説明

粉砕装置とそれを用いた粉砕方法

【課題】被粉砕物の大きさによらず、消費電力を節約するとともに、被粉砕物を安定して効率良く粉砕することが可能な粉砕装置とそれを用いた粉砕方法を提供する。
【解決手段】粉砕装置1は、ケーシング6及び支持台7からなる本体部3とモータ4とがベースフレーム2上に設置され、本体部3の背面から突出する駆動軸5とモータ4の出力軸にはベルト4aが巻回され、駆動軸5は支持具10,10によって回転可能に支持され、本体部3前面の本体カバー8には供給口が設けられ、ケーシング6の側面には排出口14bが設けられており、ケーシング6の内部には、側面に多数の空気孔を有し,背面の貫通孔15cに駆動軸5が回転自在に挿通されるスクリーン15が設置され、このスクリーン15は、駆動軸5を中心として放射状に設置される羽根板21と,この羽根板21の一端に着脱自在に取り付けられる切刃24とを内蔵している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質バイオマス、食品、医薬品、化粧品、樹脂、無機物質などを粉砕する粉砕装置とそれを用いた粉砕方法に係り、特に、消費電力を節約して被粉砕物を効率よく粉砕することが可能な粉砕装置とそれを用いた粉砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーム果実の種から核油を製造する過程で発生する残渣は良質なバイオ燃料として注目されている。このような木質バイオマスは、燃料化の際に粉砕装置で所定の大きさに粉砕されるが、一般に、その効率は粉砕装置の性能や粉砕方法に大きく左右される。そのため、近年、粉砕装置や粉砕方法について研究や開発が進められている。そして、それらに関し、既に幾つかの発明や考案が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「破砕物製造装置」という名称で、食品、医薬品、化粧品、樹脂、無機物質などの粉砕物を製造する装置に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明である粉末製造装置は、容器と、この容器の第1の導入口及び第1の排出口にそれぞれ吐出口及び吸引口が管路によって接続され,送風機能を有する粉砕機と、容器内に加熱された空気を供給する加熱空気供給機とからなる。そして、粉砕機は吸引口と吐出口が設けられたケーシングと、このケーシング内に配置された羽根車と、スクリーンとを備え、吸引口から流体とともに原料を吸引し、かつ、粉砕された原料を流体とともに吐出口から送出する構造となっている。
上記構造の粉砕機においては、羽根車が回転して生じた風力により、吸引口からケーシング内に吸引された原料が、スクリーンの微細孔の内壁との衝突やスクリーンで囲まれた空間内での羽根車による打撃や原料同士の衝突によって粉砕されるという作用を有する。また、原料がスクリーンに沿って旋回しながら削られるという作用を有する。さらに、粉砕機によって粉砕され、容器内に送出された原料の一部は、再び粉砕機に戻されて粉砕されるという作用を有する。このように、原料が何度も粉砕されて、その表面積が拡大するため、原料に含まれる水分は急速に蒸発を開始する。従って、この粉末製造装置によれば、含水率の高い原料でも効率良く乾燥することができる。
【0004】
次に、特許文献2には、「木質燃料とその製造方法」という名称で、椰子殻や木質廃材・チップを石炭代替燃料として有効利用する技術に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された2段分級式回転セパレータ付きの竪型粉砕機は、ケーシング内の下部に配設され,電動モータにより回転駆動される粉砕テーブルと、この粉砕テーブル上の被粉砕物を加圧して粉砕する粉砕ローラと、粉砕テーブルと同軸上でその軸心回りに回転可能にケーシング内で粉砕テーブルの上方に設置され,その下方がコーンで覆われた2段分級式セパレータと、粉砕テーブルに近接するようにコーンの下方先端部に設置される供給管と、ケーシングの下部内周面からケーシングの上方に向かって旋回流を形成可能にガスが噴出されるノズルとを備えている。
上記構造の竪型粉砕機においては、供給管から粉砕テーブルのほぼ中央部に供給された被粉砕物が、回転する粉砕テーブルの上面と,粉砕ローラとの間で挟圧されて粉砕されるという作用を有する。また、粉砕された粉体は粉砕テーブルの外周下方より噴出されるガス流に伴って上方に旋回しながら吹き上げられ、2段分級式回転セパレータによって分級され、微粉成分がケーシングの外部へと排出されるという作用を有する。従って、この竪型粉砕機によれば、密度が小さくて浮遊し易い椰子殻等を完全燃焼可能なレベルまで、連続して効率的に乾燥・粉砕することができる。
