説明

粉末組成物

変性多糖の母材に埋め込まれている長鎖多価不飽和脂肪酸(LC−PUFA)を含む小滴を含む平均粒径が約50〜500μmの粉末組成物であって、この粒子の表面油分含量が0.5%(w/w)未満であることを特徴とする組成物、その製造方法、および栄養価が高められた食品の調製におけるその利用。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、LC−PUFA(長鎖多価不飽和脂肪酸)を含む粉末組成物、その製造方法、および栄養価を高めた食品の調製におけるこの種の組成物の使用に関する。より正確には、本発明は、変性多糖類、好ましくは変性デンプンの母材に埋め込まれている特に魚油由来のPUFAを含む粉末組成物であって、優れた官能特性(sensory profile)、微粒子構造、および高い油分配合量が同時に得られる組成物を提供する。
【0002】
栄養補助食品としての重要性が高まっている長鎖多価不飽和脂肪酸の供給源として、ここ数年、魚油がかなり注目を集めるようになった。現在では、PUFAの食餌量を増やすことで健康に有益な効果があり、また、血圧の影響による冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、および血栓形成による死亡率を低減できるという合理的な証拠も存在する。
【0003】
PUFAは、分子の炭素鎖中の二重結合の位置に従い、n−9、n−6、またはn−3PUFAに分類される。n−6PUFAの例としては、リノール酸(C18:2)、アラキドン酸(ARA、C20:4)、γ−リノレン酸(GLA、Cl8:13)、およびジホモ−γ−リノレン酸(DGLA、C20:3)が挙げられる。n−3PUFAの例としては、α−リノレン酸(Cl8:13)、エイコサペンタエン酸(EPA、C20:5)、およびドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6)が挙げられる。この中でも、近年、食品業界からの注目を集めているのがEPAおよびDHAである。これら2種類の脂肪酸の供給源として最も利用しやすいのが魚類およびこれらから抽出される魚油である。
【0004】
PUFAは、二重結合の数が増加するに従い酸化による劣化を受けやすくなり、主として生臭い臭いや味といった望ましくない「異臭」を発生しやすくなる。EPAやDHA等のPUFAに対する関心は高まっており、魚油およびPUFA濃縮物を精製および安定化させる方法を研究することが急務となっている。
【0005】
精製直後の魚油は、初めのうちは異臭も生臭い味や臭いもしないが、酸化されることによって急速に戻り(reversion)が生じることが以前から知られていた。この油を安定化させようと、例えば、様々な酸化防止剤またはこれらの混合物を添加するなどの多くの試みが行われてきた。しかしながら、これまでのところは、ほとんどの試みが失敗に終わっているか、一応さらなる改善の可能性が残されたに過ぎない。長期間にわたり良好な官能特性を示し、したがって、栄養補助食品に使用することが可能な、PUFAまたはこれらを含む魚油をベースとする、例えば自由流動性を有する乾燥した粉末または微小球体(beadlet)の形態の組成物を開発することがずっと求められ続けている。安定化されたPUFA油およびマイクロカプセル化された粉末が幾つか上市されており、これらは確かに安定化されていない油よりも官能的に改善されている。しかし、これらを利用して食料品中に使用する際、特に、それと同時にPUFA組成物を微粒子構造にすることおよびそのPUFA含量を高くすることが求められる場合は、やはりPUFAの官能性に関する問題が最大の制限要因の一つとなる。
【0006】
米国特許第4670247号明細書によれば、多価不飽和脂肪酸等の脂溶性物質を水、ゼラチン、および糖類で乳化させ、上記乳化液をさらに小滴に変換し、この小滴を回収粉末(collecting powder)に回収して粒子を形成し、この粒子を回収粉末から分離し、結果として得られた生成物を熱処理して水に不溶な微小球体を形成することによって、脂溶性の微小球体が調製されている。糖類は還元糖であり、フルクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、キシロース、およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。米国特許第4670247号明細書に従い使用される回収粉末はデンプン質の粉末である。熱処理を行うことによってゼラチン母材の架橋が起こる。従来の加熱方法によれば、この架橋ステップは、電気オーブン内で予熱されたステンレス鋼トレー上で約90℃の温度で2時間〜約180℃の温度で1分未満加熱することによって実施される。
