説明

粒子分離方法

【課題】粒子の表面電荷の差が微小であっても、明確な泳動差を発生させ、粒子を正確に分離する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る粒子の分離方法は、試料中に存在する少なくとも2種の粒子を電気泳動力と超音波の輻射圧を利用して分離する方法であって、前記電気泳動力により前記粒子間に泳動差を設け、前記超音波により、少なくとも2つの節を有し、かつ前記泳動差を広げるような定常波を発生させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動法を用いた粒子の分離方法に関する。より詳細には、混在する粒子を電気泳動により分離分画する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒子や細胞、生体試料等を分離、分画する方法として電気泳動法が行われている。電気泳動とは、荷電粒子に対して電位勾配を掛けることで、その荷電状態に応じて移動する現象を利用して分離を行う方法である。核酸やたんぱく質等の比較的分子量が少ない物質に対して良く用いられてきたが、一方で細胞のように大きな粒子に関しても電気泳動法で分離、分析する方法が利用されている。
【0003】
一般に細胞はその表面構造から表面に負の電荷を持ち、細胞の種類や活性状態、生死状態、発現状態等に応じて電荷量が変化する。この変化を元に電気泳動法で細胞の種類もしくは状態ごとに分離分析することが可能である(例えば特許文献1)。このような方法は、従来の物理的パラメータによる遠心分離装置に比べて細胞の持つ機能的特性をより反映させた分離方法として良く使用されている。表面の電荷量に応じて分離できるため、細胞の種類だけでなく、活性状態や発現状態等の細胞内部状態に応じて分離分析できる。細胞の電気泳動方法としては、生理食塩水や各種バツフア溶液に細胞を懸濁し、前期液体に対して電圧を印加することによって行う。一般的にどのような細胞でも表面に電荷をもつので電気泳動が可能であるが、例えば赤血球、白血球、体細胞、細菌等についての電気泳動による分離が良く行われている。例えば、特許文献2では、分析・分離精度を向上させるために、粒子を色素や抗体等で修飾して電気泳動の差を大きくする方法が提案されている。また、溶液を一定の流速で流して、その流れの力との折衝を利用する方法が提案されている。さらに、特許文献3では、電気泳動槽に試料と支持液を連続的に注入しながら電気泳動による分離及び分取を行うフリーフロー電気泳動等も提案されている。
【0004】
また、液中の粒子に対して超音波を照射することによって、その超音波により形成される定常波の節に粒子を捕捉できることは以前から知られていた。超音波定常波を用いた粒子の捕捉に関してはさまざまな研究がなされており、粒子が音波から受ける力(超音波輻射圧)は次式で示すことが一般的である。
【0005】
Fcs = (π/3)k(φ-β/β0)ρUs2・a3sin(2ky)
kは溶液中の波数、φは(微粒子の密度)/(溶媒の密度)、βは微粒子の弾性率、βは溶液の弾性率、ρは溶液の密度、aは微粒子の直径、Usはつぎに定義する量である。Us2=(2I/ρC)×107(cm2/S2)、ただしIはパワー密度(W/cm2)、Cは溶媒中の音速、yは超音波進行方向の位置であり、槽中央における定在波の節の位置をy=0とする。微粒子はFcsによって節(y=0)の位置に集中する。式から明らかなように、超音波によって粒子が受ける力は、その表面電荷や誘電率等に左右されず、密度や弾性率にのみ依存する。このような特徴を利用して、粒子の捕捉や操作を超音波で行う技術が開発されている(例えば特許文献4)。超音波を利用することによって、通常のフィルターやピンセット等の物理的な捕捉手段を用いることなく、溶液中に分散されたプラスティック粒子や、微生物、組織細胞、血球細胞等の細胞粒子、粒状高分子を捕捉、濃縮することが可能である。また、非常に性質が異なる粒子であれば、その超音波による移動特性の違いから、分離・濃縮することも可能である。
【0006】
また、特許文献5では、超音波輻射圧と電気泳動力との拮抗を利用することで電荷を持つ細胞を分離回収する細胞分画装置が提案されている。
【特許文献1】特公昭61−048863号公報
【特許文献2】特登録2564540号明細書
【特許文献3】特登録3833110号明細書
【特許文献4】特開平7−47259号公報
【特許文献5】特開平11−326155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、細胞等の大きい粒子を電気泳動するためには、ある程度大きな電圧を印加しなければならず、その電流による発熱が問題となる。この発熱に伴って泳動槽内に熱対流が起こることから、泳動精度の低下につながる。従って、泳動速度を速めるために印加電圧を大きくしたいところであるが、実際には上記問題があるためにあまり大きな電圧は印加できない。また、細胞等の生体分子に対してあまり大きな電圧を印加してしまうと、細胞の性質が変化しひいては細胞が死んでしまうおそれがある。そのために印加電圧はある程度以下に抑えざるを得ず、そのため、泳動速度は非常に遅くなり分析に多大な時間がかかってしまう。特に細胞種間の泳動度の差は一般的に小さいので、明確に分離・分析するための泳動差を発生させようとすると、長い距離を泳動させて、分離可能な泳動差を発生させる必要がある。長い距離を低い電圧で移動させるには、さらに長い処理時間が必要となる。このような問題のために、上述のように細胞を抗体等で修飾することによる泳動差向上方式(特許文献2)も提案されているが、新たな処理が必要となり処理時間およびコストを増大させる。さらに、修飾工程を経ることによって結果が修飾効率にも左右されることから、初期の細胞の状態を反映しない可能性も否定できない。また、微少な泳動差から分離するために、特許文献3に開示されるフリーフロー電気泳動等では、電気泳動槽への微細な加工が必要であり、しかも流速の管理にも非常な高精度が求められるため、装置が複雑化、巨大化してしまう。
