説明

粉末固形化粧料の製造方法及び当該方法により得られた粉末固形化粧料

【課題】 表面外観と化粧時の色が異なるという問題、製造工程においてプレス表面の粉がはがれるという問題および粉末固形化粧料自体が必ずしも強度が高くない等の問題を解消し得る粉末固形化粧料の製造方法を提供すること。
【解決手段】 粉体化粧料を、押型を用いて圧縮成型する粉末固形化粧料の製造方法であって、圧縮成型にあたり、該粉体化粧料と該押型との間に、水との接触角が25℃で70°以上であり、表面に500μm以下の細孔を有する多孔性樹脂フィルムを介在させることを特徴とする粉末固形化粧料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末固形化粧料の製造方法及び該製造方法により得られる粉末固形化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末固形化粧料においては、仕上がりのみならず、それ自体も魅力的な表面外観であることを強調したものが求められている。特にアイシャドウやアイカラー等、目元に使用する粉末固形化粧料においては、その表面外観においてもより高い光輝性を求められ、ファンデーション、チーク、白粉等においては、化粧の仕上がり色と、表面外観との見た目の色の合致が求められる傾向がある。
【0003】
しかし、容器に充填した後の、粉末固形化粧料の表面の粉の並び方が平滑で、しかも均一でないと、それらの表面外観の光沢が低下し、外観色調がつけた色より濃く暗くなる現象が見られることがあった。この現象は、板状粉体を使用するとより顕著であった。
【0004】
一方、従来の粉末固形化粧料の成型においては、原料である粉体化粧料と押型との間に織布や紙を配置する方法をとることが一般的である。これは、圧縮充填後の充填物の離型性向上と、充填機押型の表面の洗浄を不要とすることによる効率化を図るために必要とされる技術である。
【0005】
例えば、粉体化粧料と押型との間に布、紙、ポリエチレンシート、ポリ塩化ビニリデンやポリエチレンテレフタレート等を配置することで、上面の仕上げを向上させる技術が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、この方法は、シートと粉体との付着性が強い場合には、成型後プレスを開放する際にシートが粉末固形化粧料の表面を持ち上げてしまい、プレス表面がはがれる結果となって、連続製造が困難となることがあった。また、特にポリ塩化ビニリデンやポリエチレンテレフタレートのシートは多孔性でないため、充填時に化粧料中に空気を含む部分を残したまま充填されやすく、この場合、使用中に固形化粧料が突然空気の層に沿って割れたり、落とした際に粉々になるなどの問題を生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−112778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の課題は、前述した従来技術が有する各種の欠点、すなわち、表面外観と化粧時の色が異なるという問題、製造工程においてプレス表面の粉がはがれるという問題および粉末固形化粧料自体が必ずしも強度が高くない等の問題を解消し得る粉末固形化粧料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、粉体化粧料を押型により圧縮成型して粉末固形化粧料を製造する際に、粉体化粧料と押型との間に、特定の樹脂フィルムを介在させることにより、表面平滑性に優れ、付け色と外観の色が近く、強度に優れた粉末固形化粧料を安定的に製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、粉体化粧料を、押型を用いて圧縮成型する粉末固形化粧料の製造方法であって、圧縮成型にあたり、該粉体化粧料と該押型との間に、水との接触角が25℃で70°以上であり、表面に500μm以下の細孔を有する多孔性樹脂フィルムを介在させることを特徴とする粉末固形化粧料の製造方法を提供するものである。
【0010】
また本発明は、前記の製造方法によって製造された粉末固形化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、表面平滑性に優れ、付け色と外観の色が近く、光輝感に優れた外観を有し、強度に優れた粉末固形化粧料を安定的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法を実施するための圧縮成型装置を模式的に示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の粉末固形化粧料の製造方法は、粉末固形化粧料を製造する際に、圧縮成型される粉体化粧料と、押型との間に、水との接触角が25℃で70°以上であり、表面に500μm以下の細孔を有する多孔性樹脂フィルムを介在させる点に特徴を有するものである。