【0007】
米国特許第6,444,227号明細書によれば、脂溶性物質、例えばPUFAを含む微小球体が、(a)この物質、ゼラチン、還元糖、および場合により酸化防止剤(antioxydant)、および/または湿潤剤を含む水性乳化液を形成することと、(b)場合により架橋酵素を添加することと、(c)この乳化液を乾燥粉末に変換することと、(d)この被覆粒子のゼラチン母材を放射線または培養(酵素が存在する場合)によって架橋することと、によって得られる。
【0008】
変性多糖の母材に埋め込まれているLC−PUFAを含む、平均粒径が約50〜500ミクロン(μm)、好ましくは約50〜200ミクロン、最も好ましくは約70〜120ミクロンの粉末組成物が、容易に調製可能であり、表面油分含量が低く、優れた官能特性を有し、かつ微粒子構造の割にLC−PUFAの配合量を高くしても高い安定性を有することがここに見出された。したがって、このような粉末組成物は、そのまままたは予め混合された形態で、食品、特にそれ自体が微細構造を有する食品の添加物として申し分なく使用することができる。
【0009】
したがって本発明は、平均粒径が約50〜500ミクロン(μm)、好ましくは約50〜200ミクロン、最も好ましくは約70〜120ミクロンの粉末組成物であって、変性多糖の母材に埋め込まれている少なくとも1種の長鎖多価不飽和脂肪酸(LC−PUFA)を含む小滴を含み、粒子の表面油分含量が0.5%(w/w)未満、好ましくは0.2%(w/w)以下であることを特徴とする組成物に関する。
【0010】
本発明はまた、この種の組成物の製造方法、この種の組成物を所望により他の成分と組み合わせて食品添加物として使用するかまたは栄養価を高めた食品の調製に使用すること、およびこの種の組成物が添加された食品または食品成分にも関する。
【0011】
本明細書および特許請求の範囲における「PUFA」または「LC−PUFA」という用語は、当業者に一般に知られている意味で用いられ、合成的に調製されるかまたは天然の供給源から単離、濃縮、および/もしくは精製された、遊離酸、その塩、モノ−、ジ−、もしくはトリグリセリド、または例えばエステル交換によってグリセリドから得ることができる他のエステル(例えばエチルエステル)の形態の、個々のまたは混合物としての多価不飽和脂肪酸に関連する。
【0012】
したがって、PUFAという用語には、上述した化合物だけでなく、これらを含む油も包含されるが、これらに限定されるものではない。本発明の文脈において注目されている好ましいPUFAは、単独または混合物としての、好ましくはそのトリグリセリド形態にある、特に、海生動物(好ましくは魚類)からもしくは植物(例えば、亜麻、ナタネ、ルリヂサ、または月見草)から得られるかまたは発酵によって得られる油の成分としての、n−3およびn−6PUFA、特に、EPA、DPA、DHA、GLA、およびARAならびにこれらを含む油(好ましくは食用)である。これらは当業者に周知の方法によって、例えば、酸化防止剤、乳化剤、香辛料、またはハーブ(ローズマリーまたはセージ抽出物等)を添加することによって安定化および/または脱臭することができる。本発明の好ましい実施態様におけるPUFAという用語は、ROPUFA(登録商標)の商標で知られる市販の精製魚油を指す。本発明のさらに好ましい実施態様においては、ROPUFA(登録商標)は、トコフェロールまたはトコトリエノール(天然の混合物または合成的に調製された、好ましくはα−トコフェロール)で、所望により他の酸化防止剤および/または脱臭剤(パルミチン酸アスコルビルおよび/またはローズマリー抽出物等)を一緒に用いることによって安定化されている。
【0013】