【0008】
また、特許文献4に開示されるような超音波を利用した細胞の濃縮や分離方法では、正確な操作を行うことが非常に困難である。性質が異なる粒子であれば、ある程度の挙動の違いによって区別可能であるが、細胞や細菌のように基本構造が非常に近似している粒子では同様の挙動を示してしまい、分離することが困難である。
【0009】
また、溶液中の全細胞をまとめて捕捉したり、細胞を集めた上で凝集させて分離する方法が提案されているが、細胞種や細胞の状態に応じて分離することは非常に困難である。
【0010】
また、電気泳動力と超音波輻射圧の力の比率によって分離する方法では(特許文献5)、電気泳動の泳動力の差が超音波輻射圧によって減じられる影響があるため分離精度が低く、処理時間もかかってしまう。
【0011】
このように、細胞や微生物等の粒子を精度良く高速に分離するという目的は未だ達成されておらず、分離技術の高性能化が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明に係る粒子の分離方法は、
(1)試料中に存在する少なくとも2種の粒子を電気泳動力と超音波の輻射圧を利用して分離する方法であって、
前記電気泳動力により前記粒子間に泳動差を設け、
前記超音波により、少なくとも2つの節を有し、かつ前記泳動差を広げるような定常波を発生させることを特徴とする粒子の分離方法。
【0013】
(2)前記電気泳動力により泳動差を設けた粒子の間に、前記定常波の腹が形成されるように前記定常波を発生させることを特徴とする(1)に記載の粒子の分離方法。
【0014】
(3)前記電気泳動力を発生させている際には前記定常波は発生させず、
前記定常波を発生させている際には前記電気泳動力は発生させないことを特徴とする(1)又は(2)に記載の粒子の分離方法。
【0015】
(4)前記電気泳動力を発生させる電界の向きと前記超音波が進行する向きとが平行であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の粒子の分離方法。
【0016】
(5)前記超音波により前記泳動差を広げた後、前記超音波と異なる周波数の定常波を発生させ、泳動差をさらに広げることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の粒子の分離方法。
【0017】
(6)(1)乃至(5)のいずれかに記載の粒子の分離方法を複数回繰り返し、前記泳動差を広げることを特徴とする粒子の分離方法。
【0018】
(7)前記複数回繰り返して行う際に、超音波の周波数が異なることを特徴とする(6)に記載の粒子の分離方法。
【0019】
(8)前記試料をチャンバー内に投入口から投入する際に、超音波により定常波を発生させておき、前記粒子を前記投入口近傍の節に捕捉することを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の粒子の分離方法。
【0020】
(9)前記粒子は、細胞又は微生物であることを特徴とする(1)乃至(8)のいずれかに記載の粒子の分離方法。
【0021】
(10)前記電界は、前記チャンバーの両側面に配置された対向する電極により発生されること特徴とする(8)又は(9)に記載の粒子の分離方法。
【0022】
(11)前記定常波は、前記チャンバーの両側面に配置された対向する超音波発生手段により発生されること特徴とする(8)乃至(10)のいずれかに記載の粒子の分離方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る粒子の分離方法により、粒子の表面電荷に応じて高速に精度良く分離することが可能となる。つまり、微少な表面電荷の差であっても、明確な泳動差を発生させることが可能となり、粒子を正確に分離することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
従来の電気泳動法による細胞や微生物等の分離では、細胞の性質変化や死滅を防ぐため印加電圧をある程度に抑えなければならず、分析に多大な時間がかかってしまっていた。特に細胞種間の泳動度の差は一般的に小さいので、明確に分離するための泳動差を発生させようとすると、長い距離を泳動させる必要があり、さらに多くの時間がかかってしまっていた。そこで、本発明者らは、電気泳動力と超音波の輻射圧と拮抗させるのではなく、相互に利用することにより、より短い時間で細胞や微生物等の分離が可能となることを見い出し、本発明に至った。
【0025】
そこで、本発明に係る粒子の分離方法は、
試料中に存在する少なくとも2種の粒子を電気泳動力と超音波の輻射圧を利用して分離する方法であって、