【0005】
特許文献3には、「繊維含有材料の縦型粗粉砕装置及びその刃物構造」という名称で、古紙その他の繊維含有材料を物理的に切り刻むために用いられる装置とその刃物構造に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された発明である縦型粗粉砕装置は、内側に固定刃が設置された有底円筒ケーシングと、この有底円筒ケーシングの内壁との間にクリアランスを設けて周設された多孔スクリーンと、有底円筒ケーシングの軸中心に軸装され,固定刃と協働して繊維含有材料を切断又は破断する回転刃と、有底円筒ケーシング内の気体を吸引する気体吸引部とを備えている。そして、回転刃が、回転により有底円筒ケーシング内で上向きの気流を生じるように回転刃物台に取り付けられたことを特徴とする。
上記構造の縦型粗粉砕装置においては、回転刃の回転に伴ってケーシング内に生じる上向きの気流及び被粉砕物の流動に抗して、より大きな吸引気流を下方に生じさせることで、被粉砕物が一又は多方向から随時排出及び回収されるという作用を有する。これにより、均一な粉砕処理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4260876号公報
【特許文献2】特開2003−268394号公報
【特許文献3】特許第3051981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術である特許文献1乃至特許文献3に開示された発明は、被粉砕物の大きさ(粒径)によって粉砕装置の消費電力や粉砕能力が変動するという課題があった。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、被粉砕物の大きさ(粒径)によらず、消費電力を節約するとともに、被粉砕物を安定して効率良く粉砕することが可能な粉砕装置とそれを用いた粉砕方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である粉砕装置は、中央に駆動軸が挿設された円板と、この円板上に駆動軸を中心として放射状に立設される略矩形状の複数の羽根板と、この羽根板の上部に円板に対して同心配置されるとともに,駆動軸が中央に挿設される円環状の枠体と、この枠体と円板の上面に駆動軸を中心として放射状に設置されて羽根板を枠体及び円板にそれぞれ固定する複数の固定具と、被粉砕物の排出口が側面に設けられるとともに,円板と羽根板と枠体と固定具を回転可能に収納し,前面が開口した本体部と、この本体部の背面に設けられた貫通孔から突出する駆動軸を回転駆動する駆動手段と、被粉砕物が投入される供給口を有し,本体部の前面に取り付けられる本体カバーと、側面に被粉砕物を篩い分けるための多数の空気孔が設けられ,背面に駆動軸が回転自在に挿通される貫通孔が形成され,円板と羽根板と枠体と固定具の背面及び側面を覆うとともに,本体部内に固設されるスクリーンと、スクリーンに向かって突出するとともに,スクリーンとの間隔を変更可能に,羽根板の一端に着脱自在に取り付けられる切刃と、を備え、枠体は本体部の前面側に配置されたことを特徴とするものである。
このような構造の粉砕装置においては、回転する切刃及び固定具によって被粉砕物が切断されるという作用を有する。また、被粉砕物が投入された空間は羽根板によって複数の粉砕室に仕切られ、各粉砕室は被粉砕物を所定の量ずつ保持した状態で混合・攪拌させるとともに、互いにぶつかり合わせ、こすれ合わせることによって被粉砕物を粉砕するという作用を有する。さらに、羽根板の回転により、本体部前面の供給口から誘引された空気は、スクリーンの空気孔を通って排出口から本体部の外へ排出され、粉砕室内で粉砕された被粉砕物も同時に排出口から強制的に本体部の外へ排出されるという作用を有する。加えて、切刃とスクリーンとの間に存在する被粉砕物は、羽根板とともに回転する切刃によって、スクリーンの空気孔を通過可能な大きさになるまで切断されるとともに,細かく粉砕され、さらに磨砕されるという作用を有する。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の粉砕装置において、羽根板は枠体及び円板にそれぞれ着脱可能に取り付けられ、固定具は羽根板の端部の両側に設置され、羽根板を着脱する際に端部を案内することを特徴とするものである。