本発明の粉末組成物は、変性多糖の母材に埋め込まれているPUFAの粒子から構成されている。これらの粒子は比較的寸法が小さい、すなわち、平均径が約50〜500ミクロン、好ましくは約50〜200ミクロン、より好ましくは約50〜120ミクロンの範囲にある。粒度は、当該技術分野において周知の任意の方法、例えば、周知の利用可能な装置(例えば、マルバーン・マスターサイザー(MALVERN Mastersizer)2000)を用いたレーザー回折によって測定することができる。粉末表面のPUFA含有相の量(「表面油分」)は0.5%(w/w)未満であり、好ましくは0.2%(w/w)以下の範囲にある。表面油分は、適切な溶媒、すなわち有機溶媒、例えばシクロヘキサンで洗い流すことができる油状相の量を粉末の重量に対する百分率で表したものと定義される。表面油分含量の低さは、PUFA粉末の官能性能(sensory performance)にとって重要な品質パラメータである。通常、表面油分含量は、粉末の粒度と逆相関関係にある。意外なことに、本発明の粉末の表面油分は、たとえさらなる洗浄ステップを行わなくても、粒度から予期されるものよりも少なくなっている。
【0014】
本発明の粉末組成物中におけるPUFAの量は広範囲に変化させることができ、通常は、最終用途に依存するであろう。これは、乾燥粉末の約5〜約55重量%、好ましくは約5〜約25%、より好ましくは約7.5〜約20重量%の間で変化させることができる。乾燥粉末の約5〜約55重量%、好ましくは約5〜約25%、より好ましくは約7.5〜約20重量%。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲において用いられる「変性多糖」は、水中油型の状況(oil in water context)下において良好な乳化剤となるように周知の(酵素または熱反応を含む、化学的または物理的な)方法によって変性された、油を水性媒体中に乳化させて微細に分散させる多糖を指す。したがって、変性多糖は、親水性(水への親和性)部位および親油性(分散相への親和性)部位を備える化学構造を有するように変性されている。これにより、分散された油相中および連続水相中に溶解することが可能となる。好ましくは、変性多糖は、構造の一部として長い炭化水素鎖(好ましくはC5〜18)を有し、好適な乳化または均質化条件下において、所望の平均寸法(例えば200〜300nm)の油滴を有する安定な乳化液を形成させることができる。このような条件には、常圧下における乳化(例えばローター−ステーター処理による)に加えて高圧すなわち約750/50psi/bar〜約14500/1000psi/barの圧力下における均質化が包含される。約1450/100psi/bar〜約5800/400psi/barの範囲の高圧が好ましい。
【0016】
変性多糖は市販されている周知の材料であるが、従来法を用いて当業者が調製してもよい。好ましい変性多糖は変性デンプンである。デンプンは親水性であり、したがって、乳化力を持たない。しかしながら、変性デンプンは、周知の化学的方法により疎水性部分で置換されたデンプンでできている。例えばデンプンを、炭化水素鎖で置換された無水コハク酸等の環式ジカルボン酸無水物で処理してもよい(変性デンプン:特性と用途(Modified Starches:Properties and Uses)、O・B・ビュルツブルグ(O.B.Wurzburg)編、CRCプレス・インコーポレーテッド(CRC Press,Inc.)、フロリダ州ボカ・ラトン(Boca Raton,Florida)(1991年)参照)。本発明の特に好ましい変性デンプンは、以下の構造、
【化1】


(式中、Stはデンプンであり、Rはアルキレン基であり、R’は疎水性基である)で表されるものである。
【0017】
好ましくは、アルキレン基は、ジメチレンまたはトリメチレン等の低級アルキレン基である。R’は、好ましくは、C〜C18のアルキルまたはアルケニル基であってもよい。好ましい式Iの化合物は、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムである。これは、供給業者の中でも特に、ナショナル・スターチ・アンド・ケミカル・カンパニー(National Starch and Chemical Company)、ニュージャージー州ブリッジウオーター(Bridgewater,N.J.)からカプセル(Capsul)(登録商標)として入手可能である。この化合物および一般的な式Iの化合物の作製は当該技術分野において周知である(変性デンプン:特性と用途、O・B・ビュルツブルグ、CRCプレス・インコーポレーテッド、フロリダ州ボカ・ラトン(1991年)参照)。
