説明

粒子の洗浄方法および粒子洗浄装置

【課題】 使用する洗浄液の量が少なく、装置の小型化が可能であり、連続的に、均一かつ高効率に粒子の洗浄を行うことができる粒子の洗浄方法およびそれを用いる粒子洗浄装置を提供することである。
【解決手段】
分散液供給工程において粒子分散液を加圧して連続的に混合空間に供給し、洗浄液を加圧して連続的に混合空間に供給することにより粒子を洗浄するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の洗浄方法およびそれを用いる粒子洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子の洗浄方法としては、内部に攪拌翼が設けられる槽型反応器などの、いわゆる反応釜内で洗浄液とともに攪拌するバッチ式洗浄が一般的であるが、このようなバッチ式洗浄ではシール内部に付着物が滞留することによりシール寿命を縮めることや、攪拌に伴う泡の除去に大量の洗浄液を必要とすることなどの問題がある。
【0003】
またこのようなバッチ式洗浄以外に、フィルタープレスによる濾過やデカンタ式遠心分離機による遠心分離などの連続処理法も一般的ではあるが、このような連続処理法では、脱水操作と分散液の再調整操作とを繰り返すため操作が煩雑であり、また大量の洗浄液を必要とするため環境負荷が大きいという問題がある。さらに、装置の据付面積も大きくなる上に、洗浄効果が不充分であったり、不均一な洗浄となりやすいという問題がある。
【0004】
上述のような粒子の洗浄方法が用いられる粒子としては、たとえば、懸濁重合法や乳化凝集法などの湿式法により製造されるトナーが挙げられる。懸濁重合法とは、着色剤を含む水性媒体中でビニル単量体などの合成樹脂モノマーを懸濁重合することによってトナーを得る方法である。乳化凝集法とは、合成樹脂粒子の水分散液と着色剤の有機溶媒などへの分散液とを混合して合成樹脂粒子と着色剤との凝集粒子を形成し、この凝集粒子を加熱溶融してトナーを得る方法である。
【0005】
このような湿式法により製造されるトナー表面には、その製造過程において使用される分散安定剤が付着する。このような分散安定剤は、重合後に行われる洗浄工程によって除去されるが、洗浄工程における洗浄が不充分であるとトナー表面に残留し、この影響によりトナーの保存性および帯電特性が悪化してしまうという問題がある。
【0006】
上記問題を解決するために、たとえば、特許文献1には、着色重合体粒子を含有する分散液を収容したスラリータンクから、分散液を連続式加圧濾過装置の供給口に加圧供給し、該装置内で分散液を攪拌下に濾過し、濃縮された分散液を排出口かスラリータンクに戻すとともに、濾過により濾別された濾液相当量の洗浄液をスラリータンクに加えて希釈し、洗浄液で希釈した分散液を該装置内に循環させる循環洗浄法により、着色重合体粒子を洗浄する技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、この技術は、攪拌板を使用するスクリュー方式であるために、分散液と洗浄液との混合が不均一であり不均一な洗浄となりやすい。また、連続式加圧濾過装置の壁面と攪拌板との間隙部分のみにしかせん断力がかからないため、粒子の洗浄効率が低く、充分な洗浄効果が得られない。
【0008】
【特許文献1】特開2004−279483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、使用する洗浄液の量が少なく、装置の小型化が可能であり、連続的に、均一かつ高効率に粒子の洗浄を行うことができる粒子の洗浄方法およびそれを用いる粒子洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、水性媒体中に粒子が分散された粒子分散液中の粒子の洗浄方法であって、
粒子分散液を加圧して連続的に混合空間に供給する分散液供給工程と、
洗浄液を加圧して連続的に混合空間に供給することにより粒子を洗浄する洗浄工程とを含むことを特徴とする粒子の洗浄方法である。
【0011】
また本発明の粒子の洗浄方法は、洗浄工程後に粒子分散液と洗浄液との混合液から粒子を分離して、分離した粒子を再度分散液供給工程に戻すことを特徴とする。
【0012】
また本発明の粒子の洗浄方法は、分散液供給工程において、粒子分散液を加圧した後、減圧手段に流過させることを特徴とする。
【0013】
また本発明の粒子の洗浄方法は、分散液供給工程において、粒子分散液は、0.5MPa以上30MPa以下で加圧されることを特徴とする。
【0014】
また本発明の粒子の洗浄方法は、粒子は、体積平均粒径が100μm以下であることを特徴とする。
【0015】
また本発明の粒子の洗浄方法は、粒子は、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナーであることを特徴とする。
【0016】
また本発明の粒子の洗浄方法は、洗浄工程において、粒子分散液と洗浄液との混合液をコイル状配管に流過させることを特徴とする。
【0017】
また本発明の粒子の洗浄方法は、洗浄工程において、粒子分散液と洗浄液との混合液をコイル状配管に流過させた後、減圧手段に流過させることを特徴とする。
【0018】
また本発明の粒子の洗浄方法は、洗浄工程において、コイル状配管を流過する粒子分散体と洗浄液との混合液のレイノルズ数は、2000以上5000以下であることを特徴とする。
【0019】
また本発明の粒子の洗浄方法は、粒子分散液における粒子の含有量は、20重量%以上であることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記の粒子の洗浄方法を用いて水性媒体中に粒子が分散された粒子分散液中の粒子を洗浄する粒子洗浄装置であって、
粒子分散液を貯留する分散液貯留手段と、
粒子分散液を加圧して連続的に混合空間に供給する第1の加圧手段と、
洗浄液を貯留する洗浄液貯留手段と、
洗浄液を加圧して連続的に混合空間に供給する第2の加圧手段とを含むことを特徴とする粒子洗浄装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、水性媒体中に粒子が分散された粒子分散液中の粒子の洗浄方法において、分散液供給工程において粒子分散液を加圧して連続的に混合空間に供給し、洗浄工程において洗浄液を加圧して連続的に混合空間に供給することにより粒子を洗浄する。このように、加圧状態で連続的に供給される粒子分散液に、加圧状態の洗浄液が連続的に供給されることによって、加圧に伴う粒子の衝突によって粒子に適度なせん断力を付与することができ、また攪拌板などを用いることなく粒子分散液と洗浄液とを均一に攪拌混合することができるため、装置の小型化が可能であり、連続的に、均一かつ高効率に粒子の洗浄を行うことができる。また、使用する洗浄液の量を少なくできるため、排水処理に伴う環境負荷を小さくすることができる。
【0022】
また本発明によれば、本発明の粒子の洗浄方法は、洗浄工程後に粒子分散液と洗浄液との混合液から粒子を分離して、分離した粒子を再度分散液供給工程に戻すことが好ましい。これにより、粒子の洗浄回数を増やすことができるため、粒子の洗浄効率をより向上させることができる。
【0023】
また本発明によれば、分散液供給工程において、粒子分散液を加圧した後、減圧手段に流過させることが好ましい。これにより、供給する粒子分散液の加圧条件を制御することができるため、加圧に伴う粒子の衝突によって生じる粒子の2次凝集をほぐすことができ、また加圧動作の脈動に伴う粒子分散液の供給の乱れを緩和することができる。
【0024】
また本発明によれば、分散液供給工程において、粒子分散液は、0.5MPa以上30MPa以下で加圧されることが好ましい。これにより、粒子分散液と洗浄液とをより均一に攪拌混合することができるため、より均一かつ高効率に粒子の洗浄を行うことができる。
【0025】
また本発明によれば、粒子は、体積平均粒径が100μm以下であることが好ましい。これにより、粒子分散液を、粒子の破砕が起きない程度のせん断力を付与することができる内径の小さい配管内に流過させることができるため、効率的に洗浄を行うことができる。
【0026】
