説明

粒状物殺菌装置

【課題】簡略な装置構成によって大量の粒状物を均一且つ高能率に殺菌できるようにした粒状物殺菌装置を提供する。
【解決手段】周面に小孔2を有して1方向に回転する多孔ドラム1と、多孔ドラム1の周面と所要の間隔Sを隔てて多孔ドラム1を包囲する外筒3と、外筒3の下部に形成した粒状物取出口11と、外筒3の上部に形成した高温気体供給口13と、多孔ドラム1の周面が回転により上側に向う側部において間隔Sに対し上側のみが開口14して連通するよう外筒3に固定した粒状物供給口15と、多孔ドラム1の内部を吸引する吸引口20と、多孔ドラム1の下側内面に接近配置して多孔ドラム1の下側内面に向けて正圧ガスを噴出する正圧ガス供給ダクト18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の原材料として使用される大豆、米、麦、トウモロコシ等の穀物或いはその他の粒状物を、簡略な装置構成によって均一且つ高能率に殺菌できるようにした粒状物殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、大豆、米、麦、トウモロコシ等の穀物或いはその他の粒状物を殺菌する方法としては、粒状物の澱粉、蛋白質等を変性させない条件で粒状物に高温空気又は過熱蒸気を吹付け、これにより、粒状物の表面及び表皮裏側のごく表層部分に存在している微生物を殺菌する方法が一般に用いられている。この時、300〜600℃前後の高温空気又は過熱蒸気を2〜3秒間粒状物に接触させることで殺菌できることが知られている。尚、上記殺菌によると粒状物に混入する種々の虫等の殺虫も同時に行うことができる。
【0003】
しかし、高温空気又は過熱蒸気を用いて粒状物の確実な殺菌を行うには、粒状物の個々の表面に対して高温空気又は過熱蒸気が満遍なくしかも所定の時間を保持して接触する必要がある。
【0004】
このために従来では、コンベヤ上などに粒状物を薄く層状に延ばし、その上部から高温空気又は過熱蒸気を吹付けることが一般に行われていた。しかしこの方法では、粒状物の陰になった裏側表層部分の殺菌が不十分になる問題がある。更にこの方法は、大量の粒状物を高能率で殺菌するには不向きであった。
【0005】
また、従来の他の方法としては、粒状物を落下させながら高温空気又は過熱蒸気を吹付けて粒状物を殺菌する方法が試みられている。しかし、この方法では粒状物の落下速度が早いために、粒状物と高温空気又は過熱蒸気との接触が瞬間的であって十分な接触時間を保持することができないために殺菌が不十分になる可能性がある。また、粒状物の落下高さを高くすれば接触時間を長くすることはできるが、このようにした場合には装置の機高が大型化してしまう問題がある。従って、この方法も大量の粒状物を高能率で殺菌するには不向きであった。
【0006】
一方、上部から落下供給した粒状物を、下部から供給した上昇気流によって浮遊泳動させ、このようにして浮遊泳動させた粒状物に側方から低エネルギーの電子線を照射することによって粒状物の殺菌を行うようにした装置は、特許文献1に示されている。
【特許文献1】特開2002−306143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示す装置は、粒状物を均一に殺菌することが困難であり、また、大量の粒状物を高能率で殺菌することが困難である。
【0008】
即ち、特許文献1では、上部から供給した粒状物を、下部から供給する上昇気流によってゆっくり浮遊下降させて、下部の取出し口から排出する必要がある。このため、安定した浮遊泳動を得るには、上昇気流の吹き出し圧力と粒状物の供給量とを精度良く制御する必要があるが、このように上昇気流の吹き出し圧力と粒状物の供給量とを精度良く制御したとしても、上昇気流は上部から落下してくる粒状物によって乱れ、このために粒状物は連なって(固まって)部分的に落下し易くなるため、安定した浮遊泳動は得難い問題がある。また、粒状物は上昇気流が弱くなる壁面近傍や隅部に沿って落下し易いという問題がある。
【0009】
このように粒状物を均一に浮遊泳動させることが難しいために、特許文献1では粒状物を均一に殺菌することが難しかった。
【0010】
また、特許文献1は公報中にも記載されているように、低エネルギーの電子線を照射する場合、影にかくれた粒状物は十分に殺菌されない可能性があるため、この問題を解消するには浮遊泳動の層厚を薄くする必要があるが、このように層厚を薄くすると多量の粒状物を同時に処理しようとした場合には装置の幅寸法を大きくする必要があり、よって装置が大型になって大量の粒状物を高能率で殺菌処理するには不向きであった。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、簡略な装置構成によって大量の粒状物を均一且つ高能率に殺菌できるようにした粒状物殺菌装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、周面に小孔を有して1方向に回転する多孔ドラムと、該多孔ドラムの周面と所要の間隔を隔てて多孔ドラムを包囲する外筒と、該外筒の下部に形成した粒状物取出口と、前記外筒の上部に形成した高温気体供給口と、前記多孔ドラムの周面が回転により上側に向う側部において前記間隔に対し上側のみが開口して連通するよう外筒に固定した粒状物供給口と、前記多孔ドラムの内部を吸引する負圧発生装置と、前記多孔ドラムの下側内面に接近配置して前記多孔ドラムの下側内面に向けて正圧ガスを噴出する正圧ガス供給ダクトとを備えたことを特徴とする粒状物殺菌装置、に係るものである。
