説明

粒子濃度検出装置

【課題】検出面の汚れをより好適に軽減することのできる粒子濃度検出装置を提供する。
【解決手段】この粒子濃度検出装置は、発光部20から液体に向けて照射された光の透過光量を受光部30で検出する検出機構10を備えており、検出機構10で検出された透過光量に基づいて液体中の粒子濃度を検出する。検出機構10に、発光部20の発光面側に設けられた第1導光体23と、受光部30の受光面側に設けられた第2導光体33と、第1導光体23及び第2導光体33の間に形成されて液体が流入する液室40と、液室40内に設けられて第1導光体23及び第2導光体33に対向するとともに液室40内で揺動する第3導光体50とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体に混入した粒子の濃度を検出する粒子濃度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば機関の潤滑油に混入した煤の濃度などといった液体中の粒子濃度を、その液体の光透過特性、具体的には同液体を透過する透過光の光量に基づいて検出する装置が知られている。この装置では、発光部から液体に向けて光を照射し、同液体を透過する透過光の光量が受光部で検出される。発光部から照射された光の一部は、液体に混入した粒子によって吸収・散乱されるため、受光部で検出される透過光量は液中粒子の量に応じたものとなる。従って、その透過光量に基づいて粒子濃度を検出することができる。
【0003】
ここで、発光部や受光部などを備える検出機構において、検出対象の液体が接触する検出面に汚れが付着すると、検出される光量が減少して粒子濃度の検出精度が低下してしまう。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に記載の装置では、内燃機関のオイルパン内に上記検出機構を設けるとともに、液面に浮動するフロートを同検出機構に設け、当該フロートの上下動を利用して検出機構の検出面を洗浄するようにしている。
【特許文献1】特開平8−86751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の装置では、機関始動前と機関始動後とでオイルの液面の高さが変化することを利用してフロートを上下動させるようにしている。この場合には、オイルパン内のオイル量が減少してくるとフロートの上下動範囲が狭くなり、洗浄される検出面の範囲も自ずと狭くなってしまう。こうしたオイル量減少時の不具合を解消するためには、オイル量が減少したときの液面に合わせてフロートの取り付け位置を決定するといった対策が考えられる。しかし、こうした対策を行うと、オイル量が十分にあるときには、機関始動後においてもフロートがオイルに浸漬された状態になりやすく、常に上方に浮遊した状態になるため、同フロートの上下動が困難になるという新たな不具合が発生してしまう。
【0006】
このように従来の装置では、検出面の汚れを適切に軽減することができないときがあり、この点において更なる改良の余地を残すものとなっている。
この発明はこうした事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、検出面の汚れをより好適に軽減することのできる粒子濃度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、発光部から液体に向けて照射された光の透過光量を受光部で検出する検出機構を備え、同検出機構で検出された前記透過光量に基づいて前記液体中の粒子濃度を検出する粒子濃度検出装置において、
前記検出機構は、前記発光部の発光面側に設けられた第1の光透過部と、前記受光部の受光面側に設けられた第2の光透過部と、前記第1の光透過部及び前記第2の光透過部の間に形成されて前記液体が流入する液室と、前記液室内に設けられて前記第1の光透過部及び前記第2の光透過部に対向するとともに同液室内で揺動する第3の光透過部とを備えることをその要旨とする。
【0008】
同構成では、第1の光透過部及び前記第2の光透過部に対向するとともに液室内で揺動する第3の光透過部を同液室内に設けるようにしている。これにより、第1の光透過部と第3の光透過部との間の間隙や、第2の光透過部と第3の光透過部との間の間隙が、上記液室において液体が流入する流路となり、この流路を流れる液体の透過光量が受光部で検出される。そして、同構成においては、第1の光透過部及び第3の光透過部の各対向面、並びに第2の光透過部及び第3の光透過部の各対向面がそれぞれ、検出対象の液体が接触する検出面となる。