また本発明によれば、粒子は、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナーであることが好ましい。これにより、トナー表面に残留する分散安定剤などの不要な成分を充分に除去することができるため、保存性および帯電特性に優れたトナーを得ることができる。
【0027】
また本発明によれば、洗浄工程において、粒子分散液と洗浄液との混合液をコイル状配管に流過させることが好ましい。これにより、コイル状配管内で発生する混合渦の攪拌効果によって粒子分散液と洗浄液とを混合洗浄することができるため、粒子の洗浄効果がさらに向上する。
【0028】
また本発明によれば、洗浄工程において、粒子分散液と洗浄液との混合液をコイル状配管に流過させた後、減圧手段に流過させることが好ましい。これにより、コイル状配管内における混合液の流過速度を制御することができるため、粒子を所望の程度までより効率的に洗浄することができる。
【0029】
また本発明によれば、洗浄工程において、コイル状配管を流過する粒子分散体と洗浄液との混合液のレイノルズ数は、2000以上5000以下であることが好ましい。レイノルズ数が上記範囲内にあることにより、より高い混合渦の攪拌効果を得ることができ、粒子の洗浄効果をより一層向上させることができる。
【0030】
また本発明によれば、粒子分散液における粒子の含有量は、20重量%以上であることが好ましい。粒子の含有量が上記範囲内にあることにより、粒子間の衝突により粒子に適度なせん断力を付与することができ、洗浄をより効率よく行うことができる。
【0031】
また本発明によれば、前記粒子の洗浄方法を用いて、水性媒体中に粒子が分散された粒子分散液中の粒子を洗浄する粒子洗浄装置において、分散液貯留手段が粒子分散液を貯留し、第1の加圧手段が粒子分散液を加圧して連続的に混合空間に供給し、洗浄液貯留手段が洗浄液を貯留し、第2の加圧手段が洗浄液を加圧して連続的に混合空間に供給する。これにより、加圧に伴う粒子の衝突によって粒子に適度なせん断力を付与することができ、また攪拌板などを用いることなく粒子分散液と洗浄液とを均一に攪拌混合することができるため、装置の小型化が可能であり、連続的に、均一かつ高効率に粒子の洗浄を行うことができる。また、使用する洗浄液の量を少なくできるため、排水処理に伴う環境負荷を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は、水性媒体中に粒子が分散された粒子分散液中の粒子の洗浄方法であって、分散液供給工程において粒子分散液を加圧して連続的に混合空間に供給し、洗浄工程において洗浄液を加圧して連続的に混合空間に供給することにより粒子を洗浄する。このように、加圧状態で連続的に供給される粒子分散液に、加圧状態の洗浄液が連続的に供給されることによって、加圧に伴う粒子の衝突によって粒子に適度なせん断力を付与することができ、また攪拌板などを用いることなく粒子分散液と洗浄液とを均一に攪拌混合することができるため、装置の小型化が可能であり、連続的に、均一かつ高効率に粒子の洗浄を行うことができる。また、使用する洗浄液の量を少なくできるため、排水処理に伴う環境負荷を小さくすることができる。
【0033】
図1は、本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を概略的に示す工程図である。本発明の粒子の洗浄方法は、図1に示すように、粒子分散液を加圧して連続的に混合空間に供給する分散液供給工程(ステップS1)と、洗浄液を加圧して連続的に混合空間に供給することにより粒子を洗浄する洗浄工程(ステップS2)と、洗浄工程後に粒子分散液と洗浄液との混合液から粒子を分離した後回収する回収工程(ステップS3)とを含む。
【0034】
分散液供給工程(ステップS1)、洗浄工程(ステップS2)および回収工程(ステップS3)は、たとえば、図2に示す粒子洗浄装置1を用いて行われる。図2は、本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置1の構成を簡略化して示す系統図である。図2に示す粒子洗浄装置1は、分散液貯留手段である分散液貯留タンク2と、第1の加圧手段である加圧ポンプ3と、洗浄液貯留手段である洗浄液貯留タンク4と、第2の加圧手段である加圧ポンプ5と、混合器6と、遠心分離機7とを含む。粒子洗浄装置1において、分散液貯留タンク2、加圧ポンプ3および混合器6はこの順番で配管L1によって連結され、洗浄液貯留タンク4、加圧ポンプ5および混合器6はこの順番で配管L2によって連結され、混合器6および遠心分離機7はこの順番で配管L3によって連結される。
【0035】
以下に、本発明の粒子の洗浄方法に用いる粒子分散液の調整方法について説明する。本発明の粒子の洗浄方法に用いる粒子分散液は、粒子を水性媒体中に分散させて調整する。
【0036】
粒子としては、洗浄が必要なものであれば特に限定されるものではないが、たとえば樹脂粒子や金属粒子などが挙げられ、特には、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナーであることが好ましい。本発明の粒子の洗浄方法によってトナーを洗浄することにより、トナー表面に残留する分散安定剤などの不要な成分を充分に除去することができるため、保存性および帯電特性に優れたトナーを得ることができる。
【0037】
粒子は、体積平均粒径が100μm以下であることが好ましい。粒子の体積平均粒径が100μm以下であると、粒子分散液を、粒子の破砕が起きない程度のせん断力を付与することができる内径の小さい配管内に流過させることができるため、効率的に洗浄を行うことができる。体積平均粒径が100μmより大きいと、粒子の破砕が起きない程度のせん断力を付与することのできる内径の小さい配管内に粒子分散液を流過させる際に、配管内で詰まりが発生し、効率的に洗浄ができなくなるおそれがある。
【0038】
なお、一般的に体積平均粒径が100μm以上の粒子を洗浄する方法は多く知られているが、体積平均粒径100μm以下の粒子を効率的に洗浄する方法は知られていない。したがって、体積平均粒径100μm以下の粒子の洗浄に好適な本発明の粒子の洗浄方法は大変有用である。
【0039】
本明細書において、体積平均粒径および変動係数(CV値)は、ベックマン・コールター株式会社製粒度分布測定装置「Multisizer3」によって測定される値である。本明細書において、体積平均粒径とは累積体積分布における大粒径側からの累積体積が50%になる粒径D50Vを示す。体積平均粒径(D50V)および変動係数(CV値)の測定条件を以下に示す。
アパーチャ径:20μm
測定粒子数:50000カウント
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン1.19(ベックマン・コールター株式会社製)
電解液:ISOTON−II(ベックマン・コールター株式会社製)
分散剤:アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム
測定方法:ビーカーに電解液50ml、試料20mgおよび分散剤1mlを加え、
超音波分散器(商品名:UH−50、株式会社エスエムテー製)にて超音波周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を調整し、前記装置「Multisizer3」により粒径の測定を行い、得られた測定結果から試料粒子の体積粒度分布を求め、求めた体積粒度分布から体積平均粒径(D50V)を算出した。また、体積粒度分布における標準偏差を求めて、下記式(1)に基づいて変動係数(CV値、%)を算出した。変動係数は、その値が小さいほど、粒度分布幅が狭いことを意味する。
CV値(%)={体積粒度分布における標準偏差/体積平均粒径(μm)}×100
…(1)
以下に、トナーの構成材料および製造方法について説明する。
【0040】
(結着樹脂)
結着樹脂としては電子写真方式の画像形成分野で常用され、溶融状態で造粒可能なものを使用できる。その具体例としては、たとえば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0041】