このような構造の粉砕装置においては、固定具に沿って摺動させることにより羽根板の取り付け及び取り外しが容易に行われる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の粉砕装置において、切刃は、平面視してスクリーンに向かって突出する方向に長く形成される貫通孔を有し、この貫通孔に挿通されるボルトによって羽根板に締結されることを特徴とするものである。
このような構造の粉砕装置においては、ボルトによる締結を緩めることで、切刃が羽根板の長さ方向に沿って移動可能な状態となる。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の粉砕装置において、切刃に設けられた貫通孔に着脱自在に嵌合設置されるとともに,羽根板の一端にボルトによって締結されるボルト取付具を備えたことを特徴とするものである。
このような構造の粉砕装置においては、ボルトが挿通される貫通孔の位置が異なるボルト取付具を複数セット用意しておくことによれば、このボルト取付具を交換することで羽根板からの切刃の突出長さが変わるという作用を有する。
【0013】
請求項5記載の発明である粉砕方法は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の粉砕装置において、切刃とスクリーンとの間隔を被粉砕物の平均粒径に応じて調節することを特徴とするものである。
このような粉砕方法によれば、切刃とスクリーンの隙間にある被粉砕物が切刃の回転を妨げる抵抗となり難いため、駆動軸を回転駆動する駆動手段にかかる負荷が低減されるという作用を有する。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項5に記載の粉砕方法において、切刃とスクリーンとの間隔を被粉砕物の平均粒径の2倍乃至6倍となるように調節することを特徴とするものである。
このような粉砕方法によれば、請求項5に記載の発明の作用がより効率的に発揮される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の請求項1記載の粉砕装置によれば、切刃とスクリーンの間隔を容易に調節することができる。
【0016】
本発明の請求項2記載の粉砕装置によれば、羽根板の交換作業が容易なため、装置の保守作業に要する労力と費用を軽減することが可能である。
【0017】
本発明の請求項3記載の粉砕装置においては、羽根板からの切刃の突出長さを変更することにより、切刃とスクリーンの間隔を容易に調節することが可能である。
【0018】
本発明の請求項4記載の粉砕装置においては、請求項3に記載の発明に比べて切刃の固定状態をより確実なものとすることができる。
【0019】
本発明の請求項5記載の粉砕方法によれば、粉砕装置を稼働する消費電力を節約することができる。また、切刃の回転エネルギーを、スクリーンを摩耗させることなどに無駄に消費させることなく、被粉砕物を粉砕及び磨砕させるためのエネルギーとして有効に利用することができる。
【0020】
本発明の請求項6記載の粉砕方法によれば、請求項5に記載の発明よりもさらに、粉砕装置を稼働する消費電力を節約し、被粉砕物を効率良く粉砕することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は本発明の実施の形態に係る粉砕装置の実施例の正面図であり、(b)は(a)のX−X線矢視断面図である。
【図2】(a)及び(b)は本実施例の粉砕装置における粉砕部の正面図及び外観斜視図である。
【図3】(a)は本実施例の粉砕装置における羽根板及び切刃の部分平面図であり、(b)及び(c)は本実施例の切刃の変形例を示す平面図であり、(d)は(c)に示したボルト取付具の平面図である。
【図4】(a)は粉砕部の回転時におけるスクリーン内のPKSの挙動を模式的に示した図であり、(b)は(a)の部分拡大図である。
【図5】(a)及び(b)はそれぞれモータの電流値及び滞留時間と、切刃とスクリーンの間隔との関係を示す実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
パーム油を製造する過程においては、核殻(Palm Kernel Shell:以下、PKSという。)や空果房(Empty Fruits Bunches)と呼ばれる残渣が大量に排出される。これらの残渣は、乾燥時の発熱量が大きく、塩素の含有量も少ないため、バイオ燃料として有望である。以下、本発明の実施の形態に係る粉砕装置とそれを用いた粉砕方法の実施例について、PKSを粉砕する場合を例にとって説明する。