【0009】
ここで、第3の光透過部は、検出対象である液体が流入する液室内に設けられており、上記検出機構を検出対象の液体中に浸漬させることにより、液室に液体が出入りすると同第3の光透過部は揺動される。そして、第3の光透過部と第1の光透過部とが接触した状態で同第3の光透過部が揺動すると、第1の光透過部及び第3の光透過部の各検出面が摺動されることにより、それら各検出面の汚れが掻き落とされる。同様に、第3の光透過部と第2の光透過部とが接触した状態で同第3の光透過部が揺動すると、第2の光透過部及び第3の光透過部の各検出面が摺動されることにより、それら各検出面の汚れが掻き落とされる。こうした第3の光透過部の揺動による検出面の浄化作用によって、検出機構において液体が接触する検出面の汚れが軽減され、そうした汚れの付着に起因する粒子濃度の検出精度低下を抑制することができる。
【0010】
さらに、液面とフロートとの位置関係を考慮して検出機構を取り付ける必要のある上記従来の装置に対し、同構成の検出機構は、液中であれば任意の場所に取り付けることが可能であり、その取り付け位置の自由度は高くなっている。そのため例えば液体が貯留された容器の底面近傍に検出機構を設けることも可能であり、このように底面近傍に検出機構を設けることで、容器内の液量がある程度減少しても、第3の光透過部は揺動可能な状態に維持される。従って、同構成によれば、各検出面の汚れをより好適に軽減することができるようになる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の粒子濃度検出装置において、前記第3の光透過部は、前記発光部から発せられる光の光路方向に並設された複数の光透過部で構成されることをその要旨とする。
【0012】
発光部から発せられる光の光路方向に対して第3の光透過部が傾斜している場合には、発光部から発光された光は、第3の光透過部の入射面で屈折された後、第3の光透過部内を進行し、同第3の光透過部から出射されるときに出射面で再度屈折されてから受光部の方向に進行する。このように第3の光透過部が傾斜している場合には、入射面と出射面とで光路がずれるようになり、こうしたずれが大きくなると受光部の受光量が変化してしまう。ここで、第3の光透過部の傾斜角が大きいほど、あるいは同第3の光透過部にあって光の進行方向における厚みが大きいほど、光路のずれ量は大きくなる。
【0013】
この点、同構成では、第3の光透過部が、発光部から発せられる光の光路方向に並設された複数の光透過部で構成されており、これにより個々の光透過部の厚みを、第3の光透過部を単体で構成する場合と比較して小さくすることができる。また、個々の光透過部は互いに独立して傾斜することができる。従って、単体で構成された第3の光透過部と、同構成によるように第3の光透過部を構成する1つの光透過部とが、同一の傾斜角で傾いた場合の光路のずれ量を比較すると、第3の光透過部を構成する1つの光透過部の厚みは、単体で構成された第3の光透過部の厚みと比較して小さいため、第3の光透過部を構成する1つの光透過部の方が光路のずれ量は小さくなる。従って、同構成によれば、第3の光透過部が傾いたときの光路のずれ量を極力小さくすることができ、これにより第3の光透過部の傾斜が受光部の受光量に与える影響を極力抑えることができるようになる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の粒子濃度検出装置において、前記検出機構は、前記液体が貯留された貯留部の底面に固定されることをその要旨とする。
同構成によれば、貯留部が傾斜した場合でも、上記検出機構を可能な限り液中に浸漬させておくことができるようになり、そうした傾斜時においても、上記第3の光透過部による上記浄化作用を得ることができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の粒子濃度検出装置において、前記検出機構は、前記液体が貯留された貯留部の液中にステーを介して設けられることをその要旨とする。
【0016】
同構成によっても、貯留部が傾斜した場合に、上記検出機構を可能な限り液中に浸漬させておくことができるようになり、そうした傾斜時に場合においても、上記第3の光透過部による上記浄化作用を得ることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子濃度検出装置において、前記検出機構は、内燃機関のオイルパンに取り付けられることをその要旨とする。
