説明

粒子低減のためのコーティング

粒子抑制用のコーティングを提供する。このようなコーティングは、フルオロケミカル部分および反応性ペンダント基を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度装置、例えば、磁気ハードディスクドライブ、そしてより詳細には、このような装置中の粒子低減のためのコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクドライブおよび他の高純度用途において、粒子汚染は、多数の故障メカニズムを生じさせ得る。これらの用途において、製造中および適用の間に存在する粒子を最小限にすることは、非常に望ましい。磁気ディスクドライブは、典型的に、多数の精密に寸法化された作動部品、例えば、スペーサ、ディスククランプ、e−ブロック、カバープレート、ベースプレート、アクチュエータ、ボイスコイル、ボイスコイルプレート等を備えている。これらのコンポーネントは、全て、粒子の潜在的供給源であり得る。ドライブ作動の間、ヘッドは、典型的に、約100Åの間隔で前記媒体上を飛ぶ。この間隔は、面密度が増加するにつれて減少し、粒子生成の低減および防止を一層より重大とする。ヘッドディスクインターフェースでの粒子は、サーマルアスペリティ、ハイフライライト、およびヘッドクラッシュを生じさせ得;これらのいずれもが、ディスクドライブの性能に対して有害である。
【0003】
米国公開公報第2003/0223154 A1号明細書(Yao)は、「金、白金、エポキシ樹脂等の軟性および粘性材料から作製された」コーティングでのカプセル化による粒子生成の防止を開示している。米国公開公報第2002/0093766 A1号明細書(Wachtler)は、粒子生成に対して保護するための、接着剤付き熱収縮性コンフォーマルフィルムの使用を開示している。米国特許第6,671,132号明細書(Craneら)は、金属またはポリマーコーティングの使用を開示している。米国公開公報第2004/0070885 A1号明細書(Kikkawaら)は、樹脂コーティングの使用を開示している。米国特許第6,903,861号明細書(Huhaら)は、マイクロアクチュエータコンポーネント用のカプセル材料としての特定のポリマーコーティングの使用を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気ディスクドライブ等のデバイスにおける粒子抑制のための改善されたコーティングが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば、アルミニウム、銅等の基材からの、粒子抑制のための改善されたコーティングを提供する。本発明のコーティングは、簡単な技術(例えば、ディップコーティングおよび熱硬化)で適用され得、約175℃に対する熱的安定性を示し、複雑な基材形状上に実質的に均一な薄い(例えば、約0.1〜約5.0ミクロン)層の状態で形成され得る。本発明のコーティングは、クリーン(即ち、低ガス放出、抽出性イオンの低放出)であり、典型的な洗浄プロセス(例えば、超音波処理を伴うまたは伴わない水および溶媒ベースの洗浄溶液)に耐性であり、環境に優しく(即ち、分別されたヒドロフルオロエーテルまたは水等の溶媒と共に送達され)、良好な安全性プロフィールを有し、そしてニッケルコーティングという現在の工業法と比較した場合、比較的優れたコスト対利益パフォーマンスを提供する。本発明のコーティングはまた、防食性を提供し得る。
【0006】
本発明のコーティングは、架橋官能性と基材表面へ固定する優れた能力とを有する反応性ペンダント基を有する薄いポリマーコーティングを含み、基材表面から落ちる粒子を抑制する。これらの粒子は、前記基材材料あるいはプロセッシングおよび/または不完全な洗浄から残された材料由来であり得る。このコーティングは、本質的に、基材の表面上に網を形成し、そうでなければ基材から落ち得る粒子を保持する。本明細書中で使用される場合、「ペンダント」は、末端基および側鎖基を指すように意図される。
【0007】
