説明

粒子フレーバー組成物

本発明は、制御された遊離粒子を含む粒子組成物で、フレーバー含有脂肪の分離した成分が、ゼラチンマトリックスに分散し、該粒子が、0.1〜40wt%、好ましくは5〜30wt%のフレーバー;10〜70wt%、好ましくは20〜50wt%のゼラチン;及び0.1〜75wt%、好ましくは5〜50wt%の脂肪を含み、該脂肪の融点が少なくとも35℃であり、該粒子が、50〜1500μmの体積加重平均粒径を有することを特徴とする、粒子組成物に関する。本発明の粒子組成物は、せん断力、熱及び/又は湿気等特定の条件により、含有するフレーバーを放出する。摂取中の放出率は、ゼラチンと脂肪の相対量及びゼラチンのゼリー強度を変更することにより変動する。これらの組成物は、チューインガム等の菓子類及び歯磨き粉に、長時間持続する味覚を付加するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口的に摂取されるフレーバーの分野に関する。特に、揮発性のフレーバー成分のカプセル化に関し、カプセル化によりフレーバーを、例えば湿気や酸化から保護し、例えば咀嚼中に起こるせん断力、熱や湿気等の特定の条件下で、制御可能な方法でフレーバーの放出を可能にする。本発明のカプセルは、チューインガム等の菓子製品又は歯磨き粉に風味を付与するのに適している。
【背景技術】
【0002】
カプセル封入システムは、フレーバー産業において、注目されている重要な分野である。カプセル封入システムは、2つの目的を達成することを目的としている。
【0003】
第一の目的は、かかるシステムに封入された成分を保護する機能に関する。かかるシステムは、カプセルに封入された有効成分の様々な劣化(retrogradation)を予防し、同時に有効成分、特に揮発性のフレーバー成分の蒸発を防止できなければならない。エッセンシャルオイル等のフレーバーの酸化は、オフノート(off-notes)を誘引し、食品分野で深刻な問題となっている。炭水化物は、揮発性物質と芳香族化合物が封入され、食品として許容されうる基質を提供することができる。しかし、大半の水溶性炭水化物は吸湿性であり、封入物を長期間、確実に保持することはできない。したがって、カプセル封入システムの安定化は、依然としてこの分野において重要な課題である。
【0004】
他の目的も、カプセル封入システムを対象としており、(最終製品による)有効成分の放出を制御することである。特に、揮発性の成分の場合、保管中の放出を有効に防ぐことは非常に重要である。さらに、カプセル封入システムが、製品の使用中に、かかる使用に係る標準的な条件により、揮発性有効成分を確実に放出することも重要である。
【0005】
チューインガム、チュアブル医薬錠剤、チューイングタバコ、歯磨き粉等の経口的に摂取される組成物に風味を添えることにより、かかる物質に、初期のフレーバーインパクトと、長期間にわたるフレーバーインパクトの両方を与えるための研究が数多く行われてきた。フレーバーの一部が、例えば咀嚼中に即座に(immediately)放出され、残りのフレーバーがフレーバーの持続放出(sustained release)を提供するようなカプセルの生産を試みたところ問題が生じた。
【0006】
チューインガムベースが、添加された、カプセル化されていない(non-encapsulated)フレーバーの「シンク(sink)」として作用することはよく知られている。従来から当該分野で行われているように、ガムベースにカプセル化されていないフレーバーを添加すると、摂取中に全フレーバーの20〜40%しか放出されず、残りは、ガムベースに封入されたままとなる。さらに、現在市販されているチューインガムには、以下の問題がある。(1)フレーバーオイルは、チューインガムベースに高い親和性があり、ガムベース内に固定されて知覚されないため、初期のフレーバー認識には、高価なフレーバーオイルが1.0%以上必要である(他の菓子に必要な量の10倍)。4時間咀嚼後の食い戻し(cud)を分析したところ、添加されたフレーバーの80%が残存していることが示された。(2)フレーバーオイルレベルが1.0%以上でも、許容可能な知覚レベルは、2〜3分しか持続しない。
【0007】
当該技術において、フレーバーの効果的な送達を改善するための代替手段として、フレーバー成分を単にガムベース等に添加する代わりに、アラビアガム、マルトデキストリン、タンパク質等のコロイドに封入することが提案された。
【0008】
米国特許第1,526,039号は、例えば、エッセンシャルオイルやフレーバーとチューインガムベースとを微細に分割した状態で混合し、フレーバーの粒子又はオイルが、製造中にガムベースと接触しないように適切なマトリックスに封入されている場合には、この接触によるガムのフレーバー特性への影響を防止又は大幅に軽減することができることを教示している。例えば、一般的なガム及びゼラチンを含むエッセンシャルオイルの乳剤及び乳化物質を調製することにより、エッセンシャルオイルが微細な粒子に分画される。これらの粒子は乳化物質に封入されるので、乳剤をガムに添加する時にエッセンシャルオイルがガムベースと直接接触しない。かかる粒子の物理的形状及び成分の特性は、フレーバーの放出及び強度を制御する。
【0009】
米国特許第2,886,440号は、「フレーバー知覚時間が延長された(extended flavour perception time)」ことを特徴するチューインガムの製造方法と、微細に分画されたゼラチン内に封入された揮発性で水不混和性のフレーバー剤を含む噴霧乾燥した組成物をチューインガムに配合し、次にゼラチンに封入されたフレーバー剤を、全てを覆う量(all-enveloping mass)のチュアブルガムベース内に実質的に均一に送達する、高度なフレーバー放出とを教示している。
【0010】