同構成によれば、内燃機関の潤滑油中の粒子濃度を検出することができる。また、上記第3の光透過部を、機関振動によって揺動させることも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、この発明にかかる粒子濃度検出装置を具体化した第1実施形態について、図1〜図4を併せ参照して説明する。
【0019】
図1に、本実施形態における粒子濃度検出装置の構成を示す。この粒子濃度検出装置は、内燃機関の潤滑油を検査対象液とし、その潤滑油の透過光量に基づいて当該潤滑油に混入した粒子(例えば煤等)の濃度を検出するようにしている。
【0020】
この図1に示すように、この粒子濃度検出装置は、検出機構10や演算部60等で構成されている。
上記検出機構10は、内燃機関のオイルパン100にあってその内側の底面に取り付けられている。なお、本実施形態では、同オイルパン100が上記貯留部を構成している。また、オイルパン100の底面にあってその外側には、上記検出機構10を固定するハウジング14が設けられている。そして、検出機構10から出力される検出信号は、上記演算部60で演算処理される。
【0021】
図2に、検出機構10の断面図を示す。同図2に示すように、検出機構10の本体を構成するホルダ11は、その外形が略角柱形状とされている。
このホルダ11の一方端にあってその内部には、光を発する発光部20が発光部用ホルダ21を介して固定されており、同発光部20の発光面の反対側には、発光部20の入力端子を固定するとともに同発光部20が潤滑油に浸されることを防止する発光部用キャップ22が設けられている。この発光部用キャップ22に設けられて、発光部20の入力端子に接続された信号線24は、上記ハウジング14を介して上記演算部60に接続されている。
【0022】
また、ホルダ11の他方端にあってその内部には、発光部20からの光を受光する受光部30が同発光部20に対向して設けられている。この受光部30も受光部用ホルダ31を介してホルダ11内に固定されている。また、受光部30の受光面の反対側には、同受光部30の出力端子を固定するとともに同受光部30が潤滑油に浸されることを防止する受光部用キャップ32が設けられている。この受光部用キャップ32に設けられて、受光部30の出力端子に接続された信号線34も、上記ハウジング14を介して上記演算部60に接続されている。
【0023】
上記発光部20には、波長が670nmの可視光を発する可視光素子と、波長が890nmの赤外光を発する赤外光素子とが設けられている。なお、本実施形態では、それら各素子として、LED(発光ダイオード)が用いられている。
【0024】
上記受光部30には、上記可視光素子から発せられた光の光量や上記赤外光素子から発せられた光の光量に応じた信号を出力する受光素子が設けられている。なお、本実施形態では、その受光素子として、受光量が増大するほど出力電圧が高くなるフォトダイオードを用いるようにしている。
【0025】
上記発光部20の発光面側には、ホルダ11に固定された第1導光体23が設けられており、上記受光部30の受光面側には、ホルダ11に固定された第2導光体33が設けられている。これら第1導光体23及び第2導光体33は、光の減衰率が小さい材質、例えば石英ガラス等の光透過部材で形成されている。なお、第1導光体23は上記第1の光透過部を、第2導光体33は上記第2の光透過部をそれぞれ構成している。
【0026】
ホルダ11内において、第1導光体23と第2導光体33との間には四角形状の空間で構成された液室40が形成されており、その液室40とホルダ11の外部とは、ホルダ11に形成された穴12、13を介して連通されている。そのため、ホルダ11の外部に存在する潤滑油は、穴12、13を介して液室40内に出入りし、同液室40内は潤滑油で満たされる。
【0027】
液室40内には、上記第1導光体23及び上記第2導光体33に対向する第3導光体50が設けられている。この第3導光体50は、角柱形状をなしており、上記第1導光体23と同一の材質で形成されている。また、第3導光体50は、液室40内において揺動することができるように、その外形形状が同液室40の形状よりもやや小さくされている。なお、この第3導光体50は上記第3の光透過部を構成している。
【0028】
