粒子および近接場光導波路
【課題】耐熱性を有する粒子およびこの粒子を用いて形成される配線を備えた導波路を得る。
【解決手段】Mを金属、Aを吸着基(チオール基、アミノ基、カルボキシル基)、Bを水素結合性基(アミド結合基、ウレア結合基もしくはこれらの誘導体、またはチオール基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基の1つまたは複数を有する構造およびこれらの誘導体)、aを0以上の整数、bを0以上の整数、cを1以上の整数、R1を芳香環(π電子数24までの平面環)または芳香環の誘導体、R2〜R5を水素原子、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、エーテル結合、エステル結合、シアノ基もしくはこれらの誘導体とするとき、以下の化学式で表される分子を有する粒子を用いる。
【解決手段】Mを金属、Aを吸着基(チオール基、アミノ基、カルボキシル基)、Bを水素結合性基(アミド結合基、ウレア結合基もしくはこれらの誘導体、またはチオール基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基の1つまたは複数を有する構造およびこれらの誘導体)、aを0以上の整数、bを0以上の整数、cを1以上の整数、R1を芳香環(π電子数24までの平面環)または芳香環の誘導体、R2〜R5を水素原子、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、エーテル結合、エステル結合、シアノ基もしくはこれらの誘導体とするとき、以下の化学式で表される分子を有する粒子を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子およびこの粒子の層を有する近接場光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、さまざまな手法を用いてナノメートルサイズの径を有する粒子(ナノ粒子)が合成され、その利用法が見出されてきている。その中でも、例えば、特許文献1には、光の回折限界を超えた微小サイズの近接場導波路が、電子回路に変わって、光による微細回路構築の基礎となる技術として開示されており、この近接場導波路に用いられるナノ粒子が注目されている。ナノ粒子を活用して、薄膜を作製し、導波路のような形状で用いるためには、例えばナノ粒子を基板に堆積させ、その後にエッチング処理を行い、所望の構造を得る方法などが考えられる。こうして作製された導波路構造物においては、ナノ粒子が相当の耐熱性を有する必要がある。
【0003】
一般に、金属を含有したナノ粒子はサイズが小さくなるに伴って、その融点が著しく低下することが知られている。このことを利用して、最新の研究においても、銅ナノ粒子をインク状にし、これを基板上に塗布し、加熱することで銅配線を形成している。そして、加熱温度が低温であっても、金属ナノ粒子が充分に融解してバルク金属を形成するため、マイクロオーダーの配線形成が可能である(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−148289号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】エレクトロニクス実装学会誌、10、5、403、2007年
【非特許文献2】エレクトロニクス実装学会誌、9、7、533、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、ナノ粒子はそのサイズが小さくなるのに伴って融点の降下が起こるため、粒子形状を維持したままデバイスとして用いるには耐熱信頼性の観点から問題が生じていた。このため、サイズがナノレベルの小径粒子でありながら、充分な耐熱性を有したナノ粒子の開発が急務となっている。ナノ粒子を利用したインクジェット方式の金属配線形成法では、250度の温度で有機物が完全に除去される。したがって、少なくとも250度以上の耐熱性を確保することが求められる。また、半導体の加工工程においては製造時に400度の加熱が行なわれることが多い。近接場光導波路としてこうした半導体回路中に利用するには400度に耐えうる必要がある。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、耐熱性を有する粒子およびこの粒子を用いて形成される配線を備えた近接場光導波路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様による粒子は、金属と、水素結合性基、前記水素結合性基と異なる吸着基A、および芳香環を含み下記の化学式に示す構造を有する化合物と、を備え、Mを前記金属、Aを吸着基(チオール基、アミノ基、カルボキシル基)、Bを水素結合性基(アミド結合基、ウレア結合基もしくはこれらの誘導体、またはチオール基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基の1つまたは複数を有する構造およびこれらの誘導体)、aを0以上の整数、bを0以上の整数、cを1以上の整数、R1を芳香環(π電子数24までの平面環)およびこの芳香環の誘導体、R2〜R5を水素原子、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、エーテル結合、エステル結合、シアノ基もしくはこれらの誘導体とするとき、前記化学式は以下の式で表されることを特徴とする。
【化1】
【0009】
本発明の第2の態様によるコアシェル型ナノ粒子は、金ナノ粒子と、前記金ナノ粒子のリガンドとして設けられ分子内に、チオール基、アミド結合、およびアルキレンを有するか、またはチオール基、カルボキシラト、およびアルキレンを有する化合物と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第3の態様による近接場光導波路は、支持基板と、第1の態様の粒子が前記支持基板上に堆積され、プラズモンポラリトンが伝播する配線となる粒子層と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性を有する粒子およびこの粒子を用いて形成される配線を備えた近接場光導波路を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態のコアシェル型ナノ粒子の一例を示す模式図。
【図2】本発明の一実施形態において、リガンドに用いられる長鎖アルカンチオール誘導体の具体例を示す模式図。
【図3】図2(a)乃至図2(d)に示す長鎖アルカンチオール誘導体の合成ルートを説明する図。
【図4】図2(e)に示す化合物eの合成ルートを説明する図。
【図5】図2(f)に示す化合物fの合成ルートを説明する図。
【図6】比較例において、リガンドに用いられる長鎖アルカンチオール誘導体の具体例を示す模式図。
【図7】物質NP−a乃至物質NP−g、および物質NP−pのコアシェル型ナノ粒子のTEM画像を示す写真。
【図8】物質NP−aのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図9】物質NP−bのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図10】物質NP−cのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図11】物質NP−dのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図12】物質NP−eのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図13】物質NP−fのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図14】物質NP−gのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図15】分解開始温度の求め方を説明する図。
【図16】近接場光導波路の形成工程を示す断面図。
【図17】近接場光導波路の形成工程を示す断面図。
【図18】形成された導波路の配線パターンを示す写真。
【図19】導波路の特性を測定する光学系を示す図。
【図20】図19に示す光学系によって測定された一実施形態の導波路の特性を示す図。
【図21】化合物pの模式図。
【図22】化合物pの合成ルートを説明する図。
【図23】物質NP−pのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図24】化合物pと物質NP−pとの蛍光測定結果を示す図。
【図25】コアとなる金属粒子と結合する化合物の一具体例に示した模式図。
【図26】化合物qの模式図。
【図27】化合物qの合成ルートを説明する図。
【図28】物質NP−qの粒子の模式図。
【図29】化合物rの模式図。
【図30】化合物rの合成ルートを説明する図。
【図31】物質NP−rの粒子の模式図。
【図32】物質NP−qおよび物質NP−rの粒子のTEM画像を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明の概要を説明する。
【0014】
ナノ粒子には多くの形態が存在するが、基板上に塗布して膜を形成するためには、有機溶剤に分散するナノ粒子であることが望ましい。また、高濃度に有機溶剤に分散する必要もある。このような要求から、本発明者達は、導波路構造に用いるナノ粒子として、有機物と金属の複合体からなる金属ナノ粒子(コアシェル型ナノ粒子)を選択した。このコアシェル型ナノ粒子は、中央に金属からなるナノ粒子コアがあり、その周囲に化学結合によって有機物がシェルとして配置された形状である。このような粒子においては、粒子としてよりも有機物としての性質が強く現れる。すなわち、一般的な低分子化合物のように固体として回収することができ、再び有機溶媒に溶けても二次凝集体が残らずに均一分散を得ることができる。また、金属粒子の表面の金属原子と有機物の間に結合力が生じている特長もある。例えばコアの金属粒子として金を選択し、有機物にチオール化合物を選択すると、コア表面の金原子とチオール化合物内の硫黄原子との間に化学結合が生じる。
【0015】
このような形態のコアシェル型ナノ粒子では、溶剤への分散性が有機物のシェルによって決定されるため、可溶性を高めることも容易である。このような粒子を基板上に塗布して堆積され、導波路状に加工して用いる。この時、複数のナノ粒子のコアとなる金属部分はシェルの有機物で隔てられて存在することになる。この形状を保持することでプラズモンポラリトン型の近接場光導波路としての機能が得られる。
【0016】
しかしながら、金原子とチオール化合物内の硫黄原子との間の化学結合を加熱によって切断され、コアの金粒子同士が融着してバルク化する。この現象はわずか100℃〜200℃程度の比較的低温で発生してしまう。この原理を利用したインクジェット型の電気伝導型配線形成が行なわれている(非特許文献1、2参照)。
【0017】
しかし、この現象は、本発明の一実施形態による近接場光導波路にとっては、導波路形成維持の障害となる。これは導波路加工時には加熱工程を行う必要があるため、ナノ粒子が充分な耐熱性を有していないと加工が行なえず、また製品としての耐熱信頼性が損なわれる可能性もある。
【0018】
こうした特有の問題を克服するために、本発明者達は、コアシェル型ナノ粒子のシェルを形成している有機物同士の相互作用に着目した。このコアシェル型ナノ粒子においては、コアとなる金属粒子の表面には複数の有機物が結合しているが、有機物同士の相互作用を強めることで、有機物が金属粒子から乖離するのを防止する力とする。有機分子がかご状に結合を作り、コアの金属粒子の周囲をしっかりと囲い込む。この効果によって耐熱性の向上を図る。
【0019】
しかし、分子間に最も結合力の強い共有結合を入れるのは困難である。光重合などを使って共有結合を作る方法もありえるが、金属粒子の周囲に配置された有機物間だけでなく、金属粒子間をまたいで結合が形成されるため、溶解性が著しく低下する問題がある。次に強い結合はイオン結合であるが、イオン性分子は結晶化しやすいことや有機溶媒への親和性が低いことなど、製膜上の障害が多い。
【0020】
より簡便にかつ確実にコア金属の周囲にある有機分子の相互間の結合を導入するためには、水素結合を用いることが考えられる。そこで、本発明の一実施形態では、有機物内にアミドのO原子やN原子を入れて水素結合を発生させる方法を用いる。N−H部とC=O部が隣の分子のNやOと水素結合を形成して安定力を得る。しかし、水素結合だけでは相互作用が充分とは言えない。1つの水素結合の結合力は約20kJ/molであり、一般的な共有結合である炭素−炭素間の結合力である約840kJ/molと比べて1桁小さい。充分な結合力を得るために、複数の水素結合を形成する要素を作り結合力を高める方法が考えられる。しかし、これは分子を直線状に長くすることを意味しており、薄膜化して導波路を形成した時に、ナノ粒子のコアとなる金属粒子の間隔が離れてしまい、導波効率を低下させる恐れがある。コアの金属粒子の間隔が離れてしまうと、入射した光の導波損失が大きくなる。これは、特許文献1に示された光がプラズモンとしてコアの金属粒子の表面を伝わる原理から容易に推測される。よって、分子の長さを長くして水素結合の数を増やす方法は望ましくない。
【0021】
そこで、別の結合手段としてπ電子間の相互作用を導入した。分子の末端に芳香環を導入してπ−π間の相互作用を設けることで、分子間の結合が強固となる。π−π間の相互作用は芳香環の間に働くロンドン分散力であって水素結合よりも結合力の桁が小さい。しかしながら、π−π間の結合を作りやすい環境が整えば、弱い相互作用も大きな結合効果を生み出す。例えば、ディスコティック型の液晶ではπ−π間の結合によって分子が規則的に配列する。また、たんぱく質内においても立体的な分子形状を安定化させる重要な要素の1つとなっている。これはπ−π間の相互作用を行なえる立体的な環境が整えば、一定の傾向を持って配列するのに充分なエネルギーをπ−π間の相互作用が持つことを示している。
【0022】
本発明の一実施形態のコアシェル型ナノ粒子においても、コアとなる金属粒子のリガンドに水素結合を設けて、一番外側に芳香環を設けることで、芳香環が配列しやすくπ−π間の相互作用が発生する環境を作り出した。この様子を示した模式図を図1に示す。図1において、Dは水素結合形成部位である。コアとなる金属粒子と結合する化合物の一具体例を図25に示す。この化学物は以下の式で表される。
【化2】
ここで、Mは金属を形成する物質、Aは吸着基(チオール基、アミノ基、カルボキシル基)、Bは水素結合性基(アミド結合基、ウレア結合基もしくはこれらの誘導体、またはチオール基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基の1つまたは複数を有する構造およびこれらの誘導体)、aは0以上の整数、bは0以上の整数、cは1以上の整数、R1は芳香環(π電子数24までの平面環)およびこの芳香環の誘導体、R2〜R5は水素原子、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、エーテル結合、エステル結合、シアノ基もしくはこれらの誘導体である。この手法によりπ−π間の結合が効果的に発揮され、水素結合だけの分子よりも著しい耐熱性向上を実現した。
