、その結果、フィトステロール(1種または複数)の疎水性の相が分散相となる。
【0039】
水性分散物中のナノパーティクル粒子の平均粒径は、製剤方法のタイプに依存して、0.01〜100μmの範囲、好ましくは0.01〜10μmの範囲、特に好ましくは0.01〜2μmの範囲、非常に好ましくは0.05〜1μmの範囲である。
【0040】
この点で、上記の分散物の製造方法および装置に関するより詳細な説明に関しては、EP-B-0 065 193を参照されたい。
【0041】
本発明において、乾燥粉末の製造は、とりわけ、噴霧乾燥、噴霧冷却、凍結乾燥または流動床における乾燥により、コーティング物質を存在させて、または存在させずに実施する。適当なコーティング物質は、とりわけ、コーンスターチ、シリカあるいはリン酸トリカルシウムである。
本発明はまた、少なくとも1種のフィトステロールを保護コロイドの存在下、水性媒体中で粉砕し、得られたフィトステロール懸濁液を乾燥して乾燥粉末を製造することを含む、上記の粉末フィトステロール製剤を製造する方法に関する。
【0042】
粉砕はそれ自体は公知の方法、たとえば、ボールミルを用いて実施することができる。使用される粉砕器のタイプに応じて、粉砕は粒子が0.01〜100μm、好ましくは0.2〜50μm、特に好ましくは0.2〜20μm、非常に好ましくは0.2〜5μm、特に0.2〜0.8μmの平均粒径を有するようになるまで実施する。
【0043】
粉砕およびそれに使用される装置に関してより詳細には、とりわけ「Ullmannの工業化学百科事典」、第6版、1999、電子放出、粒径の減少、3.6.章:湿式粉砕(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Edition, 1999, Electronic Release, Size Reduction, Chapter 3.6. : Wet Grinding )、およびEP-A-0 498 824に記載されている。
【0044】
上記の粉砕方法の別の変形において、フィトステロール懸濁液を粉砕の後に、フィトステロールの完全な、または部分的な融解を起こすのに十分な高温に加熱し、この融解物を再度冷却した後に乾燥粉末を製造する。好ましくは、ここでフィトステロール懸濁液を粉砕した後、0.05〜200秒、好ましくは0.2〜100秒の間、150〜200℃の温度に維持し、20〜80℃の温度に冷却した後、乾燥粉末を製造する。
【0045】
乾燥方法に応じて、フィトステロール含有乾燥粉末は、100〜1000μm、好ましくは約200〜800μm、特に好ましくは250〜600μmの平均粒径を有する。これらの粉末は、既に上で記載した0.01〜100μmの平均粒径を有する一次粒子の凝集物(二次粒子)である。
【0046】
一次粒子および二次粒子の両方の粒径は、ここでは、公知の測定方法を用いて、たとえば、フラウンホーファー回折により、および5μmよりも小さい粒子の場合には動的光散乱を用いて決定される。
【0047】
本発明の乾燥粉末は、水系において問題なく再分散され、0.01〜1μmの粒径範囲の活性化合物の均一で微細な分布を達成する。
【0048】
本発明のフィトステロール製剤は、とりわけ食品調製品および動物用飼料の添加物として、医薬品および化粧品を製造するための組成物として、ならびにヒトおよび動物の分野における栄養補助食品を製造するための組成物として適している。
【0049】
食品の分野における典型的な適用の範囲は、たとえば、飲料、チーズ、ヨーグルト、風味乳飲料または乳を原料とするアイスクリームのような乳製品、およびサラダドレッシング、ソースおよびマヨネーズ、ならびにソーセージ製品および菓子への使用である。
【0050】
好ましくは、上記懸濁液は、飼料添加物として、特に粒状の飼料の上に適用または噴霧して、動物の栄養補給に用いられる。
【0051】
飼料添加物としての使用は、特に、本発明の粉末フィトステロール製剤が油中に分散している液体の調製品の形でおこなわれる。
【0052】
使用することができる油は、一般的に、植物性および動物性の両方の、すべての生理的に許容される油、特に、20℃で液体であるか、20℃で単独で、または他の油と共に懸濁液中に液体相を形成する油である。ここで好ましいものとしては、ヒマワリ油、ヤシ油、ゴマ油、トウモロコシ胚芽油、綿実油、ダイズ油またはピーナッツ油、中鎖トリグリセリドのエステル、および魚油、たとえばサバ油、スプラットイワシ油またはサケ油が挙げられる。動物の栄養補給に特に好ましいものは、魚油、トウモロコシ胚芽油、ヒマワリ油およびピーナッツ油である。
【0053】
これらの液体の調製品は、たとえば、粒状化後(post-pelleting)適用と呼ばれる、粒状の動物飼料上への直接のスプレーにより適用される。
【0054】
スプレー方法の好ましい実施形態は、たとえば、粒状の飼料に減圧下で油性懸濁液をかけるものである。
