説明

粉粒体塗布装置及び方法

【課題】被塗物の内部空間の壁面上に粉粒体を効率よく均一に塗布することができる粉粒体塗布装置及び方法を提供する。
【解決手段】流動槽1の下部室に加圧エアを供給すると共に放電用電極に高電圧電源17から高電圧を印加すると、放電用電極から被塗物6に向けてコロナ放電が発生し、フラックスはコロナ放電により生じるイオンによって荷電されつつ流動化され、流動槽1内の上部では荷電されたフラックスが浮遊状態となる。吸引フード3内の空気が吸引され、これにより被塗物6の内部空間11を通して流動槽1内で浮遊しているフラックスが内部空間11の一端開口部から他端開口部に向かって吸引され、被塗物の内部空間内に空間電荷を形成することにより、被塗物6の内部空間11の壁面上に荷電されたフラックスが付着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉粒体塗布装置及び方法に係り、特に被塗物の内部空間の壁面上に粉粒体を塗布する装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調装置のコンデンサや車両用ラジエータ等の熱交換器は、一般に、複数の扁平形状のチューブと複数のフィンとが交互に配列されて互いに接合されると共にこれらの外周部にサイドプレートが配置された構造を有している。このような熱交換器は、チューブ、フィン及びサイドプレートをそれぞれ構成し且つアルミニウム等からなる各部材を一体に組み立て、ろう材となるフラックスを部材間に塗布した後に、加熱処理してろう付けすることにより製造される。
【0003】
フラックスの塗布方法としては、例えば特許文献1に記載されているように、水等に粉状のフラックスを混合させた混合液を被塗物である各部材の組み立て体に散布する方法が採られている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−164478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、混合液を散布した後に液状成分を気化させてフラックスを定着させるために乾燥する必要があり、乾燥に時間を要するという問題があった。また、混合液の散布により混合液が不要に垂れ流れて均一な塗布を行うことが難しいという問題もある。
そこで、粉状のフラックスを荷電して圧送することにより粉体のまま静電塗布する方法も提案されているが、チューブとフィン等からなる構造物の内部空間内にフラックスを均一に塗布することは困難であった。特に、内部空間内にフラックスを強制的に送り込むためにフラックスの圧送の風力を増大すると、風力がフラックスの付着力を越えてしまって逆に塗着効率が低下するという問題を生じていた。
特に、コロナ放電式の静電塗装ガンを用い、ガンと被塗物との間に電界を形成してフラックスを塗布しようとすると、電気力線が被塗物の凸部に集中する、いわゆるファラデーケージ効果のために、粉状のフラックスがフィンの内部等の内部空間にほとんど入り込まずに凸部に集中して付着してしまい、良好なろう付けを行うことが困難になる。一方、摩擦荷電を利用するトリボガンを用いてフラックスを塗布すれば、ガンと被塗物との間に電界が形成されないので、ファラデーケージ効果を回避することができるが、フラックスは一般に固有抵抗値が小さいので、摩擦荷電されにくく、トリボガンには適さないという問題がある。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、被塗物の内部空間の壁面上に粉粒体を効率よく均一に塗布することができる粉粒体塗布装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る粉粒体塗布装置は、一端開口部から他端開口部まで連通した内部空間を有する被塗物を保持する保持手段と、保持手段に保持された被塗物の一端開口部の付近に荷電された粉粒体を浮遊させる粉粒体浮遊手段と、保持手段に保持された被塗物の他端開口部から被塗物の内部空間を通して荷電された粉粒体を吸引する吸引手段とを備え、被塗物の内部空間内に空間電荷を形成することにより被塗物の内部空間の壁面上に荷電された粉粒体が塗布されるものである。
【0008】
なお、粉粒体浮遊手段として、上方が開放されると共に底部で粉粒体を流動状態とする流動槽と、流動槽内に配設された電極を有して粉粒体を荷電させると共に電極と被塗物との間に電界を形成する荷電装置とを用い、保持手段が流動槽の上端部に被塗物を保持するように構成することができる。
