説明

粉粒分離装置

【課題】回収されるべき投射材の一部が集塵機へ排出されるのを防止又は抑制することができる粉粒分離装置を得る。
【解決手段】集塵機22のファンの作動によって投射材を含む空気がサイクロンケース本体26内に吸入され、前記空気中の粒子はサイクロンケース本体26内で旋回流によって遠心分離される。サイクロン24と集塵機22との間の空気通路34にはメッシュ状のフィルタ50が配置されており、サイクロン24で分離し切れなかった粒子はフィルタ50で捕捉される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射装置の循環部等に設けられる粉粒分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投射装置の循環部においては、投射機で投射した投射材とその他の異物とを分離するために、サイクロン装置に集塵装置が接続されている場合がある(例えば、特許文献1参照)。このような構成では、サイクロン装置で吸気中の粒子が分離されると共に、集塵装置のブロワーの吸引力でサイクロン装置から集塵装置へ粉塵等を含む空気が排出される。ここで、サイクロン装置の性能は、風量に応じて変動するものであるため、集塵装置では、装置内の濾布の目詰まり等を考慮してブロワーによる吸引力を予め高めに発生させる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公報第2857769号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧力損失によってサイクロン装置での風量が設定値以下になると、サイクロン装置での旋回流の速度が下がるため、サイクロン装置の分離能力も下がり、回収されるべき投射材の一部(小粒径の投射材)がサイクロン装置から集塵装置へ排出されてしまう。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、回収されるべき投射材の一部が集塵機へ排出されるのを防止又は抑制することができる粉粒分離装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の粉粒分離装置は、空気を吸入する吸入手段を備えた集塵機と、前記吸入手段の吸入力で吸入された投射材を含む空気へ分級流を生じさせ、吸入された空気中の粒子を分離すると共に、前記集塵機の吸入部側に空気通路を介して接続される分級機と、前記分級機と前記集塵機との間の前記空気通路に配置されたフィルタと、を有する。
【0007】
請求項1に記載する本発明の粉粒分離装置によれば、集塵機の吸入手段が空気を吸入すると、分級機は、吸入手段の吸入力で吸入された投射材を含む空気へ分級流を生じさせ、吸入された空気中の粒子を分離する。また、分級機と集塵機との間の空気通路にはフィルタが配置されているので、分級機で分離し切れなかった粒子がフィルタで捕捉される。
【0008】
請求項2に記載する本発明の粉粒分離装置は、請求項1記載の構成において、前記フィルタの面積は、前記分級機における前記空気通路側の出口の面積よりも大きく設定されている。
【0009】
請求項2に記載する本発明の粉粒分離装置によれば、フィルタの面積は、分級機における空気通路側の出口の面積よりも大きく設定されているので、フィルタの面積が分級機における空気通路側の出口の面積と同じ場合に比べて、フィルタでの圧力損失が抑制される。このため、分級機での風量が確保されて分級機の性能が確保されると共に、フィルタを通過する際の風速が低下するのでフィルタの破損も防止できる。
【0010】
請求項3に記載する本発明の粉粒分離装置は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記分級機は、略円筒状のサイクロンとされると共に、前記フィルタは、前記サイクロンの上方側に配置されている。
【0011】
請求項3に記載する本発明の粉粒分離装置によれば、分級機が略円筒状のサイクロンとなっており、フィルタがサイクロンの上方側に配置されているので、フィルタの設置面積を容易に確保できると共に、サイクロンと集塵機との間の配管が容易になる。
【0012】
請求項4に記載する本発明の粉粒分離装置は、請求項3記載の構成において、前記フィルタの上方側に配置され、前記フィルタに対して気体の吹き付けが可能な吹付手段と、前記フィルタの下方側に配置され、漏斗状とされて上端部が前記サイクロンの上方側に位置すると共に足部を構成する管部が前記サイクロンの軸心部に配置された漏斗状部材と、を有する。