要約すると、本発明のコーティングは、フルオロケミカル部分および反応性ペンダント基を含む化合物の反応生成物を含み、ここで、コーティングは、基材上においてインサイチュで少なくとも部分的に硬化される。所定の位置において少なくとも部分的に硬化される場合、このようなコーティングは、基材上における粒子低減コーティングとして意外なほど良好な性能を提供することが判った。
【0008】
本発明のコーティングは、種々の高純度用途において、例えば、スペーサ、ディスククランプ、e−ブロック、カバープレート、ベースプレート、マイクロアクチュエータ、スライダー、ボイスコイル、ボイスコイルプレート等のコンポーネントを含む、ハードディスクドライブアセンブリにおいて、有用であり得る。これらのコンポーネントは、全て、完成したディスクドライブシステムにおいて粒子の潜在的供給源である。本発明のコーティングはまた、MEMS(微小電気機械システム(Micro Electrical−Mechanical Systems))、高純度プロセッシング(潜在的汚染を低減するコーティングプロセス設備)、および半導体プロセシング用途、例えば、プリント回路カードアセンブリ上の表面実装コンポーネントについて、粒子落下を低減するために使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
要約すると、本発明のコーティングは、フルオロケミカル部分、即ち、骨格としてまたは側鎖基として、および反応性ペンダント基を含む。
【0010】
ある実施形態において、本発明のコーティングは、ペルフルオロ化ポリエーテルおよびフルオロ化アクリレートコポリマーからなる群から選択されるフルオロケミカル部分を含む。
【0011】
ある実施形態において、反応性ペンダント基部分は、反応性シラン基、反応性エポキシ基、および反応性メラミン基からなる群から選択される。
【0012】
例えば、本発明者は、シラン末端基を有するペルフルオロエーテルから作製されたコーティングが、例えば、アルミニウムおよび銅から落とされる粒子を低減する点で有効であることを発見した。該材料の一般構造は、以下であり:
(RO)3Si−(CH2b−NHC(O)CXF−(O(CFR1ap(O(CFR1CF2aq−OCFXC(O)NH−(CH2b−Si(OR)3
式中、Rはメチルまたはエチル基であり得、R1はFまたはCF3であり、XはFまたはCF3であり、aは1〜4の整数であり、bは1〜10の整数であり、pは1〜145の整数であり、そしてqは0〜145の整数であり、そして該ポリマーの数平均分子量は、約500〜約10,000の範囲であり得る。下付き文字pおよびqの基は、前記鎖においてランダムに分布され得る。
【0013】
ある他の実施形態において、前記材料の一般構造は、以下であり:
(RO)3Si−(CH2b−NHC(O)CXF(OC36yO(CF2zO(C36O)xCFXC(O)NH−(CH2b−Si(OR)3
式中、Rはメチルまたはエチル基であり得、XはFまたはCF3であり、xおよびyは同一であっても異なっていてもよく、そして各々、0〜10の整数であり、但し、少なくとも1つは0ではなく、そしてzは2〜10の整数である。
【0014】
完成したコーティングの分子量が低すぎる場合、得られるコーティングは、過度に脆い傾向にあり得る。一般的に好ましいのは、コーティングがある程度の可撓性を示し、その結果、コーティングされたデバイスが屈曲、膨張、およびまたは収縮する際、コーティングが固定を維持し、かつ、アセンブリの作動の間の脆性破壊を回避することである。
【0015】
本発明のある他の実施形態において、コーティング材料の一般構造は、以下であり:
(RO)3Si−(CH23−NHC(O)CX1F−(O(CFR1ap(O(CFR2CF2aq-OCFX2C(O)NH−(CH23−Si(OR)3
式中、Rはメチルまたはエチル基であり得、R1およびR2は、同一であっても異なっていてもよく、FまたはCF3であり、X1およびX2は、同一であっても異なっていてもよく、FまたはCF3であり、aは1〜4の整数であり、bは1〜10の整数であり、pは1〜145の整数であり、qは0〜145の整数であり、そして該ポリマーの数平均分子量は、約500〜約10,000の範囲であり得る。下付き文字pおよびqの基は、前記鎖においてランダムに分布され得る。
【0016】
好適な材料の例示的な例は、以下であり:
【化1】