【0013】
上記手段において、前記負圧発生装置から排出される正圧ガスを前記正圧供給ダクトに導くようにすることは好ましい。
【0014】
上記手段において、前記多孔ドラムを貫通して設けた固定軸に前記正圧供給ダクトを固定し、且つ、前記固定軸に、前記負圧発生装置に連通する吸引流路と、前記正圧ガス供給ダクトに連通する正圧ガス流路を備えることは好ましい。
【0015】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0016】
本発明の粒状物殺菌装置では、周面に小孔を有して1方向に回転する多孔ドラムの内部を負圧発生装置に連通して吸引しているため、高温気体供給口から多孔ドラムと外筒との間隔に供給する高温気体は、多孔ドラムの各小孔から多孔ドラム内に吸引される。従って、粒状物供給口に粒状物を供給すると、粒状物は前記小孔から吸引される高温気体の吸引力によって多孔ドラムの外周面に層状に吸着されて移動するが、この時、粒状物はその外周面を常時流動する高温気体によって多孔ドラムに吸着されることになるため、粒状物と高温気体との接触が高まり、よって粒状物は均一且つ高能率に殺菌される。
【0017】
多孔ドラムの外周に吸着された粒状物が、多孔ドラムの回転により正圧ガス供給ダクトの下部位置に到達すると、多孔ドラムに吸着されていた粒状物は吸引力を失うと共に正圧ガス供給ダクト内部の正圧によって押されることにより粒状物取出口に落下する。
【0018】
従って、前記多孔ドラムの回転速度を調節することにより、粒状物を高温気体に接触させる殺菌時間を任意に調整することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の粒状物殺菌装置によれば、回転する多孔ドラムの小孔から多孔ドラム内に高温気体を吸引することにより多孔ドラムの周面に粒状物を層状に吸着するようにしたので、粒状物はその外周面を常時流動する高温気体によって多孔ドラムに吸着されることになり、よって、粒状物と高温気体との接触が高まり、粒状物を均一且つ高能率に殺菌できるという優れた効果を有する。
【0020】
更に、多孔ドラムの回転速度を調節することにより、粒状物を高温気体に接触させる殺菌時間を任意に調整できるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0022】
図1は本発明を実施する形態の一例を示す全体概略側面図、図2は図1のII−II方向矢視図である。図1、図2中、1は周面に多数の小孔2を有する多孔ドラムであり、該多孔ドラム1は筒状周面との間に所要の間隔Sを保持するようにした外筒3によって包囲されている。前記多孔ドラム1の周面に形成する小孔2は、大豆、米、麦、トウモロコシ等の穀物或いはその他の粒状物が通過できない適宜の大きさに形成している。
【0023】
前記多孔ドラム1の長手方向一端の軸中心には、外筒3を貫通し且つシール機能を有する軸受4により外筒3に対して回転可能に支持された軸5が固定されており、該軸5の端部に設けたプーリ或いはホイール等の回転従動部6が、伝達部材7を介して回転駆動装置8(モータ)に接続されている。前記多孔ドラム1の他端の軸中心には、前記外筒3に固定した固定軸9が貫通しており、前記多孔ドラム1の他端はシール機能を有する軸受10によって固定軸9に回転可能に支持されている。
【0024】
前記外筒3の下部には粒状物取出口11が設けられている。この時、外筒3の下面は粒状物取出口11に向けて下り勾配に形成されていることが好ましい。また、前記外筒3の上部には高温空気又は過熱蒸気等の高温気体を供給するための高温気体供給装置12に接続された高温気体供給口13が設けられている。
【0025】
更に、前記多孔ドラム1の周面が回転により上側に向う側部(図2で反時計回りに回転する多孔ドラム1の右側)には、前記多孔ドラム1と外筒3との間隔Sに対して上側のみが開口14して連通するように外筒3に固定した粒状物供給口15を設けている。図中16は粒状物供給口15の粒状物受ホッパ15aに大豆、米、麦、トウモロコシ等の穀物或いはその他の粒状物を供給する搬送装置である。
【0026】
前記粒状物供給口15は、前記多孔ドラム1の周面が回転により上側に向う側部(図2では右側)の高温気体供給口13と粒状物取出口11との間であれば任意の位置に設置することができる。この時、前記粒状物取出口11と粒状物供給口15との間の外筒3は、多孔ドラム1との間隔を極力小さくするように多孔ドラム1に接近させた周壁部17を形成している。
【0027】
前記多孔ドラム1の内部には、該多孔ドラム1の下側内面に接近して多孔ドラム1の下側内面に向けて正圧ガスを噴出するように下側が開放された正圧ガス供給ダクト18が配置されており、該正圧ガス供給ダクト18は支持部材19により前記固定軸9に固定している。
【0028】
更に、前記固定軸9は筒体により形成されており内部には上側の吸入流路21と下側の正圧ガス流路25とに区画する仕切板9aが設けられている。前記吸入流路21は固定軸9の上側外面に形成した吸入口20により多孔ドラム1の内部と連通しており、前記吸引流路21の端部は吸引管22により外筒3の外部に設けた負圧発生装置23に接続している。