【0013】
請求項4に記載する本発明の粉粒分離装置によれば、フィルタの上方側からフィルタに対して吹付手段による気体の吹き付けが可能となっているので、フィルタに捕捉された粒子が、吹付手段による吹き付けによってフィルタから落とされる。フィルタから落とされた粒子は、フィルタの下方側で漏斗状部材の上部で受けられた後、漏斗状部材の足部を構成する管部を通って下方側へ落とされる。ここで、管部はサイクロンの軸心部に配置されているので、サイクロンで生じる旋回流(分級流)が妨げられない。
【0014】
請求項5に記載する本発明の粉粒分離装置は、請求項1記載の構成において、前記分級機は、略円筒状のサイクロンとされ、前記サイクロンの側部外周側に前記空気通路の一部を形成する筒状部が形成され、前記フィルタは、前記サイクロンの側部外周側で前記筒状部の内側に配置されている。
【0015】
請求項5に記載する本発明の粉粒分離装置によれば、分級機としての略円筒状のサイクロンの側部外周側には筒状部によって空気通路の一部が形成されており、サイクロンの側部外周側で筒状部の内側にフィルタが配置されているので、フィルタを分級機の上方側に配置する場合に比べて装置全体の高さ寸法が抑えられる。
【0016】
請求項6に記載する本発明の粉粒分離装置は、請求項5記載の構成において、前記フィルタの外周側に配置され、前記フィルタに対して気体の吹き付けが可能な吹付手段と、前記フィルタを前記サイクロンの軸回りに回転駆動可能な駆動手段と、を有する。
【0017】
請求項6に記載する本発明の粉粒分離装置によれば、フィルタの外周側からフィルタに対して吹付手段による気体の吹き付けが可能となっているので、フィルタに捕捉された粒子が、吹付手段による吹き付けによってフィルタから落とされる。また、駆動手段はフィルタをサイクロンの軸回りに回転駆動可能であるので、フィルタを回転させて吹付手段を作動させることで、フィルタの全域から捕捉された粒子が落とされる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の粉粒分離装置によれば、回収されるべき投射材の一部が集塵機へ排出されるのを防止又は抑制することができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項2に記載の粉粒分離装置によれば、フィルタでの圧力損失を抑制できることで、分級機の性能を確保できると共にフィルタの破損も防止できるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項3に記載の粉粒分離装置によれば、フィルタの設置面積を容易に確保できると共に、サイクロンと集塵機との間の配管を容易にすることができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項4に記載の粉粒分離装置によれば、フィルタで捕捉された粒子を、サイクロンの旋回流(分級流)を妨げることなく、振るい落とすことができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項5に記載の粉粒分離装置によれば、フィルタを分級機の上方側に配置する場合に比べて装置全体の高さ寸法を抑えることができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項6に記載の粉粒分離装置によれば、フィルタの全域から捕捉された粒子を落とすことができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る粉粒分離装置を含む投射材循環装置の要部構成を示す模式的な断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る粉粒分離装置を含む投射材循環装置の要部構成を示す模式的な断面図である。
【図3】図2の3−3線に沿った拡大断面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る粉粒分離装置を含む投射材循環装置の要部構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る粉粒分離装置について図1を用いて説明する。図1には、第1の実施形態に係る粉粒分離装置20を含む空気輸送式の投射材循環装置10の要部構成が模式的な断面図で示されている。
【0026】
