説明

粒子供給装置

【課題】気体中の測定粒子の物性を測定するために、測定に応じた濃度の測定粒子を安定的に粒子測定装置に供給する。
【解決手段】粒子特性の測定を行う粒子測定装置に測定粒子を供給する粒子供給装置であって、測定粒子9が貯留されているチャンバー5と、チャンバー5内に設けられた気体供給口7から該チャンバー5内に、粒子撹拌用の気体を供給する気体供給手段2と、チャンバー5内に設けられた気体排出口10aから測定粒子9を含む気体を排出し、粒子測定装置に該気体を送る気体排出手段10と、チャンバー5における気体排出口の位置を調整する気体排出口位置調整手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子特性の測定を行う粒子測定装置に測定粒子を供給する粒子供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業製品の粒子状物質や自然物である花粉等の粒子の大きさや物性を測定するために用いられる粒子測定装置には、フロー式やレーザー回折/散乱方式等の様々な方式が、昨今利用されている。例えば、光源とカメラの間に測定粒子を含む試料を流し、光源からの証明がパルスの形で不連続に行なわれる技術が公開されている(例えば、特許文献1を参照。)。この技術によると、カメラによって撮影された画像を解析することで、測定粒子の大きさの時間分布を測定することが可能となる。
【0003】
粒子測定装置において粒子の物性をより正確に測定するために、粒子測定装置に安定的に測定の対象となる測定粒子を供給する必要がある場合がある。そこで、フロー式粒子測定装置において、測定部の直上流に測定粒子を含む液体試料を、マグネット駆動の撹拌装置で撹拌する技術が公開されている(例えば、特許文献2を参照。)。この技術によると、撹拌され密度分布がより均一となった液体試料が測定部に供給されるため、測定粒子の測定精度が向上され得る。
【0004】
また、粒子測定装置への測定粒子の供給装置として、閉鎖空間に飛散させて測定粒子を含む空気を粒子測定装置に送る技術が挙げられる(例えば、非特許文献1を参照。)。この測定粒子の供給装置について、図6に基づいて説明する。図6には、粒子測定装置33に測定粒子を供給する粒子供給装置が示される。ブロワ30を駆動することで、測定粒子を含む空気をチャンバー31内に送る。そして、チャンバー31内の空気の一部を空気排出チューブ32を介して、粒子測定装置33に送ることで、粒子測定装置33による測定粒子の粒子特性の測定が行われる。尚、チャンバー31には、その内部の圧力上昇抑制のために排気孔34が設けられているが、ここからチャンバー31内の測定粒子は漏れ出さないようにフィルタが設けられている。
【特許文献1】特開平6−174628号公報
【特許文献2】特開平11−132931号公報
【非特許文献1】JIS B9921 光散乱式自動粒子計測器 附属書2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
気体中の測定粒子の物性を測定するために、測定粒子の供給(飛散)を開放された空間で行おうとすると、その周辺環境を測定粒子で汚染してしまう虞がある。また、閉じられた空間で測定粒子を飛散させることで周辺環境の汚染を回避することは可能となるが、そのような場合、気体中の粒子が時間の経過とともに沈降して行き、粒子測定装置に安定した濃度で測定粒子を供給することが困難となる。
【0006】
また、閉じられた空間で測定粒子を飛散させる場合、粒子測定装置での測定の目的に応じた濃度の測定粒子を、迅速に粒子測定装置に供給する技術が今まで見出されていない。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、気体中の測定粒子の物性を測定するために、測定に応じた濃度の測定粒子を安定的に粒子測定装置に供給することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記した課題を解決するために、閉鎖された空間に測定粒子を貯留し、そこに粒子攪拌用の気体を供給するとともに、攪拌された測定粒子を含む気体を粒子測定装置に供給することとした。このようにすることで、気体中に測定粒子を比較的安定的に含ませた状態で測定粒子を粒子測定装置に供給することが可能となる。
