説明

粒子伝導型のスピーカ

【課題】複数のボイスコイルの音声を互いに干渉し合うことなく出力可能な粒子伝導型のスピーカを提供する。
【解決手段】磁気回路(永久磁石、ヨーク)内に設けられ、入力される駆動電流に基づいて振動する複数のボイスコイル(2)と、複数のボイスコイル2のそれぞれに連結され、ボイスコイル2の振動を伝達する複数の伝達部と、複数の伝達部が固定される振動板(6)とを備え、複数のボイスコイル2の振動が、複数の伝達部を介して振動板6に伝達されることにより音声が出力される粒子伝導型のスピーカ100とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子伝導型のスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のボイスコイルに流される駆動電流に応じて各々のボイスコイルと永久磁石の間で変化する磁力を、全てのボイスコイルが取付けられた共通の磁性振動部に作用させて振動させることにより音声を出力してなる電気音響変換装置(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開2000−59889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の電気音響変換装置においては、複数のボイスコイルにおいて変化する磁力を共通の磁性振動部に作用させることによって音声を出力するものであるため、各ボイスコイルで生じる磁力によって、磁性振動部に作用されてなる振動が互いに影響を受け合い、結果として、各ボイスコイルで再生された音声が重畳されて出力されてしまうという問題があった。
【0004】
そこで、本明の課題は、複数のボイスコイルの音声を互いに干渉し合うことなく出力可能な粒子伝導型のスピーカを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、粒子伝導型のスピーカにおいて、磁気回路内に設けられ、入力される駆動電流に基づいて振動する6つのボイスコイルと、前記6つのボイスコイルのそれぞれに連結され、当該ボイスコイルの振動を伝達する6つの伝達部と、当該6つの伝達部に固定される6つの固定部が等間隔に配置されている振動板と、を備え、前記6つの固定部は、前記振動板における、当該粒子伝導型のスピーカの前部、右前部、左前部、右後部、左後部、後部の各々に対応する位置に設けられ、前記6つの固定部のそれぞれに伝達部を介して連結される6つのボイスコイルのうち、低音域の音声の振動を生成してなる低音用ボイスコイルは、前記振動板の後部に設けられた固定部に固定され、前記6つのボイスコイルの振動が、前記6つの伝達部を介して前記振動板に伝達されることにより音声が出力されることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、粒子伝導型のスピーカであって、磁気回路内に設けられ、入力される駆動電流に基づいて振動する複数のボイスコイルと、前記複数のボイスコイルのそれぞれに連結され、当該ボイスコイルの振動を伝達する複数の伝達部と、前記複数の伝達部に固定される振動板とを備え、前記複数のボイスコイルの振動が、前記複数の伝達部を介して前記振動板に伝達されることにより音声が出力されることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の粒子伝導型のスピーカにおいて、前記振動板は、前記複数の伝達部の各々に固定される複数の固定部を備え、前記複数の固定部の各々は、前記振動板に等間隔に配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の粒子伝導型のスピーカにおいて、前記振動板は、6つの固定部を備えることを特徴とする粒子伝導型のスピーカ。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によると、6つからなる伝達部を介して、6のボイスコイルで生成された振動が振動板に伝達されて音声が出力されることとなる。この場合に、当該粒子伝導型のスピーカにおいては、振動板を構成する粒子を振動させることによって音声が出力されるものであり、ソリトンの特徴を有するため、6つのボイスコイルにおいて生成された振動どうしが振動板上において互いに干渉し合うことなく、各ボイスコイルにおいて生成された振動に基づいた音声を出力することができる。
【0010】
また、振動板には、6つのボイスコイルが等間隔に連結されているため、好適なバランスで音声を出力することができる。