これは、3M(登録商標)Easy Clean Coating ECC−1000として3M社から入手可能である。下付き文字xおよびyの基は、前記鎖においてランダムに分布され得る。これらの材料は、米国特許第6,613,860号明細書(Damsら)において開示されており、これは、その全体が、参照により本明細書中に援用される。
【0017】
好ましくは、基材およびコーティングは、コーティングが共有結合を介して基材表面へ固定されるように、選択される。分子上の反応性ペンダント基、即ち、この例においてはシラン基が、この所望の結合パフォーマンスに寄与する。さらに、本発明者はこの理論に拘束されることを望まないが、シラン基が本来なら腐食反応に弱い基材上の結合部位と反応するため、前記コーティングは優れた防食性を提供し得ると考えられる。
【0018】
コーティング厚は、基材上に保持されている粒子のサイズとほぼ同じであってもまたはこれよりも実質的に小さくてもよく、例えば、約0.1〜5ミクロンを超える範囲の平均粒度と比較した場合、コーティング厚は0.01〜1.0ミクロンの範囲である。
【0019】
水の存在下において、OR基が反応して、ポリマー上にシラノール基を形成する。シラノール基は他のシラノール基と反応し、こうしてポリマーを架橋し、そして酸化物表面(例えば、アルミニウム、銅、シリコン、およびセラミック材料)の場合、表面へポリマーを共有結合する。
【0020】
コーティング材料の硬化速度は、反応基の選択、基材のパラメータ、所望のプロセッシング条件等に依存して有効量の好適な触媒を添加することによって、望まれる通りに促進され得る。例えば、ペルフルオロポリエーテルを使用して作製されたコーティングについて、シランは、デュポン製のKRYTOX(登録商標)157 FSL等の薬剤を使用して触媒され得る。
【0021】
前記ポリマーが反応性ペンダントヒドロキシルまたはカルボン酸基を有しかつメラミンで架橋される、他の実施形態において、酸触媒(例えば、NACURE(登録商標)2558 ブロック化酸触媒)が添加されてもよい。
【0022】
ある実施形態において、2段階硬化プロセスを使用することが好ましい。第1段階において、コーティング組成物は、第1状態へと部分的に硬化され、この状態で、それはもはや粘着性ではないが、依然として該組成物中に反応性ペンダント基(例えば、フリーのシラン基)が存在する。この状態において、コーティングされた物品は、好都合なことに、連動する(worked with)。「フォーム−イン−プレイスガスケット(form−in−place gasket)」のような引き続いての物品(例えば、硬化性エポキシベースの組成物)のポジショニグに続いて、コーティングおよび物品を接触状態で硬化し、そして十分な接着が達成される。
【0023】
高温で短時間加熱することによって硬化される場合よりも相対的に低い温度で(例えば、150℃よりも120℃で)より長い時間加熱することによってコーティングが硬化される場合、優れた結果が典型的に達成されることも観察された。
【0024】
本発明のコーティングの別の利点は、それらが、短時間の接触の間に有機材料(例えば、洗浄の間に汚染物質および他の薬剤)を吸収するかまたは「ピックアップする」低い傾向を示すことであり、したがって、本発明のコーティングは、多くの代替材料よりも少なくガス排出する傾向がある。
【0025】
本発明のコーティングを有する物品への引き続いての接着は、結合直前にフルオロケミカル溶媒で拭くことによって改善され得る。
【実施例】
【0026】
本発明を下記の非限定的な実施例で説明する。試験のために使用した基材は、記載の材料から作製した試料片である。試料片をストック材料からせん断し、そして角付近に穴を開け、検査の間試料片を吊した。
【0027】
洗浄法1
コーティング前に、3M(登録商標)NOVEC(登録商標)HFE−72DA(ミネソタ州セントポールの3M社製)で蒸気脱脂することによって、基材を洗浄した。コネチカット州ダンベリーのBranson Ultrasonics Corporationから得た、ツーサンプベーパーディグリーザ(two sump vapor degreaser)、モデル番号B452Rにおいて、下記の作動パラメータを使用して、洗浄を行った:
30秒初期蒸気リンス、
該リンスサンプにおいて3分(超音波無し)、そして
30秒最終蒸気リンス。
【0028】
洗浄法2
コーティング前に、10分間アセトン中に浸漬することによって、基材を洗浄した。次いで、基材をフラットに置き、そして2−プロパノールをスプレーした(約100mlを20の基材について使用した)。次いで、残存する2−プロパノールを拭くことによって除去し、そして基材を一晩乾燥させた。
【0029】
洗浄法3
コーティング前に、CMOSグレード2−プロパノール(ニュージャージー州フィリップスバーグのJT Baker製)およびVWR Spec−Wipe4ワイパー(ペンシルベニア州ウエストチェスターのVWR International製)を使用して拭き取り洗浄することによって、基材を洗浄した。次いで、0.2ミクロン(絶対(absolute))フィルターで濾過した18.2MΩ水中に試料片を浸漬し、そして1ガロン当たり40ワットのパワーを使用して、68kHZ超音波を用いて90秒間超音波処理した。VWR Spec−Wipe4ワイパーで拭くことによって、試料片を乾燥した。
【0030】
コーティング法
全てのコーティングを、ディップコーティングにより塗布した。これらの研究のために使用した引張速度は、1.7〜3.6mm/秒(4〜8.5in/分)の範囲であった。ペーパークリップを使用して基材中の穴によって、基材を吊るし、そしてディップコーティングプロセスの間、完全に浸漬した。硬化はポリマーに依存して変化し;各ポリマーについての詳細を以下に記載する。
【0031】
クロスハッチ接着
クロスハッチ接着(crosshatch adhesion)または碁盤目テープ接着(cross−cut tape adhesion)を、2つの改変を伴う、ASTM D3359−95a、試験法Bを使用して測定した。先ず、2ミル未満のコーティングについて推奨される11×11カットとは対照的に、4×4クロスカットを使用した。次に、目視に加えて、前記コーティングの存在を示すために、シャーピーマーカーを使用した。フルオロケミカルコーティングは、該マーカーを追い払う。コーティングが除去されれば、基材は容易にマークされた。
【0032】
抽出
LPC抽出を、IDEMAマイクロコンタミネーションスタンダードM9−98に基づく方法を使用して行った。基材を、18.3MΩ水中に完全に浸漬し、そして30秒間超音波(40ワット/ガロン、40または68kHz)へ曝した。水中の粒子レベルを、液体粒子カウンターで分析した。
【0033】
LPC抽出を、クラス1000クリーンルーム環境中で行った。0.1ミクロンまで濾過された18.3MΩ水を、この試験の全ての部分について使用した。試験装置は、超音波槽中に取付けられた1000−ml KIMAX(登録商標)ビーカー(VWR International製)から構成された。28ゲージのはんだ付け可能なポリウレタンステータワイヤ(カリフォルニア州ウエストレイクビレッジのMWS Wire Industries製;パーツ番号28 SSPN)を使用して、試験する部品をビーカー中に浸漬した。流体中の粒子濃度を、HIAC ROYCO(登録商標),Micro Count 100(オレゴン州グランツパスのHach Ultra Analytics製)を使用して測定した。
【0034】
各試験サンプルの前に、ブランクを実行し、ビーカーおよび水の清浄度を評価した。ビーカーを水でリンスし、次いで1000mlの水で充填した。
【0035】
十分なブランクが構築されたら、試験サンプルを水中に浸漬した。完全に沈みかつビーカーの壁に接触しないように、試験サンプルを吊るした。超音波を30秒間適用した。該流体の50mlサンプルをLPC分析のために採取した。試験サンプルの表面積当たりの粒子カウントを下記によって算出した。
【数1】