【0009】
詳細には、本発明は、粒子特性の測定を行う粒子測定装置に測定粒子を供給する粒子供給装置であって、前記測定粒子が貯留されているチャンバーと、前記チャンバー内に設けられた気体供給口から該チャンバー内に、粒子撹拌用の気体を供給する気体供給手段と、前記チャンバー内に設けられた気体排出口から前記測定粒子を含む気体を排出し、前記粒子測定装置に該気体を送る気体排出手段と、前記チャンバーにおける前記気体排出口の位置を調整する気体排出口位置調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
前記粒子測定装置では、測定粒子の大きさや物性等の特性が測定されるが、その測定粒子はチャンバー内に貯留されている。そして、このチャンバーには、気体供給手段により測定粒子を攪拌するための粒子攪拌用気体が供給される。この粒子攪拌用気体によりチャンバー内には、測定粒子を常時舞い上げるいわゆる上昇流が形成される。そして、チャンバー内で、測定粒子は粒子攪拌用気体によって拡散するとともに、時間の経過とともにその自重やチャンバー内の下降流等で沈降していく。その結果、チャンバー内に該気体の循環流が形成され、以て測定粒子が安定的に分布した状態が形成される。換言すると、チャンバー内に形成される循環流が、測定粒子をチャンバー内に拡散させる機能を有するとともに、沈降してきた測定粒子を再拡散のために回収する機能を有することで、チャンバー内に測定粒子の定常的な分布状態が形成されることになる。
【0011】
このとき、チャンバー内で形成される循環流の大きさや流れる位置等によって、チャンバー内の位置に応じて、測定粒子の分布濃度には偏りが生じる。例えば、測定粒子が貯留されている部位近傍の空間では、該空間に飛散してくる測定粒子が多いため該空間での測定粒子濃度は比較的高い状態で安定し、一方で、その測定粒子が貯留されている部位から遠くなるに従い、飛散してくる測定粒子量が少なくなるため測定粒子濃度も次第に低下した状態で安定する。
【0012】
そこで、本発明に係る粒子供給装置においては、チャンバー内から測定粒子を含む気体を、気体排出手段によって排出するとともに粒子測定装置に該気体を供給することで、該粒子測定装置による測定粒子の特性の測定が行われる。このとき、上述したように、チャンバー内には測定粒子が安定的に分布するため、粒子測定装置にも測定粒子の濃度が安定的に保たれた気体が供給され、測定粒子装置による測定精度でも良好な結果を得ることが可能となる。
【0013】
また、測定粒子を含む気体は気体排出口から排出されるが、上述したようにチャンバー内の位置に応じて、測定粒子の濃度の分布には安定的な偏りが生じている。そこで、気体排出口位置調整手段によって、チャンバーにおける気体排出口の位置を調整することで、チャンバー内に形成される測定粒子の分布濃度の範囲内において、任意の測定粒子濃度の気体を、測定粒子装置に安定的に供給することが可能となる。換言すると、測定の目的に応じて、測定粒子の濃度を速やかに制御することが可能となる。
【0014】
ここで、上記の粒子供給装置において、前記気体供給口の噴出し形状は、前記チャンバー内に前記粒子撹拌用気体による渦流を形成する形状であって、該渦流の進行方向は該チャンバー内に配置された測定粒子に向かう方向であってもよい。このようにすることで、上記の循環流を安定的に形成し、渦流のエネルギーを測定粒子の拡散に効率的に利用することが可能となる。特に測定粒子に向かう渦流とすることで、測定粒子が貯留されている
近傍で安定的な上昇流、即ち測定粒子を拡散させるための流れの形成が可能となる。
【0015】