【0011】
さらに、振動板が6つの固定部を備えることによって、当該粒子伝導型のスピーカを、6つのボイスコイルを備えてなる6チャンネルの音声出力システムに対応させることができる。つまり、6チャンネルの音声出力システムの一つである、5.1チャンネル方式の音声出力システムに好適に対応させることができ、当該システムにおいて、高い音響効果を実現することができる。
【0012】
そして、低音域の音声の振動を生成してなる低音用ボイスコイルが、スピーカの後部に対応する位置に設けられた固定部に連結されることにより、高音域に比べて指向性の弱い低音域の音声の振動を生成してなるボイスコイルをスピーカの後部に対応する位置に連結することにより、指向性の強い音声をスピーカの前部、右前部、左前部、右後部、左後部より出力することができることとなって、当該粒子伝導型のスピーカの前方のユーザは、全ての音域の音声を好適なバランスで聴くことができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によると、複数の伝達部を介して、複数のボイスコイルで生成された振動が振動板に伝達されて音声が出力されることとなる。
【0014】
この場合に、当該粒子伝導型のスピーカにおいては、振動板を構成する粒子を振動させることによって音声が出力されるものであるため、複数のボイスコイルにおいて生成された振動どうしが振動板上において互いに干渉し合うことなく、各ボイスコイルにおいて生成された振動に基づいた音声を出力することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によると、請求項2に記載の発明の効果が得られるのは無論のこと、特に、振動板に設けられた固定部及びこれに固定された伝達部を介して、等間隔に複数のボイスコイルを連結することができる。これにより、好適なバランスで音声を出力することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によると、請求項3に記載の発明の効果が得られるのは無論のこと、特に、振動板に設けられた6つの固定部と、当該固定部に固定される伝達部を介して、6つのボイスコイルを振動板に連結することができる。
【0017】
これにより、当該粒子伝達型のスピーカを、6つのボイスコイルを備えてなる6チャンネルの音声出力システムに対応させることができる。つまり、6チャンネルの音声出力システムの一つである、5.1チャンネル方式の音声出力システムに好適に対応させることができ、当該システムにおいて、高い音響効果を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の粒子伝導型のスピーカを好適に適用した実施形態として、6チャンネルからなる音声出力システム(例えば、5.1チャンネルサラウンドシステム)に対応した粒子伝導型のスピーカ(波動スピーカとも称される。以下、単に「スピーカ」という)100を、図1、2を用いて詳細に説明する。但し、発明の範囲は図示例に限定されない。図1(a)は、スピーカ100の上面図であって、同図(b)はスピーカ100の側面図である。また、図2は、図1のスピーカ100のII−II線での概略断面図である。
【0019】
図1、2に示すように、スピーカ100は、入力される駆動電流に基づいて振動するボイスコイル2と、当該ボイスコイル2の導線巻回方向と略直交する方向(軸方向)に起立
し、ボイスコイル2によって周囲を略取り囲まれた永久磁石3と、永久磁石3が取付けられて、当該永久磁石3の周囲を取り囲んだヨーク4と、ボイスコイル2に連結されて、当該ボイスコイル2の振動を伝達する伝達部5とを備えるとともに、ボイスコイル2と、永久磁石3と、ヨーク4と、伝達部5とを内部に収容するフレーム7を備えて構成される振動生成部1と、当該振動生成部1の伝達部5が固定される固定部61を備えてなる振動板6と等を備えて構成される。
【0020】
そして、振動板6の縁部から突出して等間隔に配置された6つの固定部61のそれぞれに、6つの振動生成部1a、1b、1c、1d、1e、1fそれぞれの伝達部5が取付けられることにより、スピーカ100が構成される。
【0021】
ボイスコイル2は、アンプ(図示省略)より入力された駆動電流に基づいて往復運動を繰り返すことにより振動を生成する。ボイスコイル2は、例えば、非磁性材料としてのフィルムを円筒状に成形したボビン21の周囲に螺旋状に導線22が巻き付けられることにより形成される。
【0022】
