説明

粉砕装置

【課題】 正転・逆転可能に構成された粉砕装置において、金属類、石、コンクリート片等の大きな重量異物を分離・放出させることを可能にし、それによって、装置に掛かる負担を軽減させると共に火災の防止や騒音の低減を図ることが可能な粉砕装置を提供すること。
【解決手段】 ケーシングと、打撃ハンマ体と、被粉砕対象物の案内・供給位置を切り換える切換ダンパと、ケーシングと打撃ハンマ体との間に設けられ打撃ハンマ体による打撃によって粉砕された被粉砕対象物を篩にかけて通過させるスクリーンと、ケーシングに連接され被粉砕対象物を投入する被粉砕対象物投入口を備えると共にスクリーンを通過しない大きさであって打撃ハンマ体の回転による上向放出作用を利用してケーシング外に放出される被粉砕対象物の中から重量異物を分離・排出させると共に残りをケーシング内に戻す重量異物分離・排出手段と、を具備したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、木材住宅解体等によって発生した廃材を破砕装置によって一次破砕し、それによって発生した60mm以下程度の木材チップを8mm以下程度の大きさに粉砕する粉砕装置に係り、特に、一次破砕された木材チップの中に混在している金属物、陶磁器、砂利等の重量異物を効果的に分離・排出して、機器の損傷を防止すると共に火災の発生を防止することができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
木材住宅解体等によって発生した廃材を一次破砕して、例えば、60mm以下程度の木材チップを得る破砕装置の構成を開示するものとして、例えば、特許文献1がある。この特許文献1は本件特許出願人によるものである。
【特許文献1】特開2004−275981号公報
【0003】
上記特許文献1による破砕装置は概略次のような構成になっている。まず、ケーシングがあり、このケーシング内には打撃ハンマ体が回転可能に収容・配置されている。この打撃ハンマ体は、回転ロータの外周に複数個の打撃ハンマを複数列にわたって取り付けた構成になっている。上記ケーシングには被破砕対象物を受け入れるための被破砕対象物受入口が形成されている。
【0004】
上記被破砕対象物としては、例えば、木造住宅の解体時に発生する建築廃材が想定される。この種の建築廃材の場合にはその多くが木材、例えば、柱、梁、土台、パネル等であり、これらを破砕することにより所定の大きさ、例えば、60mm以下程度の木材チップを得るものである。又、ケーシングの底部には、破砕されて所定の大きさ以下になった木材チップを篩に掛けて下方に通過・排出させるためのスクリーンが内装されている。このような構成をなす破砕装置によって被破砕対象物を破砕することにより、例えば、60mm以下程度の大きさの木材チップを得ることができる。
【0005】
又、上記破砕装置によって得られた60mm以下程度の木材チップをさらに細かく粉砕して8mm以下程度の粉砕物とし、これをバイオマス燃料として使用することが行われている。この種の粉砕に使用される粉砕装置もその基本的な構成は上記破砕装置と同じである。
【0006】
又、上記粉砕装置に対して打撃ハンマ体を正方向回転・逆方向回転(以下、正転・逆転という)可能に構成したものが提案されている。すなわち、この種の粉砕装置においては、打撃ハンマのエッジ部が摩耗して処理能力が低下した場合には、打撃ハンマを外して新しい打撃ハンマに交換することが行なわれている。ところが、粉砕装置においては多数の打撃ハンマが使用されているために交換作業に長時間を要してしまうという問題がある。
【0007】
そこで、打撃ハンマ体を正転・逆転可能に構成したものが提案されているものである。この場合には、打撃ハンマの先端エッジ部が摩耗して処理能力が低下した場合には、回転ロータの回転を逆転させて打撃ハンマの反対側のエッジ部を使用して処理を行うものである。
尚、打撃ハンマ体を正転・逆転可能に構成した粉砕装置の場合には、被粉砕対象物を供給する方向を切り換えるための切換ダンパが必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の構成によると次のような問題があった。すなわち、上記切換ダンパはその先端が回転ロータに取り付けられている打撃ハンマの回転軌跡の先端近くまで延長されており、その為、ケーシング内にて分離され上方に放出される重量異物が上記切換ダンパに衝突してしまって弾道方向に放出されないようなことがあった。その場合には、その重量異物がケーシング内に残留して循環してしまうことになり、それによって、ケーシング、スクリーン、打撃ハンマを損傷させたり、発熱して火災の原因になってしまうことが懸念されるものである。