ポリエステルとしては公知のものを使用でき、多塩基酸と多価アルコールとの重縮合物などが挙げられる。多塩基酸としては、ポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、琥珀酸、アルケニル無水琥珀酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、これら多塩基酸のメチルエステル化物などが挙げられる。多塩基酸は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。多価アルコールとしてもポリエステル用モノマーとして知られるものを使用でき、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類などが挙げられる。多価アルコールは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。多塩基酸と多価アルコールとの重縮合反応は常法に従って実施でき、たとえば、有機溶媒の存在下または非存在下および重縮合触媒の存在下に、多塩基酸と多価アルコールとを接触させることによって行われ、生成するポリエステルの酸価、軟化点などが所定の値になったところで終了する。これによって、ポリエステルが得られる。多塩基酸の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用いると、脱メタノール重縮合反応が行われる。この重縮合反応において、多塩基酸と多価アルコールとの配合比、反応率などを適宜変更することによって、たとえば、ポリエステルの末端のカルボキシル基含有量を調整でき、ひいては得られるポリエステルの特性を変性できる。また、多塩基酸として無水トリメリット酸を用いて、ポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を容易に導入することによっても、変性ポリエステルが得られる。
【0042】
アクリル樹脂としては特に制限されないけれども、酸性基含有アクリル樹脂を好ましく使用できる。酸性基含有アクリル樹脂は、たとえば、アクリル樹脂モノマーまたはアクリル樹脂モノマーとビニル系モノマーとを重合させるに際し、少なくとも酸性基または親水性基を含有するアクリル樹脂モノマーもしくは酸性基または親水性基を有するビニル系モノマーを使用することによって製造できる。アクリル樹脂モノマーとしては公知のものを使用でき、たとえば、置換基を有することのあるアクリル酸、置換基を有することのあるメタアクリル酸、置換基を有することのあるアクリル酸エステルおよび置換基を有することのあるメタアクリル酸エステルなどが挙げられる。アクリル樹脂モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。ビニル系モノマーとしても公知のものを使用でき、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、臭化ビニル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルなどが挙げられる。ビニル系モノマーは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。重合は、一般的なラジカル開始剤を用い、溶液重合、懸濁重合および乳化重合などにより行われる。
【0043】
ポリウレタンとしては特に制限されないけれども、たとえば、酸性基または塩基性基含有ポリウレタンを好ましく使用できる。酸性基または塩基性基含有ポリウレタンは、公知の方法に従って製造できる。たとえば、酸性基または塩基性基含有ジオール、ポリオールおよびポリイソシアネートを付加重合させればよい。酸性基または塩基性基含有ジオールとしては、たとえば、ジメチロールプロピオン酸およびN−メチルジエタノールアミンなどが挙げられる。ポリオールとしては、たとえば、ポリエチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールおよびポリブタジエンポリオールなどが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、たとえば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。これら各成分はそれぞれ1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0044】
エポキシ樹脂としては特に制限されないけれども、酸性基または塩基性基含有エポキシ系樹脂を好ましく使用できる。酸性基または塩基性基含有エポキシ樹脂は、たとえば、ベースになるエポキシ樹脂にアジピン酸および無水トリメリット酸などの多価カルボン酸またはジブチルアミン、エチレンジアミンなどのアミンを付加または付加重合させることによって製造することができる。
【0045】
これらの結着樹脂の中でも、特にはポリエステルが好ましい。ポリエステルは透明性に優れ、得られるトナー粒子に良好な粉体流動性、低温定着性および二次色再現性などを付与することができるので、カラートナーの結着樹脂に好適である。また、ポリエステルとアクリル樹脂とをグラフト化して用いてもよい。
【0046】
また、造粒操作を容易に実施すること、着色剤との混練性並びに得られるトナー粒子の形状および大きさを均一にすることなどを考慮すると、軟化点が150℃以下の結着樹脂が好ましく、60℃〜150℃の結着樹脂が特に好ましい。その中でも、重量平均分子量が5000〜500000の結着樹脂が好ましい。
【0047】
結着樹脂は、1種を単独で使用でき、または、異なる2種以上を併用できる。さらに、同じ樹脂であっても、分子量、単量体組成などのいずれかがまたは全部が異なるものを複数種用いることができる。
【0048】
(着色剤)
着色剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、およびブラックトナー用着色剤などが挙げられ、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。また、同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。着色剤は、マスターバッチとして使用されることが好ましい。着色剤のマスターバッチは、たとえば、合成樹脂の溶融物と着色剤とを混練することによって製造することができる。合成樹脂としては、トナーの結着樹脂と同種の樹脂またはトナーの結着樹脂に対して良好な相溶性を有する樹脂が使用される。合成樹脂と着色剤との使用割合は特に制限されないけれども、好ましくは合成樹脂100重量部に対して30重量部以上100重量部以下である。マスターバッチは、たとえば粒径2mm〜3mm程度に造粒されて用いられる。
【0049】
着色剤の含有量は特に制限されるものではないが、好ましくは結着樹脂100重量部に対して4重量部以上20重量部以下である。マスターバッチを用いる場合、トナーにおける着色剤の含有量が前記範囲になるように、マスターバッチの使用量を調整することが好ましい。着色剤を前記範囲で用いることによって、充分な画像濃度を有し、発色性が高く画像品位に優れる良好な画像を形成することができる。
【0050】
(離型剤)
トナーには、結着樹脂および着色剤の他に、その他のトナー添加成分として離型剤を含有させることによって、オフセット防止効果を高めることができる。離型剤としては、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、ならびにマイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子ポリプロピレンワックスおよびその誘導体、ならびにポリオレフィン系重合体ワックスおよびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、およびビニル系モノマーとワックスとの共重合物などが含まれる。離型剤の使用量は特に限定されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.2重量部以上20重量部以下である。
【0051】
