説明

粒子状物質検出装置

【課題】精密回路である検知回路部に悪影響を与えることなく、迅速且つ精度良く、電極部に付着した粒子状物質が燃焼除去されたか否かの判定が可能な粒子状物質検出装置を提供する。
【解決手段】ヒーター14により電極部11を昇温させて粒子状物質の燃焼除去を行う際に、電極部11と検知回路部12とを遮断するとともに、ヒーター14に定電流を供給したときにヒーター14に印加される電圧を測定する構成を採用した粒子状物質検出装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状物質検出装置に関し、特に、粒子状物質が付着した電極部の電気的特性に基づいて粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識が高まるにつれて、燃焼を伴う設備・装置の使用に際しては、排気中に含まれる粒子状物質の除去が必要不可欠となっている。このため、これらの設備・装置には、排気中の粒子状物質を除去するための除去手段が設けられている。また、この除去手段が正常に機能し、粒子状物質を十分に除去できているか否かを確認すべく、粒子状物質検出装置を備えた故障診断システムが設けられている。
【0003】
例えば、排気通路内に設けた電極部に対して所定の電圧を印加することにより、排気中の粒子状物質を電極部に付着させた後、電極部の電気的特性を測定し、測定された電気的特性から粒子状物質の濃度を検知することを特徴とする粒子状物質検出装置が提案されている(特許文献1参照)。
この装置によれば、粒子状物質の堆積量により変化する電極部の電気的特性を利用して、静電容量等の電気的特性の測定結果から粒子状物質の濃度を算出するため、排気中に含まれる粒子状物質を低濃度から検出することができ、信頼性の高い故障診断システムを提供することができる。
【特許文献1】特開2008−139294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の粒子状物質検出装置では、粒子状物質が付着した電極部の電気的特性に基づいて粒子状物質の濃度を検知するため、電極部に付着した粒子状物質を定期的に除去する必要がある。具体的には、ヒーターに高電圧を印加して電極部を昇温させ、電極部に付着した粒子状物質を燃焼除去している。
【0005】
しかしながら、ヒーターに高電圧を印加して電極部を昇温させる際に、電極部と、電極部の電気的特性を検知する検知回路部とが接続された状態であるため、例えヒーターと電極部が絶縁部材で隔てられていた場合であっても、高電圧により絶縁破壊が生じ、検知回路部にも高電圧がかかる恐れがある。ひいては、精密機器である検知回路部に悪影響を与える恐れがある。
【0006】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、粒子状物質が付着した電極部の電気的特性に基づいて粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、精密回路である検知回路部に悪影響を与えることなく、迅速且つ精度良く、電極部に付着した粒子状物質が燃焼除去されたか否かの判定が可能な粒子状物質検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、加熱手段により電極部を昇温させて粒子状物質の燃焼除去を行う際に、電極部と検知回路部とを遮断するとともに、加熱手段に定電流を供給したときに加熱手段に印加される電圧を測定することにより、精密回路である検知回路部に悪影響を与えることなく、迅速且つ精度良く、電極部に付着した粒子状物質が燃焼除去されたか否かの判定ができることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のような発明を提供する。
【0008】
請求項1記載の発明は、内燃機関の排気通路に設けられ、排気中の粒子状物質が付着する電極部と、前記電極部からの出力値に応じて前記電極部の電気的特性を検知する検知回路部と、を備え、前記検知回路部で検知した電気的特性に基づいて排気中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、前記電極部と前記検知回路部とを接続及び遮断する出力回路部と、電流が供給されると発熱し、前記電極部を昇温させて前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する加熱手段と、前記加熱手段に定電流を供給する定電流電源部と、前記加熱手段に印加されている電圧を測定する電圧測定手段と、前記定電流電源部を制御し、前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する際には、前記出力回路部を遮断するとともに、前記電圧測定手段により測定された電圧に基づいて、前記電極部に付着している粒子状物質が除去されたか否かを判定することを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、電極部と検知回路部とを接続及び遮断する出力回路部と、電流が供給されると発熱し、電極部を昇温させて電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する加熱手段と、を含んで粒子状物質検出装置を構成した。また、電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する際に、出力回路部を遮断する制御手段を含んで粒子状物質検出装置を構成した。