尚、このような気体供給口の噴出し形状としては、気体供給口を含む供給気体が流れる通路自体にねじりを加えて、供給気体に旋回成分を加えてスワールを形成する形状が挙げられる。更に、前記チャンバーが、底部および側部を有し、前記測定粒子は該チャンバーの底部に貯留されている場合、前記気体供給口が、前記チャンバーの側部に向かって前記粒子撹拌用気体を噴出する噴出し形状を有するようにしてもよい。即ち、チャンバーの側壁に向かって粒子攪拌用気体を噴き付けることで、該気体が側壁に沿って流れ、大きな渦流を作る。そして、その渦流が、チャンバーの底部に貯留されている測定粒子まで到達すると、測定粒子を拡散させる上昇流となる。これにより、上述した、安定した測定粒子の供給が可能となる。
【0016】
また、上述までの粒子供給装置において、前記チャンバー内において前記粒子撹拌用気体によって前記測定粒子とともに浮遊する撹拌部材を、更に備えるようにしてもよい。攪拌部材を備えるようにすることで、粒子攪拌用気体による渦流によって攪拌部材が動かされ、チャンバーに貯留された測定粒子の拡散を促進させることが可能となる。ここで、攪拌部材は、気体排出口に流れ込んだり、気体排出口を塞いだりする大きさや重さでないことが好ましい。
【0017】
更に、前記撹拌部材は、交換可能であってもよい。即ち、測定粒子の種類等に応じて、測定粒子の拡散が十分に生じる適当な攪拌部材に交換してもよい。
【0018】
ここで、上述までの粒子供給装置において、前記チャンバー内に二つの空間領域を画定する遮蔽板と、前記チャンバーに対する前記遮蔽板の位置を調整し、前記二つの空間領域の比率を変更する遮蔽板位置調整手段と、を更に備え、前記測定粒子は前記二つの空間領域のうち一方の空間領域に貯留されるとともに、前記気体供給口も該一方の空間領域側に設けられ、前記気体排出口位置調整手段は、前記一方の空間領域側で前記気体排出口の位置を調整するようにしてもよい。
【0019】
上記の粒子供給装置では、遮蔽板位置調整手段によって遮蔽板の位置を調整すると、測定粒子が貯留されている空間領域の容積が変動する。その結果、該空間領域内に発生する渦流の強さや位置が変化するため、該空間領域に安定的に存在する測定粒子の分布も変化することになる。従って、遮蔽板位置調整手段によって遮蔽板の位置を調整することで、粒子測定装置に安定的に供給される測定粒子の濃度を調整することが可能となる。
【0020】
また、前記粒子供給装置が、前記チャンバー内に二つの空間領域を画定する遮蔽板と、前記チャンバーに対する前記遮蔽板の位置を調整し、前記二つの空間領域の比率を変更する遮蔽板位置調整手段と、を更に備える場合、前記遮蔽板は、所定の口径の孔であって前記二つの空間領域のそれぞれに連通する貫通孔を有し、前記測定粒子は前記二つの空間領域のうち一方の空間領域に配置されるとともに、前記気体供給口も該一方の空間領域側に設けられ、前記気体排出口位置調整手段は、前記二つの空間領域のうち他方の空間領域側で前記気体排出口の位置を調整するようにしてもよい。
【0021】
この粒子供給装置においても、同様に、遮蔽板位置調整手段によって遮蔽板の位置を調整すると、測定粒子が貯留されている空間領域の容積が変動する。その結果、該空間領域内に発生する渦流の強さや位置が変化するため、該空間領域に安定的に存在する測定粒子の分布も変化することになる。ここで、測定粒子を粒子測定装置に送るための気体排出口が設けられる領域空間は、粒子攪拌用気体が供給される領域空間とは異なる空間であって、互いの領域空間は所定の口径を有する貫通孔で繋がっている。従って、遮蔽板の位置によって、測定粒子が貯留されている空間領域(前記一方の空間領域)内の圧力が変動する
ため、貫通孔を経て気体排出口が設けられている空間領域(前記他方の空間領域)に流れ込む気体(測定粒子を含む)量が変動し、以て他方の空間領域に形成される測定粒子の濃度が変動する。
【0022】