離型剤の融点は、50℃以上150℃以下であることが好ましく、さらには、120℃以下であることが好ましい。融点が50℃未満であると、現像装置内において離型剤が溶融してトナー粒子同士が凝集したり、感光体表面へのフィルミングなどの不良を引き起こすおそれがあり、融点が150℃を超えると、トナーを記録媒体に定着するときに離型剤が充分に溶出することができず、耐高温オフセット性の向上効果が充分に発揮されないおそれがある。ここで、離型剤の融点とは、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry:略称DSC)によって得られるDSC曲線の融解に相当する吸熱ピークの温度のことである。
【0052】
(帯電制御剤)
トナーには、結着樹脂および着色剤の他に、その他のトナー添加成分として帯電制御剤を含有させることによって、トナーの摩擦帯電量を好適な範囲にすることができる。帯電制御剤としては、正電荷制御用または負電荷制御用の帯電制御剤を使用できる。正電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、およびアミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、オイルブラックおよびスピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、ならびに樹脂酸石鹸などが挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用でき、または2種以上を併用できる。帯電制御剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下である。
【0053】
(外添剤)
以上に述べた構成材料が含有されるトナー表面には、流動性改良剤などの外添剤を付着させてもよい。外添剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。外添剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。外添剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは、トナー粒子100重量部に対して0.1重量部〜3.0重量部である。
【0054】
トナーは、懸濁重合法や乳化凝集法などの湿式法および混練粉砕法などの公知の方法に従って製造できる。
【0055】
水性媒体としては、水に混合または溶解し、粒子を溶解せずかつ均一に分散させ得る液状物であれば特に限定されるものではないが、工程管理の容易さ、全工程後の廃液処理、取扱い易さなどを考慮すると、水であることが好ましく、さらには純水であることが好ましい。本明細書において、純水の導電率は、20μS/cm以下であることが好ましい。このような純水は、公知の方法によって製造することができ、たとえば、活性炭法、イオン交換法、蒸留法および逆浸透法などにより製造することができる。また、複数の方法を組み合わせて製造することもできる。
【0056】
粒子分散液における粒子の含有量は、20重量%以上であることが好ましく、さらには20重量%以上45重量%以下であることが好ましい。粒子の含有量が上記範囲内にあることにより、粒子間の衝突により粒子に適度なせん断力を付与することができ、洗浄をより効率よく行うことができる。粒子の含有量が20重量%未満であると、粒子間の衝突が少なくなるため洗浄効果が低下し、充分な洗浄を行うために必要とする洗浄液の量が増加するおそれがある。
【0057】
粒子の水性媒体中への分散に用いる攪拌機としては、公知の乳化機および分散機を用いることができる。具体的には、ウルトラタラックス(商品名、IKAジャパン株式会社製)、ポリトロンホモジナイザー(商品名、キネマティカ社製)およびTKオートホモミクサー(商品名、特殊機化工業株式会社製)などのバッチ式乳化機、エバラマイルダー(商品名、株式会社荏原製作所製)、TKパイプラインホモミクサー(商品名、特殊機化工業株式会社製)、TKホモミックラインフロー(商品名、特殊機化工業株式会社製)、フィルミックス(商品名、特殊機化工業株式会社製)、コロイドミル(商品名、神鋼パンテック株式会社製)、スラッシャー(商品名、三井三池化工機株式会社製)、トリゴナル湿式微粉砕機(商品名、三井三池化工機株式会社製)、キャビトロン(商品名、株式会社ユーロテック製)およびファインフローミル(商品名、太平洋機工株式会社製)などの連続式乳化機、クレアミックス(商品名、エム・テクニック株式会社製)およびフィルミックス(商品名、特殊機化工業株式会社製)などが挙げられる。乳化機および分散機は、保温手段を有していてもよい。
【0058】
本実施形態では、上述のように粒子分散液を調整したがこれに限定されるものではなく、たとえば粒子が湿式法により製造されるトナーである場合には、濾過や遠心分離などの固液分離手段によりトナーを取り出す前の水媒体を、そのまま粒子分散液として使用してもよい。上記水媒体には、トナー製造時に使用した水溶性高分子分散安定剤やアニオン系分散安定剤などが含まれているため、このような湿式法により製造されるトナーに本発明の粒子の洗浄方法を適用すると、従来の洗浄方法よりも洗浄効果が大きいため、従来の洗浄方法を用いたトナーと比較して保存性および帯電特性が大きく向上する。
【0059】
以下に、本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法の各工程について詳細に説明する。ステップS0からステップS1に移行することで本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を用いた粒子の洗浄が開始される。
【0060】
〔分散液供給工程〕
ステップS1の分散液供給工程は、分散液貯留タンク2および加圧ポンプ3において行われ、粒子分散液を加圧して連続的に混合器6に供給する。
【0061】
分散液貯留タンク2は、内部空間を有する容器状部材であり、粒子分散液を貯留する。加圧ポンプ3は、分散液貯留タンク2に貯留される粒子分散液を加圧して、配管L1を介して混合器6に連続的に供給する。加圧ポンプ2としては、一般的に使用されるものでよく特に限定されるものではないが、たとえば、プランジャと、プランジャによって吸入吐出駆動されるポンプとを含むプランジャポンプなどが挙げられる。
【0062】
粒子分散液は、0.5MPa以上30MPa以下で加圧されることが好ましい。この加圧条件で粒子分散液が混合器6に供給されることにより、粒子分散液と洗浄液とをより均一に攪拌混合することができるため、より均一かつ高効率に粒子の洗浄を行うことができる。加圧条件が0.5MPa未満であると、粒子を充分に混合洗浄できないおそれがある。また30MPaを超えると、粒子間の衝突の際に粒子にかかるストレスが大きくなりすぎて粒子表面が粉砕してしまうおそれがある。
【0063】
図3は、本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置10の構成を簡略化して示す系統図である。図3に示す粒子洗浄装置10において、図2に示す粒子洗浄装置1と同一のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0064】
粒子洗浄装置10には、図3に示すように、加圧ポンプ3と混合器6との間に減圧手段に相当する減圧モジュール8が設けられる。分散液貯留タンク2、加圧ポンプ3、減圧モジュール8および混合器6はこの順番で配管L1によって連結される。
【0065】