【0023】
水素結合性基として様々なものが考えられるが、言葉の定義が不明瞭なので、本明細書内で言葉の定義を行なう。化学大辞典(共立出版社)によると、アミドとは「アミノ基−NH2が酸基と結合してRCONH−形になった時の基の呼称」とある。また、ウレア(尿素)とは(H2N−CO−NH2)で表される。一方で、アミンとは「アンモニアの水素原子を炭化水素残基で置換した化合物」とある。したがって、アミドやウレアはアミンの一部とみなすことができる。しかし、本明細書ではアミドの構造(−NH−CO−)を有するものをアミド結合基と呼び、ウレア(−NH−CO−NH−)の構造を有するものを特にウレア結合基と呼び、アミンもしくはアミノ基とは別の概念として説明する。同様にアミドもしくはウレアはカルボニルもしくはカルボニル基とは異なるものとして説明する。
【0024】
前述の説明では、水素結合性基をアミドに限ってエネルギーの関係を説明したが、水素結合性基はアミドに限定されるものではない。アミドはC=OとN−Hが隣り合っており、多数の分子にわたって連続的に水素結合を形成できる利点があるため、これを用いることが望ましいが、ウレア結合基でも同様の効果が得られる。分子が直鎖状であって分子の先にπ−πスタッキングを行なう芳香環があることを考慮すると、結合に自由度があり、かつ連続した水素結合が得られ、粒子に近い部位に設けられるため占有体積が小さいと言った条件が望まれる。これらを考慮すると、アミドを利用するのが最も望ましい。また効果は劣るがチオール基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基などを用いても良い。
【0025】
本発明の一実施形態において、リガンドに用いられる化合物(長鎖アルカンチオール誘導体)を図2(a)乃至図2(f)に示す。図2(a)乃至図2(d)の化学式は、ノルマル−アルキルアミンの炭素鎖数がそれぞれ8、12、16、18の場合の化合物を示し、同図においては、括弧の右下の数字は、繰り返し数を示している。なお、図2(a)乃至図2(d)に示す化合物は、チオール基と、アミド結合と、アルキレン(アルキル基)とを有している。また、図2(e)に示す化合物は、チオール基と、カルボキシラトと、アルキレン(アルキル基)と、芳香環(トリル基)とを有している。図2(f)に示す化合物は、チオール基と、アミド結合と、アルキレン(アルキル基)と、芳香環とを有している。
【0026】
次に、図2(a)乃至図2(d)に示す化合物の合成方法について、図3を参照して説明する。
【0027】
S−トリフェニルメチルメルカプト−3−プロピオン酸4の合成
3.14gの3−メルカプトプロピオン酸2を塩化メチレン50mlに溶解した。ここに8.36g(30mmol)のトリフェニルメチルクロリド3を加えて室温で19時間の保護反応を行った。この保護反応で生じた沈殿物を濾集し、40mlのジエチルエーテルで洗浄した後、減圧下で乾燥させて9.86gの白色固体である、S−トリフェニルメチルメルカプト−3−プロピオン酸4を得た。
【0028】
N−アルキル−3−(S−トリチルスルファニル)プロパンアミド6の合成
次に、500mlの三つ口フラスコを減圧乾燥した後、窒素雰囲気下で所定量のS−トリフェニルメチルメルカプト−3−プロピオン酸4と、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロリド(EDC)と、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)とを上記フラスコ内で塩化メチレンに溶解した。ここに、所定量のノルマル−アルキルアミン5を加えて室温で一晩攪拌した。なお、ノルマル−アルキルアミン5の添加は、ノルマル−アルキルアミン5の炭素鎖数が8、12、16、18の場合、それぞれに対して行った。続いて、それぞれの反応混合物を飽和硫酸水素ナトリウム水溶液100mlで2回、純水100mlで2回、飽和食塩水100mlで2回洗浄した後、有機相(塩化メチレン相)に硫酸マグネシウムを加えて一晩乾燥した。乾燥剤を濾過した後、溶媒を留去し、目的物であるN−アルキル−3−(S−トリチルスルファニル)プロパンアミド6を得た。これらを再結晶により精製した。
【0029】
N−アルキル−3−メルカプトプロパンアミド7(以下、化合物a乃至化合物dともいう)の合成
次に、100mlの丸底フラスコにN−アルキル−3−(S−トリチルスルファニル)プロパンアミド6と、トリフルオロ酢酸を加えて攪拌し、橙色の均一な溶液にした。ここにトリエチルシランを加え、白色の沈殿物を生成する。このとき溶液は透明になった。この状態で溶媒を減圧留去し、固体残渣を塩化メチレン100mlに溶解して100mlの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。塩化メチレン相を硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧留去した。得られた固体残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体となるN−アルキル−3−メルカプトプロパンアミド7(化合物a乃至化合物d)を得た。このようにして、図2(a)乃至図2(d)に示す、ノルマル−アルキルアミン5の炭素鎖数nが、8、12、16、18である化合物a、化合物b、化合物c、化合物dを得た。
【0030】
次に、本発明の一実施形態において、リガンドに用いられる長鎖アルカンチオール誘導体である図2(e)に示す化合物3−メルカプトプロピオン酸 11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシルエステル18(以下、化合物eともいう)の合成について図4を参照して説明する。図4は、分子内にトリル基とエステル結合を有するチオール誘導体である化合物eの合成ルートを示す図である。
【0031】
3−メルカプトプロピオン酸 11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシルエステル18(化合物e)の合成
まず、3−メルカプトプロピオン酸12のチオール基をトリチル基で保護し、化合物14を合成した。次に、ウイリアムソンのエーテル合成により化合物11−ブロモウンデカン−1−オール15のブロモ基をトリル基に置換し、化合物16を合成した。続いて、化合物14と、化合物16の脱水縮合反応によりエステル結合を有する化合物17を合成した。その後、脱保護反応によってトリチル基を除き、目的物である化合物bを得た。
【0032】
3−(S−トリチルスルファニル)プロピオン酸14の合成
3.14gの3−メルカプトプロピオン酸12を塩化メチレン50mlに溶解した。ここに8.36gのトリフェニルメチルクロリド13を加えて室温で19時間反応させた。反応で生じた沈殿物を濾集し、得られた固体成分を減圧乾燥させて白色固体の3−(S−トリチルスルファニル)プロピオン酸14を9.86g得た。
【0033】
(11−ヒドロキシウンデシル)トリルエーテル16の合成
3.68gの11−ブロモウンデカン−1−オール15と、4.88gのp−クレゾールを20mlのエタノールに溶解し、ここに水酸化カリウム2.57gを加えて、24時間還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を分液漏斗に移し、イオン交換水100mlと塩化メチレン50mlを加えて分液した。有機相を回収して硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で除去し、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた固体をトルエン50mlに再溶解し、10wt%水酸化カリウム水溶液50mlで2回、飽和食塩水50mlで洗浄した後、有機相を回収し、硫酸ナトリウムで脱水した。乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去して白色固体の(11−ヒドロキシウンデシル)トリルエーテル16を4.08g得た。
【0034】
3−(S−トリチルスルファニル)プロピオン酸 11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシルエステル17の合成
1.86gの化合物14、0.896gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロリド(EDC)、0.029gの4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を塩化メチレン300mlに溶解した。ここに、3.04gの化合物16を加えて室温で24時間撹拌した後、反応溶液を分液漏斗に移して、10%硫酸水素カリウム水溶液100mlで2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで2回、イオン交換水100mlで2回、飽和食塩水100mlで2回洗浄した。回収した塩化メチレン相を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をクロマトグラフィーで精製し、白色固体の3−(S−トリチルスルファニル)プロピオン酸 11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシルエステル17を2.63g得た。
【0035】
3−メルカプトプロピオン酸 11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシルエステル18(化合物e)の合成
1.11gの化合物17を100mlの丸底フラスコに量りとり、トリフルオロ酢酸10mlを加えて攪拌し、オレンジ色の均一溶液を得た。ここにトリエチルシラン0.9mlを加えて白色の沈殿を生成させた後、上澄みの液体(透明)を減圧留去して除き、得られた固体をクロマトグラフィーで精製し、白色固体の化合物eを0.6g得た。
【0036】
次に、本発明の一実施形態において、リガンドに用いられる長鎖アルカンチオール誘導体である図2(f)に示す化合物(N−(11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシル)−3−メルカプトプロパンアミド26(以下、化合物fともいう)の合成について図5を参照して説明する。図5は、分子内にトリル基とアミド結合を有するチオール誘導体である化合物fの合成ルートを示す図である。
【0037】
N−(11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシル)−3−メルカプトプロパンアミド26(化合物f)の合成
化合物21のヒドロキシ基を三臭化リンによってブロモ基に置換し、化合物22を合成した。次に、ブロモ基をアジド基に置換した後、水素化リチウムアルミニウムでアミノ基に還元し、化合物23を合成した。続いて、化合物23と、化合物24を反応させてアミド結合を有する化合物25を合成した。その後、脱保護反応によりトリチル基を除いて、目的物である化合物fを得た。
【0038】
(11−ブロモウンデシル)トリルエーテル22の合成
モレキュラーシーブスで脱水した塩化メチレン10mlに、1.31gの化合物21を溶解させ、氷浴上で冷却した。ここに乾燥塩化メチレン10mlに溶解した1.70gの三臭化リンを滴下し、氷浴で4時間、室温で21時間攪拌した。その後、エバポレータで溶媒を除去し、新たに30mlの酢酸エチルを加えて、純水25mlで2回洗浄した。回収した有機相を硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過して取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:塩化メチレン)で精製し、白色固体の11−ブロモウンデシル)トリルエーテル22を0.5g得た。
【0039】
(11−アミノウンデシル)トリルエーテル23の合成
0.506gの化合物22を50mlのアセトニトリルに溶解し、ここにアジ化ナトリウム0.395gを加え、還流下で29時間、室温で95時間反応させた。室温まで徐冷した後、濾過して固体成分を除去した。濾液の溶媒を減圧留去し、透明で粘調な液体0.313gを得た。窒素雰囲気下で水素化カルシウムから蒸留したTHF15mlにこの液体を溶解し、氷浴で冷却した。次に、水素化リチウムアルミニウム0.054gを乾燥THF20mlに溶解して滴下し、氷浴下で1時間攪拌をした後、イオン交換水80μl、15wt%水酸化カリウム水溶液80μl、イオン交換水240μlを加えて反応を停止した。生じた沈殿を濾過で除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた固体に30mlの酢酸エチルを加えて溶解させ、イオン交換水30mlで2回洗浄した後、有機相を回収して硫酸マグネシウムで脱水した。乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去し、白色固体の(11−アミノウンデシル)トリルエーテル23を0.2g得た。
【0040】
N−(11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシル)−3−(S−トリチルスルファニル)プロパンアミド25の合成
0.174gの化合物23、0.123gのEDC、0.009gのDMAP、0.220gの化合物24を塩化メチレン50mlに溶解させ、室温で22時間攪拌した。その後、反応溶液を分液漏斗に移して、10%の塩酸50mlで2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlで2回、イオン交換水50mlで2回、飽和食塩水50mlで2回洗浄した。回収した有機層を、硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をクロマトグラフィーで精製し、白色固体のN−(11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシル)−3−(S−トリチルスルファニル)プロパンアミド25を0.2g得た。
【0041】
N−(11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシル)−3−メルカプトプロパンアミド26(化合物f)の合成
0.181gの化合物25を塩化メチレン1mlに溶解させ、攪拌しながらトリフルオロ酢酸0.5mlを加え、褐色の溶液を得た。ここにトリエチルシラン0.16mlを加えて白色の沈殿が生じさせた後、上澄みの液体を減圧留去した。得られた固体に塩化メチレン20mlを新たに加えて溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30mlで2回、飽和食塩水30mlで2回洗浄した。回収した有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をクロマトグラフィーで精製し、白色固体の化合物fを0.1g得た。
【0042】
次に、上述した方法によって得られた化合物a、化合物b、化合物c、化合物d、化合物e、化合物fをリガンドとして有するコアシェル型ナノ粒子の形成について説明する。