図1に示されるように、粉粒分離装置20は、ショットピーニングマシン12に接続されている。ショットピーニングマシン12は、図示しない投射材(ショット)を図示しない被処理対象物(ワーク)の表面に投射して被処理対象物をピーニング処理する装置である。なお、ピーニングは、被処理対象物の表面粗さを低減して疲労強度等の向上を図る等の目的のために用いられる。詳細図示を省略するが、ショットピーニングマシン12は、処理室を構成するキャビネットと、前記キャビネット内で被処理対象物に投射材を投射する(ピーニング処理する)投射手段と、前記投射手段に投射材を供給する投射材供給部と、を備えると共に、前記投射手段により投射されて前記キャビネットから回収された投射材を一時貯蔵するホッパを備えている。
【0027】
なお、本実施形態では、ショットピーニングマシン12に粉粒分離装置20が接続されているが、ショットピーニングマシン12に代えてショットブラスト装置が配置される構成としてもよい。また、粉粒分離装置20で分離する投射材は、その種類を問わないが、微細な投射材(一例として、アモビーズのような微細で高価な投射材)を適用することも可能である。粉粒分離装置20で分離する投射材として高価な投射材が適用された場合には無駄なコストが高額になるのを抑えることができる。
【0028】
粉粒分離装置20は、空気を吸入する吸入手段としてのファンを備えた集塵機22を有すると共に、集塵機22の吸入部22A側に接続された分級機としてのサイクロン24を有している。なお、前記ファンは後述する制御部44に接続されている(図示省略)。
【0029】
サイクロン24は、集塵機22の吸入部22A側に空気通路34を介して接続される略円筒状のサイクロンケース本体26を備えている。サイクロンケース本体26は、その上部26Aが垂直配置の円筒状に形成されると共に、その下部26Bが下方側へ向けて小径とされた円錐台筒状に形成されている。サイクロンケース本体26の上部26Aの側壁には、上部26Aの内壁に沿って空気を流入させるための流入部28が形成されている。この流入部28は、略筒状とされ、ショットピーニングマシン12のホッパ(図示省略)に第一吸気ダクト18を介して接続されている。なお、第一吸気ダクト18は、ショットピーニングマシン12で投射された投射材及びその他の異物が前記ホッパから空気輸送される流路を形成している。
【0030】
また、サイクロンケース本体26の上部26Aにおける天板126Aの中央には、円筒状の案内手段としての案内筒部30が貫通形成されている。この案内筒部30は、集塵機22のファン(図示省略)の吸入力で流入部28からサイクロンケース本体26に吸入された投射材を含む空気を外周へ案内してその空気へ分級流としての旋回流f1を生じさせるようになっている。案内筒部30の上端は上方側に延出した流出筒部32に連続しており、この流出筒部32は、サイクロン24と集塵機22とを接続する空気通路34の一部を形成している。すなわち、サイクロン24は、サイクロンケース本体26に吸入された空気中の粒子を旋回流f1によって遠心力で分離する装置とされ、比重の大きい粒子を落下させると共に、比重の小さい粒子を含む空気を流出筒部32を通して上方へ流出させるようになっている。また、本実施形態では、案内筒部30及び流出筒部32の内周円の直径は310mmに設定され、サイクロン24の必要風量は、50m/minとされている。
【0031】
サイクロンケース本体26の下部26Bは、下端開口側で回収部36に接続されている。また、回収部36は、パイプ38等を介してショットピーニングマシン12の投射材供給部(図示省略)に接続されている。これにより、サイクロン24で分離された投射材が循環して利用される構成になっている。
【0032】
また、サイクロン24の上部には、サイクロン24の上部流入側と上部流出側との圧力差を検出するために、差圧センサ40が設けられている。この差圧センサ40は、流入部28の内部空間に通じる導圧細管42Aと、流出筒部32の内部空間に通じる導圧細管42Bと、に接続されている。差圧センサ40には制御部44が接続されている。制御部44は、差圧センサ40によって検出された圧力差が所定値以上の場合には、集塵機22に設けられたファン(図示省略)のモータ回転数を上げるようになっている。
【0033】
サイクロン24と集塵機22とを接続する空気通路34の一部は、流出筒部32に連続するフィルタハウジング46、及びこのフィルタハウジング46と集塵機22とを繋ぐ第二吸気ダクト48によって形成されている。
【0034】