減圧モジュール8には、国際公開第03/059497号パンフレットに記載の多段減圧装置を用いることが好ましい。該多段減圧装置は、入口通路と、出口通路と、多段減圧通路とを含む。入口通路は、一端が配管L1に連結されかつ他端が多段減圧通路に連結され、加圧状態にある粒子分散液を多段減圧通路に導入する。多段減圧通路は、一端が入口通路に連結されかつ他端が出口通路に連結され、入口通路を介してその内部に導入される加圧状態にある粒子分散液を突沸による泡の発生(バブリング)が起こらないように減圧する。多段減圧通路は、たとえば、複数の減圧部材と、複数の連結部材とを含む。減圧部材にはたとえばパイプ状部材が用いられる。連結部材にはたとえばリング状シール部材が用いられる。内径の異なる複数のパイプ状部材をリング状シール部材にて連結することによって、多段減圧通路が構成される。たとえば、入口通路から出口通路に向けて、同じ内径を有するパイプ状部材をリング状シール部材によって2個〜4個連結し、次いでこれらよりも内径が2倍程度大きいパイプ状部材をリング状シール部材によって1個連結し、さらに、2倍程度内径の大きなパイプ状部材よりも内径が5%〜20%程度小さいパイプ状部材をリング状シール部材によって1個〜3個程度連結してなる多段減圧通路が挙げられる。このような多段減圧通路内に加圧状態にある粒子分散液を流過させると、バブリングを起すことなく、該粒子分散液を大気圧またはそれに近い加圧状態にまで減圧できる。多段減圧通路の周囲に、冷媒または熱媒を循環させる熱交換手段を設け、粒子分散液に付加される圧力値に応じて減圧と同時に冷却または加熱を行ってもよい。出口通路は、一端が多段減圧通路に連結され、他端が配管L1に連結され、多段減圧通路によって減圧される粒子分散液を配管L1に送給する。この多段減圧装置では、入口径と出口径とが同じになるように構成してもよく、または出口径が入口径よりも大きくなるように構成してもよい。
【0066】
本実施の形態では、減圧モジュール8として、前記のような構成を有する多段減圧装置を使用するが、この構成に限定されるものではなく、たとえば、減圧ノズルも使用できる。減圧ノズルには、その内部を長手方向に貫通する流路が形成され、流路の入口および出口はそれぞれ配管L1に連結される。流路は、入口径が出口径よりも大きくなるように形成される。たとえば、流路は、粒子分散液の流過方向に垂直な方向の断面が、入口から出口に近づくにつれて徐々に小さくなり、かつ該断面の中心(軸線)が粒子分散液の流過方向に平行な同一軸線(減圧ノズルの軸線)上に存在する。減圧ノズルによれば、加圧加熱状態にある粒子分散液が入口から流路内に導入され、減圧を受けた後、出口から配管L1に向けて排出される。
【0067】
前記のような多段減圧装置または減圧ノズルは1つまたは複数設けることができる。複数設ける場合には、直列に設けてもよく、並列に設けてもよい。
【0068】
分散液供給工程は、上述の分散液貯留タンク2および加圧ポンプ3に加えて、さらに減圧モジュール8において行われることが好ましい。すなわち、加圧ポンプ3にて粒子分散液を加圧した後、減圧モジュール8に流過させることが好ましい。これにより、混合器6に供給する粒子分散液の加圧条件を制御することができるため、加圧に伴う粒子の衝突によって生じる粒子の2次凝集をほぐすことができ、また加圧ポンプ3の吸入吐出動作の脈動に伴う粒子分散液の供給の乱れを緩和することができる。
【0069】
〔洗浄工程〕
ステップS2の洗浄工程は、洗浄液貯留タンク4、加圧ポンプ5および混合器6において行われ、洗浄液を加圧して連続的に混合器6に供給することにより粒子分散液と洗浄液とを攪拌混合して粒子を洗浄する。
【0070】
洗浄液貯留タンク4は、内部空間を有する容器状部材であり、洗浄液を貯留する。洗浄液としては、水またはpHが調整された水であるpH調整水が使用されるが、特には純水が使用されることが好ましい。洗浄液の水温としては、特に限定されるものではないが、10℃以上80℃以下であることが好ましい。また洗浄液がpH調整水の場合、そのpHとしては、特に限定されるものではないが、6以上8以下であることが好ましく、このようにpHが調整された水により洗浄することで、より粒子の洗浄効果が向上する。
【0071】
加圧ポンプ5は、洗浄液貯留タンク4に貯留される洗浄液を加圧して、配管L2を介して連続的に混合器6に供給する。加圧ポンプ5としては、一般的に使用されるものでよく特に限定されるものではないが、たとえば、プランジャと、プランジャによって吸入吐出駆動されるポンプとを含むプランジャポンプなどが挙げられる。また、加圧ポンプ3と同一の構成であってもよい。
【0072】
洗浄液は、その供給速度が、0.1L/時間以上600L/時間以下になるように加圧されることが好ましい。この加圧条件で洗浄液が混合器6に供給されることにより、粒子分散液と洗浄液とをより均一に攪拌混合することができるため、より均一かつ高効率に粒子の洗浄を行うことができる。加圧条件が0.1L/時間未満であると、粒子を充分に混合洗浄できないおそれがある。また600L/時間を超えると、粒子間の衝突の際に粒子にかかるストレスが大きくなりすぎて粒子表面が粉砕してしまうおそれがある。
【0073】
混合器6は、混合空間である内部空間を有する容器状部材であり、前記内部空間において粒子分散液と洗浄液とを攪拌混合して粒子を洗浄する。混合器6の構成としては、特に制限されるものではなく、デッドボリュームのない構造であればよい。
【0074】
図4は、本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置20の構成を簡略化して示す系統図である。図4に示す粒子洗浄装置20において、図2に示す粒子洗浄装置1と同一のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0075】
粒子洗浄装置20には、図4に示すように、混合器6と遠心分離機7との間にコイル状配管9が設けられる。コイル状配管9は、その内部に図示しない流路を有し、粒子分散液を流過させるパイプ状部材がコイル状に巻かれた部材であり、混合器6、コイル状配管9および遠心分離機7はこの順番で配管L3によって連結される。
【0076】
洗浄工程は、上述の洗浄液貯留タンク4、加圧ポンプ5および混合器6に加えて、さらにコイル状配管9において行われることが好ましい。すなわち、混合器6にて攪拌混合された後の粒子分散液と洗浄液との混合液(以下、単に「混合液」と記す場合がある)を、さらにコイル状配管9に流過させることが好ましい。
【0077】
コイル状配管9に、混合液を加圧状態で流過させると遠心力とせん断力とが付与される。このように遠心力とせん断力とが同時に作用することによって流路内に乱流が発生し、この影響により混合渦攪拌効果が得られる。したがって、粒子分散液と洗浄液との混合液をコイル状配管9に流過させることによって、コイル状配管9内で発生する混合渦の攪拌効果によって粒子分散液と洗浄液とを混合洗浄することができるため、粒子の洗浄効果がさらに向上する。
【0078】
コイル状配管9を流過する混合液のレイノルズ数は、2000以上5000以下であることが好ましい。レイノルズ数が上記範囲内にあることにより、層流から乱流に遷移する流域である遷移流域となり、適度なせん断力が付与されるようになる。したがって、より高い混合渦の攪拌効果を得ることができ、粒子の洗浄効果をより一層向上させることができる。レイノルズ数が2000未満であると、層流流域となりせん断力がほとんど付与されず、粒子間の衝突もなくなるため、充分に洗浄効果を得ることができないおそれがある。レイノルズ数が5000を超えると、完全な乱流流域となるため、洗浄はできるものの泡の発生により洗浄効果が低下するおそれがある。
【0079】
図5は、本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置30の構成を簡略化して示す系統図である。図5に示す粒子洗浄装置30において、図4に示す粒子洗浄装置20と同一のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0080】
粒子洗浄装置30には、図5に示すように、コイル状配管9と遠心分離機7との間に減圧手段に相当する減圧モジュール10が設けられる。減圧モジュール10としては、多段減圧装置や減圧ノズルなどを使用でき、また減圧モジュール8と同一構成であってもよい。混合器6、コイル状配管9、減圧モジュール10および遠心分離機7はこの順番で配管L3によって連結される。
【0081】
洗浄工程は、上述の洗浄液貯留タンク4、加圧ポンプ5、混合器6およびコイル状配管9に加えて、さらに減圧モジュール10において行われることが好ましい。すなわち、混合器6にて攪拌混合された後の粒子分散液と洗浄液との混合液をコイル状配管9に流過させた後、さらに減圧モジュール10に流過させることが好ましい。これにより、コイル状配管9内における混合液の流過速度を制御することができるため、粒子を所望の程度までより効率的に洗浄することができる。
【0082】
〔回収工程〕