【0043】
500mlの三角フラスコに0.65gのテトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)をとり、トルエン160mlに溶解した。ここに0.20gのテトラクロロ金酸・四水和物をイオン交換水60mlに溶解した溶液を加え、激しく攪拌した。有機相が黄色くなった後、上記合成した化合物a、b、c、d、e、fのいずれかをTOABの1/2モル分をトルエン20mlに溶解した溶液を加え、15分攪拌した。続いて0.23gの水素化ホウ素ナトリウムを水60mlに溶解して加え、室温で激しく攪拌しながら1晩反応させた。反応終了後の有機相を回収し、エバポレータで濃縮した。これをメタノール100mlに少量ずつ攪拌しながら滴下し、金ナノ粒子の再沈殿を行った。1晩攪拌を継続した後、フィルターで減圧濾過し、固体を回収した。それぞれ黒色固体を0.1g程度得ることができた。
【0044】
次に、本発明の一実施形態において、リガンドに用いられる化合物(長鎖アルカンチオール誘導体)の他の例(以下、化合物pという)を図21に示し、その合成方法を図22に示す。この化合物pは、図21に示すように、4−(ピレン−1−イル)ブタン酸11−(3−メルカプトプロパンアミド)ウンデシルエステルであって、チオール基と、アミド結合と、アルキレン(アルキル基)と、カルボキシラトと、芳香環とを有している。
【0045】
4−(ピレン−1−イル)ブタン酸11−(3−メルカプトプロパンアミド)ウンデシルエステル37(化合物p)の合成
図22に示すように、11−ブロモウンデカン−1−オール31のブロモ基をSN2反応によってアジド基に置換した後、水素化リチウムアルミニウムでアミノ基に還元し、化合物32を合成した。続いて、化合物32と化合物33を反応させてアミド結合を有する化合物34を合成した。さらに化合物34と4−(ピレン−1−イル)ブタン酸35の脱水縮合によりエステル結合を形成し、化合物36を合成した後、脱保護反応によりトリチル基を除いて、目的物である化合物37(化合物p)を得た。
【0046】
以下に、化合物32、化合物34、化合物36、および化合物37のより詳細な合成方法を説明する。
【0047】
11−アミノウンデカン−1−オール32の合成
15.1gの11−ブロモウンデカン−1−オール31を250mlのアセトニトリルに溶解し、ここに15.7gのアジ化ナトリウムを加え、還流下で18時間反応させた。室温まで徐冷した後、濾過して固体成分を除去した。濾液の溶媒を減圧留去し、透明で粘調な13.9gの液体を得た。このうち8.34gを窒素雰囲気下で水素化カルシウムから蒸留した60mlのTHFに溶解し、氷浴で冷却した。次に、2.53gの水素化リチウムアルミニウムを脱水し、250mlのTHFに溶解して滴下し、氷浴下で1時間撹拌をした後、イオン交換水2.5ml、15wt%の水酸化ナトリウム水溶液3.5ml、イオン交換水7.5mlを加えて反応を停止した。生じた沈殿を濾過で除き、濾液の溶媒を減圧留去した。濾液を減圧下で乾燥した後、THF60mlに溶解し、同体積のヘプタンを加えて生じた沈殿を濾集して、5.1gの白色固体32を得た。
【0048】
N−(ウンデシル−11−オール)−3−(トリチルチオ)プロパンアミド34の合成
2.44gの化合物33、1.35gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロリド、および0.09gの4−ジメチルアミノピリジンを塩化メチレン100mlに溶解した。ここに塩化メチレン100mlに分散させた1.30gの化合物32を滴下して室温で22時間撹拌した。その後、反応溶液を分液漏斗に移して、10%塩酸200mlで、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200ml、イオン交換水200ml、飽和食塩水200mlの順で洗浄した。回収した塩化メチレン相を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、2.1gの白色固体34を得た。
【0049】
4−(ピレン−1−イル)ブタン酸 11−(3−(トリチルチオ)プロパンアミド)ウンデシルエステル36の合成
0.218gの4−(ピレン−1−イル)ブタン酸35、0.147gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロリド、0.019gの4−ジメチルアミノピリジンを塩化メチレン100mlに溶解した。ここに塩化メチレン50mlに溶解させた、0.383gの化合物34を加えて室温で23時間撹拌した。その後、反応溶液を分液漏斗に移して、10%塩酸100ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100ml、イオン交換水100ml、飽和食塩水100mlの順で洗浄した。回収した塩化メチレン相を硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、0.35gの黄色固体36を得た。
【0050】
4−(ピレン−1−イル)ブタン酸 11−(3−メルカプトプロパンアミド)ウンデシルエステル37の合成
0.297gの化合物36を100mlの丸底フラスコに量りとり、トリフルオロ酢酸2.7mlを加えて撹拌し、茶褐色の均一溶液を得た。ここにトリエチルシラン0.2mlを加えて黄色の沈殿を生成させた後、上澄みの液体を減圧留去した。得られた固体に塩化メチレン50mlを新たに加えて溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、イオン交換水50ml、飽和食塩水50mlの順で洗浄した。回収した有機相を硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、0.16gの黄色固体37(化合物p))を得た。
【0051】
次に、このようにして得られた化合物pをリガンドとして有するコアシェル型ナノ粒子の形成について説明する。
【0052】
500mlの三角フラスコに0.222gのテトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)をとり、トルエン55mlに溶解した。ここに71mgのテトラクロロ金酸・四水和物をイオン交換水20mlに溶解した溶液を加え、激しく攪拌した。有機相が黄色くなった後、上記合成した化合物pをTOABの1/2モル分をトルエン20mlに溶解した溶液を加え、15分攪拌した。続いて83mgの水素化ホウ素ナトリウムを水20mlに溶解して加え、室温で激しく攪拌しながら1晩反応させた。反応終了後の有機相を回収し、エバポレータで濃縮した。これをメタノール100mlに少量ずつ攪拌しながら滴下し、金ナノ粒子の再沈殿を行った。1晩攪拌を継続した後、フィルターで減圧濾過し、固体を回収した。0.08g程度の黒色固体(ナノ粒子NP−p)を得ることができた。
次に、化合物の芳香環部分をペリレンにした化合物qを有する粒子の形成について図26および図27を参照して説明する。この化合物qは、ペリレン環とアミド結合を有するチオール誘導体であって、その構成を図26に示し、合成方法を図27に示す。
【0053】
4−(ペリレン−1−イル)ブタン酸 11−(3−メルカプトプロパンアミド)ウンデシルエステル(化合物q)の合成
初めに、ペリレン71と無水コハク酸のFriedel−Craftsアシル化反応により、化合物72を合成した後、Wolff−kishiner還元反応によりベンジル位のカルボニルを除き化合物73を得た。さらに化合物73と化合物74との脱水縮合によりエステル結合を形成し、化合物75を合成する。その後、脱保護反応によりトリチル基を除いて、目的物である化合物76(化合物q)を得た。なお、化合物74はChambersらの手法に従って合成した。
【0054】
γ−オキソ−4−(ペリレン−1−イル)ブタン酸72の合成
500mLの三口フラスコに、5.01g(19.8mmol)のペリレン71と、4.34g(43.4mmol)の無水コハク酸を加え、窒素置換して氷浴に浸した。ここに塩化メチレン200mLに分散させた、16.3g(122mmol)の塩化アルミニウムをゆっくり滴下した後、反応容器を氷浴から取り出して、室温で13時間撹拌した。反応終了後、冷却した2M塩酸を40mL加えて30分間撹拌して、生じた固体を濾過で回収した。この固体を100mLのキシレンに分散させて140℃まで加熱して不純物を抽出した。室温まで徐冷した後、固体を濾集し、減圧下で乾燥して、6.99gの褐色固体72を得た。
【0055】
4−(ペリレン−1−イル)ブタン酸73の合成
0.390g(1.11mmol)の化合物72と、0.4mLの79%含水ヒドラジンと、0.290g(7.25mmol)の水酸化ナトリウムとを、3.0mLのジエチレングリコールに溶解させ、180℃のオイルバスで90分還流した後、過剰量のヒドラジンと水を留去し、さらに2時間還流を続けた。反応終了後、室温まで冷却して固体を析出させた。生じた固体を濾集し、イオン交換水と2M塩酸で洗浄した後、減圧下で乾燥させた。この固体を10mLのキシレンに分散させて140℃まで加熱して溶解させた後、室温まで徐冷して固体を析出させた。生じた固体を濾集し、減圧下で乾燥して0.375gの黒色の固体73を得た。
【0056】
4−(ペリレン−1−イル)ブタン酸11−(3−(トリチルチオ)プロパンアミド)ウンデシルエステル75の合成
67mg(0.20mmol)の化合物73と、39mg(0.21mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロリド(EDC)と、12mg(0.10mmol)の4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)とを、30mLの塩化メチレンに溶解した。ここに105mg(0.20mmol)の化合物74を加えて室温で17時間撹拌した。その後、反応溶液を分液漏斗に移して、30mLの10%塩酸で2回、30mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、30mLのイオン交換水で2回、30mLの飽和食塩水で2回洗浄した。回収した塩化メチレン相を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、62mgの黄色固体75を得た(収率36%)。なお、シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、展開溶媒として塩化メチレン/酢酸エチル(=15/1(容積比))を用いた。
【0057】
4−(ペリレン−1−イル)ブタン酸 11−(3−メルカプトプロパンアミド)ウンデシルエステル76の合成
54mg(0.066mmol)の化合物75を100mLの丸底フラスコに量りとり、トリフルオロ酢酸を1.0mL加えて撹拌し、黄緑色の均一溶液を得た。ここにトリエチルシランを0.1mL加えて茶色の沈殿を生成させた後、上澄みの液体を減圧留去した。得られた固体に塩化メチレンを20mL新たに加えて溶解させ、20mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、20mLのイオン交換水で1回、20mLの飽和食塩水で1回洗浄した。回収した有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、26mgの黄色固体(化合物76(化合物q))を得た。収率は67%であった。なお、シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、展開溶媒として、初め塩化メチレンのみから徐々に極性を上げていき最終的に塩化メチレン/酢酸エチル(=5/2(容積比))を用いた。
【0058】
ぺリレン含有金ナノ粒子(NP−q)の作製
200mLの三角フラスコに、85mg(0.16mmol)のテトラ−n−オクチルアンモニウムブロミドを量りとり、36mLのトルエンに溶解した後、12mLのイオン交換水に溶解したテトラクロロ金酸・四水和物を27mg(0.065mmol)加えて激しく撹拌した。次に、12mLのトルエンに溶解した48mg(0.080mmol)の化合物76を加えて15分間撹拌した後、12mLのイオン交換水に溶解した32mg(0.83mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを加え、激しく撹拌しながら室温で1晩反応させた。反応混合液を500mLの褐色分液ロートに移してトルエン相を回収した後、水浴の温度を30℃に設定したエバポレータで液量が5mL程度になるまで濃縮した。この濃縮液を30mLのメタノールに滴下し、室温で一晩撹拌した後、生じた沈殿を濾集した。得られた固体の光学顕微鏡観察を行い、不純物であるアンモニウム塩の透明結晶が観察された場合には、固体を約1mLのクロロホルムに溶解し、同様の再沈殿操作を行った。この操作を透明結晶が確認されなくなるまで合計3回行った後、減圧乾燥させて26mgの黒色の粒子(NP−q)を得た。この粒子の構成を図28に示す。
【0059】
次に、化合物の芳香環部分をコロネンにした化合物rを有する粒子の形成について図29および図30を参照して説明する。この化合物rの構成を図29に示し、合成方法を図30に示す。
【0060】
γ−オキソ−4−(コロネン−1−イル)ブタン酸82の合成
100mLの二口フラスコに0.699g(2.33mmol)のコロネン81と、0.514g(5.14mmol)の無水コハク酸を加え、窒素置換して氷浴に浸した。ここに20mLのニトロベンゼンに溶解させた2.80g(21.0mmol)の塩化アルミニウムをゆっくり滴下した後、反応容器を氷浴から取り出して、室温で5時間撹拌した。反応終了後、冷却した2M塩酸を10mL加えて10分間還流した後、室温まで徐冷して固体を析出させた。固体をろ過で回収して、20mLのキシレンに分散させて140℃まで加熱して溶解させた後、室温まで徐冷して固体を析出させた。生じた固体を濾集し、減圧下で乾燥して0.825gの黄緑色の固体82を得た。
【0061】
4−(コロネン−1−イル)ブタン酸83の合成
0.503g(1.26mmol)の化合物82と、0.4mLの79%含水ヒドラジンと、0.462g(11.6mmol)の水酸化ナトリウムとを3.0mLのジエチレングリコールに溶解させ、180℃のオイルバスで90分還流した後、過剰量のヒドラジンと水を留去し、さらに2時間還流を続けた。反応終了後、室温まで冷却して固体を析出させた。生じた固体を濾集し、イオン交換水で洗浄した後、減圧下で乾燥させた。この固体を10mLのキシレンに分散させて140℃まで加熱して溶解させた後、室温まで徐冷して固体を析出させた。生じた固体を濾集し、減圧下で乾燥して0.431gの茶褐色の固体83を得た。なお、1HNMRは生成物が重溶媒に難溶のため未測定であった。
【0062】
4−(コロネン−1−イル)ブタン酸 11−(3−(トリチルチオ)プロパンアミド)ウンデシルエステル85の合成
