粒子線治療装置
【課題】所望の粒子線の照射の軌跡を少ない回数重ね合わせることにより線量分布の一様性が確保できる粒子線治療装置を提供する。
【解決手段】粒子線治療装置は、患部に照射するために輸送されてきた粒子線を上記粒子線の進行方向に対して垂直な直交する2方向に上記粒子線の流れを偏向して、周期毎に該周期の始まりに位置する照射位置に戻るように上記粒子線の照射位置を走査し、1つの上記周期の間に画かれる軌跡を複数重ね合わせて所望の計画線量を上記患部に照射する粒子線治療装置において、上記周期の終了の時だけ上記粒子線を遮断することが可能である。
【解決手段】粒子線治療装置は、患部に照射するために輸送されてきた粒子線を上記粒子線の進行方向に対して垂直な直交する2方向に上記粒子線の流れを偏向して、周期毎に該周期の始まりに位置する照射位置に戻るように上記粒子線の照射位置を走査し、1つの上記周期の間に画かれる軌跡を複数重ね合わせて所望の計画線量を上記患部に照射する粒子線治療装置において、上記周期の終了の時だけ上記粒子線を遮断することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粒子線を患部に上塗りするように繰り返し照射して計画線量を照射する粒子線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の粒子線治療装置における粒子線の照射野の形成方法として、所望の位置に対して所望の計画線量になる度に粒子線の照射位置を移動して患部全体に亘る照射を行うシングルペインティング法(例えば、特許文献1参照)と、ターゲット領域に対して所定の軌跡をなぞるように所望の計画線量の数分の1の線量の粒子線の照射位置を走査して、軌跡が幾重にも重なることにより所望の計画線量が照射されるリペインティング法とがある(例えば、非特許文献1参照)。
そして、リペインティング法において採用される軌跡として、ワブラ法におけるように大きさが一定の回転ベクトルの先端が描く円の軌跡と、螺旋ワブラ法におけるように大きさが時間の平方根の関数に従って変調される回転ベクトルの先端が描く螺旋状の軌跡とがある。
この螺旋ワブラ法では、ワブラ法に比べて線量分布の一様性を高めるために、螺旋状の軌跡を描くようにしている。この場合、粒子線の進行方向に対して垂直な直交する2軸方向(以下の説明においてはX軸方向とY軸方向と称す。)に粒子線に磁場を加えて粒子線の照射位置を走査するために、式(1)〜式(4)から求められる励磁電流IX、IYを直交方向に励磁される2つの電磁石に流している。X軸励磁電流IXの大きさは、螺旋周期TSで0から最大値を経由して0に戻る値とワブラ角速度ωの正弦関数で変化する値との積に従って変化する。また、Y軸励磁電流IYの大きさは、螺旋周期TSで0から最大値を経由して0に戻る値とワブラ角速度ωの余弦関数で変化する値との積に従って変化する。
【0003】
【数1】
【0004】
【特許文献1】特開2002−191709号公報
【非特許文献1】Masataka Komori, et al, ”Optimization of Spiral−Wobbler System for Heavy−Ion Radiotherapy”,”Japanese Journal of Applied Physics”,2004,Vol.43,No.9A,pp.6463−6467
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、螺旋ワブラ法では、1つの螺旋周期TSの間で描かれる螺旋軌跡を螺旋周期回数だけ重ね合わせて計画線量を照射しているが、重ね合わされる螺旋軌跡の位置はその螺旋周期開始時点の位相により決められる。そこで、線量分布の一様性を確保するためには、重ね合わされる螺旋軌跡の螺旋周期開始時点の位相が、均等にばらつくようにしなければならない。しかし、この螺旋周期開始時点の位相(以下、螺旋位相と称す。)Φは、式(5)から求められるので、螺旋周期TS、ワブラ角速度ω、初期位相φ0および螺旋周期回数nにより一義的に決まっている。
【0006】
【数2】
【0007】
このように、各螺旋位相Φは、治療開始時点の位相φ0、螺旋周期TS、ワブラ角速度ωにより予め決まってしまっているので、所望の一様性を確保するために、重ね合わせる螺旋軌跡を非常に多くして、螺旋位相が統計的にはランダムに見なせるようにしている。例えば、非特許文献1では、線量分布の一様性を確保するために1秒以上かけている。このように、従来の螺旋ワブラ法では、螺旋軌跡を数多く重なるように照射を行わなければならないという問題がある。
【0008】
また、各螺旋位相Φが、一義的に螺旋周期TSとワブラ角速度ωとにより決められてしまうので、螺旋周期TSを変えたときに線量分布の一様性を確保できるワブラ角速度ωは限られており、螺旋周期TSとワブラ角速度ωの選定に制約が生じるという問題がある。
【0009】
また、1回の連続照射を1秒以上持続しなければならないので、粒子線は一般的にシンクロトロン方式の加速器から発生されており、加速器は加速、減速を周期的に繰り返えして、例えば2秒周期で周期運転されており、加速と減速との間で粒子線が粒子線照射部に供給される。そして、照射全体の時間を短くするために、なるべく粒子線を供給する時間を短くして、加速器を効率的に運転する。しかし、粒子線を供給する時間が数百ミリ秒のとき、1つの螺旋周期の途中で粒子線の供給が中断されることが起こるので、加速器の運転周期毎の線量分布の一様性が確保される保証がないという問題がある。
そのため、粒子線を供給する時間を長くすることにより螺旋周期の途中での粒子線の供給の中断を防ごうとしようとすると、粒子線の供給時間を短くすることができないなど加速器の運転周期に制約が生じるという問題がある。
【0010】
また、患者の呼吸に伴って移動する臓器や変形する臓器を照射するときの呼吸に合わせて粒子線の照射を入切する呼吸同期運転では、螺旋周期TSの途中で粒子線の供給が中断されるので、線量分布の一様性が確保される保証がないという問題がある。
【0011】
また、照射領域を深さ方向に分割して照射する積層原体照射法に螺旋ワブラ法を適用したとき、分割された各層の計画線量は少ないために螺旋周期回数が少なくなり、線量分布の一様性を確保するために必要な螺旋回数に達しないという問題がある。
【0012】
また、螺旋周期回数を所定回数以上必要とするので、線量率を上げると螺旋周期回数が所定の回数を下回ってしまって線量分布の一様性が確保できずに照射時間を長くしなければならないという問題がある。
【0013】
この発明の目的は、所望の粒子線の照射の軌跡を少ない回数重ね合わせることにより線量分布の一様性が確保できる粒子線治療装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係わる粒子線治療装置は、患部に照射するために輸送されてきた粒子線を上記粒子線の進行方向に対して垂直な直交する2方向に上記粒子線の流れを偏向して、周期毎に該周期の始まりに位置する照射位置に戻るように上記粒子線の照射位置を走査し、1つの上記周期の間に画かれる軌跡を複数重ね合わせて所望の計画線量を上記患部に照射する粒子線治療装置において、上記周期の終了の時だけ上記粒子線を遮断することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係わる粒子線治療装置の効果は、螺旋周期単位で照射が繰り返されるので、照射が螺旋周期の途中で中断されることがなくなり、線量率を上げても、線量分布の一様性の確保が確実に行われるし、照射時間の短縮もできる。
また、加速器の運転周期に対する制約を緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図2は、実施の形態1に係わるデータ記憶部のデータテーブルのデータ構造を示す図である。図3は、実施の形態1に係わるビーム検出装置のブロック図である。
この発明の実施の形態1に係わる粒子線治療装置1は、図1に示すように、粒子線を発生する粒子線発生部2、粒子線発生部2で発生された粒子線を粒子線照射部3に輸送する粒子線輸送部4、患者のターゲット領域(患部)5に粒子線を照射する粒子線照射部3を具備している。
粒子線発生部2は、シンクロトロン方式の加速器からなる粒子線発生装置6、発生した粒子線の粒子線輸送部4への入切を制御するビーム入切装置7が備えられている。
また、粒子線輸送部4は、粒子線の粒子線照射部3への入切を制御するビーム入切装置8が備えられている。
このビーム入切装置7、8は、粒子線照射部3から送られてくるビーム入切信号のレベルが「HIGH」のとき粒子線を流し、レベルが「LOW」のとき粒子線を遮断する。
【0017】
粒子線照射部3は、粒子線を走査することにより照射野を形成する照射野形成装置10、照射する線量を検出するビーム検出装置11、患者が横たわる患者治療台12および患者の患者治療台12における患者の位置を確認する患者位置確認装置13が備えられている。
【0018】
照射野形成装置10は、粒子線を粒子線の進行方向に対して垂直な直交する2方向のうちの1方向(以下、X軸方向と称す。)に偏向するX軸電磁石21、粒子線の進行方向に対して垂直なX軸方向に直交する方向(以下、Y軸方向と称す。)に偏向するY軸電磁石22、X軸電磁石21にX軸励磁電流を流して励磁するX軸電磁石電源23、Y軸電磁石22にY軸励磁電流を流して励磁するY軸電磁石電源24、X軸励磁電流指令値とY軸励磁電流指令値とをそれぞれX軸電磁石電源23とY軸電磁石電源24とに送る指令値送信部25、連続しているアドレス毎に1対のX軸励磁電流指定値およびY軸励磁電流指定値や螺旋周期の終了を示すデータが記憶されているデータ記憶部26、データ記憶部26からX軸励磁電流指令値とY軸励磁電流指令値とを読み出すタイミングを発生するタイミング制御装置27、照射線量を監視し、ビームの要求を判定し、ビーム入切装置7、8を制御する入切制御部28および細い径のビームを所定の径に散乱する散乱体30が備えられている。
【0019】
X軸電磁石21では、図示しない励磁コイルにX軸励磁電流を大きさと向きとを変化しながら流すことにより、粒子線の流れをX軸方向に偏向する。同様に、Y軸電磁石22では、図示しない励磁コイルにY軸励磁電流を大きさと向きとを変化しながら流すことにより、粒子線の流れをY軸方向に偏向する。
X軸電磁石電源23は、入力されるX軸励磁電流指令値に基づいてX軸電磁石21にX軸励磁電流を流す。また、Y軸電磁石電源24は、入力されるY軸励磁電流指令値に基づいてY軸電磁石22にY軸励磁電流を流す。
【0020】
データ記憶部26には、図2に示すようなデータ構造を有するデータテーブルが設けられている。そして、データテーブルには、連番のアドレスに対してそれぞれ3つのデータ領域と1つのポインタ領域が設定されており、2つのデータ領域には、X軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値とが格納されている。また、残りの1つのデータ領域は、螺旋周期終了ビットと称し、そこには螺旋周期の終了を表すデータが格納されており、螺旋周期の終了のアドレスのとき「1」が格納されていて、それ以外は「0」が格納されている。
また、クロック信号に基づいてインクリメントされたアドレスに対応するポインタ領域に「1」が格納され、それ以外のアドレスに対応するポインタ領域に「0」が格納されている。ポインタ領域に「1」が格納されたアドレスのデータ領域のデータが指令値送信部25に送られる。
【0021】
X軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値は、螺旋周期TSをm等分する所定のクロック周期W毎に式(6)〜(9)に基づいて求められ、データ記憶部26に格納される。例えば、螺旋周期TSが40ミリ秒で200等分すると、クロック周期Wが0.2ミリ秒でなり、1つの螺旋周期TSで200個のアドレスが占有され、そのアドレスが0番から199番までとすると、199番のアドレスの螺旋周期終了ビットに「1」が格納されている。そして、所定の螺旋周期回数200回分のデータがデータ記憶部26に格納されている。
【0022】
【数3】
【0023】
データ記憶部26では、クロック信号が入力される度に、アドレスがインクリメントされて、そのアドレスに格納されているX軸励磁電流指定値、Y軸励磁電流指定値および螺旋周期終了ビットのデータが読み出されて、指令値送信部25に送られる。
【0024】
指令値送信部25は、データ記憶部26から送られてきたX軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値に基づいてX軸励磁電流指令値をX軸電磁石電源23に、Y軸励磁電流指令値をY軸電磁石電源24に送信する。さらに、指令値送信部25は、データ記憶部26から送られてきた螺旋周期終了ビットのデータに基づき、螺旋周期終了ビットのデータが「1」のとき螺旋周期終了信号として、「LOW」、「HIGH」、「LOW」レベルに変化するパルスを入切制御部28に送信する。
【0025】
タイミング制御装置27は、螺旋周期TSとその等分数mとから求められるクロック周期Wのクロック信号と、データ記憶部26のアドレスを最初のアドレスに戻すリセット信号と、をデータ記憶部26に入力する。
【0026】
入切制御部28は、粒子線照射による治療に先立って設定された計画線量が記憶されている判定用記憶装置31、ビーム検出装置11からの照射線量と計画線量とを比較してビーム要求の有無を判定し、ビーム要求信号のレベルを変化する判定装置32およびビーム要求信号のレベルを螺旋周期の区切りごとにビーム入切信号としてビーム入切装置7、8に送信するレジスタ33が備えられている。ビーム要求信号は、ビーム要求があるとき「HIGH」レベル、ビーム要求がないとき「LOW」レベルとなっている。
【0027】
ビーム検出装置11は、図3に示すように、照射される粒子線の電荷の流れ、すなわちビーム電流を計測する線量モニタ35、ビーム電流の大きさに比例する周波数のパルス列に変換する電流周波数変換器36、パルス列に含まれるパルスの数をカウントして所定の時限で積算してカウント値を求めるカウンタ37が備えられている。このカウント値が照射線量である。
【0028】
次に、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1の動作について説明する。
治療の開始の時点では、照射線量は零であり、計画線量より少ないので、ビーム要求信号のレベルは「HIGH」となっている。そして、図示しない照射開始のためのスイッチが入力されると、クロック信号がデータ記憶部26に送信され、そのクロック信号の入力の度にアドレスがインクリメントされて、そのアドレスのX軸励磁電流指定値、Y軸励磁電流指定値および螺旋周期終了ビットのデータが読み出され、X軸励磁電流指令値とY軸励磁電流指令値とがX軸電磁石電源23とY軸電磁石電源24とに送信される。X軸電磁石電源23とY軸電磁石電源24は、それぞれX軸電磁石21とY軸電磁石22とを励磁し、粒子線の流れを偏向する。
そして、アドレスのインクリメントが繰り返されて、螺旋周期の終わりのアドレスに達したとき、読み出された螺旋周期終了ビットのデータは「1」であるので、螺旋周期終了信号としてのパルスが送信される。
1回の螺旋周期での線量は計画線量に達しないので、ビーム要求信号のレベルは「HIGH」のままであるので、粒子線はそのまま供給されて、次の螺旋周期での照射が継続される。
そして、複数の螺旋周期の照射を繰り返すことにより、照射線量が計画線量に達する螺旋周期での照射が始まる。この螺旋周期の最初のアドレスから始まって、あるアドレスのときに照射線量が計画線量に達すると、ビーム要求信号のレベルは「LOW」に変化する。しかし、レジスタ33には螺旋周期終了信号としてのパルスが入力されていないので、ビーム入切信号のレベルは「HIGH」のままである。そして、この螺旋周期の終了のアドレスに達すると、螺旋周期終了ビットが「1」なので、螺旋周期終了信号としてのパルスがレジスタ33に送られる。
レジスタ33にパルスが入力されると、ビーム入切信号のレベルが「LOW」に変化し、粒子線が遮断される。
【0029】
このように螺旋周期単位で照射が繰り返されるので、照射が螺旋周期の途中で中断されることがなくなり、線量率を上げても、線量分布の一様性の確保が確実に行われるし、照射時間の短縮もできる。
また、加速器の運転周期に対する制約も緩和することができる。
【0030】
なお、照射の入切は螺旋周期毎に行われるので、照射線量の制御は1回の螺旋周期において照射される照射線量単位で行われ、常に計画線量に対して実際に照射された線量は超えてしまうことになる。
例えば、加速器の運転周期が2秒で、その内ビームON時間は400ミリ秒で、加速器によって照射される平均線量率が2Gy/分とすると、2Gyの計画線量を患部に照射するためには60秒かかるので、加速器は30回の運転が必要になる。ビームON時間は30回の運転全体では12秒となり、また、螺旋周期43.5ミリ秒での照射線量は0.00725Gyとなる。30回の運転において、1回目から29回目までの照射線量を積算し、計画線量に達していない場合、次の螺旋周期の照射に移るので、計画線量を越える線量は最大でも1回の螺旋周期分の照射線量であり、計画線量に対する照射線量の精度は例えば上述の例では0.36%と十分に確保される。
【0031】
また、螺旋ワブラ法によるビーム照射は、照射を継続しながら連続的に走査させる方法、ビームの照射を一旦停止してビームを移動して移動が完了したらビームの照射を開始する方法、照射を継続しながらビームの移動と停止とを繰り返す方法などが知られているが、いずれの方法もこの発明の粒子線治療装置1に適用することができる。
【0032】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2に係わる粒子線治療装置の入切制御部のブロック図である。図5は、実施の形態2に係わる粒子線治療装置のデータ記憶部のデータテーブルのデータ構造である。
実施の形態1においては、粒子線の入切はデータ記憶部26に格納されている螺旋周期終了ビットを読み出して螺旋周期終了信号としてのパルスをレジスタ33に入力することにより行われているが、実施の形態2においては、タイミング制御装置27からのクロック信号をカウントし、判定用記憶装置31に予め記憶されている螺旋周期分割数とカウント値とを比較し、カウント値が螺旋周期分割数と等しくなったとき、レジスタ33に螺旋周期終了信号としてのパルスを送信することによりビームの入切を行う。このことに係わり、図5に示すように、データ記憶部26のデータテーブルは、実施の形態1と異なり螺旋周期終了ビットが省かれており、これ以外は実施の形態1と同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0033】
実施の形態2に係わる入切制御部28Bは、図4に示すように、タイミング制御装置27からのクロック信号をカウントして、カウント値を求めるカウンタ40、判定用記憶装置31に予め記憶されている螺旋周期分割数とカウント値とを比較して、螺旋周期終了信号としてのパルスをレジスタ33に送信する比較回路41が備えられている。カウンタ40では、比較回路41から螺旋周期終了信号としてのパルスが発信されると、カウント値がリセットされて、新たにカウントを開始する。
【0034】
このような粒子線治療装置は、クロック信号をカウンタ40によりカウントして螺旋周期の終了を検出するので、データ記憶部26に別途螺旋周期の終了に係わるデータを記憶しておかなくてもよい。
【0035】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3に係わる粒子線治療装置の入切制御部のブロック図である。
実施の形態3に係わる入切制御部28Cは、実施の形態1に係わる入切制御部28に即ビーム遮断機能が付加されていることが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態3に係わる入切制御部28Cでは、図6に示すように、判定装置32から照射線量が計画線量に達したとき、レベル「LOW」、それ以外の時はレベル「HIGH」になっている即ビーム遮断信号がAND回路43に入力されている。
AND回路43には、即ビーム遮断信号とレジスタ33のQ出力とが入力され、ビーム入切信号が出力されている。そして、即ビーム遮断信号とレジスタ33のQ出力の少なくともいずれか一方が「LOW」のときビーム入切信号のレベルが「LOW]に変化する。このようにして、螺旋周期の途中でも必要があればビームの照射を中断することができる。
この即ビーム遮断信号は、図示しない遮断スイッチをONすることによって創成してもよい。
【0036】
このような粒子線治療装置は、螺旋周期の回数が線量分布の一様性を確保する上で必要以上になっているとき、螺旋周期の途中で照射を中断しても線量分布の一様性が悪くならないので、線量満了に対して即照射を中断して計画線量を越える量を低減することができる。
また、即ビーム遮断信号を緊急停止信号として使用できるので、咳や患者の急な動きなど異常時における照射停止時間を短縮できるので、安全性が高まる。
【0037】
実施の形態4.