フィルタハウジング46は、上端側及び下端側に開口部が形成されると共に、軸心がサイクロン24と同軸で垂直に配置され、上下方向中間部が拡径された拡張部146とされている。拡張部146は短円筒状で垂直に配置されている。フィルタハウジング46は、上部に配置されて下端側が大径とされたアッパ部46Aと、下部に配置されて上端側が大径とされたロア部46Bと、によって構成されている。アッパ部46Aとロア部46Bとは、図示しない各々のフランジ部同士の間にメッシュ状のフィルタ50を挟み込んだ状態で接合されている。これにより、フィルタ50は、サイクロン24と集塵機22との間の空気通路34においてサイクロン24の上方側に配置されている。
【0035】
フィルタ50は、投射材分離用の金網とされており、網目の粗さは投射材の粒径(サイズ)よりも小さくなるように設定されている。より具体的には、本実施形態では、フィルタ50は、一例として、織り方が綾織とされた綾織網とされ、線径0.025mmで、メッシュ数が500(1インチ間に目(糸)が500個)のものが適用されている。
【0036】
また、このフィルタ50の面積は、サイクロン24の必要風量に応じて設定されており、圧力損失を抑えるために、サイクロン24における空気通路34側の出口の面積(案内筒部30の上端内側の面積)よりも大きく設定されている。より具体的には、サイクロン24での圧力損失を1.8kPa、集塵機22での圧力損失を約2kPaと見積もると、集塵機22のファン(図示省略)の性能(静圧5〜6kPa)を考慮して、フィルタ50での圧力損失を1kPa以下にする必要があり、フィルタ50での圧力損失を1kPa以下にするためには、下記の数式1により、フィルタ50(網)の面積は885000mm(網の直径は1060mm)に設定される。
【0037】
【数1】

【0038】
上記の数式1におけるα及びβは抵抗係数であり、下記の表1による。
【表1】

【0039】
また、図1に示されるように、フィルタハウジング46のアッパ部46Aの上端開口部は、フィルタ50の配置部の径(拡張部146の内径)よりも小径とされて第二吸気ダクト48に接続されている。これにより、第二吸気ダクト48での風速が確保されて第二吸気ダクト48内で塵埃が滞留するのを抑えられる構造になっている。
【0040】
フィルタハウジング46のアッパ部46Aには、吹付手段としての逆洗装置52が設けられている。すなわち、逆洗装置52は、フィルタ50の上方側に設けられている。逆洗装置52には、パルスジェット空気(圧縮空気)供給用の噴射ノズルが設けられており、この噴射ノズルの噴出口は、フィルタ50の上面(下流側の面)側に向けられている。また、逆洗装置52は、制御部44に接続された噴射手段を備えており、この噴射手段が作動することで噴射ノズルから圧縮空気を噴射し、フィルタ50に対して圧縮空気(気体)の吹き付けが可能となっている。
【0041】
また、フィルタハウジング46には、フィルタ50よりも下方側(流路上流側)とフィルタ50よりも上方側(流路下流側)との圧力差を検出するために、差圧センサ54が設けられている。この差圧センサ54は、アッパ部46Aの内部空間に通じる導圧細管56Aと、ロア部46Bの内部空間に通じる導圧細管56Bと、に接続されている。差圧センサ54は制御部44に接続されている。
【0042】
制御部44は、差圧センサ54によって検出された圧力差が所定値以上の場合には、フィルタ50に捕捉された粒子を振い落して差圧を所定値未満とする(ひいては集塵風量を確保する)ために、逆洗装置52の噴射手段を作動させるようになっている。換言すれば、制御部44は、逆洗装置52の噴射手段の作動時を限定して前記粒子の振い落しに無駄なエネルギーが消費されるのを抑えるように、逆洗装置52の噴射手段を制御している。
【0043】
なお、本実施形態では、制御部44は、逆洗装置52の噴射手段を作動させる際に、集塵機22のファン(図示省略)に対して作動停止の指令は出さない。また、本実施形態では、フィルタ50に捕捉された粒子の振い落しが逆洗装置52の圧縮空気の噴射によってなされているが、例えば、フィルタ50を直接振動(超音波振動を含む)することによって行う構成にしてもよい。
【0044】
フィルタハウジング46のロア部46Bの内側(換言すれば、フィルタ50の下方側)には、漏斗状とされた漏斗状部材58の受部58Aが配置されている。なお、図示を省略するが、漏斗状部材58は、ロア部46Bに取付部材を介して取り付けられている。受部58Aは、サイクロン24の上方側に位置すると共に、フィルタ50側に開口して下方側へ向けて小径とされた円錐台筒状に形成されている。この受部58Aは、逆洗装置52の作動によりフィルタ50に捕捉された粒子が払い落とされた場合にそれらの粒子を受け取るための手段とされている。受部58Aの下端開口部には足部を構成する管部としての細管部58Bが連続して設けられている。細管部58Bは、サイクロン24の旋回流f1を妨げないために、サイクロン24の軸心部を貫通して延出しており、その下端部は回収部36内に配置されている。