液室40内においては、第1導光体23と第3導光体50との間の間隙や、第2導光体33と第3導光体50との間の間隙が、潤滑油の流入する流路41となり、この流路41を流れる潤滑油の透過光量が受光部30で検出される。このように構成される検出機構10においては、第1導光体23及び第3導光体50の各対向面、並びに第2導光体33及び第3導光体50の各対向面はそれぞれ、検出対象の潤滑油が接触する検出面となっている。すなわち、第1導光体23において第3導光体50に対向する面が第1検出面23aに、第3導光体50において第1導光体23に対向する面が第2検出面50aに、第3導光体50において第2導光体33に対向する面が第3検出面50bに、第2導光体33において第3導光体50に対向する面が第4検出面33aになっている。
【0029】
上記演算部60は、中央処理制御装置(CPU)、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)、入力インターフェース、出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータを中心として構成されている。この演算部60には、検出機構10の受光部30からの出力信号が入力され、その出力信号が演算処理されることにより潤滑油の粒子濃度が算出される。
【0030】
次に、演算部60によって行われる潤滑油の粒子濃度Cの算出について、図3を併せ参照して説明する。
一般に、内燃機関の潤滑油の場合、その劣化に伴って油中に混入する粒子の成分としては、カルボニル基、ニトロ基、ベンゼン核、硫酸塩、煤、摩耗粉などがある。こうした粒子の成分比は、潤滑油の種類、内燃機関の種類、機関の運転状態、あるいは潤滑油の劣化進行状態等によって変化する。ちなみに、カルボニル基やニトロ基は茶褐色であり、ベンゼン核、硫酸塩、煤、摩耗粉は黒色であるため、そうした粒子の成分比が異なると、潤滑油の色も異なるようになる。
【0031】
潤滑油に入射された光は、スラッジ前駆体等といった液中の粒子に当たることなくそのまま液中を透過したり、同粒子に当たって多重散乱されながら液中を透過したりする。可視光は多重散乱される際、粒子の色によって吸収される性質がある一方、赤外光はそうした多重散乱の際に吸収されない性質がある。
【0032】
図3に、粒子濃度はほぼ同一であって、粒子の成分比が異なる2種類の劣化油について、それら透過率の波長特性を示す。なお、透過率とは、発光部の発光量と受光部の受光量との比(受光部の受光量/発光部の発光量×100(%))で定義される値であり、粒子濃度が高くなるほどその値は小さくなる。同図3に示されるように、粒子濃度がほぼ同一である劣化油A及び劣化油Bについて、可視光域では劣化油Aの透過率が劣化油Bの透過率よりも小さくなっている。一方、赤外光域では劣化油Aの透過率が劣化油Bの透過率よりも大きくなっており、検査光の波長によって透過率の大小関係は変化することがわかる。劣化油Aは劣化油Bに比べて可視光域の透過率が小さくなっていることから、吸光成分となる粒子、例えば黒色の粒子が多いと考えられる。
【0033】
このように潤滑油中の粒子の成分比は、潤滑油内での光の散乱量や吸収量に影響を与える。従って、潤滑油に含まれる粒子の量が同じ、すなわち粒子濃度が同じであっても同粒子の成分比が異なっていれば透過光量は変化してしまう。そのため、透過光量に基づく粒子濃度の検出は、遠心分離法等による粒子濃度の測定方法と比較して、より簡易な態様で粒子濃度を検出することができるものの、そうした粒子の成分比の影響を受けやすく、検出精度の点では劣ってしまうといった問題がある。そこで、本実施形態では、上記発光部20から発光される異なる波長の光を用いて、各波長における潤滑油の透過光量を検出し、それら各透過光量に基づいて算出される各波長での光の透過率を利用して粒子濃度を検出することにより、液中粒子の成分比に起因する粒子濃度の検出誤差を抑えるようにしている。
【0034】
まず、発光部20の可視光素子を発光させたときの透過率である可視光透過率T1、及び発光部20の赤外光素子を発光させたときの透過率である赤外光透過率T2が、次式(1)及び(2)に基づいてそれぞれ算出される。
【0035】

可視光透過率T1=可視光透過量I1/可視光発光量Io1×100(%) …(1)

赤外光透過率T2=赤外光透過量I2/赤外光発光量Io2×100(%) …(2)

上記可視光透過量I1は、潤滑油を透過した可視光の光量であり、受光部30にて検出される。また、可視光発光量Io1は、発光部20の可視光素子の発光量であり、予め設定された値である。同様に、赤外光透過量I2は、潤滑油を透過した赤外光の光量であり、受光部30にて検出される。また、赤外光発光量Io2は、発光部20の赤外光素子の発光量であり、予め設定された値である。
【0036】
次に、ランベルト・ベールの法則を用いて、液体の透過率を光の吸収項と散乱項とで表すと、次式(3)のようになる。