3つの別個の試験サンプルを、各コーティング条件について実行した。平均化した結果を表に示す。大抵の場合、複数回(通常3回)の抽出を各試験サンプルについて実行した。
【0036】
コーティング材料
実施例1および2を、ミネソタ州セントポールの3M社から得たECC−1000、シロキサン末端基を有するペルフルオロポリエーテル、でコーティングした。FCIの一般構造は以下である。
【化2】

【0037】
前記ポリマーは、3M(登録商標)NOVEC(登録商標)ヒドロフルオロエーテルHFE−7100で供給された(delivered out of)。KRYTOX(登録商標)157 FSL、デラウェア州ウィルミントンのデュポン製のペルフルオロポリアルキルエーテルカルボン酸混合物を、全ポリマー固形分の2%として添加した(即ち、90gのHFE−7100中0.2gのKRYTOX(登録商標)157 FSLおよび9.8gのECC−1000)。
【0038】
反応性フルオロケミカルコポリマー(合成は以下に記載される)、UD350W(コネチカット州ノーウォークのKing Industries製のポリウレタンジオール)、RESIMENE(登録商標)747(ミズーリ州セントルイスのSolutia,Inc.製のメチル化メラミン)、NACURE(登録商標)2558(コネチカット州ノーウォークのKing Industries製のブロック化酸触媒)およびSILWETT(登録商標)L−77(カリフォルニア州フレズノのHelena Chemical Co.製のシリコーンポリエーテルコポリマー)を含む水溶液で、実施例3〜5をコーティングした。
【化3】