これにより、電極部に付着した粒子状物質を燃焼除去する際に、出力回路部を遮断することができる。従って、加熱手段に高電圧が印加された場合であっても、電極部から精密機器である検知回路部へ電圧がかかることはなく、検知回路部に悪影響を与えることを回避できる。
【0010】
また、請求項1記載の発明によれば、加熱手段に定電流を供給する定電流電源部と、加熱手段に印加されている電圧を測定する電圧測定手段と、定電流電源部を制御して電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する制御手段と、を含んで粒子状物質検出装置を構成した。
また、電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する際には、出力回路部を遮断するとともに、電圧測定手段により測定された電圧に基づいて、電極部に付着している粒子状物質が除去されたか否かを判定する制御手段を含んで粒子状物質検出装置を構成した。
これにより、従来技術では、電極部に付着している粒子状物質が除去されたか否かの判定を、電極部の電気的特性に基づいて行っていたところ、本発明によれば、定電流が供給されている加熱手段に印加された電圧を測定することにより行うことができる。
【0011】
これは、電極部に付着している粒子状物質が燃焼すると、その燃焼熱によって、加熱手段の抵抗が大きくなる特性による。この特性により、定電流電源部が加熱手段に定電流を供給するためには、より大きな電圧を印加する必要がある。即ち、加熱手段に定電流を供給して電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する際に、粒子状物質が電極部に残存して燃焼している状態の場合には、加熱手段に印加される電圧は、粒子状物質が燃焼除去された後の電圧に比して大きい。このため、定電流が供給されている加熱手段に印加されている電圧を測定することにより、電極部に付着していた粒子状物質が燃焼除去されたか否かの判定を精度良く行うことができる。
【0012】
従って、本発明によれば、粒子状物質が燃焼除去されたか否かの判定を行いながら粒子状物質の燃焼除去が可能となる。即ち、本発明によれば、精密回路である検知回路部に悪影響を与えることなく、迅速且つ精度良く、電極部に付着した粒子状物質が燃焼除去されたか否かの判定を行うことができる。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の粒子状物質検出装置において、前記制御手段は、前記電圧測定手段により測定された電圧と予め設定された基準値との偏差を算出し、算出した偏差が所定時間の間、所定値より小さいときに、前記電極部に付着している粒子状物質が除去されたと判定することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、電圧測定手段により測定された電圧と予め設定された基準値との偏差を算出し、算出した偏差が所定時間の間、所定値より小さいときに、電極部に付着している粒子状物質が除去されたと判定するように制御手段を構成した。ここで、予め設定された基準値とは、粒子状物質が燃焼していない、つまり電極部において粒子状物質が除去されたときの加熱手段に印加される電圧である。
これにより、精密回路である検知回路部に悪影響を与えることなく、さらに精度良く、電極部に付着した粒子状物質が燃焼除去されたか否かの判定を行うことができる。
【0015】