Ln(1/T)={ε(λ)×C×L}+{G(λ)×C×L} …(3)
Ln:自然対数
T:液体の透過率
ε(λ):光の波長λにおける粒子の吸光係数
G(λ):光の波長λにおける粒子の減光係数
C:粒子濃度
L:光路長

なお、式3において、「{ε(λ)×C×L}」の項は吸収項であり、「{G(λ)×C×L}」の項は散乱項である。
【0037】
可視光素子から潤滑油に向けて照射される可視光は、散乱成分、吸収成分、及び透過成分に分類される。従って、上記可視光透過率T1は、上記式(3)に基づき、次式(4)のように表すことができる。
【0038】

Ln(1/T1)={ε(670)×C×L}+{G(670)×C×L} …(4)
T1:潤滑油に波長670nmの光を照射したときの透過率
(=可視光透過量I1/可視光発光量Io1×100)
ε(670):光の波長670nmにおける粒子の吸光係数
G(670):光の波長670nmにおける粒子の減光係数

一方、赤外光素子から潤滑油に向けて照射される赤外光は、散乱成分及び透過成分に分類される。従って、上記赤外光透過率T2は、上記式(3)に基づき、次式(5)のように表すことができる。
【0039】

Ln(1/T2)=G(890)×C×L …(5)
T2:潤滑油に波長890nmの光を照射したときの透過率
(=赤外光透過量I2/赤外光発光量Io2×100)
G(890):光の波長890nmにおける粒子の減光係数

次に、上記式(4)と式(5)との差を求め、粒子濃度Cについてまとめると次式(6)のようになる。
【0040】
【数1】

この式(6)に示されるように、粒子濃度Cは、可視光透過率T1と赤外光透過率T2との比の対数に基づいて算出され、これにより、液中粒子の成分比に起因する粒子濃度Cの検出誤差が抑えられる。
【0041】
ところで、検出機構10では、第1導光体23や第2導光体33、あるいは第3導光体50に潤滑油が接触する。そうした第1導光体23の上記第1検出面23aや、第2導光体33の上記第4検出面33a、或いは第3導光体50の上記第2検出面50a及び第3検出面50bなどに、汚れ(潤滑油中の粒子成分など)が付着すると、上記可視光透過量I1や赤外光透過量I2が減少して粒子濃度Cの検出精度が低下してしまう。この点、本実施形態における検出機構10では、上記第3導光体50が上述したような態様で設けられており、これにより各検出面に対する汚れの付着が軽減される。
【0042】
すなわち、上記第3導光体50は、潤滑油が流入する液室40内において揺動可能に設けられている。そして、上記検出機構10は、潤滑油中に浸漬されており、液室40に潤滑油が出入りしたり、内燃機関の振動がオイルパン100を介して伝達されたりすることで、同第3導光体50は揺動される。
【0043】
そして、図4(a)に示すように、第3導光体50と第1導光体23とが接触した状態で同第3導光体50が揺動すると、第1導光体23の第1検出面23aと第3導光体50の第2検出面50aとが摺動されることにより、それら第1検出面23aや第2検出面50aに付着した汚れが掻き落とされる。
【0044】
同様に、図4(b)に示すように、第3導光体50と第2導光体33とが接触した状態で同第3導光体50が揺動すると、第3導光体50の第3検出面50bと第2導光体33の第4検出面33aとが摺動されることにより、それら第3検出面50bや第4検出面33aに付着した汚れが掻き落とされる。
【0045】
こうした第3導光体50の揺動による各検出面の浄化作用によって、検出機構10において潤滑油が接触する第1〜第4検出面23a、50a、50b、33aの汚れが軽減され、そうした汚れの付着に起因する粒子濃度Cの検出精度低下が抑制される。
【0046】
また、前述した従来の装置では、液面とフロートとの位置関係を考慮して検出機構を取り付ける必要があるが、本実施形態の上記検出機構10は、潤滑油中であれば任意の場所に取り付けることが可能であり、その取り付け位置の自由度は高くなっている。そのため、上述したように、潤滑油が貯留された上記オイルパン100の底面に検出機構10を設けることも可能であり、このようにオイルパン100の底面に検出機構10を設けることで、オイルパン100内の潤滑油量がある程度減少しても、第3導光体50は液室40内において揺動可能な状態に維持される。従って、潤滑油が接触する各検出面(第1〜第4検出面23a、50a、50b、33a)の汚れを、従来の装置よりも軽減することができる。
【0047】