【0018】
本発明の粉末組成物は、市販の設備を用いて、当該技術分野においてそれぞれ周知のステップを含む方法によって製造することができる。好ましい実施態様においては、この組成物は、
(a)変性多糖溶液の水溶液を調製することと、
(b)この溶液にPUFAを乳化させることによって、所望の寸法の油滴を有する乳化液を得ることと、
(c)この乳化液を乾燥させることによって、小滴の平均径が約50〜500ミクロンの粉末を得ることと、
(d)場合により、残留している表面油分を適切な方法によって除去することと、を含む方法によって調製される。
【0019】
以下に示す実施例において具体的な手順を説明する。しかし、パラメータはいずれも決定的な要素ではない。これらは当業者に周知の広い範囲内で変化させることができ、例えば、この粉末組成物を大量に調製する場合にも適応させることができる。
【0020】
ステップ(a)は、振盪または例えばディスクミキサー(disc micer)を用いた撹拌によって、変性多糖を妥当な時間で確実に速やかに水中に溶解させる任意の妥当な温度(通常は100℃未満、好ましくは70〜80℃)で実施することができる。ステップ(a)は、好ましくは、アスコルビン酸ナトリウム等の適切な酸化防止剤および/または安定剤としてのサッカロース等の低分子量炭水化物の共溶液(co−solution)を含むことが必要である。
【0021】
乳化ステップ(b)は、所望の油滴寸法を達成することを目的として、連続撹拌を好都合な速度および圧力で、好ましい場合は1回または数回の工程(passage)に分けて行うことによって実施される。1回の工程に要する時間は決定的な要素ではなく、乳化液の粘度、バッチの量、流量、および圧力を含む系のパラメータに依存することとなり、所望の結果を得るために当業者が変化させてもよい。乳化ステップは、検査によって所望の寸法の小滴が得られるまで継続するべきである。均質化温度は、好ましくは70℃未満である。
【0022】
ステップ(c)によれば、この乳化液は、次いで、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、微小球体形成等の周知の技法によって粉末に変換されるが、表面油分含量に関し最良の結果が得られる噴霧乾燥が好ましい。プロセスパラメータは、多糖の母材に埋め込まれているPUFAの粉末組成物の粉末粒子が所望の平均径および表面油分含量を有するように、当業者によって選択される。噴霧乾燥の場合は、所望により不活性雰囲気中で実施され、通常、入口温度は130〜220℃、好ましくは200℃未満の範囲にあり、出口温度は100℃未満、好ましくは80〜90℃の範囲にある。
【0023】
もし、既に低い表面油分含量をより一層低下させるかまたは依然として残留している残留表面油分を完全に除去することが所望される場合、当該技術分野において周知の任意の適切な方法、例えば、乾燥またはほぼ乾燥した粉末を油を溶解する溶媒(例えばシクロヘキサン)または溶媒混合物で洗浄し、そして溶媒が完全に除去されるまで乾燥することに代表されるさらなるステップ(d)を追加してもよい。
【0024】
粉末の流動性を改善するために、所望により、好適な、したがって当業者に周知の物質、例えばケイ酸を使用することができる。小滴を、所望により例えば流動床において、異なる材料で被覆してもよい。
【0025】
本発明の粉末組成物は、栄養価を高めることを目的として、それ自体周知の方法により食品もしくは食品成分に添加するかまたはその製造に使用することができる。これらは、ほとんどすべての種類の食品、すなわち人間および動物用の食品に添加するかまたはその製造に使用することができ、また、製造過程における任意の好適な時点、すなわち、出発成分、ほぼ最終に近い生成物、またはその間のどこかに、粉末としてまたは溶液/乳化液の形態で、好ましくは均質な分布が達成される方法で添加することができる。人間用の食品が好ましく、これには成人だけでなく子供および乳児用の食品が含まれる。本発明の組成物は微細な粉末構造を有するので、それ自体が粉末構造を有する、粉乳、ココアパウダー、穀粉類およびミックス粉(例えば、パン、ケーキ、およびペストリー用)または必要な原材料が配合された製パン・製菓用ミックス粉(complete baking mixtures))、粉末プディングの素などの食品および食品成分の栄養価を高めるために添加される。これらは特に、ダイエット用製品の調製および栄養強化に有用である。最後に大切なこととして、これらはあらゆる種類の飲料および濃縮飲料、例えば、乳製品、乳飲料、ヨーグルト、果汁および野菜汁のジュースならびにその濃縮物、シロップ、ミネラルウオーター、ならびにアルコール飲料に添加することができる。