【0039】
前記反応性フルオロケミカルコポリマー、FCIIを、下記の成分を使用して合成した:
60g HFPOMA(ヘキサフルオロプロピレン・オキサイド・メタクリレート)
27g HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)
10g MAA(メタクリル酸)
3g ME(アクリル酸メチル)
300g IPA(2−プロパノール)
1g VAZO(登録商標)67(デュポン製のフリーラジカル開始剤)
10.3g DMEA(ジメチルアミノエタノール)
233g DI水。
【0040】
HFPOMA、HEMA、MAA、ME、およびIPAをフラスコに入れ、続いてVAZO(登録商標)67を入れた。材料を撹拌し、溶液を形成した。溶液を窒素で7分間パージした。溶液を65℃へ18時間加熱した。この期間の後に、DMEAを添加した。得られた溶液を3分間撹拌し、そしてDI水を添加した。反応混合物は泡沫状になり、そして約2分後に溶液を形成した。減圧下で溶液からIPAを蒸留し、水溶液が得られた。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に列挙する組成物を、以下のように調製した。撹拌しながら、UD350Wを、DI水を含有するビーカーへ入れた。UD350Wの溶解に続いて、RESIMENE(登録商標)747を添加した。NACURE(登録商標)2558を得られた溶液へ添加し、そして2分後、反応性FC IIを添加し、続いてSilwet(登録商標)L−77を添加した。
【0043】
実施例6は存在しない。
【0044】
実施例7を、シロキサン末端基を有するヘキサフルオロプロピレンオキサイドポリマーでコーティングした。
【0045】
実施例7のために、シラン
(C25O)3SiC36NHCOCF(CF3)[OCF(CF3)CF2O]n48O[CF(CF3)CF2O]mCF(CF3)CONHC36Si(OC253のコーティングを、以下のように調製した。
【0046】
前記シラン生成物へのメチルエステル前駆体を、−20℃で、フッ化セシウム(15.5g)の存在下において、テトラエチレングリコールジメチルエーテル溶媒(341g;約40時間添加した)中、ペルフルオロスクシニルフルオライド(FCOC24COF;24g、51%純度;0.064モル)およびヘキサフルオロプロピレンオキサイド(109g、0.65モル)を反応させることによって調製した。反応が完了した後、得られたジアシッドフルオライド混合物を、周囲温度にて大過剰のメタノールで処理し、該アシッドフルオライドを下記に示す名目構造(m+nは約5〜7である)のジメチルエステルへ変換し、下の生成物層を上のメタノール/テトラグリム層から分離し、そして該下層を水で洗浄し、111gのエステル生成物:
MeO2CCF(CF3)[OCF(CF3)CF2O]n48O[CF(CF3)CF2O]mCF(CF3)CO2Me(122g)を得た。
【0047】
前記エステルを、類似の様式で作製した材料と混合し、そして、蒸留範囲38℃〜198℃/0.7mmHgのフラクションを除去しながら、2回蒸留し、そして残りの蒸留残渣をシラン合成のために使用した。最終生成物についてのm+nの平均総計は、glcにより7.6であった。
【0048】
この材料(14.9g)を、溶媒無しで、アミノプロピルトリエトキシシラン(4.5g、0.02モル)で処理した。
【化4】

少量のシランを、約24時間後に添加し、残存するエステル官能基を生成物シランへ変換した。アミドシランについてのIRバンドが1709cm-1で現れた。
【0049】
実施例8を、水性フルオロケミカルウレタンシラノール、FC IV、分散体でコーティングした。FC IVを以下のように調製した:
【化5】

【0050】
30gのODA(アクリル酸オクチルデシル)、30gのUMA、20gのA−174(コネチカット州ダンベリーのOSi Specialties,Inc.製のシランアクリレート)、10gのKF−2001(メルカプトシリコーン)、10gのMPTS(メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、ならびに9.5gのメチルイソブチルケトン(MIBK)および0.5gのVAZO(登録商標)67のプレ混合物(ホットタップウォーターバス中に配置される場合、透明な溶液)を、テフロン(登録商標)で裏打ちしたキャップを備えたガラス瓶中で混合した。混合物を、窒素でパージし(sparged)、密封し、そして65℃で24時間ランデロメータ(launderometer)中で転がした。得られたMIBK溶液を、DI水/TWEEN20(総固形分の5%)溶液も60℃で添加しつつ、超音波処理しながら60℃で撹拌した。得られた乳濁液を3分間超音波処理した。MIBKを減圧で蒸留により除去し、安定な水性乳濁液を得た。フィルム形成性を改善するために、SILWETT(登録商標)L−77を添加した。
【0051】
実施例9を、HFE 7200(ミネソタ州セントポールの3M社製)で供給された、以下の一般式:
【化6】

