説明

粒子状物質処理装置

【課題】粒子状物質処理装置の故障を検出する。
【解決手段】内燃機関の排気通路に設けられる電極と、電極に接続され電圧を印加する電源と、電極よりも下流側の粒子状物質の粒子数を検出する粒子数検出装置と、電極へ印加する電圧を変化させたときに粒子数検出装置により検出される粒子状物質の粒子数の変化量の絶対値が閾値未満の場合に故障と判定する判定装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気通路に放電電極を設け、該放電電極からコロナ放電を発生させることにより粒子状物質(以下、PMともいう。)を帯電させてPMを凝集させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようにPMを凝集させることにより、PMの粒子数を減少させることができる。また、PMの粒子径が大きくなるため、下流側にフィルタを設けたときに該フィルタにてPMを捕集しやすくなる。
【0003】
ところで、粒子状物質処理装置に故障や劣化が生じることにより、PMを凝集させることが困難となる場合もある。したがって、故障を検出することも重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−194116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、粒子状物質処理装置の故障を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために本発明による粒子状物質処理装置は、
内燃機関の排気通路に設けられる電極と、
前記電極に接続され電圧を印加する電源と、
前記電極よりも下流側の粒子状物質の粒子数を検出する粒子数検出装置と、
前記電源から前記電極へ印加する電圧を変化させたときに前記粒子数検出装置により検出される粒子状物質の粒子数の変化量の絶対値が閾値未満の場合に故障と判定する判定装置と、
を備える。
【0007】
ここで、電極に電圧を印加すると、PMを帯電させることができる。帯電したPMは、クーロン力や排気の流れにより排気通路の内壁へ向かって移動する。排気通路の内壁に到達したPMは、排気通路に電子を放出するため、電極よりも接地側に電気が流れる。そして、電子を放出したPMは、近くに存在する他のPMと凝集するため、粒子数を減少させることができる。
【0008】
そして、電極に電圧を印加しているときに粒子数検出装置により検出される粒子状物質の粒子数は、PMが凝集した後の粒子数となる。ここで、電極に印加する電圧を大きくすると、電極からより多くの電子が放出される。このため、PMの凝集を促進させることができるので、PMの粒子数をより減少させることができる。すなわち、粒子状物質処理装置が正常な場合には、電極に印加する電圧に応じて、粒子数検出装置により検出される粒子状物質の粒子数が変化する。したがって、電極へ印加する電圧を変化させたときには、粒子状物質処理装置が正常であれば、粒子数検出装置により検出されるPMの粒子数が変化するはずである。このときの変化量の絶対値は、粒子状物質処理装置が正常であれば比較的大きくなり、故障していれば比較的小さくなる。すなわち、粒子状物質処理装置が故
障している場合には、電極へ印加する電圧を変化させようとしても、実際には、電圧が変化しなかったり、又は、電圧の変化が十分でなかったりすることがある。たとえば、故障により電極に電圧が全く印加されない場合には、電極へ印加する電圧を変化させようとしても、実際には電圧が変化しないため、PM粒子数の変化量は0となる。
【0009】
このように、粒子状物質処理装置が故障すると、凝集されるPMが減少する。そうすると、電圧を変化させるときに粒子数検出装置により検出される粒子状物質の粒子数の変化量の絶対値が相対的に小さくなる。したがって、PM粒子数の変化量の絶対値が閾値未満の場合には故障していると判定できる。この閾値は、粒子状物質処理装置が正常な場合の粒子数の変化量の絶対値の下限値とすることができる。なお、印加電圧を変化させる前後で粒子数検出装置により検出されるPM粒子数が変化しない場合に、粒子状物質処理装置が故障していると判定してもよい。