あるいは、粉粒体浮遊手段として、粉粒体を荷電しつつ噴射する静電粉体ガンを用いてもよい。この場合、電気的に接地され且つ被塗物の内部空間に対応する部分のみが開口された導電性のマスクを保持手段と被塗物との間に挿入することもできる。
さらに、粉粒体浮遊手段として、回転駆動されるマグネットローラを有すると共に磁性体からなるキャリアとの摩擦帯電により粉粒体を荷電させ且つ粉粒体が付着したキャリアによりマグネットローラ上に電磁ブラシを形成する電磁ブラシ形成装置と、マグネットローラと被塗物との間に電界を形成して粉粒体をキャリアから離脱させる電界形成手段とを用いることもできる。
【0009】
この発明に係る粉粒体塗布方法は、一端開口部から他端開口部まで連通した内部空間を有する被塗物の一端開口部の付近に荷電された粉粒体を浮遊させ、被塗物の他端開口部から被塗物の内部空間を通して荷電された粉粒体を吸引することにより被塗物の内部空間内に空間電荷を形成して被塗物の内部空間の壁面上に荷電された粉粒体を塗布する方法である。
【0010】
粉粒体は、流動槽で流動状態にすると共に荷電することができる。
あるいは、粉粒体は、静電粉体ガンにより荷電しつつ噴射してもよい。この場合、電気的に接地され且つ被塗物の内部空間に対応する部分のみが開口された導電性のマスクを被塗物の一端開口部側に接触させて粉粒体を塗布することもできる。
さらに、粉粒体を磁性体からなるキャリアと混合することにより摩擦帯電させて粉粒体が付着したキャリアによりマグネットローラ上に電磁ブラシを形成し、マグネットローラと被塗物との間に電界を形成することによりマグネットローラ上の電磁ブラシから離脱させることもできる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、荷電された粉粒体を被塗物の一端開口部の付近に浮遊させ、被塗物の他端開口部から被塗物の内部空間を通して荷電された粉粒体を吸引するので、荷電された粉粒体は被塗物の一端開口部から内部空間内に入り、他端開口部へと流れる。このため、被塗物の内部空間内に空間電荷を形成することにより被塗物の内部空間の壁面上に粉粒体が効率よく均一に塗布される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る粉粒体塗布装置の主要部の構成を示す。この粉粒体塗布装置は、上方が開放された流動槽1と、流動槽1の上端部に形成された保持部2と、保持部2の上方に配置された移動自在の吸引フード3とを備えている。流動槽1の底部近傍に多孔板4が配設され、この多孔板4によって流動槽1内が上部室と下部室とに2分されている。下部室には、放電用配線5が配設されており、この放電用配線5の先端が多孔板4を貫通して上部室内に放電用電極として突出している。また、下部室には、図示しない空気流入口を介して流動用加圧エアが供給される。一方、上部室には、ろう材としてのフラックスが収容されているものとする。
【0013】
保持部2は、流動槽1の上端部に形成された環状の部材からなり、この保持部2の上にラジエータ等の被塗物6が載置される。被塗物6は、サイドプレートから形成された枠体7と、枠体7内の両端部にそれぞれ区画形成されたタンク8と、これらのタンク8を連通する扁平形状の複数のチューブ9と、各チューブ9の長さ方向に直交する方向(図1における鉛直方向)に延びて互いに隣接するチューブ9の間に挿入された蛇腹状の複数のフィン10とを有している。フィン10の蛇腹形状により、それぞれ一端開口部から他端開口部まで連通した複数の内部空間11が図1において鉛直方向に延設されている。各内部空間11の一端開口部が流動槽1の内部を臨み、他端開口部が上方を向いて開放されている。また、被塗物6は電気的に接地されている。
【0014】
図2に示されるように、吸引フード3には集塵機12が接続され、集塵機12のホッパの下端部に回収粉タンク13が接続されている。この回収粉タンク13と新粉タンク14に分級機15が接続され、分級機15のホッパの下端部に振動篩16を介して流動槽1の上部室が接続されている。また、分級機15が集塵機12に接続されている。なお、回収粉タンク13及び新粉タンク14は、それぞれ流動槽1と同様に多孔板を有し、流動用加圧エアが供給されてフラックスが流動状態となる流動床式タンクである。
