説明

粉末洗剤組成物

【課題】収率が高く流動性に優れた粉末洗剤組成物及び該粉末洗剤組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を中和するのに必要な量以上の粒子状固体水溶性アルカリ無機物質と陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を混合後、アルキル硫酸塩水溶液を添加する工程を含む方法によって得られる、粉末洗剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉末洗剤組成物、詳しくは、収率が高く流動性に優れた粉末洗剤組成物に関し、さらに該粉末洗剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗剤組成物は、衣料等を洗うために用いられ、粒状もしくは粉末状である。従来は噴霧乾燥法によって製造されていたが、生産時の石油燃料消費量が多いなどの課題があり、近年、特許文献1、特許文献2のように、アルキルベンゼンスルホン酸塩の液体酸前駆体を炭酸ナトリウムのような水溶性無機固体物質によって乾式中和する方法が用いられるようになってきた。
【0003】
また、液体の界面活性剤ペーストを、ゼオライトや炭酸ナトリウムに添加する製造方法も開示されているが、特許文献3は流動床を用いるために生産時の石油燃料消費量が多いという課題があり、特許文献4及び特許文献5は粒度コントロールが出来ず、粗大粒が多いために、粗大粒を粉砕するための付帯設備が大規模になるという課題があった。これらは何れも数百μm以下の小粒径の無機粉体を界面活性剤ペーストで造粒する技術であり、何れも界面活性剤ペーストの添加前後で粒子径の大きな変化がみられる事が特徴である。
【0004】
また、生産性の向上のために、流動性の高い洗剤が求められる様になってきている。ここで流動性とは、JIS K3362に既定された嵩密度測定装置において、100mlの粉末が流れ落ちるのに要する時間である。流動性が高ければ洗剤の充填に要する時間が短縮できるため、生産性が向上する。
従来の製造法では流動性が悪いため、洗剤の充填に時間を要し、充填設備に過大な投資が必要であった。
【0005】
さらに、生産性の向上のために、収率(ある目開きを持った篩を通過する割合)が高いと、粗大粒を粉砕するための付帯設備の投資を抑制できる。これを達成するためには、所望の粒子径が得られた時点で、造粒を必要としないことが望ましい。
【特許文献1】特開平10−152700号公報
【特許文献2】特許第3313372号明細書
【特許文献3】米国特許第5516447号
【特許文献4】欧州特許第510746号
【特許文献5】国際公開第1995/010595号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、収率が高く流動性に優れた粉末洗剤組成物及び該粉末洗剤組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アルキル硫酸塩水溶液を粉末洗剤組成物の製造時に配合することにより、収率が高く流動性の向上した粉末洗剤組成物が簡易に得られることを見出した。
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を中和するのに必要な量以上の粒子状固体水溶性アルカリ無機物質と陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を混合後、アルキル硫酸塩水溶液を添加する工程を含む方法によって得られる、粉末洗剤組成物、
〔2〕(A)陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を中和するのに必要な量以上の粒子状固体水溶性アルカリ無機物質と陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を混合する工程;
(B)工程(A)で得られた混合物にアルキル硫酸塩水溶液を添加する工程
を含む粉末洗剤組成物の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、収率が高く優れた流動性を有する粉末洗剤組成物が提供され、該粉末洗剤組成物を簡便に製造することができる製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(粉末洗剤組成物)
本発明の粉末洗剤組成物は、陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を中和するのに必要な量以上の粒子状固体水溶性アルカリ無機物質に陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を混合後、アルキル硫酸塩水溶液を添加する工程を含む方法によって得られる。
なお、本発明において「粉末」とは、粉末状、顆粒状等を含む概念である。
【0010】
水溶性アルカリ無機物質の粒子(以下、便宜上粒子状固体水溶性アルカリ無機物質、ということがある)としては、通常洗剤組成物においてアルカリ剤として用いられるものが挙げられ、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、炭酸カリウム等が例示される。これらは単独で用いても良く、二種以上を混合して用いても良い。粒子状固体水溶性アルカリ無機物質の中でも、好ましい実施態様として炭酸ナトリウムがあり、炭酸ナトリウムは最終洗剤組成物において、洗剤ビルダー及びアルカリ剤として機能し得るものである。