請求項3記載の発明は、内燃機関の排気通路に設けられ、排気中の粒子状物質が付着する電極部と、前記電極部からの出力値に応じて前記電極部の電気的特性を検知する検知回路部と、を備え、前記検知回路部で検知した電気的特性に基づいて排気中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、前記電極部と前記検知回路部とを接続及び遮断する出力回路部と、電流が供給されると発熱し、前記電極部を昇温させて前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する加熱手段と、前記加熱手段に定電圧を印加する定電圧電源部と、前記加熱手段に供給されている電流を測定する電流測定手段と、前記定電圧電源部を制御し、前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する際には、前記出力回路部を遮断するとともに、前記電流測定手段により測定された電流に基づいて、前記電極部に付着している粒子状物質が除去されたか否かを判定することを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、加熱手段に定電圧を印加する定電圧電源部と、加熱手段に供給されている電流を測定する電流測定手段と、定電圧電源部を制御して電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する制御手段と、を含んで粒子状物質検出装置を構成した。また、電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する際には、出力回路部を遮断するとともに、電流測定手段により測定された電流に基づいて、電極部に付着している粒子状物質が除去されたか否かを判定する制御手段を含んで粒子状物質検出装置を構成した。
即ち、本発明では、請求項1記載の粒子状物質検出装置における定電流電源部の代わりに定電圧電源部を設け、電圧測定手段の代わりに電流測定手段を設けて粒子状物質検出装置を構成した。
【0017】
上述の通り、電極部に付着している粒子状物質が燃焼すると、その燃焼熱によって、加熱手段の抵抗が大きくなるという特性がある。このため、定電圧電源部が加熱手段に定電圧を印加するためには、より小さな電流を供給する必要がある。即ち、加熱手段に定電圧を印加して電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する際に、粒子状物質が電極部に残存して燃焼している状態の場合には、加熱手段に供給される電流は、粒子状物質が燃焼除去された後の電流に比して小さい。このため、定電圧が印加されている加熱手段に供給されている電流を測定することにより、電極部に付着していた粒子状物質が燃焼除去されたか否かの判定を精度良く行うことができる。
従って、本発明によれば、定電圧が印加されている加熱手段に供給されている電流を測定することによって、電極部に付着している粒子状物質が除去されたか否かの判定が可能となり、請求項1記載の発明と同等の効果が奏される。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項3に記載の粒子状物質検出装置において、前記制御手段は、前記電流測定手段により測定された電流と予め設定された基準値との偏差を算出し、算出した偏差が所定時間の間、所定値より小さいときに、前記電極部に付着している粒子状物質が除去されたと判定することを特徴とする。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、電流測定手段により測定された電流と予め設定された基準値との偏差を算出し、算出した偏差が所定時間の間、所定値より小さいときに、電極部に付着している粒子状物質が除去されたと判定するように制御手段を構成した。ここで、予め設定された基準値とは、粒子状物質が燃焼していない、つまり電極部において粒子状物質が除去されたときの加熱手段に供給される電流である。
これにより、精密回路である検知回路部に悪影響を与えることなく、さらに精度良く、電極部に付着した粒子状物質が燃焼除去されたか否かの判定を行うことができ、請求項2記載の発明と同等の効果が奏される。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1から4いずれかに記載の粒子状物質検出装置において、前記電極部に所定の電圧を印加し、排気中の粒子状物質を前記電極部に付着させる電源部をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、電極部に所定の電圧を印加し、排気中の粒子状物質を電極部に付着させる電源部を含んで粒子状物質検出装置を構成した。
これにより、電極部に電圧を印加して粒子状物質を積極的に付着させる構成としたため、電極部に付着する粒子状物質の量が増大する。このため、電極部に付着した粒子状物質を燃焼除去すべく、加熱手段に電圧を印加又は電流を供給する時間が長くなることから、上記構成を採用することは、精密回路である検知回路部を保護する観点から有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、精密回路である検知回路部に悪影響を与えることなく、迅速且つ精度良く、電極部に付着した粒子状物質が燃焼除去されたか否かの判定が可能な粒子状物質検出装置を提供できる。即ち、本発明によれば、検知回路部を保護しつつ、迅速且つ確実な再生処理が可能な粒子状物質検出装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成には同一の番号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る粒子状物質検出装置1を備えた内燃機関5の排気系の構成を示す図である。内燃機関(以下単に「エンジン」という)5は、各気筒内に燃料を直接噴射するディーゼルエンジンである。