また、流動槽1の放電用配線5には高電圧電源17が電気的に接続されている。さらに、吸引フード3に吸引エア量を調整するためのバルブ18が接続されている。
なお、保持部2によりこの発明の保持手段が、放電用電極と高電圧電源17により荷電装置が、吸引フード3と集塵機12により吸引手段がそれぞれ構成されている。
【0015】
次に、この実施の形態1に係る粉粒体塗布装置の動作について説明する。まず、図1に示されるように保持部2の上に被塗物6となるラジエータを載置し、吸引フード3を被塗物6の上に移動して、図2に示されるように、被塗物6の上部を吸引フード3で覆う。
【0016】
この状態で、流動槽1の下部室に流動用加圧エアを供給すると共に放電用配線5を介して放電用電極に高電圧電源17から高電圧を印加すると、加圧エアが多孔板4を通って上部室内に噴出すると共に放電用電極から電気的に接地されている被塗物6に向けてコロナ放電が発生し、フラックスはコロナ放電により生じるイオンによって荷電されつつ流動化される。このとき、流動槽1内の上部では荷電されたフラックスが浮遊状態となる。ここで、集塵機12を駆動すると、吸引フード3内の空気が吸引され、これにより被塗物6のフィン10の間に形成されている内部空間11を通して流動槽1内で浮遊しているフラックスが内部空間11の一端開口部から他端開口部に向かって吸引される。これにより、被塗物6の内部空間11内に空間電荷が形成され、被塗物6の内部空間11の壁面上に荷電されたフラックスが付着される。
【0017】
ここで、流動槽1の下部室に供給される加圧エアの流量を調整すると、流動槽1内の上部で浮遊するフラックスの濃度が制御され、バルブ18の開度を調整すると、被塗物6を通したフラックスの吸引力が制御される。そこで、これらフラックスの濃度と吸引力をそれぞれ制御することにより、荷電されたフラックスが被塗物6の内部空間11の内壁に付着するのに最適な速度と最適な濃度でこの内部空間11内を通過するように設定することが好ましい。
なお、流動槽1は保持部2の周辺部において外部に開放されており、バルブ18の開度調整によって吸引力が変化した場合には、この流動槽1の開放部分を介してエアが出入りし、流動槽1内で浮遊するフラックスの濃度に影響が及ばないように構成されている。
【0018】
荷電されたフラックスが内部空間11を通して吸引されるため、フィン10の間に形成された内部空間11の断面積が微細であってもフラックスが内部空間11の中に入り込み、均一な塗膜が効率よく形成される。
なお、被塗物6に付着せずに吸引フード3を介して吸引されたフラックスは、集塵機12から回収粉タンク13に回収される。そして、回収されたフラックスが回収粉タンク13から、あるいは新たなフラックスが新粉タンク14から分級機15に引き出され、振動篩16で篩いをかけられた後に流動槽1の上部室へ供給される。
このようにしてフラックスの塗膜が形成された被塗物6は、図示しない加熱炉において加熱処理に供され、被塗物6を構成する各部材間でろう付けがなされる。
【0019】
実施の形態2
図3に、この発明の実施の形態2に係る粉粒体塗布装置の構成を示す。この粉粒体塗布装置は、上方が開放されたブース21を有しており、ブース21の高さ方向ほぼ中央部には、被塗物23を保持するための保持板24が配置されている。この保持板24の中央部には、下方からフラックスを供給するための供給用開口部25が形成され、供給用開口部25の周辺に複数の通気口26が開口している。なお、ブース21及び保持板24は、それぞれ樹脂等の非導電体から形成されている。
【0020】
保持板24の供給用開口部25の下方にはコロナ放電式の静電粉体ガン27が配設され、この静電粉体ガン27に高電圧電源17が接続されている。
また、被塗物23の上部には吸引フード28が移動自在に配置されている。この吸引フード28は、複数の吸引領域に区画されており、各吸引領域に対応して吸引バルブ29が接続されている。
【0021】
吸引バルブ29には集塵機12が接続され、集塵機12のホッパの下端部に回収粉タンク13が接続されている。この回収粉タンク13と新粉タンク14に分級機15が接続され、分級機15のホッパの下端部に振動篩16を介して供給タンク30が接続され、さらに供給タンク30にインジェクタ31を介してブース21内の静電粉体ガン27が接続されている。また、供給タンク30内には、フラックスを定量供給するためのスクリューフィーダ等の供給装置32が具備されている。