【0029】
また、前記支持部材19には、前記正圧ガス流路25と正圧ガス供給ダクト18の下面に開口したガス供給口24とに連通する流路25aが形成してあり、前記正圧ガス流路25の端部は調整弁26を有するガス取入管27により前記負圧発生装置23の排気管28に接続している。図中29は殺菌処理した粒状物を受ける容器である。
【0030】
尚、前記多孔ドラム1の内部を吸引する方法、及び正圧ガス供給ダクト18に正圧ガスを供給する方法には、前記図示例以外にも種々の方法を採用することができる。
【0031】
次に、上記図示例の作動を説明する。
【0032】
図1、図2の粒状物殺菌装置では、回転駆動装置8を駆動して多孔ドラム1を回転し、高温気体供給装置12により例えば300〜600℃前後に加熱された高温気体を高温気体供給口13から多孔ドラム1と外筒3との間の間隔Sに供給し、負圧発生装置23を駆動することにより、吸引流路21及び吸引口20を介して多孔ドラム1内部のガスを吸引し、同時に、負圧発生装置23の排気管28に接続されたガス取入管27により前記負圧発生装置の正圧ガスである排気を、調整弁26、固定軸9の正圧ガス流路25及び支持部材19の流路25aとガス供給口24を介して、正圧ガス供給ダクト18の下側内部に供給する。
【0033】
この状態で粒状物供給口15に粒状物を供給すると、粒状物は回転する多孔ドラム1の小孔2から吸引される高温気体の吸引力によって多孔ドラム1の外周面に層状に吸着されて移動する。この時、前記負圧発生装置23による吸引力は、粒状物の種類などに応じて調整することができ、吸引力を調整することにより多孔ドラム1の周面に吸着される粒状物の層厚を設定・調整することができる。
【0034】
前記粒状物は、該粒状物の外周面を流動して小孔2に吸引される高温気体によって多孔ドラム1に吸着されることになるため、粒状物の外周面には常時高温流体が流動することになって粒状物と高温気体との接触が高まり、よって粒状物は均一且つ高能率に殺菌される。また、上記殺菌により粒状物に混入する種々の虫等は確実に殺虫される。
【0035】
多孔ドラム1の回転によって多孔ドラム1の外周に吸着された粒状物が正圧ガス供給ダクト18の下部位置に到達すると、粒状物に作用していた吸引力が失われると共に正圧ガス供給ダクト18内部の正圧ガスによって内側から押され、これによって粒状物は多孔ドラム1から確実に離反して粒状物取出口11に落下する。
【0036】
高温気体供給口13に供給される高温気体が例えば300〜600℃前後の温度に設定されている場合には、高温気体と粒状物とが2〜3秒の接触時間となるように、多孔ドラム1の回転速度を設定する。即ち、前記多孔ドラム1は、粒状物の種類、負圧発生装置23の吸引力による粒状物の層厚の大きさ、高温気体の温度・流量等に応じて、粒状物と高温気体の接触時間が好適になるように回転速度を設定することができ、これによって粒状物を常に均一且つ高能率に殺菌することが可能になる。
【0037】
なお、本発明の粒状物殺菌装置は、上記形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を実施する形態の一例としての粒状物殺菌装置の全体概略側面図である。
【図2】図1のII−II方向矢視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 多孔ドラム
2 小孔
3 外筒
9 固定軸
11 粒状物取出口
13 高温気体供給口
14 開口
15 粒状物供給口
18 正圧ガス供給ダクト
21 吸引流路
23 負圧発生装置
25 正圧ガス流路
S 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に小孔を有して1方向に回転する多孔ドラムと、該多孔ドラムの周面と所要の間隔を隔てて多孔ドラムを包囲する外筒と、該外筒の下部に形成した粒状物取出口と、前記外筒の上部に形成した高温気体供給口と、前記多孔ドラムの周面が回転により上側に向う側部において前記間隔に対し上側のみが開口して連通するよう外筒に固定した粒状物供給口と、前記多孔ドラムの内部を吸引する負圧発生装置と、前記多孔ドラムの下側内面に接近配置して前記多孔ドラムの下側内面に向けて正圧ガスを噴出する正圧ガス供給ダクトとを備えたことを特徴とする粒状物殺菌装置。
【請求項2】
前記負圧発生装置から排出される正圧ガスを前記正圧供給ダクトに導くようにしたことを特徴とする請求項1に記載の粒状物殺菌装置。
【請求項3】
前記多孔ドラムを貫通して設けた固定軸に前記正圧供給ダクトを固定し、且つ、前記固定軸に、前記負圧発生装置に連通する吸引流路と、前記正圧ガス供給ダクトに連通する正圧ガス流路とを備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の粒状物殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−325510(P2006−325510A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155370(P2005−155370)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000198318)石川島検査計測株式会社 (132)
【Fターム(参考)】