【0025】
エンジン5の排気が流通する排気通路には、排気浄化フィルタ(以下、「DPF(Diesel Particulate Filter)」という)6と、粒子状物質検出装置1とが、上流側からこの順で設けられている。
【0026】
DPF6は、多孔質体のフィルタ壁を備え、排気がこのフィルタ壁の微細な孔を通過する際、排気中に含まれる炭素を主成分とした粒子状物質(以下、「PM(Particulate Matter)」ともいう)を、フィルタ壁の表面及びフィルタ壁中の孔に堆積させることにより、これを捕集する。フィルタ壁の構成材料としては、例えば、チタン酸アルミニウムやコージェライト等を材料とした多孔質体が使用される。
【0027】
本実施形態に係る粒子状物質検出装置1は、エンジン5の排気系、特に排気系に設置されたDPF6の下流に配置されて、DPF6の故障診断装置として利用される。
本実施形態に係る粒子状物質検出装置1の構成を図2に示す。図2に示されるように、本実施形態に係る粒子状物質検出装置1は、エンジン5の排気通路に設けられ、排気中のPMが付着する電極部11と、電極部11からの出力値に応じて電極部11の電気的特性を検知する検知回路部12と、を備え、検知回路部12で検知した電気的特性に基づいて、排気中のPMを検出する。
【0028】
また、粒子状物質検出装置1は、電極部11と検知回路部12とを接続及び遮断する出力回路部13と、電流が供給されると発熱し、電極部11を昇温させて電極部11に付着しているPMを燃焼除去するヒーター14と、ヒーター14に定電流を供給する定電流電源15と、ヒーター14に印加されている電圧を測定する電圧計16と、定電流電源15を制御し、電極部11に付着しているPMを燃焼除去するECU10と、を備え、電極部11に付着しているPMを燃焼除去する際には、出力回路部13を遮断するとともに、電圧計16により測定された電圧に基づいて、電極部11に付着しているPMが除去されたか否かを判定する。
【0029】
また、粒子状物質検出装置1は、静電集塵式の粒子状物質検出装置であり、電極部11に所定の電圧を印加し、排気中のPMを電極部11に付着させる電源部17(図示せず)をさらに備える。
電源部17は、ECU10からの指令に基づいて動作し、所定の電圧を電極部11に所定の時間に亘って印加し、これにより、排気中に含まれるPMを、後述する電極部11のキャビティ113内に堆積させる。
【0030】
図3は、電極部11の構成を示す図である。より具体的には、図3(A)は、電極部11の電極板111の構成を示す斜視図であり、図3(B)は、2枚の電極板111,111を含んで構成された電極部11の構成を示す斜視図である。
【0031】
図3(A)に示すように、電極板111は、略矩形状のアルミナ基板111Aと、このアルミナ基板111Aの表面に形成されたタングステン導体層111Bと、を備える。このタングステン導体層111Bは、アルミナ基板111Aの略中央部において、略正方形状に形成された導体部と、この導体部からアルミナ基板111Aの一端側へかけて線状に延びる導線部と、を含んで構成される。また、アルミナ基板111Aの一端側には、このタングステン導体層111Bの導線部に積層して設けられたタングステン印刷部111Cが形成されている。
ここで、アルミナ基板111Aの厚みは、約1mmであり、タングステン導体層111Bの導体部の一辺の長さは、約10mmである。
【0032】
図3(B)に示すように、電極部11は、一対の電極板111,111を、板状のスペーサ112,112を介装して組み合わせることにより構成される。これらスペーサ112,112は、各電極板111の両端側に設けられており、これにより、各電極板111のタングステン導体層111Bの導体部には、粒子状物質が集塵されるキャビティ113が形成される。
【0033】
図2に戻って、検知回路部12は、電極部11の電気的特性を検出するインピーダンス測定器121(図示せず)を含んで構成される。
インピーダンス測定器121は、ECU10からの指令に基づいて動作し、所定の測定電圧及び測定周期の交流信号のもとで電極部11の静電容量を検出し、検出した静電容量値に略比例した検出信号をECU10に出力する。
【0034】
ECU10は、定電流電源部及び電圧測定手段を備える本発明の制御手段を構成する。ECU10は、各種入力信号波形を整形し、電圧レベルを所定のレベルに修正し、アナログ信号値をデジタル信号値に変換する等の機能を有する入力回路と、中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)とを備える。この他、ECU10は、CPUで実行される各種演算プログラム及び演算結果等を記憶する記憶回路と、検知回路部12、リレー13A、定電流電源15等に制御信号を出力する出力回路と、を備える。