米国特許第2,886,446号は、(i)フレーバーの速い放出(fast release)を特徴とするゼラチンの小粒子と、(ii)フレーバーの放出が遅い(slower release)大きいゼラチン粒子とを含む。それぞれの粒子は、分散した乾燥した乳剤の型で、揮発性の水不混和性フレーバー剤の微液滴を含み、全てを覆う量のチュアブルガムベース内に、粒子が実質的に均一に分布され、それにより延長された咀嚼時間中、フレーバーが実質的に均一、また均等に放出される。かかる特許では、グレード、タイプ及びブルーム強度(bloom strength)は変わりうることを教示している。急速放出(rapid release)を望む時には、ブルームが50以下であるゼラチンを用いることが好ましい。米国特許第2,886,446号によれば、遅い放出を望むときには、ブルームが200以上であることが好ましい。
【0011】
米国特許法第4,386,106号には、制御された遅延放出性(delayed release)の封入されたフレーバー粒子が開示されている。該粒子には、部分的に親水性で、ゆっくりと溶解する物質のフレーバーが封入されているベースパウダー−例えば、アラビアガムを含むゼラチンと、グリセロール等の可塑剤との組合わせ−と、不溶性でチューインガムベースに親和性を有するコーティング物質とが含まれている。これらのカプセルの主な特徴は、(I)揮発性のフレーバー成分を封入し、乾燥中の蒸発を防止し、さらに部分的に親水性で、フレーバーの速放性と持続放出を提供するコアマトリックス;と(II)フレーバーの放出を遅延し、フレーバーがチューインガムベースに溶解するのを防止し、無期限にフレーバーを封入する水不溶性コーティング、である。フレーバーの放出時間は、粒子のサイズ、フレーバーの選択、ベースマトリックスに使用されるゼラチンのブルーム強度、並びにマトリックス内のマルトデキストリン及び/又はアラビアゴム等他の成分の使用、不水溶性コーティングの量等のパラメーターを変えることにより、又は、架橋剤を使用するなどしてベースパウダーマトリックスの外側をシールし、不溶化処理を行うことによって制御可能である。
【0012】
米国特許法第5,116,627号は、甘味料含有ポリマー粒子(sweetener-bearing polymeric particles)及び/又はフレーバー含有粒子が分散したチューインガムベースを含むチューイングガム組成物を開示している。かかるポリマー粒子は、互いに物理的に連関している水溶性ポリマーと不水溶性ポリマーとを含み、一方のポリマーは他方ポリマーのマトリックス内の分離した成分である。例えばフレーバーオイル等の有効成分は、水溶性ポリマー及び非水溶性ポリマーの両方又はいずれかに組み入れられている。粒子のサイズと、水溶性ポリマーと不水溶性ポリマーの割合は、初期咀嚼時のフレーバー及び/又は甘味料組成物の放出率を減少させ、チューインガムの連続咀嚼中の放出率を高めるために変更することができる。
【0013】
WO91/17821は、ガム、加工デンプン、ゼラチン、又はデキストリン等のコロイドと、場合によっては単糖類とワックスを含むマトリックス物質に封入されたフレーバー成分を含むマイクロカプセルを教示している。ワックスは、マトリックスからのフレーバーの放出を遅延するために添加することでき、好ましくは、比較的硬い不水溶性のワックスである。前記マイクロカプセルは、チューインガム等の菓子製品への使用に適している。
【0014】
米国特許第2003/082272は、脂肪又は植物油等が封入されたフレーバー溶媒を含む、多孔性アルギン酸からなる不水溶性ゲルビーズ(gel beads)を調製する方法を開示している。液体フレーバーと粒子を混合することにより、ビーズにフレーバーが添加される。アルギン酸ゲルは比較的大きい孔を有しているので、賦形剤として他のマクロ分子を添加してもよい。米国特許第2003/082272の適切な賦形剤には、デキストリン、ガム、セルロース誘導体及びゼラチン等のタンパク質が含まれる。該特許において、ゼラチン約6.5wt%、アルギン酸約6.5wt%及びミグリオール82.5%からなるマトリックスを有するビーズが開示されている。
【0015】
上記のように、先行技術において、放出が制御された優れたフレーバー組成物の製造が多く試みられてきたが、経口的に摂取される組成物、特にチューインガムにおいて、満足感のある咀嚼時間をさらに延長し、及び/又はフレーバーの使用が少なくてもよいようなフレーバー組成物を改善する必要性がある。
【特許文献1】米国特許第1,526,039号
【特許文献2】米国特許第2,886,440号
【特許文献3】米国特許第2,886,446号
【特許文献4】米国特許第4,386,106号
【特許文献5】米国特許第5,116,627号
【特許文献6】WO91/17821
【特許文献7】米国特許第2003/082272
【発明の開示】
【0016】
ゼラチンと高融点脂肪(high melting fat)を含むカプセル封入組成物が、保管中及び処理中の酸素や湿気等から十分に保護することに加えて、初期に封入されたフレーバーの優れた制御可能な遅延放出特性を全て示すことを見い出した。
【0017】
特に、これらの有利な特性は、0.1〜40wt%のフレーバー、10〜70wt%のゼラチン、融点が少なくとも35℃である0.1〜75wt%の脂肪を含み、さらに体積加重平均粒径が50〜1500μmである粒子を含む粒子フレーバー組成物によって得られることを見い出した。さらに、上記粒子は、ゼラチンマトリックスに分散している脂肪の分離したフレーバー含有成分であることを特徴とする。
【0018】
特に、フレーバー放出ピークの発生時間、例えば咀嚼によるカプセルからの放出率は、マトリックス内の脂肪とゼラチンの相対量を調整し、ゼラチンのブルーム強度を変更し、粒子のサイズを操作することにより、非常に効果的に制御することができる。
【0019】