【0055】
この方法の例は、とりわけ、GB-A-2 232 573およびEP-A-0 556 883に記載されている。
【0056】
食品の分野における典型的な使用の範囲は、たとえば、飲料、ヨーグルト、風味乳飲料または乳を原料とするアイスクリームのような乳製品、およびプリン粉末、卵製品、ベーキングミックスおよび菓子へのビタミン添加である。
【0057】
化粧品の分野において、油性懸濁液は、例として、たとえばクリーム、ローションの形で、または口紅もしくはメークアップとして、ビタミンを含むボディーケア製品に使用することができる。
【0058】
化粧品の分野において、本発明のフィトステロール製剤は、たとえば、皮膚軟化剤として、または他のスキンケア製品の活性化合物として使用することができる。
【0059】
本発明はまた、上記のフィトステロール製剤を含む栄養補助食品、動物飼料、食品ならびに医薬品および化粧品に関する。
【0060】
本発明の目的のために、栄養補助食品調製品は、本発明のフィトステロール製剤を含む医薬品、とりわけ、錠剤、ドラジェならびに硬および軟ゼラチンカプセルである。
【0061】
本発明の目的のために、食品は、たとえば、上記のフィトステロール製剤を含む飲料、チーズ、ヨーグルト、風味乳飲料または乳を原料とするアイスクリームのような乳製品、ならびにサラダドレッシング、ソースまたはマヨネーズ、菓子およびソーセージ製品である。
【0062】
本発明のフィトステロール製剤を含むことができる化粧品は、たとえば、局所適用される製品、特に、スキンケア製品および装飾用ボディーケア製品、たとえば口紅、顔用メークアップであって、クリーム、ローション、粉末の形で、または口紅として提供される。
【0063】
医薬品は、過剰なコレステロールレベルの予防または治療に適している。
【0064】
下記の実施例において、本発明のフィトステロール製剤の製造についてより詳細に説明する。実施例に使用された装置についての詳細は、EP-B-0 065 193に記載されている。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
カゼイン酸ナトリウムを含む乾燥フィトステロール粉末
21gのフィトステロール(ADM製、USA)および2.1gのアスコルビルパルミテートを、室温で、容器中で360gのアセトンに溶解した。第2の容器に、35gのカゼイン酸ナトリウムおよび35gのスクロースを70℃で4000gの脱塩水に溶解した。次に、86.8℃の温度で0.92kg/時間のポンプ流量の溶媒相を、室温で30.3kg/時間のポンプ流量の水相と連続的に混合した。得られた活性化合物分散物から、ロータリーエバポレーターを用いて、65℃および200mbarの圧力でアセトンを除去し、固体の含有量が11.5重量%になるまで濃縮した。得られた活性化合物粒子は203nmの粒径を有していた。
【0066】
次いで、この分散物を実験室のスプレー塔で噴霧乾燥した。得られた乾燥粉末のフィトステロール含有量は26重量%であった。上記乾燥粉末は水に分散性であり、再分散後は1.08μmの粒径を与えた。
【0067】
(実施例2)
加工デンプンを含む乾燥フィトステロール粉末
21gのフィトステロール(ADM製、USA)および2.1gのアスコルビルパルミテートを、室温で、容器中で360gのアセトンに溶解した。第2の容器に、35gの加工デンプン(Emcap 12633, Cerestar製, Krefeld)および35gのスクロースを70℃で4000gの脱塩水に溶解した。次に、94.9℃の温度で2.61kg/時間のポンプ流量の溶媒相を、室温で30.0kg/時間のポンプ流量の水相と連続的に混合した。得られた活性化合物分散物から、ロータリーエバポレーターを用いて、65℃および200mbarの圧力でアセトンを除去し、固体の含有量が9.1重量%になるまで濃縮した。得られた活性化合物粒子は264nmの粒径を有していた。
【0068】
次いで、この分散物を実験室のスプレー塔で噴霧乾燥した。得られた乾燥粉末のフィトステロール含有量は20.7重量%であった。上記乾燥粉末は水に分散性であり、再分散後は2.3μmの粒径を与えた。
【0069】
(実施例3)
加工デンプンを含む乾燥フィトステロール粉末
40gのフィトステロール(ADM製、USA)、6gのアスコルビルパルミテートおよび40gの加工デンプン(Capsul MKH, National Starch製、Hamburg)を、室温で400gの脱塩水に懸濁した。次に、1M NaOHを用いてpHを7.1に調節した。この懸濁液を、2000gの直径1mmのセラミックボール(酸化ジルコニウム、Toray)と共に、1000mlのガラスのフラスコに入れた。次に、上記懸濁液を、分散ユニット(Red Devil)により、このガラスのフラスコ中で8時間分散した。得られた活性化合物粒子は585nmの粒径を有していた。