前記電気泳動力により前記粒子間に泳動差を設け、
前記超音波により、少なくとも2つの節を有し、かつ前記泳動差を広げるような定常波を発生させることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る分離方法の対象となる粒子としては、例えば、細胞や微生物等が挙げられる。また、これらに限定されるものではなく、核酸やたんぱく質等の生体内分子であっても利用可能である。また、プラスティック等の非生体内粒子の分離にも適用可能である。細胞としては、特に限定されるものではないが、赤血球や白血球等の血球細胞、動植物細胞、又は細胞内小器官等が挙げられる。また、微生物としては、特に限定されるものではないが、例えば真菌、放線菌、細菌又はウイルス等が挙げられる。また、生体内分子としては、特に限定されるものではないが、核酸やたんぱく質を含み、例えば、染色体、免疫グロブリン、血清蛋白質、抗体、抗原、脂質又は糖鎖等を挙げることができる。また、非生体内粒子としては、プラスチックを含み、例えば、例えば、シリカ、アルミナ等の酸化物、金、チタン、鉄若しくはニッケル等の金属、アガロース、セルロース若しくは不溶性デキストラン等の多糖類、セラミック等の無機酸化物、又は、ポリマーラテックス、ポリスチレン若しくはスチレン‐ブタジエン共重合体等の高分子化合物等が挙げられる。本発明では、細胞や微生物を分離対象とする場合に特に有効である。
【0027】
前記試料としては、少なくとも二種類の粒子を含む液体のことであり、例えば、血清、血漿、髄液、滑液、リンパ液等の体液若しくは尿、糞便のような排泄物等の生体由来試料、又はその処理物等が挙げられる。処理物としては、例えばこれら生体由来試料を水や緩衝液等で適宜希釈等したもの、あるいはこれら生体由来試料に由来する粒子を水や緩衝液等に適宜溶解又は懸濁させ、再構成して得られたもの等が挙げられる。
【0028】
前記定常波とは、周波数や速さ(速度の絶対値)が同じで進行方向が互いに逆向きの2つの波が重なり合うことによってできる、波形が進行せずその場に止まって振動しているようにみえる波動のことである。なお、本発明においては、逆向きの二つの波の周波数や速さが完全に同じである必要はなく、少しの差異があってもよく、本発明の効果を奏する範囲であれば、多少の波の進行があってもよい。
【0029】
前記超音波を発生させる手段としては、従来公知の装置を用いることができ、例えばピエゾ素子を用いることができる。そして、定常波は1以上の超音波発生手段から発生させることができる。超音波発生手段が1つの場合は、波の進行方向に対して垂直な面で波が反射すると、もとの波(入射波)と進行方向が逆向きの反射波が発生する。この入射波と反射波が合成することにより定常波が発生する。また、2つの超音波発生手段を用いて定常波を形成する場合は、超音波の周波数を同じにし、進行方向が逆向きになるように設定することにより、定常波を形成することができる。この場合、例えば、超音波発生手段は、チャンバーの両側面に配置することができる。特に面状で平行に設置することが好ましい。
【0030】
前記電界を発生させる手段としては、従来公知の装置を用いることができ、例えば対向する電極を用いることができる。また、前記超音波の進行方向と前記電界の向きが平行となるように、前記超音波発生手段と前記電界発生手段は配置されることが好ましい。また、前記電極が前記超音波発振素子を兼ねる構成とすることも可能である。
【0031】
(実施形態1)
以下、本発明に係わる粒子分離方法の実施形態を説明しつつ、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0032】
図1は本発明の粒子分離方法に好適な装置の一例を示す模式図である。図1において、101は泳動を行うための空間を形成するチャンバー、102はチャンバーを形成する外壁である。チャンバー101は溶液の流入口107と流出口108を具備し、この流入口107及び流出口108によりチャンバー101への粒子を含む溶液の充填や排出が可能となっている。104および105が電気泳動のための電極であり、チャンバー101内に電界をかけることが可能となっている。103および106が超音波発振素子であり、チャンバー101内の溶液に超音波を照射することが可能となっている。
【0033】
図2は、図1で示した粒子分離装置に関してA−A’方向に見た断面を示したものである。チャンバー201は、溶液を保持できる形状であればどのような形状、素材であっても良い。分離した粒子等を観察するために、外壁102の一部もしくは全部を観察波長に対して透明な物質で形成することも可能である。
【0034】
溶液は特に限定されず、細胞等の比較的大きい粒子を扱う場合にはTAE等の一般的なバッファーや溶媒を使用可能である。また、比較的低分子の粒子を分離するために、アガロース等を添加してある程度の粘度を付加することも可能であるが、超音波およびその定常波の発生を阻害しない程度のものである必要がある。
【0035】
本図のチャンバー201には、流入口207と流出口208が具備されている。流入口207および流出口208を設ける場所は、試料の投入方法や採取方法によって適宜変更可能である。図1では、形成する定常波の節に沿って流入口が設けられているが、特にこれに限定されるものではない。また、それぞれを複数の泳動部位を設けて、複数の試料を同時に分離対象とすることも可能である。なお、複数の泳動部位はチャンバー内に粒子の泳動方向(電界の方向)に沿って仕切りを設けることで作製できる。