【0045】
集塵機22は、第二吸気ダクト48側とは反対側が排気用の排気ダクト60に接続されている。また、集塵機22には、その入口側と出口側との圧力差を検出するために、差圧センサ62が設けられている。この差圧センサ62は、第二吸気ダクト48の内部空間に通じる導圧細管64Aと、排気ダクト60の内部空間に通じる導圧細管64Bと、に接続されている。差圧センサ62は制御部44に接続されている。制御部44は、差圧センサ62によって検出された圧力差が所定値以上の場合には、集塵機22内に設けられたフィルタ(図示省略)を逆洗浄するために、集塵機22に設けられた逆洗装置(図示省略)の複数のノズルを順番に噴射させるようになっている。
【0046】
また、排気ダクト60には、排気ダクト60内の風量を測定するための風量測定センサ66が取り付けられている。風量測定センサ66は制御部44に接続されている。制御部44は、風量測定センサ66によって測定された風量が所定値未満の場合には、集塵機22に設けられたファン(図示省略)のモータ回転数を上げるようになっている。なお、前記ファンのモータ(図示省略)は、インバータ等によって回転制御されている。
【0047】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0048】
集塵機22のファン(図示省略)が作動すると、サイクロン24が負圧になり、ショットピーニングマシン12のホッパに堆積された投射材、及びその他の異物(被処理対象物の付着物及び投射材が破砕されたもの)を含む空気が、空気輸送によって、第一吸気ダクト18を流通してサイクロン24へ吸引搬送される。
【0049】
サイクロン24では、サイクロンケース本体26内に吸入された空気が案内筒部30によって案内されて旋回流f1が生じる。この旋回流f1によって、吸入された空気中の粒子は遠心分離され、比重の大きい粒子(投射材)が落下する。落下した粒子(投射材)は、回収部36及びパイプ38等を経てショットピーニングマシン12の投射材供給部(図示省略)へ搬送される。
【0050】
サイクロン24では、適切な風量や風圧が確保されれば、基本的には比重の大きい投射材とその他の異物とが完全に分離されるが、適切な風量や風圧が確保できなければ、完全な分離はできず、比重の大きい投射材の一部がサイクロン24から集塵機22側へ向けて流れてしまう。
【0051】
しかし、仮にこのような大まかな分離となっても、サイクロン24と集塵機22との間の空気通路34にはメッシュ状のフィルタ50が配置されているので、サイクロン24で分離し切れなかった投射材がフィルタ50で捕捉される。その結果、フィルタ50よりも下方側(流路上流側)とフィルタ50よりも上方側(流路下流側)との圧力差が大きくなっていくが、この圧力差が差圧センサ54によって所定値以上であると検出されると、制御部44からの指令により逆洗装置52の噴射手段が作動する。
【0052】
逆洗装置52の噴射手段が作動してフィルタ50に圧縮空気が吹き付けられると、フィルタ50で捕捉されていた投射材が落とされ、前記投射材は、漏斗状部材58の受部58Aで受けられて細管部58Bを経て回収部36へ落下した後、パイプ38等を経てショットピーニングマシン12の投射材供給部(図示省略)へ搬送される。一方、投射材が除かれた空気は、フィルタハウジング46から第二吸気ダクト48を経て集塵機22に取り込まれる。
【0053】
また、本実施形態では、フィルタ50の面積は、サイクロン24における空気通路34側の出口の面積(案内筒部30の上端内側の面積)よりも大きく設定されているので、フィルタ50の面積がサイクロン24における空気通路34側の出口の面積(案内筒部30の上端内側の面積)と同じ場合に比べて、フィルタ50での圧力損失が抑制される。このため、サイクロン24での風量が確保されてサイクロン24の性能が確保されると共に、フィルタ50を通過する際の風速が低下するのでフィルタ50の破損も防止できる。
【0054】
また、フィルタ50がサイクロン24の上方側に設置されることで、フィルタ50の設置面積を容易に確保できると共に、サイクロン24と集塵機22との間の配管が容易になって装置全体の構成が簡素化し小型化できる。
【0055】