さらに、オイルパン100の底面に検出機構10を固定するようにしているため、オイルパン100が傾斜して油面が傾いた場合でも、同検出機構10を可能限り潤滑油中に浸漬させておくことができる。そのため、オイルパン100が傾斜したときでも、第3導光体50による上記浄化作用を得ることができる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)検出機構10に、発光部20の発光面側に設けられた第1導光体23と、受光部30の受光面側に設けられた第2導光体33と、第1導光体23及び第2導光体33の間に形成されて潤滑油が流入する液室40とを設けるようにしている。さらに、液室40内に設けられて第1導光体23及び第2導光体33に対向するとともに同液室40内で揺動する第3導光体50も設けるようにしている。これにより、第3導光体50が、液室40内に出入りする潤滑油や機関振動によって揺動されると、第1導光体23の第1検出面23aと第3導光体50の第2検出面50aとが摺動されて、それら各検出面の汚れが掻き落とされる。同様に、第2導光体33の第4検出面33aと第3導光体50の第3検出面50bとが摺動されて、それら各検出面の汚れが掻き落とされる。こうした第3導光体50の揺動による各検出面の浄化作用によって、検出機構10において潤滑油が接触する第1〜第4検出面23a、50a、50b、33aの汚れが軽減され、そうした汚れの付着に起因する粒子濃度Cの検出精度低下を抑制することができるようになる。
【0049】
さらに、液面とフロートとの位置関係を考慮して検出機構を取り付ける必要のある上記従来の装置に対し、本実施形態の検出機構10は、潤滑油中であれば任意の場所に取り付けることが可能であり、その取り付け位置の自由度は高くなっている。そのため潤滑油が貯留されたオイルパン100の底面近傍に検出機構を設けることも可能であり、実際にオイルパン100の底面に検出機構10を設けることで、オイルパン100内の潤滑油量がある程度減少しても、第3導光体50は揺動可能な状態に維持される。従って、第1〜第4検出面23a、50a、50b、33aの汚れをより好適に軽減することができるようになる。
【0050】
(2)上記検出機構10を、潤滑油が貯留されたオイルパン100の底面に固定するようにしている。これによりオイルパン100が傾斜した場合でも、上記検出機構10を可能な限り潤滑油中に浸漬させておくことができるようになり、そうした傾斜時においても、上記第3導光体50による上記浄化作用を得ることができる。
【0051】
(3)上記検出機構10を、内燃機関のオイルパン100に取り付けるようにしている。そのため、内燃機関の潤滑油中の粒子濃度を検出することができる。また、第3導光体50を機関振動によって揺動させることも可能になる。
(第2実施形態)
次に、本発明にかかる粒子濃度検出装置を具体化した第2実施形態について、図5〜図7を併せ参照して説明する。
【0052】
第1実施形態では、第3導光体50が単体で構成されていた。一方、本実施形態における第3導光体80は、図5に示すように、上記第3導光体50が、発光部20から発せられる光の光路方向に分割された複数の導光体、より詳細には発光部20から発せられる光の光路方向に並設された複数の導光体81で構成されている。この導光体81も、第1実施形態の第3導光体50と同一の材質で形成されており、その形状は角柱形状とされている。また、上記第3導光体50と同様に、液室40内において揺動することができるように、その外形形状は液室40の形状よりも小さくされている。
【0053】
このように上記第3導光体80を分割体で構成することにより、次の作用効果が得られる。
すなわち、図6に二点鎖線にて示すように、発光部20から受光部30に向けて発せられる光の光路方向に対し、第3導光体50が傾斜しておらず、光の進行方向に対して第2検出面50a及び第3検出面50bがともに直交している場合には、発光部20から発光された光は、第3導光体50の透過時に屈折されることなく受光部30に到達する。
【0054】
一方、同図6に実線にて示すように、発光部20から受光部30に向けて発せられる光の光路方向に対し、第3導光体50が傾斜している場合には、発光部20から発光された光は、潤滑油と第3導光体50との境界面(第2検出面50a)で屈折された後、第3導光体50内を透過する。そして、第3導光体50から潤滑油中に出るときにも、第3導光体50と潤滑油との境界面(第3検出面50b)で再度屈折されて受光部30の方向に進行する。
【0055】
このように第3導光体50が傾斜している場合には、同第3導光体50にあって光が入射する点(図6に示すin点)と光が出る点(図6に示すout点)とで光路がずれるようになり、こうしたずれが大きくなると受光部30の受光量(透過光量)が変化してしまう。こうした光路のずれ量Zは、次式(7)で示される。