【0036】
電極204、205は電気泳動に用いる一般的な電極でよい。通常は数〜数百V/cmとなるような電圧を印加する。電極に接続する電源に特に限定はない。一般的な電気泳動には直流電源を用いるが、交流電源を用いた不均一電界による誘電効果を利用しても良い。装置構成の簡便性の観点から、直流電源を用いることが好ましい。直流電源を用いる場合であって、分離対象となる粒子が細胞や微生物である場合は、好ましい電圧の範囲は1〜200V/cm、より好ましい電圧の範囲は20〜100V/cmとなるような電圧である。
【0037】
超音波発振素子203、206は数十kHz程度〜数MHz程度の発振が出来るものが好ましい。超音波発振素子203及び206のそれぞれから発せられる超音波の周波数は同じに設定する。あまり高エネルギーの超音波を照射すると、キャビテーションが発生して粒子を破壊してしまう可能性があるので、細胞等を生存した状態で扱う場合には注意が必要である。また、周波数もあまり低周波にしてしまうとキャビテーションが発生しやすくなり、細胞の生存率に影響を与えてしまう場合がある。故に、細胞等を生存したまま取り扱うには、周波数は、50kHz以上100MHz以下が望ましく、100kHz以上5MHz以下がより望ましい。本発明では、超音波の進行方向と電界の向きが平行となるように、前記超音波発振素子と前記電極が設けられることが好ましい。また、超音波素子への印加電圧は、10〜100V程度とすることが好ましく、20〜40V程度とすることがより好ましい。
【0038】
ここで、図1のように長方形のチャンバーの両側面に設置した2つの超音波発生手段を用いて定常波を形成する場合において、定常波を発生させる条件及び定常波の形状について説明する。チャンバーの長さがx[m]とすると、2つの節を有する定常波、つまり波長が2x/2[m]の定常波を形成するための条件は、2つの超音波発生手段の周波数を2v/2x[1/s]に設定すればよい(v:溶液中における音波が伝わる早さ(音速)[m/s])。また、3つの節を有する定常波、つまり波長が2x/3[m]の定常波を形成するための条件は、2つの超音波発生手段の周波数を3v/2x[1/s]に設定すればよい。また、4つの節を有する定常波、つまり波長が2x/4[m]の定常波を形成するための条件は、2つの超音波発生手段の周波数を4v/2x[1/s]に設定すればよい。つまり、n個の節を有する定常波、つまり波長が2x/n[m]の定常波を形成するための条件は、2つの超音波発生手段の周波数をn×v/2x[1/s]に設定すればよい。
【0039】
また、図1又は2では超音波発振素子203、206が電極204、205に隣接して配置されているが、この構成に限定されるわけではない。超音波発振素子を電極と離れた位置に配置することも可能である。また、図1又は2のように対向する位置に一対の超音波発振素子を配する構成に限定されるわけではなく、定常波を発生させられる構成であれば単一の発振素子で構成しても良い。また、定常波を形成することができれば、より多数の素子から超音波を発生する構成も可能であるし、電界を形成する電極が超音波発振素子を兼ねる構成とすることも可能である。
【0040】
次に、図3を用いて本発明の粒子分離方法の一例を説明する。図3は2種の粒子が混在した溶液において、本発明に係る粒子分離方法を用いてそれぞれの粒子を分離する場合の流れを示す図である。図3に示す装置は本発明の粒子分離方法を具現化するのに好適な装置の一例であり、構成は図1に示した粒子分離装置と同じである。
【0041】
まず、309および310の2種の粒子が懸濁された試料を準備する。309が粒子1であり、310が粒子2である。試料は、例えば粒子として細胞を選択することができ、例えば溶媒としてTAE等のバッファーや適当な電解質溶液を用いることができる。
【0042】
図3の(A)は試料の投入工程を示している。チャンバー301に配置される溶液としては例えば試料と同じ溶媒を選択でき、チャンバー内を満たすことができる。試料は流入口307から投入される。チャンバー301が予め溶液で満たされている場合は、試料が流入した容積分の溶液が流出口308から排出される。本例では試料投入前にチャンバーを溶液で満たしているが、必ずしもその必要はなく、空のチャンバーに投入する方法でも良い。
【0043】
試料をチャンバー301に投入した後に、粒子を電気泳動の開始位置に揃える処理を行う。また、粒子の拡散を防ぐため、粒子を投入する時からチャンバー中の溶媒に超音波を発生させておくことが好ましい。図3の(B)のように、超音波発振素子303、306によって定常波を発生させ、流入口307付近の節311になるべく多くの粒子を捕集する。全ての粒子が同一の節に捕集されることが特に好ましい。また、試料をチャンバー内に投入する際には、予め定常波を発生させておくことが好ましい。そうすることにより、粒子が溶液中に拡散する前に粒子を流入口近傍の節、好ましくは同一の節上に捕捉し易いためである。また、本実施形態は2つの節を有する定常波を発生させる場合についてであるが、この場合、流入口307は泳動開始側(陰極の電極側)の節付近に設けること、又は、その節よりも陰極の電極側に流入口を設けることが好ましい。そうすることにより、試料を節の近くに投入することができるためである。また、その他にも、細胞の溶液中への拡散を防ぐために、壁や膜等の仕切りを設けておくこともできる。