【実施例】
【0023】
まず、本実施例の粉砕装置の構造について図1乃至図3を用いて説明する。
図1(a)は本発明の実施の形態に係る粉砕装置1の実施例の正面図であり、図1(b)は図1(a)のX−X線矢視断面図である。図2(a)及び図2(b)は本実施例の粉砕装置1における粉砕部16の正面図及び外観斜視図である。また、図3(a)は本実施例の粉砕装置1における羽根板21及び切刃24の部分平面図であり、図3(b)及び図3(c)は本実施例の切刃24の変形例を示す平面図であり、図3(d)は図3(c)に示したボルト取付具17の平面図である。
【0024】
図1(a)及び図1(b)に示すように、本実施例の粉砕装置1は、背面から駆動軸5が突出した本体部3と、駆動軸5の駆動手段であるモータ4がベースフレーム2上に設置され、モータ4の出力軸(図示せず)に取り付けられたプーリ(図示せず)と駆動軸5に取り付けられたプーリ11にわたってベルト4aが巻回された構造となっている。本体部3はケーシング6と支持台7とからなり、本体部3の前面には本体カバー8が複数のボルト9aを用いて着脱可能に取り付けられている。支持台7の上部には軸受け(図示せず)が内蔵された支持具10,10が設置され、本体部3の背面から突出する駆動軸5の後部分は支持具10,10によって回転可能に支持されている。また、本体カバー8の略中央に設けられた貫通孔8aから突出する駆動軸5の前端は、ボルト9bを用いて本体カバー8に取り付けられた軸受12によって回転可能に支持されている。すなわち、駆動軸5は支持具10,10及び軸受12によって両持ち状態で支持されている。
【0025】
本体カバー8に形成された供給口にはホッパー13が取り付けられており、ホッパー13の下部に設けられた通気口8bには図示しないダクトを介して原料押込用送風機(図示せず)が接続されている。また、ケーシング6の下部側面に設けられた通気口14aには図示しないダクトを介して原料拡散用送風機(図示せず)が接続されている。すなわち、ホッパー13の上部から投入されたPKSは、原料押込用送風機が発生させる気流によって本体カバー8の供給口からケーシング6内へ強制的に押し込まれるとともに、粉砕後にケーシング6の底に溜まったPKSは、原料拡散用送風機が発生させる気流によって拡散される構造となっている。また、通気口14aと反対のケーシング6の側面には排出口14bが設けられている。そして、排出口14bには図示しないダクトを介して袋状の包材(フレキシブルコンテナ)が接続されている。
【0026】
ケーシング6にはスクリーン15及び粉砕部16が内蔵されている。スクリーン15は多数の空気孔が設けられた網目状の側壁15a及び後壁15bとからなり、側壁15aに取り付けられた複数の取付具18によってケーシング6の内壁6aに固定されている。また、スクリーン15の後壁15bの略中央部には駆動軸5を挿通するための貫通孔15cが設けられている。そして、スクリーン15の内部には略円柱形状をなす粉砕部16が同心状に配置されている。
粉砕部16は背面及び前面に円板19及び枠体20a,20bをそれぞれ備えており、円板19と枠体20a,20bとで挟まれる空間は略矩形状をなす羽根板21で仕切られることにより、前面及び側面が開放されるとともに正面視略扇形状をなす複数の粉砕室22(図2(a)参照)が形成されている。また、枠体20a,20bは駆動軸5を中心として同心円状に配置されるとともに、羽根板21の端部の両側に設置された固定具23a,23a(図2(a)参照)によって互いに連結されている。さらに、羽根板21には側面視L字状をなす切刃24が取り付けられている。なお、円板19と駆動軸5のキー溝(図示せず)にキー(図示せず)を差し込むことにより、円板19は駆動軸5に対して固定されている。従って、モータ4に駆動されて駆動軸5が回転する場合には、粉砕部16は駆動軸5と一体となって回転する。
【0027】
次に、粉砕部16の構造について図2及び図3を用いて詳しく説明する。