ボビン21に用いられるフィルムとしては、例えば、ポリエチレン・テレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ナイロンフィルム等、一般的に知られる各種フィルムを用いることができる。ここで、ボビン21の周囲に巻回される導線22は電流が流れることにより発熱するため、ボビン21としては、例えばポリプロピレン等の耐熱性に優れたフィルムを用いることが好ましい。
【0023】
尚、ボビン21に用いられる材料としては、フィルムに限られることはなく、非磁性材料であればよい。
【0024】
ボビン21は、例えば略長方形状のフィルムの長手方向両端部を接合することによって円筒状に成形される。従って、円筒状のボビン21の軸方向両端には開口部21a、21bが形成される。
【0025】
導線22は、例えば、エナメル等の絶縁被膜付きの銅線(エナメル線)等によって形成される。導線22は、ボビン21の一方の開口部21a端から、ボビン21の軸方向の長さに対して略3分の2程度に亘って、ボビン21の軸方向と略直交する方向に規則正しく巻回される。隣り合う導線22の間隔は自由に設定することができ、例えば、隙間を設けずに巻回することとしてもよい。狭い間隔で導線22を巻回することによって、巻回回数を多くすることができる。
【0026】
尚、導線22としては、エナメル線に限られるものではなく、導電性を備える細線であればよい。
【0027】
ボビン21の、導線22が巻回された側の開口部21aより永久磁石3が挿入されることにより、ボイスコイル2によって永久磁石3が略取り囲まれた状態となる。
【0028】
ここで、例えば、5.1チャンネルサラウンドシステムに対応したスピーカ100は、計6つの各チャンネルに対応したボイスコイル2を備える。具体的には、例えば、5.1チャンネルサラウンドシステムによる音響効果を最大限に発揮可能なバランスで音声を出力するために、当該スピーカ100において、視聴者の前方、右前方、左前方、右後方、左後方、後方の計6方向に音声を出力する。従って、スピーカ100は、その前部より出力される音声を生成させるための駆動電流が供給されるボイスコイル、換言すると、前部より出力される音声に係る振動を生成してなるボイスコイルである前部ボイスコイル2aと、右前部より出力される音声に係る振動を生成してなるボイスコイルである右前部ボイスコイル2bと、以下同様に、左前部より出力される音声に係る左前部ボイスコイル2cと、右後部より出力される音声に係る右後部ボイスコイル2dと、左後部より出力される音声に係る左後部ボイスコイル2eと、後部より出力される音声に係る後部ボイスコイル2fと、を備えて形成される。
【0029】
永久磁石3は、S極とN極を有する。永久磁石3としては、例えば、アルニコ磁石等の合金磁石や、フェライト磁石、サマリウム・コバルト磁石等の希土類磁石といった磁石を用いることができる。
【0030】
永久磁石3は円柱形状からなり、その直径は、ボイスコイル2のボビン21の内径よりも僅かに小さく、ボビン21によって永久磁石3が取り囲まれた場合に、ボビン21の内壁と永久磁石3の側面とが互いに接しない程度となっている。また、永久磁石3のS極を構成する一方の端部3bはボイスコイル2によって取り囲まれ、他方の端部であって、N極を構成する端部3aはボイスコイル2の開口部21aより外側に露出し、当該端部3aの端面は、ヨーク4に固定される。
【0031】
ヨーク4は、永久磁石3が作り出す反磁場による影響を抑えて、永久磁石3の吸着力を増幅させてなる。ヨーク4は、例えば、鉄や鈍鉄、ケイ素鉄やアモルファス等の軟磁性材料によって形成される。
【0032】
ヨーク4は、円盤状の平板部41と、平板部41の円周に連続的に起立してなる側壁部42によって一体的に(または別体を接合したものでもよい)形成されたものであり、平板部41の、側壁部42が起立する側の平面の略中央に、平板部41の平面と永久磁石3の端部3aの端面が当接するように、永久磁石3が固着されている。
【0033】
平板部41の直径は、平板部41の円周に亘って設けられた側壁部42の内壁と、平板部41の略中央に固着された永久磁石3の周囲を取り囲んでいるボイスコイル2の導線22とが接しない程度の長さとなっている。
【0034】
永久磁石3及びヨーク4によって磁気回路(磁界)が形成される。具体的には、側壁部42が取り囲む領域に、永久磁石3によって生成され、ヨーク4によって導かれた磁束により強い磁場が発生することとなる。従って、当該磁気回路内に配置されるボイスコイル2は、強い磁場の中に設けられることとなる。