また、遮蔽板に設けられた貫通孔は、一方の空間領域と他方の空間領域とを繋ぐだけではなく、その口径が所定の口径であるため、該所定の口径より大きな測定粒子の移動を遮断する。即ち、遮蔽板は、いわゆるフィルタとしての機能を有することになる。従って、上記所定の口径とは、粒子測定装置に供給する測定粒子の大きさを目的の大きさ以下に限定するための貫通孔の口径であり、測定の目的に応じて設定されるものである。尚、貫通孔は、遮蔽板に一つに限らず、複数個設けても構わない。
【0023】
更に、上述までの粒子供給装置において、前記気体供給手段による前記チャンバー内への前記粒子撹拌用気体の供給流量を制御する気体供給流量制御手段を、更に備えるようにしてもよい。気体供給手段によって気体供給口から供給される粒子攪拌用気体で、安定的な測定粒子の供給が可能となることは上述の通りである。そして、更に、気体供給流量制御手段によって該気体の供給流量を制御することで、チャンバー内に形成される測定粒子の分布濃度を変動させることが可能となる。即ち、該気体の供給流量をより多くすることで、チャンバー内に形成される循環流が強くなり、チャンバー内での測定粒子の分布濃度の高低差がより顕著となる。これに、前記気体排出口調整手段による気体排出口の位置調整を加えることで、粒子測定装置へ供給される測定粒子濃度をより細かく調整することが可能となる。
【0024】
また、更に、上述までの粒子供給装置において、前記チャンバー内に複数の前記気体排出口が設けられ、該気体排出口のそれぞれに対応する前記気体排出手段および前記気体排出口位置調整手段を備え、複数の前記粒子測定装置に同時に前記測定粒子を供給するようにしてもよい。即ち、上述した本発明に係る粒子供給装置によって、同時に複数の粒子測定装置に対して安定的に測定粒子を供給することで、同一の測定粒子供給条件下での粒子測定装置の測定結果を得ることが可能となる。これは、粒子測定装置の校正や、粒子測定装置間の個体差の検出等に適用が可能である。
【発明の効果】
【0025】
気体中の測定粒子の物性を測定するために、測定に応じた濃度の測定粒子を安定的に粒子測定装置に供給することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
発明に係る粒子供給装置の実施の形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、本発明が適用される粒子測定装置への粒子供給装置の概略的な構成を示す図である。この粒子供給装置は、粒子測定装置11に対して測定の対象となる任意の粒子(以下、「測定粒子」という。)9を供給する装置である。粒子測定装置11は、測定粒子の大きさや物性等の、その粒子特性を測定するための装置であり、例えば、気体中の測定粒子に光を当て、その散乱光又は蛍光を光電変換素子で受光することにより測定粒子の粒子特性を測定する光散乱式/蛍光式粒子測定器や、フロー式粒子測定器等の任意の粒子測定器が、本発明に係る粒子測定装置11として適用可能である。以下に、粒子測定装置11への測定粒子の供給を行う粒子供給装置について説明する。
【0028】
粒子供給装置は、測定粒子をその内部に貯留するチャンバー5を有している。そして、チャンバー5には、空気供給チューブ2を介して空気ポンプ1から空気が供給される。空気供給チューブ2の途中には、チューブ内の空気に含まれる塵等を除去するためのエアフ
ィルタ3が設けられ、その更に下流側の空気供給チューブ2には、そこを流れる空気の流量を検出するための流量計4が設けられている。
【0029】
ここで、チャンバー5は、遮蔽板6によって二つの領域、第一領域5aと第二領域5bが画定されている。この遮蔽板6はチャンバー5内を図1の上下方向に移動し、第一領域5aと第二領域5bの比率を変更することが可能となっている。第一領域5aには、粒子測定装置11の測定対象物である測定粒子9が、その底部に貯留されている。そして、空気供給チューブ2のチャンバー5側の開口部である噴出し口7が第一領域5a内に設定されることで、第一領域5a内にポンプ1からの空気が供給される。尚、空気供給チューブ2は遮蔽板6に固定されており、従って遮蔽板6の上記の移動に従い空気供給チューブ2およびその噴出し口7も移動する。また、第一領域5a内には、発砲スチロール等からなる軽量の攪拌球8が複数個置かれている。