図2(a)及び図2(b)に示すように、粉砕部16の背面に設置された円板19の中央にはボス部25aが形成されている。従って、駆動軸5はボス部25aに設けられた貫通孔26aに挿通されるとともに、枠体20bのボス部25bに設けられた貫通孔26bに挿通される。また、円板19の羽根板21が当接する面にはボス部25aを中心として放射状に複数の固定具23bが取り付けられており、羽根板21の端部は一対の固定具23b,23bによって両側から固定されている。さらに、枠体20a,20bの羽根板21が当接する面にはボス部25bを中心として複数の固定具23aが放射状に取り付けられており、羽根板21の端部は一対の固定具23a,23aによって両側から固定されている。なお、固定具23a,23bはともに角柱状をなしており、円板19及び枠体20a,20bに対してそれぞれ溶接されている。また、羽根板21はボルト9dを用いて固定具23a,23bに固定され、切刃24はボルト9cを用いて粉砕部16の側面から一部が突出するように、羽根板21に固定されている。すなわち、羽根板21は、ボルト9dを用いて円板19及び枠体20a,20bに着脱可能に取り付けられている。そして、ボルト9dを緩めると、羽根板21は矢印Aで示す方向に簡単に引き抜くことができる。このとき、固定具23a,23a及び固定具23b、23bは羽根板21のガイド部材として機能する。
【0028】
図3(a)に示すように、切刃24は羽根板21の一端から、その一部が突出するようにボルト9cを用いて着脱自在に取り付けられている。そして、本実施例の粉砕装置1においては、長さLの異なる複数種類の切刃24を備えており、切刃24を交換することによって羽根板21の一端から突出する切刃長さLを変更可能となっている。なお、長さLの異なる複数種類の切刃24を用いる代わりに、例えば、図3(b)に示すように、切刃24が、平面視して長さLの方向に長い、長孔形状の貫通孔24aを有する構造としても良い。このような構造によれば、ボルト9cによる締結を緩めることで、切刃24が羽根板21の長さ方向に沿って移動可能となる。従って、羽根板21から突出する切刃長さLの調節を容易に行うことができる。また、切刃24に長孔形状の貫通孔24aを設ける代わりに、図3(c)に示すように平面視矩形状をなす貫通孔24bを設け、この貫通孔24bに対して、ボルト9cを挿通可能な円形の貫通孔24c(図3(d)参照)を有するボルト取付具17を着脱自在に嵌合設置した構造とすることもできる。そして、ボルト9cが挿通される貫通孔24cの位置が長さ方向に異なるボルト取付具17を、3個を1セットとして複数セット用意しておくことによれば、1セット単位でボルト取付具17を交換することにより羽根板21の一端から突出する切刃長さLを変更することができる。また、このような構造によれば、図3(b)に示した場合に比べて切刃24の固定が確実なものとなる。
【0029】
上記構造の粉砕装置1においては、切刃24及び固定具23a,23aが回転中の粉砕部16に投入されたPKSを切断する切刃として作用する。また、モータ4に駆動されて回転する複数の粉砕室22に投入され、所定量ずつ保持された状態で混合・攪拌されるPKSは、互いにぶつかり合い、こすれ合って、粉砕される。さらに、羽根板21の回転によって粉砕部16の前面から誘引された空気は、粉砕部16の側面から排出され、スクリーン15の空気孔を通って排出口14bからケーシング6の外部へ排出される。そして、粉砕室22内で粉砕されたPKSは、羽根板21の回転によって発生した上述の気流によって排出口14bから強制的にケーシング6の外部へ排出される。加えて、粉砕部16の側面とスクリーン15との間に存在するPKSは、羽根板21とともに回転する切刃24によって切断されるとともに,細かく粉砕され、さらにスクリーン15の空気孔を通過可能な大きさになるまで磨砕される。
【0030】
粉砕部16で粉砕される際のPKSの挙動について図4を用いて説明する。
図4(a)は粉砕部16の回転時におけるスクリーン15内のPKSの挙動を模式的に示した図であり、図4(b)は図4(a)の部分拡大図である。なお、図1乃至図3に示した構成要素については同一の符号を付して、その説明を省略する。また、図4(a)は図2(a)においてスクリーン15を配置するとともに、枠体20a及び固定具23aの図示を省略した状態を示している。そして、図中の破線27はPKSの分布状態を模式的に示したものである。
【0031】