【0035】
また、ECU10には、排気中に含まれるPM濃度と電極部11に付着するPM量との相関関係を示すデータに加えて、電極部11の電気的特性(静電容量等)と電極部11に付着するPM量との相関関係を示すデータが予め格納されており、検出した静電容量値から排気中のPM濃度が算出される。
【0036】
出力回路部13は、電極部11と検知回路部12とを接続及び遮断する。出力回路部13は、リレー13Aを備え、ECU10からの制御信号により、オン/オフ制御が行われる。
【0037】
ヒーター14は、発熱抵抗体であり、定電流電源15により供給される所定の定電流によって発熱し、電極部11を昇温させる。
ヒーター14は、電極部11と別個に設置されており、ヒーター14と電極部11との間には絶縁部材(図示せず)が介装されている。
【0038】
電圧計16は、定電流電源15により所定の定電流が供給されたヒーター14に印加されている電圧を測定する。電圧計16は、ECU10に接続されており、測定された電圧値はECU10に出力される。
【0039】
定電流電源15は、所定の定電流をヒーター14に供給する。
電源部17は、所定の電圧を電極部11に印加する。
【0040】
次に、粒子状物質検出装置1のPM除去手順について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0041】
先ず、PM除去処理(再生処理)を開始するにあたり、ステップS1において、ECU10からの制御信号によりリレー13Aをオフ制御し、出力回路部13を遮断する。
これにより、検知回路部12が電極部11から遮断される。
【0042】
次いで、ステップS2において、ECU10からの制御信号により定電流電源15を制御し、ヒーター14に供給する定電流を、安定動作定電流Imeasから再生定電流Iregenに変更する。
これにより、ヒーター14からの発熱で電極部11が加熱され、電極部11に付着しているPMの燃焼除去が実行される。
【0043】
次いで、ステップS3において、予め設定された通常のPM除去処理(再生処理)時間tregenが経過しているか否かを判断する。
tregenが経過しておりYESと判断された場合には、ステップS4に進み、tregenが経過しておらずNOと判断された場合には、tregenが経過するまでPM除去処理(再生処理)を継続する。
【0044】
次いで、ステップS4において、再生定電流Iregenが供給されているヒーター14に印加されている電圧Vを電圧計16で測定し、測定した電圧Vと予め設定された基準値Vregenとの偏差を算出し、算出した偏差が所定時間Δtregen秒間、所定値Verrより小さいか否かを判断する。即ち、測定した電圧Vが、|V−Vregen|≦VerrをΔtregen秒間満たすか否かを判断する。
ここで、Vregenは予め設定された基準値であり、具体的には、PMが燃焼していない、つまり電極部11においてPMが完全に除去されたときのヒーター14に印加される電圧である。また、Verrは予め設定された偏差である。
測定した電圧Vが、|V−Vregen|≦VerrをΔtregen秒間満たしておりYESと判断された場合には、ステップS5に進む。また、測定した電圧Vが、|V−Vregen|≦VerrをΔtregen秒間満たしておらずNOと判断された場合には、電圧Vが、|V−Vregen|≦VerrをΔtregen秒間満たすようになるまでPM除去処理(再生処理)を継続する。
【0045】
ここで、上記ステップS4の制御を行ったときのヒーター14の電圧値の変化について、電極部11にPMが付着している場合と付着していない場合とを比較した結果を図5に示す。図5に示されるように、電極部11にPMが付着している場合には、加熱によりPMが燃焼して燃焼熱が発生し、抵抗が上がる結果、PMが付着していない場合に比して電圧値が高い。このため、電極部11にPMが付着している場合、当初の電圧値は高いものの、PMが燃焼除去されるに従って電圧値は低下し、やがては一定値となる。上記ステップS4の制御は、このような特性を利用したものである。
【0046】
次いで、ステップS5において、PM除去処理(再生処理)終了とみなし、ECU10からの制御信号により定電流電源15の供給電流量を、再生定電流Iregenから安定動作定電流Imeasに変更する。変更後、ECU10からの制御信号によりリレー13Aをオン制御し、出力回路部13を接続する。
これにより、検知回路部12が電極部11に接続され、PM除去処理(再生処理)を終了する。
【0047】
以上のような手順により、PM除去処理(再生処理)が行われる粒子状物質検出装置1によれば、以下のような効果が奏される。