【0030】
更に、第一領域5aには、第一領域5a内の空気をチャンバー5外に排出する空気排出チューブ10の排出口10aが開口している。この空気排出チューブ10は、その排出口10aから粒子測定装置11の測定粒子取り込み口まで延出している。尚、空気排出チューブ10は、遮蔽板6に対してチャンバー5の長手方向(図1の縦方向)と径方向(図1の横方向)に相対移動可能に取り付けられている。空気排出チューブ10の取り付け部には、第一領域5a内の空気、即ち測定粒子9を含む空気が第二領域5bに漏れ出さないように、ゴムパッキン15(後述する図2に表示)が設けられている。
【0031】
このように構成される粒子測定装置11の粒子供給装置は、ポンプ1からの供給空気によってチャンバー5の第一領域5a内に貯留されている測定粒子9を攪拌し、その測定粒子を含む空気を粒子測定装置11に送る。これにより、測定粒子装置11が、測定粒子9の粒子特性を測定することが可能となる。
【0032】
更に、図2に基づいて、本発明に係る粒子供給装置の詳細を説明する。図2は、チャンバー5の拡大図である。測定粒子9が貯留されているチャンバー5の第一領域5a側の底部5cは、その略中央部が突出している錘状の形状を有している。そして、空気供給チューブ2の噴出し口7は、第一領域5a側のチャンバー5の側壁方向、且つ底部5c方向に向いている。従って、噴出し口7から第一領域5a内に噴き出された空気は、図2に示すように、チャンバー5の側壁に沿って、らせん状に底部5c側に進行する渦流を形成する。
【0033】
この渦流が更に底部5cまで進むと、底部5cの錘状の形状に従って、第一領域5a内に上昇流を形成する。従って、ポンプ1からの供給空気によって、底部5cに貯留されていた測定粒子9は、該上昇流に従って第一領域5a内を飛散し、時間の経過とともに再び底部5cの近傍へと沈降してくる。そして、沈降した測定粒子9は、再び上昇流に従って第一領域5a内を飛散する。このように、第一領域5a内に、測定粒子9の循環流が形成される。
【0034】
この測定粒子9の循環流が形成されることで、定常的に測定粒子9が第一領域5a内に飛散し、その後沈降により測定粒子9が回収され更に再飛散させられることになる。その結果、第一領域5a内に測定粒子9が比較的安定した状態で分布する。そして、この測定粒子9を含む空気が、粒子測定装置11の取り込み口に送られ、粒子特性の測定に供される。更に、測定粒子9とともに第一領域5a内に設けられている攪拌球8も循環流によって、第一領域5a内を動く。この攪拌球8の動きによって、底部5cに貯留する測定粒子の飛散を促進させることが可能となる。尚、この攪拌球8は取替え可能であり、測定粒子9の飛散が促進されるべく、測定粒子9に応じて適当な攪拌球が使用されるのが望ましい。
【0035】
ここで、図3に、本発明に係る粒子供給装置における粒子供給の様子を示す。図3の横軸は時間を、縦軸は粒子測定装置11に供給される測定粒子の粒子濃度、即ち空気排出チューブ10の排出口10aに吸い込まれる空気中に含まれる測定粒子9の粒子濃度を表す。
【0036】
ここで、図3中の線L1は本発明に係る粒子供給装置による粒子濃度の推移を示し、線L2は従来の粒子供給装置による粒子濃度の推移を示している。従来の粒子供給装置は、図6に示すチャンバー31のような閉鎖空間内に測定粒子を一度飛散させ、その閉鎖空間内の空気を粒子測定装置33に供給する。従って、従来の粒子供給装置では、時間の経過とともに閉鎖空間内において測定粒子が沈降していくため、線L2で示されるように、粒子測定装置33に供給される測定粒子の粒子濃度は時間の経過とともに低下していく。
【0037】
一方で、本発明に係る粒子供給装置では、上述した空気の循環流により、測定粒子9が第一領域5a内に安定的に分布するため、粒子測定装置11に供給される測定粒子9の粒子濃度は比較的安定して推移する。
【0038】