ステップS3の回収工程は、遠心分離機7において行われ、粒子分散液と洗浄液との混合液から粒子を分離して回収する。
【0083】
遠心分離機7はデカンタ型遠心分離機であり、混合器6から配管L3を介して図示しない送給ポンプなどにより送給される粒子分散液と洗浄液との混合液を、遠心分離により液体と粒子とに固液分離する。分離された粒子は、デカンテーションなどにより液体から取り出された後、真空乾燥機などの乾燥機によって乾燥される。
【0084】
また遠心分離機7には、図示しない導電率計が設けられていてもよい。導電率計により、固液分離された液体の導電率を測定することによって粒子の洗浄の程度を知ることができる。回収工程において固液分離された液体の導電率は50μS/cm以下であることが好ましい。導電率がこの範囲であれば粒子の洗浄は充分であり、これにより、たとえば粒子がトナーである場合には、保存性および帯電特性に優れたトナーを得ることができる。
【0085】
なお、本実施形態では固液分離手段として遠心分離機を用いたが、これに限定されるものではなく、たとえば、フィルタープレスなどによる濾過や、デカンテーションなどを用いてもよい。
【0086】
回収工程が終了すると、ステップS3からステップS4に移行し、粒子の洗浄が終了する。
【0087】
図6は、本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置40の構成を簡略化して示す系統図である。図6に示す粒子洗浄装置40において、図3に示す粒子洗浄装置10および図5に示す粒子洗浄装置30と同一のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0088】
粒子洗浄装置40は、図6に示すように、上述に示した好ましい構成を全て有している。したがって、分散液供給工程は、分散液貯留タンク2、加圧ポンプ3および減圧モジュール8において行われ、洗浄工程は、洗浄液貯留タンク4、加圧ポンプ5、混合器6、コイル状配管9および減圧モジュール10において行われ、回収工程は、遠心分離機7において行われる。これにより、粒子洗浄装置40は、より一層均一かつ高効率に粒子の洗浄を行うことができる。
【0089】
図7は、本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置50の構成を簡略化して示す系統図である。図7に示す粒子洗浄装置50において、図6に示す粒子洗浄装置40と同一のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0090】
粒子洗浄装置50は、図7に示すように、減圧モジュール10の長さを図6に示す粒子洗浄装置40の2倍の長さにした。これにより、コイル状配管9内における混合液の流過速度をより正確に制御することができるようになり、粒子を所望の程度までより一層高効率に洗浄することができる。
【0091】
図8は、本発明の第2の実施形態である粒子の洗浄方法を概略的に示す工程図である。図8において、図1に示す各工程と同一のものには同一の符号を付し、説明を省略する。本発明の第2の実施形態である粒子の製造方法は、図8に示すように、上述のステップS1〜ステップS3の各工程に加えて、回収工程にて固液分離された液体の導電率の値に基づいて判断を行う判断工程(ステップS5)と、回収工程にて分離した粒子を再度分散液供給工程に戻す循環処理工程(ステップS6)とを含む。
【0092】
図9は、本発明の第2の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置60の構成を簡略化して示す系統図である。図9に示す粒子洗浄装置60において、図2に示す粒子洗浄装置1と同一のものには同一の符号を付し、説明を省略する。
【0093】
ステップS5の判断工程において、粒子洗浄装置60内に設けられる図示しない制御部は、回収工程において遠心分離機7により固液分離された液体の導電率が、たとえば50μS/cm以下であるかどうかを判断する。そして、前記導電率が50μS/cm以下であると判断される場合には、回収工程は終了し、ステップS5からステップS4に移行して粒子の洗浄が終了する。
【0094】
一方、前記導電率が50μS/cmを超えると判断される場合には、ステップS6の循環処理工程に移行し、回収工程において遠心分離機7により固液分離されて取り出された粒子に対して洗浄液を加え、再度ステップS1の分散液供給工程に戻す。そして前記導電率が50μS/cm以下であると判断されるまで上記ステップS1からステップS5までの動作が繰り返された後、ステップS5からステップS4に移行して粒子の洗浄が終了する。
【0095】
このように、本発明の第2の実施形態である粒子の洗浄方法は、洗浄工程後に粒子分散液と洗浄液との混合液から粒子を分離して、分離した粒子を再度分散液供給工程に戻す。これにより、粒子の洗浄回数を増やすことができるため、粒子の洗浄効率をより向上させることができる。
【0096】
なお、本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法において、本発明の第2の実施形態である粒子の洗浄方法と同程度の洗浄効率を得るためには、洗浄液の量を第2の実施形態において使用される量よりも多くし、減圧モジュール10の背圧力を大きくする必要がある。
【0097】
このように、本発明の粒子の洗浄方法は、分散液供給工程において粒子分散液を加圧して連続的に混合空間に供給し、洗浄工程において洗浄液を加圧して連続的に混合空間に供給することにより粒子を洗浄する。また、本発明の粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置1,10,20,30,40,50,60は、分散液貯留タンク2が粒子分散液を貯留し、加圧ポンプ3が粒子分散液を加圧して連続的に混合器6に供給し、洗浄液貯留タンク4が洗浄液を貯留し、加圧ポンプ5が洗浄液を加圧して連続的に混合器6に供給する。これにより、加圧に伴う粒子の衝突によって粒子に適度なせん断力を付与することができ、また攪拌板などを用いることなく粒子分散液と洗浄液とを均一に攪拌混合することができるため、装置の小型化が可能であり、連続的に、均一かつ高効率に粒子の洗浄を行うことができる。また、使用する洗浄液の量を少なくできるため、排水処理に伴う環境負荷を小さくすることができる。
【実施例】
【0098】
以下に本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り特に本実施例に限定されるものではない。なお、本実施例では、粒子としてマゼンタトナーを使用した。
【0099】
[体積平均粒径(D50V)および変動係数(CV値)の測定方法]
実施例および比較例において、マゼンタトナーの体積平均粒径(D50V)および変動係数(CV値)は、以下に示すようにして測定した。電解液(商品名:ISOTON−II、ベックマン・コールター株式会社製)50mlに、試料20mgおよびアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム(分散剤)1mlを加え、超音波分散器(商品名:UH−50、株式会社エスエムテー製)によって超音波周波数20kHzで3分間分散処理して測定用試料を調整した。この測定用試料について、粒度分布測定装置(商品名:Multisizer3、ベックマン・コールター株式会社製)を用いて、アパーチャー径20μm、測定粒子数50000カウントの条件下に粒径の測定を行い、得られた測定結果から試料粒子の体積粒度分布を求め、求めた体積粒度分布から体積平均粒径D50V(μm)を算出した。また、体積粒度分布における標準偏差を求めて、上述の式(1)に基づいて変動係数(CV値、%)を算出した。
【0100】
[純水の調整方法]
分散液の調整に用いる純水および洗浄工程で用いる洗浄液(純水)には、超純水製造装置(商品名:Ultra Pure Water System CPW−102、ADVANTEC社製)を用いて水道水から調整した導電率0.5μS/cmの純水を使用した。なお、本実施例および比較例において、導電率はラコムテスター(商品名:EC−PHCON10、井内盛栄堂製)を用いて測定した。
【0101】
〔マゼンタトナーの製造〕
[微粒子調製工程]