【0010】
なお、故障検出を行うときに、電極へ印加する電圧を積極的に変化させることにより、粒子数の変化量を速やかに検出することができるため、故障判定を速やかに完了させることができる。また、印加電圧を予め設定しておいた範囲で変動させ、このときの粒子数の変化量の絶対値に基づいて故障判定を行ってもよい。
【0011】
ところで、電圧の変化により、粒子数検出装置にて検出される粒子数は、増加する場合もあれば、減少する場合もある。そして、増加する場合には変化量が正の値となり、減少する場合には変化量が負の値となる。このため、変化量の絶対値を用いている。なお、粒子数の変化量が負の値から正の値までを含む所定の範囲内にあるときに、粒子状物質処理装置が故障していると判定してもよい。
【0012】
また、本発明においては、前記閾値は、前記粒子数検出装置により検出される粒子数に応じて変更されてもよい。
【0013】
なお、電源から電極へ電圧を印加していないときに粒子数検出装置により検出される粒子数に応じて閾値を変更するとしてもよい。また、内燃機関から排出される粒子状物質の粒子数に応じて閾値を変更するとしてもよい。この内燃機関から排出される粒子状物質の粒子数はセンサにより検出してもよく、内燃機関の運転状態に基づいて推定してもよい。ここで、PM粒子数が多いほど、PM粒子間の距離が短くなるために、相対的に静電作用の影響が大きくなる。このためPM粒子数が多いほど、より小さな印加電圧でPMが凝集する。したがって、PM粒子数が多いほど、印加電圧が変化したときの粒子数の変化量の絶対値が大きくなる。これに合わせて、前記閾値を変更することができる。すなわち、PM粒子数が多いほどPMがより凝集し易いため、粒子状物質処理装置が正常ならば、PM粒子数の変化量の絶対値はより大きくなるはずである。このため、PM粒子数が多いほど、閾値を大きくし、PM粒子数が少ないほど、閾値を小さくすることができる。これにより、故障の判定精度をより高めることができる。
【0014】
本発明においては、前記内燃機関からの排出ガス量を検出または推定する排出ガス量検出装置を備え、
前記閾値は、前記排出ガス量検出装置により検出される排出ガス量に応じて変更されてもよい。
【0015】
ここで、排出ガス量が少ないほど、PMの慣性力が小さくなるため、相対的に静電作用の影響が大きくなる。このため、PMが凝集しやすくなる。したがって、排出ガス量が少ないほど、より小さな印加電圧でPMが凝集する。このため、排出ガス量が少ないほど、PM粒子数の変化量の絶対値が大きくなる。これに合わせて、前記閾値を変更することができる。すなわち、排出ガス量が少ないほどPMがより凝集し易いため、粒子状物質処理
装置が正常ならば、PM粒子数の変化量の絶対値はより大きくなるはずである。このため、排出ガス量が少ないほど、閾値を大きくし、排出ガス量が多いほど、閾値を小さくすることができる。これにより、故障の判定精度をより高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、粒子状物質処理装置の故障を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1に係る粒子状物質処理装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施例に係る故障判定のフローを示したフローチャートである。
【図3】印加電圧と、PM粒子数と、PM粒子数の低減率との関係を示した図である。
【図4】印加電圧と、PM粒子数と、PM粒子数の低減率との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る粒子状物質処理装置の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
【0019】
(実施例1)
図1は、本実施例に係る粒子状物質処理装置1の概略構成を示す図である。粒子状物質処理装置1は、例えばガソリン機関の排気通路2に設けられる。なお、ディーゼル機関の排気通路に設けることもできる。
【0020】