【0035】
以上の様に、ボイスコイル2と、永久磁石3と、ヨーク4が配設されることによって、図示しないアンプよりボイスコイル2に駆動電流が流れることにより、永久磁石3による磁界と導線22を流れる電流との間に電磁力が生じ、この力がボイスコイル2に作用することによって、ボイスコイル2が往復運動を行う。
【0036】
伝達部5は、ボイスコイル2で生成された振動を振動板6に伝達する。伝達部5は、例えば、発泡スチロールやカーボン等の樹脂や、マホガニー、ローズウッド、エボニー、樫、楢、楓、チーク、松、桐、バルサ材等の木材によって形成される。これらの樹脂や木材は単体で用いてもよく、組み合わせて集成材として用いることとしてもよい。本実施形態においては、軽量で容易に成形可能なバルサ木材を単体で用いた。
【0037】
伝達部5は、ボイスコイル2のボビン21と略同一の直径の円柱形状からなる。伝達部5の一方の端面5aには、例えば、接着剤やビス、ネジ(いずれも図示省略)等の好適な固定手段によって、ボビン21が、その開口部21bを塞ぐようにして固定される。また、伝達部5の他方の端面5bには、振動板6を取付けてなる差込部51が設けられる。
【0038】
差込部51は、伝達部5を形成してなるバルサ材を切り欠くことにより設けられる。より具体的には、バルサ材の端面5bに略矩形状の開口面が形成され、伝達部5の側面5cに略L字型の開口面が形成されるように切り欠かれる。
【0039】
フレーム7は、ボイスコイル2と、永久磁石3と、ヨーク4と、伝達部5を内部に収容し、伝達部5の上方で開口する開口部71を備える。
【0040】
以上に説明した、ボイスコイル2と、永久磁石3と、ヨーク4と、伝達部5と、フレーム7と、等によって振動生成部1が構成される。
【0041】
次に、音声を出力してなる振動板6の構成について説明する。
【0042】
振動板6としては、例えば、木材や紙材、金属、樹脂等を用いることができる。木材としては、例えば、伝達部5で例示した各種木材を用いることができる。また、紙材としては、例えば、ケント紙、画用紙、厚紙(ボール紙)、ダンボール紙等の各種紙材を用いることができる。そして、金属としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス等の各種金属を用いることができる。更に、樹脂としては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂のいずれをも用いることができ、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)等の各種樹脂を用いることができる。
【0043】
尚、振動板6としては、前述の材料に限られることはなく、適宜好適な材料を用いることができるが、ボイスコイル2で生成されて伝達部5より伝達された振動を減衰させることなく効率的に伝達するためには、適度な剛性を備えることが好ましい。本実施形態においては、適度な剛性を備えると共に、容易に成形できるという点で好ましい材料であるABS樹脂を振動板6として用いた。
【0044】
振動板6は、ABS樹脂からなる1枚の板状部材によって成形される。
【0045】
図1に示すように、振動板6は、略半球形状からなり、振動板6の縁部には、等間隔に6つの固定部61が設けられている。
【0046】
固定部61は、振動板6の縁部から突出した本体部611と、本体部611の先端に当該振動板6の内側方向に略直角に折り曲げられて形成される係止部612とによって構成され、側面視において略L字状となっている。固定部61の厚みは、伝達部5に設けられた差込部51の幅と略同一となるように形成される。
【0047】
固定部61は、振動板6の、スピーカ1の前部に対応する位置に設けられた前部固定部61aと、右前部に対応する位置に設けられた右前部固定部61bと、左前部に対応する位置に設けられた左前部固定部61cと、右後部に対応する位置に設けられた右後部固定部61dと、左後部に対応する位置に設けられた左後部固定部61eと、後部に対応する位置に設けられた後部固定部61fとからなる。
【0048】
6つの固定部61a〜61fは、振動板6の縁部が外側方向にやや開いた状態で形成される。
【0049】
振動板6に設けられた6つの固定部61a〜61fは、それぞれ振動生成部1の伝達部5に固定される。
【0050】