・樹脂粒子分散液の調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてノニポール400(三洋化成株式会社製)1.2重量%およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)2重量%を溶解した水溶液中に、スチレン80重量%と、n−ブチルアクリレート15重量%と、アクリル酸2重量%と、ドデカンチオール2重量%と、四臭化炭素1重量%とを混合した混合液840gを加えて乳化した後に、過硫酸アンモニウム7.5重量%を溶解したイオン交換水100mLを投入し、窒素置換を行いつつ、攪拌しながら内容物が70℃になるまで加熱し、この状態を7時間継続した。
【0102】
・着色剤分散液の調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)2.5重量%と、着色剤としてフタロシアニンブルー(商品名:銅フタロシアニン 15:3、クラリアント社製)25重量%とを加えて混合し、NANO3000(美粒株式会社製)を用いて分散処理した。
【0103】
・離型剤分散液の調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてサニゾールB50(花王株式会社製)2.5重量%と、離型剤としてHNP10(日本精蝋株式会社製)とを加えて混合した後95℃に加熱して、T.K.ホモミクサーMARKII(プライミクス株式会社製)を用いて分散処理した。
【0104】
・樹脂微粒子スラリーの調製
イオン交換水1Lに、界面活性剤としてサニゾールB50(花王株式会社製)0.25重量%と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(キシダ化学株式会社製)0.8重量%と、樹脂粒子分散液33重量%と、着色剤分散液5重量%と、離型剤分散液7重量%とを加えて混合し、樹脂微粒子スラリーを得た。
【0105】
[凝集工程]
微粒子調製工程にて得られた樹脂微粒子スラリー100重量部に、凝集剤として塩化ナトリウム(商品名:特級塩化ナトリウム、キシダ化学株式会社製)3重量部を加え、シングルモーション方式の乳化機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック株式会社製)にて、凝集温度90℃、ローター回転速度8000rpmで10分間撹拌処理することにより、樹脂微粒子を凝集させた凝集粒子スラリーを作製し、これを粒子分散液として以下の実施例および比較例で使用した。
【0106】
(実施例1)
分散液供給工程における粒子分散液の加圧条件を流速50ml/分とし、洗浄工程における洗浄液の加圧条件を200ml/分(12L/時間)として、図2に示す粒子洗浄装置1を使用して、作製した粒子分散液中のマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、5μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は4Lであった。
【0107】
(実施例2)
洗浄工程における洗浄液の加圧条件を150ml/分(9L/時間)とした以外は、実施例1と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、15μS/cmであり、洗浄に使用した洗浄液は3Lであった。
【0108】
(実施例3)
図9に示す粒子洗浄装置60を使用し、循環処理回数を1回とし、1回目の洗浄で得られたマゼンタトナーに対してさらに洗浄液を加えて分散液供給工程に戻した以外は、実施例1と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、3.8μS/cmであり、洗浄に使用した洗浄液は9Lであった。
【0109】
(実施例4)
分散液供給工程における粒子分散液の加圧条件を流速90ml/分とし、図6に示す粒子洗浄装置40を使用した以外は、実施例1と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、5μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は2.2Lであった。またコイル状配管9におけるレイノルズ数は4100であった。
【0110】
(実施例5)
洗浄工程における洗浄液の加圧条件を150ml/分(9L/時間)とした以外は、実施例4と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、5μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は1.7Lであった。またコイル状配管9におけるレイノルズ数は4100であった。
【0111】
(実施例6)
洗浄工程における洗浄液の加圧条件を100ml/分(6L/時間)とした以外は、実施例4と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、5μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は1.1Lであった。またコイル状配管9におけるレイノルズ数は4100であった。
【0112】
(実施例7)
洗浄工程における洗浄液の加圧条件を80ml/分(4.8L/時間)とした以外は、実施例4と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、5μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は0.9Lであった。またコイル状配管9におけるレイノルズ数は4100であった。
【0113】
(実施例8)
図7に示す粒子洗浄装置50を使用した以外は、実施例1と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、5μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は4Lであった。またコイル状配管9におけるレイノルズ数は3400であった。
【0114】
(実施例9)
洗浄工程における洗浄液の加圧条件を150ml/分(9L/時間)とした以外は、実施例8と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、5μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は3Lであった。またコイル状配管9におけるレイノルズ数は3400であった。
【0115】
(実施例10)
洗浄工程における洗浄液の加圧条件を100ml/分(6L/時間)とした以外は、実施例8と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、5μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は2Lであった。またコイル状配管9におけるレイノルズ数は3400であった。
【0116】
(実施例11)
洗浄工程における洗浄液の加圧条件を80ml/分(4.8L/時間)とした以外は、実施例8と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、3μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は1.6Lであった。またコイル状配管9におけるレイノルズ数は3400であった。
【0117】
(実施例12)
図4に示す粒子洗浄装置20を使用した以外は、実施例1と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、5μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は4Lであった。
【0118】
(実施例13)
洗浄工程における洗浄液の加圧条件を150ml/分(9L/時間)とした以外は、実施例12と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、5μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は3Lであった。