粒子状物質処理装置1は、両端が排気通路2に接続されているハウジング3を備えて構成される。ハウジング3の材料には、ステンレス鋼材を用いている。ハウジング3は、排気通路2よりも直径の大きな中空の円柱形に形成されている。ハウジング3の両端は、端部に近くなるほど断面積が小さくなるテーパ状に形成されている。なお、図1においては、排気が排気通路2を矢印の方向に流れて、ハウジング3内に流入する。このため、ハウジング3は排気通路2の一部としてもよい。
【0021】
排気通路2とハウジング3とは、絶縁部4を介して接続されている。絶縁部4は、電気の絶縁体からなる。絶縁部4は、排気通路2の端部に形成されるフランジ21と、ハウジング3の端部に形成されるフランジ31と、に挟まれる。排気通路2とハウジング3とは、たとえばボルト及びナットにより締結される。そして、これらボルト及びナットを介して電気が流れないように、これらボルト及びナットにも絶縁処理を施しておく。このようにして、排気通路2とハウジング3との間に電気が流れないようにしている。
【0022】
ハウジング3には、電極5が取り付けられている。電極5は、ハウジング3の側面を貫通しており、該ハウジング3の側面から該ハウジング3の中心軸方向へ延びて該中心軸近傍において排気の流れの上流側へ折れ曲がり、該中心軸と平行に排気の流れの上流側へ向かって伸びている。このため、電極5の端部はハウジング3の中心軸近傍に位置する。また、電極5とハウジング3との間に電気が流れないように、電極5には電気の絶縁体からなる碍子部51が設けられている。この碍子部51は、電極5とハウジング3との間に位置しており、電気を絶縁すると共に、電極5をハウジング3に固定するための機能を有する。
【0023】
そして、電極5は電源側電線52を介して電源6に接続されている。電源6は、電極5へ通電すると共に、印加電圧を変更することができる。この電源6は、電線を介して制御装置7及びバッテリ8に接続されている。制御装置7は、電源6が電極5に印加する電圧
を制御する。
【0024】
また、ハウジング3には接地側電線53が接続されており、該ハウジング3は接地側電線53を介して接地されている。接地側電線53には、該接地側電線53を通る電流を検出する検出装置9が設けられている。検出装置9は、例えば、接地側電線53の途中に設けられる抵抗の両端の電位差を測定することで電流を検出する。この検出装置9は、電線を介して制御装置7に接続されている。そして、検出装置9により検出される電流が制御装置7に入力される。なお、電源側電線52に検出装置9を設けて、該電源側電線52において電流を検出してもよい。
【0025】
また、ハウジング3よりも下流側の排気通路2には、排気中のPMの粒子数を検出する粒子数センサ75が設けられている。この粒子数センサ75は、排気中の単位体積当たりのPMの粒子数を検出する。粒子数センサ75は、電線を介して制御装置7に接続されている。粒子数センサ75により検出されたPMの粒子数は、制御装置7に入力される。なお、本実施例では粒子数センサ75が、本発明における粒子数検出装置に相当する。
【0026】
なお、制御装置7には、アクセル開度センサ71、クランクポジションセンサ72、温度センサ73、エアフローメータ74が接続されている。アクセル開度センサ71は、内燃機関が搭載される車両の運転者がアクセルペダルを踏み込んだ量に応じた電気信号を出力し、機関負荷を検出する。クランクポジションセンサ72は、機関回転数を検出する。温度センサ73は、内燃機関の冷却水の温度または潤滑油の温度を検出することで内燃機関の温度を検出する。エアフローメータ74は、内燃機関の吸入空気量を検出する。
【0027】
このように構成された粒子状物質処理装置1では、電源6から電極5へ負の直流高電圧を印加することで、該電極5から電子が放出される。すなわち、ハウジング3よりも電極5のほうの電位を低くすることで、電極5から電子を放出させている。そして、この電子により排気中のPMを負に帯電させることができる。負に帯電したPMは、クーロン力とガス流によって移動する。そして、PMがハウジング3へ到達すると、PMを負に帯電させた電子は該ハウジング3へと放出される。ハウジング3へ電子を放出したPMは凝集して粒子径が大きくなる。また、PMが凝集することで、PMの粒子数は低減する。すなわち、電極5へ電圧を印加することで、PMの粒子径を大きくし且つPMの粒子数を低減させることができる。