本発明の粒子は、フレーバー含有脂肪の分離した成分(discrete elements)が分散しているゼラチンマトリックスを含むと思われる。摂取中のフレーバー放出ピーク又はフレーバー放出率の発生時間は、不水溶性脂肪成分のサイズ及び/又は量と、ゼラチンマトリックスのゲル強度に影響されるものだと考えられる。大きい脂肪成分及び/又はブルーム値の高いゼラチンを含む粒子は、小さい脂肪成分及び/又はブルーム値の低いゼラチンを含む粒子と比較して放出は遅延する。
【0020】
EP125282には、例えば常温で固体である水素化植物油等の脂肪と、少なくとも1種の水溶性食用添加剤及び/又はゼラチン等の食用ポリマー物質とを含むコーティング剤でコーティングされた粉末フレーバーが開示されている。フレーバーは、所望の物質を、デキストリン、天然ガム等の水溶液或いはゼラチン又はカゼイン等のタンパク質内に溶解混合し、その後(噴霧)乾燥することにより粉末化できる。したがって、該特許の粒子は、親水性炭水化物又はタンパク質マトリックスに封入されたフレーバーで、親油性コーティング物質でコーティングされたフレーバーを包含する。これとは対照的に、本発明のフレーバーは、ゼラチンマトリックスに分散している分離した脂肪成分内に封入されている。
【0021】
本発明は、さらに2又は3以上の本発明の粒子組成物の組合わせを含むフレーバー送達システムも包含しており、比較的速いフレーバー放出を提供する粒子組成物と、非常に遅いフレーバー放出を提供する別の粒子組成物とを含む。
【0022】
本発明の別の実施形態は、チューインガム及び、本発明の粒子組成物又はフレーバー送達システムを含むチューインガムに、制御された放出(controlled release)特性を付与するためのかかる粒子組成物及び/又はフレーバー送達システムの使用に関する。
【0023】
さらに本発明の別の実施形態は、歯磨き粉、及び本発明の粒子組成物及びフレーバー送達システムを含む歯磨き粉に、かかる粒子組成物及び/又はフレーバーシステムを使用することに関する。
[発明の詳細な説明]
【0024】
したがって、本発明の第1の態様は、制御された遊離粒子(release particles)を含む粒子組成物で、フレーバー含有脂肪の分離した成分が、ゼラチンマトリックスに分散し、該粒子が、
0.1〜40wt%、好ましくは5〜30wt%のフレーバー;と、
10〜70wt%、好ましくは20〜50wt%のゼラチン;と、
0.1〜75wt%、好ましくは5〜50wt%の融点が少なくとも35℃の脂肪とを含み、
体積加重平均粒径が50〜1500μmである粒子に関する。
【0025】
本明細書中に使用されるフレーバリング(flavouring)及びフレーバー(flavour)なる用語は、同意語であると考えられるので、同義的に使用される。
【0026】
本明細書中に使用されるフレーバー放出ピーク(flavour release peak)なる用語は、摂取中にフレーバー放出率が最高値に達する瞬間を意味する。本明細書中で、フレーバーの放出される比率に言及するときは、フレーバー放出曲線の急勾配(steepness)に関する。フレーバー放出率は、フレーバー放出ピークの発生と密接に関連している。すなわち、速い放出比率の時は、かかるピークは早く生じ、遅延した放出比率の時は、ピークの発生は遅い。
【0027】
体積加重平均粒径(Volume weighted average diameter)なる用語は、粒子の体積に基づく平均直径に関し、Beckman coulter社製のLS粒度分布測定装置を用いて、又は従来のふるい分け法によって適切に測定することができる。
【0028】
本発明の粒子を、例えば、チューインガムに配合すると、フレーバーを効果的に封入し、及び/又は保管中と処理中のフレーバーの退化を防止し、咀嚼によってフレーバーを制御可能に遅延しながら放出する。遅延時間は、脂肪とゼラチンの相対量、ゼラチンのブルーム数と、粒子のサイズに依存する。
【0029】
本発明に使用されるフレーバーは、天然物質及び合成物質の両方を含んでもよく、単一物質及び、合成及び/又は天然物質の複合体も含む。フレーバーは、公知であり、例えば、S. Arctander, Perfume and Flavor Materials of Natural Origin (Elisabeth, N. J. USA, 1996) 、T. E. Furia et al、CRC Fenaroli’s Handbook of Flavor Ingredients, 2nd Ed. (Cleveland, CRC Press Inc., 1975)、H.B. Heath, Source Book of Flavors (The Avi Publishing Company Inc., Westport, Connecticut, 1981)に記載されている。
【0030】
ゼラチンを含む、上記で定義された本発明のカプセル組成物は、液体若しくは固体の、揮発性の又は不安定なフレーバー組成物をカプセル化するために有利に用いることができる。本発明の粒子組成物内に存在するフレーバーは、アルデヒド、アセタール、ケトン、テルペン、エステル、ピラジン、ラクトン等のフレーバー物質を含むことができる。フレーバーは、柑橘類や上記フレーバー物質を含むハーブやスパイスのエッセンシャルオイル等のエッセンシャルオイルを含むことができる。
【0031】