図7は、この発明の実施の形態4に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図8は、実施の形態4に係わる信号処理装置と入切制御部とに係わる信号のタイミングチャートである。図9は、実施の形態4に係わる入切制御部のブロック図である。
実施の形態4に係わる粒子線治療装置1Dは、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1に患者監視装置としての呼吸ゲート発生装置44が追加され、これに関連して入切制御部28Dが変更されていることが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態4に係わる呼吸ゲート発生装置44は、図7に示すように、患者の呼吸を測定するための呼吸測定装置45、測定された呼吸に基づく信号を処理するための信号処理装置46から構成されている。呼吸ゲート発生装置44として、例えば、安西メディカル社製のAZ773があるが、これ以外にも種々の方法があり、ここで説明する方法に限定するものではない。
【0038】
呼吸測定装置45では、連続的に患者5の呼吸状態を計測し、信号処理装置46では、図8に示すように、呼吸測定に基づき呼吸曲線を生成する。そして、呼吸曲線を予め定められた閾値と比較し、呼吸曲線が閾値より下にあるときを呼吸が安定していると判断し、呼吸ゲート信号のレベルを「HIGH]に変える。呼吸曲線が閾値より上にあるときを呼吸が不安定であると判断し、呼吸ゲート信号のレベルを「LOW」にする。
【0039】
実施の形態4に係わる入切制御部28Dは、図9に示すように、判定装置32とレジスタ33の間にAND回路47が介設されており、ビーム要求信号と呼吸ゲート信号が入力され、ビームゲート信号が出力される。そして、ビーム要求信号と呼吸ゲート信号がともにレベル「HIGH」のとき、ビームゲート信号のレベルが「HIGH」になる。
レジスタ33には、ビームゲート信号と螺旋周期終了信号としてのパルスが入力され、ビーム入切信号が出力される。そして、指令値送信部25からの螺旋周期終了信号としてのパルスが送られたとき、すなわち螺旋周期の終了のとき、レジスタ33のD入力端子のレベルがQ出力端子のレベルに反映するので、ビーム要求信号のレベルが「HIGH」で呼吸ゲート信号のレベルも「HIGH」のときだけビーム入切信号が「HIGH]になり、粒子線が粒子線照射部3に供給される。
【0040】
このように患者の呼吸が安定しているときにだけ粒子線の照射が行える。なお、螺旋周期TSを43.478ミリ秒としたとき、通常呼吸の周期は2秒から6秒程度であるので、呼吸同期におけるビームの遮断に要する時間を0.1秒以下にすれば、呼吸状態の変化に十分に追従することができる。
実施の形態1では患者の呼吸に関わりなく螺旋周期単位でビームの入切を行っているので、線量分布の一様性を充分に確保できるが、実施の形態4のように呼吸同期運転の場合でも線量分布の一様性の管理を容易に進めることができる。
【0041】
実施の形態5.
図10は、この発明の実施の形態5に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図11は、実施の形態5に係わるデータ記憶部の第1のデータテーブルのデータ構造を示す図である。図12は、実施の形態5に係わるデータ記憶部の第2のデータテーブルのデータ構造を示す図である。図13は、実施の形態5に係わる指令値送信部のブロック図である。図14は、実施の形態5の粒子線治療装置で走査された螺旋軌跡を示す図である。
実施の形態5に係わる粒子線治療装置1Eは、図10に示すように、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1と指令値送信部25Eおよびデータ記憶部26Eが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
【0042】
実施の形態5に係わるデータ記憶部26Eには、2つのデータテーブル50、51が設定されている。第1のデータテーブル50は、図11に示すように、連番のアドレスに対してそれぞれ2つのデータ領域と1つのポインタ領域が設定されており、1つのデータ領域には、振幅Bのデータが格納されている。また、残りの1つのデータ領域には、螺旋周期終了ビットと称し、そこには螺旋周期終了を表すデータが格納されており、螺旋周期終了のアドレスのとき「1」が格納されていて、それ以外は「0」が格納されている。
また、1つのポインタ領域には、クロック信号に基づいて順送りに指定されるアドレスの現時点で指定されているアドレスを示すためのデータが格納されており、そのポインタ領域に「1」が格納され、それ以外のアドレスのポインタ領域に「0」が格納されている。
振幅Bは、螺旋周期TS、クロック周期Wとして、式(10)、式(11)に基づいて求められる。iは、クロック周期のカウント値であり、正の整数である。
【0043】
【数4】
【0044】
第2のデータテーブル51は、図12に示すように、連番のアドレスに対してそれぞれ1つのデータ領域と2つのポインタ領域が設定されており、1つのデータ領域には、正弦波関数Sのデータが格納されている。また、2つのポインタ領域には、クロック信号に基づいて順送りに指定される2つのアドレスの現時点で指定されているアドレスを示すためのデータが格納されており、そのアドレスに「1」が格納され、それ以外のアドレスに「0」が格納されている。この2つのポインタ領域は、正弦波関数Sが90度位相が異なるように連動して動いていく。YポインタはXポインタより90度位相が進んでいる。
正弦波関数Sは、ワブラ角速度ω、クロック周期Wとして式(12)に基づいて求められる。
【0045】
【数5】
【0046】
指令値送信部25Eは、図13に示すように、クロック信号に同期して第1のデータテーブル50から読み出された振幅Bを2つの乗算器52、53に分配する分配器54、第1のデータテーブル50から読み出された螺旋周期終了ビットのデータが「1」のとき、式(13)に基づいて求められる位相変化量Δφに相当する第2のデータテーブル51のアドレスをジャンプさせるアドレスジャンプ制御部55、振幅Bと第2のデータテーブル51のXポインタで示されているアドレスの正弦波関数Sとを乗算してX軸励磁電流指令値をX軸電磁石電源23に送信するX軸乗算器52、振幅Bと第2のデータテーブル51のYポインタで示されているアドレスの正弦波関数Sとを乗算してY軸励磁電流指令値をY軸電磁石電源24に送信するY軸乗算器53からなる。なお、TWは、ワブラ周期である。
【0047】
【数6】
【0048】
例えば、クロック周期Wが0.194ミリ秒とし、ワブラ周波数が57Hzすなわちワブラ周期TWが17.54ミリ秒とすると、螺旋周期開始時点の位相は、360度の分数とすることができる。360度の7分の1を単位として、螺旋位相を0度、51度、103度、154度、206度、257度、309度とすることができる。また、360度の7分の3を単位として、位相を0度、154度、309度、103度、257度、51度、206度とすることができる。位相を51度進めるためには、17.54ミリ秒÷0.194ミリ秒×51度÷360度=12.808となり、アドレスを約13進めればよい。螺旋周期終了ビットの「1」を受信したとき、第2のデータテーブル51の現在のアドレスに13を追加したアドレスから正弦波関数Sの読み出しを再開すればよい。
螺旋位相を0度、51度、103度、154度、206度、257度、309度からの螺旋軌跡を図14に示す。このように、適切な位相を設定することにより、螺旋軌跡を一様に分布させることができる。
【0049】
第1のデータテーブル50には螺旋周期1回分の振幅Bのデータ、第2のデータテーブル51にはワブラ周期1回分の正弦波関数Sのデータを格納しておけばすむので、少ない容量のデータ記憶部26Eを用意すればよい。それぞれのデータテーブル50、51では、アドレスが終端に達したら、先頭のアドレスに自動的に戻るように制御をおこなう。
なお、アドレスを指定値だけジャンプするときに、アドレスの終端に達する場合、先頭のアドレスから継続して数えて所定のアドレスにジャンプすればよい。
【0050】
このような粒子線治療装置1Eは、振幅Bのデータが第1のデータテーブル50に、正弦波関数Sのデータが第2のデータテーブル51に分割して格納されているので、それぞれ1周期分のデータだけ記憶しておけばすむので、各データの準備が簡単になるとともに、記憶容量が少なくてすむ。
【0051】
また、線量分布が一様になるように予めアドレスをジャンプさせる所定の値を求めておけるので、少ない螺旋軌跡を重ね合わせるだけで線量分布の一様性が確保できるため、線量率を上げて照射することができる。
また、ワブラ周期TWと螺旋周期TSとを変えるときも、線量分布の一様性の確保できるアドレスのジャンプ量を予め求めることができるのでワブラ周期TWと螺旋周期TSの選定の制約が少なくなる。
また、加速器の運転周期を短くして効率を高める運転も容易に行うことができる。
【0052】
実施の形態6.
図15は、この発明の実施の形態6に係わる指令値送信部のブロック図である。図16は、実施の形態6に係わるジャンプデータテーブルのデータ構造を示す図である。
実施の形態6に係わる粒子線治療装置は、実施の形態5に係わる粒子線治療装置と指令値送信部25Fが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
実施の形態6に係わる指令値送信部25Fは、図15に示すように、実施の形態5に係わる指令値送信部25Eとアドレスジャンプ制御部55Fが異なり、また、それに係わるジャンプデータテーブル56が追加されていることが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
【0053】
実施の形態6に係わるアドレスジャンプ制御部55Fは、読み出した第1のデータテーブル50の螺旋周期終了ビットのデータが「1」のとき、ジャンプデータテーブル56のアドレスをインクリメントして、インクリメントしたアドレスのジャンプ先を示すX軸アドレス、Y軸アドレスを読み出し、そのアドレスに対応する第2のデータテーブル51のXポインタとYポインタに「1」を設定する。すると、Xポインタに「1」が設定されているアドレスの正弦波関数SのデータがX軸乗算器52へ、Yポインタに「1」が設定されているアドレスの正弦波関数SのデータがY軸乗算器53へ出力される。これ以降は実施の形態5で説明したことと同様である。
【0054】
ジャンプデータテーブル56は、図16に示すように、連番のアドレスにそれぞれ2つのデータ領域と1つのポインタ領域が設定されている。2つのデータ領域には、2つのX軸アドレスとY軸アドレスが格納されている。このX軸アドレスとY軸アドレスは、第2のデータテーブル51のアドレスを示し、第2のデータテーブル51のY軸アドレスの正弦波関数Sのデータは、第2のデータテーブル51のX軸アドレスの正弦波関数Sのデータより90度位相が進んでいる値である。
1つのポインタ領域には、現在の螺旋周期の螺旋位相に係わるアドレスが指定されており、螺旋周期終了ビットの値が「1」のとき、アドレスがインクリメントされて、それに連動してポインタ領域が1つ移動する。
【0055】
このような粒子線治療装置は、螺旋周期毎に螺旋位相を制御することができ、一様な線量分布の照射野を形成するために最も効率的な螺旋位相の組合せを予め決めておけば、少ない螺旋周期回数の照射により計画線量を一様性を維持しながら照射できる。
また、ジャンプ量を変化しながら任意に螺旋位相を設定できるので、最適な螺旋軌道の重ね合わせを実現することができる。
【0056】
実施の形態7.
図17は、この発明は実施の形態7に係わる粒子線治療装置の指令値送信部である。
実施の形態7に係わる粒子線治療装置は、実施の形態5に係わる粒子線治療装置1Eに励磁電流を監視する機能を付加したことが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態7に係わるX軸電磁石電源23GおよびY軸電磁石電源24Gは、その出力に励磁電流値を計測するための図示しない電流計が備えられている。
【0057】
また、実施の形態7に係わる指令値送信部25Gは、図17に示すように、電流計から入力されるX軸励磁電流値およびY軸励磁電流値が予め設定された閾値I0MAXより大きいときX軸過電流信号およびY軸過電流信号を発するX軸比較器57およびY軸比較器58、X軸過電流信号またはY軸過電流信号が入力されたときジャンプ非許可信号をアドレスジャンプ制御部55に送信するOR回路59が追加されていることが実施の形態5の指令値送信部25Eと異なっており、その他は同様であるので同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
【0058】
実施の形態5、6において、螺旋周期開始時点、すなわち励磁電流の振幅の零の時点で螺旋位相を可変することにしているが、誤動作や正弦波データの間違いなどにより、励磁電流が大きくなってしまう可能性がある。そこで、実施の形態7の指令値送信部25Gでは、励磁電流が所定の閾値I0MAXより大きいとき、OR回路59を経由して、螺旋周期開始時点で行うアドレスのジャンプを非許可とする。
このような粒子線治療装置は、誤動作や誤データによる励磁電流の急激な変化が発生したとき、アドレスのジャンプを許可せずに、そのままアドレスをインクリメントするので、電磁石電源の破損を防止することができる。
【0059】
実施の形態8.
