説明

粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法

【課題】粒子状燃料電池用燃料の充填率を向上させるとともに、供給量の安定化の図れる粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法を提供する。
【解決手段】粒子状燃料電池用燃料は、燃料容器3中において、平均粒径が大きい方の粒子状燃料電池用燃料1間の間隙に、平均粒径が小さい方の粒子状燃料電池用燃料2が入り込むことにより、粒子状燃料電池用燃料の充填率が向上したものとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法に関し、特に粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填率を向上させるとともに、供給量の安定化を図ることのできる粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題や資源問題への対策が重要になっており、その対策の一つとして、液体燃料としての有機溶媒と水とを直接供給して発電することのできる燃料電池の開発が活発に行われている。特に、液体燃料としてメタノールを使用し、その改質・ガス化を行うことなく直接メタノールを供給して発電することのできるダイレクトメタノール形燃料電池は、構造がシンプルであり、かつ小型化・軽量化が容易であるため、携帯型小型電子機器用、コンピュータ用等のコンシューマ電源をはじめ、種々の分散型電源、可搬型電源として有望である。
【0003】
このような液体燃料を直接供給して発電する燃料電池は、プロトン導電性を有する固体高分子電解質膜からなる電解質を介して両側に正極(空気極)と負極(燃料極)とを接合した膜/電極接合体(MEA)を、正極側(空気極側)セパレータと負極側(燃料極側)セパレータとで支持したセルを複数個備えた構成を有する。この正極側(空気極側)セパレータと負極側(燃料極側)セパレータとは、正極(空気極)に酸化剤ガスを供給し、負極(燃料極)に液体燃料を供給する役割を果たすとともに、酸化剤ガスと液体燃料とから電解質を介して行われる電気化学反応によって生成される反応生成物を排出する役割も果たしている。
【0004】
このうち、メタノールを燃料とする固体高分子電解質型燃料電池は、「直接(ダイレクト)メタノール形燃料電池(DMFC)」と呼ばれ、下記の反応式により発電が行われる。
【0005】
アノード:CHOH + HO → 6H + CO + 6e …[1]
カソード:3/2O + 6H + 6e → 3HO …[2]
この反応を起こすために、両電極は、触媒物質が担持された炭素微粒子と固体高分子電解質との混合体より構成されている。
【0006】
このような直接メタノール形燃料電池において、アノードに供給されたメタノールは、電極中の細孔を通過して触媒に達し、この触媒によりメタノールが分解されて、上記反応式[1]の反応で電子と水素イオンとを生成する。水素イオンは、アノード中の電解質及び両電極間の固体電解質膜を通ってカソードに達し、カソードに供給された酸素及び外部回路より流れ込む電子と反応して、上記反応式[2]のように水を生じる。一方、メタノールより放出された電子は、アノード中の触媒担体を通って外部回路へ導き出され、外部回路よりカソードに流れ込む。この結果、外部回路ではアノードからカソードへ向かって電子が流れ電力が取り出される。
【0007】
このメタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池は、作動温度が低く、大掛りな補機が必要ないこと等から携帯用電子機器用の小型電源として有用であり、近年、携帯用コンピュータや携帯電話等の次世代二次電池として開発が活発化してきている。
【0008】
その一方で、燃料に使用するメタノールは液体であるために漏れやすく、またメタノール自体の可燃性及び毒性が懸念されており、安全に使用するための対策が課題となっている。さらに、液体燃料を使用することによる短所として、液体燃料中に溶解した不純物が燃料電池セルに供給されることによる燃料電池の性能劣化、液体燃料成分であるメタノールが燃料電池セルの電解質膜を浸透して空気極に達してしまうクロスオーバー現象等が挙げられる。特にクロスオーバーが発生すると燃料の単位容積当たりの発電効率が低下するばかりでなく、空気極での酸化過程でホルムアルデヒドやギ酸、ギ酸メチル等の有害物質が生じるため、これを解決することがDMFCの実用化の大きな課題となっている。
【0009】
近年開発が進められているDMFCシステムとしては、燃料の体積密度を向上させるために、より高濃度のメタノールを適用する方法が主流であるが、燃料濃度が高くなるほどクロスオーバーの問題はより深刻になる。そこで、セルに使用される電解質膜等の素材の改良を進めることでクロスオーバーの低減を図ることが検討されているが、いまだ十分なレベルに達しておらず、このことがDMFCの商品化への大きな障壁となっている。
【0010】
そこで、このようなメタノールの抱える安全性等の課題に対し、分子状化合物を形成することによりメタノールを固形化し、漏れにくくするとともに可燃性を大きく低減した「固体状メタノール燃料」について本出願人は種々提案した(特許文献1〜3等参照)。
【特許文献1】特開2006−040629号公報
【特許文献2】特開2005−325254号公報