【0011】
粒子状固体水溶性アルカリ無機物質の平均粒径は、好ましくは、10μm以上であり、より好ましくは、40〜200μmであり、特に好ましくは、50〜100μmである。所望の流動性を得るため、10μm以上が好ましく、所望の収率を得るため、200μm以下が好ましい。
【0012】
ここで、粉末洗剤組成物に添加する物質の平均粒径の測定は、後述する平均粒径測定法(JIS Z 8801−1)で行う。
【0013】
粉末洗剤組成物中の粒子状固体水溶性アルカリ無機物質の配合量は、陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を中和するのに必要な量(中和当量)以上であり、例えば、好ましくは中和当量の1〜20倍であり、より好ましくは2〜15倍、さらに好ましくは3〜10倍である。
【0014】
本発明では、陰イオン界面活性剤の酸前駆体は、それを含有する液状組成物として使用される。使用される陰イオン界面活性剤の酸前駆体としては、特に限定されないが、直鎖アルキル(炭素数10〜16)ベンゼンスルホン酸が好ましい。
【0015】
陰イオン界面活性剤の酸前駆体の配合量は、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは12〜45重量%、さらに好ましくは15〜40重量%である。
【0016】
本発明の粉末洗剤組成物の製造においては、陰イオン界面活性剤の酸前駆体とは別に、アルキル硫酸塩水溶液が使用される。アルキル硫酸塩水溶液としては、市販の物が使用され得るが、アルキル硫酸塩の炭素数は10〜16のものが好ましく、またアルキル硫酸塩を構成する陽イオンはナトリウム又はカリウムであることが好ましい。
【0017】
本発明において、アルキル硫酸塩水溶液は、主に洗剤粒子の表面改質剤として用いるものである。
【0018】
アルキル硫酸塩水溶液の濃度は、好ましくは、60〜90重量%であり、より好ましくは、70〜80重量%であり、特に好ましくは、72〜77重量%である。ハンドリング性の観点から60重量%以上90重量%以下が好ましい。
【0019】
アルキル硫酸塩水溶液は、粉末洗剤組成物中のアルキル硫酸塩としての配合割合が、好ましくは1〜6重量%、より好ましくは、2〜5重量%、特に好ましくは2.5〜5重量%となるように添加して用いる。1重量%未満では所望の表面改質効果が得られにくいので好ましくなく、6重量%を超えると粒子の合一、すなわち造粒が起こり、流動性が低下しやすいので好ましくない。即ち、1〜6重量%の範囲内においては、平均粒径の変動が小さいという点に1つの特徴を有する。
【0020】
本発明の粉末洗剤組成物において使用される界面活性剤としては次のものが挙げられる。
【0021】
陰イオン性界面活性剤としては、例えばアルキル(好ましくは炭素数10〜16)ベンゼンスルホン酸塩、アルキル又はアルケニルエーテル(好ましくは炭素数10〜18)硫酸塩、アルキル又はアルケニル(好ましくは炭素数10〜16)硫酸塩、α−オレフィン(好ましくは炭素数10〜18)スルホン酸塩、アルカン(好ましくは炭素数10〜18)スルホン酸塩、脂肪酸(好ましくは炭素数10〜18)塩、アルキル又はアルケニルエーテル(好ましくは炭素数10〜18)カルボン酸塩、アルキル又はアルケニル(好ましくは炭素数10〜18)燐酸エステル又はその塩等が挙げられる。これらの中では、アルキル(炭素数10〜16)ベンゼンスルホン酸塩、又は炭素数10〜16のアルキル硫酸塩が好ましい。また対イオンとしてはナトリウム、カリウム、アンモニウムが好ましく、特にカリウム又はナトリウムが好ましい。界面活性剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキル硫酸塩は、前記される陰イオン界面活性剤の酸前駆体、アルキル硫酸塩水溶液とは別に添加される。
【0022】
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル(好ましくは炭素数10〜18)、高級脂肪酸アルカノール(好ましくは炭素数10〜18)アミド、又は前記いずれかのアルキレン(好ましくは炭素数2〜3)オキサイド付加物、蔗糖脂肪酸(好ましくは脂肪酸の炭素数10〜18)エステル、アルキル(好ましくは炭素数10〜18)グルコシド、脂肪酸(好ましくは炭素数10〜18)グリセリンモノエステル、アルキル(好ましくは炭素数10〜18)アミンオキサイド等が挙げられる。これらの中では、特に総炭素数10〜18でエチレンオキサイド付加モル数が5〜15のポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテルが油汚れ洗浄力の点で好ましい。
これら非イオン界面活性剤のHLB値(グリフィン法で算出)は、好ましくは10.5〜15.0、より好ましくは11.0〜14.5である。なお、2種以上の非イオン界面活性剤を使用している場合は、平均HLBの値が前述の範囲であることが好ましい。
【0023】