【0070】
粉砕媒体を分離した後、344gの分散物が得られた。これに28.3gのスクロースを溶かした。次に、この分散物を実験室のスプレー塔で噴霧乾燥した。得られた乾燥粉末のフィトステロール含有量は19.2重量%であった。乾燥粉末は水に分散性であり、再分散後は1.2μmの粒径を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の0.01〜100μmの平均粒径を有するフィトステロールを含む粉末フィトステロール製剤。
【請求項2】
少なくとも1種のフィトステロールが部分的にアモルファス形で存在する、請求項1記載のフィトステロール製剤。
【請求項3】
フィトステロールが保護コロイドマトリックスに埋め込まれている、請求項1または2記載のフィトステロール製剤。
【請求項4】
乾燥した粉末に基づく重量パーセンテージで、0.1〜80重量%の1種またはそれ以上のフィトステロールを含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のフィトステロール製剤。
【請求項5】
5〜70重量%の1種またはそれ以上の保護コロイドを含む、請求項4記載のフィトステロール製剤。
【請求項6】
さらに0.1〜70重量%の1種またはそれ以上の可塑剤を含む、請求項4または5記載のフィトステロール製剤。
【請求項7】
さらに0.01〜70重量%の1種またはそれ以上の乳化剤を含む、請求項4〜6のいずれか1項記載のフィトステロール製剤。
【請求項8】
さらに0.01〜50重量%の1種またはそれ以上の抗酸化剤および/または保存剤を含む、請求項4〜7のいずれか1項記載のフィトステロール製剤。
【請求項9】
水分散性である、請求項1〜8のいずれか1項記載のフィトステロール製剤。
【請求項10】
請求項1に定義された粉末フィトステロール製剤を製造する方法であって、
a1) 1種またはそれ以上のフィトステロールを、水混和性有機溶媒、または水および水混和性有機溶媒の混合物に溶解する、または
a2) 1種またはそれ以上のフィトステロールを水非混和性有機溶媒に溶解する、および
b) a1)またはa2)により得られた溶液を、保護コロイドの水性分子分散物またはコロイド分散物と、フィトステロールの疎水相が分散相を形成するように混合する、および
c) 得られた分散物から溶媒および水を除去し、これをコーティング物質を存在させて、または存在させずに乾燥することにより、乾燥粉末を製造する
ことを含む前記方法。
【請求項11】
a) 1種またはそれ以上のフィトステロールを水混和性有機溶媒、または水および水混和性有機溶媒の混合物に、50℃〜240℃の範囲の温度で溶解する、
b) 得られた溶液を、ペクチン、カゼイン、カゼイン塩、アラビアゴム、加工デンプンおよび魚ゼラチンからなる群より選択される保護コロイドの水性分子分散物またはコロイド分散物と、混合物の温度が約35℃〜80℃となるように混合する、および
c) 得られた分散物から乾燥粉末を製造する、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1種のフィトステロールを保護コロイドの存在下、水性媒体中で粉砕し、得られたフィトステロール懸濁液を乾燥して乾燥粉末を製造することを含む、請求項1に定義された粉末フィトステロール製剤を製造する方法。
【請求項13】
フィトステロール懸濁液を粉砕後に、フィトステロールの完全な、または部分的な融解を起こすのに十分な高温に加熱し、この融解物を再度冷却した後、乾燥粉末を製造する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
フィトステロール懸濁液を粉砕後に、0.05〜200秒の間、150〜200℃の温度に維持し、20〜80℃の温度に冷却した後、乾燥粉末を製造する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
栄養補助食品を製造するための、ならびに食品、動物飼料、医薬品および化粧品の添加物としての、請求項1に定義されたフィトステロール製剤の使用。
【請求項16】
請求項1に定義されたフィトステロール製剤を含む、栄養補助食品、動物飼料、食品、または医薬品もしくは化粧品。

【公表番号】特表2006−514829(P2006−514829A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504531(P2005−504531)
【出願日】平成15年11月11日(2003.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2003/012557
【国際公開番号】WO2005/009144
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】