のフルオロケミカルアクリレートコポリマーでコーティングした。47.6gのオリゴマーヘキサフルオロプロピレンオキサイドアミドエチルメタクリレート(式C37O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)CONHC24OCOC(CH3)=CH2のものであって、式中、nは3以上であった)、0.95gのA174(3−トリメトキシシランプロピルメタクリレート)、1.4gのMPTS(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)および220gのHFE 7200を1リットルフラスコへ入れることによって、前記コポリマーを合成した。該フラスコにメカニカルスターラーを備え、そして撹拌しながら10分間N2パージ下に配置した。この期間の後に、LUPEROX(登録商標)26M50開始剤(ペンシルベニア州フィラデルフィアのArkema,Inc.製)の溶液2g(1gの固形分)を添加し、そして反応混合物を18時間70℃へ加熱した。
【0052】
実施例10を、HFE 7200で供給された、以下の一般式:
【化7】

のフルオロケミカルアクリレートコポリマーでコーティングした。40gのオリゴマーヘキサフルオロプロピレンオキサイドアミドエチルメタクリレート(式C37O(CF(CF3)CF2O)nCF(CF3)CONHC24OCOC(CH3)=CH2のものであって、式中、nは3以上であった)、5gの3−グリシドキシプロピルメタクリレート、5gのメチル−3−メルカプトプロピオネート、および230gのHFE 7200を1リットルフラスコに添加することによって、前記コポリマーを合成した。該フラスコにメカニカルスターラーを備え、そして撹拌しながら10分間N2パージ下に配置した。この期間の後に、LUPEROX(登録商標)26M50開始剤の溶液2g(1gの固形分)を添加し、そして反応混合物を18時間70℃へ加熱した。微量の不溶性沈殿物を、コポリマー溶液から濾別した。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例1について、全ての試験片を、洗浄法1を使用して洗浄した。4つの試験片をコーティングし、そして3つの試験片をコントロールとしてコーティングしないままにした。1つのコーティングされた試験片を、碁盤目テープ試験に使用して試験した。コーティングの除去は観察されなかった。残りの3つのコーティングされた試験片およびコーティングされていない試験片をLPC抽出で試験した。結果を表3に示す。表中の各データポイントは、各条件での3つの試験片の平均値である。
【0055】
【表3】

【0056】
実施例2について、全ての試験片を、洗浄法2を使用して洗浄した。2つの銅試験片をコーティングし、そして2つの銅試験片をコントロールとしてコーティングしないままにした。これらの試験片をLPC抽出によって試験した。結果を表4に示す。各ポイントは、各条件での2つの試験片の平均値である。
【0057】
【表4】

【0058】
【表5】

【0059】
実施例3について、全ての試験片を、洗浄法1を使用して洗浄した。4つの試験片をコーティングし、そして3つの試験片をコントロールとしてコーティングしないままにした。1つのコーティングされた試験片を、碁盤目テープ試験によって試験した。コーティングの除去は観察されなかった。残りの3つのコーティングされた試験片およびコーティングされていない試験片をLPC抽出によって試験した。結果を表6に示す。表中の各データポイントは、各条件での3つの試験片の平均値である。
【0060】
【表6】

【0061】
実施例4について、3つの試験片をコーティングし、そして3つの試験片をコントロールとしてコーティングしないままにした。全てのコーティングされた試験片およびコーティングされていない試験片を、LPC抽出によって試験した。結果を表7に示す。表中の各データポイントは、各条件での3つの試験片の平均値である。
【0062】
【表7】

【0063】
実施例5について、全ての試験片を、洗浄法1を使用して洗浄した。4つの試験片をコーティングし、そして3つの試験片をコントロールとしてコーティングしないままにした。1つのコーティングされた試験片を、碁盤目テープ試験によって試験した。コーティングの除去は観察されなかった。残りの3つのコーティングされた試験片およびコーティングされていない試験片をLPC抽出によって試験した。結果を表8に示す。表中の各データポイントは、各条件での3つの試験片の平均値である。
【0064】
【表8】