両性界面活性剤としては、アルキル(好ましくは炭素数8〜20)ベタイン、イミダゾリニウムベタイン等のベタイン型両性界面活性剤、スルホン酸型両性界面活性剤が挙げられ、陽イオン界面活性剤としては、炭素数8〜18の長鎖アルキル基を有する4級型のモノ長鎖アルキルアンモニウム塩、ジ長鎖アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0024】
本発明の粉末洗剤組成物に使用される界面活性剤としては、これらの中では、アルキル硫酸塩とアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
【0025】
本発明の粉末洗剤組成物に含まれる漂白剤としては、過炭酸ソーダ等の過炭酸塩類又は過硼酸ソーダ等の過硼酸塩類等の無機過酸化物からなる酸素系漂白剤が好ましい。また、ゼオライトを含有する粉末洗剤組成物に過炭酸塩を使用する場合は、例えばパラフィン、硼酸塩、過硼酸塩、アルコールのエチレンオキシド付加物、ポリエチレングリコール、珪酸化合物から選ばれる一種以上で被覆した過炭酸塩を使用するのが好ましい。
【0026】
本発明の粉末洗剤組成物は、酸素系漂白剤の漂白力を補うために、漂白活性化剤を配合することもできる。漂白活性化剤としては特に制限はなく、例えばテトラアセチルエチレンジアミン、グルコースペンタアセテート、テトラアセチルグリコリル、アルカノイル又はアルケノイル(好ましくは炭素数8〜14)オキシベンゼンカルボン酸又はその塩、アルカノイル又はアルケノイル(好ましくは炭素数8〜14)オキシベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。特に、デカノイルオキシベンゼンカルボン酸又はこのナトリウム塩、ドデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
【0027】
本発明の粉末洗剤組成物は、前記したものの他にも、公知の洗剤成分、例えば、結晶性アルミノ珪酸塩、オルトリン酸塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩等の無機ビルダー;ニトリロ三酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、クエン酸塩、イソクエン酸塩等の有機ビルダー;ケイ酸塩、炭酸塩、セスキ炭酸塩等のアルカリ剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体又はその塩等の再汚染防止剤等を配合することができ、更にケーキング防止剤、蛍光剤、青み付け剤、光活性化漂白剤、香料等を配合することもできる。
【0028】
本発明の粉末洗剤組成物は、洗浄性能、溶解性の観点から、界面活性剤を好ましくは10〜60重量%、より好ましくは10〜40重量%、ビルダーを好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜40重量%、アルカリ剤を好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜40重量%、漂白剤を好ましくは1〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%、漂白活性化剤を好ましくは0〜20重量%、より好ましくは1〜10重量%、再汚染防止剤を好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、蛍光剤を好ましくは0〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%、香料を好ましくは0〜5重量%、より好ましくは0.01〜3重量%含有する。前述した以外の他の公知の洗剤成分の本発明の粉末洗剤組成物中の含有量には、特に制限はないが、所望の流動性を達成するため、これらの各成分を0〜30重量%含むのが好ましい。
【0029】
本発明の粉末洗剤組成物の平均粒径は、溶解時のペースト化防止及び溶解性の観点から、好ましくは150〜1100μm、より好ましくは190〜700μm、さらに好ましくは190〜650μm、特に好ましくは190〜450μmである。
なお、前述の平均粒径は、JIS Z 8801−1(2000年)の標準篩を用いて5分間振動させた後、篩目のサイズによる重量分率から求める値である。より詳細には、目開き125μm、180μm、250μm、355μm、500μm、710μm、1000μm、1400μm、2000μmの9段の篩と受け皿を用いて、受け皿上に目開きの小さな篩から順に積み重ね、最上部の2000μmの篩の上から100gの粉末洗剤組成物を添加し、蓋をしてロータップ型ふるい振とう機(HEIKO製作所製、タッピング156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、5分間振動させたあと、それぞれの篩及び受け皿上に残留した粉末洗剤組成物の重量を測定し、各篩上の粉末洗剤組成物の重量割合(%)を算出した。受け皿から順に目開きの小さな篩上の粒子の重量割合を積算していき合計が50%となる粒径を平均粒径とした。
【0030】
本発明の粉末洗剤組成物は、衣料用、自動食器洗浄機用、又は住居用等の粉末洗剤組成物として好適に使用することができる。また、本発明の粉末洗剤組成物を繊維の前処理剤として使用することもできる。
【0031】
(粉末洗剤組成物の製造方法)
本発明の粉末洗剤組成物の製造方法は、