図4(a)に示すように、粉砕部16が矢印Cの向きに回転している場合、粉砕室22内のPKSは遠心力によって半径方向外側へ移動し、一部がスクリーン15の空気孔を通過し、残りがスクリーン15の内部に溜まる。そして、スクリーン15の内部のPKSは、円周方向の移動が切刃24によって制限されるため、破線27に示すように切刃24の後方は少なく、切刃24の前方は多くなるように分布する。また、図4(b)に示すように、切刃24の前方に有るPKS28は矢印Bの向きに押されて、回転方向(矢印Cの方向)に移動し、切刃24とスクリーン15の隙間にあるPKS28は切刃24の後方へ相対的に移動する。このとき、切刃24とスクリーン15の間隔LがPKS28の粒径よりも大きいと、切刃24とともに移動するPKS28と、切刃24の後方へ移動するPKS28の間にすべり面29が形成される。そして、すべり面29では、矢印Bの向きに加えられる切刃24の押圧力によって、PKS28同士が互いに強く押され合った状態でこすれ合うことになるため、磨砕作用が促進される。
【0032】
切刃24とスクリーン15の間隔LがPKS28の粒径よりも小さい場合には、スクリーン15の内周面近傍にすべり面29が形成されるため、切刃24とスクリーン15の隙間にあるPKS28が切刃24の回転を妨げる抵抗となって、粉砕部16を回転駆動するモータ4(図1(a)参照)にかかる負荷が増大する。また、PKS28同士がこすれ合う頻度が少なくなるため、上述の磨砕作用が低下するとともに、スクリーン15の内周面が著しく摩耗するおそれがある。すなわち、切刃24とスクリーン15の間隔LがPKS28の粒径よりも小さいと、本来、PKS28の粉砕や磨砕に使われるべき切刃24の回転エネルギーが、スクリーン15を摩耗させることなどに無駄に消費されてしまう。従って、切刃24とスクリーン15の間隔Lは少なくともPKS28の粒径よりも大きく設定する必要がある。しかし、切刃24とスクリーン15の間隔Lが大きすぎる場合には、矢印Bの向きに加えられる切刃24の押圧力が、すべり面29のPKS28に対して有効に作用しないため、上述の磨砕作用が十分に発揮されない。
【0033】
次に、粉砕装置1において切刃24とスクリーン15の間隔Lを変えてPKSの粉砕を行い、粉砕部16を回転駆動するモータ4にかかる負荷(電流値)及び滞留時間(PKSの粉砕に要する時間)を調べた結果について図5を用いて説明する。
図5(a)及び図5(b)はそれぞれモータ4の電流値(A)及び滞留時間(s)と、切刃24とスクリーン15の間隔Lとの関係を示す実験結果である。なお、本実験で使用したPKSの平均粒径は5mmである。
【0034】
図5(a)では、切刃24とスクリーン15の間隔Lが10mmよりも小さくなるにつれて、モータ4の電流値が大きくなっている。これは、切刃24とスクリーン15の隙間にあるPKSが切刃24の回転を妨げる抵抗となり、モータ4にかかる負荷が増大したためと考えられる。また、切刃24とスクリーン15の間隔Lが35mmよりも大きくなるにつれて、モータ4の電流値が大きくなっている。これは、前述した摩砕作用の低下を補うために、矢印B(図4(b)参照)の向きに加えられる切刃24の押圧力を高めるべく、モータ4の回転数を上げたことによるものである。また、図5(b)では、切刃24とスクリーン15の間隔Lが10mmよりも小さい場合や30mmよりも大きい場合、滞留時間が長くなっている。これは、PKS同士のこすれ合う頻度の減少やすべり面29のPKSが切刃24によって強く押し付けられないことにより、前述の磨砕作用が十分に発揮されないことを表している。
以上のことから、本実施例の粉砕装置1においては、切刃24とスクリーン15の間隔Lを10mm(PKSの平均粒径の2倍)〜30mm(PKSの平均粒径の6倍)の範囲内に設定すると、モータ4にかかる負荷が少なく、滞留時間も短くなることがわかる。
【0035】
このように、切刃24とスクリーン15の間隔Lは、モータ4にかかる負荷や滞留時間に大きな影響を与える。そして、粉砕装置1においては、羽根板21の一端から突出する切刃長さL(図3(a)参照)を変更することで、切刃24とスクリーン15の間隔Lを調節可能な構造となっている。すなわち、粉砕装置1によれば、切刃24とスクリーン15の間隔Lを容易に調節することができる。そして、切刃24とスクリーン15の間隔Lを被粉砕物の平均粒径に応じて適切に調節することによれば、切刃24の回転エネルギーを無駄に消費することなく、被粉砕物を粉砕及び磨砕させるためのエネルギーとして有効に利用することができる。例えば、上述の場合には、切刃24とスクリーン15の間隔LをPKSの平均粒径の2倍〜6倍の範囲内の値に設定することにより、モータ4にかかる負荷を低減して消費電力を節約するとともに、PKSを効率良く粉砕し、摩砕することが可能である。
【0036】