【0056】

ずれ量Z=導光体内の光路長L・sinα …(7)

なお、導光体内の光路長Lとは、上記in点とout点との2点間距離のことであり、例えば第3導光体50にあっては、その内部を透過する光の透過距離のことである。また、「α」とは、第2検出面50aで屈折されることなく第3導光体50内を透過する光の進行方向を基準に、同第2検出面50aで屈折された光の屈曲角を示す値である。また、この屈曲角αは、第3導光体50の傾斜角にも一致する。
【0057】
上記式(7)に示されるように、第3導光体50の傾斜角αが大きいほど、ずれ量Zは大きくなる。また、第3導光体50内の光路長Lが長いほど、ずれ量Zは大きくなる。ここで、第3導光体50内の光路長Lは、同第3導光体50にあって光の進行方向における厚みが大きいほど、長くなるため、そうした厚みが大きくなるほど、ずれ量Zは大きくなる。
【0058】
この点、本実施形態では、第3導光体80を複数の導光体81で構成するようにしており、これにより個々の導光体81の厚みを、単体で構成された上記第3導光体50と比較して小さくすることができる。また、個々の導光体81は互いに独立して傾斜可能である。従って、単体で構成された上記第3導光体50と、本実施形態において第3導光体80を構成する1つの導光体81とが、例えば同一の傾斜角で傾いた場合の光路のずれ量Zを比較すると、次のようになる、
すなわち、図7や先の図5に示すように、第3導光体80を構成する個々の導光体81の厚みは、単体で構成された第3導光体50の厚みと比較して小さいため、導光体内の上記光路長L(in点とout点との2点間距離)も短くなる。従って、上記式(7)からも分かるように、第3導光体80を構成する1つの導光体81の方が光路のずれ量Zは小さくなる。
【0059】
従って、本実施形態によれば、第3導光体80を構成する導光体81が傾いたときの光路のずれ量Zを極力小さくすることができ、これにより第3導光体80の傾斜が受光部30の受光量に与える影響を極力抑えることができるようになる。
【0060】
ちなみに、本実施形態において第3導光体80を構成する各導光体81も液室40内を揺動可能であり、これにより上記第1実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
なお、上記各実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
【0061】
・検出機構10をオイルパン100の底面に固定するようにしたが、オイルパン100の潤滑油中にステーを介して設けるようにしてもよい。例えば図8に示すように、一端がオイルパン100の側面に固定されており、他端が同オイルパン100の底面近傍に浸漬されたステー200を設け、このステー200の上記他端に検出機構10を固定するようにしてもよい。この変形例においても、オイルパン100が傾斜した場合、上記検出機構10を可能な限り潤滑油中に浸漬させておくことができるようになり、そうした傾斜時においても、上記第3導光体50による上記浄化作用を得ることができる。なお、この変形例においては、機関振動がステー200で増大されて検出機構10に伝達されることにより、第3導光体はさらに揺動されやすくなり、上記浄化作用が向上するようになる。
【0062】
・第1実施形態では2つの異なる波長の光を用いるようにしたが、3つ以上の異なる波長の光を用いるようにしてもよい。この場合には、例えば次のような態様で粒子濃度を検出することもできる。まず、A、B、及びCといった3つの波長の光を用いてそれぞれの波長における透過光量を計測し、その計測される各透過光量から各波長毎の透過率を求める。そして、第1実施形態と同様な態様にて、A及びBの波長の光に対応する透過率の比から粒子濃度C1を求めるとともに、A及びCの波長の光に対応する透過率の比から粒子濃度C2を求める。そして、粒子濃度C1及び粒子濃度C2の平均値を最終的な粒子濃度Cとするようにしてもよい。
【0063】
・波長が670nmの可視光及び波長が890nmの赤外光を発光部20から発光させるようにしたが、第1実施形態で説明した検出態様にて粒子濃度を検出する際に、液中粒子の成分比に起因する検出誤差を抑えることができるのであれば、他の波長の光を用いるようにしてもよい。
【0064】