本実施形態によれば、電極部11と検知回路部12とを接続及び遮断する出力回路部13と、電流が供給されると発熱し、電極部11を昇温させて電極部11に付着しているPMを燃焼除去するヒーター14と、を含んで粒子状物質検出装置1を構成した。また、電極部11に付着しているPMを燃焼除去する際に、出力回路部13を遮断する制御手段としてのECU10を含んで粒子状物質検出装置1を構成した。
これにより、電極部11に付着したPMを燃焼除去する際に、出力回路部13を遮断することができる。従って、ヒーター14に高電圧が印加された場合であっても、電極部11から精密機器である検知回路部12へ電圧がかかることはなく、検知回路部12に悪影響を与えることを回避できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、ヒーター14に定電流を供給する定電流電源15と、ヒーター14に印加されている電圧を測定する電圧計16と、定電流電源15を制御して電極部11に付着しているPMを燃焼除去する制御手段としてのECU10と、を含んで粒子状物質検出装置1を構成した。
また、電極部11に付着しているPMを燃焼除去する際には、出力回路部13を遮断するとともに、電圧計16により測定された電圧に基づいて、電極部11に付着しているPMが除去されたか否かを判定する制御手段としてのECU10を含んで粒子状物質検出装置1を構成した。
これにより、従来技術では、電極部に付着しているPMが除去されたか否かの判定を、電極部の電気的特性に基づいて行っていたところ、本実施形態によれば、定電流が供給されているヒーター14に印加された電圧を測定することにより行うことができる。
【0049】
これは、電極部11に付着しているPMが燃焼すると、その燃焼熱によって、ヒーター14の抵抗が大きくなる特性による。この特性により、定電流電源15がヒーター14に定電流を供給するためには、より大きな電圧を印加する必要がある。即ち、ヒーター14に定電流を供給して電極部11に付着しているPMを燃焼除去する際に、PMが電極部11に残存して燃焼している状態の場合には、ヒーター14に印加される電圧は、PMが燃焼除去された後の電圧に比して大きい。このため、定電流が供給されているヒーター14に印加されている電圧を測定することにより、電極部11に付着していたPMが燃焼除去されたか否かの判定を精度良く行うことができる。
【0050】
従って、本実施形態によれば、PMが燃焼除去されたか否かの判定を行いながらPMの燃焼除去が可能となる。即ち、本実施形態によれば、精密回路である検知回路部12に悪影響を与えることなく、迅速且つ精度良く、電極部11に付着したPMが燃焼除去されたか否かの判定を行うことができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、電圧計16により測定された電圧と予め設定された基準値との偏差を算出し、算出した偏差が所定時間の間、所定値より小さいときに、電極部11に付着しているPMが除去されたとECU10が判定するように構成した。
これにより、精密回路である検知回路部12に悪影響を与えることなく、さらに精度良く、電極部11に付着したPMが燃焼除去されたか否かの判定を行うことができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、電極部11に所定の電圧を印加し、排気中のPMを電極部11に付着させる電源部17を含んで粒子状物質検出装置1を構成した。
これにより、電極部11に電圧を印加してPMを積極的に付着させる構成としたため、電極部11に付着するPMの量が増大する。このため、電極部11に付着したPMを燃焼除去すべく、ヒーター14に電圧を印加する時間が長くなることから、上記構成を採用することは、精密回路である検知回路部12を保護する観点から有効である。
【0053】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る粒子状物質検出装置2は、第1実施形態と同様に、エンジン5の排気系に設置されたDPF6の下流に配置されて、DPF6の故障診断装置として利用される。
第2実施形態に係る粒子状物質検出装置2の構成を図6に示す。図6に示されるように、粒子状物質検出装置2は、粒子状物質検出装置1における定電流電源15の代わりに定電圧電源25を備えるとともに、電圧計16の代わりに電流計26を備える。また、定電圧電源25を制御し、電極部11に付着しているPMを燃焼除去するECU20を備え、電流計26により測定された電流に基づいて、電極部11に付着しているPMが除去されたか否かを判定する。
【0054】
定電圧電源25は、所定の定電圧をヒーター14に印加する。
電流計26は、定電圧電源25により所定の定電圧が印加されたヒーター14に供給されている電流を測定する。電流計26は、ECU20に接続されており、測定された電流値はECU20に出力される。