【0065】
【表9】

【0066】
実施例7について、全ての試験片を、洗浄法1を使用して洗浄した。4つの試験片をコーティングし、そして3つの試験片をコントロールとしてコーティングしないままにした。1つのコーティングされた試験片を、碁盤目テープ試験によって試験した。コーティングの除去は観察されなかった。残りの3つのコーティングされた試験片およびコーティングされていない試験片をLPC抽出で試験した。結果を表10に示す。表中の各データポイントは、各条件での3つの試験片の平均値である。
【0067】
【表10】

【0068】
【表11】

【0069】
実施例8について、全ての試験片を、洗浄法1を使用して洗浄した。4つの試験片をコーティングし、そして3つの試験片をコントロールとしてコーティングしないままにした。1つのコーティングされた試験片を、碁盤目テープ試験によって試験した。コーティングの除去は観察されなかった。残りの3つのコーティングされた試験片およびコーティングされていない試験片をLPC抽出で試験した。結果を表12に示す。表中の各データポイントは、各条件での3つの試験片の平均値である。
【0070】
【表12】

【0071】
【表13】

【0072】
実施例9について、全ての試験片を、洗浄法3を使用して洗浄した。4つの試験片をコーティングし、そして3つの試験片をコントロールとしてコーティングしないままにした。1つのコーティングされた試験片を、碁盤目試験によって試験した。コーティングの除去は観察されなかった。残りのコーティングされた試験片およびコーティングされていない試験片をLPC抽出によって試験した。結果を表14に示す。各データポイントは、各条件での3つの試験片の平均値である。
【0073】
【表14】

【0074】
【表15】

【0075】
実施例10について、全ての試験片を、洗浄法3を使用して洗浄した。4つの試験片をコーティングし、そして3つの試験片をコントロールとしてコーティングしないままにした。1つのコーティングされた試験片を、碁盤目試験によって試験した。コーティングの除去は観察されなかった。残りのコーティングされた試験片およびコーティングされていない試験片をLPC抽出によって試験した。結果を表16に示す。各データポイントは、各条件での3つの試験片の平均値である。
【0076】
【表16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部にコーティングを含む基材であって、該コーティングが、フルオロケミカル部分および反応性ペンダント基を含む材料の反応生成物を含む、基材。
【請求項2】
前記コーティングが、一般構造:
(RO)3Si−(CH2b−NHC(O)CX1F−(O(CFR1ap(O(CFR2CF2aq−OCFX2C(O)NH−(CH2b−Si(OR)3
[式中、Rはメチルまたはエチル基であり、R1およびR2は、同一であっても異なっていてもよく、FまたはCF3であり、X1およびX2は、同一であっても異なっていてもよく、FまたはCF3であり、aは1〜4の整数であり、bは1〜10の整数であり、pは1〜145の整数であり、qは0〜145の整数であり、そして数平均分子量が約500〜約10,000である]
で表される材料の反応生成物を含む、請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記コーティングが、一般構造:
【化1】

[式中、xは0〜150の整数であり、そしてyは0〜85の整数であり、但し、xおよびyは、両方とも0ということはない]
で表される材料の反応生成物を含む、請求項1に記載の基材。
【請求項4】
前記コーティングが、一般構造:
(RO)3Si−(CH2b−NHC(O)CXF(OC36yO(CF2zO(C36O)xCFXC(O)NH−(CH2b−Si(OR)3
[式中、Rはメチルまたはエチル基であり得、XはFまたはCF3であり、xおよびyは同一であっても異なっていてもよく、そして各々、0〜10の整数であり、但し、少なくとも1つは0ではなく、そしてzは2〜10の整数である]
で表される材料の反応生成物を含む、請求項1に記載の基材。
【請求項5】
前記コーティングが、一般構造:
【化2】

で表される材料からなる群から選択される材料の反応生成物を含む、請求項1に記載の基材。
【請求項6】
前記反応性ペンダント基が、反応性シラン、反応性エポキシド、反応性カルボン酸、および反応性ヒドロキシルからなる群から選択される、請求項1に記載の基材。
【請求項7】
前記基材が、コンピュータデータを磁気的にディスク上に保存するためのディスク表面と結合された少なくとも1つのヘッドを含むハードディスクドライブアセンブリである、請求項1に記載の基材。

【公表番号】特表2008−526550(P2008−526550A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549649(P2007−549649)
【出願日】平成17年12月30日(2005.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/047446
【国際公開番号】WO2006/074079
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】