【0028】
なお、本実施例では、電極5を排気の流れの上流側に向けて折り曲げているが、これに代えて、下流側に向けて折り曲げてもよい。ここで、本実施例のように、電極5を排気の流れの上流側に向けて折り曲げると、碍子部51にPMが付着し難い。すなわち、碍子部51よりも上流側においてPMを帯電されることができるため、該PMがハウジング3の内周面に向かう。このため、碍子部51に衝突するPMが減少するので、該碍子部51にPMが付着し難くなる。しかし、電極5を排気の流れの上流側へ向けて折り曲げると、排気の流れから力を受けて電極5が変形し易い。このため、電極5が短い場合に適している。一方、電極5を排気の流れの下流側に向けて折り曲げると、碍子部51にPMが付着し易いが、排気の流れから力を受けても電極5が変形し難い。このため、耐久性及び信頼性が高く、電極5を長くすることができる。
【0029】
そして、制御装置7は、電極5への印加電圧を変化させ、この前後に粒子数センサ75により検出されるPM粒子数の変化量に基づいて、粒子状物質処理装置1の故障を判定する。なお、本実施例における変化量は、絶対値を用いるものとする。
【0030】
ここで、粒子状物質処理装置1が正常であれば、電極5へ電圧を印加することにより、電極5から電子が放出されてPMが凝集する。そして、印加電圧が大きくなるほど、電極
5からより多くの電子が放出さえるために、PMの凝集量がより多くなる。すなわち、粒子状物質処理装置1が正常であれば、印加電圧を変化させたときのPMの粒子数の変化量が比較的大きくなる。
【0031】
一方、粒子状物質処理装置1が故障している場合には、電極5から電子が放出されなかったり、または、電子の放出量が十分でなかったりする。このため、PMの凝集量が少なくなるので、印加電圧を変化させたときのPMの粒子数の変化量が比較的小さくなる。たとえば、電極5へ電圧が印加されない故障が発生している場合には、印加電圧を変化させようとしても、印加電圧は0のまま変化しない。このため、検出装置9により検出されるPM粒子数は、印加電圧を変化させる前後で同じ値となる。すなわち、PM粒子数の変化量は0となる。
【0032】
したがって、印加電圧を変化させたときのPM粒子数の変化量に閾値を設定しておき、検出される変化量が該閾値未満であれば、粒子状物質処理装置1が故障していると判定することができる。この閾値は、粒子状物質処理装置1が正常のときのPM粒子数の変化量の下限値として予め実験等により求めておく。
【0033】
図2は、本実施例に係る故障判定のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、制御装置7により所定の時間毎に繰り返し実行される。
【0034】
ステップS101では、内燃機関の運転状態が取得される。たとえば、機関回転数、機関負荷、内燃機関の温度など、これ以降の処理に必要となる値が読み込まれる。機関回転数は、クランクポジションセンサ72により検出され、機関負荷は、アクセル開度センサ71により検出される。また、内燃機関の温度(たとえば、潤滑油の温度または冷却水の温度)を温度センサ73により検出する。
【0035】
ステップS102では、電極5への印加電圧が算出される。印加電圧は、たとえば推定されるPM粒子数(個/cm)に応じて設定する。このPM粒子数は、内燃機関から排出されるPM粒子数であり、ハウジング3に流入する前のPM粒子数である。PM粒子数は、機関回転数、機関負荷、及び内燃機関の温度(たとえば、潤滑油の温度または冷却水の温度)と相関関係にあるため、これらの値に基づいて算出する。機関回転数と機関負荷とから、PM粒子数を算出するためのマップを内燃機関の温度に応じて複数記憶しておき、該マップに基づいてPM粒子数を算出してもよい。
【0036】
なお、PM粒子数を検出するセンサをハウジング3よりも上流側の排気通路2に取り付けて、該センサによりPM粒子数を検出してもよい。また、電極5に電圧を印加していないときの粒子数センサ75の検出値を用いることもできる。
【0037】