【0044】
ここで、溶液中での音速はほぼ1500m/sと推定できる。したがって、例えば図3の(B)にように、長さ(電極304−305間)約3.0cmのチャンバー内に2つの節を有する定常波を発生させるためには、周波数が50kHz程度の超音波を超音波発振素子から発振すればよい。なお、式λ=v/fより計算し、音波の速さは1500m/sとした。なお、チャンバー内の溶液の種類によって多少音速は変わってくるが、その場合は周波数を調整することにより任意の定常波を発生させることができる。
【0045】
次に、粒子を開始点に揃えた段階で超音波発振を停止し、電極304、305間に電圧を印加する。この工程を示しているのが図3の(C)である。図3(c)では304が負極で305が陽極である。また、印加する電圧は1〜200V/cmとなるような電圧であることが好ましい。例えば表面が負に帯電している粒子であれば、各粒子の移動度で陽極305の方向に泳動する。それぞれの粒子は種類毎に泳動速度が異なり、ある程度の泳動差が発生する。
【0046】
図3の(D)のように、粒子1(309)が1/4波長より進んだ時点で電極303、304への電圧印加を停止し、超音波定常波を発生させる。例えば、50kHzの超音波を発生させているとすると、1/4波長は7.5mmとなる(音波の速さを1500m/sとして計算)。ここで、定常波の最左の節311から1/4波長より進んだ粒子1は、超音波振動によって次の節312に移動し、節311から1/4波長未満しか進んでいない粒子2(310)は最左の節311に移動する。このように、電気泳動による粒子の移動が定常波の波長の1/4に達しているか否かを境にして、粒子を明確に分離することが出来る。なお、実際の波長は音波の周波数や音速によって異なるので、周波数や音速に応じた距離を電気泳動で移動させればよい。泳動させる距離は1/4波長分に限定されるわけではなく、より長い距離を泳動させても良い。また、粒子の泳動距離に応じて照射する超音波の波長を変えても良い。
【0047】
このように電圧印加とそれに続く超音波照射を適切なタイミングで行うことによって、電気泳動によるわずかな泳動差を定常波の腹を境に各節にまで分離することができ、泳動差を大きくすることが可能となる。分離された粒子309は、例えば図3のEのように流出口308から排出可能である。
【0048】
(実施形態2)
次に、図4を用いて本発明の粒子分離方法の他の一例を説明する。図4は2種の粒子が混在した溶液において、本発明により分離する過程を示す図である。図4は本発明の粒子分離方法を具現化した装置の一例であり、構成は図1と同様である。
【0049】
まず、409および410の2種の粒子が懸濁された試料を準備する。409が粒子1であり、410が粒子2である。試料は、例えば、粒子として細胞や微生物等を選択でき、溶媒としてTAE等のバッファーや適当な電解質溶液等を選択できる。
【0050】
図4の(A)は試料の投入工程を示している。チャンバー401は例えば試料の調製に用いた溶媒と同じものを溶液として配置されている。流入口407から前記試料を投入する。なお、試料投入前にチャンバーを溶液で満たしていてもよい。
【0051】
試料をチャンバー401に投入した後に、電気泳動の開始位置を揃える処理を行う。図4の(B)のように、超音波発振素子403、406によって定常波を発生させる。このとき、流入口407付近の節413になるべく多くの粒子を捕集するようにする。溶媒中での音速はほぼ1500m/sと規定できるので、例えば図4の(B)にように、長さ(電極404−405間)約4.5cmのチャンバー内に6つの節の定常波を発生させるためには、100kHz程度の音波を発振素子403および406から発振すればよい。なお、チャンバー内の溶液によって音速は変わってくるが、その場合は周波数を調整することにより任意の定常波を発生させることができる。
【0052】
次に、粒子を開始点に揃えた段階で超音波発振を停止し、電極404、405間に電圧を印加し、粒子を電気泳動させる。この工程を示しているのが図4の(C)である。404が負極で405が陽極であり、1〜数十V/cm程度の電圧を印加するのが好適である。例えば表面が負に帯電している粒子は、各粒子の種類に応じた泳動速度で陽極405の方向に電気泳動する。それぞれの粒子は種類に応じて泳動速度が異なり、ある程度の泳動差が発生する。
【0053】
図4の(D)のように、粒子1(409)が1/4波長より進んだ時点で電極403、404への電圧印加を停止し、超音波により定常波を発生させる。例えば、100kHzの超音波を発振する場合には定常波の波長は、15mmとなり、1/4波長は3.75mmとなる。ここで、定常波の最左の節413から1/4波長より進んだ粒子1(409)は、超音波の輻射圧によって次の節414に移動する。また、節413から1/4波長未満しか進んでいない粒子2(410)は最左の節(元の節)413に移動する。このように、電気泳動による移動が定常波の1/4波長に達しているか否かを境にして粒子を分けることが出来る。なお、実際の波長は音波の周波数と速度によって異なるので、定常波の周波数と速度に応じた距離を電気泳動で移動させればよい。泳動させる距離は1/4波長に限定されるわけではなく、他の粒子と分離できる範囲で、より長い距離を泳動させても良い。また、粒子の泳動距離に応じて照射する超音波の波長を変えても良い。