図18は、この発明の実施の形態8に係わる粒子線治療装置のタイミング制御装置と入切制御部とのブロック図である。
実施の形態8に係わる粒子線治療装置は、実施の形態4に係わる粒子線治療装置1Dとタイミング制御装置27Hが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
実施の形態8に係わるタイミング制御装置27Hは、実施の形態4に係わるタイミング制御装置27にAND回路61が追加されている。AND回路61には、入切制御部28Dのレジスタ33からのビーム入切信号と予め定められているクロック周期Wのクロック信号とが入力され、ゲート付クロック信号がデータ記憶部26に出力される。そして、データ記憶部26は、このゲート付クロック信号によりアドレスがインクリメントされる。
呼吸同期運転されているとき、患者の呼吸が照射できる状態にない場合、ビーム入切信号が「LOW」になるので、データ記憶部26に入力されるゲート付クロック信号がブロックされ、アドレスがインクリメントされない。そして、励磁電流がそのまま保持されるので、照射は行われていないが、粒子線が供給されているとしたら照射位置は移動しない。このように患者の呼吸が安定していないとき、粒子線の供給を停止すると同時に励磁状態もそのままで維持されている。そして、患者の呼吸が安定すると、ビームゲート信号が「HIGH」に変化し、ゲート付クロック信号もデータ記憶部26に入力され、粒子線が停止していた位置から走査が再開される。
【0060】
このような粒子線治療装置は、照射時間が短い場合、線量率が高い場合または呼吸同期運転されている場合などのように十分に多くの回数の螺旋周期で照射が行えないときでも、粒子線が遮断されている間、粒子線の偏向条件が変わらないため、照射が行われない軌跡が生じないので、線量分布の一様性を確保することができる。
また、ビーム入切制御を螺旋周期の終了時点で行えば、励磁電流の振幅が零の状態となるため、電力消費を低減することができる。
また、加速器の運転において加速と減速の占める時間がビームON時間に比べて長いので、加速と減速のときに励磁電流の振幅を零にすることにより、省電力に有意な効果が得られる。
【0061】
なお、実施の形態8では、螺旋周期単位でビーム入切信号を行っているが、螺旋周期の途中で呼吸ゲート信号に基づいて患者の呼吸状態に即応して、ビームの入切を行うとともにゲート付クロック信号の発振・停止を行っても、同様に、照射が行われない部分の含まれた軌跡を生じさせない。
また、実施の形態8では、螺旋周期開始時点で螺旋位相を可変していないが、実施の形態5、6のように螺旋周期開始時点で螺旋位相を可変しながら、呼吸同期運転に伴う呼吸ゲート信号に従ってクロック信号を制御してもよい。
【0062】
実施の形態9.
図19は、この発明の実施の形態9に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図20は、実施の形態9に係わるビーム検出装置のブロック図である。
実施の形態9に係わる粒子線治療装置1Jは、図19に示すように、実施の形態4に係わる粒子線治療装置1Dとビーム検出装置11Jが異なっている。また、タイミング制御装置27が省略されていることが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し、説明は省略する。
実施の形態4ではデータテーブルのアドレスはタイミング制御装置27からのクロック信号によりインクリメントされるが、実施の形態9では、ビーム検出装置11Jからの照射線量に比例したクロック信号によりインクリメントされる。
実施の形態9に係わるビーム検出装置11Jは、図20に示すように、照射線量を求めるための線量モニタ35、電流周波数変換器36およびカウンタ37以外に、照射線量に比例するクロック信号を創成するためのゲイン調整装置63、電流周波数変換器64およびカウント調整装置65が備えられている。
ゲイン調整装置63は、電流周波数変換器64に入力する電流値が大きくなるようにシグナル/ノイズ比を許容される範囲内で高くしておき、なるべく小さな電荷の通過で1つのパルスが創成するように設定されている。
電流周波数変換器64は、このように増幅された電流値に比例する周波数のパルス列に変換する。ゲイン調整装置63で増幅されているので、パルス列の周波数は高周波になる。
カウント調整装置65は、パルス列を周波数変換して、螺旋周期分割数に相当するパルス列にする。
【0063】
なお、ビーム検出装置11Jは、クロック信号を創成する機能と患者に照射する全線量を管理する機能とを併せ持っているので、安全性に係わる対策を施すことが必要である。対策としては、それぞれの機能の系統を独立して配設し、かつ、それぞれの機能の系統を多重化し、系統間で相互にチェックする機能を備えることが挙げられる。
【0064】
このような粒子線治療装置1Jでは、ある照射位置に照射される線量がカウント調整装置65から1つのクロック信号が発信されるまでの量に達しないと、アドレスがインクリメントされない。そこで、照射位置毎の線量が所定の量(カウント調整装置65から1つのクロック信号が発信される量)に合わされるので、ターゲット領域全体に亘って照射線量が所定の量に正確に合わされる。
また、粒子線発生部2から供給されるビーム電流が変動した場合でも、時間ではなく照射線量が1クロック信号分照射されたとき照射位置を移動するので、ビーム電流の変動の影響を受けない。
【0065】
実施の形態10.
図21は、この発明の実施の形態10に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図22は、円軌跡を示す図である。図23は、実施の形態10に係わるデータ記憶部に格納されているデータテーブルのデータ構造である。
実施の形態10に係わる粒子線治療装置1Kは、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1と粒子線の照射の軌跡が異なり、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。軌跡が異なることに関連して、実施の形態10に係わる粒子線治療装置1Kは、図21に示しように、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1とデータ記憶部26K、指令値送信部25K、タイミング制御装置27K、入切制御部28Kが異なっている。
実施の形態1においては螺旋軌跡を描くように粒子線を走査しているが、実施の形態10では図22に示すように、円軌跡を描くように粒子線を走査する。このため、データ記憶部26Kのデータテーブルには、図23に示すように、連番のアドレスに対してそれぞれ3つのデータ領域と1つのポインタ領域が設定されており、2つのデータ領域には、X軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値とが格納されている。また、残りの1つのデータ領域は、ワブラ周期終了ビットと称し、そこにはワブラ周期の終了を表すデータが格納されており、ワブラ周期の終了のアドレスのとき「1」が格納されていて、それ以外は「0」が格納されている。
また、クロック信号に基づいてインクリメントされたアドレスに対応するポインタ領域に「1」が格納され、それ以外のアドレスに対応するポインタ領域に「0」が格納されている。ポインタ領域に「1」が格納されたアドレスのデータ領域のデータが指令値送信部25Kに送られる。
【0066】
X軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値は、ワブラ周期TWをp等分する所定のクロック周期W毎に式(14)、(15)に基づいて求められ、データ記憶部26Kに格納される。例えば、ワブラ周期TWが18ミリ秒で36等分すると、クロック周期Wが0.5ミリ秒でなり、1つのワブラ周期TWで36個のアドレスが占有され、そのアドレスが0番から35番までとすると、35番のアドレスのワブラ周期終了ビットに「1」が格納されている。
【0067】
【数7】
【0068】
データ記憶部26Kでは、クロック信号が入力される度に、アドレスがインクリメントされて、そのアドレスに格納されているX軸励磁電流指定値、Y軸励磁電流指定値およびワブラ周期終了ビットのデータが読み出されて、指令値送信部25Kに送られる。
【0069】
指令値送信部25Kは、データ記憶部26Kから送られてきたX軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値に基づいてX軸励磁電流指令値をX軸電磁石電源23に、Y軸励磁電流指令値をY軸電磁石電源24に送信する。さらに、指令値送信部25Kは、データ記憶部26Kから送られてきたワブラ周期終了ビットのデータに基づき、ワブラ周期終了ビットのデータが「1」のときワブラ周期終了信号として、「LOW」、「HIGH」、「LOW」レベルに変化するパルスを入切制御部28Kに送信する。
【0070】
タイミング制御装置27Kは、ワブラ周期TWとそのp等分数とから求められるクロック周期Wのクロック信号と、データ記憶部26Kのアドレスを最初のアドレスに戻すリセット信号とをデータ記憶部26Kに入力する。
【0071】
入切制御部28Kは、粒子線照射による治療に先立って設定された計画線量が記憶されている判定用記憶装置31、ビーム検出装置11からの照射線量と計画線量とを比較してビーム要求の有無を判定し、ビーム要求信号のレベルを変化する判定装置32およびビーム要求信号のレベルをワブラ周期の区切りごとにビーム入切信号としてビーム入切装置7、8に送信するレジスタ33が備えられている。ビーム要求信号は、ビーム要求があるとき「HIGH」レベル、ビーム要求がないとき「LOW」レベルとなっている。
レジスタ33は、ワブラ周期終了信号としてのパルスがCLOCK端子に入力されると、D入力端子に入力されているビーム要求信号のレベルがビーム入切信号としてQ出力端子から出力される。
【0072】
あるワブラ周期の途中で照射線量が計画線量を越えてビーム要求信号のレベルが「LOW」に変化しても、ワブラ周期終了信号としてのパルスがレジスタ33に入力されないかぎりビーム入切信号のレベルは「HIGH」のままである。そして、ワブラ周期終了信号としてのパルスが指令値送信部25Kから送られたとき始めてビーム入切信号のレベルが「LOW」に変化して、粒子線が遮断される。
【0073】
このような粒子線治療装置は、ワブラ周期の途中で粒子線の照射が中断されないので、線量分布の一様性が確保できる。
また、図24に示すような複数円のワブラ照射法や照射線量率を大きくする場合には、ワブラ周期単位の照射にすることにより、短時間の照射でも線量分布の一様性を確保し易くなる。
【0074】
また、ワブラ照射法によるビーム照射は、照射を継続しながらビームを連続的に走査させる方法、ビームを一旦停止してビームを移動して移動が完了したらビームの照射を開始する方法、照射を継続しながらビームの移動と停止とを繰り返す方法などが知られているが、いずれの方法もこの発明の粒子線治療装置1Kに適用することができる。
【0075】
実施の形態11.
図25は、この発明の実施の形態11に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図26は、ジグザグ軌跡の例を示す図である。図27は、他のジグザグ軌跡の例を示す図である。
実施の形態11に係わる粒子線治療装置1Lは、図25に示すように、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1と粒子線の照射の軌跡が異なり、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。軌跡が異なることに関連して、実施の形態11に係わる粒子線治療装置1Lは、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1とデータ記憶部26L、指令値送信部25L、タイミング制御装置27L、入切制御部28Lが異なっている。
【0076】
また、照射野の周辺に走査された粒子線を遮断するビーム遮断装置としての多葉コリメータ装置67が追加されている。このビーム遮断装置として、多葉コリメータ装置67以外に、4枚羽根コリメータ装置またはブロックコリメータ装置などを適用することができる。ビーム遮断装置は、照射野の周辺でビームの走査が折り返されるときの粒子線を遮蔽している。
実施の形態1においては螺旋軌跡を描くように粒子線を走査しているが、実施の形態11では図26に示すように、X軸方向の1往復する間にY軸方向に5往復するジグザグ軌跡を描くように粒子線を走査する。このため、データ記憶部26Lのデータテーブルには、連番のアドレスに対してそれぞれ3つのデータ領域と1つのポインタ領域が設定されており、2つのデータ領域には、X軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値とが格納されている。また、残りの1つのデータ領域は、X軸方向周期終了ビットと称し、そこにはX軸方向を1往復するX軸方向周期の終了を表すデータが格納されており、X軸方向周期の終了のアドレスのとき「1」が格納されていて、それ以外は「0」が格納されている。
また、クロック信号に基づいてインクリメントされたアドレスに対応するポインタ領域に「1」が格納され、それ以外のアドレスに対応するポインタ領域に「0」が格納されている。ポインタ領域に「1」が格納されたアドレスのデータ領域のデータが指令値送信部25Lに送られる。
【0077】
X軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値は、X軸方向周期TXをq等分する所定のクロック周期W毎に求められ、データ記憶部26Lに格納される。
データ記憶部26Lでは、クロック信号が入力される度に、アドレスがインクリメントされて、そのアドレスに格納されているX軸励磁電流指定値、Y軸励磁電流指定値およびX軸方向周期終了ビットのデータが読み出されて、指令値送信部25Lに送られる。
指令値送信部25Lは、データ記憶部26Lから送られてきたX軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値に基づいてX軸励磁電流指令値をX軸電磁石電源23に、Y軸励磁電流指令値をY軸電磁石電源24に送信する。さらに、指令値送信部25Lは、データ記憶部26Lから送られてきたX軸方向周期終了ビットのデータに基づき、X軸方向周期終了ビットのデータが「1」のときX軸方向周期終了信号として、「LOW」、「HIGH」、「LOW」レベルに変化するパルスを入切制御部28Lに送信する。
【0078】
タイミング制御装置27Lは、X軸方向周期TXとそのq等分数とから求められるクロック周期Wのクロック信号と、データ記憶部26Lのアドレスを最初のアドレスに戻すリセット信号と、をデータ記憶部26Lに入力する。
【0079】
入切制御部28Lは、粒子線照射による治療に先立って設定された計画線量が記憶されている判定用記憶装置31、ビーム検出装置11からの照射線量と計画線量とを比較してビーム要求の有無を判定し、ビーム要求信号のレベルを変化する判定装置32およびビーム要求信号のレベルをX軸方向周期の区切りごとにビーム入切信号としてビーム入切装置7、8に送信するレジスタ33Lが備えられている。ビーム要求信号は、ビーム要求があるとき「HIGH」レベル、ビーム要求がないとき「LOW」レベルとなっている。
レジスタ33Lは、X軸方向周期終了信号としてのパルスがCLOCK端子に入力されると、D入力端子に入力されているビーム要求信号のレベルがビーム入切信号としてQ出力端子から出力される。
【0080】
あるX軸方向周期の途中で照射線量が計画線量を越えてビーム要求信号のレベルが「LOW」に変化しても、X軸方向周期終了信号としてのパルスがレジスタ33Lに入力されないかぎりビーム入切信号のレベルは「HIGH」のままである。そして、X軸方向周期終了信号としてのパルスが指令値送信部25Lから送られたとき始めてビーム入切信号のレベルが「LOW」に変化して、粒子線が遮断される。
【0081】
このような粒子線治療装置1Lは、X軸方向周期の途中で粒子線の照射が中断されないので、線量分布の一様性が確保できる。
また、図27に示すようなジグザグ回数を多くして行う照射法や照射線量率を大きくする場合には、X軸方向単位の照射にすることにより、短時間の照射でも線量分布の一様性を確保し易くなる。
【0082】
また、ジグザグ照射法によるビーム照射は、照射を継続しながらビームの照射を連続的に走査させる方法、ビームを一旦停止してビームを移動して移動が完了したらビームの照射を開始する方法、照射を継続しながらビームの移動と停止とを繰り返す方法などが知られているが、いずれの方法もこの発明の粒子線治療装置1Lに適用することができる。
【0083】
また、実施の形態11においてはデータ記憶部26Lのアドレスはタイミング制御装置27Lからのクロック信号によりインクリメントされるが、実施の形態8において説明したように、ビーム入切信号のレベルが「LOW」になって粒子線の供給が中断したときにアドレスのインクリメントも中断する機能を追加してもよい。
また、実施の形態9において説明したように、線量モニタのビーム電流値に基づいて創成されるクロック信号を用いてアドレスのインクリメントを制御してもよい。
【0084】
実施の形態12.