【0026】
本発明の組成物が添加された食品および食品成分ならびにそれによって高められたその栄養価も本発明の態様である。
【0027】
食品またはその成分に添加される粉末組成物の量(重量%)も同様に広範囲に変化させてもよく、一方では食品の種類に依存し、他方ではその効果すなわち組成物のPUFA含量に依存するであろう。この量は、各個人の要求を満たすように、栄養士(dietican)の助言を反映させるべきである。
【0028】
以下の実施例により本発明を例示するが、これらに限定されるものではない。
【0029】
実施例1
食用変性デンプンであるオクテニルコハク酸デンプンナトリウム(カプセル(登録商標))178g、サッカロース80g、およびアスコルビン酸ナトリウム(水相中の酸化防止剤として)18gを1000mlの二重壁容器に装入した。脱イオン水150mlを加え、この混合物をミキサーディスク(micer disc)を用いて500回転/分(rpm)で撹拌しながら約75℃で溶液にした。この溶液を母材と呼ぶ。その後、ROPUFA(登録商標)‘30’n−3フードオイル(‘30’n−3 Food Oil)(α−トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、およびローズマリー抽出物で安定化されたトリグリセリド形態にあるn−3PUFAを最小で30%[少なくともDHA、EPA、およびDPAを25%]含む精製魚油ブレンド)120gをこの母材中に乳化し、10分間撹拌した。乳化および撹拌を行う間、ミキサーディスクを4800rpmで動作させた。この乳化の後、乳化液の内相の平均粒度は200nmとなった(レーザー回折で測定)。この乳化液を100gのイオン交換水で希釈して粘度を調整し、温度を50℃に維持した。
【0030】
この乳化液を、以下の条件下において、実験室用スプレードライヤー(ナイロ(Niro)からのモビリー・マイナー(Mobilie Minor)(商標)2000 D1型)で噴霧乾燥した:
入口温度:約200℃;出口温度:83〜89℃;空気圧:4bar;噴霧流量:約2.6kg/時。
収量:乾燥粉末341g。流動性を改善するために最終生成物をケイ酸1%とブレンドした。
【0031】
DHA/EPA/DPA含量12.1%(DHA:5.9%、EPA:5.4、DPA:0.8%)、残留水分含量1.8%、過酸化物価1.2mEq/kg、表面油分含量0.2%±0.1%の白色〜やや黄色がかった微粉末を得た。
【0032】
表面油分含量の測定:
約5gの量の試料を正確に秤り、これを50mlの目盛付き遠心分離管に装入する。これをシクロヘキサンで40ミリリットルに希釈する。試料およびシクロヘキサンを3分間振盪する。この混合物をワットマン(Whatman)No.40の濾紙で濾過し、固形物をすべて取り除く。50mlの丸底フラスコを105℃のオーブンで1時間乾燥させた後、室温になるまでデシケータに入れておくことが必要である。丸底フラスコを正確に小数第3位まで秤る。25mlのピペットを使って濾液を25ml取り出し、風袋を測定した清浄な50mlの丸底フラスコに移す。この丸底フラスコおよび試料をロータリーエバポレータに取り付け、蒸発乾燥させる。シクロヘキサンを除去した後、丸底フラスコを残留した油分と一緒に105℃のオーブンに1時間入れる。丸底フラスコをオーブンから取り出し、デシケータに入れる。秤量する前に丸底フラスコを室温に冷ます。丸底フラスコを秤量して、抽出された油分の量を決定する。
計算:
【数1】

【0033】
実施例2
実施例1と同様の方法で乳化液を調製することができる。ROPUFA(登録商標)‘30’n−3フードオイルに替えて、dl−α−トコフェロールで安定化されたトリグリセリド形態にあるn−3PUFAを全体で最小で27%(w/w)(少なくともDHAを21%(w/w))含む精製魚油であるROPUFA(登録商標)‘30’n−3 INFオイル(‘30’n−3 INF Oil)を用いる。