【0009】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、正転・逆転可能に構成された粉砕装置において、金属物、陶磁器、砂利等の重量異物を効果的に分離・放出させることを可能にし、それによって、装置に掛かる負担を軽減させると共に火災の防止や騒音の低減を図ることが可能な粉砕装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による粉砕装置は、被粉砕対象物を受け入れるケーシングと、上記ケーシング内に正転・逆転可能に配置され回転ロータに打撃ハンマを取り付けてなり上記ケーシング内に導入された被粉砕対象物を打撃によって粉砕する打撃ハンマ体と、上記ケーシングに設置され上記被粉砕対象物を上記打撃ハンマ体方向に案内・供給すると共に上記打撃ハンマ体の正転・逆転の切換に伴って切り換えられて上記被粉砕対象物の案内・供給位置を切り換える切換ダンパと、上記ケーシングと上記打撃ハンマ体との間に設けられ上記打撃ハンマ体による打撃によって粉砕された被粉砕対象物を篩にかけて通過させるスクリーンと、上記ケーシングに連接され上記被粉砕対象物を投入する被粉砕対象物投入口を備えると共に上記スクリーンを通過しない大きさであって上記打撃ハンマ体の回転による上向放出作用を利用して上記ケーシング外に放出される被粉砕対象物の中から重量異物を分離・排出させると共に残りを上記ケーシング内に戻す重量異物分離・排出手段と、を具備したことを特徴とするものである。
又、請求項2による粉砕装置は、請求項1記載の粉砕装置において、上記切換ダンパに設けられ上記被粉砕対象物を供給する被粉砕対象物シュート面の先端と上記打撃ハンマ体の軸心から直上に延長した垂線との水平方向距離を新たな被粉砕対象物供給を何等損なうことなく重量異物の放出動作を確実に行うことができる範囲に設定するようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項3による粉砕装置は、請求項1記載の粉砕装置において、上記重量異物分離・排出手段は、上記切換ダンパによる上記被粉砕対象物供給開口部の切換によって重量異物の弾道放出方向が異なった場合、上記重量異物を上記被粉砕対象物投入口の反対側に反射集合させて分離・排出するように構成されていることを特徴とする粉砕装置。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように本願発明の請求項1による粉砕装置によると、被粉砕対象物を受け入れるケーシングと、上記ケーシング内に正転・逆転可能に配置され回転ロータに打撃ハンマを取り付けてなり上記ケーシング内に導入された被粉砕対象物を打撃によって粉砕する打撃ハンマ体と、上記ケーシングに設置され上記被粉砕対象物を上記打撃ハンマ体方向に案内・供給すると共に上記打撃ハンマ体の正転・逆転の切換に伴って切り換えられて上記被粉砕対象物の案内・供給位置を切り換える切換ダンパと、上記ケーシングと上記打撃ハンマ体との間に設けられ上記打撃ハンマ体による打撃によって粉砕された被粉砕対象物を篩にかけて通過させるスクリーンと、上記ケーシングに連接され上記被粉砕対象物を投入する被粉砕対象物投入口を備えると共に上記スクリーンを通過しない大きさであって上記打撃ハンマ体の回転による上向放出作用を利用して上記ケーシング外に放出される被粉砕対象物の中から重量異物を分離・排出させると共に残りを上記ケーシング内に戻す重量異物分離・排出手段と、を具備した構成になっているので、まず、従来、粉砕装置のケーシングにおける発熱の原因になっていた重量異物を効果的に分離・排出することができるようになり、ケーシング内における発熱、それに起因した火災の発生等を未然に防止することができるようになった。
又、ケーシングの内張部や打撃ハンマ体等の損傷の原因になっていた重量異物を分離・排出することができるようになったので、上記ケーシングや打撃ハンマ体の損傷を防止することができるようになり、それによって、消耗品の寿命の延長を図ることが可能になり、運転コストの低減を図ることができるようになった。
又、重量異物を分離・排出することができるようになったので、粉砕時における騒音の低減を図ることができるようになった。