図28は、この発明の実施の形態12に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
実施の形態12に係わる粒子線治療装置1Mは、図28に示すように、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1にビーム遮断装置としての多葉コリメータ装置67と粒子線のエネルギーを変える手段としてのレンジシフタ装置68とが追加されており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0085】
なお、粒子線のエネルギーを変える手段として、レンジシフタ装置68以外に、粒子線発生部2においてシンクロトロン方式の加速器のエネルギーの設定値を変えることによって粒子線のエネルギーの変更が可能であり、また、粒子線輸送部4において図示しない電磁石のコイルの励磁電流を変えることによって粒子線のエネルギーの変更が可能であるので、レンジシフタ装置68に限るものではない。
レンジシフタ装置68は、ポリエチレンから構成されており、それに粒子線を通過させることにより、粒子線のエネルギーが所望の値まで下げることができる。このようにして粒子線のエネルギーを可変することにより、粒子線が到達する深さを調整して、深さ方向に層別された層毎に所望の計画線量を照射して、3次元的に所望の線量分布を有するように照射が行われる。これを積層原体照射法と称す。
【0086】
立体的なターゲット領域は、深さ方向に層別された層の深さ方向に垂直なターゲット領域の形状は違うので、その形状にだけ粒子線を照射するためにビーム遮断装置としての多葉コリメータ装置67が備えられている。なお、ビーム遮断装置として、多葉コリメータ装置67以外にも4枚羽根コリメータ装置またはブロックコリメータ装置などがあり、いずれを適用してもよい。
多葉コリメータ装置67は、その開口を照射対象の層の予め決定されている最適な形状になるように設定されている。
【0087】
次に、積層原体照射法に螺旋周期単位に粒子線の照射を行うことについて説明する。
粒子線よる治療に先立って、3次元のターゲット領域を粒子線の照射方向に垂直な平面により5mm〜10mm程度の厚さの層に層別し、各層毎に計画線量を定めて、判定用記憶装置31に格納させておく。また、各層のターゲット領域の外形を計測し、多葉コリメータ装置67の開口が外形に最適な形状になるような設定値を予め定めておく。また、各層の照射に適するレンジシフタ装置68を治療に先立って用意しておく。
1つの層を照射するために、適切なレンジシフタ装置68を設置し、多葉コリメータ装置67を調整して開口を定め、実施の形態1で説明したようにして、当該層の計画線量まで螺旋軌跡を重ねることにより照射する。このとき、粒子線の入切は螺旋周期単位で行い、螺旋周期の途中では粒子線を切らない。
次の層を照射するために、適切なレンジシフタ装置68を設置し、多葉コリメータ装置67を調整して開口を定め、照射を行う。この手順を繰り返すことにより、積層原体照射法を用いて立体的な患部を層状に照射が行われる。
【0088】
このような粒子線治療装置1Mは、患部の深さ方向の照射の制御のために積層原体照射法が用いられているので、3次元的な線量分布が得られるという効果がある。線量について、患部を深さ方向に分割することにより、各層に照射する線量は大幅に少なくなる。例えば、深さ方向に10cmの広がりをもつ患部を20層に分割した場合、最深層に100の単位の線量を照射するとしたら、最深層より浅い層には典型的に一桁少ない10の単位以下の線量しか必要とされないことが知られている。これは粒子線の物理的性質に起因することで、一般に最深層以外の浅い側の層に対しては照射する線量がかなり少なくてよい。結果的に、これらの浅い層に対しては照射時間がかなり短くなり、従来の方法では、横方向の線量分布の一様性を保証することが困難である。
積層原体照射法を呼吸同期運転と組み合わせた場合、さらに困難になる。
これに対して、上述の実施の形態1乃至11の構成を積層原体照射法に適用することにより、積層原体照射法のより厳しい条件を満足し、線量分布の一様性を確保することができる。
【0089】
なお、実施の形態12では、螺旋軌跡を画くように粒子線を走査しているが、積層原体照射法における各層に対する粒子線の照射を円軌跡またはジグザグ軌跡を画くように粒子線を走査することもできる。
【0090】
実施の形態13.
図29は、この発明の実施の形態13に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図30は、実施の形態13に係わるビーム検出装置のブロック図である。図31は、実施の形態13に係わる粒子線治療装置において照射線量を監視する手順を示すフローチャートである。
実施の形態13に係わる粒子線治療装置1Nは、図29に示すように、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1に照射位置の座標情報を入手する機能と照射位置の照射線量が適正であるか否かを判定する機能とを追加したことが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
【0091】
実施の形態13に係わるX軸電磁石電源23NおよびY軸電磁石電源24Nは、その出力に励磁電流値を計測するための図示しない電流計が備えられている。この電流計からX軸励磁電流IX、Y軸励磁電流IYが出力される。
また、実施の形態13に係わるビーム検出装置11Nは、図30に示すように、実施の形態1に係わるビーム検出装置11に線量モニタ35のビーム電流をデジタルの線量モニタ出力IDOSEに変換するアナログデジタル変換器70、X軸励磁電流IX、Y軸励磁電流IYおよび線量モニタ出力IDOSEを時系列に記録する線量記録装置71、照射線量が予め決められた計画線量に一致しているか否かを判断し、不一致の場合異常を外部に通報する線量演算処理装置72が付加されている。
【0092】
次に、実施の形態13に係わる粒子線治療装置において照射線量を監視する手順を図31を参照して説明する。
照射深度における2次元の照射領域は、例えば、マトリックス状に5mm角のピクセルに区切られ、照射の管理をピクセル単位で行う。
S101では、各ピクセル(PX、PY)のカウント値D1(PX、PY)を零とし、予め決められた各ピクセル設定値D0(PX、PY)を外部から読み込む。
S102で、照射中にX軸励磁電流IX、Y軸励磁電流IYおよび線量モニタの出力IDOSEを時系列に線量記録装置に記録する。記録する時間間隔は、例えば、0.1ミリ秒と電磁石の動きに対して十分に短い間隔とする。
S103で、時間間隔におけるIX、IYの値を読み出し、その値から照射深度におけるビームの中心のX座標X0とY座標Y0を算出する。
S104で、X座標X0とY座標Y0に対応するピクセルの座標PX、PYを求める。
S105で、IDOSEの値が予め決められている閾値IDOSE−MIN以上であれば、S106へ進み、未満であれば、S102へ戻る。
S106で、式(16)に従ってPX、PYのカウント値D1(PX、PY)を1増加させる。
【0093】
D1(PX、PY)=D1(PX、PY)+1 (16)
【0094】
S107で、ある程度分布が記録されたか否かを判断する。すなわち線量モニタの時間積算値ΣIDOSEが予め決められている積算値閾値ΣIDOSE−MINを超えたか否かを判断し、超えたときS108へ進み、以下のときS102へ戻る。
S108で、カウント値D1(PX、PY)を規格化する。計測された分布と所望の分布を比較するときにマトリックスに蓄積されたカウント値を全面積のカウント値で規格化する。
S109で、規格化されたカウント値D2(PX、PY)を外部から読み込んである各ピクセル設定値D0(PX、PY)と比較する。各ピクセル単位で比較し、ピクセルのデータの差が予め設定された範囲を超える場合は不一致とする。不一致のピクセル数が所定の数を超えたとき、異常フラグを立てて、S110へ進み、不一致のピクセル数が所定値の数以下のときS102へ戻る。
S110で、運転員に告知する。
【0095】
なお、不一致のピクセル数が所定値を超えているとき、同時にビームを一時停止状態にしてもよい。
また、異常を判定する基準としては、1つのピクセルの不一致が所定値を超えた場合としてもよい。
また、データの差の絶対値をピクセル毎に積算し、その合計が閾値以上の場合としてもよい。
また、これらの条件の組合せによる場合でもよい。
【0096】
また、ピクセルのカウント値をインクリメントするときに1カウント追加するのではなく、線量モニタの電流値に比例したカウントkIDOSEを式(17)に従うようにインクリメントしてもよい。
【0097】
D1(PX、PY)=D1(PX、PY)+kIDOSE (17)
【0098】
このように線量モニタの電流値に比例した値でカウント値をインクリメントすることにより、マトリックスの値は実際の線量分布に近い分布を現すことになり、より正確な情報に基づいて判断を行える。
【0099】
このような粒子線治療装置1Nは、実際の照射時の装置記録に基づいて安全確認が行えるので、上述の実施の形態1乃至13の付加機能のある照射制御を行っても安全性を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図2】実施の形態1に係わるデータ記憶部のデータテーブルのデータ構造を示す図である。
【図3】実施の形態1に係わるビーム検出装置のブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係わる粒子線治療装置の入切制御部のブロック図である。
【図5】実施の形態2に係わる粒子線治療装置のデータ記憶部のデータテーブルのデータ構造である。
【図6】この発明の実施の形態3に係わる粒子線治療装置の入切制御部のブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図8】実施の形態4に係わる信号処理装置と入切制御部とに係わる信号のタイミングチャートである。
【図9】実施の形態4に係わる入切制御部のブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図11】実施の形態5に係わるデータ記憶部の第1のデータテーブルのデータ構造を示す図である。
【図12】実施の形態5に係わるデータ記憶部の第2のデータテーブルのデータ構造を示す図である。
【図13】実施の形態5に係わる指令値送信部のブロック図である。
【図14】実施の形態5の粒子線治療装置で走査された螺旋軌跡を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態6に係わる指令値送信部のブロック図である。
【図16】実施の形態6に係わるジャンプデータテーブルのデータ構造を示す図である。
【図17】この発明は実施の形態7に係わる粒子線治療装置の指令値送信部である。
【図18】この発明の実施の形態8に係わる粒子線治療装置のタイミング制御装置と入切制御部とのブロック図である。
【図19】この発明の実施の形態9に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図20】実施の形態9に係わるビーム検出装置のブロック図である。
【図21】この発明の実施の形態10に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図22】円軌跡を示す図である。
【図23】実施の形態10に係わるデータ記憶部に格納されているデータテーブルのデータ構造である。
【図24】同心円の複数の円軌跡を示す図である。
【図25】この発明の実施の形態11に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図26】ジグザグ軌跡の例を示す図である。
【図27】他のジグザグ軌跡の例を示す図である。
【図28】この発明の実施の形態12に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図29】この発明の実施の形態13に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図30】実施の形態13に係わるビーム検出装置のブロック図である。
【図31】実施の形態13に係わる粒子線治療装置において照射線量を監視する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0101】
1 粒子線治療装置、2 粒子線発生部、3 粒子線照射部、4 粒子線輸送部、5 患者、6 粒子線発生装置、7、8 ビーム入切装置、10 照射野形成装置、11 ビーム検出装置、12 患者治療台、13 患者位置確認装置、21 X軸電磁石、22 Y軸電磁石、23 X軸電磁石電源、24 Y軸電磁石電源、25 指令値送信部、26 データ記憶部、27 タイミング制御装置、28 入切制御部、30 散乱体、31 判定用記憶装置、32 判定装置、33 レジスタ、35 線量モニタ、36、64 電流周波数変換器、37、40 カウンタ、41 比較回路、43、47、61 AND回路、44 呼吸ゲート発生装置、45 呼吸測定装置、46 信号処理装置、50、51 データテーブル、52 X軸乗算器、53 Y軸乗算器、54 分配器、55 アドレスジャンプ制御部、56 ジャンプデータテーブル、57 X軸比較器、58 Y軸比較器、59 OR回路、63 ゲイン調整装置、65 カウント調整装置、67 多葉コリメータ装置、68 レンジシフタ装置、70 アナログデジタル変換器、71 線量記録装置、72 線量演算処理装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、粒子線を患部に上塗りするように繰り返し照射して計画線量を照射する粒子線治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の粒子線治療装置における粒子線の照射野の形成方法として、所望の位置に対して所望の計画線量になる度に粒子線の照射位置を移動して患部全体に亘る照射を行うシングルペインティング法(例えば、特許文献1参照)と、ターゲット領域に対して所定の軌跡をなぞるように所望の計画線量の数分の1の線量の粒子線の照射位置を走査して、軌跡が幾重にも重なることにより所望の計画線量が照射されるリペインティング法とがある(例えば、非特許文献1参照)。
そして、リペインティング法において採用される軌跡として、ワブラ法におけるように大きさが一定の回転ベクトルの先端が描く円の軌跡と、螺旋ワブラ法におけるように大きさが時間の平方根の関数に従って変調される回転ベクトルの先端が描く螺旋状の軌跡とがある。
この螺旋ワブラ法では、ワブラ法に比べて線量分布の一様性を高めるために、螺旋状の軌跡を描くようにしている。この場合、粒子線の進行方向に対して垂直な直交する2軸方向(以下の説明においてはX軸方向とY軸方向と称す。)に粒子線に磁場を加えて粒子線の照射位置を走査するために、式(1)〜式(4)から求められる励磁電流IX、IYを直交方向に励磁される2つの電磁石に流している。X軸励磁電流IXの大きさは、螺旋周期TSで0から最大値を経由して0に戻る値とワブラ角速度ωの正弦関数で変化する値との積に従って変化する。また、Y軸励磁電流IYの大きさは、螺旋周期TSで0から最大値を経由して0に戻る値とワブラ角速度ωの余弦関数で変化する値との積に従って変化する。
【0003】
【数1】
【0004】
【特許文献1】特開2002−191709号公報
【非特許文献1】Masataka Komori, et al, ”Optimization of Spiral−Wobbler System for Heavy−Ion Radiotherapy”,”Japanese Journal of Applied Physics”,2004,Vol.43,No.9A,pp.6463−6467
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、螺旋ワブラ法では、1つの螺旋周期TSの間で描かれる螺旋軌跡を螺旋周期回数だけ重ね合わせて計画線量を照射しているが、重ね合わされる螺旋軌跡の位置はその螺旋周期開始時点の位相により決められる。そこで、線量分布の一様性を確保するためには、重ね合わされる螺旋軌跡の螺旋周期開始時点の位相が、均等にばらつくようにしなければならない。しかし、この螺旋周期開始時点の位相(以下、螺旋位相と称す。)Φは、式(5)から求められるので、螺旋周期TS、ワブラ角速度ω、初期位相φ0および螺旋周期回数nにより一義的に決まっている。
【0006】
【数2】
【0007】
このように、各螺旋位相Φは、治療開始時点の位相φ0、螺旋周期TS、ワブラ角速度ωにより予め決まってしまっているので、所望の一様性を確保するために、重ね合わせる螺旋軌跡を非常に多くして、螺旋位相が統計的にはランダムに見なせるようにしている。例えば、非特許文献1では、線量分布の一様性を確保するために1秒以上かけている。このように、従来の螺旋ワブラ法では、螺旋軌跡を数多く重なるように照射を行わなければならないという問題がある。
【0008】
また、各螺旋位相Φが、一義的に螺旋周期TSとワブラ角速度ωとにより決められてしまうので、螺旋周期TSを変えたときに線量分布の一様性を確保できるワブラ角速度ωは限られており、螺旋周期TSとワブラ角速度ωの選定に制約が生じるという問題がある。
【0009】
また、1回の連続照射を1秒以上持続しなければならないので、粒子線は一般的にシンクロトロン方式の加速器から発生されており、加速器は加速、減速を周期的に繰り返えして、例えば2秒周期で周期運転されており、加速と減速との間で粒子線が粒子線照射部に供給される。そして、照射全体の時間を短くするために、なるべく粒子線を供給する時間を短くして、加速器を効率的に運転する。しかし、粒子線を供給する時間が数百ミリ秒のとき、1つの螺旋周期の途中で粒子線の供給が中断されることが起こるので、加速器の運転周期毎の線量分布の一様性が確保される保証がないという問題がある。
そのため、粒子線を供給する時間を長くすることにより螺旋周期の途中での粒子線の供給の中断を防ごうとしようとすると、粒子線の供給時間を短くすることができないなど加速器の運転周期に制約が生じるという問題がある。
【0010】