【0014】
本発明において使用される多孔性樹脂フィルムの第一の条件は、25℃の水との間の接触角が70°以上となるような高い疎水性を有することである。また本発明で使用される多孔性樹脂フィルムの第二の条件は、500μm以下の穴が多数開けられていることである。
【0015】
上記多孔性樹脂フィルムの第一の条件を満たすことのできる高い疎水性を有する樹脂フィルムとしては、ポリプロピレン系やポリエステル系フィルムを挙げることができる。これらの樹脂フィルムは、可塑剤を利用して形成されたものであってもかまわない。また、上記多孔性樹脂フィルムとしては、結晶性の熱可塑性ポリマーとブレンド用配合剤からなる混合物をフィルム化したものでもよい。このような結晶性の熱可塑性ポリマーの例としてはポリプロピレンが挙げられ、具体的には、特許第2757918号記載のフィルムが例示される。
【0016】
また、この樹脂フィルムは、押型により、その表面が粉末固形化粧料の表面に極めて高い圧力で押し付けられ、樹脂フィルムが押型と中皿の隙間で切断されるおそれもあるので、高い柔軟性と強さが要求される。このため、樹脂フィルムは、その引張強さが、7N/cm以上であることがより好ましい(JIS P8113測定法による)。
【0017】
一方、多孔性樹脂フィルムの第二の条件である、多数開けられている500μm以下の穴は、粉末固形化粧料内部に含まれる空気を外に排除する通気穴の役割を果たすものである。この程度の穴であれば、これが粉末固形化粧料の表面に転写されてしまうことなく、きれいな表面を維持することができる。この穴の数は、穴の大きさとも関係するが、ガーレー(Gurley)通気度(JIS L1096B法)で、0.1〜500秒/100cc程度となる数であることが好ましい。
【0018】
更に、上記多孔性樹脂フィルムの厚みは、20〜70μm、特に20〜40μmであることが好ましい。フィルムの厚みがこの範囲であると、粉体化粧料とフィルムとの離型性が更に良好となり、押型(凸型)に模様がある場合、細部の表現が可能になるからである。
【0019】
更にまた、多孔性樹脂フィルムは、その表面粗さRa(JIS B 0601−1994)が、1.0μm以下であることが、良好な離型性を維持し、表面平滑性に優れた粉末固形化粧料を得る点から好ましい。しかし本発明においては、フィルムの水との接触角が先に述べた数値を満たせば、フィルムの表面粗さRaの大小にかかわらず、離型性が良好となり、また粉末固形化粧料の外観が向上する。
【0020】
以下、本発明の製造方法の一態様を示す図面と共に更に発明を詳しく説明する。
【0021】
図1は、粉体化粧料を押型を用いて圧縮成型する際に使用する圧縮成型装置の断面を模式的に示した図面である。図中、1は圧縮成型装置、3は粉体化粧料、2は中皿、4は多孔性樹脂フィルム、5はフィルム繰出装置、6はフィルム巻取装置、7は押型(凸型)、8は受型(凹型)、9は受け部、10は加圧装置を示す。
【0022】
この圧縮成型装置1では、受型8内の受け部9によって支持された中皿2に、原料である粉体化粧料3が、予め計量され、充填されている。受け部9の上部に空間を空けて設けられた押型(凸型)7は、加圧装置10によって所定の速度で下方向に駆動される。押型7の下面は多孔性樹脂フィルム(以下、単に「フィルム」ともいう)4を介して中皿2内の粉体化粧料3を圧縮し、所定の形状に成型する。
【0023】
必要に応じて加圧状態を一定時間保持後、押型7は加圧装置10によって上方向に所定の速度で駆動され、その下面はフィルム4から離れる。フィルム4は、フィルム繰出装置5から繰り出され、フィルム巻取装置6によって巻き取られるようになっている。押型7が上昇すると、フィルム4は、フィルム巻取装置6により中皿2の幅でピッチ送りされ、粉体化粧料3と接する面が更新される。プレス開放後の中皿2は受け部9の上昇により、受型8から取り出される。なお、押型7のプレス面形状は平面であっても良いし、模様や文字等の凹凸があっても良い。
【0024】
本発明により、粉末固形化粧料とされる粉体化粧料は、特に制限されるものでなく、一般に化粧品分野で通常用いられる各種の顔料等の各種化粧料用粉体と、油性成分を含有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0025】
しかしながら、板状粉体を配合した粉末固形化粧料は、粉末固形化粧料の表面の平滑性が外観の色に特に大きく影響するため、本発明の製造方法を利用することにより、表面平滑性に優れ、付け色と外観の色が近く、光輝感に優れた外観を有し、強度に優れた粉末固形化粧料を安定的に製造できる。すなわち、粉末固形化粧料の表面に板状粉末が並んで平滑であればあるほど、外観色の明度L値が上昇し、使用後の色と未使用品の外観色の差が小さくなり、板状粉末が光輝性粉体の場合は、特に光輝性のある外観となる傾向がある。板状粉体は特に限定しないが、アスペクト比を持つものである。これらの粉末の並び方は、充填時のフィルムに左右される。