【0054】
次に、超音波の照射を停止し、超音波の照射によって節413と節414に分離された粒子1(409)と粒子2(410)に対して、さらに図4の(C)のように電圧を印加することによってさらに分離を進める。粒子は各節から陽極方向にさらに泳動される。
【0055】
粒子1(409)が節414から1/4波長以上進んだ時点で、電極403、404への電圧印加を停止し、再度定常波を形成させる。節414から1/4波長以上進んだ粒子1(409)は、超音波振動によって次の節415に移動し、最左の節413から1/4波長未満しか進んでいない粒子2(410)は最左の節413に再度移動する。
【0056】
電圧印加と超音波照射を適切なタイミングで繰り返すことによって、一部の粒子は陽極に向けて移動し、残りの粒子は最左の節に残留することになる。例えば図4の例であれば、電圧印加と超音波照射を5回繰り返すことによって、図4の(E)の状態になる。粒子1(409)は最右の節416まで移動し、粒子2(410)は最左の節413に位置した状態である。チャンバー401内で分離した粒子1(409)は、流出口408から排出可能である。このように、電気泳動によるわずかな泳動差を定常波の腹を境に各節にまで分離することができ、工程を繰り返すことによって泳動差を大きくすることが可能となる。
【0057】
(実施形態3)
次に本発明の他の実施形態に関して図5を用いて説明する。図5は2種の粒子が混在した溶液において、本発明により分離する過程を示す図である。装置構成は図1と同様である。本実施形態は、超音波照射工程において照射周波数を変更することによってより効率的に分離する方法の例である。
【0058】
試料をチャンバー501に投入し、定常波を形成して粒子を開始位置に揃える。その後、図5の(A)のように電極504、505間に電圧を印加する。504が負極で505が陽極であり、1〜数十V/cm程度の電圧を印加するのが好適である。例えば負に帯電している粒子であれば、各粒子の種類に応じた移動速度で陽極505の方向に泳動される。それぞれの粒子は泳動速度が異なり、ある程度の泳動差が発生する。
【0059】
次に、図5の(B)のように、粒子1(509)が1/4波長より進んだ時点で電極503、504への電圧印加を停止し、超音波により定常波を発生させる。ここで、溶媒中での音速はほぼ1500m/sと推定できる。したがって、例えば長さ(電極504−505間)約6cmのチャンバー内に8つの節の定常波を発生させるためには、100kHz程度の音波を発振素子503および506から発振すればよい。100kHzの超音波を発生させているとすると、1/4波長は3.75mmとなる。ここで、開始位置から1/4波長より進んだ粒子1(509)は、超音波振動によって次の節518に移動する。1/4波長未満しか進んでいない粒子2(510)は最左の節517に移動する。波長は音波の周波数によって異なるので、照射周波数に応じた距離を電気泳動で泳動させればよい。
【0060】
この状態で、照射している超音波の周波数を75kHzにする。すると、図5の(C)のような状態になり、6つの節を有する定常波が形成される。すると、粒子1(509)は新たな節520に移動し、粒子2(510)は節519に移動する。
【0061】
次に、図5の(D)のように、超音波の照射を停止して電極に電圧を印加する。粒子1(509)が数mm程度だけ泳動すればよく、その後に図5の(E)のように100kHzの超音波を発振して節が8つの定常波を形成させる。節520、519からわずかだけ泳動された粒子は、粒子1(509)が節521に進み、粒子2(510)が節517にもどる。
【0062】
なお、粒子1の移動量は、前の周波数での節の位置から、次の周波数の腹を超える位置である。図5で具体的に説明すると、移動前の節の位置が左端より、波長20mm(75kHz、1500m/sec)× 3/4 = 15mm になり、次の腹の位置が波長15mm(100kHz、1500m/sec)× 1 = 15mm となる。したがって、移動させたい方向に若干電気泳動すればよい。例えば1mm移動させればよい。
【0063】
さらに図5のFのように超音波を停止して電気泳動を行い、粒子を数mm程度移動させる。その後に図5のGのように75kHzの超音波を発振して節が6つの定常波を形成させる。節521、517からわずかだけ泳動された粒子は、509粒子1が522に進み、510粒子2が519に移動する。さらに、照射している超音波の周波数を100kHzにすると、図5のHのような状態になり、節が8つの定常波が形成される。すると、509粒子1は新たな節523に移動し、510粒子2は節517に移動する。同様にして、電気泳動と適切な周波数の超音波の照射を繰り返して粒子を移動させていく。周波数が異なる超音波の照射によって、より高速に粒子を分離することが可能となる。
【0064】
このように、電気泳動と超音波による粒子捕捉を繰り返すことによって、電気泳動のわずかな泳動差を大きくすることができて、高速で高精度な分離が可能となる。前記例では泳動時間や超音波照射を一定の条件で行っているが、例えば粒子の挙動を観察しながら、印加電圧や印加時間、超音波照射時間、超音波周波数を調整することによってより一層の高速化、高精度化も可能である。
【0065】