【特許文献3】国際公開第2005/062410号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような固体状メタノールにより、メタノールの気化が抑制され、メタノールの引火性を抑制することができるばかりか、燃料を収容した燃料カートリッジからの燃料の漏洩の懸念も解消できる。しかしながら、この固体状メタノールから燃料となるメタノールを取り出すには、固体状メタノールに水を供給してメタノール溶液を燃料として放出する方式(水供給方式)か、固体状メタノールからメタノールを揮発させる方式(気化方式)かにより行われている。
【0012】
そして、この固体状メタノールが適用されるDMFCは、携帯電話をはじめとする携帯型電子機器への適用が盛んに検討されているが、これらの機器は小型軽量で、電源としての燃料電池の寿命が長いことが要求される。このため、燃料カートリッジについても小型で単位体積当たりの燃料密度を高くすることが望ましい。
【0013】
しかしながら、固体状メタノールは、上述した利点を有する一方で、100%の純度のメタノールを用いて固体状メタノールを製造したとしても、固体状メタノールではそれ自体のメタノール充填率を100%にはできない。しかも、固体状メタノールは通常粒子状に成形したものを燃料カートリッジに収容するので、粒子間に空隙が生じてしまため、燃料カートリッジの燃料密度が低い、という問題点があった。そこで、粒子状の固体状メタノールを微粒子状にすることが考えられるが、粒子状の固体状メタノールの粒径をあまり小さくすると、固体状メタノール自体へのメタノール充填率が低くなるばかりか、固体状メタノールからのメタノールの気化速度が速くなりすぎて、長期間安定してメタノールを供給できない、という問題点を生じる。
【0014】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、粒子状燃料電池用燃料の充填率を向上させるとともに、供給量の安定化を図ることのできる粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法であって、前記粒子状燃料電池用燃料の粒径が不均一であることを特徴とする粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法を提供する(請求項1)。
【0016】
上記発明(請求項1)によれば、粒子状燃料電池用燃料の粒径が不均一であるため、径大な粒子状燃料電池用燃料の粒子間に形成される間隙に径小な粒子状燃料電池用燃料の粒子が入り込むようにして粒子状燃料電池用燃料が燃料容器に充填されることになり、燃料容器への粒子状燃料電池用燃料の充填率を向上させることができる。しかも、径大な粒子状燃料電池用燃料は、燃料の放出速度が遅い一方、径小な粒子状燃料電池用燃料は、燃料の放出速度が速いので、初期においては径小な粒子状燃料電池用燃料からの燃料の放出が主体となり、徐々に径大な粒子状燃料電池用燃料からの燃料の放出が主体となることで、燃料電池への燃料供給を長期間安定して行うことができるという効果も奏する。
【0017】
また、上記発明(請求項1)においては、前記粒子状燃料電池用燃料の粒度分布が、複数のピークを有するように調整されているのが好ましい(請求項2)。かかる発明(請求項2)によれば、粒子状燃料電池用燃料の粒度分布が複数のピークを有するので、そのピークに相当する平均粒径の粒子により構成されると擬制することができる。
【0018】
上記発明(請求項2)においては、前記粒子状燃料電池用燃料が、平均粒径の異なる2種類以上の粒子状燃料電池用燃料の混合物であるのが好ましい(請求項3)。
【0019】
上記発明(請求項3)によれば、粒子状燃料電池用燃料の粒度分布が平均粒径の異なる2種類以上の粒子状燃料電池用燃料のそれぞれの平均粒径に相当する複数のピークを有することになる。
【0020】
上記発明(請求項3)においては、前記平均粒径の異なる2種類以上の粒子状燃料電池用燃料を複数回交互に充填するのが好ましい(請求項4)。
【0021】
上記発明(請求項4)によれば、径大な粒子状燃料電池用燃料と、径小な粒子状燃料電池用燃料とが交互に充填されるので、径大な粒子状燃料電池用燃料の粒子間に形成される間隙に径小な粒子状燃料電池用燃料の粒子が入り込むようにして粒子状燃料電池用燃料が燃料容器に充填されるので、燃料容器への粒子状燃料電池用燃料の充填率を向上させることができる。
【0022】
さらに、上記発明(請求項4)においては、前記平均粒径の異なる2種類以上の粒子状燃料電池用燃料をそれぞれ所定の比率で充填するのが好ましい(請求項5)。
【0023】
上記発明(請求項5)によれば、径大な粒子状燃料電池用燃料の粒子間に形成される間隙に径小な粒子状燃料電池用燃料の粒子が入り込むようにして粒子状燃料電池用燃料が燃料容器に充填されるので、燃料容器への粒子状燃料電池用燃料の充填率を向上させることができる。
【0024】
上記発明(請求項3〜5)においては、前記平均粒径の異なる2種類以上の粒子状燃料電池用燃料のうち平均粒径の最も小さい粒子状燃料電池用燃料が、前記燃料容器の最下部及び最上部に他の種類の粒子状燃料電池用燃料よりも多く存在するように充填するのが好ましい(請求項6)。
【0025】
上記発明(請求項6)によれば、燃料容器への粒子状燃料電池用燃料の充填率を容易に向上させることができる。
【0026】
上記発明(請求項1〜6)においては、前記粒子状燃料電池用燃料の充填を、前記燃料容器を振動させながら行うのが好ましい(請求項7)。
【0027】