ECU20は、定電圧電源部及び電流測定手段を備える本発明の制御手段を構成し、ECU20は、第1実施形態の定電流電源15に制御信号を出力する出力回路の代わりに、定電圧電源25に制御信号を出力する出力回路を備える。
その他の構成については、第1実施形態に係る粒子状物質検出装置1と同様であるため、省略する。
【0055】
次に、粒子状物質検出装置2のPM除去手順について、図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0056】
先ず、PM除去処理(再生処理)を開始するにあたり、ステップS1において、ECU20からの制御信号によりリレー13Aをオフ制御し、出力回路部13を遮断する。
これにより、検知回路部12が電極部11から遮断される。
【0057】
次いで、ステップS2において、ECU20からの制御信号により定電圧電源25を制御し、ヒーター14に印加する定電圧を、安定動作定電圧Vmeasから再生定電圧Vregenに変更する。
これにより、ヒーター14からの発熱で電極部11が加熱され、電極部11に付着しているPMの燃焼除去が実行される。
【0058】
次いで、ステップS3において、予め設定された通常のPM除去処理(再生処理)時間tregenが経過しているか否かを判断する。
tregenが経過しておりYESと判断された場合には、ステップS4に進み、tregenが経過しておらずNOと判断された場合には、tregenが経過するまでPM除去処理(再生処理)を継続する。
【0059】
次いで、ステップS4において、再生定電圧Vregenが印加されているヒーター14に供給されている電流Iを電流計26で測定し、測定した電流Iと予め設定された基準値Iregenとの偏差を算出し、算出した偏差が所定時間Δtregen秒間、所定値Ierrより小さいか否かを判断する。即ち、測定した電流Iが、|I−Iregen|≦IerrをΔtregen秒間満たすか否かを判断する。
ここで、Iregenは予め設定された基準値であり、具体的には、PMが燃焼していない、つまり電極部11においてPMが完全に除去されたときのヒーター14に供給される電流である。また、Ierrは予め設定された偏差である。
測定した電流Iが、|I−Iregen|≦IerrをΔtregen秒間満たしておりYESと判断された場合には、ステップS5に進む。また、測定した電流Iが、|I−Iregen|≦IerrをΔtregen秒間満たしておらずNOと判断された場合には、電圧Iが、|I−Iregen|≦IerrをΔtregen秒間満たすようになるまでPM除去処理(再生処理)を継続する。
【0060】
ここで、上記ステップS4の制御を行ったときのヒーター14の電流値の変化について、電極部11にPMが付着している場合と付着していない場合とを比較した結果を図8に示す。図8に示されるように、電極部11にPMが付着している場合には、加熱によりPMが燃焼して燃焼熱が発生し、抵抗が上がる結果、PMが付着していない場合に比して電流値が小さい。このため、電極部11にPMが付着している場合の電流値は小さいものの、PMが燃焼除去されるに従って電流値は大きくなり、やがては一定値となる。上記ステップS4の制御は、このような特性を利用したものである。
【0061】
次いで、ステップS5において、PM除去処理(再生処理)終了とみなし、ECU20からの制御信号により定電圧電源25の印加電圧を、再生定電圧Vregenから安定動作定電圧Vmeasに変更する。変更後、ECU20からの制御信号によりリレー13Aをオン制御し、出力回路部13を接続する。
これにより、検知回路部12が電極部11に接続され、PM除去処理(再生処理)を終了する。
【0062】
以上のような手順により、PM除去処理(再生処理)が行われる粒子状物質検出装置2によれば、第1実施形態に係る粒子状物質検出装置1と同等の効果が奏される。
即ち、本実施形態によれば、ヒーター14に高電圧が印加された場合であっても、電極部11から精密機器である検知回路部12へ電圧がかかることはなく、検知回路部12に悪影響を与えることを回避できる。
また、本実施形態によれば、PMが燃焼除去されたか否かの判定を行いながらPMの燃焼除去が可能となり、精密回路である検知回路部12に悪影響を与えることなく、迅速且つ精度良く、電極部11に付着したPMが燃焼除去されたか否かの判定を行うことができる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
例えば、電極部に電圧を印加して積極的に粒子状物質を付着させる静電集塵式に限られず、粒子状物質が付着した電極部の電気的特性に基づいて排気中の粒子状物質を検出する装置であれば、本発明を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】粒子状物質検出装置1が設置された排気系の構成を示す図である。