又、請求項2による粉砕装置は、請求項1記載の粉砕装置において、上記切換ダンパに設けられ上記被粉砕対象物を供給する被粉砕対象物シュート面の先端と上記打撃ハンマ体の軸心から直上に延長した垂線との水平方向距離を新たな被粉砕対象物供給を何等損なうことなく重量異物の放出動作を確実に行うことができる範囲に設定するようにしたので、被粉砕対象物を上記ケーシング内に支障なく供給すると共に重量異物の放出を可能にすることが可能になった。
又、請求項3による粉砕装置は、請求項1記載の粉砕装置において、上記重量異物分離・排出手段は、上記切換ダンパによる上記被粉砕対象物供給開口部の切換によって重量異物の弾道放出方向が異なった場合、上記重量異物を上記被粉砕対象物投入口の反対側に反射集合させて分離・排出するように構成されているので、これによって、重量異物の放出を確実なものとすることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図1乃至図6を参照して本発明の一実施の形態を説明する。この実施の形態の場合には、例えば、木造住宅の解体時に発生する建築廃材等の被破砕対象物を破砕装置によって一次破砕し、それによって発生した60mm以下程度の木材チップをさらに細かく粉砕して、例えば、8mm以下程度の粉砕物にする粉砕装置を例に挙げて示すものである。
まず、ケーシング1があり、このケーシング1の上端には被粉砕対象物を供給する被粉砕対象物供給口1aが形成されている。上記ケーシング1の中には打撃ハンマ体3が正転・逆転可能な状態で収容・配置されている。
尚、この実施の形態においては、図3及び図4において、矢印aで示す時計方向を正転とし、矢印bで示す反時計方向を逆転とする。
【0013】
上記打撃ハンマ体3は次のような構成になっている。図4及び図5に拡大して示すように、まず、回転ロータ5を備えていて、この回転ロータ5はその両端を軸受部材7、7によって回転可能な状態で支持されている。上記回転ロータ5の一端(図5中左端)は上記軸受部材7を貫通・配置されていて、その先端にはプーリ9が固着されている。又、図示しない駆動モータが設置されていて、この駆動モータの回転軸には別のプーリが固着されている。このプーリと上記プーリ9との間には図示しないベルトが巻回されている。よって、駆動モータが正転・逆転することにより上記プーリ、ベルト、プーリ9を介して上記回転ロータ5が正転・逆転することになる。
【0014】
上記回転ロータ5の外周には、図5に示すように、中空シャフト11が被冠・固定されていて、この中空シャフト11には複数枚の打撃ハンマ取付円板13が所定のピッチで取り付けられている。そして、上記複数枚の打撃ハンマ取付円板13の外周部には複数本の打撃ハンマ取付シャフト15を介して複数個の打撃ハンマ17が所定のピッチで取り付けられている。
【0015】
上記打撃ハンマ17の取付状態であるが、図4に示すように、周方向等間隔に12等分された12箇所に夫々取り付けられている。又、図5に示すように、周方向の一箇所であって打撃ハンマ取付円板13、13の間をみると、軸方向に沿って6個の打撃ハンマ17が取り付けられている。
【0016】
上記打撃ハンマ17は、図4及び図5に示すように、薄い板状をなしていて、先端であって回転方向両端にエッジ部17a、17bが夫々設けられた構成になっている。そして、正転時にはエッジ部17aが打撃機能を発揮することになり、逆転時にはエッジ部17bが打撃機能を発揮することになる。
【0017】
上記ケーシング1の内側であって上記打撃ハンマ体3の外側には、図4に示すように、スクリーン21、21が夫々設置されている。スクリーン21、21は、既に説明した打撃ハンマ体3の回転軌跡に沿った円弧状に形成されていて、打撃ハンマ体3の打撃ハンマ17の先端に対して僅かな隙間を存した状態で対向・配置されている。又、上記スクリーン21、21は、図4に示すように、回動可能な状態で取り付けられている。
【0018】
すなわち、図4において左側に示されているスクリーン21は、シャフト23を中心にして回動自在に取り付けられており、又、このシャフト23には、図5に示すように、操作ハンドル25、25が取り付けられている。同様に、図4において右側に示されているスクリーン21も、シャフト23を中心にして回動自在に取り付けられており、このシャフト23には、図5に示すように、操作ハンドル25、25が取り付けられている。そして、これら操作ハンドル25を介して適宜開閉可能な構成になっている。