本発明の範囲内で使用されうるフレーバーとしては、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、テトラヒドロリナロール、リナロオール、酢酸リナリル、シトロネロール、酢酸シトロネリル、ジヒドロミルセノール、ジヒドロ酢酸ミルセニル、テトラヒドロミルセノール、テルピネオール、酢酸テルピニル、ノポール、ノピルアセテート、2−フェニルエタノール、2−フェニルエチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルアセテート、ベンジルサリチル酸、スチラリルアセテート、安息香酸ベンジル、サリチル酸アミル、ジメチルベンジルカルビノール、トリクロロメチルフェニルカルビニルアセテート、p−tertブチルシクロヘキシルアセテート、イソノニルアセテート、ベチベリルアセテート、ベチベロール、α−ヘキシル−シンナムアルデヒド、2−メチル−3−(p−tertブチルフェニル)−プロパナル、2−メチル−3−(p−イソプロピルフェニル)−プロパナル、3−(p−tertブチルフェニル)−プロパナル、トリシクロデセニルアセテート、トリシクロ−プロピオン酸デセニル、4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキサンカルバルデヒド、4−(4−メチル−3−ペンテニル)3−シクロヘキサンカルバルデヒド、4−アセトキシ−3−ペンチル−テトラヒドロピラン、3−カルボキシメチル−2−ペンチル−シクロペンタン、2−n―ヘプチル−シクロペンタノン、3−メチル−2−ペンチル−2−シクロペンタノン、n−デカナール、n−ドデカナール、デン−9−エン−1−オール、フェノキシ−エチルイソブチレート、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジエチルアセタール、ゲラニルニトリル、シトロネリルニトリル、セドリルアセテート、3−イソカンフィルシクロヘキサノール、セドリルメチルエーテル、イソロンジフォラロン、オーベピンニトリル、オーベピン、ヘリオトロピン、クーマリン、オイゲノール、バニリン、ジフェニル酸化物、ヒドロキシシトロネロール、イオノン(ionones)、メチルイオンオン、エチルイオンオン、アイロン(irones)、シス−3−ヘキサノール、及びそれらのエステル、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0032】
本発明による粒子組成物は、チューインガムに、メントール、ミント及びユーカリフレーバーの制御された放出を提供するのに適している。したがって、本発明の非常に好ましい態様によれば、フレーバーが、メントールフレーバー、ミントフレーバー、ユーカリフレーバー及びそれらの混合物からなる群から選択される、粒子フレーバー組成物に関する。
【0033】
本発明によると、あらゆるタイプやグレードのゼラチンを適切に用いることができ、骨又は皮膚由来のゼラチン、好ましくは骨由来のゼラチンが含まれる。メタリン酸ゼラチン(gelatine metaphosphate)、硬化ゼラチン(例えば、ホルムアルデヒド等の架橋剤で処理したもの)、熱処理ゼラチン等も使用することができる。使用されるゼラチンのブルーム強度は、幅広く変化させることができ、0〜300、特に10〜300の間であってもよい。マトリックスからのフレーバー組成物の放出が遅延するレベルは、一部は、ゼラチンのブルーム強度又はゼリー強度によって決定される。摂取中のマトリックスからの比較的速い放出を望む場合には、好ましくはブルームが150以下、さらに好ましくは100以下のゼラチンを使用する。摂取中のマトリックスからの比較的遅い放出を望む場合には、好ましくは、ブルームが少なくとも150、さらに好ましくは少なくとも200、もっとも好ましくは少なくとも240のゼラチンを使用する。比較的高いブルーム強度を有するゼラチンは、チューインガムの製造や摂取に好ましくない、硬い、「カリカリした(crunchy)」歯ごたえ(texture)を生じる傾向があり、チューインガムの製造や摂取に好ましくない。最終製品の歯ごたえが重要でない場合にも、本明細書中に開示されているものよりも高いブルーム強度のゼラチンも適切に用いることができる。硬化ゼラチンを使用すると、非硬化ゼラチンと比べてフレーバー放出ピークも遅延する可能性があることは、当業者には明らかである。
【0034】
粒子フレーバー組成物がさらに高融点脂肪を含むことは、本発明の必須要素である。本明細書を通じて使用される「脂肪(fat)」なる用語は、中性脂肪、脂肪酸のショ糖ポリエステル及びそれらの組合せを包含する。本発明の高融点脂肪は、植物油及び/又は動物性脂肪を水素化、或いはそれらの油や脂肪から高融点画分を単離することによって得ることができる。例えば咀嚼中に、フレーバーが本粒子組成物から放出される瞬間は、口内温度で実質的に固体である脂肪をさらに用いることにより遅延させることができることを見い出した。その結果、さらに好ましい実施形態では、本粒子に含まれる脂肪の融点は、少なくとも35℃であり、さらに好ましくは少なくとも38℃、最も好ましくは少なくとも45℃である。
【0035】
本発明のゼラチン及び脂肪を含むマトリックスにフレーバー組成物が封入されている場合には、ゼラチンを含むマトリックス内にフレーバーと脂肪が分離した成分として封入されている粒子組成物が得られる。一般的に、フレーバーの少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%が、分離した脂肪成分中に均一に溶解又は分散している。脂肪及びゼラチンの相対量は、所望の放出特性を得るために変更することができる。分離した脂肪成分の量及び/又は相対的なサイズは、摂取時のフレーバー放出ピーク及びフレーバー放出率に影響する。一般的に、分離したフレーバー含有脂肪成分の、体積加重平均粒径は、0.5〜10μm、好ましくは0.8〜3μmの範囲内である。
【0036】
本発明の粒子組成物は、フレーバーが組み込まれている製品が摂取されている時に発生するせん断力、熱及び/又は湿気等の特定の条件により、含まれるフレーバーを放出する。これらの条件は、例えば、チューインガム等の菓子の咀嚼、及び例えば、歯磨き粉等のブラッシング中に一般的に影響する。本明細書中で用いられる「摂取(consumption)」なる用語は、組成物の咀嚼及びブラッシングを包含する。