ここで、第一領域5a内に分布する測定粒子9の粒子濃度は、どの場所によっても同一ではなく場所によって変動する。本実施例においては、測定粒子9は底部5cに貯留され、上述した空気の循環流が形成されることより、底部5cに近い位置であるほど粒子濃度は上昇し、且つ第一領域5aの中央部に近い位置であるほど粒子濃度は上昇する。即ち、上述した空気の循環流によって、第一領域5a内に、その場所に応じた粒子濃度の分布が安定的に形成される。
【0039】
そこで、第一領域5a内における空気排出チューブ10の排出口10aの位置を調整することで、粒子測定装置11に供給される測定粒子の濃度を制御することが可能となる。これにより、粒子測定装置11において行われる目的とする粒子特性の測定に適した粒子濃度の、測定粒子9を含む空気を該粒子測定装置11に供給することが可能となる。例えば、より高い粒子濃度の空気を粒子測定装置11に供給する場合は、空気排出チューブ10の排出口10aの位置を、底部5c側もしくはチャンバー5の中央部側に移動させればよい。
【0040】
また、上述したように遮蔽板6は、図2中の矢印の方向(図面の上下方向)に移動することが可能である。遮蔽板6が底部5c側に移動すると、第一領域5aの容積が小さくなる。このとき、空気排出チューブ10も空気供給チューブ2および遮蔽板6とともに移動する。そして、遮蔽板6の移動によって、第一領域5aの容積が小さくなり、その内部に形成される循環流の強さが大きくなることで、第一領域5a内に形成される測定粒子9の粒子濃度の分布状態がより高い状態で安定化する。
【0041】
即ち、遮蔽板6の位置を調整することで、粒子測定装置11に供給する測定粒子9の粒子濃度を調整することが可能となる。より高い粒子濃度の測定粒子9を安定的に供給するには遮蔽板6を底部5c側に移動し、逆により低い粒子濃度の測定粒子9を安定的に供給するには遮蔽板6を底部5c側と反対側に移動すればよい。更に、上述したように空気排出チューブ10の排出口10aの位置を調整することで、粒子測定装置11に供給される測定粒子9の粒子濃度を細かく調整することが可能となる。
【0042】
また、第一領域5a内の循環流の強さを変化させるために、ポンプ1の流量を調整しても良い。ポンプ1の流量を制御することで、第一領域5a内の循環流の強さが変化し、測定粒子9の濃度の分布における高低差が大きくなる。以て粒子測定装置11に供給される測定粒子9の粒子濃度を安定的に調整することが可能となる。
【実施例2】
【0043】
次に、本発明に係る粒子供給装置の第二の実施例について、図4に基づいて説明する。本実施例の粒子供給装置と、上述の第一の実施例に係る粒子供給装置との相違点は、チャンバー内の構造である。それ以外の構成については第一の実施例と同様であるため、同一の構成には同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0044】
本実施例に係る粒子供給装置のチャンバー5は、遮蔽板16によって第一領域5aと第二領域5bとが画定される。この遮蔽板16には、第一の実施例と同様に、空気供給チューブ2が固定されている。また、空気排出チューブ10の排出口10aは、第二領域5b側に設けられており、第二領域5b内をチャンバー5の長手方向(図4の縦方向)と径方向(図4の横方向)に自在に移動可能である。
【0045】
更に、遮蔽板16には、第一領域5aと第二領域5bとを貫通する貫通孔17が複数個設けられている。この貫通孔17の径は、測定粒子9の粒径のばらつき内に含まれる何れかの粒径と同等の径である。
【0046】
このように構成されるチャンバー5を有する本実施例に係る粒子供給装置では、第一の実施例と同様に、ポンプ1から空気が供給されると、第一領域5a内に循環流が形成される。それに伴い底部5cに貯留されていた測定粒子9が飛散し始めるが、その飛散した測定粒子9の一部の測定粒子9であって貫通孔17の径より小さい粒径を有する測定粒子9が、貫通孔17を経て第二領域5b内に飛来する。そして、飛来した測定粒子9が空気排出チューブ10を介して、粒子測定装置11に供給される。