因みに、通常動作時には、図4中実線で示すように閉じた状態にある。これに対して、例えば、打撃ハンマ17の保守・点検を行なう場合には、図中仮想線で示すように、スクリーン21、21を回動させて開放させることになる。
【0019】
上記ケーシング1内であって上記打撃ハンマ体3の上方には切換ダンパ31が設置されている。この切換ダンパ31は、両端に設置された一対の側板33、33と、これら一対の側板33、33の間であって下端に連結された底板部35と、上記一対の側板33、33に取り付けられた軸部材37、37等から構成されている。切換ダンパ31はこれら軸部材37、37を介してケーシング1に回動自在の状態で取り付けられている。又、上記軸部材37、37には操作ハンドル39、39が取り付けられている。すなわち、本実施の形態による粉砕装置は、打撃ハンマ体3を正転・逆転させる構成になっており、よって、その正転・逆転に合わせて切換ダンパ31を切り換えて、被粉砕対象物を案内・供給する方向を切り換えるようにしているものである。
【0020】
上記底板部35についてさらに詳しく説明すると、図6に拡大して示すように、底板部35の上面35aはケーシング1内に供給された被粉砕対象物を打撃ハンマ体3とスクリーン21との間に案内・供給する被粉砕対象物シュート面となっている。
【0021】
図4において、打撃ハンマ体3が正転している場合には、上記切換ダンパ31は仮想線で示すような位置に位置している。これに対して、打撃ハンマ体3が逆転している場合には、記切換ダンパ31は実線で示すような位置に位置している。この切換は既に説明した操作ハンドル39、39を回転操作することによって行う。
【0022】
又、本実施の形態の場合には上記切換ダンパ31の底板部35の被粉砕対象物シュート面35aの先端と打撃ハンマ体3の軸心から直上に延長した垂線との水平方向距離(L)を55〜70mmの範囲で設定している。それによって、被粉砕対象物のケーシング1内への案内・供給を可能にすると共に、重量異物の上方への放出を可能にしているものである。
【0023】
上記構成をなす粉砕装置には、スクリーン21、21を通過して落下しない大きさの金属物、陶磁器、砂利等の重量異物を上記打撃ハンマ体3の回転によって発生する上向放出エネルギーを利用して分離・排出させる重量異物分離・排出手段51が設けられている。以下、この重量異物分離・排出手段51の構成を説明する。図1〜図3に示すように、まず、ケーシング1の上端には真っ直ぐに延長されたベースホッパ53が連結されている。このベースホッパ53の上端には、左側に傾斜した状態で延長された投入ホッパ55が連結されている。この投入ホッパ55の上端には真っ直ぐに延長された分離ダクト57が連結されている。
【0024】
上記分離ダクト57の上端には別の分離ダクト59が連結されている。この分離ダクト59は、図2に示すように、背面側にも開口部を備えていて、そこには、排出シュート61が連結されていると共に、この排出シュート61には別の排出シュート63が連結されている。
【0025】
上記投入ホッパ55には被粉砕対象物を投入する被粉砕対象物投入口55aが形成されていて、この被粉砕対象物投入口55aを介して投入ホッパ55内に被粉砕対象物が投入されるものである。投入された被粉砕対象物は投入ホッパ55及びベースホッパ53を介してケーシング1内に投入されることになる。
【0026】
尚、上記被粉砕対象物としては、前述したように、木造住宅の解体時に発生する建築廃材等の被破砕対象物を破砕装置によって一次破砕した後の60mm以下程度の木材チップを想定しているが、その中には金属物、陶磁器、砂利等の重量異物が混在していることがある。本実施の形態の場合には、これら重量異物を上記重量異物分離・排出手段51によって効果的に分離させるように構成されているものである。
【0027】
以上の構成を基にその作用を説明する。
まず、粉砕装置の打撃ハンマ体3が図3、図4、図6中時計方向(矢印a方向)に回転している正転の状態から説明する。この場合には切換ダンパ31は図3、図4、図6中仮想線で示す状態にある。まず、ケーシング1内には被粉砕対象物が投入される。すなわち、投入ホッパ55に形成された被粉砕対象物投入口55aを介して被粉砕対象物が投入ホッパ55内に投入される。投入ホッパ55内に投入された被粉砕対象物は投入ホッパ55、ベースホッパ53、ケーシング1の被粉砕物供給口1aを介してケーシング内に供給される。ケーシング内に供給された被粉砕対象物は、切換ダンパ31の底板部35の被粉砕対象物シュート面35aを介して打撃ハンマ体3上に供給される。