また、患者の呼吸に伴って移動する臓器や変形する臓器を照射するときの呼吸に合わせて粒子線の照射を入切する呼吸同期運転では、螺旋周期TSの途中で粒子線の供給が中断されるので、線量分布の一様性が確保される保証がないという問題がある。
【0011】
また、照射領域を深さ方向に分割して照射する積層原体照射法に螺旋ワブラ法を適用したとき、分割された各層の計画線量は少ないために螺旋周期回数が少なくなり、線量分布の一様性を確保するために必要な螺旋回数に達しないという問題がある。
【0012】
また、螺旋周期回数を所定回数以上必要とするので、線量率を上げると螺旋周期回数が所定の回数を下回ってしまって線量分布の一様性が確保できずに照射時間を長くしなければならないという問題がある。
【0013】
この発明の目的は、所望の粒子線の照射の軌跡を少ない回数重ね合わせることにより線量分布の一様性が確保できる粒子線治療装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明に係わる粒子線治療装置は、患部に照射するために輸送されてきた粒子線を上記粒子線の進行方向に対して垂直な直交する2方向に上記粒子線の流れを偏向して、周期毎に該周期の始まりに位置する照射位置に戻るように上記粒子線の照射位置を走査し、1つの上記周期の間に画かれる軌跡を複数重ね合わせて所望の計画線量を上記患部に照射する粒子線治療装置において、上記周期の終了の時だけ上記粒子線を遮断することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係わる粒子線治療装置の効果は、螺旋周期単位で照射が繰り返されるので、照射が螺旋周期の途中で中断されることがなくなり、線量率を上げても、線量分布の一様性の確保が確実に行われるし、照射時間の短縮もできる。
また、加速器の運転周期に対する制約を緩和することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図2は、実施の形態1に係わるデータ記憶部のデータテーブルのデータ構造を示す図である。図3は、実施の形態1に係わるビーム検出装置のブロック図である。
この発明の実施の形態1に係わる粒子線治療装置1は、図1に示すように、粒子線を発生する粒子線発生部2、粒子線発生部2で発生された粒子線を粒子線照射部3に輸送する粒子線輸送部4、患者のターゲット領域(患部)5に粒子線を照射する粒子線照射部3を具備している。
粒子線発生部2は、シンクロトロン方式の加速器からなる粒子線発生装置6、発生した粒子線の粒子線輸送部4への入切を制御するビーム入切装置7が備えられている。
また、粒子線輸送部4は、粒子線の粒子線照射部3への入切を制御するビーム入切装置8が備えられている。
このビーム入切装置7、8は、粒子線照射部3から送られてくるビーム入切信号のレベルが「HIGH」のとき粒子線を流し、レベルが「LOW」のとき粒子線を遮断する。
【0017】
粒子線照射部3は、粒子線を走査することにより照射野を形成する照射野形成装置10、照射する線量を検出するビーム検出装置11、患者が横たわる患者治療台12および患者の患者治療台12における患者の位置を確認する患者位置確認装置13が備えられている。
【0018】
照射野形成装置10は、粒子線を粒子線の進行方向に対して垂直な直交する2方向のうちの1方向(以下、X軸方向と称す。)に偏向するX軸電磁石21、粒子線の進行方向に対して垂直なX軸方向に直交する方向(以下、Y軸方向と称す。)に偏向するY軸電磁石22、X軸電磁石21にX軸励磁電流を流して励磁するX軸電磁石電源23、Y軸電磁石22にY軸励磁電流を流して励磁するY軸電磁石電源24、X軸励磁電流指令値とY軸励磁電流指令値とをそれぞれX軸電磁石電源23とY軸電磁石電源24とに送る指令値送信部25、連続しているアドレス毎に1対のX軸励磁電流指定値およびY軸励磁電流指定値や螺旋周期の終了を示すデータが記憶されているデータ記憶部26、データ記憶部26からX軸励磁電流指令値とY軸励磁電流指令値とを読み出すタイミングを発生するタイミング制御装置27、照射線量を監視し、ビームの要求を判定し、ビーム入切装置7、8を制御する入切制御部28および細い径のビームを所定の径に散乱する散乱体30が備えられている。
【0019】
X軸電磁石21では、図示しない励磁コイルにX軸励磁電流を大きさと向きとを変化しながら流すことにより、粒子線の流れをX軸方向に偏向する。同様に、Y軸電磁石22では、図示しない励磁コイルにY軸励磁電流を大きさと向きとを変化しながら流すことにより、粒子線の流れをY軸方向に偏向する。
X軸電磁石電源23は、入力されるX軸励磁電流指令値に基づいてX軸電磁石21にX軸励磁電流を流す。また、Y軸電磁石電源24は、入力されるY軸励磁電流指令値に基づいてY軸電磁石22にY軸励磁電流を流す。
【0020】
データ記憶部26には、図2に示すようなデータ構造を有するデータテーブルが設けられている。そして、データテーブルには、連番のアドレスに対してそれぞれ3つのデータ領域と1つのポインタ領域が設定されており、2つのデータ領域には、X軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値とが格納されている。また、残りの1つのデータ領域は、螺旋周期終了ビットと称し、そこには螺旋周期の終了を表すデータが格納されており、螺旋周期の終了のアドレスのとき「1」が格納されていて、それ以外は「0」が格納されている。
また、クロック信号に基づいてインクリメントされたアドレスに対応するポインタ領域に「1」が格納され、それ以外のアドレスに対応するポインタ領域に「0」が格納されている。ポインタ領域に「1」が格納されたアドレスのデータ領域のデータが指令値送信部25に送られる。
【0021】
X軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値は、螺旋周期TSをm等分する所定のクロック周期W毎に式(6)〜(9)に基づいて求められ、データ記憶部26に格納される。例えば、螺旋周期TSが40ミリ秒で200等分すると、クロック周期Wが0.2ミリ秒でなり、1つの螺旋周期TSで200個のアドレスが占有され、そのアドレスが0番から199番までとすると、199番のアドレスの螺旋周期終了ビットに「1」が格納されている。そして、所定の螺旋周期回数200回分のデータがデータ記憶部26に格納されている。
【0022】
【数3】
【0023】
データ記憶部26では、クロック信号が入力される度に、アドレスがインクリメントされて、そのアドレスに格納されているX軸励磁電流指定値、Y軸励磁電流指定値および螺旋周期終了ビットのデータが読み出されて、指令値送信部25に送られる。
【0024】
指令値送信部25は、データ記憶部26から送られてきたX軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値に基づいてX軸励磁電流指令値をX軸電磁石電源23に、Y軸励磁電流指令値をY軸電磁石電源24に送信する。さらに、指令値送信部25は、データ記憶部26から送られてきた螺旋周期終了ビットのデータに基づき、螺旋周期終了ビットのデータが「1」のとき螺旋周期終了信号として、「LOW」、「HIGH」、「LOW」レベルに変化するパルスを入切制御部28に送信する。
【0025】
タイミング制御装置27は、螺旋周期TSとその等分数mとから求められるクロック周期Wのクロック信号と、データ記憶部26のアドレスを最初のアドレスに戻すリセット信号と、をデータ記憶部26に入力する。
【0026】
入切制御部28は、粒子線照射による治療に先立って設定された計画線量が記憶されている判定用記憶装置31、ビーム検出装置11からの照射線量と計画線量とを比較してビーム要求の有無を判定し、ビーム要求信号のレベルを変化する判定装置32およびビーム要求信号のレベルを螺旋周期の区切りごとにビーム入切信号としてビーム入切装置7、8に送信するレジスタ33が備えられている。ビーム要求信号は、ビーム要求があるとき「HIGH」レベル、ビーム要求がないとき「LOW」レベルとなっている。
【0027】
ビーム検出装置11は、図3に示すように、照射される粒子線の電荷の流れ、すなわちビーム電流を計測する線量モニタ35、ビーム電流の大きさに比例する周波数のパルス列に変換する電流周波数変換器36、パルス列に含まれるパルスの数をカウントして所定の時限で積算してカウント値を求めるカウンタ37が備えられている。このカウント値が照射線量である。
【0028】
次に、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1の動作について説明する。
治療の開始の時点では、照射線量は零であり、計画線量より少ないので、ビーム要求信号のレベルは「HIGH」となっている。そして、図示しない照射開始のためのスイッチが入力されると、クロック信号がデータ記憶部26に送信され、そのクロック信号の入力の度にアドレスがインクリメントされて、そのアドレスのX軸励磁電流指定値、Y軸励磁電流指定値および螺旋周期終了ビットのデータが読み出され、X軸励磁電流指令値とY軸励磁電流指令値とがX軸電磁石電源23とY軸電磁石電源24とに送信される。X軸電磁石電源23とY軸電磁石電源24は、それぞれX軸電磁石21とY軸電磁石22とを励磁し、粒子線の流れを偏向する。
そして、アドレスのインクリメントが繰り返されて、螺旋周期の終わりのアドレスに達したとき、読み出された螺旋周期終了ビットのデータは「1」であるので、螺旋周期終了信号としてのパルスが送信される。
1回の螺旋周期での線量は計画線量に達しないので、ビーム要求信号のレベルは「HIGH」のままであるので、粒子線はそのまま供給されて、次の螺旋周期での照射が継続される。
そして、複数の螺旋周期の照射を繰り返すことにより、照射線量が計画線量に達する螺旋周期での照射が始まる。この螺旋周期の最初のアドレスから始まって、あるアドレスのときに照射線量が計画線量に達すると、ビーム要求信号のレベルは「LOW」に変化する。しかし、レジスタ33には螺旋周期終了信号としてのパルスが入力されていないので、ビーム入切信号のレベルは「HIGH」のままである。そして、この螺旋周期の終了のアドレスに達すると、螺旋周期終了ビットが「1」なので、螺旋周期終了信号としてのパルスがレジスタ33に送られる。
レジスタ33にパルスが入力されると、ビーム入切信号のレベルが「LOW」に変化し、粒子線が遮断される。
【0029】
このように螺旋周期単位で照射が繰り返されるので、照射が螺旋周期の途中で中断されることがなくなり、線量率を上げても、線量分布の一様性の確保が確実に行われるし、照射時間の短縮もできる。
また、加速器の運転周期に対する制約も緩和することができる。
【0030】
なお、照射の入切は螺旋周期毎に行われるので、照射線量の制御は1回の螺旋周期において照射される照射線量単位で行われ、常に計画線量に対して実際に照射された線量は超えてしまうことになる。
例えば、加速器の運転周期が2秒で、その内ビームON時間は400ミリ秒で、加速器によって照射される平均線量率が2Gy/分とすると、2Gyの計画線量を患部に照射するためには60秒かかるので、加速器は30回の運転が必要になる。ビームON時間は30回の運転全体では12秒となり、また、螺旋周期43.5ミリ秒での照射線量は0.00725Gyとなる。30回の運転において、1回目から29回目までの照射線量を積算し、計画線量に達していない場合、次の螺旋周期の照射に移るので、計画線量を越える線量は最大でも1回の螺旋周期分の照射線量であり、計画線量に対する照射線量の精度は例えば上述の例では0.36%と十分に確保される。
【0031】
また、螺旋ワブラ法によるビーム照射は、照射を継続しながら連続的に走査させる方法、ビームの照射を一旦停止してビームを移動して移動が完了したらビームの照射を開始する方法、照射を継続しながらビームの移動と停止とを繰り返す方法などが知られているが、いずれの方法もこの発明の粒子線治療装置1に適用することができる。
【0032】
実施の形態2.
図4は、この発明の実施の形態2に係わる粒子線治療装置の入切制御部のブロック図である。図5は、実施の形態2に係わる粒子線治療装置のデータ記憶部のデータテーブルのデータ構造である。
実施の形態1においては、粒子線の入切はデータ記憶部26に格納されている螺旋周期終了ビットを読み出して螺旋周期終了信号としてのパルスをレジスタ33に入力することにより行われているが、実施の形態2においては、タイミング制御装置27からのクロック信号をカウントし、判定用記憶装置31に予め記憶されている螺旋周期分割数とカウント値とを比較し、カウント値が螺旋周期分割数と等しくなったとき、レジスタ33に螺旋周期終了信号としてのパルスを送信することによりビームの入切を行う。このことに係わり、図5に示すように、データ記憶部26のデータテーブルは、実施の形態1と異なり螺旋周期終了ビットが省かれており、これ以外は実施の形態1と同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0033】
実施の形態2に係わる入切制御部28Bは、図4に示すように、タイミング制御装置27からのクロック信号をカウントして、カウント値を求めるカウンタ40、判定用記憶装置31に予め記憶されている螺旋周期分割数とカウント値とを比較して、螺旋周期終了信号としてのパルスをレジスタ33に送信する比較回路41が備えられている。カウンタ40では、比較回路41から螺旋周期終了信号としてのパルスが発信されると、カウント値がリセットされて、新たにカウントを開始する。
【0034】
このような粒子線治療装置は、クロック信号をカウンタ40によりカウントして螺旋周期の終了を検出するので、データ記憶部26に別途螺旋周期の終了に係わるデータを記憶しておかなくてもよい。
【0035】
実施の形態3.
図6は、この発明の実施の形態3に係わる粒子線治療装置の入切制御部のブロック図である。
実施の形態3に係わる入切制御部28Cは、実施の形態1に係わる入切制御部28に即ビーム遮断機能が付加されていることが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態3に係わる入切制御部28Cでは、図6に示すように、判定装置32から照射線量が計画線量に達したとき、レベル「LOW」、それ以外の時はレベル「HIGH」になっている即ビーム遮断信号がAND回路43に入力されている。
AND回路43には、即ビーム遮断信号とレジスタ33のQ出力とが入力され、ビーム入切信号が出力されている。そして、即ビーム遮断信号とレジスタ33のQ出力の少なくともいずれか一方が「LOW」のときビーム入切信号のレベルが「LOW]に変化する。このようにして、螺旋周期の途中でも必要があればビームの照射を中断することができる。
この即ビーム遮断信号は、図示しない遮断スイッチをONすることによって創成してもよい。
【0036】
このような粒子線治療装置は、螺旋周期の回数が線量分布の一様性を確保する上で必要以上になっているとき、螺旋周期の途中で照射を中断しても線量分布の一様性が悪くならないので、線量満了に対して即照射を中断して計画線量を越える量を低減することができる。
また、即ビーム遮断信号を緊急停止信号として使用できるので、咳や患者の急な動きなど異常時における照射停止時間を短縮できるので、安全性が高まる。
【0037】
実施の形態4.
図7は、この発明の実施の形態4に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図8は、実施の形態4に係わる信号処理装置と入切制御部とに係わる信号のタイミングチャートである。図9は、実施の形態4に係わる入切制御部のブロック図である。
実施の形態4に係わる粒子線治療装置1Dは、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1に患者監視装置としての呼吸ゲート発生装置44が追加され、これに関連して入切制御部28Dが変更されていることが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態4に係わる呼吸ゲート発生装置44は、図7に示すように、患者の呼吸を測定するための呼吸測定装置45、測定された呼吸に基づく信号を処理するための信号処理装置46から構成されている。呼吸ゲート発生装置44として、例えば、安西メディカル社製のAZ773があるが、これ以外にも種々の方法があり、ここで説明する方法に限定するものではない。
【0038】
呼吸測定装置45では、連続的に患者5の呼吸状態を計測し、信号処理装置46では、図8に示すように、呼吸測定に基づき呼吸曲線を生成する。そして、呼吸曲線を予め定められた閾値と比較し、呼吸曲線が閾値より下にあるときを呼吸が安定していると判断し、呼吸ゲート信号のレベルを「HIGH]に変える。呼吸曲線が閾値より上にあるときを呼吸が不安定であると判断し、呼吸ゲート信号のレベルを「LOW」にする。
【0039】
実施の形態4に係わる入切制御部28Dは、図9に示すように、判定装置32とレジスタ33の間にAND回路47が介設されており、ビーム要求信号と呼吸ゲート信号が入力され、ビームゲート信号が出力される。そして、ビーム要求信号と呼吸ゲート信号がともにレベル「HIGH」のとき、ビームゲート信号のレベルが「HIGH」になる。
レジスタ33には、ビームゲート信号と螺旋周期終了信号としてのパルスが入力され、ビーム入切信号が出力される。そして、指令値送信部25からの螺旋周期終了信号としてのパルスが送られたとき、すなわち螺旋周期の終了のとき、レジスタ33のD入力端子のレベルがQ出力端子のレベルに反映するので、ビーム要求信号のレベルが「HIGH」で呼吸ゲート信号のレベルも「HIGH」のときだけビーム入切信号が「HIGH]になり、粒子線が粒子線照射部3に供給される。
【0040】
このように患者の呼吸が安定しているときにだけ粒子線の照射が行える。なお、螺旋周期TSを43.478ミリ秒としたとき、通常呼吸の周期は2秒から6秒程度であるので、呼吸同期におけるビームの遮断に要する時間を0.1秒以下にすれば、呼吸状態の変化に十分に追従することができる。
実施の形態1では患者の呼吸に関わりなく螺旋周期単位でビームの入切を行っているので、線量分布の一様性を充分に確保できるが、実施の形態4のように呼吸同期運転の場合でも線量分布の一様性の管理を容易に進めることができる。
【0041】
実施の形態5.