0.200g(0.517mmol)の化合物83と、0.103g(0.538mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロリド(EDC)と、0.011g(0.090mmol)の4−ジメチルアミノピリジン(DMAP) とを100mLの塩化メチレンに溶解した。ここに、0.268g(0.517mmol)の化合物84を加えて室温で23時間撹拌した。その後、反応溶液を分液漏斗に移して、100mLの10%塩酸で2回、100mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、100mLのイオン交換水で2回、100mLの飽和食塩水で2回洗浄した。回収した塩化メチレン相を硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、0.168gの黄色固体85を得た。収率は37%であった。なお、シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、展開溶媒として塩化メチレン/酢酸エチル(=10/1(容積比))を用いた。
【0063】
4−(コロネン−1−イル)ブタン酸 11−(3−メルカプトプロパンアミド)ウンデシルエステル86(化合物r)の合成
0.161g(0.182mmol)の化合物85を100mLの丸底フラスコに量りとり、トリフルオロ酢酸を2.0mL加えて撹拌し、黄緑色の均一溶液を得た。ここにトリエチルシランを0.5mL加えて茶色の沈殿を生成させた後、上澄みの液体(透明)を減圧留去した。得られた固体に塩化メチレンを20mL新たに加えて溶解させる。続いて、20mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、20mLのイオン交換水で2回、20mLの飽和食塩水で2回洗浄した。回収した有機相を硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、0.061gの黄色固体(化合物86(化合物r))を得た。収率は52%であった。なお、シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、展開溶媒として、初め塩化メチレンのみから徐々に極性を上げていき最終的に塩化メチレン/酢酸エチル(=2/1(容積比))を用いた。
【0064】
コロネン含有金ナノ粒子(NP−r)の作製
200mLの三角フラスコに、0.086g(0.158mmol)のテトラ−n−オクチルアンモニウムブロミドを量りとり、36mLのトルエンに溶解した後、12mLのイオン交換水に溶解した0.029g(0.070mmol)のテトラクロロ金酸・四水和物を加えて激しく撹拌した。次に、25mLのトルエンに加熱溶解した0.051g(0.079mmol)の化合物86を加えて15分間撹拌した後、12mLのイオン交換水に溶解した0.031g(0.817mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを加え、激しく撹拌しながら室温で1晩反応させた。反応混合液を500mLの褐色分液ロートに移してトルエン相を回収した後、水浴の温度を30℃に設定したエバポレータで液量が5mL程度になるまで濃縮した。この濃縮液を30mLのメタノールに滴下し、室温で一晩撹拌した後、生じた沈殿を濾集した。得られた固体の光学顕微鏡観察を行い、不純物であるアンモニウム塩の透明結晶が観察された場合には、固体を約5mLのトルエンに溶解し、同様の再沈殿操作を行った。この操作を透明結晶が確認されなくなるまで合計3回行った後、減圧乾燥させて66mgの黒色の粒子(NP−r)を得た。この粒子(NP−r)の構成を図31に示す。また、粒子(NP−q)および粒子(NP−r)のTEM画像を図32に示す。
【0065】
(比較例)
また、比較例として、和光純薬製のノルマル−1−ドデカンチオール(以下、化合物gともいう)をリガンドとして用いたコアシェル型ナノ粒子の作成を、上述した場合と同様にして行ない、黒色粉末を0.1g得た。なお、化合物gの化学式を図6に示す。
【0066】
以下、コアシェル型ナノ粒子を以下のように称する。
化合物aのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−a(実施例1)
化合物bのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−b(実施例2)
化合物cのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−c(実施例3)
化合物dのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−d(実施例4)
化合物eのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−e(実施例5)
化合物fのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−f(実施例6)
化合物pのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−p(実施例7)
化合物gのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−g(比較例)
化合物qのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−q(実施例8)
化合物rのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−r(実施例9)
【0067】
次に、このようにして得られた物質NP−a乃至物質NP−g、および物質NP−pのコアシェル型ナノ粒子のTEM画像を図7(a)乃至図7(g)、および図7(p)にそれぞれ示す。また、物質NP−a乃至物質NP−gのコアシェル型ナノ粒子の模式図を図8乃至図14に示す。また、物質NP−pのコアシェル型ナノ粒子の模式図を図23に示す。
【0068】
次に、物質NP−a乃至物質NP−g、および物質NP−p乃至物質NP−rのコアシェル型ナノ粒子の熱分析を行った。この熱分析は、示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6300(SII製)を用いて行なった。空気中の酸素の影響が出ないように窒素気流下(150ml/分)で行った。分解開始温度は、図15に示すように、重量減少前の平坦部(ベースライン)の直線部分と転移領域の変曲点との接線とを外挿して得られる交点の温度(補外点)として求められる。
【表1】
【0069】
次に熱分析測定として、示差走査熱量分析DSC6200(SII製)を用いて、吸熱および発熱ピークを調べた。空気中の酸素の影響が出ないように窒素気流下(150mL/分)で行った。この結果を表2に示す。
【表2】
【0070】
表1、表2からわかるように、水素結合を示す分子構造と、π―π間の相互作用を生み出す分子構造を共に有する場合(実施例6乃至9)においてのみ、吸熱ピークを示す。このエネルギーは分子間の相互作用に強く依存したものであり、水素結合とπ―π間の相互作用を共に有する化合物の特異な安定性を示している。
【0071】
表1からわかるように、比較例では分解開始温度が249℃である。しかし、実施例1のように水素結合能力を持つNを入れると分解開始温度が上昇する。わずか3℃程度であるが、図8および図14に示したように、物質NP−gと、物質NP−aとは分子の長さが異なる。物質NP−aの方が分子の長さが短いにも関わらず、分解開始温度は高くなった。このように水素結合の影響は非常に大きい。さらに物質NP−b、物質NP−c、物質NP−dと分子量を伸ばしていくと、分子間に働くファンデルワールス力の影響によって耐熱性は向上する。
【0072】
また、物質NP−eや物質NP−f、および物質NP−pのように分子構造内にπ―πスタッキング効果を出すことができる芳香環を入れることで、耐熱性はさらに上がってゆく。水素結合とπ―πスタッキング効果を共に有する物質NP−fおよび物質NP−pでは300℃を上回り、400℃に達する耐熱性を実現し、半導体プロセスへの適用も可能となる。
【0073】
化合物pと物質NP−pの蛍光測定
次に、化合物pと物質NP−pとの蛍光測定について、図24(a)、図24(b)を参照して説明する。
【0074】
蛍光測定装置FP−6500(JASCO製)を用い、励起波長は345nmで、溶媒は30分以上窒素バブリングした分光分析用クロロホルムを使用した。溶液濃度は0.1mMとした。化合物pではピレンに由来したモノマーのピークが得られた(図24(a))。一方、物質NP−pではピレン同士が相互作用したエキサイマーのピークも同時に得られた(図24(b))。このエキサイマーのピークによって、π−π間の相互作用を確認した。また、ピレン含有金ナノ粒子NP−pのモル数については、ピレン含有量を熱重量測定(TG)の重量減少量を測定し、この有機物のグラム量から化合物pの分子量を用いてモルを算出する方法で定義した。
【0075】
導波路
次に、導波路について説明する。導波路として入射した光を伝播させるために、本発明の一実施形態ではプラズモンポラリトンを用いた。プラズモンポラリトンは膜表面に沿って移動する性質がある特殊な光の状態である。プラズモンポラリトンを発生させるため、コアシェル型ナノ粒子を全反射プリズムの全反射面に塗布して薄膜を形成し、全反射によるエバネッセント光をコアシェル型ナノ粒子に照射した。この結果、コアシェル型ナノ粒子はエバネッセント光のエネルギーを吸収し、全反射によりプリズムの外へ出射した光は特定の波長のみが損失する。この波長が光の入射角度によって波長シフトすることにより、プラズモンポラリトンの存在が確かめられる。
【0076】
一般的には、同様の実験をAuの薄膜において行なっており、クレッチマン配置型と呼ばれる。Au薄膜では精密な蒸着作業による膜厚の制御と基板面からの剥離防止策が必要であり、またAuのみによる導波路形成はコスト的な意味合いからも現実的ではない。このため本発明では有機物と金属の複合体からなるナノ粒子におけるプラズモンポラリトン導波型の導波路を作製し、プラズモンポラリトンを発生させ、導波路としての機能を確認した。
【0077】
薄膜の形成と近接場光導波路の形成
次に、上記薄膜の形成と近接場光導波路の形成について、図16(a)乃至図17(c)を参照して説明する。
【0078】
まず、図16(a)に示すように、支持基板41としてガラス基板を用意した。続いて、図16(b)に示すように、i線レジスト42(例えば、THMR−iP5720HP、東京応化工業)を支持基板41にスピンコート法で塗布して90℃でプリベークを行った。次に、図16(c)に示すように、ラインマスクパターン(ライン幅3μm)を有するフォトマスク43を用いて、レジスト42の露光を行う。続いて、110℃でポストベークした後、現像液(例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)で露光部42aを剥離し、非露光部42bを残置した(図16(d))。
【0079】
次に、上述した本発明の一実施形態によるコアシェル型Auナノ粒子44(例えばNP−a)をジクロロメタンまたはトルエンに溶解し、スピンコート法を用いて1000rpmで成膜した(図17(a))。40℃で30分乾燥させた後、全面露光を行ってレジスト42bを感光させ(図17(b))、エタノール溶液に浸漬してレジスト42bを取り除いた(図17(c))。説明したような方法を用いて図18に示す配線パターンを形成し、導波路を得た。これと同様の手法で物質NP−b乃至物質NP−gに対しても、配線パターンを形成し、導波路を得た。
【0080】
光学測定
上述のコアシェル型Auナノ粒子(例えば、物質NP−e)をジクロロメタンまたはトルエンに溶解し、スピンコート法を用いて1000rpmでBK7からなる直角プリズム51上に塗布し、図18に示す配線パターンを有する導波路の測定サンプル50を形成した。この測定サンプル50を用いて図19に示すような光学系を構成した。ハロゲンランプ52を光源とする光を、レンズ53、ピンホール54、レンズ55、ミラー56、偏光板57、ピンホール58、およびレンズ59を通して、1mmに絞り、直角プリズム51に入射した。45度の角度でプリズム51上の測定サンプル50の形成面で全反射を行い、出射した光を、レンズ60、61を通して光ファイバー62内に導き、波長ごとの吸収データをパーソナルコンピュータPCに記憶した。この吸収データを図20に示す、この図20からわかるように、600nm付近に特有の吸収が得られている。このプリズムの角度を2度回転させて吸収を観測し、さらに角度を2度回転させて吸収を観測した。この結果、吸収ピークは長波長側にシフトした。この測定によってプラズモンポラリトンの発生を確認した。
【0081】
以上説明したように、本実施形態によれば、耐熱性を有するコアシェル型Auナノ粒子を用いて形成されプラズモンポラリトンが伝播する配線となる粒子層を備えた近接場光導波路を得ることができる。また、同様に、実施例8、9の粒子を用いて形成されプラズモンポラリトンが伝播する配線となる粒子層を備えた近接場光導波路を得ることができる。なお、実施例7、8、9の粒子を用いて形成される粒子層は、エキサイマー励起による蛍光発光スペクトルを示す。実施例7、8、9による粒子に含まれる化合物は以下の化学式で表される。
【化3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子およびこの粒子の層を有する近接場光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、さまざまな手法を用いてナノメートルサイズの径を有する粒子(ナノ粒子)が合成され、その利用法が見出されてきている。その中でも、例えば、特許文献1には、光の回折限界を超えた微小サイズの近接場導波路が、電子回路に変わって、光による微細回路構築の基礎となる技術として開示されており、この近接場導波路に用いられるナノ粒子が注目されている。ナノ粒子を活用して、薄膜を作製し、導波路のような形状で用いるためには、例えばナノ粒子を基板に堆積させ、その後にエッチング処理を行い、所望の構造を得る方法などが考えられる。こうして作製された導波路構造物においては、ナノ粒子が相当の耐熱性を有する必要がある。
【0003】
一般に、金属を含有したナノ粒子はサイズが小さくなるに伴って、その融点が著しく低下することが知られている。このことを利用して、最新の研究においても、銅ナノ粒子をインク状にし、これを基板上に塗布し、加熱することで銅配線を形成している。そして、加熱温度が低温であっても、金属ナノ粒子が充分に融解してバルク金属を形成するため、マイクロオーダーの配線形成が可能である(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−148289号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】エレクトロニクス実装学会誌、10、5、403、2007年