【0028】
上記打撃ハンマ体3上に供給された被粉砕対象物はハンマ体3の回転によってハンマ体3とスクリーン21との間に挟み込まれていくと共に打撃ハンマ体3の打撃ハンマ17による打撃によって粉砕される。この粉砕によってスクリーン21、21を通過できる大きさ(例えば、8mm以下程度の大きさ)まで粉砕されたものはスクリーン21、21を介して落下・排出される。又、各種重量異物であって上記スクリーン21、21を通る程度の大きさのものも下方に落下していく。一方、スクリーン21、21を通過できる大きさまで粉砕されなかった木材チップや重量異物は上方に放出される。すなわち、被粉砕対象物シュート面35aの先端と打撃ハンマ体3の軸心から直上に延長した垂線との水平方向距離(L)が適切な値に設定されているので、上記粉砕されなかった木材チップや重量異物はその空間を介して上方に放出されることになる。
【0029】
その際、上記被粉砕対象物シュート面35aからは新たな被粉砕対象物が供給されているが、上記水平方向距離(L)が適切な大きさに設定されているためにその供給を何等損なうことなく上記放出動作が実行されるものである。すなわち、被粉砕対象物シュート面35aの先端と打撃ハンマ体3の軸心から直上に延長した垂線との水平方向距離(L)が55〜70mmの範囲で設定されているので、新たな被粉砕対象物供給を何等損なうことなく上記放出動作が実行されるものである。
【0030】
ケーシング3内ではこのような作用が繰り返し行われており、それによって、所定の大きさに至るまで粉砕された木材チップは、上記したように、スクリーン21、21を介して下方に落下・排出されることになる。下方に落下した粉砕物は図示しない振動コンベア機構上に落下し、この振動コンベア機構の作用によって搬送されていく。
【0031】
一方、ケーシング1の被粉砕対象物供給口1a方向に放出された木材チップや重量異物は次のような作用によって処理されていく。まず、木材チップは比較的軽量である為、ベースホッパ53、投入ホッパ55内を放出される途中で速度を失って落下していく。つまり、ケーシング1内に戻されることになる。特に、投入ホッパ55は傾斜した状態で延長されているので、放出された木材チップはそこに衝突することによりそのエネルギーを吸収されることになり、よって、木材チップは急速に速度を失って落下していく。そして、ケーシング1内に落下していった木材チップは既に説明したような作用によって再度粉砕処理に供されていく。
【0032】
これに対して、重量異物はベースホッパ53、投入ホッパ55内を放出される途中で速度を失いにくく、そのまま分離ダクト57、分離ダクト59内まで放出されることになる。その様子を詳しく説明する。重量異物は、図3中右下がり斜線で示す反射経路Aを辿って上方に放出される。そして、落下することなく分離ダクト57、分離ダクト59内まで放出された重量異物は分離ダクト59の頂上部反射抵抗体59aに衝突して、図2中右方向に反射していく。頂上部反射抵抗体59aに衝突して図2中右方向に反射していった重量異物は排出シュート61、63を介して排出されることになる。
【0033】
次に、粉砕装置の打撃ハンマ体3が図3、図4、図6中反時計方向(矢印b方向)に回転している逆転の状態から説明する。
尚、逆転させる場合としては、ハンマ体17のエッジ部17aが摩耗してしまったような場合であり、この場合には逆転させて反対側のエッジ部17bを使用するものである。
この場合には切換ダンパ31は図3、図4、図6中実線で示す状態にある。まず、ケーシング1内には被粉砕対象物が投入される。すなわち、投入ホッパ55に形成された被粉砕対象物投入口55aを介して被粉砕対象物が投入ホッパ55内に投入される。投入ホッパ55内に投入された被粉砕対象物は投入ホッパ55、ベースホッパ53、ケーシング1の被粉砕物供給口1aを介してケーシング内に供給される。ケーシング内に供給された被粉砕対象物は、切換ダンパ31の底板部35の被粉砕対象物シュート面35aを介して打撃ハンマ体3上に供給される。
【0034】