【0037】
組成物に含まれる脂肪の量は、0.1〜75wt%内で変化してよく、所望の「放出特性(release-characteristics)」に依存する。比較的ゆっくりとした放出には、粒子に含まれる脂肪の量は、少なくとも0.5%であることが好ましい。例えばチューインガム等において、さらにゆっくりとした放出を望む場合には、脂肪の量は、好ましくは8%以上であり、さらに好ましくは10wt%である。脂肪の量は、65wt%を超えないことが好ましく、50wt%を超えないことがさらに好ましい。
【0038】
本発明のフレーバー及び脂肪を含む粒子に含まれるゼラチンの量は、10〜70wt%である。例えば咀嚼中のフレーバー放出ピークの発生の遅延は、マトリックスに含まれるゼラチン及び脂肪の相対量に依存する。一般的に、本粒子は、少なくとも5wt%の脂肪と20〜50wt%のゼラチンとを含む。
【0039】
本発明の粒子は、一般的に0.1〜40wt%のフレーバーを含む。本組成物は、含まれるフレーバーの持続的に放出するために特に有効であるので、望ましくない初期のフレーバーバースト(flavour burst)を起こすことなく、粒子に、実質的な量のフレーバーを組み込むことは可能である。つまり、好ましい実施形態では、本粒子は、フレーバーを少なくとも0.5wt%、さらに好ましくは少なくとも2wt%、最も好ましくは少なくとも5wt%含む。
【0040】
特に好ましいフレーバー放出特徴は、フレーバーと脂肪の組合せが、粒子に含まれるフレーバー、脂肪及びゼラチンを組み合わせた重量の35%以上、好ましくは40%以上、さらに好ましくは少なくとも50%含む場合に観察される。
【0041】
上記のように、粒子組成物の粒子のサイズも、放出特性に大きく影響する。安定した、十分な持続放出を提供するには、粒子組成物の粒子は、少なくとも50μmの体積加重平均粒径を有さなければならない。好ましくは、前記粒径は、少なくとも80μmであり、さらに好ましくは少なくとも125μmである。一般的に、前記平均粒径が1500μmを超えることはない。全ての製品に、フレーバーを均一に分布するには、1000μmを超えない体積加重平均粒径を有する粒子を用いることが好ましく、850μmを超えないことがさらに好ましい。さらに、粒子の少なくとも75wt%、さらに好ましくは少なくとも90wt%の直径が、80〜1000μmの範囲内、さらに好ましくは125〜850μmの範囲内であるであることが好ましい。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によると、粒子フレーバー組成物は、フィルムを形成する炭水化物(film forming carbohydrate)をさらに含む。フィルムを形成する炭水化物は、ガム、加工デンプン、セルロース誘導体及びそれらの混合物からなる群から適切に選択される。好ましくは、かかるフィルムを形成する炭水化物は、ガム、加工デンプン及びその混合物から選択される。フィルムを形成する炭水化物の特に好ましい例は、アラビアガム又はアカシアガム等のガム、加工デンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそれらの混合物等のセルロース誘導体からなる群から選択されるが、これらに限定されない。フィルムを形成する炭水化物は、0.1〜10wt%、好ましくは2〜6wt%量で粒子に含まれてもよい。
【0043】
本発明の粒子フレーバー組成物は、さらに炭水化物プラッギング物質(carbohydrate plugging material)を含んでもよい。本明細書中に用いられる「プラッギング物質(plugging material)」なる用語は、特に粒子マトリックスのガラス転移温度及び溶解特性を修正し、それにより封入されたフレーバーに改善された酸素バリアを提供し、フレーバーのカプセルからの流出を防止するために使用される物質を指す。プラッギング物質は、例えば、グルコース、フルクトース、マルトース、ショ糖、ラフィノース、キシリトール、ソルビトール及びそれらの組合せ等の単糖類、二糖類及び三糖類からなる群から適切に選択することができる。これらの糖類は、かかる糖、例えば果汁入り固体を高含量有する物質でもよい。好ましくは、プラッギング物質は、マルトース、スクロース、キシリトール、ソルビトール及びそれらの組合せから選択される。さらに好ましくは、フレーバー組成物がいわゆる「シュガーフリーチューインガム」に用いられる場合には、プラッギング物質は、キシリトール、ソルビトール、及びその組合せから選択される。プラッギング物質は、一般的に本粒子組成物の粒子内に、1〜30wt%、好ましくは10〜20wt%の量で含まれる。
【0044】
本粒子組成物のフレーバー、ゼラチン及び脂肪の組合せは、かかる組成物の少なくとも50%を占める。好ましくは、かかる組合せと、含まれてもよいフィルムを形成する炭水化物及び炭水化物プラガー(plugger)とで、本粒子組成物の少なくとも70wt%、さらに好ましくは80wt%、もっとも好ましくは90wt%を占める。
【0045】
本粒子組成物の容積密度は、一般的に300〜700g/lの範囲内である。好ましくは、本組成物の容積密度は、400〜600g/lの範囲内である。本発明の粒子組成物は、一般的に粒子組成物の乳剤を乾燥することによって得られるが、以下に詳細に開示するように、かかる組成物は通常いくらかの水を含んでいる。一般的に、本発明の組成物は、0〜6wt%の水、特に0.3〜4wt%の水を含んでいる。
【0046】
粒子組成物の制御された遊離粒子は、さらに既知の食品用添加物(food-grade additives)を含んでもよい。添加物の例として、人工甘味料、保存料、着色剤、注入剤が挙げられる。一般的に、フレーバー、ゼラチン及び脂肪の組合せは、制御された遊離粒子の50〜100wt%、好ましくは70〜100wt%を占める。