【非特許文献2】エレクトロニクス実装学会誌、9、7、533、2006年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、ナノ粒子はそのサイズが小さくなるのに伴って融点の降下が起こるため、粒子形状を維持したままデバイスとして用いるには耐熱信頼性の観点から問題が生じていた。このため、サイズがナノレベルの小径粒子でありながら、充分な耐熱性を有したナノ粒子の開発が急務となっている。ナノ粒子を利用したインクジェット方式の金属配線形成法では、250度の温度で有機物が完全に除去される。したがって、少なくとも250度以上の耐熱性を確保することが求められる。また、半導体の加工工程においては製造時に400度の加熱が行なわれることが多い。近接場光導波路としてこうした半導体回路中に利用するには400度に耐えうる必要がある。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、耐熱性を有する粒子およびこの粒子を用いて形成される配線を備えた近接場光導波路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様による粒子は、金属と、水素結合性基、前記水素結合性基と異なる吸着基A、および芳香環を含み下記の化学式に示す構造を有する化合物と、を備え、Mを前記金属、Aを吸着基(チオール基、アミノ基、カルボキシル基)、Bを水素結合性基(アミド結合基、ウレア結合基もしくはこれらの誘導体、またはチオール基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基の1つまたは複数を有する構造およびこれらの誘導体)、aを0以上の整数、bを0以上の整数、cを1以上の整数、R1を芳香環(π電子数24までの平面環)およびこの芳香環の誘導体、R2〜R5を水素原子、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、エーテル結合、エステル結合、シアノ基もしくはこれらの誘導体とするとき、前記化学式は以下の式で表されることを特徴とする。
【化1】
【0009】
本発明の第2の態様によるコアシェル型ナノ粒子は、金ナノ粒子と、前記金ナノ粒子のリガンドとして設けられ分子内に、チオール基、アミド結合、およびアルキレンを有するか、またはチオール基、カルボキシラト、およびアルキレンを有する化合物と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第3の態様による近接場光導波路は、支持基板と、第1の態様の粒子が前記支持基板上に堆積され、プラズモンポラリトンが伝播する配線となる粒子層と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐熱性を有する粒子およびこの粒子を用いて形成される配線を備えた近接場光導波路を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態のコアシェル型ナノ粒子の一例を示す模式図。
【図2】本発明の一実施形態において、リガンドに用いられる長鎖アルカンチオール誘導体の具体例を示す模式図。
【図3】図2(a)乃至図2(d)に示す長鎖アルカンチオール誘導体の合成ルートを説明する図。
【図4】図2(e)に示す化合物eの合成ルートを説明する図。
【図5】図2(f)に示す化合物fの合成ルートを説明する図。
【図6】比較例において、リガンドに用いられる長鎖アルカンチオール誘導体の具体例を示す模式図。
【図7】物質NP−a乃至物質NP−g、および物質NP−pのコアシェル型ナノ粒子のTEM画像を示す写真。
【図8】物質NP−aのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図9】物質NP−bのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図10】物質NP−cのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図11】物質NP−dのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図12】物質NP−eのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図13】物質NP−fのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図14】物質NP−gのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図15】分解開始温度の求め方を説明する図。
【図16】近接場光導波路の形成工程を示す断面図。
【図17】近接場光導波路の形成工程を示す断面図。
【図18】形成された導波路の配線パターンを示す写真。
【図19】導波路の特性を測定する光学系を示す図。
【図20】図19に示す光学系によって測定された一実施形態の導波路の特性を示す図。
【図21】化合物pの模式図。
【図22】化合物pの合成ルートを説明する図。
【図23】物質NP−pのコアシェル型ナノ粒子の模式図。
【図24】化合物pと物質NP−pとの蛍光測定結果を示す図。
【図25】コアとなる金属粒子と結合する化合物の一具体例に示した模式図。
【図26】化合物qの模式図。
【図27】化合物qの合成ルートを説明する図。
【図28】物質NP−qの粒子の模式図。
【図29】化合物rの模式図。
【図30】化合物rの合成ルートを説明する図。
【図31】物質NP−rの粒子の模式図。
【図32】物質NP−qおよび物質NP−rの粒子のTEM画像を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明の概要を説明する。
【0014】
ナノ粒子には多くの形態が存在するが、基板上に塗布して膜を形成するためには、有機溶剤に分散するナノ粒子であることが望ましい。また、高濃度に有機溶剤に分散する必要もある。このような要求から、本発明者達は、導波路構造に用いるナノ粒子として、有機物と金属の複合体からなる金属ナノ粒子(コアシェル型ナノ粒子)を選択した。このコアシェル型ナノ粒子は、中央に金属からなるナノ粒子コアがあり、その周囲に化学結合によって有機物がシェルとして配置された形状である。このような粒子においては、粒子としてよりも有機物としての性質が強く現れる。すなわち、一般的な低分子化合物のように固体として回収することができ、再び有機溶媒に溶けても二次凝集体が残らずに均一分散を得ることができる。また、金属粒子の表面の金属原子と有機物の間に結合力が生じている特長もある。例えばコアの金属粒子として金を選択し、有機物にチオール化合物を選択すると、コア表面の金原子とチオール化合物内の硫黄原子との間に化学結合が生じる。
【0015】
このような形態のコアシェル型ナノ粒子では、溶剤への分散性が有機物のシェルによって決定されるため、可溶性を高めることも容易である。このような粒子を基板上に塗布して堆積され、導波路状に加工して用いる。この時、複数のナノ粒子のコアとなる金属部分はシェルの有機物で隔てられて存在することになる。この形状を保持することでプラズモンポラリトン型の近接場光導波路としての機能が得られる。
【0016】
しかしながら、金原子とチオール化合物内の硫黄原子との間の化学結合を加熱によって切断され、コアの金粒子同士が融着してバルク化する。この現象はわずか100℃〜200℃程度の比較的低温で発生してしまう。この原理を利用したインクジェット型の電気伝導型配線形成が行なわれている(非特許文献1、2参照)。
【0017】
しかし、この現象は、本発明の一実施形態による近接場光導波路にとっては、導波路形成維持の障害となる。これは導波路加工時には加熱工程を行う必要があるため、ナノ粒子が充分な耐熱性を有していないと加工が行なえず、また製品としての耐熱信頼性が損なわれる可能性もある。
【0018】
こうした特有の問題を克服するために、本発明者達は、コアシェル型ナノ粒子のシェルを形成している有機物同士の相互作用に着目した。このコアシェル型ナノ粒子においては、コアとなる金属粒子の表面には複数の有機物が結合しているが、有機物同士の相互作用を強めることで、有機物が金属粒子から乖離するのを防止する力とする。有機分子がかご状に結合を作り、コアの金属粒子の周囲をしっかりと囲い込む。この効果によって耐熱性の向上を図る。
【0019】
しかし、分子間に最も結合力の強い共有結合を入れるのは困難である。光重合などを使って共有結合を作る方法もありえるが、金属粒子の周囲に配置された有機物間だけでなく、金属粒子間をまたいで結合が形成されるため、溶解性が著しく低下する問題がある。次に強い結合はイオン結合であるが、イオン性分子は結晶化しやすいことや有機溶媒への親和性が低いことなど、製膜上の障害が多い。
【0020】
より簡便にかつ確実にコア金属の周囲にある有機分子の相互間の結合を導入するためには、水素結合を用いることが考えられる。そこで、本発明の一実施形態では、有機物内にアミドのO原子やN原子を入れて水素結合を発生させる方法を用いる。N−H部とC=O部が隣の分子のNやOと水素結合を形成して安定力を得る。しかし、水素結合だけでは相互作用が充分とは言えない。1つの水素結合の結合力は約20kJ/molであり、一般的な共有結合である炭素−炭素間の結合力である約840kJ/molと比べて1桁小さい。充分な結合力を得るために、複数の水素結合を形成する要素を作り結合力を高める方法が考えられる。しかし、これは分子を直線状に長くすることを意味しており、薄膜化して導波路を形成した時に、ナノ粒子のコアとなる金属粒子の間隔が離れてしまい、導波効率を低下させる恐れがある。コアの金属粒子の間隔が離れてしまうと、入射した光の導波損失が大きくなる。これは、特許文献1に示された光がプラズモンとしてコアの金属粒子の表面を伝わる原理から容易に推測される。よって、分子の長さを長くして水素結合の数を増やす方法は望ましくない。
【0021】
そこで、別の結合手段としてπ電子間の相互作用を導入した。分子の末端に芳香環を導入してπ−π間の相互作用を設けることで、分子間の結合が強固となる。π−π間の相互作用は芳香環の間に働くロンドン分散力であって水素結合よりも結合力の桁が小さい。しかしながら、π−π間の結合を作りやすい環境が整えば、弱い相互作用も大きな結合効果を生み出す。例えば、ディスコティック型の液晶ではπ−π間の結合によって分子が規則的に配列する。また、たんぱく質内においても立体的な分子形状を安定化させる重要な要素の1つとなっている。これはπ−π間の相互作用を行なえる立体的な環境が整えば、一定の傾向を持って配列するのに充分なエネルギーをπ−π間の相互作用が持つことを示している。
【0022】
本発明の一実施形態のコアシェル型ナノ粒子においても、コアとなる金属粒子のリガンドに水素結合を設けて、一番外側に芳香環を設けることで、芳香環が配列しやすくπ−π間の相互作用が発生する環境を作り出した。この様子を示した模式図を図1に示す。図1において、Dは水素結合形成部位である。コアとなる金属粒子と結合する化合物の一具体例を図25に示す。この化学物は以下の式で表される。
【化2】
ここで、Mは金属を形成する物質、Aは吸着基(チオール基、アミノ基、カルボキシル基)、Bは水素結合性基(アミド結合基、ウレア結合基もしくはこれらの誘導体、またはチオール基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基の1つまたは複数を有する構造およびこれらの誘導体)、aは0以上の整数、bは0以上の整数、cは1以上の整数、R1は芳香環(π電子数24までの平面環)およびこの芳香環の誘導体、R2〜R5は水素原子、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、エーテル結合、エステル結合、シアノ基もしくはこれらの誘導体である。この手法によりπ−π間の結合が効果的に発揮され、水素結合だけの分子よりも著しい耐熱性向上を実現した。
【0023】
水素結合性基として様々なものが考えられるが、言葉の定義が不明瞭なので、本明細書内で言葉の定義を行なう。化学大辞典(共立出版社)によると、アミドとは「アミノ基−NH2が酸基と結合してRCONH−形になった時の基の呼称」とある。また、ウレア(尿素)とは(H2N−CO−NH2)で表される。一方で、アミンとは「アンモニアの水素原子を炭化水素残基で置換した化合物」とある。したがって、アミドやウレアはアミンの一部とみなすことができる。しかし、本明細書ではアミドの構造(−NH−CO−)を有するものをアミド結合基と呼び、ウレア(−NH−CO−NH−)の構造を有するものを特にウレア結合基と呼び、アミンもしくはアミノ基とは別の概念として説明する。同様にアミドもしくはウレアはカルボニルもしくはカルボニル基とは異なるものとして説明する。
【0024】
前述の説明では、水素結合性基をアミドに限ってエネルギーの関係を説明したが、水素結合性基はアミドに限定されるものではない。アミドはC=OとN−Hが隣り合っており、多数の分子にわたって連続的に水素結合を形成できる利点があるため、これを用いることが望ましいが、ウレア結合基でも同様の効果が得られる。分子が直鎖状であって分子の先にπ−πスタッキングを行なう芳香環があることを考慮すると、結合に自由度があり、かつ連続した水素結合が得られ、粒子に近い部位に設けられるため占有体積が小さいと言った条件が望まれる。これらを考慮すると、アミドを利用するのが最も望ましい。また効果は劣るがチオール基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基などを用いても良い。
【0025】
本発明の一実施形態において、リガンドに用いられる化合物(長鎖アルカンチオール誘導体)を図2(a)乃至図2(f)に示す。図2(a)乃至図2(d)の化学式は、ノルマル−アルキルアミンの炭素鎖数がそれぞれ8、12、16、18の場合の化合物を示し、同図においては、括弧の右下の数字は、繰り返し数を示している。なお、図2(a)乃至図2(d)に示す化合物は、チオール基と、アミド結合と、アルキレン(アルキル基)とを有している。また、図2(e)に示す化合物は、チオール基と、カルボキシラトと、アルキレン(アルキル基)と、芳香環(トリル基)とを有している。図2(f)に示す化合物は、チオール基と、アミド結合と、アルキレン(アルキル基)と、芳香環とを有している。
【0026】
次に、図2(a)乃至図2(d)に示す化合物の合成方法について、図3を参照して説明する。
【0027】
S−トリフェニルメチルメルカプト−3−プロピオン酸4の合成
3.14gの3−メルカプトプロピオン酸2を塩化メチレン50mlに溶解した。ここに8.36g(30mmol)のトリフェニルメチルクロリド3を加えて室温で19時間の保護反応を行った。この保護反応で生じた沈殿物を濾集し、40mlのジエチルエーテルで洗浄した後、減圧下で乾燥させて9.86gの白色固体である、S−トリフェニルメチルメルカプト−3−プロピオン酸4を得た。
【0028】
N−アルキル−3−(S−トリチルスルファニル)プロパンアミド6の合成
次に、500mlの三つ口フラスコを減圧乾燥した後、窒素雰囲気下で所定量のS−トリフェニルメチルメルカプト−3−プロピオン酸4と、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロリド(EDC)と、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)とを上記フラスコ内で塩化メチレンに溶解した。ここに、所定量のノルマル−アルキルアミン5を加えて室温で一晩攪拌した。なお、ノルマル−アルキルアミン5の添加は、ノルマル−アルキルアミン5の炭素鎖数が8、12、16、18の場合、それぞれに対して行った。続いて、それぞれの反応混合物を飽和硫酸水素ナトリウム水溶液100mlで2回、純水100mlで2回、飽和食塩水100mlで2回洗浄した後、有機相(塩化メチレン相)に硫酸マグネシウムを加えて一晩乾燥した。乾燥剤を濾過した後、溶媒を留去し、目的物であるN−アルキル−3−(S−トリチルスルファニル)プロパンアミド6を得た。これらを再結晶により精製した。