(A)陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を中和するのに必要な量以上の粒子状固体水溶性アルカリ無機物質と陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を混合する工程;
(B)工程(A)で得られた混合物にアルキル硫酸塩水溶液を添加する工程
を含む。以下、本発明の製造方法の一例を、より詳細に説明する。
【0032】
本製造方法は、好ましくは、1)混合工程、2)乾式中和工程、3)アルキル硫酸塩水溶液添加工程、及び4)その他の任意の工程の各工程に分けることができる。次いで各工程について説明する。
【0033】
1)混合工程
本工程は、乾式中和に先立ち、陰イオン界面活性剤の酸前駆体の好ましい例である直鎖アルキルベンゼンスルホン酸の酸前駆体(LAS−S)と硫酸を予め混合する工程である。
【0034】
また、本発明で用いられるLAS−Sには、その製造方法により残存硫酸を含むものがある。
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸は、一般に以下の代表的な二方法により製造される。
(1)オレウム(発煙硫酸)スルホン化法
(2)SOガススルホン化法
【0035】
(1)は、古典的な直鎖アルキルベンゼンスルホン酸の製造法であって、生成物は直鎖アルキルベンゼンスルホン酸1モルに対して、0.3モル程度の硫酸を含み得る。又、(2)は、生成物中の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸の純度が高く、残存硫酸の量は比較的低く、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸1モルに対して、通常残存硫酸は0.2モル以下である。現在は、品質及び生産性の面から、純度の高い直鎖アルキルベンゼンスルホン酸の製造法として、主として(2)の製造法が用いられ、本発明においては、(2)により製造された直鎖アルキルベンゼンスルホン酸を好適に用いる。
【0036】
このように、LAS−Sには硫酸が予め存在している場合がある。このような硫酸の量、即ち、LAS−S中に予め存在する硫酸の量は特に限定されるものではないが、得られる粉末洗剤組成物の色相の観点から、該LAS−S 1モルに対して0.09モル以下であることが好ましく、0.06モル以下であることがより好ましい。なお、LAS-S中のアルキル基の炭素数は、10〜16が好ましい。
【0037】
本工程において存在させる硫酸の量は、LAS−S 1モルに対して好ましくは0.1〜1.0モルであり、より好ましくはLAS−S 1モルに対して0.1〜0.8モルであり、特に好ましくは0.15〜0.65モルである。粉末洗剤組成物の粗粒化抑制の観点から、硫酸の量は0.1モル以上であることが好ましく、粉末洗剤組成物の配合組成の自由度確保の観点から1.0モル以下であることが好ましい。
【0038】
なお、LAS−S中に予め存在する硫酸の量が前述の範囲に満たない場合、又は該LAS−S中に予め存在する硫酸の量が前述の範囲内であっても、より小さな粉末洗剤組成物を得たい場合、LAS−S等の原料成分に硫酸を意図的に添加することが好ましい。従って、本製造方法において、混合工程は、任意の工程である。
【0039】
本工程において用いられる混合機としては特に限定されるものではなく、例えば攪拌機を備えた液体用混合槽等が挙げられる。また、混合の程度も、各成分が一様に混合する程度で良い。混合する際の他の条件(温度、攪拌機のヘッドスペース部の窒素置換等)としては特に限定はない。
【0040】
2)乾式中和工程
本工程は、混合工程を経ていないLAS−S又は混合工程で得られたLAS−Sと硫酸の混合物と、粒子状固体水溶性アルカリ無機物質を混合し、LAS−Sの乾式中和を行う工程である。なお、本工程においては、粒子状固体水溶性アルカリ無機物質との混合により、中和反応と造粒が同時並行的に起こり、中和粒子が形成される。
【0041】
本工程は以下に示す工程(a)と工程(b)を含むのが好ましい。
即ち、
工程(a):粒子状固体水溶性アルカリ無機物質と、任意に一般に洗剤組成物に用いられる公知の物質とを混合する工程(ここで粒子状固体水溶性アルカリ無機物質の量は、LAS−S又は前述の混合工程で得られたLAS−Sと硫酸の混合物を中和するのに必要な量以上、すなわち中和当量以上である);
工程(b):工程(a)で得られる混合物に、LAS−S又は1)混合工程で得られたLAS−Sと硫酸の混合物をさらに添加することにより、得られる混合物を粒状に維持しつつ、中和反応を行う工程、
である。
【0042】
工程(a)について
粒子状固体水溶性アルカリ無機物質は、前述のものを好ましく用いることができる。好ましくは、LAS-S又はLAS-Sと硫酸の混合物を中和するのに必要な量に、洗剤ビルダー及びアルカリ剤としての機能のために必要な量を加えた量の粒子状固体水溶性アルカリ無機物質を、LAS-S又はLAS-Sと硫酸の混合物に混合するのに使用される。これにより、中和反応を良好に行うことができ、前述の機能を維持する粉末洗剤組成物を生産することができる。
【0043】
即ち、かかる粒子状固体水溶性アルカリ無機物質の配合量は、好ましくは前述したとおりの量である。
【0044】