そして、該PM粒子数及び内燃機関の排出ガス量(g/sec)に基づいて印加電圧を算出する。この関係は予め実験等により求めてマップ化しておいてもよい。内燃機関の排出ガス量は、内燃機関の吸入空気量と相関関係にあるため、エアフローメータ74により検出される吸入空気量に基づいて求めることができる。
【0038】
ここで、排出ガス量が少ないほど、PMの慣性力が小さくなるため、相対的に静電作用の影響が大きくなる。このため、PMが凝集しやすくなる。したがって、排出ガス量が少ないほど、より小さな印加電圧でPMが凝集する。このため、排出ガス量が少ないほど、印加電圧を小さくする。また、PM粒子数が多いほど、PM粒子間の距離が短くなるために、相対的に静電作用の影響が大きくなる。このためPM粒子数が多いほど、より小さな印加電圧でPMが凝集する。このため、PM粒子数が多いほど、印加電圧を小さくする。
【0039】
また、印加電圧は、たとえば、PM粒子数の低減率が所定値(たとえば40%)となるような値としてもよい。なお、PM粒子数の低減率とは、ハウジング3に流入するPM粒子数に対して、ハウジング3内で減少するPM粒子数の比である。また、印加電圧を予め定めておいた規定値としてもよい。このようにして印加電圧が算出された後、この電圧を印加して、ステップS103へ進む。
【0040】
ステップS103では、故障判定を行う時期となっているか否か判定される。たとえば、前回に故障判定が行われてからの内燃機関の運転時間の積算値が所定値に達しているか否かにより判定を行う。すなわち、運転時間の積算値が所定値に達する毎に、故障判定が行われる。たとえば、内燃機関の積算運転時間が、所定値の倍数となっているときに、故障判定を行う時期になっていると判定してもよい。また、内燃機関を搭載する車両の走行距離が、所定値の倍数となっているときに、故障判定を行う時期になっていると判定してもよい。これら所定値は、故障判定が必要となる値として予め設定しておく。そして、ステップS103肯定判定がなされた場合にはステップS104へ進み、否定判定がなされた場合には本ルーチンを終了させる。
【0041】
ステップS104では、内燃機関が定常運転中であるか否か判定される。PM粒子数は、内燃機関の運転状態によって変化するため、故障判定の途中で内燃機関の運転状態が変化すると、故障判定が困難となる虞がある。したがって、本実施例では、内燃機関の定常運転中に故障判定を行う。クランクポジションセンサ72により得られる機関回転数及びアクセル開度センサ71により得られる機関負荷の所定期間における変化量が定常状態といえる所定の範囲内のときに、内燃機関が定常運転中であると判定される。ステップS104で肯定判定がなされた場合にはステップS105へ進み、否定判定がなされた場合には本ルーチンを終了させる。
【0042】
ステップS105では、粒子数センサ75により検出されるPMの粒子数が取得される。本ステップでは、印加電圧を変化させる前のPM粒子数を検出している。本ステップで取得されるPM粒子数を、印加電圧変更前粒子数PM1とする。
【0043】
ステップS106では、印加電圧が変更される。たとえば、所定値だけ印加電圧を小さくする。また、印加電圧を0としてもよい。これにより、PMが凝集し難くなるため、検出装置9により検出されるPM粒子数が増加する。なお、印加電圧を大きくして、PMが凝集し易くし、PM粒子数を低減させてもよい。
【0044】
ステップS107では、粒子数センサ75により検出されるPMの粒子数が取得される。本ステップでは、印加電圧を変化させた後のPM粒子数を検出している。本ステップで取得されるPM粒子数を、印加電圧変更後粒子数PM2とする。
【0045】
ステップS108では、PM粒子数の変化量が算出される。この量は、絶対値で示される。すなわち、変化量は以下の式により算出される。
変化量=|PM2−PM1|
【0046】