【0047】
所定の量のフレーバー、ゼラチン及び脂肪を含有する制御された遊離粒子の他に、本粒子組成物は、砂糖、着色剤等の粒子物質を含んでもよい。好ましくは、粒子組成物は、制御された遊離粒子の少なくとも50%を含む。さらに好ましくは、組成物は、制御された遊離粒子の少なくとも80wt%を含む。もっとも好ましくは、組成物は、制御された遊離粒子で主に構成されている。
【0048】
本発明の粒子組成物は、一般的に、ゼラチン、脂肪、フレーバー、さらに、場合によってはフィルムを形成する炭水化物、プラッギング物質又は所望のあらゆる添加物を含む乳剤を、噴霧乾燥、ドラム乾燥、押出し(extrusion)、流動床処理又は、凍結乾燥等公知の方法によって乾燥することによって得られる。乳剤は、好ましくは流動床処理又は凍結乾燥によって乾燥する。凍結乾燥は、一般的に、かかる乳剤を、作業可能な形状、例えば、パレットユニット(palletizing unit)を用いて1cmビーズ等の固体にして行われる。その後、ビーズを回収し、通常の凍結乾燥処理に供する。
【0049】
上記の乾燥処理中に用いる乳剤は、好ましくは、ゼラチンと、場合によってはプラッギング物質とフィルムを形成する炭水化物とを含む水溶性組成物の水溶液を調製し;それにフレーバー及び脂肪の混合物で、好ましくはフレーバーを溶融脂肪内に分散することによって調整された混合物を添加することによって調製される。乳剤は、脂肪の融点以上の温度を維持しながら、適切に均質化(homogenized)される。均質化している間、脂肪の液滴は、近くでモニターされる。なぜなら、上述のように、最終製品内の単離された脂肪成分のサイズ及び量は、摂取時のフレーバーの放出特性に影響するからである。乳剤の脂肪液滴が所望のサイズになると、乳剤は乾燥ステップへと供される。
【0050】
本粒子組成物の放出特性は、ゼラチンブルーム強度と、脂肪及びゼラチンの相対量との適切な組合せを選択することによって、有利に制御できる。
【0051】
ブルーム数、ゼラチンと脂肪の相対量と、xで表す摂取時の粒子の「相対的なフレーバー放出率値(relative flavour release rate value)」は、以下の式で定義される:
((ブルーム数/150)+(wt%ゼラチン/30))*(wt%脂肪/10)=x
【0052】
異なるブルーム数のゼラチンの混合物が用いられる場合には、混合物の体重加重平均ブルーム数を用いてxを推測する。
【0053】
特別な実施形態においては、粒子フレーバー組成物は、制御された遊離粒子が、ブルーム数が0〜300のゼラチンを10〜70wt%、脂肪を0.1〜75wt%及びフレーバーを0.1〜40wt%を含み、xが少なくとも0.8で、フレーバーが非常にゆっくりと放出されることを特徴とする形で提供される。特に好ましい実施形態では、遅効放出(slow-release)粒子組成物は、xが少なくとも0.8、さらに好ましくは少なくとも1.0、もっとも好ましくは少なくとも2.0として提供される。一般的に、xは20を超えることがなく、好ましくは18を超えない。ブルーム数が0〜300のゼラチンを10〜70wt%、脂肪を0.1〜75wt%及びフレーバーを0.1〜40wt%を含み、xが0.5以下である粒子組成物は、摂取時に比較的速くフレーバーを放出する。これらの、急速放出(quick-release)粒子組成物は、速いフレーバーバーストを提供し、封入されていないフレーバーに有利な代替手段を提供するために用いられることがある。
【0054】
本発明の制御された遊離粒子は、例えば、長鎖の親水コロイドでさらにコーティングされていてもよい。親水コロイドとしては、多糖類、ゼイン、シェラック、セルロース誘導体及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。コーティング層が、コーティングされた粒子の0.5〜5wt%を占めるときに、特に有利な結果を得ることができる。より高い量のコーティングは、フレーバー密度を抑制することにつながり、好ましくない。
【0055】
本粒子が、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそれらの組合せからなる群から選択されるセルロース誘導体によってコーティングされている場合に、驚くほど有利な結果が得られる。かかるコーティングを、当該技術において知られている従来のコーティング技術を用いて粒子に施すことができる。
【0056】
セルロース誘導体でさらに外側にコーティングを行うことによって、フレーバーの強度に影響することなくフレーバーの放出を効果的に遅らせることができることを予測外に見い出した。通常、遅延されたフレーバー放出は、フレーバーの強度の減少を伴うので予想外であった。これは、フレーバーの放出が遅延した結果、フレーバー放出ピークは、効果的に、長時間にわたって「分散(spread out)」し、最高放出率と、ひいては最高フレーバー強度も減少したことを示す。したがって、本発明のメチルセルロースでコーティングされた製品は、フレーバー放出の遅延と、突然のフレーバーバーストとを組み合わせるという利点を提供する。
【0057】
本発明の別の態様は、組成物が異なる上記粒子フレーバー組成物を2つ含むフレーバー送達システムに関する。さらに、本発明の態様は、(a)xが少なくとも1である、上で定義された第一の粒子組成物を5〜70wt%と、(b)xが1未満である、上で定義された第二の粒子組成物を5〜70wt%とを含むフレーバー放出システムに関する。同様に好ましい実施形態では、(a)xが少なくとも1である、上で定義された第一の粒子組成物を5〜70wt%と、(b)xが第一組成物より少なくとも20%少ない、上で定義された第二の粒子組成物を5〜70wt%とを含むフレーバー放出システムに関する。他の好ましい実施形態では、(a)xが少なくとも1である、上で定義された第一の粒子組成物を5〜70wt%と、(b)封入されていないフレーバー(液体フレーバー)又は当該技術で知られている他の即効放出(immediate release)粒子フレーバー組成物を5〜70wt%とを含むフレーバー放出システムに関する。このようなフレーバー送達システムを含む製品の摂取時に、複数の連続したフレーバー放出ピークが発生するため、摂取時に、消費者が(より)長く持続する一定の味覚認識を提供するシステムをデザインすることが可能である。