さらに本工程においては、一般に洗剤組成物に用いられる公知の物質を添加して混合しても良い。かかる物質としては、トリポリリン酸塩、結晶性又は非結晶性アルカリ金属アルミノケイ酸塩、結晶性ケイ酸塩、炭酸カルシウム、硫酸ナトリウム、蛍光剤、顔料、再汚染防止剤(ポリカルボキシレートポリマー、ナトリウムカルボキシメチルセルロース等)、粒子状界面活性剤(脂肪酸又はその塩、アルキル硫酸塩等)、噴乾粉末、珪藻土、方解石、カオリン、ベントナイト、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。かかる物質はその用途に応じて任意に用いられる。
【0045】
また、トリポリリン酸塩、結晶性又は非結晶性アルカリ金属アルミノケイ酸塩、結晶性ケイ酸塩、炭酸カルシウム、硫酸ナトリウム、蛍光剤、顔料、再汚染防止剤、粒子状界面活性剤、噴乾粉末、珪藻土、方解石、カオリン、ベントナイト、亜硫酸ナトリウム等の配合量は特に限定されない。
【0046】
工程(a)において用いられる、前述の各成分を混合するための混合機としては特に限定されるものではないが、攪拌造粒機が好適に用いられる。攪拌造粒機としては特に限定されるものではないが、攪拌羽根と解砕/分散用チョッパー(又はこれに機能的に同等なもの)を具備するものが好ましい。
【0047】
本発明に用いられる攪拌造粒機の具体例としては、バッチ式のものとして、バーチカルグラニュレータ((株)パウレック製)、ハイスピードミキサー(深江工業(株)製)、レディゲミキサー((株)マツボー製)、プロシェアミキサー(太平洋機工(株)製)、ゲーリッケミキサー(明治機械(株)製)等が挙げられる。特に好ましくは、レディゲミキサー、プロシェアミキサーである。連続式のものとして、連続式レディゲミキサー(中速ミキサー:滞留時間が比較的長い)や、高速ミキサー(滞留時間が比較的短い)としてCBリサイクラー(Loedige 製)、タービュライザー(ホソカワミクロン(株)製)、シュギミキサー((株)パウレック製)、フロージェットミキサー((株)粉研製)等が挙げられる。なお、本発明においては前述のミキサーを適宜組み合わせて用いても良い。
【0048】
また、攪拌造粒機は、内部の温度を調節するためのジャケットを具備するものや、ガス吹き込み操作を行うためのノズルを具備するものがより好適である。
【0049】
工程(a)における混合の程度は特に限定されるものではなく、各成分が一様に混合する程度であれば良い。例えば攪拌造粒機を用いる場合、攪拌造粒機の作動条件としては、例えば、混合時間は5分間以内が好ましい。主軸攪拌速度及び解砕/分散用チョッパー速度は機種によって適宜設定し得るが、例えばバッチ式のものであれば、混合効率及び機械の耐久性の観点から主軸攪拌周速度は2〜15m/sが好ましく、解砕/分散効率及び機械の耐久性の観点から解砕/分散用チョッパー周速度は20〜60m/sが好ましい。
【0050】
工程(b)について
工程(b)において、LAS−Sを乾式中和するためには、工程(a)で得られた混合物に、LAS−S、又はLAS−Sと硫酸の混合物を徐々に添加するのが好ましい。LAS−S又は前述の混合物の添加に要する時間は添加する量に依存するため一概には言えないが、バッチ式の場合、好ましくは1分以上、より好ましくは1〜10分、更に好ましくは2〜7分である。ここで、LAS−S又は前述の混合物の添加を著しく短時間で行うと、未反応のLAS−Sが蓄積し、過度の凝集を引き起こす傾向があるため、1分以上で添加することが好ましい。
【0051】
また、かかるLAS−S又は前述の混合物の添加方法としては、連続的又は複数回に分割して行ってもよく、添加手段は複数設けても良い。
【0052】
なお、工程(b)において使用することのできる混合機としては特に限定されるものではないが、前述の工程(a)において例示された攪拌造粒機が好適なものである。
【0053】
また、LAS−S又は前述の混合物の添加後、さらに攪拌造粒機を30秒以上、より好ましくは1分以上作動させても良い。このような操作を行うことにより、中和反応及び造粒操作を完結させることができるため好適である。
【0054】
工程(b)においては、ガスを吹き込みつつ中和を行うことが好ましい。これは中和反応で生じた余剰の水分を蒸発させ、かつ粒状物をガスを用いて冷却させることにより粒状物が大きな塊となるのを防止するためである。かかるガスとしては、Nガス、空気等が挙げられる。ガスの吹き込み量(通気量)は特に限定されないが、余剰水分を十分に除去するための効率の観点から粒状物100重量部に対して毎分0.2重量部以上が好ましく、毎分2重量部以上がより好ましい。
【0055】
また、所望の粉末洗剤組成物の組成に石鹸(脂肪酸ナトリウム)が含まれる場合、工程(b)において、任意で脂肪酸を添加し、脂肪酸の乾式中和を行ってもよい。添加順序としては、LAS−S又はLAS−Sと硫酸の混合物の添加後に脂肪酸を添加することが望ましく、さらにはLAS−S又はLAS−Sと硫酸の混合物の添加後に攪拌造粒機を30秒以上、より好ましくは1分以上作動させた後に脂肪酸を添加することがより望ましい。これは、LAS−S又は硫酸の中和が完了していない場合に、LAS−S又は硫酸が脂肪酸と反応して着色物を生成し、製品の外観を劣化させる場合があるためである。なお、脂肪酸を添加するかわりに、LAS−S又はLAS−Sと硫酸の混合物を添加した後の任意の工程において、石鹸を添加しても構わない。
【0056】
3)アルキル硫酸塩水溶液添加工程