【0047】
即ち、粒子濃度が安定した状態で第一領域5aに飛散している測定粒子9に対して、遮蔽板16の貫通孔17がフィルタとして機能することで、粒子測定装置11での粒子特性の測定に適した粒径を有する測定粒子のみを、安定的に供給することが可能となる。
【0048】
尚、第二領域5b内でも測定粒子9の粒子濃度の分布は、その場所によって変動する。そこで、本実施例においても、空気排出チューブ10の排出口10aの位置を第二領域5b内で調整することで、粒子測定装置11に供給する測定粒子の粒子濃度を調整することが可能となる。
【実施例3】
【0049】
次に、本発明に係る粒子供給装置の第三の実施例について、図5に基づいて説明する。本実施例の粒子供給装置は、二台の粒子測定装置に同時に測定粒子を供給するものである。第一の実施例と同様の機能を有する構成については、同一の参照番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0050】
本実施例に係る粒子供給装置は、粒子測定装置11と粒子測定装置21とに同時に測定粒子9を供給する装置である。粒子測定装置11と粒子測定装置21は、同じ型番の機種、あるいは性能が異なるが測定目的あるいは測定対象が同じであるというような、両装置の測定結果を比較することが有意である粒子特性測定用の装置であり、粒子測定装置21は該粒子特性の測定において基準となる測定装置である。
【0051】
ここで、粒子測定装置11と粒子測定装置21への測定粒子9の供給についてであるが、粒子測定装置11への測定粒子9の供給は、上述の第一の実施例に記載の通りである。次に、粒子測定装置21への測定粒子9の供給は、空気排出チューブ20を介して行われる。空気排出チューブ20の開口部20aは、空気排出チューブ10の開口部10aと同じように、遮蔽板6を跨いで第一領域5a側に設けられている。そして、空気排出チュー
ブ10aと同様に、空気排出チューブ20の排出口20aも、第一領域5aにおけるその位置を調整することが可能である。
【0052】
このように設定された粒子供給装置によって、粒子測定装置11および粒子測定装置21に同時に、同一条件の粒子濃度の測定粒子9を安定的に供給することが可能となる。そして、粒子測定装置11と粒子測定装置21との測定結果を比較することで、粒子測定装置11の測定結果が基準となる粒子測定装置21の測定結果よりどれ程ずれているかを判別することが可能となり、粒子測定装置11のより良好な校正を行い得る。もちろん、粒子特性の測定の目的に応じて、排出口10aと排出口20aのそれぞれの位置を調整することで、それぞれの粒子測定装置に異なる条件の粒子濃度の測定粒子を安定的に供給することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一の実施例に係る粒子測定装置への測定粒子の供給を行う粒子供給装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第一の実施例に係る粒子供給装置を構成するチャンバーの拡大図である。
【図3】本発明の第一の実施例に係る粒子供給装置と従来の粒子供給装置の、粒子供給の際の安定性能を比較した図である。
【図4】本発明の第二の実施例に係る粒子供給装置を構成するチャンバーの拡大図である。
【図5】本発明の第三の実施例に係る粒子供給装置の概略構成図である。
【図6】従来の粒子供給装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0054】
1・・・・ポンプ
2・・・・空気供給チューブ
3・・・・エアフィルタ
4・・・・流量計
5・・・・チャンバー
6・・・・遮蔽板
7・・・・噴出し口
8・・・・攪拌球
9・・・・測定粒子
10・・・・空気排出チューブ
10a・・・・排出口
11・・・・粒子測定装置
15・・・・ゴムパッキン
20・・・・空気排出チューブ
20a・・・・排出口