図10は、この発明の実施の形態5に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図11は、実施の形態5に係わるデータ記憶部の第1のデータテーブルのデータ構造を示す図である。図12は、実施の形態5に係わるデータ記憶部の第2のデータテーブルのデータ構造を示す図である。図13は、実施の形態5に係わる指令値送信部のブロック図である。図14は、実施の形態5の粒子線治療装置で走査された螺旋軌跡を示す図である。
実施の形態5に係わる粒子線治療装置1Eは、図10に示すように、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1と指令値送信部25Eおよびデータ記憶部26Eが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
【0042】
実施の形態5に係わるデータ記憶部26Eには、2つのデータテーブル50、51が設定されている。第1のデータテーブル50は、図11に示すように、連番のアドレスに対してそれぞれ2つのデータ領域と1つのポインタ領域が設定されており、1つのデータ領域には、振幅Bのデータが格納されている。また、残りの1つのデータ領域には、螺旋周期終了ビットと称し、そこには螺旋周期終了を表すデータが格納されており、螺旋周期終了のアドレスのとき「1」が格納されていて、それ以外は「0」が格納されている。
また、1つのポインタ領域には、クロック信号に基づいて順送りに指定されるアドレスの現時点で指定されているアドレスを示すためのデータが格納されており、そのポインタ領域に「1」が格納され、それ以外のアドレスのポインタ領域に「0」が格納されている。
振幅Bは、螺旋周期TS、クロック周期Wとして、式(10)、式(11)に基づいて求められる。iは、クロック周期のカウント値であり、正の整数である。
【0043】
【数4】
【0044】
第2のデータテーブル51は、図12に示すように、連番のアドレスに対してそれぞれ1つのデータ領域と2つのポインタ領域が設定されており、1つのデータ領域には、正弦波関数Sのデータが格納されている。また、2つのポインタ領域には、クロック信号に基づいて順送りに指定される2つのアドレスの現時点で指定されているアドレスを示すためのデータが格納されており、そのアドレスに「1」が格納され、それ以外のアドレスに「0」が格納されている。この2つのポインタ領域は、正弦波関数Sが90度位相が異なるように連動して動いていく。YポインタはXポインタより90度位相が進んでいる。
正弦波関数Sは、ワブラ角速度ω、クロック周期Wとして式(12)に基づいて求められる。
【0045】
【数5】
【0046】
指令値送信部25Eは、図13に示すように、クロック信号に同期して第1のデータテーブル50から読み出された振幅Bを2つの乗算器52、53に分配する分配器54、第1のデータテーブル50から読み出された螺旋周期終了ビットのデータが「1」のとき、式(13)に基づいて求められる位相変化量Δφに相当する第2のデータテーブル51のアドレスをジャンプさせるアドレスジャンプ制御部55、振幅Bと第2のデータテーブル51のXポインタで示されているアドレスの正弦波関数Sとを乗算してX軸励磁電流指令値をX軸電磁石電源23に送信するX軸乗算器52、振幅Bと第2のデータテーブル51のYポインタで示されているアドレスの正弦波関数Sとを乗算してY軸励磁電流指令値をY軸電磁石電源24に送信するY軸乗算器53からなる。なお、TWは、ワブラ周期である。
【0047】
【数6】
【0048】
例えば、クロック周期Wが0.194ミリ秒とし、ワブラ周波数が57Hzすなわちワブラ周期TWが17.54ミリ秒とすると、螺旋周期開始時点の位相は、360度の分数とすることができる。360度の7分の1を単位として、螺旋位相を0度、51度、103度、154度、206度、257度、309度とすることができる。また、360度の7分の3を単位として、位相を0度、154度、309度、103度、257度、51度、206度とすることができる。位相を51度進めるためには、17.54ミリ秒÷0.194ミリ秒×51度÷360度=12.808となり、アドレスを約13進めればよい。螺旋周期終了ビットの「1」を受信したとき、第2のデータテーブル51の現在のアドレスに13を追加したアドレスから正弦波関数Sの読み出しを再開すればよい。
螺旋位相を0度、51度、103度、154度、206度、257度、309度からの螺旋軌跡を図14に示す。このように、適切な位相を設定することにより、螺旋軌跡を一様に分布させることができる。
【0049】
第1のデータテーブル50には螺旋周期1回分の振幅Bのデータ、第2のデータテーブル51にはワブラ周期1回分の正弦波関数Sのデータを格納しておけばすむので、少ない容量のデータ記憶部26Eを用意すればよい。それぞれのデータテーブル50、51では、アドレスが終端に達したら、先頭のアドレスに自動的に戻るように制御をおこなう。
なお、アドレスを指定値だけジャンプするときに、アドレスの終端に達する場合、先頭のアドレスから継続して数えて所定のアドレスにジャンプすればよい。
【0050】
このような粒子線治療装置1Eは、振幅Bのデータが第1のデータテーブル50に、正弦波関数Sのデータが第2のデータテーブル51に分割して格納されているので、それぞれ1周期分のデータだけ記憶しておけばすむので、各データの準備が簡単になるとともに、記憶容量が少なくてすむ。
【0051】
また、線量分布が一様になるように予めアドレスをジャンプさせる所定の値を求めておけるので、少ない螺旋軌跡を重ね合わせるだけで線量分布の一様性が確保できるため、線量率を上げて照射することができる。
また、ワブラ周期TWと螺旋周期TSとを変えるときも、線量分布の一様性の確保できるアドレスのジャンプ量を予め求めることができるのでワブラ周期TWと螺旋周期TSの選定の制約が少なくなる。
また、加速器の運転周期を短くして効率を高める運転も容易に行うことができる。
【0052】
実施の形態6.
図15は、この発明の実施の形態6に係わる指令値送信部のブロック図である。図16は、実施の形態6に係わるジャンプデータテーブルのデータ構造を示す図である。
実施の形態6に係わる粒子線治療装置は、実施の形態5に係わる粒子線治療装置と指令値送信部25Fが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
実施の形態6に係わる指令値送信部25Fは、図15に示すように、実施の形態5に係わる指令値送信部25Eとアドレスジャンプ制御部55Fが異なり、また、それに係わるジャンプデータテーブル56が追加されていることが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
【0053】
実施の形態6に係わるアドレスジャンプ制御部55Fは、読み出した第1のデータテーブル50の螺旋周期終了ビットのデータが「1」のとき、ジャンプデータテーブル56のアドレスをインクリメントして、インクリメントしたアドレスのジャンプ先を示すX軸アドレス、Y軸アドレスを読み出し、そのアドレスに対応する第2のデータテーブル51のXポインタとYポインタに「1」を設定する。すると、Xポインタに「1」が設定されているアドレスの正弦波関数SのデータがX軸乗算器52へ、Yポインタに「1」が設定されているアドレスの正弦波関数SのデータがY軸乗算器53へ出力される。これ以降は実施の形態5で説明したことと同様である。
【0054】
ジャンプデータテーブル56は、図16に示すように、連番のアドレスにそれぞれ2つのデータ領域と1つのポインタ領域が設定されている。2つのデータ領域には、2つのX軸アドレスとY軸アドレスが格納されている。このX軸アドレスとY軸アドレスは、第2のデータテーブル51のアドレスを示し、第2のデータテーブル51のY軸アドレスの正弦波関数Sのデータは、第2のデータテーブル51のX軸アドレスの正弦波関数Sのデータより90度位相が進んでいる値である。
1つのポインタ領域には、現在の螺旋周期の螺旋位相に係わるアドレスが指定されており、螺旋周期終了ビットの値が「1」のとき、アドレスがインクリメントされて、それに連動してポインタ領域が1つ移動する。
【0055】
このような粒子線治療装置は、螺旋周期毎に螺旋位相を制御することができ、一様な線量分布の照射野を形成するために最も効率的な螺旋位相の組合せを予め決めておけば、少ない螺旋周期回数の照射により計画線量を一様性を維持しながら照射できる。
また、ジャンプ量を変化しながら任意に螺旋位相を設定できるので、最適な螺旋軌道の重ね合わせを実現することができる。
【0056】
実施の形態7.
図17は、この発明は実施の形態7に係わる粒子線治療装置の指令値送信部である。
実施の形態7に係わる粒子線治療装置は、実施の形態5に係わる粒子線治療装置1Eに励磁電流を監視する機能を付加したことが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
実施の形態7に係わるX軸電磁石電源23GおよびY軸電磁石電源24Gは、その出力に励磁電流値を計測するための図示しない電流計が備えられている。
【0057】
また、実施の形態7に係わる指令値送信部25Gは、図17に示すように、電流計から入力されるX軸励磁電流値およびY軸励磁電流値が予め設定された閾値I0MAXより大きいときX軸過電流信号およびY軸過電流信号を発するX軸比較器57およびY軸比較器58、X軸過電流信号またはY軸過電流信号が入力されたときジャンプ非許可信号をアドレスジャンプ制御部55に送信するOR回路59が追加されていることが実施の形態5の指令値送信部25Eと異なっており、その他は同様であるので同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
【0058】
実施の形態5、6において、螺旋周期開始時点、すなわち励磁電流の振幅の零の時点で螺旋位相を可変することにしているが、誤動作や正弦波データの間違いなどにより、励磁電流が大きくなってしまう可能性がある。そこで、実施の形態7の指令値送信部25Gでは、励磁電流が所定の閾値I0MAXより大きいとき、OR回路59を経由して、螺旋周期開始時点で行うアドレスのジャンプを非許可とする。
このような粒子線治療装置は、誤動作や誤データによる励磁電流の急激な変化が発生したとき、アドレスのジャンプを許可せずに、そのままアドレスをインクリメントするので、電磁石電源の破損を防止することができる。
【0059】
実施の形態8.
図18は、この発明の実施の形態8に係わる粒子線治療装置のタイミング制御装置と入切制御部とのブロック図である。
実施の形態8に係わる粒子線治療装置は、実施の形態4に係わる粒子線治療装置1Dとタイミング制御装置27Hが異なっており、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
実施の形態8に係わるタイミング制御装置27Hは、実施の形態4に係わるタイミング制御装置27にAND回路61が追加されている。AND回路61には、入切制御部28Dのレジスタ33からのビーム入切信号と予め定められているクロック周期Wのクロック信号とが入力され、ゲート付クロック信号がデータ記憶部26に出力される。そして、データ記憶部26は、このゲート付クロック信号によりアドレスがインクリメントされる。
呼吸同期運転されているとき、患者の呼吸が照射できる状態にない場合、ビーム入切信号が「LOW」になるので、データ記憶部26に入力されるゲート付クロック信号がブロックされ、アドレスがインクリメントされない。そして、励磁電流がそのまま保持されるので、照射は行われていないが、粒子線が供給されているとしたら照射位置は移動しない。このように患者の呼吸が安定していないとき、粒子線の供給を停止すると同時に励磁状態もそのままで維持されている。そして、患者の呼吸が安定すると、ビームゲート信号が「HIGH」に変化し、ゲート付クロック信号もデータ記憶部26に入力され、粒子線が停止していた位置から走査が再開される。
【0060】
このような粒子線治療装置は、照射時間が短い場合、線量率が高い場合または呼吸同期運転されている場合などのように十分に多くの回数の螺旋周期で照射が行えないときでも、粒子線が遮断されている間、粒子線の偏向条件が変わらないため、照射が行われない軌跡が生じないので、線量分布の一様性を確保することができる。
また、ビーム入切制御を螺旋周期の終了時点で行えば、励磁電流の振幅が零の状態となるため、電力消費を低減することができる。
また、加速器の運転において加速と減速の占める時間がビームON時間に比べて長いので、加速と減速のときに励磁電流の振幅を零にすることにより、省電力に有意な効果が得られる。
【0061】
なお、実施の形態8では、螺旋周期単位でビーム入切信号を行っているが、螺旋周期の途中で呼吸ゲート信号に基づいて患者の呼吸状態に即応して、ビームの入切を行うとともにゲート付クロック信号の発振・停止を行っても、同様に、照射が行われない部分の含まれた軌跡を生じさせない。
また、実施の形態8では、螺旋周期開始時点で螺旋位相を可変していないが、実施の形態5、6のように螺旋周期開始時点で螺旋位相を可変しながら、呼吸同期運転に伴う呼吸ゲート信号に従ってクロック信号を制御してもよい。
【0062】
実施の形態9.
図19は、この発明の実施の形態9に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図20は、実施の形態9に係わるビーム検出装置のブロック図である。
実施の形態9に係わる粒子線治療装置1Jは、図19に示すように、実施の形態4に係わる粒子線治療装置1Dとビーム検出装置11Jが異なっている。また、タイミング制御装置27が省略されていることが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記し、説明は省略する。
実施の形態4ではデータテーブルのアドレスはタイミング制御装置27からのクロック信号によりインクリメントされるが、実施の形態9では、ビーム検出装置11Jからの照射線量に比例したクロック信号によりインクリメントされる。
実施の形態9に係わるビーム検出装置11Jは、図20に示すように、照射線量を求めるための線量モニタ35、電流周波数変換器36およびカウンタ37以外に、照射線量に比例するクロック信号を創成するためのゲイン調整装置63、電流周波数変換器64およびカウント調整装置65が備えられている。
ゲイン調整装置63は、電流周波数変換器64に入力する電流値が大きくなるようにシグナル/ノイズ比を許容される範囲内で高くしておき、なるべく小さな電荷の通過で1つのパルスが創成するように設定されている。
電流周波数変換器64は、このように増幅された電流値に比例する周波数のパルス列に変換する。ゲイン調整装置63で増幅されているので、パルス列の周波数は高周波になる。
カウント調整装置65は、パルス列を周波数変換して、螺旋周期分割数に相当するパルス列にする。
【0063】
なお、ビーム検出装置11Jは、クロック信号を創成する機能と患者に照射する全線量を管理する機能とを併せ持っているので、安全性に係わる対策を施すことが必要である。対策としては、それぞれの機能の系統を独立して配設し、かつ、それぞれの機能の系統を多重化し、系統間で相互にチェックする機能を備えることが挙げられる。
【0064】
このような粒子線治療装置1Jでは、ある照射位置に照射される線量がカウント調整装置65から1つのクロック信号が発信されるまでの量に達しないと、アドレスがインクリメントされない。そこで、照射位置毎の線量が所定の量(カウント調整装置65から1つのクロック信号が発信される量)に合わされるので、ターゲット領域全体に亘って照射線量が所定の量に正確に合わされる。
また、粒子線発生部2から供給されるビーム電流が変動した場合でも、時間ではなく照射線量が1クロック信号分照射されたとき照射位置を移動するので、ビーム電流の変動の影響を受けない。
【0065】
実施の形態10.