本工程は、乾式中和の後に、アルキル硫酸塩水溶液を添加し、表面改質を行う工程である。ここで、アルキル硫酸塩水溶液は、前述したものが好ましく使用される。
【0057】
本発明で使用されるアルキル硫酸塩水溶液は、好ましくは以下の代表的な方法により製造される。即ち、炭素数10から16のアルコールを、SOガスで硫酸エステル化し、その後、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムの水溶液で中和する。アルキル硫酸塩水溶液はその濃度によって粘度が大きく異なり、工業的にハンドリング可能なアルキル硫酸塩水溶液濃度は0〜40重量%、及び60〜90重量%である。水溶液中のアルキル硫酸塩の濃度が40重量%以下では、添加時に持ち込む水分が多くなるため、本発明の目的に対しては60〜90重量%が望ましい。また、安定性を保つためにpHは8以上である事が望ましい。pHを保つための緩衝剤としてはリン酸水素塩などが挙げられ、添加量としてはアルキル硫酸塩水溶液中に2重量%以下が望ましい。また、アルキル硫酸塩水溶液に未反応のアルコールや、硫酸ナトリウムが存在しても構わない。なお、粘度を調整するためなどの目的でアルキル硫酸塩水溶液にカルビトールなどのハイドロトロープ剤、助溶剤を添加しても構わない(Surfactants:Chemistry,Interfacial Properties,Applications,V.B.Fainerman編,ELSEVIER(2001)第36頁第11〜12行)。
【0058】
本工程で使用されるアルキル硫酸塩水溶液の使用量は、アルキル硫酸塩として、粉末洗剤組成物の項に前述される量が好ましく使用される。
【0059】
アルキル硫酸塩水溶液は、温度50〜80℃で添加する事が望ましい。温度が50℃以上だとハンドリングが良好になり、温度が80℃以下だと化合物の安定性が良好となる。
【0060】
アルキル硫酸塩水溶液は、前述の攪拌造粒機に2)乾式中和工程の終了後に添加する。
【0061】
アルキル硫酸塩水溶液の添加に要する時間は添加する量に依存するため一概には言えないが、バッチ式の場合、好ましくは1分以上、より好ましくは1〜10分、更に好ましくは2〜7分である。ここで、アルキル硫酸塩水溶液の添加を著しく短時間で行うと、過度の凝集を引き起こす傾向があるため、1分以上で添加することが好ましい。
【0062】
また、かかるアルキル硫酸塩水溶液の添加方法としては、連続的又は複数回に分割して行ってもよく、添加手段は複数設けても良い。アルキル硫酸塩水溶液は粘度が高いため、通常の液体原料のような噴霧ノズルを用いず、比較的大きな開口部を設ける事が望ましい。
【0063】
なお、本工程において使用することのできる混合機としては特に限定されるものではないが、前述の2)乾式中和工程において例示された攪拌造粒機が好適なものである。
【0064】
また、アルキル硫酸塩水溶液の添加後、さらに攪拌造粒機を30秒以上、より好ましくは1分以上作動させても良い。このような操作は、表面改質操作を完結させることができるため好適である。
【0065】
前述のごとくして、アルキル硫酸塩水溶液添加工程が完結する。この工程により、粉末洗剤組成物は、表面改質され、流動性が向上する。
【0066】
4)その他の任意の工程
以上の本発明の製造方法により得られる粉末洗剤組成物について、さらに表面改質を行っても良い。即ち、本発明の粉末洗剤組成物の製造方法は、アルキル硫酸塩水溶液の添加の後さらに例えば流動助剤を添加する工程を有していても良い。流動助剤の添加を行うことにより、得られる粉末洗剤組成物のさらなる流動性の向上、保存安定性の向上を図ることができる。
【0067】
流動助剤としては通常用いられる公知のものが使用でき、結晶性又は非結晶性アルカリ金属アルミノケイ酸塩(ゼオライト)、方解石、ケイソウ土、シリカ等が好適に用いられる。かかるアルミノケイ酸塩は、所望の被覆性を得るために平均粒径が10μm以下のものがより好ましい。またその量としては、被覆性と流動性の観点から最終産物である粉末洗剤組成物の5〜50重量%が好ましく、7〜40重量%がより好ましい。なお、流動助剤の平均粒径は体積基準で算出されるものであり、レーザー回折式粒度分布測定装置:LA−500(堀場製作所(株)製)を用いて測定される値である。
【0068】
また、流動助剤を添加する工程の攪拌造粒機の運転時間は特に限定されないが、十分に被覆でき、かつ生産性を確保するため1〜5分間が好ましい。なお、流動助剤を添加する工程において使用することのできる混合機としては特に限定されるものではないが、前述の2)乾式中和工程において例示された攪拌造粒機が好適なものである。
【0069】
なお、本製造方法において、得ようとする粉末洗剤組成物の組成により、所望の液体成分を添加する(液体成分添加工程)ことができる。液体成分の添加時期は特に限定されるものではないが、流動助剤の添加前が好ましい。液体成分の添加後、得られた粉末洗剤組成物が良好な流動性及び/又は良好な保存安定性を有する場合には、流動助剤を添加する必要はない。
【0070】
液体成分としては、例えば非イオン界面活性剤、水溶性ポリマー(ポリエチレングリコール、アクリル酸マレイン酸コポリマー等)、水等の市販の洗剤組成物中の任意の液体成分が挙げられる。液体成分は一成分のみを用いてもよく、二成分以上を併用しても良い。各液体成分の量としては、粉末洗剤組成物の凝集抑制の観点から、最終産物である粉末洗剤組成物の20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましい。