上記打撃ハンマ体3上に供給された被粉砕対象物はハンマ体3の回転によってハンマ体3スクリーン21との間に挟み込まれていくと共に打撃ハンマ体3の打撃ハンマ17による打撃によって粉砕される。この粉砕によってスクリーン21、21を通過できる大きさ(例えば、8mm以下程度の大きさ)まで粉砕されたものはスクリーン21、21を介して落下・排出される。又、各種重量異物であって上記スクリーン21、21を通る程度の大きさのものも下方に落下していく。一方、スクリーン21、21を通過できる大きさまで粉砕されなかった木材チップや重量異物は上方に放出される。すなわち、被粉砕対象物シュート面35aの先端と打撃ハンマ体3の軸心から直上に延長した垂線との水平方向距離(L)が適切な値に設定されているので、上記粉砕されなかった木材チップや重量異物はその空間を介して上方に放出されることになる。
【0035】
その際、上記被粉砕対象物シュート面35aからは新たな被粉砕対象物が供給されているが、上記水平方向距離(L)が適切な大きさに設定されているためにその供給を何等損なうことなく上記放出動作が実行されるものである。すなわち、被粉砕対象物シュート面35aの先端と打撃ハンマ体3の軸心から直上に延長した垂線との水平方向距離(L)が55〜70mmの範囲で設定されているので、新たな被粉砕対象物供給を何等損なうことなく上記放出動作が実行されるものである。
【0036】
ケーシング3内ではこのような作用が繰り返し行われており、それによって、所定の大きさに至るまで粉砕された木材チップは、上記したように、スクリーン21、21を介して下方に落下・排出されることになる。下方に落下した粉砕物は図示しない振動コンベア機構上に落下し、この振動コンベア機構の作用によって搬送されていく。
【0037】
一方、ケーシング1の被粉砕対象物供給口1a方向に放出された木材チップや重量異物は次のような作用によって処理されていく。まず、木材チップは比較的軽量である為、ベースホッパ53、投入ホッパ55内を放出される途中で速度を失って落下していく。つまり、ケーシング1内に戻されることになる。特に、投入ホッパ55は傾斜した状態で延長されているので、放出された木材チップはそこに衝突することによりそのエネルギーを吸収されることになり、よって、木材チップは急速に速度を失って落下していく。そして、ケーシング1内に落下していった木材チップは既に説明したような作用によって再度粉砕処理に供されていく。
【0038】
これに対して、重量異物はベースホッパ53、投入ホッパ55内を放出される途中で速度を失いにくく、そのまま分離ダクト57、分離ダクト59内まで放出されることになる。その様子を詳しく説明する。重量異物は、図3中右上がり斜線で示す反射経路Bを辿って上方に放出される。そして、落下することなく分離ダクト57、分離ダクト59内まで放出された重量異物は分離ダクト59の頂上部反射抵抗体59aに衝突して、図2中右方向に反射していく。頂上部反射抵抗体59aに衝突して図2中右方向に反射していった重量異物は排出シュート61、63を介して排出されることになる。
【0039】
以上この実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、従来、粉砕装置のケーシング1における発熱の原因になっていた金属物、陶磁器、砂利等の重量異物を効果的に分離・排出することができるようになったので、上記ケーシング1内における発熱、それに起因した火災の発生等を未然に防止することができるようになった。
又、ケーシング1の内張部や打撃ハンマ体3等の損傷の原因になっていた重量異物を分離・排出することができるようになったので、上記ケーシング1や打撃ハンマ体3の損傷を防止することができるようになり、それによって、消耗品の寿命の延長を図ることが可能になり、運転コストの低減を図ることができるようになった。
又、重量異物を分離・排出することができるようになったので、粉砕時における騒音の低減を図ることができるようになった。
又、本実施の形態の場合には、被粉砕対象物シュート面35aの先端と打撃ハンマ体3の軸心から直上に延長した垂線との水平方向距離(L)を55〜70mmの範囲で設定するようにしているので、新たな被粉砕対象物供給を何等損なうことなく重量異物の放出動作を確実に行うことができるものである。
【0040】
尚、本発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。
まず、前記一実施の形態の場合には、被粉砕対象物として木造建築の解体により発生する建築廃材を一次破砕しそれによって得られた60mm以下程度の木材チップを例に挙げて説明したが、それに限定されるものではなく、様々な例が想定される。
又、重量異物分離・排出手段を構成する各種ホッパや各種ダクトや各種シュートの個数、形状、屈曲の状態等については適宜設定すれば良い。