また、漏斗状部材58の細管部58Bは、サイクロン24の軸心部に配置されているので、サイクロン24で生じる旋回流f1が妨げられない。このため、漏斗状部材58が配置されても、サイクロン24の性能が悪化しない。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る粉粒分離装置20によれば、回収されるべき投射材の一部が集塵機22へ排出されるのを防止又は抑制することができる。
【0057】
さらに、仮に集塵機22の風量が低下して空気輸送が可能な程度の最低限の風量となっても、回収されるべき投射材の一部が集塵機22へ排出されるのをフィルタ50によって防止又は抑制することができるので、投射材を循環させるためのエネルギーの消費を抑えることもできる。
【0058】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る粉粒分離装置72について、図2及び図3を用いて説明する。図2には、第2の実施形態に係る粉粒分離装置72を含む空気輸送式の投射材循環装置70の要部構成が模式的な断面図で示され、図3には、図2の3−3線に沿った拡大断面図が示されている。図2に示されるように、粉粒分離装置72は、サイクロン24と集塵機22との間を繋ぐ構成部等が第1の実施形態に係る粉粒分離装置20(図1参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
図2に示されるように、サイクロン24の上方側及び側部外周側には、アウタハウジング74が形成されている。アウタハウジング74は、サイクロン24の上方側に形成された上板部74Aを備えると共に、サイクロン24の側部外周側に形成された筒状部74Bを備えており、サイクロン24との間には所定の間隔が形成されている。これによって、サイクロン24と集塵機22との間の空気通路76の一部が形成されている。
【0060】
サイクロン24の側部外周側で筒状部74Bの下部内側にはフィルタ78が配置されている。フィルタ78は、上端部が略円筒状とされると共に、この上端部に連続する下方側の部位は下方側へ向けて小径とされた概ね円錐台状とされている。フィルタ78の網目の粗さは、第1の実施形態のフィルタ50(図1参照)と同様に、投射材の粒径(サイズ)よりも小さくなるように設定されている。また、フィルタ78の網面積についても、サイクロン24の必要風量に応じて設定され、フィルタ78での圧力損失が過大になるのを抑えている。
【0061】
フィルタ78の上端部は厚肉円筒形状のリング部材77の内周に取り付けられており、リング部材77はサイクロン24と同軸状に配置されている。また、図3に示されるように、リング部材77の外周側には、装置上下方向を軸方向とする複数個(本実施形態では計三個)のサイドローラ79が、筒状部74Bに設けられたブラケット(図示省略)へ軸支されている。サイドローラ79の外周面は、リング部材77の外周面へ接しており、リング部材77の水平方向における位置規制をしている。
【0062】
リング部材77の下面は、駆動手段としての駆動機構部80の駆動ローラ80Bに載置支持されている。駆動機構部80は、筒状部74Bに取り付けられており、駆動ローラ80Bは、平面視でリング部材77の半径方向を軸方向として配置されている。また、駆動ローラ80Bの軸部は、駆動機構部80の一部を構成するモータ80Aの駆動力によって回転するようになっている。モータ80Aは制御部44に接続されている。また、リング部材77の下面は、所定間隔をおいて複数個(本実施形態では計二個)の従動ローラ81Bに載置支持されている。従動ローラ81Bは、平面視でリング部材77の半径方向を軸方向として配置され、筒状部74Bに設けられたブラケット(図示省略)へ軸支されている。以上により、駆動機構部80は、モータ80Aが駆動することで、フィルタ78をサイクロン24の軸回りに回転駆動可能としている。
【0063】
図2に示されるように、フィルタ78の外周側(流路下流側)には、吹付手段としての逆洗装置82のヘッダ部82Aがフィルタ78の傾斜方向に沿って直線状に配置されている。ヘッダ部82Aは、パルスジェット空気(圧縮空気)供給用とされている。ヘッダ部82Aには、フィルタ78の外面側に向けられた噴射ノズル噴出口がヘッダ部82Aの長手方向に沿って間隔をおいて複数形成されている。また、逆洗装置82は、制御部44に接続された噴射手段82Bを備えており、この噴射手段82Bが作動することで噴射ノズルから圧縮空気(気体)を噴射してフィルタ78に対して吹き付けるようになっている。
【0064】