【0026】
このような板状粉体には、鱗片状、偏平状等の形態のものを包含し、その具体例としては、セリサイト、雲母、雲母チタン、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、合成金雲母、酸化鉄被覆雲母、金箔、窒化ホウ素、板状アルミナなどが上げられる。また、雲母チタン、金雲母、ガラス粉末、シリカ粉末、等の母体粉体に顔料を被覆した表面被覆光輝性顔料を用いることで、光輝色のバリエーションを広げることもできる。これらの粉体は、1種のみを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
また、本発明で使用される粉体化粧料に含まれる粉体として板状粉体を用いる場合、その粒径は、5μm以上であることが好ましい。例えば、雲母、合成金雲母、セリサイト、板状硫酸バリウム、板状アルミナ、窒化ホウ素、板状シリカ、などの無機粉末、板状PMMAなどの有機粉末、そしてそれらを母体とした複合粉末が挙げられる。なお、板状粉体が光輝性顔料である場合、その平均粒子径は光輝感の点から15μm以上であることが好ましく、更に光輝感を高くできる点から18μm以上であることが好ましい。一方、化粧膜の均一性及び滑らかさの点から、平均粒子径は150μm以下であることが好ましく、90μm以下であることが更に好ましい。平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布計(堀場製作所製、LA−920)を用いたレーザー回折/散乱法で測定することができる。
【0028】
なお、粉体化粧料に含まれる板状粉体は、疎水化処理剤を用いて表面処理されていてもよい。これによって化粧の持続性が向上する。疎水化処理剤としては例えば、シリコーン油、エステル油、脂肪酸金属塩、パーフルオロアルキル基を有するフッ素化合物等が挙げられる。
【0029】
本発明で使用する粉体化粧料には、前述した板状粉体以外の化粧用粉体を配合してもよい。例えば、無機顔料、有機顔料、色素粉体、複合粉体等を配合してもよい。具体的には、コンジョウ、群青、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラック等の無機顔料;酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化セリウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、水酸化クロム、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、炭化珪素、硫酸バリウム等の無機粉体;ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体パウダー、塩化ビニリデン−メタクリル酸共重合体パウダー、ウレタンパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、N−アシルリジン等の有機粉体;有機タール系顔料、有機色素のレーキ顔料等の色素粉体;酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体等が挙げられる。これらの粉体はその1種又は2種以上を複合化したものを用いても良い。また、これら化粧用粉体を、疎水化処理剤を用いて表面処理してもよい。疎水化処理剤としては、先に述べた光輝性顔料に施し得る疎水化処理剤と同様のものを用いることができる。これらの化粧用粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、原料粉体中に好ましくは0.01〜30質量%(以下、「%」で示す)含まれる。
【0030】
また、本発明で使用する粉体化粧料には、油性成分が配合される。この油性成分は、粉のバインダーとしての役割を持ち、化粧料を塗布した際の化粧膜の肌への付着性の面で重要である。油相の主な機能としては、製品形態での成形性、化粧膜の肌への付着、粉体粒子同士の結合等による仕上がりや使用感等が挙げられる。更に、着色剤の発色、紫外線吸収等の他の機能を発揮する場合もある。
【0031】
本発明の粉体化粧料で使用可能な油性成分としては、通常化粧料に使用するものを挙げることができる。例えば、動物油、植物油、合成油等の起源や、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等を用いることができる。
【0032】
この油性成分の含有量は、粉体化粧料中に好ましくは3〜20%、より好ましくは5〜15%とする。この範囲内とすることで、成型性、塗布時の肌への付着性等が良好になる。また、過剰ではない適度な崩壊性を確保しつつ、色つきのよさを向上させることができ、また粉ちり等を回避することもできる。更にはむら付き、化粧料のケーキング、化粧膜のよれ等が防止される。また油性成分の含有量は、光輝性顔料の配合量との兼ね合いからも、前記範囲内であることが好ましい。