【0058】
本発明は、さらに本粒子フレーバー組成物及び/又はフレーバー送達システムの、フレーバー入りチューインガムへの使用に関している。チューインガムは、当該技術で知られているチューインガムであればどのようなタイプのものでもよく、その組成物は、当業者には明らか及び/又は入手可能である。さらに、チューインガムは、場合によってカリカリした水溶性のコーティング層でさらにコーティングされていてもよい。一つの好ましい実施形態において、本発明の製品は、ガムベースに1又は複数の制御された遊離粒子の画分と、場合によっては液体フレーバーを組み込むことにより、チューインガムの満足する咀嚼時間を延長するために用いられる。本発明の有利な実施形態においては、フレーバー放出システムの高速放出(fast release)画分、例えば初期のフレーバーバーストを提供するために用いられる液体フレーバー又は、急速放出粒子は、チューインガムの外側コーティング層並びにガムベースそのものに組み込まれており、本粒子組成物は、チューインガムにのみ組み込まれている。さらに好ましい実施形態では、高速放出画分は、コーティングに組み込まれており、遅効放出画分は、チューインガムに組み込まれている。本発明の制御された遊離組成物又はシステムで調製されたチューインガムは、公知のガムと比較して、高いフレーバーレベルに達し、及び/又は延長された期間にわたり、高度な味覚認識を維持する。
【0059】
さらに好ましい実施形態において、本明細書で定義されているフレーバー送達システムは、チューインガムに組み込まれている。したがって、数分間にわたり、実質的に一定の味覚認識を送達するチューインガムを提供することができる。また、この実施形態により消費者は連続して異なる味覚、例えば最初の1分間はレモンフレーバー、次にミントフレーバー等、を得ることができる。
【0060】
さらに本発明の他の実施形態は、本発明の粒子発明組成物又はフレーバー送達システムを、チューインガム組成物全体の重量に対して、0.01〜6wt%量、好ましくは0.05〜3wt%含むチューインガムに関する。最も好ましい実施形態は、上述のように、非常に長い味覚認識を提供するチューインガムと、異なる連続したフレーバーを体験させるチューインガムに関する。
【0061】
他の実施形態においては、本発明のフレーバー送達システム又は粒子フレーバー組成物は、上記の有利なフレーバー特性を歯磨き粉に組み入れる。
【0062】
本発明の他の実施形態は、本発明の粒子フレーバー組成物又はフレーバー送達システムを、歯磨き粉組成物の全重量に対して、0.01〜6wt%、好ましくは0.05〜3wt%含む歯磨き粉に関する。歯磨き後は、当該技術で知られているものであれば、どのようなものでもよく、その組成物は、当業者に明らか及び/又は入手可能である。
[実施例]
【実施例1】
【0063】
本発明による粒子フレーバー組成物を複数調製した。表1に示す乳剤を調整するために、異なる組成物の量を用いた。
【0064】
【表1】

【0065】
最初の3つの成分を水に分散し、60℃で30分間混合して溶液を調製した。メントールを、完全に水素化したパーム油(Admul PO58 5Z03910;Quest International B.V. 社製)に60℃で溶解し、その後水性分散に添加し、Ultra Turraxを用いて60℃で15分均質化して乳剤を調製した。乳剤を、液体窒素を用いて、低温貯蔵のペレタイザー/ブレーカー内で丸型の〜1cm凍結画分に処理した。超低温で凍結した画分は、連続して、−45℃で1mbarの真空、20℃のプレート温度で作動するバッチ凍結乾燥機に搭載した。その結果生じた物質を、D50〜500ミクロンの粒子サイズで、125〜1000ミクロンの範囲の粒子サイズへと粉砕した。その結果、表2に示す粒子フレーバー組成物が生じた。
【0066】
【表2】

(実験2)
【0067】
実施例1のフレーバー組成物をそれぞれ、以下の組成物を有するチューインガムベースに添加した。
ガムベース 712g
ソルビトール 279g
グリセリン 8.2g
アスパルタン 0.8g
フレーバー粒子 15g
【0068】
さらに、同様のチューインガムを、従来の噴霧乾燥フレーバー粒子と、WO91/17821の実施例4に基づき調製された制御された遊離粒子を用いて調製した。これらの粒子組成物を表3に示す。
【0069】
【表3】

【0070】
全ての場合において、同量のフレーバー粒子をチューインガムに組み入れた。異なる5つのチューインガムの、咀嚼時のメントールフレーバーの放出を感覚パネルにより検査した。味覚の認識は、パネリストの相対強度ユニットで表した。結果を表1に示す。本発明を使用したところ、全ての場合において従来の噴霧乾燥フレーバー組成物と比較して、同量のフレーバーの使用で、フレーバー放出ピークの強度及びタイミングが改善した。さらにWO91/17821による制御された遊離粒子と比較して、本発明の粒子組成物を用いた場合に非常に高いフレーバー強度が得られた。
【実施例2】
【0071】
実施例1の表2に記載した粒子フレーバー組成物2を、4wt%のメチルセルロースの水溶液を用いて流動床コーティングによってメチルセルロールでコーティングした。コーティングした製品は、3wt%のメチルロースを含有していた。
【0072】