又、前記一実施の形態の場合には、粉砕装置とし説明したが、一次破砕を行う破砕装置として構成することも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、例えば、木材住宅解体等によって発生した廃材を破砕装置によって一次破砕し、それによって発生した60mm以下程度の木材チップを8mm以下程度の大きさに粉砕する粉砕装置に係り、特に、一次破砕された木材チップの中に混在している金属物、陶磁器、砂利等の重量異物を効果的に分離・排出して、機器の損傷を防止すると共に火災の発生を防止することができるように工夫したものに関し、例えば、バイオマス燃料として使用する微細チップを得るための粉砕装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図で、粉砕装置の全体の構成を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す図で、粉砕装置の全体の構成を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す図で、図1のIII部を拡大して一部を断面として示す一部正面図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示す図で、粉砕装置の要部の構成を拡大して示す正断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態を示す図で、図4のV−V断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態を示す図で、図4のVI部を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 ケーシング
3 打撃ハンマ体
5 回転ロータ
17 打撃ハンマ
17a エッジ部
17b エッジ部
31 切換ダンパ
51 重量異物分離・排出手段
53 ベースホッパ
55 投入ホッパ
57 分離ダクト
59 分離ダクト
61 排出シュータ
63 排出シュート





【特許請求の範囲】
【請求項1】
被粉砕対象物を受け入れるケーシングと、
上記ケーシング内に正転・逆転可能に配置され回転ロータに打撃ハンマを取り付けてなり上記ケーシング内に導入された被粉砕対象物を打撃によって粉砕する打撃ハンマ体と、
上記ケーシングに設置され上記被粉砕対象物を上記打撃ハンマ体方向に案内・供給すると共に上記打撃ハンマ体の正転・逆転の切換に伴って切り換えられて上記被粉砕対象物の案内・供給位置を切り換える切換ダンパと、
上記ケーシングと上記打撃ハンマ体との間に設けられ上記打撃ハンマ体による打撃によって粉砕された被粉砕対象物を篩にかけて通過させるスクリーンと、
上記ケーシングに連接され上記被粉砕対象物を投入する被粉砕対象物投入口を備えると共に上記スクリーンを通過しない大きさであって上記打撃ハンマ体の回転による上向放出作用を利用して上記ケーシング外に放出される被粉砕対象物の中から重量異物を分離・排出させると共に残りを上記ケーシング内に戻す重量異物分離・排出手段と、
を具備したことを特徴とする粉砕装置。
【請求項2】
請求項1記載の粉砕装置において、
上記切換ダンパに設けられ上記被粉砕対象物を供給する被粉砕対象物シュート面の先端と上記打撃ハンマ体の軸心から直上に延長した垂線との水平方向距離を新たな被粉砕対象物供給を何等損なうことなく重量異物の放出動作を確実に行うことができる範囲に設定するようにしたことを特徴とする粉砕装置。
【請求項3】
請求項1記載の粉砕装置において、
上記重量異物分離・排出手段は、上記切換ダンパによる上記被粉砕対象物供給開口部の切換によって重量異物の弾道放出方向が異なった場合、上記重量異物を上記被粉砕対象物投入口の反対側に反射集合させて分離・排出するように構成されていることを特徴とする粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−39628(P2009−39628A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206014(P2007−206014)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000237400)富士鋼業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】