【0071】
また、液体成分の添加を流動助剤の添加前に行った場合の攪拌造粒機の運転時間は特に限定されないが、十分に混合でき、かつ生産性を確保するため0.5〜8分間が好ましい。なお、液体成分を添加する工程において使用することのできる混合機としては特に限定されるものではないが、前述の2)乾式中和工程において例示された攪拌造粒機が好適なものである。
【0072】
さらに本発明においては、一般に洗剤組成物に用いられている公知の物質を乾式中和工程の後に添加して混合しても良い。例えば、液体成分添加工程の前及び/又は流動助剤添加工程の前に添加しても良い。かかる物質としては、トリポリリン酸塩、結晶性又は非結晶性アルカリ金属アルミノケイ酸塩、結晶性ケイ酸塩、炭酸カルシウム、蛍光剤、顔料、再汚染防止剤(ポリカルボキシレートポリマー、ナトリウムカルボキシメチルセルロース等)、粒子状界面活性剤(脂肪酸又はその塩、アルキル硫酸塩等)、噴乾粉末、珪藻土、方解石、カオリン、ベントナイト、亜硫酸ナトリウム、石鹸等が挙げられる。かかる物質は、その用途に応じて任意に用いられる。かかる物質の量に特に制限はないが、所望の流動性を達成するため、これらの各成分を0〜30重量%含むのが好ましい。なお、かかる物質を添加する工程において使用することのできる混合機としては特に限定されるものではないが、前述の2)乾式中和工程において例示された攪拌造粒機が好適なものである。
【0073】
以上から、本発明の粉末洗剤組成物の製造方法としては、
(1):乾式中和とアルキル硫酸塩水溶液の添加を行う工程の後さらに液体成分を添加する工程を有する態様、
(2):(1)の態様における液体成分を添加する工程の後さらに流動助剤を添加する工程を有する態様、
も好適な態様として挙げられる。
【0074】
前述のようにして流動助剤を添加された粉末洗剤組成物の色相は特に限定されるものではないが、例えば、流動助剤を添加された粉末洗剤組成物の平均粒径を350〜500μmに揃え、かかる粉末洗剤組成物を光電色彩計により計測した場合、ハンターLab表色系のL値で90以上が好ましい。
【0075】
なお、本発明において、さらにその他の任意成分を添加しても良い。かかる任意成分を添加する段階は特に限定されないが、3)アルキル硫酸塩水溶液添加工程の後が好ましい。また、かかる任意成分は流動助剤と同時に添加しても構わない。かかる任意成分としては、例えば酵素、香料、漂白剤、色素等が挙げられる。粉末洗剤組成物中のかかる任意成分の配合量に特に制限はないが、所望の流動性を達成するため、これらの各成分を0〜30重量%含むのが好ましい。かかる任意成分は、好ましくは、本発明の製造方法によって得られる粉末洗剤組成物と、回転ドラム等の混合機を用いて混合することにより配合される。
【0076】
本発明における実施態様は、前述の方法に限定されるものではない。
【実施例】
【0077】
実施例1〜4及び比較例1〜2
実施例1〜4及び比較例1〜2の粉末洗剤組成物を下記のように調製し、物性及び品質を評価した。各粉末洗剤組成物の調製に用いた成分、粉末物性及び品質評価を表1に示す。
〔粉末洗剤組成物の調製〕
原料として、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS−S)(花王(株)製のネオペレックスGS:アルキル基の平均炭素数12〜13)ナトリウム塩の有効分として17.5〜27.5重量%、4A型ゼオライト(ゼオビルダー社製、平均粒径2.9μm)22.00重量%、炭酸ナトリウム(セントラル硝子(株)社製)36.76〜39.30重量%、硫酸ナトリウム(四国化成(株)社製)2.73〜4.29重量%、ポリエチレングリコール水溶液(三井化学(株)社製、PEG 13000−L60)有効分として1.0重量%、アクリル酸−マレイン酸コポリマーナトリウム塩(BASF社製、ソカランCP−5)有効分として1.0重量%、アルキル硫酸ナトリウム水溶液(AS)(花王(株)製のエマール10Pを水に溶解した75重量%品)(アルキル基の平均炭素数:12〜14)有効分として0〜10重量%、〔チノパールCBS−X/チノパールAMS−GX(チバスペシャリティケミカルス社製)〕の重量比1/1混合物(蛍光剤)0.3重量%、酵素0.5重量%、漂白剤(過ホウ酸ソーダ1水塩、デグサ社製)2重量%、香料0.20重量%、及び水分を用いて粉末洗剤組成物を調製した。比較例2にはアルキル硫酸ナトリウム(AS)粉末(花王(株)製、エマール10P)5重量%を用いた。
【0078】
以下、調製工程を実施例1を例にとって詳細に述べる。
レディゲミキサーFKM−130D((株)マツボー製)高速ミキサーを用いて、表1に示す組成の粉末洗剤組成物を35kg単位で製造した。このミキサーは攪拌羽根と解砕/分散用チョッパーに相当する剪断機を具備するものである。
【0079】
操作は以下のように実施した。
1)混合工程
LAS−S 8.19重量部及び98%硫酸0.85重量部を別の液体用混合槽にて混合した。
【0080】
2−a)乾式中和工程 工程a)
固体成分である、炭酸ナトリウム(ライト灰:セントラル硝子(株)製、平均粒径56.1μm)15.69重量部、及び蛍光剤0.11重量部を、レディゲミキサーにより、攪拌羽根回転数130rpm(周速度3.4m/s)、剪断機回転数2850rpm(周速度27m/s)の条件で1分間混合した。