【0119】
(実施例14)
洗浄工程における洗浄液の加圧条件を100ml/分(6L/時間)とした以外は、実施例12と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、9μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は2Lであった。
【0120】
(実施例15)
図5に示す粒子洗浄装置30を使用した以外は、実施例1と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、5μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は4Lであった。またコイル状配管9におけるレイノルズ数は6300であった。
【0121】
(実施例16)
洗浄工程における洗浄液の加圧条件を150ml/分(9L/時間)とした以外は、実施例15と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、5μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は3Lであった。またコイル状配管9におけるレイノルズ数は6300であった。
【0122】
(実施例17)
洗浄工程における洗浄液の加圧条件を100ml/分(6L/時間)とした以外は、実施例15と同様にしてマゼンタトナーを洗浄したところ、回収工程にて固液分離された液体の導電率は、5μS/cm以下であり、洗浄に使用した洗浄液は2Lであった。またコイル状配管9におけるレイノルズ数は6300であった。
【0123】
(比較例1)
容量5Lでケーキ厚みが2cmとなる遠心分離機(商品名:H−122、株式会社コクサン製)を用いて、作製した粒子分散液1Lに洗浄液を加えて、回転数20000rpmで遠心分離してマゼンタトナーと上澄み液とに分離した。得られたマゼンタトナーに対して、さらに洗浄液を加えて上記と同様にして遠心分離を行った。この操作を、遠心分離後に得られる上澄み液の導電率が5μS/cm以下になるまで繰り返したところ、35Lの洗浄液を必要とした。
【0124】
(比較例2)
作製した粒子分散液50mlおよび洗浄液200mlを混合し、タービン型撹拌翼(商品名:H−701FR、株式会社コクサン製)で5分間攪拌洗浄した後濾過することでマゼンタトナーを取り出した。その後取り出したマゼンタトナーに対して、さらに洗浄液200mlを加えて上記と同様にして攪拌洗浄を行った。この操作を濾過後の濾液の導電率が5μS/cm以下になるまで繰り返したところ、1.5Lの洗浄液を必要とした。この操作により、粒子分散液1L中のマゼンタトナーを洗浄するために、30Lの洗浄液を必要とした。
【0125】
実施例1〜17および比較例1,2におけるマゼンタトナーの各洗浄条件、粒子分散液1L中のマゼンタトナーを洗浄するために必要とする洗浄液量、導電率およびレイノルズ数を表1に示す。
【0126】
【表1】

【0127】
表1に示した結果から、本発明の実施例1〜17の粒子の洗浄方法は、粒子分散液中のマゼンタトナーを充分に洗浄する、すなわち回収工程後に得られる液体の導電率が5μS/cm以下となるようにするために要する洗浄液量を、比較例1,2の粒子の洗浄方法と比較して少なくすることができ、非常に優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を概略的に示す工程図である。
【図2】本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置の構成を簡略化して示す系統図である。
【図3】本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置の構成を簡略化して示す系統図である。
【図4】本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置の構成を簡略化して示す系統図である。
【図5】本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置の構成を簡略化して示す系統図である。
【図6】本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置の構成を簡略化して示す系統図である。
【図7】本発明の第1の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置の構成を簡略化して示す系統図である。
【図8】本発明の第2の実施形態である粒子の洗浄方法を概略的に示す工程図である。
【図9】本発明の第2の実施形態である粒子の洗浄方法を用いるのに適した粒子洗浄装置の構成を簡略化して示す系統図である。
【符号の説明】
【0129】
1,10,20,30,40,50,60 粒子洗浄装置
2 分散液貯留タンク
3,5 加圧ポンプ
4 洗浄液貯留タンク
6 混合器
7 遠心分離機
9 コイル状配管
8,10 減圧モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に粒子が分散された粒子分散液中の粒子の洗浄方法であって、
粒子分散液を加圧して連続的に混合空間に供給する分散液供給工程と、
洗浄液を加圧して連続的に混合空間に供給することにより粒子を洗浄する洗浄工程とを含むことを特徴とする粒子の洗浄方法。
【請求項2】
洗浄工程後に粒子分散液と洗浄液との混合液から粒子を分離して、
分離した粒子を再度分散液供給工程に戻すことを特徴とする請求項1に記載の粒子の洗浄方法。
【請求項3】
分散液供給工程において、粒子分散液を加圧した後、減圧手段に流過させることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子の洗浄方法。
【請求項4】
分散液供給工程において、粒子分散液は、0.5MPa以上30MPa以下で加圧されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の粒子の洗浄方法。
【請求項5】
粒子は、体積平均粒径が100μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の粒子の洗浄方法。
【請求項6】
粒子は、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の粒子の洗浄方法。
【請求項7】
洗浄工程において、粒子分散液と洗浄液との混合液をコイル状配管に流過させることを特徴とする請求項6に記載の粒子の洗浄方法。
【請求項8】
洗浄工程において、粒子分散液と洗浄液との混合液をコイル状配管に流過させた後、減圧手段に流過させることを特徴とする請求項7に記載の粒子の洗浄方法。
【請求項9】
洗浄工程において、コイル状配管を流過する粒子分散体と洗浄液との混合液のレイノルズ数は、2000以上5000以下であることを特徴とする請求項7または8に記載の粒子の洗浄方法。
【請求項10】
粒子分散液における粒子の含有量は、20重量%以上であることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1つに記載の粒子の洗浄方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の粒子の洗浄方法を用いて水性媒体中に粒子が分散された粒子分散液中の粒子を洗浄する粒子洗浄装置であって、
粒子分散液を貯留する分散液貯留手段と、
粒子分散液を加圧して連続的に混合空間に供給する第1の加圧手段と、
洗浄液を貯留する洗浄液貯留手段と、
洗浄液を加圧して連続的に混合空間に供給する第2の加圧手段とを含むことを特徴とする粒子洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−307517(P2008−307517A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160558(P2007−160558)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】