なお、回収粉タンク13、新粉タンク14及び供給タンク30は、それぞれ流動用加圧エアが供給されてフラックスが流動状態となる流動床式タンクである。
保持板24によりこの発明の保持手段が、吸引フード28、吸引バルブ29及び集塵機12により吸引手段がそれぞれ構成されている。
【0022】
実施の形態2に係る粉粒体塗布装置の動作について説明する。まず、保持板24の供給用開口部25の上に被塗物23としてインタークーラーを載置すると共にこれを電気的に接地する。この被塗物23は、実施の形態1で用いた被塗物6と同様に多数の内部空間を備えた構造を有している。次に、吸引フード28を被塗物23の上に移動して、被塗物23の上部を吸引フード28で覆う。
【0023】
この状態で、ブース21の下部室に流動用加圧エアを供給すると共にインジェクタ31に搬送エアを供給して供給装置32により供給されるフラックスを静電粉体ガン27に送り込み且つ高電圧電源17から静電粉体ガン27に高電圧を印加する。これにより、静電粉体ガン27の先端に配置されている電極から電気的に接地されている被塗物23に向けてコロナ放電が発生すると共にこれら電極と被塗物23との間に電界が形成され、静電粉体ガン27から荷電されたフラックスが保持板24に向けて送出されて保持板24の供給用開口部25の付近で浮遊状態となる。この浮遊状態のフラックスは電極と被塗物23との間に形成された電界に乗って被塗物23へと向かう。
【0024】
ここで、複数の吸引バルブ29のうちの一つを選択して開くと共に他の吸引バルブ29を閉じて集塵機12を駆動すると、開かれた吸引バルブ29に接続された吸引フード28内の空気が吸引され、これにより保持板24の下方で浮遊状態となり電界に乗って被塗物23へと向かうフラックスが供給用開口部25及び被塗物23の内部空間を通して吸引される。これにより、被塗物23の内部空間内に空間電荷が形成され、被塗物23の内部空間の壁面上に荷電されたフラックスが付着される。
【0025】
ここで、供給タンク30内の供給装置32によるフラックスの供給量とインジェクタ31に供給される搬送エアの流量を調整すると、保持板24の供給用開口部25の付近で浮遊するフラックスの濃度が制御され、集塵機12に接続されているバルブ18の開度を調整すると、被塗物23を通したフラックスの吸引力が制御される。そこで、これらフラックスの濃度と吸引力をそれぞれ制御することにより、荷電されたフラックスが被塗物23の内部空間の内壁に付着するのに最適な速度と最適な濃度でこの内部空間内を通過するように設定することが好ましい。
なお、ブース21は吸引フード28の周辺部において外部に開放されており、バルブ18の開度調整によって吸引力が変化した場合には、このブース21の開放部分を介してエアが出入りし、ブース21内で浮遊するフラックスの濃度に影響が及ばないように構成されている。
【0026】
このようにしてフラックスによる塗膜が形成されると、開いていた吸引バルブ29を閉じて、次の吸引バルブ29を開き、その吸引バルブ29に接続された吸引フード28内の空気を吸引してフラックスの付着を行う。同様にして順次吸引バルブ29を開閉することにより被塗物23の全ての領域の内部空間の壁面上にフラックスを付着させることができる。
【0027】
複数の吸引フード28と吸引バルブ29を用いて吸引領域を分割した状態で荷電されたフラックスを吸引するので、大きな面積を有する被塗物23に対して効果的にフラックスの付着を行うことが可能となる。
【0028】
なお、被塗物23の内部空間に対応する部分のみが開口されたマスク33及び34を導電性のゴム等から形成し、それぞれ保持板24と被塗物23との間及び吸引フード28と被塗物23との間に挿入すると共に電気的に接地してフラックスの付着を行えば、図4に示されるように、マスク33の開口33a以外をマスキングすることによりその部分へのフラックスの付着を防止することができる。このとき、静電粉体ガン27に対向する被塗物23の面上に導電性のマスク33を接触させることにより、マスク33が存在しない場合には図中破線のように被塗物23の凸部に集中しやすかった電気力線が実線矢印のようにマスク33の表面上に向かって分散して形成されることとなり、その結果、逆電離現象が緩和されて、より効率のよい塗着が可能となる。
吸引フード28と被塗物23との間に挿入されるマスク34は、必ずしも導電性にする必要はない。
【0029】