【0033】
更に粉体化粧料には、上記成分以外に、圧縮充填後、蒸発する溶剤や水を予め配合してもよい。これは、充填成型性と乾燥後の強度を向上させる働きがある。
【0034】
また更に、粉体化粧料には、前記の化粧用粉体以外にも、通常の化粧料に使用される成分、例えば、水性成分、界面活性剤、紫外線吸収剤、保湿剤、冷感剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0035】
以上の本発明方法により製造される粉末固形化粧料の用途は、特に制約されるものではないが、アイシャドウ、アイカラー、アイライナー等の目元に使用するアイメイクアップ化粧料や、ファンデーション、チークなどの外観の色を重要とする製品として、極めて好適なものである。
【0036】
以上説明した、本発明の多孔性樹脂フィルムを用いて圧縮、充填することにより製造された粉末固形化粧料は、優れた表面平滑性を有し、付け色と外観の色が近く、光輝感に優れた外観を有するものである。更に、粉末固形化粧料の充填表面(使用前)の色と、小道具等で擦った表面(使用後)の色差がΔEで0以上0.3未満であると好ましい。これは、充填表面が毛羽立つことなくきれいに離型され、充填直後に板状粉体が平滑に並ぶことにより、使用後の表面を擦ったときに板状粉体が並んだ色とのギャップが生じにくいことによるものと考えられる。これは、特にファンデーションなどの色の微妙な差が重要な商品において消費者が見た目で色を判断し、使用した際のギャップを感じさせない効果がある。
【実施例】
【0037】
次に実施例および比較例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。
【0038】
実 施 例 1
粉末固形ファンデーション:
下に示すファンデーション組成のうち、まず、1〜12を混合し、次いで13〜15を添加混合した。これを均一に粉砕して粉体化粧料を得た。
【0039】
次に、これを中皿(50mm×43mm×8mm)に充填し、前記図1に示すような装置を用い、表1に示す各フィルムを粉体化粧料と平面形状である押型との間に介在させてプレス充填(プレス圧3.0×107Pa)し、発明品1〜3および比較品1〜7の粉末固形化粧料(ファンデーション)を得た。
【0040】
得られたファンデーションについて、使用前のファンデーション表面の外観色と使用後の表面外観色の差(ΔE)を測定した。この外観色評価は、成型品の未使用表面外観と、マットで2回擦った後、その表面からブラシで粉末を除去したものの外観色を比較し、ΔEで表現した。各フィルムの特性と、ΔEを表1に示す。
【0041】
〔 ファンデーション組成 〕
配合量(wt%)
1.水添リン脂質処理酸化チタン *1 10
2.水添リン脂質処理黄酸化鉄 *2
3.水添リン脂質処理ベンガラ *3 0.5
4.水添リン脂質処理黒酸化鉄 *4 0.8
5.水添リン脂質処理微粒子酸化チタン *5
6.シリコーン処理タルク *6 30
7.シリコーン処理セリサイト *7 残 量
8.シリコーン処理合成金雲母 *8 10
9.板状硫酸バリウム *9
10.シリコーンパウダー *10
11.ナイロンパウダー 5
12.防腐剤 適 宜
13.シリコーン油 *11
14.トリ2エチルヘキサン酸グリセリル 5
15.パラメトキシケイ皮酸2エチルヘキシル 3
*1 水添大豆リン脂質1%処理品
*2 同上
*3 同上
*4 同上
*5 同上
*6 メチルハイドロジェンポリシロキサン1%処理品
*7 同上
*8 同上
*9 板状硫酸バリウムHM(堺化学工業社製)
*10 KSP101(信越化学工業社製)
*11 シリコンKF96(100CS)(信越化学工業社製)
【0042】
〔 結 果 〕
【表1】

【0043】
表1に示す結果から明らかなように、本発明品は比較品に比べて使用前後での外観色差が小さくないものであった。
【0044】
実 施 例 2
粉末固形アイカラー:
下に示すアイカラー組成のうち、成分1〜7を混合し、次いで、8〜10を添加後粉砕する。更に、11を添加混合し、粗粉砕して粉体化粧料を調製する。これを中皿(15mm×20mm×3mm)に充填し、前記図1に示すような装置を用い、表2に示す各フィルム(但し、表1で使用したものと各々同じ素材である)を粉体化粧料と平面形状である押型との間に介在させてプレス充填(プレス圧1.5×10Pa)した後、乾燥させて発明品4および比較品8〜13の粉末固形化粧料(アイカラー)を得た。
【0045】
得られたアイカラーについて、その離型性、光輝性、落下強度を下記方法で評価した。この結果を表2に示す。
【0046】
〔 アイカラー組成 〕
配合量(wt%)
1.雲母チタン *12 20
2.合成金雲母チタン *13 20
3.ガラスパール *14
4.合成金雲母 *15 残 量
5.酸化チタン 2
6.タルク 15