コーティングされた製品並びに実施例1の粒子フレーバー組成物2を、実施例1に記載のチューインガムベースに、1.5wt%量添加した。得られたチューインガム製品の放出特性は、実施例1に記載の方法と同様に、味覚パネルによって評価した。評価の結果を図2に示す。その結果、メチルセルロースのコーティング層が、放出特性に影響することなく、フレーバーの放出を遅らせることが明確に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】粒子組成物の味覚認識の結果を示す図である。
【図2】コーティングされた組成物の味覚の放出特性の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御された遊離粒子を含む粒子組成物で、
フレーバー含有脂肪の分離した成分が、ゼラチンマトリックスに分散し、該粒子が、
0.1〜40wt%、好ましくは5〜30wt%のフレーバー;
10〜70wt%、好ましくは20〜50wt%のゼラチン;及び
0.1〜75wt%、好ましくは5〜50wt%の脂肪を含み、
該脂肪の融点が少なくとも35℃、好ましくは38℃であり、
該粒子が、50〜1500μmの体積加重平均粒径を有することを特徴とする、粒子組成物。
【請求項2】
フレーバーの少なくとも90%が、分離した脂肪成分中で、均一に溶解又は分散していることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
制御された遊離粒子が、0.1〜10wt%のフィルムを形成する炭水化物をさらに含み、フィルムを形成する炭水化物が、ガム、加工デンプン、セルロース誘導体及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
制御された遊離粒子が、1〜30wt%の炭水化物プラガーをさらに含み、該プラガーが、単糖、二糖、三糖及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜3いずれかに記載の組成物。
【請求項5】
ゼラチンが、10〜300のブルーム値であることを特徴とする、請求項1〜4いずれかに記載の組成物。
【請求項6】
ゼラチンが、骨、特にブタの骨に由来することを特徴とする、請求項1〜5いずれかに記載の組成物。
【請求項7】
硬化脂肪の融点が、少なくとも45℃であることを特徴とする、請求項1〜6いずれかに記載の組成物。
【請求項8】
水を0〜6wt%含むことを特徴とする、請求項1〜7いずれかに記載の組成物。
【請求項9】
フレーバーが、メントールフレーバー、ミントフレーバー、ユーカリフレーバー、及びそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1〜8いずれかに記載の組成物。
【請求項10】
組成物が、制御された遊離粒子の少なくとも50wt%を含むことを特徴とする、請求項1〜9いずれかに記載の組成物。
【請求項11】
制御された遊離粒子内に含まれるフレーバーと脂肪が、ゼラチンを含むマトリックスに封入された分離した成分であることを特徴とする、請求項1〜10いずれかに記載の組成物。
【請求項12】
フレーバー、ゼラチン及び脂肪の組合せが、制御された遊離粒子の50〜100wt%を構成することを特徴とする、請求項1〜11いずれかに記載の組成物。
【請求項13】
制御された遊離粒子が、フレーバー、ゼラチン、脂肪及び溶媒を含む溶液又は分散を押出し若しくは噴霧乾燥することによって、又はコア粒子を前記溶液又は分散で流動床コーティングすることによって得られることを特徴とする、請求項1〜12いずれかに記載の組成物。
【請求項14】
制御された遊離粒子が、多糖類、ゼイン、シェラック、セルロース誘導体及びその組み合わせからなる群から選択される親水コロイドを少なくとも50wt%含む外側コーティング層を含むことを特徴とする、請求項1〜13いずれか記載の組成物。
【請求項15】
((ブルーム数/150)+(wt%ゼラチン/30))*(wt%脂肪/10)
であることを特徴とする、請求項1〜14いずれかに記載の組成物。
【請求項16】
((ブルーム数/150)+(wt%ゼラチン/30))*(wt%脂肪/10)
であることを特徴とする、請求項1〜15いずれかに記載の組成物。
【請求項17】
請求項15記載の組成物を5〜70wt%と、請求項16記載の組成物を5〜70wt%とを含むことを特徴とする、フレーバー送達システム。
【請求項18】
請求項15記載の組成物を5〜70wt%と、液体フレーバーを5〜70wt%とを含むことを特徴とする、フレーバー送達システム。
【請求項19】
チューインガム又は歯磨き粉に、制御されたフレーバー遊離特徴を付加するための、請求項1〜16いずれかに記載の粒子組成物又は請求項17又は18記載のフレーバー送達システムの使用。
【請求項20】
請求項1〜16いずれかに記載の粒子組成物又は請求項17又は18記載のフレーバー送達システムを0.01〜6wt%含むことを特徴とする、チューインガム又は歯磨き粉。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−525994(P2007−525994A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501737(P2007−501737)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000160
【国際公開番号】WO2005/084458
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(391020296)クエスト・インターナショナル・ビー・ブイ (7)
【氏名又は名称原語表記】QUEST INTERNATIONAL BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】