上記発明(請求項7)によれば、燃料容器を振動させることにより、径大な粒子状燃料電池用燃料の粒子間に形成される間隙に径小な粒子状燃料電池用燃料の粒子が入り込むように各粒子が微動するので、燃料容器への粒子状燃料電池用燃料の充填率を向上させることができる。
【0028】
上記発明(請求項3〜7)においては、前記平均粒径の異なる2種類以上の粒子状燃料電池用燃料の最大平均粒径と最小平均粒径との比が、10:7〜10:1であるのが好ましい(請求項8)。
【0029】
上記発明(請求項8)によれば、径大な粒子状燃料電池用燃料の粒子間に形成される間隙に径小な粒子状燃料電池用燃料の粒子が入り込むようにして粒子状燃料電池用燃料が燃料容器に充填されることにより、燃料容器への粒子状燃料電池用燃料の充填率の向上効果と、径大な粒子状燃料電池用燃料及び径小な粒子状燃料電池用燃料の燃料放出速度の相違に基づく燃料供給の安定化とのバランスを両方好適なものに維持することができる。
【0030】
上記発明(請求項1〜8)においては、前記粒子状燃料電池用燃料が、燃料とこれを固体化する物質との分子化合物を粒状に形成したものであるのが好ましい(請求項9)。前記燃料とこれを固体化する物質との分子化合物が、包接化合物であるのが好ましい(請求項10)。そして、この燃料はメタノールであってもよい(請求項11)し、また、水素であってもよい(請求項12)。
【0031】
上記発明(請求項9〜12)によれば、DMFCへの適用はもちろん、水素による固体高分子形燃料電池への適用も可能である。
【0032】
上記発明(請求項1〜12)においては、前記燃料容器が、携帯機器用燃料電池用の燃料容器であるのが好ましい(請求項13)。
【0033】
上記発明(請求項13)によれば、上記発明(請求項1〜12)の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法を適用することで、粒子状燃料電池用燃料の充填率を向上させた携帯機器用燃料電池用の燃料容器とすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、携帯機器等の燃料電池用の燃料容器に粒子状燃料電池用燃料を充填する際の充填率を向上させるとともに、燃料供給量の安定化を図ることができ、粒子状燃料電池用燃料の燃料容器の携帯機器への適用をさらに好適なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態に係る粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法を説明する。
【0036】
本実施形態においては、粒径が不均一な粒子状燃料電池用燃料を燃料容器へ充填する。一般に粒子集合体の粒径は連続した正規分布に則っており、その確率密度関数は、釣鐘状の曲線で表され、その数平均での粒径はピーク付近に位置することになる。そして、このような粒子集合体は、使用に際して下限値及び上限値をあらかじめ設定しておき、この下限値以下の粒径のもの及び上限値以上の粒径のものをふるい等で除去した上で使用される。したがって、本明細書中において、粒径が均一であるとは、単独の粒径からなる粒子の集合体のみを意味するものではなく、正規分布に則った粒径分布、及びこの正規分布から上側部分及び/又は下側部分を除去したものも含むものとする。
【0037】
上記定義からすると、本明細書中において粒径が不均一な粒子状燃料電池用燃料とは、粒度分布が複数のピークを有するように調整されているのが一般的となる。具体的には、粒径が不均一な粒子状燃料電池用燃料は、粒度分布の複数のピークのうちの最も小さい粒子の平均粒径が、最も大きい粒子の平均粒径に対して、70〜10%であるのが好ましい。最も小さい粒子の平均粒径が、最も大きい粒子の平均粒径に対して70%を超えると、充填率の向上効果が十分に得られない一方、10%未満であると、より以上の充填率の向上の効果が得られにくくなるばかりか、このような粒径の小さい粒子状燃料電池用燃料は、平均粒径が最も大きい粒子に比して極めて短時間で燃料が放出されるため、燃料の安定的な供給が損なわれるおそれがあり、好ましくない。
【0038】
上述したような複数のピークを有する粒子状燃料電池用燃料は、それぞれのピークに近似した平均粒径を有する2種類以上の粒子状燃料電池用燃料を混合することにより得ることができる。具体的には、2種類の平均粒径の場合、平均粒径30〜5mmの粒子状燃料電池用燃料と、平均粒径20〜1mmの粒子状燃料電池用燃料とを、最大平均粒径と最小平均粒径との比が10:7〜10:1となるように選定して混合すればよい。これにより、径大な粒子状燃料電池用燃料の粒子間に形成される間隙に径小な粒子状燃料電池用燃料の粒子が入り込むようにして粒子状燃料電池用燃料が燃料容器に充填され、燃料容器への粒子状燃料電池用燃料の充填率の向上効果と、径大な粒子状燃料電池用燃料と径小な粒子状燃料電池用燃料との燃料放出速度の相違に基づく燃料供給の安定化とのバランスを両方好適なものに維持することができる。
【0039】
このとき平均粒径の異なる2種類以上の粒子状燃料電池用燃料は、例えば、2種類の場合、径大な粒子状燃料電池用燃料100容積部に対して、径小な粒子状燃料電池用燃料100〜20容積部となるように充填すればよい。
【0040】
上述したような粒子状燃料電池用燃料は、例えば、以下のようにして燃料容器に充填することができる。
【0041】