【0029】
N−アルキル−3−メルカプトプロパンアミド7(以下、化合物a乃至化合物dともいう)の合成
次に、100mlの丸底フラスコにN−アルキル−3−(S−トリチルスルファニル)プロパンアミド6と、トリフルオロ酢酸を加えて攪拌し、橙色の均一な溶液にした。ここにトリエチルシランを加え、白色の沈殿物を生成する。このとき溶液は透明になった。この状態で溶媒を減圧留去し、固体残渣を塩化メチレン100mlに溶解して100mlの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。塩化メチレン相を硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧留去した。得られた固体残渣をカラムクロマトグラフィーで精製し、白色固体となるN−アルキル−3−メルカプトプロパンアミド7(化合物a乃至化合物d)を得た。このようにして、図2(a)乃至図2(d)に示す、ノルマル−アルキルアミン5の炭素鎖数nが、8、12、16、18である化合物a、化合物b、化合物c、化合物dを得た。
【0030】
次に、本発明の一実施形態において、リガンドに用いられる長鎖アルカンチオール誘導体である図2(e)に示す化合物3−メルカプトプロピオン酸 11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシルエステル18(以下、化合物eともいう)の合成について図4を参照して説明する。図4は、分子内にトリル基とエステル結合を有するチオール誘導体である化合物eの合成ルートを示す図である。
【0031】
3−メルカプトプロピオン酸 11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシルエステル18(化合物e)の合成
まず、3−メルカプトプロピオン酸12のチオール基をトリチル基で保護し、化合物14を合成した。次に、ウイリアムソンのエーテル合成により化合物11−ブロモウンデカン−1−オール15のブロモ基をトリル基に置換し、化合物16を合成した。続いて、化合物14と、化合物16の脱水縮合反応によりエステル結合を有する化合物17を合成した。その後、脱保護反応によってトリチル基を除き、目的物である化合物bを得た。
【0032】
3−(S−トリチルスルファニル)プロピオン酸14の合成
3.14gの3−メルカプトプロピオン酸12を塩化メチレン50mlに溶解した。ここに8.36gのトリフェニルメチルクロリド13を加えて室温で19時間反応させた。反応で生じた沈殿物を濾集し、得られた固体成分を減圧乾燥させて白色固体の3−(S−トリチルスルファニル)プロピオン酸14を9.86g得た。
【0033】
(11−ヒドロキシウンデシル)トリルエーテル16の合成
3.68gの11−ブロモウンデカン−1−オール15と、4.88gのp−クレゾールを20mlのエタノールに溶解し、ここに水酸化カリウム2.57gを加えて、24時間還流した。室温まで冷却した後、反応溶液を分液漏斗に移し、イオン交換水100mlと塩化メチレン50mlを加えて分液した。有機相を回収して硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で除去し、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた固体をトルエン50mlに再溶解し、10wt%水酸化カリウム水溶液50mlで2回、飽和食塩水50mlで洗浄した後、有機相を回収し、硫酸ナトリウムで脱水した。乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去して白色固体の(11−ヒドロキシウンデシル)トリルエーテル16を4.08g得た。
【0034】
3−(S−トリチルスルファニル)プロピオン酸 11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシルエステル17の合成
1.86gの化合物14、0.896gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロリド(EDC)、0.029gの4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を塩化メチレン300mlに溶解した。ここに、3.04gの化合物16を加えて室温で24時間撹拌した後、反応溶液を分液漏斗に移して、10%硫酸水素カリウム水溶液100mlで2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで2回、イオン交換水100mlで2回、飽和食塩水100mlで2回洗浄した。回収した塩化メチレン相を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をクロマトグラフィーで精製し、白色固体の3−(S−トリチルスルファニル)プロピオン酸 11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシルエステル17を2.63g得た。
【0035】
3−メルカプトプロピオン酸 11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシルエステル18(化合物e)の合成
1.11gの化合物17を100mlの丸底フラスコに量りとり、トリフルオロ酢酸10mlを加えて攪拌し、オレンジ色の均一溶液を得た。ここにトリエチルシラン0.9mlを加えて白色の沈殿を生成させた後、上澄みの液体(透明)を減圧留去して除き、得られた固体をクロマトグラフィーで精製し、白色固体の化合物eを0.6g得た。
【0036】
次に、本発明の一実施形態において、リガンドに用いられる長鎖アルカンチオール誘導体である図2(f)に示す化合物(N−(11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシル)−3−メルカプトプロパンアミド26(以下、化合物fともいう)の合成について図5を参照して説明する。図5は、分子内にトリル基とアミド結合を有するチオール誘導体である化合物fの合成ルートを示す図である。
【0037】
N−(11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシル)−3−メルカプトプロパンアミド26(化合物f)の合成
化合物21のヒドロキシ基を三臭化リンによってブロモ基に置換し、化合物22を合成した。次に、ブロモ基をアジド基に置換した後、水素化リチウムアルミニウムでアミノ基に還元し、化合物23を合成した。続いて、化合物23と、化合物24を反応させてアミド結合を有する化合物25を合成した。その後、脱保護反応によりトリチル基を除いて、目的物である化合物fを得た。
【0038】
(11−ブロモウンデシル)トリルエーテル22の合成
モレキュラーシーブスで脱水した塩化メチレン10mlに、1.31gの化合物21を溶解させ、氷浴上で冷却した。ここに乾燥塩化メチレン10mlに溶解した1.70gの三臭化リンを滴下し、氷浴で4時間、室温で21時間攪拌した。その後、エバポレータで溶媒を除去し、新たに30mlの酢酸エチルを加えて、純水25mlで2回洗浄した。回収した有機相を硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過して取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:塩化メチレン)で精製し、白色固体の11−ブロモウンデシル)トリルエーテル22を0.5g得た。
【0039】
(11−アミノウンデシル)トリルエーテル23の合成
0.506gの化合物22を50mlのアセトニトリルに溶解し、ここにアジ化ナトリウム0.395gを加え、還流下で29時間、室温で95時間反応させた。室温まで徐冷した後、濾過して固体成分を除去した。濾液の溶媒を減圧留去し、透明で粘調な液体0.313gを得た。窒素雰囲気下で水素化カルシウムから蒸留したTHF15mlにこの液体を溶解し、氷浴で冷却した。次に、水素化リチウムアルミニウム0.054gを乾燥THF20mlに溶解して滴下し、氷浴下で1時間攪拌をした後、イオン交換水80μl、15wt%水酸化カリウム水溶液80μl、イオン交換水240μlを加えて反応を停止した。生じた沈殿を濾過で除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた固体に30mlの酢酸エチルを加えて溶解させ、イオン交換水30mlで2回洗浄した後、有機相を回収して硫酸マグネシウムで脱水した。乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去し、白色固体の(11−アミノウンデシル)トリルエーテル23を0.2g得た。
【0040】
N−(11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシル)−3−(S−トリチルスルファニル)プロパンアミド25の合成
0.174gの化合物23、0.123gのEDC、0.009gのDMAP、0.220gの化合物24を塩化メチレン50mlに溶解させ、室温で22時間攪拌した。その後、反応溶液を分液漏斗に移して、10%の塩酸50mlで2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mlで2回、イオン交換水50mlで2回、飽和食塩水50mlで2回洗浄した。回収した有機層を、硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をクロマトグラフィーで精製し、白色固体のN−(11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシル)−3−(S−トリチルスルファニル)プロパンアミド25を0.2g得た。
【0041】
N−(11−(パラ−トリルオキシ)ウンデシル)−3−メルカプトプロパンアミド26(化合物f)の合成
0.181gの化合物25を塩化メチレン1mlに溶解させ、攪拌しながらトリフルオロ酢酸0.5mlを加え、褐色の溶液を得た。ここにトリエチルシラン0.16mlを加えて白色の沈殿が生じさせた後、上澄みの液体を減圧留去した。得られた固体に塩化メチレン20mlを新たに加えて溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30mlで2回、飽和食塩水30mlで2回洗浄した。回収した有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をクロマトグラフィーで精製し、白色固体の化合物fを0.1g得た。
【0042】
次に、上述した方法によって得られた化合物a、化合物b、化合物c、化合物d、化合物e、化合物fをリガンドとして有するコアシェル型ナノ粒子の形成について説明する。
【0043】
500mlの三角フラスコに0.65gのテトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)をとり、トルエン160mlに溶解した。ここに0.20gのテトラクロロ金酸・四水和物をイオン交換水60mlに溶解した溶液を加え、激しく攪拌した。有機相が黄色くなった後、上記合成した化合物a、b、c、d、e、fのいずれかをTOABの1/2モル分をトルエン20mlに溶解した溶液を加え、15分攪拌した。続いて0.23gの水素化ホウ素ナトリウムを水60mlに溶解して加え、室温で激しく攪拌しながら1晩反応させた。反応終了後の有機相を回収し、エバポレータで濃縮した。これをメタノール100mlに少量ずつ攪拌しながら滴下し、金ナノ粒子の再沈殿を行った。1晩攪拌を継続した後、フィルターで減圧濾過し、固体を回収した。それぞれ黒色固体を0.1g程度得ることができた。
【0044】
次に、本発明の一実施形態において、リガンドに用いられる化合物(長鎖アルカンチオール誘導体)の他の例(以下、化合物pという)を図21に示し、その合成方法を図22に示す。この化合物pは、図21に示すように、4−(ピレン−1−イル)ブタン酸11−(3−メルカプトプロパンアミド)ウンデシルエステルであって、チオール基と、アミド結合と、アルキレン(アルキル基)と、カルボキシラトと、芳香環とを有している。
【0045】
4−(ピレン−1−イル)ブタン酸11−(3−メルカプトプロパンアミド)ウンデシルエステル37(化合物p)の合成
図22に示すように、11−ブロモウンデカン−1−オール31のブロモ基をSN2反応によってアジド基に置換した後、水素化リチウムアルミニウムでアミノ基に還元し、化合物32を合成した。続いて、化合物32と化合物33を反応させてアミド結合を有する化合物34を合成した。さらに化合物34と4−(ピレン−1−イル)ブタン酸35の脱水縮合によりエステル結合を形成し、化合物36を合成した後、脱保護反応によりトリチル基を除いて、目的物である化合物37(化合物p)を得た。
【0046】
以下に、化合物32、化合物34、化合物36、および化合物37のより詳細な合成方法を説明する。
【0047】
11−アミノウンデカン−1−オール32の合成
15.1gの11−ブロモウンデカン−1−オール31を250mlのアセトニトリルに溶解し、ここに15.7gのアジ化ナトリウムを加え、還流下で18時間反応させた。室温まで徐冷した後、濾過して固体成分を除去した。濾液の溶媒を減圧留去し、透明で粘調な13.9gの液体を得た。このうち8.34gを窒素雰囲気下で水素化カルシウムから蒸留した60mlのTHFに溶解し、氷浴で冷却した。次に、2.53gの水素化リチウムアルミニウムを脱水し、250mlのTHFに溶解して滴下し、氷浴下で1時間撹拌をした後、イオン交換水2.5ml、15wt%の水酸化ナトリウム水溶液3.5ml、イオン交換水7.5mlを加えて反応を停止した。生じた沈殿を濾過で除き、濾液の溶媒を減圧留去した。濾液を減圧下で乾燥した後、THF60mlに溶解し、同体積のヘプタンを加えて生じた沈殿を濾集して、5.1gの白色固体32を得た。
【0048】
N−(ウンデシル−11−オール)−3−(トリチルチオ)プロパンアミド34の合成
2.44gの化合物33、1.35gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロリド、および0.09gの4−ジメチルアミノピリジンを塩化メチレン100mlに溶解した。ここに塩化メチレン100mlに分散させた1.30gの化合物32を滴下して室温で22時間撹拌した。その後、反応溶液を分液漏斗に移して、10%塩酸200mlで、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液200ml、イオン交換水200ml、飽和食塩水200mlの順で洗浄した。回収した塩化メチレン相を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、2.1gの白色固体34を得た。