ステップS109では、ステップS108で算出されるPM粒子数の変化量が閾値未満であるか否か判定される。本ステップでは、印加電圧を変化させたことによりPM粒子数が十分に変化しているか否か判定している。閾値は、粒子状物質処理装置1が正常な場合のPM粒子数の変化量の下限値であり、予め実験等により求めておく。ステップS109で肯定判定がなされた場合にはステップS110へ進み、否定判定がなされた場合には粒子状物質処理装置1に故障はないため本ルーチンを終了させる。なお、本実施例においてはステップS109を処理する制御装置7が、本発明における判定装置に相当する。
【0047】
ステップS110では、故障フラグがONとされる。この故障フラグは、粒子状物質処理装置1が故障しているときにONとされ、故障していないときにはOFFとされるフラグである。故障フラグの初期値は、OFFである。そして、故障フラグがONとされると、たとえば、車両の運転者に故障があることを知らせる警告灯を点灯させる。
【0048】
以上説明したように、本実施例によれば、印加電圧を変化させる前後のPM粒子数から算出されるPM粒子数の変化量に基づいて、粒子状物質処理装置1の故障を判定することができる。また、故障を判定するときには、電流や印加電圧を検出する必要がない。なお、印加電圧を複数回変化させて、PM粒子数の変化量を複数回算出することで、故障判定の精度を高めることができる。また、印加電圧を段階的に低減または増加させたときの夫々の印加電圧のときにPM粒子数の変化量を算出することで、故障判定の精度を高めることもできる。
【0049】
(実施例2)
本実施例においては、前記図2のステップS109で用いられる閾値を、PM粒子数または内燃機関の排出ガス量の少なくとも一方に基づいて変更する。その他の装置などは実施例1と同じため説明を省略する。
【0050】
図3は、印加電圧と、PM粒子数と、PM粒子数の低減率との関係を示した図である。この図3は、ハウジング3に流入するPM粒子数が異なる四通り(円形、三角形、菱形、逆三角形)の関係を示している。印加電圧が0(kV)のときが、電極5への電圧の印加を停止したときに相当する。すなわち、印加電圧0(kV)のときのPM粒子数が、ハウジング3に流入するPM粒子数に相当する。ハウジング3に流入するPM粒子数は、円形の場合が最も多く、三角形、菱形、逆三角形の順に少なくなる。
【0051】
そして、ハウジング3に流入するPM粒子数が最も多い円形では、PM粒子数低減率が最も高くなっている。一方、ハウジング3に流入するPM粒子数が最も少ない逆三角形では、PM粒子数低減率が最も低くなっている。そして、図3によれば、ハウジング3に流入するPM粒子数が多いほど、PM粒子数低減率が高くなることが分かる。また、ハウジング3に流入するPM粒子数が多いほど、印加電圧を変化させたときのPM粒子数の変化量が大きいことが分かる。
【0052】
ここで、PM粒子数が多いほど、PM粒子間の距離が短くなるために、相対的に静電作用の影響が大きくなる。このためPM粒子数が多いほど、より小さな印加電圧でPMが凝集する。このため、粒子状物質処理装置1が正常であれば、ハウジング3に流入するPM粒子数が多いほど、印加電圧を変化させたときのPM粒子数の変化量が大きくなる。そして、PM粒子数は、内燃機関の個体差や経年変化により変化し得る。
【0053】
したがって、PM粒子数に応じて閾値を変更することで、故障検出の精度を高めることができる。ここで、粒子状物質処理装置1が正常ならば、印加電圧を変化させたときに、PM粒子数が多いほどPM粒子数の変化量は大きくなるはずである。このため、PM粒子数が多いほど、閾値を大きくする。たとえば、PM粒子数と、補正係数との関係を予め実験等により求めておく。そして、検出または推定されるハウジング3よりも上流側のPM粒子数から補正係数を求めて、閾値に乗算することにより、閾値を変更する。
【0054】
このように、PM粒子数が多いほど、閾値を大きくすることにより、故障の判定精度をより高めることができる。
【0055】
また、内燃機関の排出ガス量によっても、印加電圧を変化させたときのPM粒子数の変化量が変わる。ここで、排出ガス量が少ないほど、PMの慣性力が小さくなるため、相対
的に静電作用の影響が大きくなる。このため、PMが凝集しやすくなる。したがって、排出ガス量が少ないほど、より小さな印加電圧でPMが凝集する。このため、排出ガス量が少ないほど、印加電圧を変化させたときのPM粒子数の変化量が大きくなる。
【0056】