すなわち、まず平均粒径が最も小さい粒子状燃料電池用燃料を充填し、続いて次第に平均粒径が大きい粒子状燃料電池用燃料を充填し、かかる操作を複数回繰り返す。これにより、径大な粒子状燃料電池用燃料の粒子間に形成される間隙に径小な粒子状燃料電池用燃料の粒子が入り込むようにして粒子状燃料電池用燃料が燃料容器に充填されるので、燃料容器への粒子状燃料電池用燃料の充填率を向上させることができる。特に、最初と最後に平均粒径が最も小さい粒子状燃料電池用燃料を充填することにより、燃料容器への粒子状燃料電池用燃料の充填率を容易に向上させることができる。このとき平均粒径の異なる2種類以上の粒子状燃料電池用燃料は、前述したような容積比となるように、それぞれ所定の比率で充填すればよい。
【0042】
特に粒子状燃料電池用燃料は、燃料容器を振動させながら充填するのが好ましい。これにより、振動により径大な粒子状燃料電池用燃料の粒子間に形成される間隙に径小な粒子状燃料電池用燃料の粒子が入り込むように、各粒子が微動するので、燃料容器への粒子状燃料電池用燃料の充填率を向上させることができる。
【0043】
上述したような本発明の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法により燃料を充填すると、例えば2種類の平均粒径の異なる粒子状燃料電池用燃料の場合には、図1に例示するように粒子状燃料電池用燃料が充填されることになる。すなわち、燃料容器3中では、平均粒径の大きい方の粒子状燃料電池用燃料1間の間隙に、平均粒径の小さい方の粒子状燃料電池用燃料2が入り込んでいる。特に燃料容器3の下面側及び上面側には、平均粒径の小さい方の粒子状燃料電池用燃料2が多く存在している。これにより粒子状燃料電池用燃料の充填率が向上したものとなっている。
【0044】
上述したような粒子状燃料電池用燃料としては、液状の燃料電池燃料や水素等の燃料と、この燃料を固体化する物質との分子化合物を粒状に形成したものを用いることができる。
【0045】
具体的には、液状の燃料電池燃料を多孔性材料に取り込ませ、得られた燃料保持材を粒状に成形し、得られた燃料保持材成形体の表面に被膜を形成することによって粒子状燃料電池用燃料を製造することができる。
【0046】
上記液状の燃料電池用燃料としては、例えば、アルコール類、エーテル類、炭化水素類、アセタール類、ギ酸類等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。具体的には、燃料電池用燃料として、メタノール、エタノール、変性アルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等の炭素数1〜4の低級脂肪族アルコール類;ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類;プロパン、ブタン等の炭化水素類;ジメトキシメタン、トリメトキシメタン等のアセタール類;ギ酸、ギ酸メチル等のギ酸類等を使用することができる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。これらのうち、ダイレクトメタノール型燃料電池の燃料であるメタノールを使用することが好ましい。
【0047】
多孔性材料は、液状の燃料電池用燃料と接触することにより燃料電池用燃料を取り込むことができ、多孔性材料に燃料電池用燃料を取り込ませた燃料保持材を一定の形状に成形することで、粒子状燃料電池用燃料を製造することができる。
【0048】
多孔性材料は、表面形状が凹凸になっており、凹部の深さが孔径よりも大きい細孔を有する。多孔性材料の細孔の孔径は、燃料電池用燃料成分が細孔内に入り込むことができ、当該細孔内にて保持され得る限り特に限定されるものではなく、この多孔性材料は、孔径0.5nm未満のウルトラマイクロ孔、孔径0.5nm以上2nm未満のマイクロ孔、孔径2nm以上50nm未満のメソ孔、又は孔径50nm以上のマクロ孔に区分される細孔を有するものであればよい。このような孔径の細孔を有するものであれば、液状の燃料電池用燃料を効果的に保持することができる。また、多孔性材料の比表面積は、100〜1500m/gであることが好ましく、多孔性材料の嵩比容積(タップ)は、2.0〜20mL/gであることが好ましい。
【0049】
多孔性材料の形状としては、例えば、粒子状、粉状、若しくはペレット状等が挙げられる。多孔性材料を形成する基幹となる原料としては、有機体若しくは無機体、又はこれらの複合体を使用することができる。
【0050】
このような多孔性材料としては、例えば、シリカゲル、粉末シリカ、ゼオライト、活性アルミナ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、活性炭、モレキュラーシーブ、カーボン、カーボン繊維、活性白土、骨炭、多孔質ガラス;陽極酸化アルミニウム材、酸化チタン、酸化カルシウム等の無機酸化物からなる微粉末;チタン酸カルシウム、ニオブ酸ナトリウム等のペロブスキー型酸化鉱物;セピオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、サポナイト等の粘土鉱物;イオン交換樹脂等の合成吸着樹脂等が挙げられる。これらの多孔性材料は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。なお、これらの多孔性材料は、包接化合物のホストとしても使用可能なものである。
【0051】