このようにしてフラックスの塗膜が形成された被塗物23は、図示しない加熱炉において加熱処理に供され、被塗物23を構成する各部材間でろう付けがなされる。
なお、コロナ放電式の静電粉体ガン27の代わりにトリボ式の静電粉体ガンを用いることもできる。
【0030】
実施の形態3
図5に、この発明の実施の形態3に係る粉粒体塗布装置の構成を示す。容器41の上部にホッパ42が設置されると共に容器41の一端に開口部43が形成されている。ホッパ42の上方には粉体供給手段44が配置され、容器41内には混合ドラム45が回転自在に設けられると共に開口部43の近傍に回転シェル46が回転自在に配設されている。回転シェル46の内側にはマグネット47が固設され、回転シェル46の外周面に近接してドクターブレード48が容器41内に固定されている。さらに、回転シェル46には高電圧電源49が電気的に接続されている。また、容器41内には磁性体からなる所定量のキャリア50が収容され、粉体供給手段44からホッパ42を介して容器41内に一定の供給量でフラックス51が供給されるように構成されている。
【0031】
容器41の開口部43の上方に被塗物52が配置されている。この被塗物52は、実施の形態1で用いた被塗物6及び実施の形態2で用いた被塗物23と同様に多数の内部空間を備えた構造を有しており、電気的に接地される。さらに、被塗物52の上部に吸引フード53が配置され、図示しない集塵機に接続されている。
なお、回転シェル46及びマグネット47によりマグネットローラが構成され、キャリア50が収容された容器41、混合ドラム45及びマグネットローラにより電磁ブラシ形成装置が構成されている。また、高電圧電源49により電界形成手段が形成されている。
【0032】
次に、この実施の形態3に係る粉粒体塗布装置の動作について説明する。まず、回転シェル46を所定の速度で回転させると共に高電圧電源49から回転シェル46に高電圧を印可して回転シェル46と接地されている被塗物52との間に電界を形成する。この状態で、粉体供給手段44からホッパ42を介してフラックス51を容器41内に供給しつつ混合ドラム45を回転駆動させると、フラックス51はキャリア50との摩擦帯電によりキャリア50とは逆極性に帯電する。また、マグネット47からの磁気力により回転シェル46の表面上にキャリア50が連なって電磁ブラシ54を形成し、このキャリア50に逆極性に帯電したフラックス51が付着する。このようにして形成された電磁ブラシ54が回転シェル46と共に回転して容器41の開口部43に至ると、回転シェル46と被塗物52との間に形成されている電界によってフラックス51がキャリア50から離脱し、浮遊状態となる。
【0033】
ここで、図示しない集塵機を駆動すると、吸引フード53内の空気が吸引され、これにより被塗物52の内部空間を通して浮遊状態のフラックス51が吸引される。これにより、被塗物52の内部空間内に空間電荷が形成され、被塗物52の内部空間の壁面上に荷電されたフラックスが付着される。
なお、粉体供給手段44としては、スクリューフィーダ等の既存の定量供給装置を使用することができる。
【0034】
ここで、回転シェル46の回転数を調整すると開口部43の上方で浮遊するフラックスの濃度が制御される。そこで、このフラックスの濃度と吸引フード53内の空気の吸引力をそれぞれ制御することにより、荷電されたフラックスが被塗物52の内部空間の内壁に付着するのに最適な速度と最適な濃度でこの内部空間内を通過するように設定することが好ましい。
【0035】
上述した実施の形態1〜3では、ラジエータやインタークーラー等の熱交換器にフラックスの塗布を行ったが、これに限るものではなく、この発明は、内部空間を有する被塗物への粉体塗料等の各種の粉粒体の塗布に広く適用することができる。
この発明によれば、浮遊状態にある荷電粉粒体を吸引することによって被塗物の内部空間内に流通させるため、フラックスのような固有抵抗値が小さくて電荷を失いやすい粉粒体であっても被塗物の内部空間に均一に塗布することができ、また、伸長パイプの内部に微細構造のフィンが挿入された熱交換器用の部品等、流通抵抗の大きい部材に対しても、その内部にまで粉粒体を均一に塗布することが可能となる。その結果、信頼性の高いろう付けが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の実施の形態1に係る粉粒体塗布装置の主要部の構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1に係る粉粒体塗布装置の全体構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態2に係る粉粒体塗布装置の全体構成を示すブロック図である。