なお、選択する定常波の形状は、つまり、第1の定常波と次に選択する第2の定常波は、両粒子の泳動差を広げれるように適宜選択することができる。
【0066】
なお、図3から図5では、試料の投入時に全ての粒子が同一の節上に捕捉されているが、本発明はこれに限定されるものではない。特に試料の投入時(最初の電気泳動開始時)に全ての粒子が同一節上になくても、電気泳動と超音波の輻射圧によって分離することができ、本発明の効果を奏することができる。
【実施例】
【0067】
以下に本発明の粒子分離方法の実施例を示すが、以下の実施例で本発明の内容が限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
本実施例では、白血球細胞と大腸菌を分離する例を示す。
【0069】
図1のような装置を準備する。チャンバーの長さは4.5cmとし、両端の超音波発振素子としてピエゾ素子を用いる。また、内部を観察できるように少なくとも壁面の一部透明にしておく。
【0070】
TAEバッファに、培養した白血球細胞(K562)と大腸菌(E.coli)を懸濁し、試料とする。該試料中の細胞の濃度は、例えばそれぞれ10^4/ml程度とする。あらかじめTAEバッファを充填した装置に上記細胞溶液を流入口から投入して、チャンバー内部のTAEバッファを流出口から排出させる。細胞が投入時にチャンバーの広範囲に拡散しないように流速を制御する。
【0071】
その後、投入した細胞をそろえるために100kHzの超音波を両端の超音波発振素子から位相を揃えて発振する。超音波照射によってチャンバー内には定常波が形成され、その節は7.5mm間隔で6つ出来る。投入された細胞は流入口付近の端に形成される節に捕捉される。十分に捕捉された段階で超音波照射を停止する。
【0072】
次に電極間に45Vの電圧を印加する。各細胞は陽極側に泳動される。白血球細胞よりも大腸菌の方が早く泳動され、約140秒で大腸菌は約4mm泳動し、血球細胞は約1.5mm泳動する。この時点で電圧の印加を停止し、再度100kHzの超音波を40秒程度照射する。定常波の腹の中心は節から3.75mmの位置であるので、節からそれ以上進んでいる粒子は次の節に移動する。一方で3.75mm以上進まなかった粒子は元の節に戻る。よって、白血球細胞は元の節に戻り、大腸菌は第二の節に移動する。
【0073】
同様に、電圧の印加と超音波照射を4回繰り返す。このようにして、最終的に白血球細胞は負電極側の節の位置に捕集され、大腸菌は一番陽極側の節に捕集される。流出口から溶液を順次回収することによって、大腸菌と白血球を15分程度で分離することが可能となる。
【0074】
(実施例2)
次に実施例1と同様の装置を用いて、細菌と真菌の分離を実施する例を示す。細菌として大腸菌と、真菌はC.albicansを用いる。それ以外の点は実施例1と同じである。真菌は血球細胞よりも小さく、細菌よりも大きい。電気泳動速度も細菌よりは遅く、血球細胞よりも早い。
【0075】
実施例1と同様に、TAEバッファに培養した真菌(C.albicans)と大腸菌(E.coli)を懸濁する。細胞の濃度は、例えばそれぞれ10^4/ml程度とする。あらかじめTAEバッファを充填した装置に上記細胞溶液を流入口から投入して、チャンバー内部のTAEバッファを流出口から排出させる。細胞がチャンバー中広範囲に拡散しないように流速を制御する。
【0076】
その後も実施例1と同様に、投入した細胞をそろえるために100kHzの超音波を両端の素子から位相を揃えて発振する。超音波照射によってチャンバー内には定常波が形成され、その節は7.5mm間隔で6つ出来る。投入された細胞は流入口付近の端に形成される節に捕捉される。十分に捕捉された段階で超音波照射を停止する。
【0077】
次に電極間に45Vの電圧を印加する。各細胞は陽極側に泳動される。真菌よりも大腸菌の方が早く泳動され、約140秒で大腸菌は約4mm泳動し、真菌は約2.5mm泳動する。この時点で電圧の印加を停止し、再度100kHzの超音波を40秒程度照射する。定常波の腹の中心は節から3.75mmの位置であるので、節からそれ以上進んでいる粒子は次の節に移動する。一方で3.75mm以上進まなかった粒子は元の節に戻る。よって、真菌は元の節に戻り、大腸菌は第二の節に移動する。
【0078】
同様に、電圧の印加と超音波照射を4回繰り返す。このようにして、最終的に真菌は負電極側の節の位置に捕集され、大腸菌は一番陽極側の節に捕集される。流出口から溶液を順次回収することによって、大腸菌と真菌を15分程度で分離することが可能となる。
【0079】
(実施例3)
次に実施例1と同様の装置を用いて、2種類の血球細胞を分離する例を示す。白血球細胞として、K562とHL60を用いた以外は実施例1と同じである。
【0080】
実施例1と同様に、TAEバッファに培養したK562とHL60を懸濁する。細胞の濃度は、例えばそれぞれ10^4/ml程度とする。あらかじめTAEバッファを充填した装置に上記細胞溶液を流入口から投入して、チャンバー内部のTAEバッファを流出口から排出させる。細胞がチャンバー中広範囲に拡散しないように流速を制御する。
【0081】
その後も実施例1と同様に、投入した細胞をそろえるために100kHzの超音波を両端の素子から位相を揃えて発振する。超音波照射によってチャンバー内には定常波が形成され、その節は7.5mm間隔で6つ出来る。投入された細胞は流入口付近の端に形成される節に捕捉される。十分に捕捉された段階で超音波照射を停止する。