図4は、印加電圧と、PM粒子数と、PM粒子数の低減率との関係を示した図である。この図4は、内燃機関からの排出ガス量が異なる四通り(円形、三角形、菱形、逆三角形)の関係を示している。排出ガス量は、円形の場合が最も多く、三角形、菱形、逆三角形の順に少なくなる。印加電圧が0(kV)のときが、電極5への電圧の印加を停止したときに相当する。そして、印加電圧0(kV)のときのPM粒子数が、どの排出ガス量であっても略等しい値となるように内燃機関の運転状態を調整している。
【0057】
そして、排出ガス量が最も多い円形では、PM粒子数低減率が最も低くなっている。一方、排出ガス量が最も少ない逆三角形では、PM粒子数低減率が最も高くなっている。そして、図4によれば、排出ガス量が少ないほど、印加電圧を変化させたときのPM粒子数の変化量が大きくなることが分かる。
【0058】
したがって、排出ガス量に応じて閾値を変更することで、故障検出の精度を高めることができる。ここで、粒子状物質処理装置1が正常ならば、排出ガス量が少ないほど、印加電圧を変化させたときのPM粒子数の変化量は大きくなるはずである。このため、排出ガス量が少ないほど、閾値を大きくする。たとえば、排出ガス量と、補正係数との関係を予め実験等により求めておく。そして、検出される排出ガス量から補正係数を求めて、閾値に乗算することにより、閾値を変更する。なお、内燃機関の排出ガス量(g/sec)は、内燃機関の吸入空気量と相関関係にあるため、エアフローメータ74により検出される吸入空気量に基づいて求めることができる。なお、本実施例においては排出ガス量を算出する制御装置7が、本発明における排出ガス量検出装置に相当する。
【0059】
このように、排出ガス量が少ないほど、閾値を大きくすることにより、故障の判定精度をより高めることができる。
【0060】
さらに、PM粒子数及び排出ガス量の両方に基づいて、閾値を変更してもよい。たとえば、PM粒子数と排出ガス量と補正係数との関係を予め実験等により求めておく。そして、検出されるPM粒子数と排出ガス量とから補正係数を求めて、閾値に乗算することにより、閾値を変更する。これにより、故障検出の精度をさらに高めることができる。
【0061】
以上説明したように本実施例によれば、PM粒子数または内燃機関の排出ガス量の少なくとも一方に基づいて閾値を変更することにより、故障検出の精度をより高めることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 粒子状物質処理装置
2 排気通路
3 ハウジング
4 絶縁部
5 電極
6 電源
7 制御装置
8 バッテリ
9 検出装置
21 フランジ
31 フランジ
51 碍子部
52 電源側電線
53 接地側電線
71 アクセル開度センサ
72 クランクポジションセンサ
73 温度センサ
74 エアフローメータ
75 粒子数センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられる電極と、
前記電極に接続され電圧を印加する電源と、
前記電極よりも下流側の粒子状物質の粒子数を検出する粒子数検出装置と、
前記電源から前記電極へ印加する電圧を変化させたときに前記粒子数検出装置により検出される粒子状物質の粒子数の変化量の絶対値が閾値未満の場合に故障と判定する判定装置と、
を備える粒子状物質処理装置。
【請求項2】
前記閾値は、前記粒子数検出装置により検出される粒子数に応じて変更される請求項1に記載の粒子状物質処理装置。
【請求項3】
前記内燃機関からの排出ガス量を検出または推定する排出ガス量検出装置を備え、
前記閾値は、前記排出ガス量検出装置により検出される排出ガス量に応じて変更される請求項1または2に記載の粒子状物質処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−219733(P2012−219733A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87257(P2011−87257)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】