これらの多孔性材料のうち、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを使用することが好ましい。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、製造方法次第では、嵩比容積をより小さくすることができるため、ダイレクトメタノール形燃料電池のようにコンパクト化が求められる製品への使用に好適である。また、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、胃腸薬製剤の原料としても使用されている材料であるため、人体への安全性が認められている観点からしても好適に使用することができる。
【0052】
多孔性材料には、液状の燃料電池用燃料とともに水を取り込ませてもよい。水と液状の燃料電池用燃料とを多孔性材料に取り込ませることにより得られる粒子状燃料電池用燃料は、水と液状の燃料電池用燃料との二成分系として燃料電池用燃料が多孔性材料に取り込まれるため、液状の燃料電池用燃料のみの一成分系として燃料電池用燃料が多孔性材料に取り込まれた場合よりも蒸気圧が低下し、引火点や発火点が上昇する。したがって、一般に液状の燃料電池用燃料が気化してしまうような温度条件下であっても、燃料電池用燃料の気化が制御され、燃料電池用燃料の引火点においても引火することのない、安全性に優れた粒子状燃料電池用燃料を得ることができる。
【0053】
多孔性材料に液状の燃料電池用燃料と水とを取り込ませる際の水の配合量は、少量でよく、具体的には、液状の燃料電池用燃料1質量部に対して、0.01〜1質量部の水を配合すればよい。なお、多孔性材料に液状の燃料電池用燃料とともに水を取り込ませる場合、燃料電池用燃料を取り込んだ多孔性材料に水を取り込ませてもよいし、液状の燃料電池用燃料の水溶液を多孔性材料に取り込ませてもよい。
【0054】
液状の燃料電池用燃料を多孔性材料に取り込ませる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、液状の燃料電池用燃料に多孔性材料を加えて、十分に攪拌することにより、燃料電池用燃料が多孔性材料に取り込まれた燃料保持材を製造することができる。この場合、多孔性材料の配合量は、液状の燃料電池用燃料1質量部に対して0.2〜1質量部であることが好ましい。多孔性材料の配合量が上記範囲内であれば、液状の燃料電池用燃料を効果的に取り込むことができるとともに、燃料電池用燃料を多孔性材料に取り込ませて得られた燃料保持材を効果的に成形することができる。
【0055】
液状の燃料電池用燃料を多孔性材料に取り込ませる際の温度条件及び圧力条件は、特に限定されるものではなく、常温・常圧下で燃料電池用燃料を多孔性材料に取り込ませればよい。液状の燃料電池用燃料と多孔性材料とを常温常圧下で混合し、十分に攪拌することで、液状の燃料電池用燃料が多孔性材料に取り込まれた燃料保持材を製造することができる。なお、液状の燃料電池用燃料として気体状の燃料を使用する場合には、加圧下で燃料電池用燃料を多孔性材料に取り込ませることが好ましい。
【0056】
得られた燃料保持材を一定の形状に成形する。これにより、燃料保持材成形体を得ることができる。上記形状は、例えば、略球状、略四角形状、略円柱形状等の粒状(粉状物を含む)とする。これらのうち、略球状であることが好ましい。略球状に成形することで、後述する被膜を形成する工程において、燃料保持材を成形して得られた燃料保持材成形体の表面に均一な膜厚の被膜を形成することができるため、被膜の形成に用いたコーティング剤と燃料保持材成形体との量的関係から容易に膜厚を算出することができる。このように膜厚を算出することで、製品の品質管理の面において優位である。
【0057】
燃料保持材を成形する場合、燃料保持材の形状は、粉状であることが好ましい。燃料保持材の形状が粉状であれば、燃料保持材を粒子状に成形しやすく、汎用性の面で好適である。
【0058】
得られた燃料保持材を成形する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、バインダー等を用いて燃料保持材を球状に成形する方法が挙げられる。
【0059】
上記バインダーとしては、例えば、デンプン、コーンスターチ、糖蜜、乳糖、セルロース、セルロース誘導体、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、アルギン酸、ポリアクリル酸、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、水、メタノール、エタノール等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0060】
ダイレクトメタノール型燃料電池に使用する燃料電池用燃料がメタノールであることからすると、使用するバインダーはメタノールであることが好ましく、さらにいえばメタノールと接触すると増粘する性質を有し、その粘化作用により粒子同士の結合に寄与する物質とメタノールとを併用することが好ましい。この点を考慮すると、バインダーとして、メタノールとセルロース誘導体又はPVP等とを併用することが好ましい。なお、バインダーとしてメタノールを使用する場合には、燃料電池用燃料であるメタノールを多孔性材料に取り込ませる工程を省略してもよい。この場合、多孔性材料にバインダーとしてのメタノールを加えて成形することで、燃料電池用燃料であるメタノールを多孔性材料に取り込ませつつ燃料保持材成形体を得ることができる。
【0061】