図21は、この発明の実施の形態10に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図22は、円軌跡を示す図である。図23は、実施の形態10に係わるデータ記憶部に格納されているデータテーブルのデータ構造である。
実施の形態10に係わる粒子線治療装置1Kは、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1と粒子線の照射の軌跡が異なり、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。軌跡が異なることに関連して、実施の形態10に係わる粒子線治療装置1Kは、図21に示しように、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1とデータ記憶部26K、指令値送信部25K、タイミング制御装置27K、入切制御部28Kが異なっている。
実施の形態1においては螺旋軌跡を描くように粒子線を走査しているが、実施の形態10では図22に示すように、円軌跡を描くように粒子線を走査する。このため、データ記憶部26Kのデータテーブルには、図23に示すように、連番のアドレスに対してそれぞれ3つのデータ領域と1つのポインタ領域が設定されており、2つのデータ領域には、X軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値とが格納されている。また、残りの1つのデータ領域は、ワブラ周期終了ビットと称し、そこにはワブラ周期の終了を表すデータが格納されており、ワブラ周期の終了のアドレスのとき「1」が格納されていて、それ以外は「0」が格納されている。
また、クロック信号に基づいてインクリメントされたアドレスに対応するポインタ領域に「1」が格納され、それ以外のアドレスに対応するポインタ領域に「0」が格納されている。ポインタ領域に「1」が格納されたアドレスのデータ領域のデータが指令値送信部25Kに送られる。
【0066】
X軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値は、ワブラ周期TWをp等分する所定のクロック周期W毎に式(14)、(15)に基づいて求められ、データ記憶部26Kに格納される。例えば、ワブラ周期TWが18ミリ秒で36等分すると、クロック周期Wが0.5ミリ秒でなり、1つのワブラ周期TWで36個のアドレスが占有され、そのアドレスが0番から35番までとすると、35番のアドレスのワブラ周期終了ビットに「1」が格納されている。
【0067】
【数7】
【0068】
データ記憶部26Kでは、クロック信号が入力される度に、アドレスがインクリメントされて、そのアドレスに格納されているX軸励磁電流指定値、Y軸励磁電流指定値およびワブラ周期終了ビットのデータが読み出されて、指令値送信部25Kに送られる。
【0069】
指令値送信部25Kは、データ記憶部26Kから送られてきたX軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値に基づいてX軸励磁電流指令値をX軸電磁石電源23に、Y軸励磁電流指令値をY軸電磁石電源24に送信する。さらに、指令値送信部25Kは、データ記憶部26Kから送られてきたワブラ周期終了ビットのデータに基づき、ワブラ周期終了ビットのデータが「1」のときワブラ周期終了信号として、「LOW」、「HIGH」、「LOW」レベルに変化するパルスを入切制御部28Kに送信する。
【0070】
タイミング制御装置27Kは、ワブラ周期TWとそのp等分数とから求められるクロック周期Wのクロック信号と、データ記憶部26Kのアドレスを最初のアドレスに戻すリセット信号とをデータ記憶部26Kに入力する。
【0071】
入切制御部28Kは、粒子線照射による治療に先立って設定された計画線量が記憶されている判定用記憶装置31、ビーム検出装置11からの照射線量と計画線量とを比較してビーム要求の有無を判定し、ビーム要求信号のレベルを変化する判定装置32およびビーム要求信号のレベルをワブラ周期の区切りごとにビーム入切信号としてビーム入切装置7、8に送信するレジスタ33が備えられている。ビーム要求信号は、ビーム要求があるとき「HIGH」レベル、ビーム要求がないとき「LOW」レベルとなっている。
レジスタ33は、ワブラ周期終了信号としてのパルスがCLOCK端子に入力されると、D入力端子に入力されているビーム要求信号のレベルがビーム入切信号としてQ出力端子から出力される。
【0072】
あるワブラ周期の途中で照射線量が計画線量を越えてビーム要求信号のレベルが「LOW」に変化しても、ワブラ周期終了信号としてのパルスがレジスタ33に入力されないかぎりビーム入切信号のレベルは「HIGH」のままである。そして、ワブラ周期終了信号としてのパルスが指令値送信部25Kから送られたとき始めてビーム入切信号のレベルが「LOW」に変化して、粒子線が遮断される。
【0073】
このような粒子線治療装置は、ワブラ周期の途中で粒子線の照射が中断されないので、線量分布の一様性が確保できる。
また、図24に示すような複数円のワブラ照射法や照射線量率を大きくする場合には、ワブラ周期単位の照射にすることにより、短時間の照射でも線量分布の一様性を確保し易くなる。
【0074】
また、ワブラ照射法によるビーム照射は、照射を継続しながらビームを連続的に走査させる方法、ビームを一旦停止してビームを移動して移動が完了したらビームの照射を開始する方法、照射を継続しながらビームの移動と停止とを繰り返す方法などが知られているが、いずれの方法もこの発明の粒子線治療装置1Kに適用することができる。
【0075】
実施の形態11.
図25は、この発明の実施の形態11に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図26は、ジグザグ軌跡の例を示す図である。図27は、他のジグザグ軌跡の例を示す図である。
実施の形態11に係わる粒子線治療装置1Lは、図25に示すように、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1と粒子線の照射の軌跡が異なり、その他は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。軌跡が異なることに関連して、実施の形態11に係わる粒子線治療装置1Lは、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1とデータ記憶部26L、指令値送信部25L、タイミング制御装置27L、入切制御部28Lが異なっている。
【0076】
また、照射野の周辺に走査された粒子線を遮断するビーム遮断装置としての多葉コリメータ装置67が追加されている。このビーム遮断装置として、多葉コリメータ装置67以外に、4枚羽根コリメータ装置またはブロックコリメータ装置などを適用することができる。ビーム遮断装置は、照射野の周辺でビームの走査が折り返されるときの粒子線を遮蔽している。
実施の形態1においては螺旋軌跡を描くように粒子線を走査しているが、実施の形態11では図26に示すように、X軸方向の1往復する間にY軸方向に5往復するジグザグ軌跡を描くように粒子線を走査する。このため、データ記憶部26Lのデータテーブルには、連番のアドレスに対してそれぞれ3つのデータ領域と1つのポインタ領域が設定されており、2つのデータ領域には、X軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値とが格納されている。また、残りの1つのデータ領域は、X軸方向周期終了ビットと称し、そこにはX軸方向を1往復するX軸方向周期の終了を表すデータが格納されており、X軸方向周期の終了のアドレスのとき「1」が格納されていて、それ以外は「0」が格納されている。
また、クロック信号に基づいてインクリメントされたアドレスに対応するポインタ領域に「1」が格納され、それ以外のアドレスに対応するポインタ領域に「0」が格納されている。ポインタ領域に「1」が格納されたアドレスのデータ領域のデータが指令値送信部25Lに送られる。
【0077】
X軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値は、X軸方向周期TXをq等分する所定のクロック周期W毎に求められ、データ記憶部26Lに格納される。
データ記憶部26Lでは、クロック信号が入力される度に、アドレスがインクリメントされて、そのアドレスに格納されているX軸励磁電流指定値、Y軸励磁電流指定値およびX軸方向周期終了ビットのデータが読み出されて、指令値送信部25Lに送られる。
指令値送信部25Lは、データ記憶部26Lから送られてきたX軸励磁電流指定値とY軸励磁電流指定値に基づいてX軸励磁電流指令値をX軸電磁石電源23に、Y軸励磁電流指令値をY軸電磁石電源24に送信する。さらに、指令値送信部25Lは、データ記憶部26Lから送られてきたX軸方向周期終了ビットのデータに基づき、X軸方向周期終了ビットのデータが「1」のときX軸方向周期終了信号として、「LOW」、「HIGH」、「LOW」レベルに変化するパルスを入切制御部28Lに送信する。
【0078】
タイミング制御装置27Lは、X軸方向周期TXとそのq等分数とから求められるクロック周期Wのクロック信号と、データ記憶部26Lのアドレスを最初のアドレスに戻すリセット信号と、をデータ記憶部26Lに入力する。
【0079】
入切制御部28Lは、粒子線照射による治療に先立って設定された計画線量が記憶されている判定用記憶装置31、ビーム検出装置11からの照射線量と計画線量とを比較してビーム要求の有無を判定し、ビーム要求信号のレベルを変化する判定装置32およびビーム要求信号のレベルをX軸方向周期の区切りごとにビーム入切信号としてビーム入切装置7、8に送信するレジスタ33Lが備えられている。ビーム要求信号は、ビーム要求があるとき「HIGH」レベル、ビーム要求がないとき「LOW」レベルとなっている。
レジスタ33Lは、X軸方向周期終了信号としてのパルスがCLOCK端子に入力されると、D入力端子に入力されているビーム要求信号のレベルがビーム入切信号としてQ出力端子から出力される。
【0080】
あるX軸方向周期の途中で照射線量が計画線量を越えてビーム要求信号のレベルが「LOW」に変化しても、X軸方向周期終了信号としてのパルスがレジスタ33Lに入力されないかぎりビーム入切信号のレベルは「HIGH」のままである。そして、X軸方向周期終了信号としてのパルスが指令値送信部25Lから送られたとき始めてビーム入切信号のレベルが「LOW」に変化して、粒子線が遮断される。
【0081】
このような粒子線治療装置1Lは、X軸方向周期の途中で粒子線の照射が中断されないので、線量分布の一様性が確保できる。
また、図27に示すようなジグザグ回数を多くして行う照射法や照射線量率を大きくする場合には、X軸方向単位の照射にすることにより、短時間の照射でも線量分布の一様性を確保し易くなる。
【0082】
また、ジグザグ照射法によるビーム照射は、照射を継続しながらビームの照射を連続的に走査させる方法、ビームを一旦停止してビームを移動して移動が完了したらビームの照射を開始する方法、照射を継続しながらビームの移動と停止とを繰り返す方法などが知られているが、いずれの方法もこの発明の粒子線治療装置1Lに適用することができる。
【0083】
また、実施の形態11においてはデータ記憶部26Lのアドレスはタイミング制御装置27Lからのクロック信号によりインクリメントされるが、実施の形態8において説明したように、ビーム入切信号のレベルが「LOW」になって粒子線の供給が中断したときにアドレスのインクリメントも中断する機能を追加してもよい。
また、実施の形態9において説明したように、線量モニタのビーム電流値に基づいて創成されるクロック信号を用いてアドレスのインクリメントを制御してもよい。
【0084】
実施の形態12.
図28は、この発明の実施の形態12に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
実施の形態12に係わる粒子線治療装置1Mは、図28に示すように、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1にビーム遮断装置としての多葉コリメータ装置67と粒子線のエネルギーを変える手段としてのレンジシフタ装置68とが追加されており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0085】
なお、粒子線のエネルギーを変える手段として、レンジシフタ装置68以外に、粒子線発生部2においてシンクロトロン方式の加速器のエネルギーの設定値を変えることによって粒子線のエネルギーの変更が可能であり、また、粒子線輸送部4において図示しない電磁石のコイルの励磁電流を変えることによって粒子線のエネルギーの変更が可能であるので、レンジシフタ装置68に限るものではない。
レンジシフタ装置68は、ポリエチレンから構成されており、それに粒子線を通過させることにより、粒子線のエネルギーが所望の値まで下げることができる。このようにして粒子線のエネルギーを可変することにより、粒子線が到達する深さを調整して、深さ方向に層別された層毎に所望の計画線量を照射して、3次元的に所望の線量分布を有するように照射が行われる。これを積層原体照射法と称す。
【0086】
立体的なターゲット領域は、深さ方向に層別された層の深さ方向に垂直なターゲット領域の形状は違うので、その形状にだけ粒子線を照射するためにビーム遮断装置としての多葉コリメータ装置67が備えられている。なお、ビーム遮断装置として、多葉コリメータ装置67以外にも4枚羽根コリメータ装置またはブロックコリメータ装置などがあり、いずれを適用してもよい。
多葉コリメータ装置67は、その開口を照射対象の層の予め決定されている最適な形状になるように設定されている。
【0087】
次に、積層原体照射法に螺旋周期単位に粒子線の照射を行うことについて説明する。
粒子線よる治療に先立って、3次元のターゲット領域を粒子線の照射方向に垂直な平面により5mm〜10mm程度の厚さの層に層別し、各層毎に計画線量を定めて、判定用記憶装置31に格納させておく。また、各層のターゲット領域の外形を計測し、多葉コリメータ装置67の開口が外形に最適な形状になるような設定値を予め定めておく。また、各層の照射に適するレンジシフタ装置68を治療に先立って用意しておく。
1つの層を照射するために、適切なレンジシフタ装置68を設置し、多葉コリメータ装置67を調整して開口を定め、実施の形態1で説明したようにして、当該層の計画線量まで螺旋軌跡を重ねることにより照射する。このとき、粒子線の入切は螺旋周期単位で行い、螺旋周期の途中では粒子線を切らない。
次の層を照射するために、適切なレンジシフタ装置68を設置し、多葉コリメータ装置67を調整して開口を定め、照射を行う。この手順を繰り返すことにより、積層原体照射法を用いて立体的な患部を層状に照射が行われる。
【0088】
このような粒子線治療装置1Mは、患部の深さ方向の照射の制御のために積層原体照射法が用いられているので、3次元的な線量分布が得られるという効果がある。線量について、患部を深さ方向に分割することにより、各層に照射する線量は大幅に少なくなる。例えば、深さ方向に10cmの広がりをもつ患部を20層に分割した場合、最深層に100の単位の線量を照射するとしたら、最深層より浅い層には典型的に一桁少ない10の単位以下の線量しか必要とされないことが知られている。これは粒子線の物理的性質に起因することで、一般に最深層以外の浅い側の層に対しては照射する線量がかなり少なくてよい。結果的に、これらの浅い層に対しては照射時間がかなり短くなり、従来の方法では、横方向の線量分布の一様性を保証することが困難である。
積層原体照射法を呼吸同期運転と組み合わせた場合、さらに困難になる。
これに対して、上述の実施の形態1乃至11の構成を積層原体照射法に適用することにより、積層原体照射法のより厳しい条件を満足し、線量分布の一様性を確保することができる。
【0089】
なお、実施の形態12では、螺旋軌跡を画くように粒子線を走査しているが、積層原体照射法における各層に対する粒子線の照射を円軌跡またはジグザグ軌跡を画くように粒子線を走査することもできる。
【0090】
実施の形態13.