【0082】
次に電極間に45Vの電圧を印加する。各細胞は陽極側に泳動される。約250秒泳動することによって、K562は2.5mm泳動され、HL60は3.9mm泳動される。この時点で電圧の印加を停止し、再度100kHzの超音波を40秒程度照射する。定常波の腹の中心は節から3.75mmの位置であるので、節からそれ以上進んでいる粒子は次の節に移動する。一方で3.75mm以上進まなかった粒子は元の節に戻る。よって、K562は元の節に戻り、HL60は第二の節に移動する。
【0083】
同様に、電圧の印加と超音波照射を4回繰り返す。このようにして、最終的にK562は負電極側の節の位置に捕集され、HL60は一番陽極側の節に捕集される。流出口から溶液を順次回収することによって、K562とHL60を25分程度で分離することが可能となる。
【0084】
このように、本発明の粒子分離方法を用いると、表面電荷に応じて高速に精度良く分離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施に好適な装置例を示す模式図である。
【図2】本発明の実施に好適な装置例の断面図である。
【図3】本発明に係る粒子の分離方法の一例を示す模式図である。
【図4】本発明に係る粒子の分離方法の一例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る粒子の分離方法の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0086】
101、201、301、401、501 チャンバー
102 外壁
103、203、303、403、503 超音波発振素子
104、204、304、404、504 電極1
105、205、305、405、505 電極2
106、206、306、406、506 超音波発振素子
107、207、307、407 流入口
108、208、308、408 流出口
309、409、509 粒子1
310、410、510 粒子2
311、312 定常波の節
413、414、415、416 定常波の節
517、518、519、520、521、522、523 定常波の節

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に存在する少なくとも2種の粒子を電気泳動力と超音波の輻射圧を利用して分離する方法であって、
前記電気泳動力により前記粒子間に泳動差を設け、
前記超音波により、少なくとも2つの節を有し、かつ前記泳動差を広げるような定常波を発生させることを特徴とする粒子の分離方法。
【請求項2】
前記電気泳動力により泳動差を設けた粒子の間に、前記定常波の腹が形成されるように前記定常波を発生させることを特徴とする請求項1に記載の粒子の分離方法。
【請求項3】
前記電気泳動力を発生させている際には前記定常波は発生させず、
前記定常波を発生させている際には前記電気泳動力は発生させないことを特徴とする請求項1又は2に記載の粒子の分離方法。
【請求項4】
前記電気泳動力を発生させる電界の向きと前記超音波が進行する向きとが平行であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の粒子の分離方法。
【請求項5】
前記超音波により前記泳動差を広げた後、前記超音波と異なる周波数の定常波を発生させ、泳動差をさらに広げることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の粒子の分離方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の粒子の分離方法を複数回繰り返し、前記泳動差を広げることを特徴とする粒子の分離方法。
【請求項7】
前記複数回繰り返して行う際に、超音波の周波数が異なることを特徴とする請求項6に記載の粒子の分離方法。
【請求項8】
前記試料をチャンバー内に流入口から投入する際に、超音波により定常波を発生させておき、前記粒子を前記流入口近傍の節に捕捉することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の粒子の分離方法。
【請求項9】
前記粒子は、細胞又は微生物であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の粒子の分離方法。
【請求項10】
前記電界は、前記チャンバーの両側面に配置された対向する電極により発生されること特徴とする請求項8又は9に記載の粒子の分離方法。
【請求項11】
前記定常波は、前記チャンバーの両側面に配置された対向する超音波発生手段により発生されること特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の粒子の分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−288060(P2009−288060A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140763(P2008−140763)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】