バインダーとしてメタノールとセルロース誘導体又はPVPとを併用する場合、バインダーにおけるメタノールとセルロース誘導体又はPVPとの配合比(質量基準)は、1000:1〜10:1であることが好ましい。配合比がこの範囲内であれば、燃料保持材を効果的に成形することができる。
【0062】
バインダーを用いて燃料保持材成形体を得る方法としては、例えば、メタノールとセルロース誘導体等とを接触させた粘性流体を燃料保持材又は多孔性材料に添加しながら造粒成形する方法、セルロース誘導体等を粉体のまま燃料保持材又は多孔性材料に混合し、メタノールを添加しながら造粒成形する方法等が挙げられる。
【0063】
具体的には、ドラム型造粒機、皿型造粒機等を使用した転動造粒法;フレキソミックス、バーティカルグラニュレーター等を使用した混合攪拌造粒法;スクリュー型押出造粒機、ロール型押出造粒機、ブレード型押出造粒機、自己成形型押出造粒機等を使用した押出造粒法;打錠形造粒機、ブリケット形造粒機等を使用した圧縮造粒法;吹き上げる流体(主として空気)中に燃料保持材を浮遊懸濁させた状態に保ちながらバインダーを噴霧して造粒する流動層造粒法等が挙げられるが、球状に成形すること、及びバインダーとしてアルコール類(メタノール)を使用することを考慮すると、転動造粒法又は混合攪拌造粒法が好ましい。
【0064】
バインダーの配合量は、特に限定されるものではなく、燃料保持材又は多孔性材料1質量部に対し、0.001〜5質量部であることが好ましい。バインダーの配合量が上記範囲内であれば、燃料保持材を効果的に成形することができる。
【0065】
最後に、燃料保持材を成形して得られた燃料保持材成形体の表面に被膜を形成する。これにより、形成された被膜の内部に閉じ込められた多孔性材料に保持されている燃料電池用燃料の気化を制御し得る粒子状燃料電池用燃料を製造することができる。燃料保持材成形体の表面に被膜を形成する方法としては、例えば、燃料保持材成形体とコーティング剤とを接触させる方法等が挙げられる。
【0066】
コーティング剤としては、造膜作用を有する高分子材料が好ましく、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール(PVA)等の水溶性ポリマー;ポリビニルピロリドン(PVP)等の水・アルコール両溶性ポリマー等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
これらのコーティング剤のうち、ポリビニルアルコール(PVA)が好ましい。PVAは、優れた造膜作用を有しており、燃料保持材成形体の表面に効果的に被膜を形成し、燃料電池用燃料の気化を抑制し得る。また、PVAは、医療分野において錠剤のコーティング、カプセルや軟膏の賦形剤等に広く利用されており、また化粧品分野でもパックの原料として利用されたり、増粘剤として石鹸やクリーム等に配合されて利用されたりしており、人体への安全性が認められているため、乳幼児の誤飲等があった場合においても安全性の面で好適である。
【0068】
コーティング剤としてのPVAは、完全けん化型ポリビニルアルコールであってもよいし、部分けん化型ポリビニルアルコールであってもよい。また、PVAのけん化度は、70〜100mol%であるのが好ましく、特に90〜100mol%であるのが好ましい。PVAのけん化度が上記範囲内であることで、多孔性材料に取り込まれた燃料電池用燃料が、PVAからなる被膜を透過し難くなるため、燃料電池用燃料の気化を制御することができる。
【0069】
さらに、PVAの平均重合度は、200〜1700であるのが好ましく、特に200〜500であるのが好ましい。PVAの平均重合度が上記範囲内であることで、PVAを所望の溶媒に溶解させたときのPVA溶液の粘性を抑制することができ、コーティング操作(特に、スプレーコーティング操作等)を容易に行うことができる。
【0070】
燃料保持材成形体とコーティング剤とを接触させて、燃料保持材成形体の表面に被膜を形成する方法としては、例えば、流動層コーティング法、転動流動複合コーティング法、ドラムコーティング法、パンコーティング法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、コーティング方式としては、フィルムコーティング、シュガーコーティング等が挙げられるが、形成される被膜の膜厚を極力薄くして、粒子状燃料電池用燃料中の燃料電池用燃料含有率(メタノール含有率)を大きくするという観点からは、フィルムコーティングが好ましい。
【0071】
コーティング剤の配合量は、燃料保持材成形体1質量部に対して、0.0001〜0.1質量部であることが好ましい。コーティング剤の配合量が上記範囲内であれば、燃料保持材成形体の表面に所望の膜厚の被膜を効果的に形成することができる。
【0072】
なお、上記実施形態においては、多孔性材料に液状の燃料電池用燃料を取り込ませた後に、当該多孔性材料(燃料保持材成形体)の表面にPVAからなる被膜を形成しているが、多孔性材料の表面にPVAからなる被膜を形成した後に、当該被膜が形成された多孔性材料に液状の燃料電池用燃料を取り込ませてもよいし、多孔性材料に液状の燃料電池用燃料の一部を取り込ませた後、当該多孔性材料の表面にPVAからなる被膜を形成し、その後さらに液状の燃料電池用燃料の残部を多孔性材料に取り込ませてもよい。
【0073】
この場合、PVAからなる被膜が形成された多孔性材料を液状の燃料電池用燃料の存在する環境下に放置することにより、液状の燃料電池用燃料を多孔性材料に取り込ませてもよいし、PVAからなる被膜が形成された多孔性材料に、シリンジ等を用いて液状の燃料電池用燃料を注入してもよい。