具体的には、振動板6に設けられた前部固定部61aは前部ボイスコイル2aが収納された振動生成部1aに固定され、右前部固定部61bは右前部ボイスコイル2bが収納された振動生成部1bに固定され、左前部固定部61cは左前部ボイスコイル2cが収納された振動生成部1cに固定され、右後部固定部61dは右後部ボイスコイル2dが収納された振動生成部1dに固定され、左後部固定部61eは左後部ボイスコイル2eが収納された振動生成部1eに固定され、後部固定部61fは後部ボイスコイル2fが収納された振動生成部1fに固定される。
【0051】
ここで、後部固定部61fが連結される振動生成部1fに収納される後部ボイスコイル2fは、低音域の音声の振動を生成してなる低音用ボイスコイルである。
【0052】
振動生成部1においては、ボイスコイル2が伝達部5に連結され、振動板6が伝達部5に固定されていることにより、ボイスコイル2が往復運動をすることによって生成された振動が伝達部5を介して振動板6に伝達される。更に、振動板6に振動が伝達されることによって音声が出力される。より具体的には、振動が伝達される振動板6を構成する分子の粒子が、ボイスコイル2で生成されて伝達部5を介して伝達された振動によって揺り動
かされることによって音声が出力される。
【0053】
次に、振動板6の振動生成部1への固定方法について説明する。
【0054】
振動板6は、振動生成部1の開口部71から、伝達部5等が収納されてなるフレーム7の内側に差し込まれ、さらに、本体部611と係止部612とからなる略L字型の固定部61を、振動部5の側面視略L字型の差込部51へ側面5c側からスライドさせて嵌め込むことによって振動生成部1に連結される。
【0055】
より具体的には、振動板6の外側方向にやや開いた状態で振動板6に形成される固定部61a〜61fが、当該固定部61a〜61fの壁面が振動生成部1a〜1fに設けられた差込部51の内壁に沿うようにやや内側方向に力を加えられながら振動生成部1a〜1fに差し込まれることにより固定される。
【0056】
振動板6の内側方向に力を加えながら差し込まれることによって、固定部61a〜61fを介して振動生成部1に固定された振動板6にはストレスが付加された状態で固定されることとなる。スピーカ100は粒子伝導型のスピーカであって、粒子伝導型のスピーカの振動板6にストレスが加えられていることによって、伝達部5を介して伝達された振動によって効率的に音声が出力されることとなる。
【0057】
また、開口部71を形成するケース7上部の下面と、伝達部5の開口部71側の端面5bとの間に形成される間隙に、クッション材72、72が設けられる。本実施形態においては、クッション材72を開口部71の縁に沿って、振動板6を挟んで二箇所に設けたが、開口部71の縁に沿って連続的に設けられるものであっても良く、少なくとも、クッション材72がケース7及び伝達部5に接していれば足りる。クッション材72、72としては、例えば、ゴムや硬質スポンジ等を用いることができる。
【0058】
更に、振動生成部1に固定された振動板6を、例えば、振動生成部1のフレーム7に、何れも図示しない連結部材やネジ、ビス等の好適な固定手段を用いて固定することとしてもよい。
【0059】
以上に説明したスピーカ100によると、6つのボイスコイル2a〜2fで生成された振動が6つの伝達部5を介して振動板6に伝達されて音声が出力されることとなる。この場合に、当該スピーカ100においては、振動板6を構成する粒子を振動させることによって音声が出力されるものであり、ソリトンの特徴を有するため、複数のボイスコイル2a〜2fにおいて生成された振動どうしが振動板6上において互いに干渉し合うことなく、各ボイスコイル2a〜2fにおいて生成された振動に基づいた音声を出力することができる。
【0060】
また、振動板6には6つのボイスコイル2a〜2fが等間隔に連結されているため、好適なバランスで音声を出力することができる。
【0061】
さらに、振動板6が6つの固定部61a〜61fを備えることによって、スピーカ100を、6つのボイスコイルを備えてなる6チャンネルの音声出力システムに対応させることができる。つまり、6チャンネルの音声出力システムの一つである、5.1チャンネル方式の音声出力システムに好適に対応させることができ、当該システムにおいて、高い音響効果を実現することができる。
【0062】
そして、低音域の音声の振動を生成してなる低音用ボイスコイルである後部ボイスコイル2fが収納された振動生成部1fが振動板6の後部に設けられた後部固定部61fに連結されることによって、高音域に比べて指向性の弱い低音域の音声の振動を生成してなるボイスコイル2fを、スピーカ1の後部に対応する位置に連結することにより、指向性の強い音声をスピーカ100の前部、右前部、左前部、右後部、左後部より出力することができることとなって、スピーカ100の前方のユーザが、全ての音域の音声を好適なバランスで聴くことができる。