7.ナイロンパウダー 3
8.防腐剤 適 宜
9.2エチルヘキサン酸セチル 5
10.フェニルトリメチコン 5
11.精製水 8
*12 チミロンスーパーレッド(メルク社製)
*13 HELIOS R100(トピー工業社製)
*14 メタシャイン1120RC−Y(日本板硝子社製)
*15 PDM−10L(トピー工業社製)
【0047】
〔 評価方法 〕
(1)離型性
粉末固形化粧料を100個作製し、粉末固形化粧料の表面を肉眼観察のうえ表面の剥離状態を評価し、表面積の5%以上欠けていないものを合格とした。全粉末固形化粧料に対する合格した粉末固形化粧料の割合を計算し、収率に応じて離型性を以下の基準で評価した。
【0048】
評 価 評 価 内 容
◎ : 合格品の割合が99%以上
○ : 合格品の割合が90%以上
△ : 合格品の割合が70%以上
× : 合格品の割合が70%未満
【0049】
(2)光輝性
粉末固形化粧料の外観の光輝性を、10名の専門パネラーを対象にアンケート調査した。アンケートでは、各粉末固形化粧料の外観を各パネラーに観察させて「輝きが良い」、「輝きがやや良い」、「どちらとも言えない」、「輝きがあまり良くない」、「輝きが良くない」の5段階で評価させた。その結果、「輝きが良い」および「輝きがやや良い」と評価したパネラーの数により、以下のように評価した。
【0050】
評 価
◎ : 「輝きが良い」、「輝きがやや良い」と評価したパネラーが8〜10人
○ : 「輝きが良い」、「輝きがやや良い」と評価したパネラーが6〜7人
△ : 「輝きが良い」、「輝きがやや良い」と評価したパネラーが4〜5人
× : 「輝きが良い」、「輝きがやや良い」と評価したパネラーが0〜3人
【0051】
(3)落下強度
粉末固形化粧料を5個作製し、容器に入れた状態で50cmの高さから3回落下させ、落下前および落下後の粉末固形化粧料外観の変化を肉眼観察により評価した。その結果、状態の最も悪いものを以下のように評価した。
【0052】
評 価
○ : 外観上変化がほとんど見られない
△ : ヒビが入る等、外観が若干変化した。
× : 割れる等、外観が大幅に変化した。
【0053】
〔 結 果 〕
【表2】

【0054】
表2から明らかなように、本発明品は、比較品に比べ、離型性、光輝性および落下強度に優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の製造方法によれば、表面平滑性に優れ、付け色と外観の色が近く、光輝感に優れた外観を有し、強度に優れた粉末固形化粧料を安定的に製造することが可能である。
【0056】
従って、本発明製造方法で得られた粉末固形化粧料は、特に、アイシャドウ、アイカラー、アイライナー等の目元に使用するアイメイクアップ化粧料や、ファンデーション、チークなどの外観の色を重要とする製品として、極めて好適に利用できるものである。
【符号の説明】
【0057】
1 圧縮成型装置
2 中皿
3 粉体化粧料
4 多孔性樹脂フィルム
5 フィルム繰出装置
6 フィルム巻取装置
7 押型(凸型)
8 受型(凹型)
9 受け部
10 加圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体化粧料を、押型を用いて圧縮成型する粉末固形化粧料の製造方法であって、圧縮成型にあたり、該粉体化粧料と該押型との間に、水との接触角が25℃で70°以上であり、表面に500μm以下の細孔を有する多孔性樹脂フィルムを介在させることを特徴とする粉末固形化粧料の製造方法。
【請求項2】
多孔性樹脂フィルムの厚みが20〜70μmである請求項1記載の粉末固形化粧料の製造方法。
【請求項3】
多孔性樹脂フィルムのガーレー通気度(JIS L1096B)が0.1ないし500秒/100ccであることを特徴とする請求項1又は2記載の粉末固形化粧料の製造方法。
【請求項4】
多孔性樹脂フィルムがポリプロピレン系フィルムである請求項1〜3の何れかに記載の粉末固形化粧料の製造方法。
【請求項5】
該粉末固形化粧料が、平均粒子径が5μm以上の板状粉体を5〜80質量%含有するものである請求項1〜4の何れかに記載の粉末固形化粧料の製造方法。
【請求項6】
化粧料用粉体と油性成分を含む粉末化粧料を、充填容器に充填後、その表面側に水との接触角が25℃で70°以上であり、表面に500μm以下の細孔を有する多孔性樹脂フィルムを介在させた状態で押型により圧縮成型することにより得られる粉末固形化粧料。


【図1】
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【公開番号】特開2010−215582(P2010−215582A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65870(P2009−65870)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】