また、アウタハウジング74の筒状部74Bには、フィルタ78よりも流路上流側とフィルタ78よりも流路下流側との圧力差を検出するために、差圧センサ84が設けられている。この差圧センサ84は、筒状部74Bの上部の内部空間に通じる導圧細管86Aと、筒状部74Bの下部の内部空間に通じる導圧細管86Bと、に接続されている。差圧センサ84は制御部44に接続されている。
【0065】
制御部44は、差圧センサ84によって検出された圧力差が所定値以上の場合には、フィルタ78に捕捉された粒子を振い落して差圧を所定値未満とする(ひいては集塵風量を確保する)ために、逆洗装置82の噴射手段82Bを作動させると共に、駆動機構部80のモータ80Aを駆動させるようになっている。換言すれば、制御部44は、逆洗装置82の噴射手段82B及び駆動機構部80のモータ80Aの作動時を限定して前記粒子の振い落しに無駄なエネルギーが消費されるのを抑えるように、逆洗装置82の噴射手段82B及び駆動機構部80のモータ80Aを制御している。
【0066】
アウタハウジング74の底板部74Cには、回収部36に通じる貫通孔が形成されている。これにより、フィルタ78から振い落された粒子が回収部36に落ちる構造になっている。
【0067】
また、第二吸気ダクト48の内側には、風量調整用のダンパ88が配置されている。ダンパ88は、風量を一定に保つために設けられ、第二吸気ダクト48の流路を開閉可能な構造となっている。ダンパ88の開閉は図示しないモータで行われており、ダンパ88の前記モータは制御部44に接続されている。風量測定センサ66によって検出された風量が所定値未満の場合には、制御部44からの指令に基づいてダンパ88の開度が大きくされる構造である。換言すれば、サイクロン24での圧力損失は風量に比例するため、この圧力損失に対応させてダンパ88の開度を変更し、風量を一定に保つようにしている。
【0068】
上記構成によっても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用及び効果が得られる。また、本実施形態では、差圧センサ84によって検出された圧力差が所定値以上の場合、制御部44は、逆洗装置82の噴射手段82Bを作動させると共に、駆動機構部80のモータ80Aを駆動させる。このため、フィルタ78は、逆洗装置82によって圧縮空気(気体)を吹き付けられながら、駆動機構部80によって回転させられる。よって、逆洗装置82及び駆動機構部80が連続運転すると、フィルタ78の全域から捕捉された粒子が落とされる。その結果、フィルタ78での圧力損失が抑えられ、集塵風量が確保される。
【0069】
また、本実施形態では、フィルタをサイクロン24の上方側に配置する場合に比べて装置全体の高さ寸法が抑えられる。このため、装置の搬送がしやすい。
【0070】
なお、第2の実施形態では、逆洗装置82のヘッダ部82Aを一本設けると共にフィルタ78を駆動機構部80で回転させる構成となっているが、例えば、駆動機構部80を設けず、ヘッダ部82Aをフィルタ78の周りに複数本(一例として、90°間隔で計四本)設定してもよい。また、逆洗装置82に代えて、例えば、フィルタ78に超音波振動を付与する超音波発振装置を設けてもよい。
【0071】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る粉粒分離装置92について、図4を用いて説明する。図4には、本発明の第3の実施形態に係る粉粒分離装置92を含む空気輸送式の投射材循環装置90の要部構成が模式的な断面図で示されている。この図に示されるように、粉粒分離装置92は、サイクロン24(図1参照)に代えて、分級機としてのセトリングチャンバー94を備える点で、第1の実施形態に係る粉粒分離装置20(図1参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0072】
図4に示されるように、セトリングチャンバー94は、集塵機22の吸入部22A側に空気通路34を介して接続されるケース体96を備えている。ケース体96は、その上部96Aが円筒状に形成されると共に、その下部96Bが下方側へ向けて小径とされた円錐台筒状に形成されている。セトリングチャンバー94の上部96Aの側壁には、流入部97Aと流出部97Bとが互いに対向する位置に形成されている。流入部97Aは、略筒状とされ、ショットピーニングマシン12のホッパ(図示省略)に第一吸気ダクト18を介して接続されている。また、流出部97Bは、略筒状とされてフィルタハウジング46に接続されている。
【0073】