・1つの発光部20内に可視光素子と赤外光素子とを設けるようにしたが、可視光素子を備える発光部と赤外光素子を備える発光部とを設け、各発光部からの光を上記受光部30で受光するようにしてもよい。また、可視光素子を備える可視光発光部と同可視光発光部からの光を受光する可視光受光部、並びに赤外光素子を備える赤外光発光部と同赤外光発光部からの光を受光する赤外光受光部とをそれぞれ設けるようにしてもよい。
【0065】
・異なる波長の光を発光部20から発光させ、上記式(6)に基づいて粒子濃度Cを検出するようにした。この他、1種類の光を発光部20から発光させ、その光の透過率に基づいて粒子濃度Cを検出するようにしてもよい。この場合には、液中粒子の成分比に起因する粒子濃度Cの検出誤差を抑えることはできないが、より簡易な態様で粒子濃度Cを検出することができるようになる。
【0066】
・第3導光体50や導光体81の形状は角柱形状に限られるものではなく、その形状は適宜変更することができる。
・上記実施形態では内燃機関の潤滑油の粒子濃度を検出するようにしたが、他の液体の粒子濃度を検出する検出装置にも本発明は同様に適用することができる。
【0067】
・検出機構10を内燃機関のオイルパン100に設けるようにしたが、この他、液中の粒子濃度を検出する試験装置に同検出機構10を設けるようにしてもよい。この場合でも、貯留部に貯留された検出対象液に検出機構10を浸漬させて、同検出対象液を流動させることにより第3導光体を揺動させることができ、上記浄化作用を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の粒子濃度検出装置についてその第1実施形態における構成を示す概略図。
【図2】同実施形態における検出機構の断面図。
【図3】粒子の成分比が異なる2種類の劣化油について、それら透過率の波長特性を示すグラフ。
【図4】(a)は、第1導光体及び第3導光体の各検出面の浄化態様を示す断面図。(b)は、第2導光体及び第3導光体の各検出面の浄化態様を示す断面図。
【図5】第2実施形態における検出機構の断面図。
【図6】第1実施形態の第3導光体が傾斜したときの光路のずれを示す模式図。
【図7】第2実施形態の第3導光体が傾斜したときの光路のずれを示す模式図。
【図8】第1実施形態の変形例における粒子濃度検出装置の構成を示す概略図。
【符号の説明】
【0069】
10…検出機構、11…ホルダ、12、13…穴、14…ハウジング、20…発光部、21…発光部用ホルダ、22…発光部用キャップ、23…第1導光体、23a…第1検出面、24…信号線、30…受光部、31…受光部用ホルダ、32…受光部用キャップ、33…第2導光体、33a…第4検出面、34…信号線、40…液室、41…流路、50…第3導光体、50a…第2検出面、50b…第3検出面、60…演算部、80…第3導光体、81…導光体、100…オイルパン、200…ステー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部から液体に向けて照射された光の透過光量を受光部で検出する検出機構を備え、同検出機構で検出された前記透過光量に基づいて前記液体中の粒子濃度を検出する粒子濃度検出装置において、
前記検出機構は、前記発光部の発光面側に設けられた第1の光透過部と、前記受光部の受光面側に設けられた第2の光透過部と、前記第1の光透過部及び前記第2の光透過部の間に形成されて前記液体が流入する液室と、前記液室内に設けられて前記第1の光透過部及び前記第2の光透過部に対向するとともに同液室内で揺動する第3の光透過部とを備える
ことを特徴とする粒子濃度検出装置。
【請求項2】
前記第3の光透過部は、前記発光部から発せられる光の光路方向に並設された複数の光透過部で構成される
請求項1に記載の粒子濃度検出装置。
【請求項3】
前記検出機構は、前記液体が貯留された貯留部の底面に固定される
請求項1または2に記載の粒子濃度検出装置。
【請求項4】
前記検出機構は、前記液体が貯留された貯留部の液中にステーを介して設けられる
請求項1または2に記載の粒子濃度検出装置。
【請求項5】
前記検出機構は、内燃機関のオイルパンに取り付けられる
請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子濃度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−25192(P2009−25192A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189584(P2007−189584)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】