【0081】
2−b)乾式中和工程 工程b)
ミキサーを前記と同条件で作動させながら、予め混合させておいたLAS−S硫酸混合物9.04重量部を4分間で加えた。この間、ミキサージャケットには25℃の水を通して冷却した。この段階で、温度は最高80℃に達した。尚、この段階を通して、反応混合物は粒状であった。なお、上記のLASはSOガススルホン化法により製造されたものであり、0.13重量部の硫酸を含有するものであった。即ち、LAS−S 1モル中硫酸を0.05モル含むものであった。また、中和の際のLAS−S と硫酸との割合は、LAS−S 1モルに対して硫酸0.39モルであった。炭酸ナトリウムはLAS−Sと硫酸の中和に必要な量の6.57倍であった。その後、ミキサーを同条件で1分間作動させ、中和反応及び造粒操作を完結した。
【0082】
また、LAS−S添加開始直後より、中和反応完結までの間、通気(毎分300L)を行った。この時の粒状物(炭酸ナトリウムと蛍光剤)の総重量は15.80kgであり、空気(25℃)の重量は毎分355g、すなわち通気量は粒状物100重量部に対して毎分2.2重量部であった。この工程終了後の平均粒径は192μmであった。
【0083】
3)アルキル硫酸塩水溶液添加工程
アルキル硫酸ナトリウム水溶液(AS)(75重量%品)1.17重量部を添加し、1分間混合した。この工程終了後の平均粒径は201μmであった。
【0084】
4)その他の任意の工程
ポリエチレングリコール水溶液0.58重量部、アクリル酸マレイン酸コポリマー水溶液0.88重量部をミキサーに加え1分30秒間混合し、続いてゼオライト(7.70重量部)を加え、さらに2分間ミキサーを作動させた。なお、上記ゼオライトは1.54重量部の結晶水を含有するものであった。回転ドラムを用いて、酵素(0.18重量部)、漂白剤(0.70重量部)と前記で得られた洗剤組成物を混合し、更に香料(0.07重量部)を噴霧し、洗剤組成物の最終粉末を得た。
【0085】
得られた粉末洗剤組成物の粒子は、1200μmパス収率が91%、平均粒径が201μm、流動性が5.9秒であった。
【0086】
なお、平均粒径の測定法は、前述した通りである。1200μm収率とは目開き1200μmの篩を通過する粉末の重量百分率であり、流動性とは、JIS K3362に既定された嵩密度測定装置において、100mlの粉末が流れ落ちるのに要する時間(秒)である。
【0087】
【表1】

【0088】
実施例1及び実施例2より、本発明の粉末洗剤組成物は、アルキル硫酸塩水溶液の添加前後で平均粒径の変化が小さく、1200μm収率が極めて良く、また流動性が非常に良好であったことが分る。
実施例3及び実施例4より、本発明の粉末洗剤組成物は、平均粒径が少し大きくなっているが、1200μm収率は良好で、流動性も良好であった。
比較例1より、アルキル硫酸塩水溶液を添加しない場合は、平均粒径が非常に大きく、1200μm収率が著しく低かったことが分る。従って、商業生産においては粗大粒を粉砕するための付帯設備が過大となる場合がある。
比較例2より、アルキル硫酸塩水溶液の代わりにアルキル硫酸塩粉末を用いると、流動性が測定できないほどに劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
アルキル硫酸塩水溶液を、粉末洗剤組成物に配合することにより、収率が高く流動性が向上した粉末洗剤組成物を得られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を中和するのに必要な量以上の粒子状固体水溶性アルカリ無機物質と陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を混合後、アルキル硫酸塩水溶液を添加する工程を含む方法によって得られる、粉末洗剤組成物。
【請求項2】
アルキル硫酸塩の炭素数が、10〜16である請求項1記載の粉末洗剤組成物。
【請求項3】
アルキル硫酸塩を構成する陽イオンが、ナトリウム又はカリウムである請求項1又は2記載の粉末洗剤組成物。
【請求項4】
アルキル硫酸塩水溶液の濃度が、60〜90重量%である請求項1〜3いずれか記載の粉末洗剤組成物。
【請求項5】
アルキル硫酸塩の水溶液をアルキル硫酸塩の配合割合が1〜6重量%になるように添加してなる請求項1〜4いずれか記載の粉末洗剤組成物。
【請求項6】
陰イオン界面活性剤の酸前駆体が、アルキルベンゼンスルホン酸である、請求項1〜5いずれか記載の粉末洗剤組成物。
【請求項7】
(A)陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を中和するのに必要な量以上の粒子状固体水溶性アルカリ無機物質と陰イオン界面活性剤の酸前駆体を含有する液状組成物を混合する工程;
(B)工程(A)で得られた混合物にアルキル硫酸塩水溶液を添加する工程
を含む粉末洗剤組成物の製造方法。



【公開番号】特開2009−185203(P2009−185203A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27643(P2008−27643)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】