【0049】
4−(ピレン−1−イル)ブタン酸 11−(3−(トリチルチオ)プロパンアミド)ウンデシルエステル36の合成
0.218gの4−(ピレン−1−イル)ブタン酸35、0.147gの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロリド、0.019gの4−ジメチルアミノピリジンを塩化メチレン100mlに溶解した。ここに塩化メチレン50mlに溶解させた、0.383gの化合物34を加えて室温で23時間撹拌した。その後、反応溶液を分液漏斗に移して、10%塩酸100ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100ml、イオン交換水100ml、飽和食塩水100mlの順で洗浄した。回収した塩化メチレン相を硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、0.35gの黄色固体36を得た。
【0050】
4−(ピレン−1−イル)ブタン酸 11−(3−メルカプトプロパンアミド)ウンデシルエステル37の合成
0.297gの化合物36を100mlの丸底フラスコに量りとり、トリフルオロ酢酸2.7mlを加えて撹拌し、茶褐色の均一溶液を得た。ここにトリエチルシラン0.2mlを加えて黄色の沈殿を生成させた後、上澄みの液体を減圧留去した。得られた固体に塩化メチレン50mlを新たに加えて溶解させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、イオン交換水50ml、飽和食塩水50mlの順で洗浄した。回収した有機相を硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、0.16gの黄色固体37(化合物p))を得た。
【0051】
次に、このようにして得られた化合物pをリガンドとして有するコアシェル型ナノ粒子の形成について説明する。
【0052】
500mlの三角フラスコに0.222gのテトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)をとり、トルエン55mlに溶解した。ここに71mgのテトラクロロ金酸・四水和物をイオン交換水20mlに溶解した溶液を加え、激しく攪拌した。有機相が黄色くなった後、上記合成した化合物pをTOABの1/2モル分をトルエン20mlに溶解した溶液を加え、15分攪拌した。続いて83mgの水素化ホウ素ナトリウムを水20mlに溶解して加え、室温で激しく攪拌しながら1晩反応させた。反応終了後の有機相を回収し、エバポレータで濃縮した。これをメタノール100mlに少量ずつ攪拌しながら滴下し、金ナノ粒子の再沈殿を行った。1晩攪拌を継続した後、フィルターで減圧濾過し、固体を回収した。0.08g程度の黒色固体(ナノ粒子NP−p)を得ることができた。
次に、化合物の芳香環部分をペリレンにした化合物qを有する粒子の形成について図26および図27を参照して説明する。この化合物qは、ペリレン環とアミド結合を有するチオール誘導体であって、その構成を図26に示し、合成方法を図27に示す。
【0053】
4−(ペリレン−1−イル)ブタン酸 11−(3−メルカプトプロパンアミド)ウンデシルエステル(化合物q)の合成
初めに、ペリレン71と無水コハク酸のFriedel−Craftsアシル化反応により、化合物72を合成した後、Wolff−kishiner還元反応によりベンジル位のカルボニルを除き化合物73を得た。さらに化合物73と化合物74との脱水縮合によりエステル結合を形成し、化合物75を合成する。その後、脱保護反応によりトリチル基を除いて、目的物である化合物76(化合物q)を得た。なお、化合物74はChambersらの手法に従って合成した。
【0054】
γ−オキソ−4−(ペリレン−1−イル)ブタン酸72の合成
500mLの三口フラスコに、5.01g(19.8mmol)のペリレン71と、4.34g(43.4mmol)の無水コハク酸を加え、窒素置換して氷浴に浸した。ここに塩化メチレン200mLに分散させた、16.3g(122mmol)の塩化アルミニウムをゆっくり滴下した後、反応容器を氷浴から取り出して、室温で13時間撹拌した。反応終了後、冷却した2M塩酸を40mL加えて30分間撹拌して、生じた固体を濾過で回収した。この固体を100mLのキシレンに分散させて140℃まで加熱して不純物を抽出した。室温まで徐冷した後、固体を濾集し、減圧下で乾燥して、6.99gの褐色固体72を得た。
【0055】
4−(ペリレン−1−イル)ブタン酸73の合成
0.390g(1.11mmol)の化合物72と、0.4mLの79%含水ヒドラジンと、0.290g(7.25mmol)の水酸化ナトリウムとを、3.0mLのジエチレングリコールに溶解させ、180℃のオイルバスで90分還流した後、過剰量のヒドラジンと水を留去し、さらに2時間還流を続けた。反応終了後、室温まで冷却して固体を析出させた。生じた固体を濾集し、イオン交換水と2M塩酸で洗浄した後、減圧下で乾燥させた。この固体を10mLのキシレンに分散させて140℃まで加熱して溶解させた後、室温まで徐冷して固体を析出させた。生じた固体を濾集し、減圧下で乾燥して0.375gの黒色の固体73を得た。
【0056】
4−(ペリレン−1−イル)ブタン酸11−(3−(トリチルチオ)プロパンアミド)ウンデシルエステル75の合成
67mg(0.20mmol)の化合物73と、39mg(0.21mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロリド(EDC)と、12mg(0.10mmol)の4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)とを、30mLの塩化メチレンに溶解した。ここに105mg(0.20mmol)の化合物74を加えて室温で17時間撹拌した。その後、反応溶液を分液漏斗に移して、30mLの10%塩酸で2回、30mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、30mLのイオン交換水で2回、30mLの飽和食塩水で2回洗浄した。回収した塩化メチレン相を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、62mgの黄色固体75を得た(収率36%)。なお、シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、展開溶媒として塩化メチレン/酢酸エチル(=15/1(容積比))を用いた。
【0057】
4−(ペリレン−1−イル)ブタン酸 11−(3−メルカプトプロパンアミド)ウンデシルエステル76の合成
54mg(0.066mmol)の化合物75を100mLの丸底フラスコに量りとり、トリフルオロ酢酸を1.0mL加えて撹拌し、黄緑色の均一溶液を得た。ここにトリエチルシランを0.1mL加えて茶色の沈殿を生成させた後、上澄みの液体を減圧留去した。得られた固体に塩化メチレンを20mL新たに加えて溶解させ、20mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、20mLのイオン交換水で1回、20mLの飽和食塩水で1回洗浄した。回収した有機相を硫酸マグネシウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、26mgの黄色固体(化合物76(化合物q))を得た。収率は67%であった。なお、シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、展開溶媒として、初め塩化メチレンのみから徐々に極性を上げていき最終的に塩化メチレン/酢酸エチル(=5/2(容積比))を用いた。
【0058】
ぺリレン含有金ナノ粒子(NP−q)の作製
200mLの三角フラスコに、85mg(0.16mmol)のテトラ−n−オクチルアンモニウムブロミドを量りとり、36mLのトルエンに溶解した後、12mLのイオン交換水に溶解したテトラクロロ金酸・四水和物を27mg(0.065mmol)加えて激しく撹拌した。次に、12mLのトルエンに溶解した48mg(0.080mmol)の化合物76を加えて15分間撹拌した後、12mLのイオン交換水に溶解した32mg(0.83mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを加え、激しく撹拌しながら室温で1晩反応させた。反応混合液を500mLの褐色分液ロートに移してトルエン相を回収した後、水浴の温度を30℃に設定したエバポレータで液量が5mL程度になるまで濃縮した。この濃縮液を30mLのメタノールに滴下し、室温で一晩撹拌した後、生じた沈殿を濾集した。得られた固体の光学顕微鏡観察を行い、不純物であるアンモニウム塩の透明結晶が観察された場合には、固体を約1mLのクロロホルムに溶解し、同様の再沈殿操作を行った。この操作を透明結晶が確認されなくなるまで合計3回行った後、減圧乾燥させて26mgの黒色の粒子(NP−q)を得た。この粒子の構成を図28に示す。
【0059】
次に、化合物の芳香環部分をコロネンにした化合物rを有する粒子の形成について図29および図30を参照して説明する。この化合物rの構成を図29に示し、合成方法を図30に示す。
【0060】
γ−オキソ−4−(コロネン−1−イル)ブタン酸82の合成
100mLの二口フラスコに0.699g(2.33mmol)のコロネン81と、0.514g(5.14mmol)の無水コハク酸を加え、窒素置換して氷浴に浸した。ここに20mLのニトロベンゼンに溶解させた2.80g(21.0mmol)の塩化アルミニウムをゆっくり滴下した後、反応容器を氷浴から取り出して、室温で5時間撹拌した。反応終了後、冷却した2M塩酸を10mL加えて10分間還流した後、室温まで徐冷して固体を析出させた。固体をろ過で回収して、20mLのキシレンに分散させて140℃まで加熱して溶解させた後、室温まで徐冷して固体を析出させた。生じた固体を濾集し、減圧下で乾燥して0.825gの黄緑色の固体82を得た。
【0061】
4−(コロネン−1−イル)ブタン酸83の合成
0.503g(1.26mmol)の化合物82と、0.4mLの79%含水ヒドラジンと、0.462g(11.6mmol)の水酸化ナトリウムとを3.0mLのジエチレングリコールに溶解させ、180℃のオイルバスで90分還流した後、過剰量のヒドラジンと水を留去し、さらに2時間還流を続けた。反応終了後、室温まで冷却して固体を析出させた。生じた固体を濾集し、イオン交換水で洗浄した後、減圧下で乾燥させた。この固体を10mLのキシレンに分散させて140℃まで加熱して溶解させた後、室温まで徐冷して固体を析出させた。生じた固体を濾集し、減圧下で乾燥して0.431gの茶褐色の固体83を得た。なお、1HNMRは生成物が重溶媒に難溶のため未測定であった。
【0062】
4−(コロネン−1−イル)ブタン酸 11−(3−(トリチルチオ)プロパンアミド)ウンデシルエステル85の合成
0.200g(0.517mmol)の化合物83と、0.103g(0.538mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロリド(EDC)と、0.011g(0.090mmol)の4−ジメチルアミノピリジン(DMAP) とを100mLの塩化メチレンに溶解した。ここに、0.268g(0.517mmol)の化合物84を加えて室温で23時間撹拌した。その後、反応溶液を分液漏斗に移して、100mLの10%塩酸で2回、100mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、100mLのイオン交換水で2回、100mLの飽和食塩水で2回洗浄した。回収した塩化メチレン相を硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、0.168gの黄色固体85を得た。収率は37%であった。なお、シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、展開溶媒として塩化メチレン/酢酸エチル(=10/1(容積比))を用いた。
【0063】
4−(コロネン−1−イル)ブタン酸 11−(3−メルカプトプロパンアミド)ウンデシルエステル86(化合物r)の合成
0.161g(0.182mmol)の化合物85を100mLの丸底フラスコに量りとり、トリフルオロ酢酸を2.0mL加えて撹拌し、黄緑色の均一溶液を得た。ここにトリエチルシランを0.5mL加えて茶色の沈殿を生成させた後、上澄みの液体(透明)を減圧留去した。得られた固体に塩化メチレンを20mL新たに加えて溶解させる。続いて、20mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、20mLのイオン交換水で2回、20mLの飽和食塩水で2回洗浄した。回収した有機相を硫酸ナトリウムで脱水した後、乾燥剤を濾過で取り除き、濾液の溶媒を減圧留去した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、0.061gの黄色固体(化合物86(化合物r))を得た。収率は52%であった。なお、シリカゲルカラムクロマトグラフィーには、展開溶媒として、初め塩化メチレンのみから徐々に極性を上げていき最終的に塩化メチレン/酢酸エチル(=2/1(容積比))を用いた。
【0064】
コロネン含有金ナノ粒子(NP−r)の作製
200mLの三角フラスコに、0.086g(0.158mmol)のテトラ−n−オクチルアンモニウムブロミドを量りとり、36mLのトルエンに溶解した後、12mLのイオン交換水に溶解した0.029g(0.070mmol)のテトラクロロ金酸・四水和物を加えて激しく撹拌した。次に、25mLのトルエンに加熱溶解した0.051g(0.079mmol)の化合物86を加えて15分間撹拌した後、12mLのイオン交換水に溶解した0.031g(0.817mmol)の水素化ホウ素ナトリウムを加え、激しく撹拌しながら室温で1晩反応させた。反応混合液を500mLの褐色分液ロートに移してトルエン相を回収した後、水浴の温度を30℃に設定したエバポレータで液量が5mL程度になるまで濃縮した。この濃縮液を30mLのメタノールに滴下し、室温で一晩撹拌した後、生じた沈殿を濾集した。得られた固体の光学顕微鏡観察を行い、不純物であるアンモニウム塩の透明結晶が観察された場合には、固体を約5mLのトルエンに溶解し、同様の再沈殿操作を行った。この操作を透明結晶が確認されなくなるまで合計3回行った後、減圧乾燥させて66mgの黒色の粒子(NP−r)を得た。この粒子(NP−r)の構成を図31に示す。また、粒子(NP−q)および粒子(NP−r)のTEM画像を図32に示す。
【0065】
(比較例)
また、比較例として、和光純薬製のノルマル−1−ドデカンチオール(以下、化合物gともいう)をリガンドとして用いたコアシェル型ナノ粒子の作成を、上述した場合と同様にして行ない、黒色粉末を0.1g得た。なお、化合物gの化学式を図6に示す。
【0066】
以下、コアシェル型ナノ粒子を以下のように称する。
化合物aのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−a(実施例1)