【0074】
本実施形態により製造された粒子状燃料電池用燃料から燃料電池用燃料を取り出す方法としては、例えば、当該粒子状燃料電池用燃料から燃料電池用燃料を蒸発させることで、直接気体状の燃料電池用燃料を取り出す方法、粒子状燃料電池用燃料に水を接触させることで、粒子状燃料電池用燃料から水溶液状の燃料電池用燃料を取り出す方法が挙げられるが、水などの漏洩の点を考慮すると、当該粒子状燃料電池用燃料から燃料電池用燃料を蒸発させることで、直接気体状の燃料電池用燃料を取り出す方法が好ましい。
【0075】
粒子状燃料電池用燃料を使用する燃料電池は、特に限定されるものではなく、例えば、ダイレクトメタノール型燃料電池、固体高分子型燃料電池、固体酸化物型燃料電池等が挙げられる。
【0076】
本実施形態により得られる粒子状燃料電池用燃料は、不測の事態により燃料電池本体が破損した場合においても、液体燃料のように拡散することはなく、かつ仮に手足に粒子状燃料電池用燃料が接触しても、皮膚刺激性がなく、安全上優位性がある。
【0077】
このような燃料電池は、例えば、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯型電子機器に当該燃料電池を電気的に接続することで、これらの携帯型電子機器の電源として好適に利用することができる。
【0078】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0079】
なお、以上メタノールなどの液状の燃料電池燃料を多孔性材料に取り込ませ、得られた燃料保持材を粒状に成形し、得られた燃料保持材成形体の表面に被膜を形成した粒子状燃料電池用燃料の場合について説明してきたが、燃料電池用燃料が気体としての水素であり、この水素をホスト化合物に包接させることにより得られる水素包接化合物を粒状に成形したものも用いることができる。この場合には、燃料電池としてはDMFCではなく、水素を燃料とした固体高分子型燃料電池に適用することができる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0081】
〔実施例1〕
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム80gにバインダーとしてメタノール270gを加え、混合攪拌造粒機(商品名:VG−01,パウレック社製)により、平均粒径5mmの球状に造粒した。得られた燃料保持材100gをパンコーティング機(商品名:DRC−200,パウレック社製)に導入し、燃料保持材の表面にコーティング液(5質量%ポリビニルアルコール水溶液(PVAのけん化度:99mol%,PVAの平均重合度:300))200gを噴霧し、乾燥して被膜を形成し、粒子状メタノール(試料1)を得た。得られた粒子状メタノールをさらにメタノール中に含浸させた後、取り出して乾燥させ、第1の粒子状燃料電池用燃料(径大の粒子状燃料電池用燃料)を製造した。
【0082】
また、混合攪拌造粒機の運転条件を調整した以外同様にして、平均粒径2mmの第2の粒子状燃料電池用燃料(径小の粒子状燃料電池用燃料)を製造した。
【0083】
これら第1の粒子状燃料電池用燃料及び第2の粒子状燃料電池用燃料を体積比で100:50の割合で容積50ccの燃料電池用燃料カートリッジ(燃料容器)に容器を振動させながら充填したところ、粒子状燃料電池用燃料の充填率は約85%であった。
【0084】
また、この燃料電池用燃料カートリッジの23℃での燃料放出量の経時変化を測定したところ、約15分で燃料放出量がピークに達し、約3時間経過後より徐々に燃料放出量が低下していった。
【0085】
〔比較例1〕
実施例1において、第1の粒子状燃料電池用燃料のみを容積50ccの燃料電池用燃料カートリッジに振動させながら充填したところ、粒子状燃料電池用燃料の充填率は約70%であった。
【0086】
また、この燃料電池用燃料カートリッジの23℃での燃料放出量の経時変化を測定したところ、約30分で燃料放出量がピークに達し、約2時間経過後に燃料放出量が急激に低下した。
【0087】
〔比較例2〕
実施例1において、第2の粒子状燃料電池用燃料のみを容積50ccの燃料電池用燃料カートリッジに振動させながら充填したところ、粒子状燃料電池用燃料の充填率は約85%であった。
【0088】
また、この燃料電池用燃料カートリッジの23℃での燃料放出量の経時変化を測定したところ、約15分で燃料放出量がピークに達し、約1時間30分経過後に燃料放出量が急激に低下した。
【0089】
〔実施例2〕
実施例1において、第1の粒子状燃料電池用燃料及び第2の粒子状燃料電池用燃料を体積比で100:20の割合とした以外は同様にして、容積50ccの燃料電池用燃料カートリッジに振動させながら充填したところ、粒子状燃料電池用燃料の充填率は約80%であった。
【0090】
また、この燃料電池用燃料カートリッジの23℃での燃料放出量の経時変化を測定したところ、約15分で燃料放出量がピークに達し、約4時間経過後より徐々に燃料放出量が低下していった。
【0091】
〔実施例3〕
実施例1において、第1の粒子状燃料電池用燃料及び第2の粒子状燃料電池用燃料を体積比で100:70の割合とした以外は同様にして、容積50ccの燃料電池用燃料カートリッジに振動させながら充填したところ、粒子状燃料電池用燃料の充填率は約85%であった。
【0092】