【0063】
尚、振動板6に設けられる固定部61は6つに限られるものではなく、6つ以上の固定部を備えることとしてもよいし、例えばこの粒子伝導型スピーカを2チャンネルサウンド
システムに対応させて利用する場合には2つの固定部があれば足りる。
【0064】
また、振動板6に設けられる複数の固定部61は、必ずしも等間隔に設けることを必要とせず、必要に応じて、その配置を設定することができる。
【0065】
また、5.1チャンネルサラウンドシステムに対応したスピーカ100の振動板は、例えば、天井直付照明器具として知られているシーリングライトのカバーとして兼用させることもできる。具体的には、例えば、図3に示すように、6つのボイスコイル2a〜2fを備える振動生成部1a〜1fを天井に設け、ここに図示しない照明を内蔵した振動板6を直接取付けることによって、スピーカとしてだけでなく、シーリングライトのカバーとしても使用することができる。
【0066】
また、低音域の音声に係る振動を生成してなるボイスコイル2fを、振動板6における、スピーカ1の後部に配設された後部固定部61fに連結することとしたが、これに限られるものでは無く、必要に応じて、固定部に対するボイスコイル2の配置を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明を好適に適用した粒子伝導型のスピーカの上面図(a)と側面図(b)である。
【図2】図1におけるスピーカ100のII−II線での概略断面図である。
【図3】スピーカ100をシーリングライトのカバーとして用いた場合の使用例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0068】
1(1a、1b、1c、1d、1e、1f) 振動生成部
2 ボイスコイル
2a 前部ボイスコイル
2b 右前部ボイスコイル
2c 左前部ボイスコイル
2d 右後部ボイスコイル
2e 左後部ボイスコイル
2f 後部ボイスコイル
3 永久磁石(磁気回路)
4 ヨーク(磁気回路)
5 伝達部
51 差込部
6 振動板
61 固定部
61a 前部固定部
61b 右前部固定部
61c 左前部固定部
61d 右後部固定部
61e 左後部固定部
61f 後部固定部
611 本体部
612 係止部
7 フレーム
100 粒子伝導型のスピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子伝導型のスピーカにおいて、
磁気回路内に設けられ、入力される駆動電流に基づいて振動する6つのボイスコイルと、前記6つのボイスコイルのそれぞれに連結され、当該ボイスコイルの振動を伝達する6つの伝達部と、当該6つの伝達部に固定される6つの固定部が等間隔に配置されている振動板と、を備え、
前記6つの固定部は、前記振動板における、当該粒子伝導型のスピーカの前部、右前部、左前部、右後部、左後部、後部の各々に対応する位置に設けられ、
前記6つの固定部のそれぞれに伝達部を介して連結される6つのボイスコイルのうち、低音域の音声の振動を生成してなる低音用ボイスコイルは、前記振動板の後部に設けられた固定部に固定され、
前記6つのボイスコイルの振動が、前記6つの伝達部を介して前記振動板に伝達されることにより音声が出力されることを特徴とする粒子伝導型のスピーカ。
【請求項2】
磁気回路内に設けられ、入力される駆動電流に基づいて振動する複数のボイスコイルと、前記複数のボイスコイルのそれぞれに連結され、当該ボイスコイルの振動を伝達する複数の伝達部と、前記複数の伝達部に固定される振動板とを備え、前記複数のボイスコイルの振動が、前記複数の伝達部を介して前記振動板に伝達されることにより音声が出力されることを特徴とする粒子伝導型のスピーカ。
【請求項3】
請求項2に記載の粒子伝導型のスピーカにおいて、
前記振動板は、前記複数の伝達部の各々に固定される複数の固定部を備え、
前記複数の固定部の各々は、前記振動板に等間隔に配置されていることを特徴とする粒子伝導型のスピーカ。
【請求項4】
請求項3に記載の粒子伝導型のスピーカにおいて、
前記振動板は、6つの固定部を備えることを特徴とする粒子伝導型のスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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