ケース体96の上部96A内には、案内手段としての案内板98が設けられている。案内板98は、セトリングチャンバー94の上壁と流入部97A側の側壁上端との境界部付近から延出しており、その上部98Aが流路上流側から流路下流側へ向けて下方側に円弧状に垂れ下がるように配置されると共に、下部98Bが下方側へ垂下されている。また、下部98Bの先端部は折り返されて下流側へ向けて凸状とされている。案内板98は、集塵機22のファン(図示省略)の吸入力でケース体96に吸入された投射材を含む空気を案内してその空気へ分級流としての迂回流f2を生じさせるようになっている。すなわち、セトリングチャンバー94は、ケース体96に吸入された空気中の粒子を迂回流f2によって分離するようになっている。
【0074】
案内板98の下部の位置は、ケース体96の上部96Aの流出位置から案内板98までの距離Aと、ケース体96の上部96Aの流入位置から案内板98までの距離Bとが、A:B=2:1程度に設定されるのが好ましい。
【0075】
セトリングチャンバー94では、粒子の沈降速度が気流速度の約1/2倍のものまで分離可能であるので、これを考慮してセトリングチャンバー94内の流速Vを設定している。すなわち、粒子の沈降速度1m/sの粒子を分離するには、セトリングチャンバー94内の流速は、V=2m/s以下に設定すればよい。従って、セトリングチャンバー94内の分離限界粒子径は流速Vの1/2の沈降速度の粒子径となる。例えば、V=3〜6m/sに設定すれば、セトリングチャンバー94は、0.1〜0.18mmの粒子を分離できる。
【0076】
なお、セトリングチャンバー94での圧力損失は、サイクロン24(図1参照)での圧力損失の数分の一と小さく、0.1〜0.3mm程度の粒子の分級には、サイクロン24(図1参照)よりもセトリングチャンバー94が適している。
【0077】
以上説明した本実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用及び効果が得られる。
【符号の説明】
【0078】
20 粉粒分離装置
22 集塵機
24 サイクロン(分級機)
34 空気通路
50 フィルタ
52 逆洗装置(吹付手段)
58 漏斗状部材
58B 細管部(管部)
72 粉粒分離装置
74B 筒状部
76 空気通路
78 フィルタ
80 駆動機構部(駆動手段)
82 逆洗装置(吹付手段)
92 粉粒分離装置
94 セトリングチャンバー(分級機)
f1 旋回流(分級流)
f2 迂回流(分級流)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を吸入する吸入手段を備えた集塵機と、
前記吸入手段の吸入力で吸入された投射材を含む空気へ分級流を生じさせ、吸入された空気中の粒子を分離すると共に、前記集塵機の吸入部側に空気通路を介して接続される分級機と、
前記分級機と前記集塵機との間の前記空気通路に配置されたフィルタと、
を有する粉粒分離装置。
【請求項2】
前記フィルタの面積は、前記分級機における前記空気通路側の出口の面積よりも大きく設定されている請求項1記載の粉粒分離装置。
【請求項3】
前記分級機は、略円筒状のサイクロンとされると共に、前記フィルタは、前記サイクロンの上方側に配置されている請求項1又は請求項2に記載の粉粒分離装置。
【請求項4】
前記フィルタの上方側に配置され、前記フィルタに対して気体の吹き付けが可能な吹付手段と、
前記フィルタの下方側に配置され、漏斗状とされて上端部が前記サイクロンの上方側に位置すると共に足部を構成する管部が前記サイクロンの軸心部に配置された漏斗状部材と、
を有する請求項3記載の粉粒分離装置。
【請求項5】
前記分級機は、略円筒状のサイクロンとされ、
前記サイクロンの側部外周側に前記空気通路の一部を形成する筒状部が形成され、
前記フィルタは、前記サイクロンの側部外周側で前記筒状部の内側に配置されている請求項1記載の粉粒分離装置。
【請求項6】
前記フィルタの外周側に配置され、前記フィルタに対して気体の吹き付けが可能な吹付手段と、
前記フィルタを前記サイクロンの軸回りに回転駆動可能な駆動手段と、
を有する請求項5記載の粉粒分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−16651(P2012−16651A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155102(P2010−155102)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】