また、この燃料電池用燃料カートリッジの23℃での燃料放出量の経時変化を測定したところ、約15分で燃料放出量がピークに達し、約2時間30分経過後より燃料放出量が徐々に低下していった。
【0093】
実施例1〜実施例3、比較例1及び比較例2から明らかなとおり、径大な第1の粒子状燃料電池用燃料を充填した比較例1の粒子状燃料電池用燃料の充填率は約70%であったのに対し、実施例1〜3の場合は、充填率が約80%及び約85%であり、充填率が10%以上向上しているのが確認された。
【0094】
一方、燃料の放出の経時変化については実施例1〜実施例3では、2箇所の上昇ポイントを有し、比較的フラットな傾向が認められるのに対し、径大な第1の粒子状燃料電池用燃料を充填した比較例1では、初期段階でのメタノールの放出量が少なく、また充填率が低いので経時的にも短時間でメタノールの放出量がなくなった。これに対し径小な第2の粒子状燃料電池用燃料を充填した比較例2では、初期段階でのメタノールの放出量は多いものの経時的には短時間でメタノールの放出量が少なくなった。なお、メタノールの放出量のピークは、比較例2>実施例3>実施例1>実施例2>比較例1の順であった。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法は、粒子状燃料電池用燃料の充填率を向上させることができるとともに、供給量の安定化を図ることができ、燃料電池への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施形態による燃料の充填状態を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法であって、
前記粒子状燃料電池用燃料の粒径が不均一であることを特徴とする粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法。
【請求項2】
前記粒子状燃料電池用燃料の粒度分布が、複数のピークを有するように調整されていることを特徴とする請求項1に記載の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法。
【請求項3】
前記粒子状燃料電池用燃料が、平均粒径の異なる2種類以上の粒子状燃料電池用燃料の混合物であることを特徴とする請求項2に記載の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法。
【請求項4】
前記平均粒径の異なる2種類以上の粒子状燃料電池用燃料を複数回交互に充填することを特徴とする請求項3に記載の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法。
【請求項5】
前記平均粒径の異なる2種類以上の粒子状燃料電池用燃料をそれぞれ所定の比率で充填することを特徴とする請求項4に記載の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法。
【請求項6】
前記平均粒径の異なる2種類以上の粒子状燃料電池用燃料のうち平均粒径の最も小さい粒子状燃料電池用燃料が、前記燃料容器の最下部及び最上部に他の種類の粒子状燃料電池用燃料よりも多く存在するように充填することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法。
【請求項7】
前記粒子状燃料電池用燃料の充填を、前記燃料容器を振動させながら行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法。
【請求項8】
前記平均粒径の異なる2種類以上の粒子状燃料電池用燃料の最大平均粒径と最小平均粒径との比が、10:7〜10:1であることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法。
【請求項9】
前記粒子状燃料電池用燃料が、燃料とこれを固体化する物質との分子化合物を粒状に形成したものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法。
【請求項10】
前記燃料とこれを固体化する物質との分子化合物が、包接化合物であることを特徴とする請求項9に記載の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法。
【請求項11】
前記燃料が、メタノールであることを特徴とする請求項9又は10に記載の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法。
【請求項12】
前記燃料が、水素であることを特徴とする請求項9又は10に記載の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法。
【請求項13】
前記燃料容器が、携帯機器用燃料電池用の燃料容器であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の粒子状燃料電池用燃料の燃料容器への充填方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−272103(P2009−272103A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120744(P2008−120744)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】