本実施例では、切刃24が側面視L字状をなしているが、切刃24の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、直方体であっても良い。また、ボルト9dによって羽根板21を円板19及び枠体20a,20bに着脱可能に取り付ける代わりに、羽根板21を溶接等によって円板19及び枠体20a,20bに固定することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
請求項1乃至請求項6に記載された発明は、平均粒径を測定可能な被粉砕物を粉砕する場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…粉砕装置 2…ベースフレーム 3…本体部 4…モータ 4a…ベルト 5…駆動軸 6…ケーシング 6a…内壁 7…支持台 8…本体カバー 8a…貫通孔 8b…通気口 9a〜9d…ボルト 10…支持具 11…プーリ 12…軸受 13…ホッパー 14a…通気口 14b…排出口 15…スクリーン 15a…側壁 15b…後壁 15c…貫通孔 16…粉砕部 17…ボルト取付具 18…取付具 19…円板 20a,20b…枠体 21…羽根板 22…粉砕室 23a,23b…固定具 24…切刃 24a〜24c…貫通孔 25a,25b…ボス部 26a,26b…貫通孔 27…破線 28…PKS 29…すべり面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に駆動軸が挿設された円板と、
この円板上に前記駆動軸を中心として放射状に立設される略矩形状の複数の羽根板と、
この羽根板の上部に前記円板に対して同心配置されるとともに,前記駆動軸が中央に挿設される円環状の枠体と、
この枠体と前記円板の上面に前記駆動軸を中心として放射状に設置されて前記羽根板を前記枠体及び前記円板にそれぞれ固定する複数の固定具と、
被粉砕物の排出口が側面に設けられるとともに,前記円板と前記羽根板と前記枠体と前記固定具を回転可能に収納し,前面が開口した本体部と、
この本体部の背面に設けられた貫通孔から突出する前記駆動軸を回転駆動する駆動手段と、
前記被粉砕物が投入される供給口を有し,前記本体部の前面に取り付けられる本体カバーと、
側面に前記被粉砕物を篩い分けるための多数の空気孔が設けられ,背面に前記駆動軸が回転自在に挿通される貫通孔が形成され,前記円板と前記羽根板と前記枠体と前記固定具の背面及び側面を覆うとともに,前記本体部内に固設されるスクリーンと、
前記スクリーンに向かって突出するとともに,前記スクリーンとの間隔を変更可能に,前記羽根板の一端に着脱自在に取り付けられる切刃と、
を備え、
前記枠体は前記本体部の前面側に配置されたことを特徴とする粉砕装置。
【請求項2】
前記羽根板は前記枠体及び前記円板にそれぞれ着脱可能に取り付けられ、
前記固定具は前記羽根板の端部の両側に設置され、
前記羽根板を着脱する際に前記端部を案内することを特徴とする請求項1記載の粉砕装置。
【請求項3】
前記切刃は、平面視して前記スクリーンに向かって突出する方向に長く形成される貫通孔を有し、
この貫通孔に挿通されるボルトによって前記羽根板に締結されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粉砕装置。
【請求項4】
前記切刃に設けられた貫通孔に着脱自在に嵌合設置されるとともに,前記羽根板の一端にボルトによって締結されるボルト取付具を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粉砕装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の粉砕装置において、
前記切刃と前記スクリーンとの間隔を被粉砕物の平均粒径に応じて調節することを特徴とする粉砕方法。
【請求項6】
前記切刃と前記スクリーンとの間隔を被粉砕物の平均粒径の2倍乃至6倍となるように調節することを特徴とする請求項5に記載の粉砕方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−212600(P2011−212600A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83606(P2010−83606)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(394010193)宇部テクノエンジ株式会社 (37)
【出願人】(504244508)
【Fターム(参考)】