図29は、この発明の実施の形態13に係わる粒子線治療装置のブロック図である。図30は、実施の形態13に係わるビーム検出装置のブロック図である。図31は、実施の形態13に係わる粒子線治療装置において照射線量を監視する手順を示すフローチャートである。
実施の形態13に係わる粒子線治療装置1Nは、図29に示すように、実施の形態1に係わる粒子線治療装置1に照射位置の座標情報を入手する機能と照射位置の照射線量が適正であるか否かを判定する機能とを追加したことが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明を省略する。
【0091】
実施の形態13に係わるX軸電磁石電源23NおよびY軸電磁石電源24Nは、その出力に励磁電流値を計測するための図示しない電流計が備えられている。この電流計からX軸励磁電流IX、Y軸励磁電流IYが出力される。
また、実施の形態13に係わるビーム検出装置11Nは、図30に示すように、実施の形態1に係わるビーム検出装置11に線量モニタ35のビーム電流をデジタルの線量モニタ出力IDOSEに変換するアナログデジタル変換器70、X軸励磁電流IX、Y軸励磁電流IYおよび線量モニタ出力IDOSEを時系列に記録する線量記録装置71、照射線量が予め決められた計画線量に一致しているか否かを判断し、不一致の場合異常を外部に通報する線量演算処理装置72が付加されている。
【0092】
次に、実施の形態13に係わる粒子線治療装置において照射線量を監視する手順を図31を参照して説明する。
照射深度における2次元の照射領域は、例えば、マトリックス状に5mm角のピクセルに区切られ、照射の管理をピクセル単位で行う。
S101では、各ピクセル(PX、PY)のカウント値D1(PX、PY)を零とし、予め決められた各ピクセル設定値D0(PX、PY)を外部から読み込む。
S102で、照射中にX軸励磁電流IX、Y軸励磁電流IYおよび線量モニタの出力IDOSEを時系列に線量記録装置に記録する。記録する時間間隔は、例えば、0.1ミリ秒と電磁石の動きに対して十分に短い間隔とする。
S103で、時間間隔におけるIX、IYの値を読み出し、その値から照射深度におけるビームの中心のX座標X0とY座標Y0を算出する。
S104で、X座標X0とY座標Y0に対応するピクセルの座標PX、PYを求める。
S105で、IDOSEの値が予め決められている閾値IDOSE−MIN以上であれば、S106へ進み、未満であれば、S102へ戻る。
S106で、式(16)に従ってPX、PYのカウント値D1(PX、PY)を1増加させる。
【0093】
D1(PX、PY)=D1(PX、PY)+1 (16)
【0094】
S107で、ある程度分布が記録されたか否かを判断する。すなわち線量モニタの時間積算値ΣIDOSEが予め決められている積算値閾値ΣIDOSE−MINを超えたか否かを判断し、超えたときS108へ進み、以下のときS102へ戻る。
S108で、カウント値D1(PX、PY)を規格化する。計測された分布と所望の分布を比較するときにマトリックスに蓄積されたカウント値を全面積のカウント値で規格化する。
S109で、規格化されたカウント値D2(PX、PY)を外部から読み込んである各ピクセル設定値D0(PX、PY)と比較する。各ピクセル単位で比較し、ピクセルのデータの差が予め設定された範囲を超える場合は不一致とする。不一致のピクセル数が所定の数を超えたとき、異常フラグを立てて、S110へ進み、不一致のピクセル数が所定値の数以下のときS102へ戻る。
S110で、運転員に告知する。
【0095】
なお、不一致のピクセル数が所定値を超えているとき、同時にビームを一時停止状態にしてもよい。
また、異常を判定する基準としては、1つのピクセルの不一致が所定値を超えた場合としてもよい。
また、データの差の絶対値をピクセル毎に積算し、その合計が閾値以上の場合としてもよい。
また、これらの条件の組合せによる場合でもよい。
【0096】
また、ピクセルのカウント値をインクリメントするときに1カウント追加するのではなく、線量モニタの電流値に比例したカウントkIDOSEを式(17)に従うようにインクリメントしてもよい。
【0097】
D1(PX、PY)=D1(PX、PY)+kIDOSE (17)
【0098】
このように線量モニタの電流値に比例した値でカウント値をインクリメントすることにより、マトリックスの値は実際の線量分布に近い分布を現すことになり、より正確な情報に基づいて判断を行える。
【0099】
このような粒子線治療装置1Nは、実際の照射時の装置記録に基づいて安全確認が行えるので、上述の実施の形態1乃至13の付加機能のある照射制御を行っても安全性を損なうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図2】実施の形態1に係わるデータ記憶部のデータテーブルのデータ構造を示す図である。
【図3】実施の形態1に係わるビーム検出装置のブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係わる粒子線治療装置の入切制御部のブロック図である。
【図5】実施の形態2に係わる粒子線治療装置のデータ記憶部のデータテーブルのデータ構造である。
【図6】この発明の実施の形態3に係わる粒子線治療装置の入切制御部のブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図8】実施の形態4に係わる信号処理装置と入切制御部とに係わる信号のタイミングチャートである。
【図9】実施の形態4に係わる入切制御部のブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態5に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図11】実施の形態5に係わるデータ記憶部の第1のデータテーブルのデータ構造を示す図である。
【図12】実施の形態5に係わるデータ記憶部の第2のデータテーブルのデータ構造を示す図である。
【図13】実施の形態5に係わる指令値送信部のブロック図である。
【図14】実施の形態5の粒子線治療装置で走査された螺旋軌跡を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態6に係わる指令値送信部のブロック図である。
【図16】実施の形態6に係わるジャンプデータテーブルのデータ構造を示す図である。
【図17】この発明は実施の形態7に係わる粒子線治療装置の指令値送信部である。
【図18】この発明の実施の形態8に係わる粒子線治療装置のタイミング制御装置と入切制御部とのブロック図である。
【図19】この発明の実施の形態9に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図20】実施の形態9に係わるビーム検出装置のブロック図である。
【図21】この発明の実施の形態10に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図22】円軌跡を示す図である。
【図23】実施の形態10に係わるデータ記憶部に格納されているデータテーブルのデータ構造である。
【図24】同心円の複数の円軌跡を示す図である。
【図25】この発明の実施の形態11に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図26】ジグザグ軌跡の例を示す図である。
【図27】他のジグザグ軌跡の例を示す図である。
【図28】この発明の実施の形態12に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図29】この発明の実施の形態13に係わる粒子線治療装置のブロック図である。
【図30】実施の形態13に係わるビーム検出装置のブロック図である。
【図31】実施の形態13に係わる粒子線治療装置において照射線量を監視する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0101】
1 粒子線治療装置、2 粒子線発生部、3 粒子線照射部、4 粒子線輸送部、5 患者、6 粒子線発生装置、7、8 ビーム入切装置、10 照射野形成装置、11 ビーム検出装置、12 患者治療台、13 患者位置確認装置、21 X軸電磁石、22 Y軸電磁石、23 X軸電磁石電源、24 Y軸電磁石電源、25 指令値送信部、26 データ記憶部、27 タイミング制御装置、28 入切制御部、30 散乱体、31 判定用記憶装置、32 判定装置、33 レジスタ、35 線量モニタ、36、64 電流周波数変換器、37、40 カウンタ、41 比較回路、43、47、61 AND回路、44 呼吸ゲート発生装置、45 呼吸測定装置、46 信号処理装置、50、51 データテーブル、52 X軸乗算器、53 Y軸乗算器、54 分配器、55 アドレスジャンプ制御部、56 ジャンプデータテーブル、57 X軸比較器、58 Y軸比較器、59 OR回路、63 ゲイン調整装置、65 カウント調整装置、67 多葉コリメータ装置、68 レンジシフタ装置、70 アナログデジタル変換器、71 線量記録装置、72 線量演算処理装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患部に照射するために輸送されてきた粒子線を上記粒子線の進行方向に対して垂直な直交する2方向に上記粒子線の流れを偏向して、周期毎に該周期の始まりに位置する照射位置に戻るように上記粒子線の照射位置を走査し、1つの上記周期の間に画かれる軌跡を複数重ね合わせて所望の計画線量を上記患部に照射する粒子線治療装置において、
上記周期の終了の時だけ上記粒子線を遮断することが可能であることを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項2】
輸送されてきた上記粒子線が上記粒子線の進行方向に対して垂直な面を通過する点を中心として、該中心からの距離が上記周期で増減し、かつ該中心の周りを所定の角速度で回転するように上記粒子線の照射位置を走査するとき、上記周期の開始時点の回転の初期位相を可変することができることを特徴とする請求項1に記載する粒子線治療装置。
【請求項3】
アドレスが付与されている複数の領域を有し、上記アドレスを順送りに指定して上記領域から読み出されたときに上記周期で増減する振幅データおよび上記角速度で正弦波振動する正弦波関数データが上記複数の領域に記憶されている記憶部と、
クロック信号の入力毎に順送りに指定されたアドレスの上記領域から読み出される上記振幅データと上記正弦波関数データとの積をX軸励磁電流指令値としてX軸電磁石電源に、上記振幅データと上記正弦波関数データから位相が90度進んだ正弦波関数データとの積をY軸励磁電流指令値としてY軸電磁石電源に指令する指令値送信部と、
上記X軸励磁電流指令値に基づいてX軸電磁石に流すX軸励磁電流を制御する上記X軸電磁石電源と、
上記Y軸励磁電流指令値に基づいてY軸電磁石に流すY軸励磁電流を制御する上記Y軸電磁石電源と、
上記X軸励磁電流が流されることにより輸送されてきた上記粒子線の流れを上記粒子線の進行方向に対して垂直なX軸方向に偏向する上記X軸電磁石と、
上記Y軸励磁電流が流されることにより輸送されてきた上記粒子線の流れを上記粒子線の進行方向に対して垂直なY軸方向に偏向する上記Y軸電磁石と、
が備えられていることを特徴とする請求項2に記載する粒子線治療装置。
【請求項4】
アドレスが付与されている複数の領域を有し、上記アドレスを順送りに指定して上記領域から読み出されたときに上記周期で増減を繰り返す振幅の上記角速度で振動する正弦波関数データと上記周期で増減を繰り返す振幅の上記正弦波関数データより位相が90度進んでいる余弦波関数データとが記憶されている記憶部と、
クロック信号の入力毎に順送りに指定されたアドレスの上記領域から読み出される上記正弦波関数デーをX軸励磁電流指令値としてX軸電磁石電源に、上記余弦波関数データをY軸励磁電流指令値としてY軸電磁石電源に指令する指令値送信部と、
上記X軸励磁電流指令値に基づいてX軸電磁石に流すX軸励磁電流を制御する上記X軸電磁石電源と、
上記Y軸励磁電流指令値に基づいてY軸電磁石に流すY軸励磁電流を制御する上記Y軸電磁石電源と、
上記X軸励磁電流が流されることにより輸送されてきた上記粒子線の流れを上記粒子線の進行方向に対して垂直なX軸方向に偏向する上記X軸電磁石と、
上記Y軸励磁電流が流されることにより輸送されてきた上記粒子線の流れを上記粒子線の進行方向に対して垂直なY軸方向に偏向する上記Y軸電磁石と、
が備えられていることを特徴とする請求項2に記載する粒子線治療装置。
【請求項5】
アドレスが付与されている複数の領域を有し、上記アドレスを順送りに指定して上記領域から読み出されたときに上記周期で増減する振幅データおよび周期性を有する関数データが上記複数の領域に記憶されている記憶部と、
クロック信号の入力毎に順送りに指定されたアドレスの上記領域から読み出される上記振幅データと上記関数データとの積をX軸励磁電流指令値としてX軸電磁石電源に、上記振幅データと上記関数データから所定の位相が進んだ関数データとの積をY軸励磁電流指令値としてY軸電磁石電源に指令する指令値送信部と、
上記X軸励磁電流指令値に基づいてX軸電磁石に流すX軸励磁電流を制御する上記X軸電磁石電源と、
上記Y軸励磁電流指令値に基づいてY軸電磁石に流すY軸励磁電流を制御する上記Y軸電磁石電源と、
上記X軸励磁電流が流されることにより輸送されてきた上記粒子線の流れを上記粒子線の進行方向に対して垂直なX軸方向に偏向する上記X軸電磁石と、
上記Y軸励磁電流が流されることにより輸送されてきた上記粒子線の流れを上記粒子線の進行方向に対して垂直なY軸方向に偏向する上記Y軸電磁石と、
が備えられていることを特徴とする請求項2に記載する粒子線治療装置。
【請求項6】
患者の状態を監視する患者監視装置と、患者の状態に基づいて上記粒子線の入切を行うビーム入切装置と、が備えられ、
上記粒子線が切られているとき、上記X軸電磁石および上記Y軸電磁石に流されているX軸励磁電流とY軸励磁電流とを一定に維持することにより、上記粒子線が入れられたとき、上記粒子線が切られたときに照射されていた患部の位置から上記粒子線の走査が再開されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載する粒子線治療装置。
【請求項7】
患部に照射される線量を計測する線量モニタと、所定の線量が照射される度にクロック信号を発信するビーム検出装置と、上記クロックによってアドレスを順送りにする記憶装置と、
が備えられたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載する粒子線治療装置。
【請求項8】
粒子線が入れられているときのX軸励磁電流値、Y軸励磁電流値および線量を時系列的に記録する線量記録装置と、
上記X軸励磁電流値と上記Y軸励磁電流値とから照射位置を算出し、該照射位置の線量を予め定められた値と対比する線量演算装置と、
が備えられたことを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載する粒子線治療装置。
【請求項9】
上記線量演算装置は、各照射位置の線量と予め定められた値とを対比して予め定められた異常と判定する基準に基づき異常と判定したとき異常状態であることを報知することを特徴とする請求項8に記載する粒子線治療装置。
【請求項1】
患部に照射するために輸送されてきた粒子線を上記粒子線の進行方向に対して垂直な直交する2方向に上記粒子線の流れを偏向して、周期毎に該周期の始まりに位置する照射位置に戻るように上記粒子線の照射位置を走査し、1つの上記周期の間に画かれる軌跡を複数重ね合わせて所望の計画線量を上記患部に照射する粒子線治療装置において、
上記周期の終了の時だけ上記粒子線を遮断することが可能であることを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項2】
輸送されてきた上記粒子線が上記粒子線の進行方向に対して垂直な面を通過する点を中心として、該中心からの距離が上記周期で増減し、かつ該中心の周りを所定の角速度で回転するように上記粒子線の照射位置を走査するとき、上記周期の開始時点の回転の初期位相を可変することができることを特徴とする請求項1に記載する粒子線治療装置。
【請求項3】
アドレスが付与されている複数の領域を有し、上記アドレスを順送りに指定して上記領域から読み出されたときに上記周期で増減する振幅データおよび上記角速度で正弦波振動する正弦波関数データが上記複数の領域に記憶されている記憶部と、
クロック信号の入力毎に順送りに指定されたアドレスの上記領域から読み出される上記振幅データと上記正弦波関数データとの積をX軸励磁電流指令値としてX軸電磁石電源に、上記振幅データと上記正弦波関数データから位相が90度進んだ正弦波関数データとの積をY軸励磁電流指令値としてY軸電磁石電源に指令する指令値送信部と、
上記X軸励磁電流指令値に基づいてX軸電磁石に流すX軸励磁電流を制御する上記X軸電磁石電源と、
上記Y軸励磁電流指令値に基づいてY軸電磁石に流すY軸励磁電流を制御する上記Y軸電磁石電源と、
上記X軸励磁電流が流されることにより輸送されてきた上記粒子線の流れを上記粒子線の進行方向に対して垂直なX軸方向に偏向する上記X軸電磁石と、
上記Y軸励磁電流が流されることにより輸送されてきた上記粒子線の流れを上記粒子線の進行方向に対して垂直なY軸方向に偏向する上記Y軸電磁石と、
が備えられていることを特徴とする請求項2に記載する粒子線治療装置。
【請求項4】
アドレスが付与されている複数の領域を有し、上記アドレスを順送りに指定して上記領域から読み出されたときに上記周期で増減を繰り返す振幅の上記角速度で振動する正弦波関数データと上記周期で増減を繰り返す振幅の上記正弦波関数データより位相が90度進んでいる余弦波関数データとが記憶されている記憶部と、
クロック信号の入力毎に順送りに指定されたアドレスの上記領域から読み出される上記正弦波関数デーをX軸励磁電流指令値としてX軸電磁石電源に、上記余弦波関数データをY軸励磁電流指令値としてY軸電磁石電源に指令する指令値送信部と、
上記X軸励磁電流指令値に基づいてX軸電磁石に流すX軸励磁電流を制御する上記X軸電磁石電源と、
上記Y軸励磁電流指令値に基づいてY軸電磁石に流すY軸励磁電流を制御する上記Y軸電磁石電源と、
上記X軸励磁電流が流されることにより輸送されてきた上記粒子線の流れを上記粒子線の進行方向に対して垂直なX軸方向に偏向する上記X軸電磁石と、
上記Y軸励磁電流が流されることにより輸送されてきた上記粒子線の流れを上記粒子線の進行方向に対して垂直なY軸方向に偏向する上記Y軸電磁石と、
が備えられていることを特徴とする請求項2に記載する粒子線治療装置。
【請求項5】
アドレスが付与されている複数の領域を有し、上記アドレスを順送りに指定して上記領域から読み出されたときに上記周期で増減する振幅データおよび周期性を有する関数データが上記複数の領域に記憶されている記憶部と、
クロック信号の入力毎に順送りに指定されたアドレスの上記領域から読み出される上記振幅データと上記関数データとの積をX軸励磁電流指令値としてX軸電磁石電源に、上記振幅データと上記関数データから所定の位相が進んだ関数データとの積をY軸励磁電流指令値としてY軸電磁石電源に指令する指令値送信部と、
上記X軸励磁電流指令値に基づいてX軸電磁石に流すX軸励磁電流を制御する上記X軸電磁石電源と、
上記Y軸励磁電流指令値に基づいてY軸電磁石に流すY軸励磁電流を制御する上記Y軸電磁石電源と、
上記X軸励磁電流が流されることにより輸送されてきた上記粒子線の流れを上記粒子線の進行方向に対して垂直なX軸方向に偏向する上記X軸電磁石と、
上記Y軸励磁電流が流されることにより輸送されてきた上記粒子線の流れを上記粒子線の進行方向に対して垂直なY軸方向に偏向する上記Y軸電磁石と、
が備えられていることを特徴とする請求項2に記載する粒子線治療装置。
【請求項6】
患者の状態を監視する患者監視装置と、患者の状態に基づいて上記粒子線の入切を行うビーム入切装置と、が備えられ、
上記粒子線が切られているとき、上記X軸電磁石および上記Y軸電磁石に流されているX軸励磁電流とY軸励磁電流とを一定に維持することにより、上記粒子線が入れられたとき、上記粒子線が切られたときに照射されていた患部の位置から上記粒子線の走査が再開されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載する粒子線治療装置。
【請求項7】
患部に照射される線量を計測する線量モニタと、所定の線量が照射される度にクロック信号を発信するビーム検出装置と、上記クロックによってアドレスを順送りにする記憶装置と、
が備えられたことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載する粒子線治療装置。
【請求項8】
粒子線が入れられているときのX軸励磁電流値、Y軸励磁電流値および線量を時系列的に記録する線量記録装置と、
上記X軸励磁電流値と上記Y軸励磁電流値とから照射位置を算出し、該照射位置の線量を予め定められた値と対比する線量演算装置と、
が備えられたことを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載する粒子線治療装置。
【請求項9】
上記線量演算装置は、各照射位置の線量と予め定められた値とを対比して予め定められた異常と判定する基準に基づき異常と判定したとき異常状態であることを報知することを特徴とする請求項8に記載する粒子線治療装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2006−288875(P2006−288875A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115819(P2005−115819)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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