【0034】
この乳化液を実施例1に記載したように噴霧乾燥する。
【0035】
このような生成物のDHA含量は約6.3%(w/w)であり、n−3PUFA全体の含量は8.1%(w/w)である。
【0036】
実施例3
実施例1と同様の方法で乳化液を調製することができる。ROPUFA(登録商標)‘30’n−3フードオイルに替えて、dl−α−トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、およびレシチンで安定化されたトリグリセリドの形態にあるn−3PUFAを全体で最小で27%(w/w)(少なくともEPAを13.5%(w/w)およびDHAを8%(w/w))含む精製魚油であるROPUFA(登録商標)‘30’n−3 EPAオイル(‘30’n−3 EPA Oil)を用いる。
【0037】
この乳化液を実施例1に記載したように噴霧乾燥する。
【0038】
この種の生成物のEPA含量は約4.0%(w/w)であり、n−3PUFA全体の含量は8.1%(w/w)である。
【0039】
実施例4
実施例1と同様の方法で乳化液を調製することができる。ROPUFA(登録商標)‘30’n−3フードオイルに替えて、ローズマリー抽出物、パルミチン酸アスコルビル、ミックストコフェロール、およびクエン酸で安定化されたトリグリセリドの形態にあるn−3PUFAを全体で最小で72%(エチルエステルとしての重量)(少なくともEPAを38%(w/w)およびDHAを20%(w/w))含む精製された魚油のエチルエステルであるROPUFA(登録商標)‘75’n−3 EEオイル(‘75’n−3 EE Oil)を用いる。
【0040】
この乳化液を実施例1に記載したように噴霧乾燥する。
【0041】
この種の生成物のEPA含量は約11.4%(w/w)、DHAは約6.0%(w/w)であり、n−3PUFA全体の含量は21.6%(w/w)である。
【0042】
実施例5
実施例1と同様の方法で乳化液を調製することができる。ROPUFA(登録商標)‘30’n−3フードオイルに替えて、dl−α−トコフェロールおよびパルミチン酸アスコルビルで安定化されたトリグリセリドの形態にあるγ−リノレン酸を最小で9%含む精製月見草油であるROPUFA(登録商標)‘10’n−6オイル(‘10’n−6 Oil)を用いる。
【0043】
この乳化液を実施例1に記載したように噴霧乾燥する。
【0044】
このような生成物のγ−リノレン酸含量は約2.7%(w/w)である。
【0045】
実施例6
実施例1と同様の方法で乳化液を調製することができる。ROPUFA(登録商標)‘30’n−3フードオイルに替えて、dl−α−トコフェロールおよびパルミチン酸アスコルビルで安定化されたトリグリセリドの形態にあるγ−リノレン酸を最小で23%含む精製ルリヂサ油であるROPUFA(登録商標)‘25’n−6オイル(‘25’n−6 Oil)を用いる。
【0046】
この乳化液を実施例1に記載したように噴霧乾燥する。
【0047】
この種の生成物のγ−リノレン酸含量は約6.9%(w/w)である。
【0048】
実施例7
実施例1と同様の方法で乳化液を調製することができる。ROPUFA(登録商標)‘30’n−3フードオイルに替えて、ミックストコフェロールで安定化されたトリグリセリドの形態にあるARAを最小で40%(w/w)含む精製された微生物由来のアラキドン酸(ARA)油を用いる。
【0049】
この乳化液を実施例1に記載したように噴霧乾燥する。
【0050】
このような生成物のアラキドン酸含量は約12.0%(w/w)である。
【0051】
実施例8
実施例1と同様の方法で乳化液を調製することができる。ROPUFA(登録商標)‘30’n−3フードオイルに替えて、トリグリセリドの形態にあるn−9(Cl8:1)を最小で75%含む精製オリーブ油を用いる。
【0052】
この乳化液を実施例1に記載したように噴霧乾燥する。
【0053】
このような生成物のオレイン酸含量は約22.5%である。
【0054】
適用例
(1)チョコレート風味の乳飲料(Chocolate milk)(強化量;PUFA乾燥粉末0.2%)