化合物bのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−b(実施例2)
化合物cのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−c(実施例3)
化合物dのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−d(実施例4)
化合物eのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−e(実施例5)
化合物fのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−f(実施例6)
化合物pのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−p(実施例7)
化合物gのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−g(比較例)
化合物qのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−q(実施例8)
化合物rのチオールから得られた黒色固体の物質名をNP−r(実施例9)
【0067】
次に、このようにして得られた物質NP−a乃至物質NP−g、および物質NP−pのコアシェル型ナノ粒子のTEM画像を図7(a)乃至図7(g)、および図7(p)にそれぞれ示す。また、物質NP−a乃至物質NP−gのコアシェル型ナノ粒子の模式図を図8乃至図14に示す。また、物質NP−pのコアシェル型ナノ粒子の模式図を図23に示す。
【0068】
次に、物質NP−a乃至物質NP−g、および物質NP−p乃至物質NP−rのコアシェル型ナノ粒子の熱分析を行った。この熱分析は、示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6300(SII製)を用いて行なった。空気中の酸素の影響が出ないように窒素気流下(150ml/分)で行った。分解開始温度は、図15に示すように、重量減少前の平坦部(ベースライン)の直線部分と転移領域の変曲点との接線とを外挿して得られる交点の温度(補外点)として求められる。
【表1】
【0069】
次に熱分析測定として、示差走査熱量分析DSC6200(SII製)を用いて、吸熱および発熱ピークを調べた。空気中の酸素の影響が出ないように窒素気流下(150mL/分)で行った。この結果を表2に示す。
【表2】
【0070】
表1、表2からわかるように、水素結合を示す分子構造と、π―π間の相互作用を生み出す分子構造を共に有する場合(実施例6乃至9)においてのみ、吸熱ピークを示す。このエネルギーは分子間の相互作用に強く依存したものであり、水素結合とπ―π間の相互作用を共に有する化合物の特異な安定性を示している。
【0071】
表1からわかるように、比較例では分解開始温度が249℃である。しかし、実施例1のように水素結合能力を持つNを入れると分解開始温度が上昇する。わずか3℃程度であるが、図8および図14に示したように、物質NP−gと、物質NP−aとは分子の長さが異なる。物質NP−aの方が分子の長さが短いにも関わらず、分解開始温度は高くなった。このように水素結合の影響は非常に大きい。さらに物質NP−b、物質NP−c、物質NP−dと分子量を伸ばしていくと、分子間に働くファンデルワールス力の影響によって耐熱性は向上する。
【0072】
また、物質NP−eや物質NP−f、および物質NP−pのように分子構造内にπ―πスタッキング効果を出すことができる芳香環を入れることで、耐熱性はさらに上がってゆく。水素結合とπ―πスタッキング効果を共に有する物質NP−fおよび物質NP−pでは300℃を上回り、400℃に達する耐熱性を実現し、半導体プロセスへの適用も可能となる。
【0073】
化合物pと物質NP−pの蛍光測定
次に、化合物pと物質NP−pとの蛍光測定について、図24(a)、図24(b)を参照して説明する。
【0074】
蛍光測定装置FP−6500(JASCO製)を用い、励起波長は345nmで、溶媒は30分以上窒素バブリングした分光分析用クロロホルムを使用した。溶液濃度は0.1mMとした。化合物pではピレンに由来したモノマーのピークが得られた(図24(a))。一方、物質NP−pではピレン同士が相互作用したエキサイマーのピークも同時に得られた(図24(b))。このエキサイマーのピークによって、π−π間の相互作用を確認した。また、ピレン含有金ナノ粒子NP−pのモル数については、ピレン含有量を熱重量測定(TG)の重量減少量を測定し、この有機物のグラム量から化合物pの分子量を用いてモルを算出する方法で定義した。
【0075】
導波路
次に、導波路について説明する。導波路として入射した光を伝播させるために、本発明の一実施形態ではプラズモンポラリトンを用いた。プラズモンポラリトンは膜表面に沿って移動する性質がある特殊な光の状態である。プラズモンポラリトンを発生させるため、コアシェル型ナノ粒子を全反射プリズムの全反射面に塗布して薄膜を形成し、全反射によるエバネッセント光をコアシェル型ナノ粒子に照射した。この結果、コアシェル型ナノ粒子はエバネッセント光のエネルギーを吸収し、全反射によりプリズムの外へ出射した光は特定の波長のみが損失する。この波長が光の入射角度によって波長シフトすることにより、プラズモンポラリトンの存在が確かめられる。
【0076】
一般的には、同様の実験をAuの薄膜において行なっており、クレッチマン配置型と呼ばれる。Au薄膜では精密な蒸着作業による膜厚の制御と基板面からの剥離防止策が必要であり、またAuのみによる導波路形成はコスト的な意味合いからも現実的ではない。このため本発明では有機物と金属の複合体からなるナノ粒子におけるプラズモンポラリトン導波型の導波路を作製し、プラズモンポラリトンを発生させ、導波路としての機能を確認した。
【0077】
薄膜の形成と近接場光導波路の形成
次に、上記薄膜の形成と近接場光導波路の形成について、図16(a)乃至図17(c)を参照して説明する。
【0078】
まず、図16(a)に示すように、支持基板41としてガラス基板を用意した。続いて、図16(b)に示すように、i線レジスト42(例えば、THMR−iP5720HP、東京応化工業)を支持基板41にスピンコート法で塗布して90℃でプリベークを行った。次に、図16(c)に示すように、ラインマスクパターン(ライン幅3μm)を有するフォトマスク43を用いて、レジスト42の露光を行う。続いて、110℃でポストベークした後、現像液(例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)で露光部42aを剥離し、非露光部42bを残置した(図16(d))。
【0079】
次に、上述した本発明の一実施形態によるコアシェル型Auナノ粒子44(例えばNP−a)をジクロロメタンまたはトルエンに溶解し、スピンコート法を用いて1000rpmで成膜した(図17(a))。40℃で30分乾燥させた後、全面露光を行ってレジスト42bを感光させ(図17(b))、エタノール溶液に浸漬してレジスト42bを取り除いた(図17(c))。説明したような方法を用いて図18に示す配線パターンを形成し、導波路を得た。これと同様の手法で物質NP−b乃至物質NP−gに対しても、配線パターンを形成し、導波路を得た。
【0080】
光学測定
上述のコアシェル型Auナノ粒子(例えば、物質NP−e)をジクロロメタンまたはトルエンに溶解し、スピンコート法を用いて1000rpmでBK7からなる直角プリズム51上に塗布し、図18に示す配線パターンを有する導波路の測定サンプル50を形成した。この測定サンプル50を用いて図19に示すような光学系を構成した。ハロゲンランプ52を光源とする光を、レンズ53、ピンホール54、レンズ55、ミラー56、偏光板57、ピンホール58、およびレンズ59を通して、1mmに絞り、直角プリズム51に入射した。45度の角度でプリズム51上の測定サンプル50の形成面で全反射を行い、出射した光を、レンズ60、61を通して光ファイバー62内に導き、波長ごとの吸収データをパーソナルコンピュータPCに記憶した。この吸収データを図20に示す、この図20からわかるように、600nm付近に特有の吸収が得られている。このプリズムの角度を2度回転させて吸収を観測し、さらに角度を2度回転させて吸収を観測した。この結果、吸収ピークは長波長側にシフトした。この測定によってプラズモンポラリトンの発生を確認した。
【0081】
以上説明したように、本実施形態によれば、耐熱性を有するコアシェル型Auナノ粒子を用いて形成されプラズモンポラリトンが伝播する配線となる粒子層を備えた近接場光導波路を得ることができる。また、同様に、実施例8、9の粒子を用いて形成されプラズモンポラリトンが伝播する配線となる粒子層を備えた近接場光導波路を得ることができる。なお、実施例7、8、9の粒子を用いて形成される粒子層は、エキサイマー励起による蛍光発光スペクトルを示す。実施例7、8、9による粒子に含まれる化合物は以下の化学式で表される。
【化3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属と、
水素結合性基、前記水素結合性基と異なる吸着基、および芳香環を含み下記の化学式に示す構造を有する化合物と、
を備え、
Mを前記金属、Aを前記吸着基(チオール基、アミノ基、カルボキシル基)、Bを前記水素結合性基(アミド結合基、ウレア結合基もしくはこれらの誘導体、またはチオール基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基の1つまたは複数を有する構造およびこれらの誘導体)、aを0以上の整数、bを0以上の整数、cを1以上の整数、R1を芳香環(π電子数24までの平面環)およびこの芳香環の誘導体、R2〜R5を水素原子、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、エーテル結合、エステル結合、シアノ基もしくはこれらの誘導体とするとき、前記化学式は以下の式で表されることを特徴とする粒子。
【化1】
【請求項2】
前記分子は下記のいずれかの構造を有していることを特徴とする請求項1記載の粒子。
【化2】
【請求項3】
前記分子は下記のいずれかの構造を有していることを特徴とする請求項1記載の粒子。
【化3】
【請求項4】
支持基板と、
請求項3記載の粒子が前記支持基板上に堆積され、プラズモンポラリトンが伝播する配線層となる粒子層と、
を備えていることを特徴とする近接場光導波路。
【請求項5】
金属と、
前記金属のリガンドとして設けられ分子内に、チオール基、アミド結合、およびアルキレンを有するか、またはチオール基、カルボキシラト、およびアルキレンを有する化合物と、
を備えていることを特徴とする粒子。
【請求項6】
前記リガンドは、前記アルキレン間のファンデルワールス力と、アミド結合間の水素結合によって安定化されることを特徴とする請求項5記載の粒子。
【請求項7】
前記リカンドとして設けられた化合物は、芳香環を更に含むことを特徴とする請求項5または6記載の粒子。
【請求項8】
前記リガンドは、前記アルキレン間のファンデルワールス力と、前記芳香環同士のπ−πスタッキングによって安定化されることを特徴とする請求項7記載の粒子。
【請求項9】
前記リガンドとして設けられた化合物はアミド結合を有し、前記リガンドは、アルキレン間のファンデルワールス力と、前記アミド結合間の水素結合と、前記芳香環同士のπ−πスタッキングによって安定化されることを特徴とする請求項8記載の粒子。
【請求項10】
前記化合物は下記のいずれかの構造を有していることを特徴とする請求項5記載の粒子。
【化4】
【請求項1】
金属と、
水素結合性基、前記水素結合性基と異なる吸着基、および芳香環を含み下記の化学式に示す構造を有する化合物と、
を備え、
Mを前記金属、Aを前記吸着基(チオール基、アミノ基、カルボキシル基)、Bを前記水素結合性基(アミド結合基、ウレア結合基もしくはこれらの誘導体、またはチオール基、アミノ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基の1つまたは複数を有する構造およびこれらの誘導体)、aを0以上の整数、bを0以上の整数、cを1以上の整数、R1を芳香環(π電子数24までの平面環)およびこの芳香環の誘導体、R2〜R5を水素原子、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、エーテル結合、エステル結合、シアノ基もしくはこれらの誘導体とするとき、前記化学式は以下の式で表されることを特徴とする粒子。
【化1】
【請求項2】
前記分子は下記のいずれかの構造を有していることを特徴とする請求項1記載の粒子。
【化2】
【請求項3】
前記分子は下記のいずれかの構造を有していることを特徴とする請求項1記載の粒子。
【化3】
【請求項4】
支持基板と、
請求項3記載の粒子が前記支持基板上に堆積され、プラズモンポラリトンが伝播する配線層となる粒子層と、
を備えていることを特徴とする近接場光導波路。
【請求項5】
金属と、
前記金属のリガンドとして設けられ分子内に、チオール基、アミド結合、およびアルキレンを有するか、またはチオール基、カルボキシラト、およびアルキレンを有する化合物と、
を備えていることを特徴とする粒子。
【請求項6】
前記リガンドは、前記アルキレン間のファンデルワールス力と、アミド結合間の水素結合によって安定化されることを特徴とする請求項5記載の粒子。
【請求項7】
前記リカンドとして設けられた化合物は、芳香環を更に含むことを特徴とする請求項5または6記載の粒子。
【請求項8】
前記リガンドは、前記アルキレン間のファンデルワールス力と、前記芳香環同士のπ−πスタッキングによって安定化されることを特徴とする請求項7記載の粒子。
【請求項9】
前記リガンドとして設けられた化合物はアミド結合を有し、前記リガンドは、アルキレン間のファンデルワールス力と、前記アミド結合間の水素結合と、前記芳香環同士のπ−πスタッキングによって安定化されることを特徴とする請求項8記載の粒子。
【請求項10】
前記化合物は下記のいずれかの構造を有していることを特徴とする請求項5記載の粒子。
【化4】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図7】
【図18】
【図20】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図19】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図7】
【図18】
【図20】
【図32】
【公開番号】特開2010−240829(P2010−240829A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37717(P2010−37717)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低損失オプティカル新機能部材技術開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低損失オプティカル新機能部材技術開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]