21・・・・粒子測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子特性の測定を行う粒子測定装置に測定粒子を供給する粒子供給装置であって、
前記測定粒子が貯留されているチャンバーと、
前記チャンバー内に設けられた気体供給口から該チャンバー内に、粒子撹拌用の気体を供給する気体供給手段と、
前記チャンバー内に設けられた気体排出口から前記測定粒子を含む気体を排出し、前記粒子測定装置に該気体を送る気体排出手段と、
前記チャンバーにおける前記気体排出口の位置を調整する気体排出口位置調整手段と、
を備えることを特徴とする粒子供給装置。
【請求項2】
前記気体供給口の噴出し形状は、前記チャンバー内に前記粒子撹拌用気体による渦流を形成する形状であって、該渦流の進行方向は該チャンバー内に配置された測定粒子に向かう方向であることを特徴とする請求項1に記載の粒子供給装置。
【請求項3】
前記チャンバーは、底部および側部を有し、前記測定粒子は該チャンバーの底部に貯留されており、
前記気体供給口は、前記チャンバーの側部に向かって前記粒子撹拌用気体を噴出する噴出し形状を有することを特徴とする請求項2に記載の粒子供給装置。
【請求項4】
前記チャンバー内において前記粒子撹拌用気体によって前記測定粒子とともに浮遊する撹拌部材を、更に備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の粒子供給装置。
【請求項5】
前記撹拌部材は、交換可能であることを特徴とする請求項4に記載の粒子供給装置。
【請求項6】
前記チャンバー内に二つの空間領域を画定する遮蔽板と、
前記チャンバーに対する前記遮蔽板の位置を調整し、前記二つの空間領域の比率を変更する遮蔽板位置調整手段と、を更に備え、
前記測定粒子は前記二つの空間領域のうち一方の空間領域に貯留されるとともに、前記気体供給口も該一方の空間領域側に設けられ、
前記気体排出口位置調整手段は、前記一方の空間領域側で前記気体排出口の位置を調整することを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の粒子供給装置。
【請求項7】
前記チャンバー内に二つの空間領域を画定する遮蔽板と、
前記チャンバーに対する前記遮蔽板の位置を調整し、前記二つの空間領域の比率を変更する遮蔽板位置調整手段と、を更に備え、
前記遮蔽板は、所定の口径の孔であって前記二つの空間領域のそれぞれに連通する貫通孔を有し、
前記測定粒子は前記二つの空間領域のうち一方の空間領域に配置されるとともに、前記気体供給口も該一方の空間領域側に設けられ、
前記気体排出口位置調整手段は、前記二つの空間領域のうち他方の空間領域側で前記気体排出口の位置を調整することを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の粒子供給装置。
【請求項8】
前記気体供給手段による前記チャンバー内への前記粒子撹拌用気体の供給流量を制御する気体供給流量制御手段を、更に備えることを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の粒子供給装置。
【請求項9】
前記チャンバー内に複数の前記気体排出口が設けられ、該気体排出口のそれぞれに対応
する前記気体排出手段および前記気体排出口位置調整手段を備え、複数の前記粒子測定装置に同時に前記測定粒子を供給することを特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載の粒子供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−349538(P2006−349538A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177198(P2005−177198)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】