カカオ粉末15g、砂糖35g、および実施例1に準ずるPUFA乾燥粉末1.1gを十分に混合し、乳500mlに溶解した。このチョコレート風味の乳飲料を官能試験(以下参照)で試験し、PUFAを含まない参照試料と比較した。PUFA乾燥粉末を3、6、9、および12ヶ月間保管した後、新たにチョコレート風味の乳飲料を作製して官能試験を繰り返した。PUFAを含まない参照試料と官能的に有意な差は認められず、12ヶ月後も生臭い味や臭いは感じられなかった。
【0055】
(2)プディング(強化量:PUFA乾燥粉末0.4%)
砂糖121.25g、コーンスターチ(ウルトラ−テックス(Ultra−Tex)2、ナショナル・スターチ(National Starch))19.35g、ゲル化剤(フラノゲン(Flanogen)ADG56、デグサ(Degussa))3.45g粉末バニラ香料(バニラ・フレーバー(Vanilla Flavour)750 16−32、ジボダン−ルール・フレーバーズ(Givaudan−Roure Flavours))0.75g、ベータ−カロテン1%CWS(DSMニュートリショナル・プロダクツ(Nutritional Products))0.6g、および実施例1に準ずるPUFA乾燥粉末4.60gを適切なミキサーで10分間十分に混合した。この粉末プディングの素150gを冷乳1リットルに加えて混合した。この溶液を加熱し、絶えず撹拌しながら1分間沸騰させた。この高温のプディングを皿に満たした。このバニラプディングを1時間冷ました後、5℃で保存した。この試料を官能試験(以下参照)で試験し、PUFAを含まない参照試料と比較した。PUFA乾燥粉末を3、6、9、および12ヶ月間保管した後、新たにプディングを作製して官能試験を繰り返した。PUFAを含まない参照試料と官能的に有意な差は認められず、12ヶ月後も生臭い味や臭いは感じられなかった。
【0056】
(3)パン(強化量:PUFA乾燥粉末1%)
酵母50gを水200gに溶解した。小麦粉(タイプ(Type)500)1000g、水480g、塩20g、酵母溶液、および実施例1に準ずるPUFA乾燥粉末16gを一緒に混ぜてパン生地を形成した。生地を発酵させた後、再び処理を行い、分割し、成形してひと塊(loaf)にした。焼成前に塊の表面に刷毛で水を塗った。この試料を官能試験(以下参照)で試験し、PUFAを含まない参照試料と比較した。PUFA乾燥粉末を3、6、9、および12ヶ月間保管した後、新たにパンを作製して官能試験を繰り返した。PUFAを含まない参照試料と官能的に有意な差は認められず、12ヶ月後も生臭い味や臭い感じられなかった。
【0057】
(4)全乳(強化量:PUFA乾燥粉末0.3%)
全乳粉65gおよび実施例1に準ずるPUFA乾燥粉末1.5gを混合し、水500mlに溶解した。この試料を官能試験(以下参照)で試験し、PUFAを含まない参照試料と比較した。PUFA乾燥粉末を3、6、9、および12ヶ月間保管した後、新たに強化全乳を作製して官能試験を繰り返した。PUFAを含まない参照試料と官能的に有意な差は認められず、12ヶ月後も生臭い味や臭いは感じられなかった。
【0058】
官能特性試験
全試料について、訓練を受けた試食パネルによる評価を実施した。生臭さという観点の間隔尺度を用いた記述分析によって官能評価を実施した。間隔尺度は、生臭さが感じられない1から極めて生臭い7までの7段階からなる。有意差があるかどうかを確認するために分散分析(ANOVA)を実施した。最小有意差検定(L.S.D.)(有意水準5%)による多重比較を実施した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性多糖の母材に埋め込まれている少なくとも1種の長鎖(LC)多価不飽和脂肪酸(PUFA)を含む小滴を含む平均粒径が約50〜500μmの粉末組成物であって、前記粒子の表面油分含量が0.5%(w/w)未満であることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記粒子の平均径が、約50〜150ミクロンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多糖が、デンプンである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記変性多糖が、式、