【図2】粒子状物質検出装置1の構成を示す図である。
【図3】電極部11の構成を示す図である。
【図4】粒子状物質検出装置1のPM除去手順を示すフローチャートである。
【図5】図4のフローにおけるステップS4の制御を行ったときのヒーター14の電圧値の変化を示す図である。
【図6】粒子状物質検出装置2の構成を示す図である。
【図7】粒子状物質検出装置2のPM除去手順を示すフローチャートである。
【図8】図7のフローにおけるステップS4の制御を行ったときのヒーター14の電流値の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1、2 粒子状物質検出装置
5 エンジン
6 DPF
10、20 ECU
11 電極部
12 検知回路部
13 出力回路部
13A リレー
14 ヒーター
15 定電流電源
16 電圧計
25 定電圧電源
26 電流計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ、排気中の粒子状物質が付着する電極部と、
前記電極部からの出力値に応じて前記電極部の電気的特性を検知する検知回路部と、を備え、前記検知回路部で検知した電気的特性に基づいて排気中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、
前記電極部と前記検知回路部とを接続及び遮断する出力回路部と、
電流が供給されると発熱し、前記電極部を昇温させて前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する加熱手段と、
前記加熱手段に定電流を供給する定電流電源部と、
前記加熱手段に印加されている電圧を測定する電圧測定手段と、
前記定電流電源部を制御し、前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する際には、前記出力回路部を遮断するとともに、前記電圧測定手段により測定された電圧に基づいて、前記電極部に付着している粒子状物質が除去されたか否かを判定することを特徴とする粒子状物質検出装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電圧測定手段により測定された電圧と予め設定された基準値との偏差を算出し、算出した偏差が所定時間の間、所定値より小さいときに、前記電極部に付着している粒子状物質が除去されたと判定することを特徴とする請求項1に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項3】
内燃機関の排気通路に設けられ、排気中の粒子状物質が付着する電極部と、
前記電極部からの出力値に応じて前記電極部の電気的特性を検知する検知回路部と、を備え、前記検知回路部で検知した電気的特性に基づいて排気中の粒子状物質を検出する粒子状物質検出装置であって、
前記電極部と前記検知回路部とを接続及び遮断する出力回路部と、
電流が供給されると発熱し、前記電極部を昇温させて前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する加熱手段と、
前記加熱手段に定電圧を印加する定電圧電源部と、
前記加熱手段に供給されている電流を測定する電流測定手段と、
前記定電圧電源部を制御し、前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記電極部に付着している粒子状物質を燃焼除去する際には、前記出力回路部を遮断するとともに、前記電流測定手段により測定された電流に基づいて、前記電極部に付着している粒子状物質が除去されたか否かを判定することを特徴とする粒子状物質検出装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記電流測定手段により測定された電流と予め設定された基準値との偏差を算出し、算出した偏差が所定時間の間、所定値より小さいときに、前記電極部に付着している粒子状物質が除去されたと判定することを特徴とする請求項3に記載の粒子状物質検出装置。
【請求項5】
前記粒子状物質検出装置は、前記電極部に所定の電圧を印加し、排気中の粒子状物質を前記電極部に付着させる電源部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の粒子状物質検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−151059(P2010−151059A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331319(P2008−331319)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】