【図4】実施の形態2に係る粉粒体塗布装置の要部を示す断面図である。
【図5】実施の形態3に係る粉粒体塗布装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 流動槽、2 保持部、3,28,53 吸引フード、4,22 多孔板、5 放電用配線、6,23,52 被塗物、11 内部空間、12 集塵機、17,49 高電圧電源、18 バルブ、21 ブース、24 保持板、25 供給用開口部、27 静電粉体ガン、29 吸引バルブ、31 インジェクタ、32 供給装置、33,34 マスク、41 容器、44 粉体供給手段、46 回転シェル、47 マグネット、50 キャリア、51 フラックス、54 電磁ブラシ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端開口部から他端開口部まで連通した内部空間を有する被塗物を保持する保持手段と、
前記保持手段に保持された被塗物の一端開口部の付近に荷電された粉粒体を浮遊させる粉粒体浮遊手段と、
前記保持手段に保持された被塗物の他端開口部から被塗物の内部空間を通して荷電された粉粒体を吸引する吸引手段と
を備え、被塗物の内部空間内に空間電荷を形成することにより被塗物の内部空間の壁面上に荷電された粉粒体が塗布されることを特徴とする粉粒体塗布装置。
【請求項2】
前記粉粒体浮遊手段は、
上方が開放されると共に底部で粉粒体を流動状態とする流動槽と、
前記流動槽内に配設された電極を有して粉粒体を荷電させると共に電極と被塗物との間に電界を形成する荷電装置と
を含み、前記保持手段は前記流動槽の上端部に被塗物を保持する請求項1に記載の粉粒体塗布装置。
【請求項3】
前記粉粒体浮遊手段は、粉粒体を荷電しつつ噴射する静電粉体ガンを含む請求項1に記載の粉粒体塗布装置。
【請求項4】
前記保持手段と被塗物との間に挿入されると共に電気的に接地され且つ被塗物の内部空間に対応する部分のみが開口された導電性のマスクをさらに備えた請求項3に記載の粉粒体塗布装置。
【請求項5】
前記粉粒体浮遊手段は、回転駆動されるマグネットローラを有すると共に磁性体からなるキャリアとの摩擦帯電により粉粒体を荷電させ且つ粉粒体が付着したキャリアによりマグネットローラ上に電磁ブラシを形成する電磁ブラシ形成装置と、
マグネットローラと被塗物との間に電界を形成して粉粒体をキャリアから離脱させる電界形成手段と
を含む請求項1に記載の粉粒体塗布装置。
【請求項6】
一端開口部から他端開口部まで連通した内部空間を有する被塗物の一端開口部の付近に荷電された粉粒体を浮遊させ、
被塗物の他端開口部から被塗物の内部空間を通して荷電された粉粒体を吸引することにより被塗物の内部空間内に空間電荷を形成して被塗物の内部空間の壁面上に荷電された粉粒体を塗布する
ことを特徴とする粉粒体塗布方法。
【請求項7】
粉粒体は、流動槽で流動状態にされると共に荷電される請求項6に記載の粉粒体塗布方法。
【請求項8】
粉粒体は、静電粉体ガンにより荷電されつつ噴射される請求項6に記載の粉粒体塗布方法。
【請求項9】
電気的に接地され且つ被塗物の内部空間に対応する部分のみが開口された導電性のマスクを被塗物の一端開口部側に接触させて粉粒体を塗布する請求項8に記載の粉粒体塗布方法。
【請求項10】
粉粒体を磁性体からなるキャリアと混合することにより摩擦帯電させて粉粒体が付着したキャリアによりマグネットローラ上に電磁ブラシを形成し、
マグネットローラと被塗物との間に電界を形成することによりマグネットローラ上の電磁ブラシから離脱させる
請求項6に記載の粉粒体塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−61818(P2006−61818A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247057(P2004−247057)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000229597)日本パーカライジング株式会社 (198)
【Fターム(参考)】