【化1】


(式中、Stはデンプンであり、Rはアルキレン基であり、R’は疎水性基である)で表される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記変性多糖が、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記LC−PUFAが、n−3および/またはn−6系である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記LC−PUFAが、トリグリセリド形態にあるEPA、DPA、およびDHAの混合物である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記LC−PUFA混合物が、魚油から得られた濃縮物の形態にある、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記LC−PUFAが、安定化および/または脱臭された形態にある、請求項6〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記LC−PUFAが、α−トコフェロールで安定化されている、請求項6〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記LC−PUFAが、α−トコフェロールまたはトコフェロールを他の酸化防止剤および/もしくは脱臭剤と合わせた混合物で安定化されている、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記LC−PUFAが、ROPUFA(登録商標)の商標名で入手可能な組成物である、請求項6〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、当該技術分野において周知のステップを含む、方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、
(a)変性多糖溶液の水溶液を調製することと、
(b)この溶液に少なくとも1種のLC−PUFAを乳化させることによって、所望の寸法の油滴を有する乳化液を得ることと、
(c)前記乳化液を乾燥させることによって、平均粒径が約50〜500ミクロンの粉末を得ることと、
(d)場合により、残留している表面油分を適切な方法によって除去することと、を含む方法。
【請求項15】
前記乳化液が、噴霧乾燥される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法によって得ることができる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも1種のLC−PUFAを添加することにより食品または食品成分の栄養価を高める方法であって、
前記食品または食品成分に請求項1〜12または16のいずれか一項に記載の組成物を添加することを特徴とする、方法。
【請求項18】
前記食品または食品成分が、人間の食用である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1種のLC−PUFAを添加することによって栄養価が高められた食品または食品成分であって、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の粉末組成物を含むことを特徴とする、食品または食品成分。
【請求項20】
少なくとも1種のLC−PUFAを添加することによって栄養価が高められた食品または食品成分であって、
請求項14または15に記載の方法によって得ることができる組成物を含むことを特徴とする、食品または食品成分。

【公表番号】特表2008−528774(P2008−528774A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553499(P2007−553499)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000543
【国際公開番号】WO2006/081958
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】