説明

粘着シートおよびその製造方法

【課題】粘着シートにおいて、被着体への貼付時のエア抜き性能を確保しつつ、コルゲート形状を有する被着体に貼付した場合にも浮き剥がれが生じにくい手段を提供する。
【解決手段】本発明の粘着シートは、基材シートと、基材シートの一方の面に配置され、粘着剤を含有する粘着剤層とを有する。そして、粘着剤層の基材シートとは反対側の面に複数の凹条溝が形成されており、この際、当該複数の凹条溝は、
(1)前記基材シートの端縁部に開口するように、かつ、
(2)互いに連通しないように、かつ、
(3)前記複数の凹条溝のうちの少なくとも一部が前記基材シートの流れ方向に対して0°超90°未満の角度をもつように、
形成されている点に特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、被着体に貼付する際に空気が抜けやすくて、コルゲート形状を有する被着体に貼付しても浮き剥がれが発生しないことが求められるマーキングフィルムとして、好適に用いられる粘着シート、および該粘着シートを効率よく製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着シートは、一般に、基材シートと、その表面に形成された粘着剤層と、通常その上に設けられる剥離シートとから構成されている。そして、使用の際は、剥離シートを剥がし、粘着剤層が被着体に接するように貼付することが行われている。
【0003】
しかしながら、この粘着シートの面積がある程度広い場合、粘着剤層と被着体との間に空気の留まりが残留しやすく、この空気の留まりの部分が、いわゆる「ふくれ」となって、貼付された粘着シートの表面側に膨出物が生じ、粘着シートをきれいに貼付することができにくいという問題があった。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、例えば、特許文献1には、基材シートの表面に粘着剤層を有する粘着シートにおいて、粘着剤層の表面に、該基材シートの端縁部に開口するテーパー型凹条溝を貼付方向(基材シートの流れ方向)に対して斜格子状に設け、かつ前記粘着剤層において、平坦部の面積を50〜90%とし、平坦部に対する凹条溝の切り込み角度を20〜75°とし、凹条溝の上面開口部幅を10〜80μmとし、凹条溝の深さが5〜50μmとする技術が開示されている。特許文献1に記載の上記技術は、被着体への貼付時のエア抜き性能を確保しつつ、基材表面への凹凸構造や溝構造が浮き出るのを防止することを目的としたものである。なお、特許文献1では、被着体への貼付時のエア抜き性能を優れたものとするには、粘着剤層における凹条溝を貼付方向(基材シートの流れ方向)に対して「斜格子状」に形成するとよいことが謳われている。より具体的には、粘着シート(粘着剤層)の貼付方向中心軸に対して、右肩上がりの凹条溝群および左肩上がりの凹条溝群のそれぞれの角度を好ましくは20〜70°(より好ましくは40〜50°)の範囲とするのがよいとされている。
【0005】
一方、特許文献2には、特許文献1と同様の概略構成を有する粘着シートにおいて、粘着剤層の凹凸パターンとして、基材シートの端縁部に開口する複数の凹条溝を格子状または平行に設け、かつそれぞれ対向する凹条溝の間隔を500μmより大きく2mm以下とし、開口幅を10〜200μmとし、深さを粘着剤層の厚さの5〜100%とすること、および、特定の式で定義される基材シートの形状転写係数を5.6以下とすること、が提案されている。特許文献2に記載の上記技術もまた、特許文献1と同様に、被着体への貼付時のエア抜き性能を確保しつつ、基材表面への凹凸構造や溝構造が浮き出るのを防止することを目的としたものである。なお、特許文献2では、粘着剤層において格子状の(または平行な)凹条溝を基材シートの流れ方向や幅方向に対してどのような向き(角度)で形成するかについては言及されていない。
【0006】
このような粘着シートは、表面に印刷を施され、バス、鉄道車両、トラックなどの車両広告に使われることがある。例えば、特許文献3には、バスなどの車体に広告媒体を設けた自動車において、広告媒体が、宣伝用の文字又は模様や絵を描いた広告フィルム体の裏面に、格子状部を備えたものである場合、簡単に綺麗に張ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】再表2003/025078号公報
【特許文献2】特開2010−180271号公報
【特許文献3】特開2002−120637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、特許文献1や特許文献2に開示された技術によれば、被着体への貼付時のエア抜き性能がある程度確保され、しかも、基材表面への凹凸構造や溝構造が浮き出るのが防止されるという点で好ましい。しかしながら、本発明者の検討によれば、上述した従来の技術を用いたとしても、車体の側面など、コルゲート形状を有する被着体に貼付した場合、粘着シートが剥がれ、浮き上がってしまうことが判明した。トラックの荷室や鉄道車両の側面は、強度を保つため、コルゲート(波)形状をしているものがある。コルゲート形状をした面に粘着シートを貼付するには、まず、コルゲート形状の稜線部に粘着シートを仮固定した後、粘着シートを稜線部から谷部に向かって、スキージを使って伸ばしながら圧着する。谷部に貼付された粘着シートには、応力が残留しているため、時間が経過すると粘着シートが収縮し、谷部から浮き上がる。
【0009】
本発明は、上述した従来技術における現状に鑑みてなされたものであり、粘着シートにおいて、被着体への貼付時のエア抜き性能を確保しつつ、コルゲート形状を有する被着体に貼付した場合にも浮き剥がれが生じにくい手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行なった。その結果、粘着剤層の表面に複数の凹条溝を形成するにあたり、当該複数の凹条溝が互いに連通しないように、しかも基材シートの流れ方向に対して斜めになるように形成することで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本発明の粘着シートは、基材シートと、基材シートの一方の面に配置され、粘着剤を含有する粘着剤層とを有する。そして、粘着剤層の基材シートとは反対側の面に複数の凹条溝が形成されており、この際、当該複数の凹条溝は、
(1)前記基材シートの端縁部に開口するように、かつ、
(2)互いに連通しないように、かつ、
(3)前記複数の凹条溝のうちの少なくとも一部が前記基材シートの流れ方向に対して0°超90°未満の角度をもつように、
形成されている点に特徴がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被着体への貼付時のエア抜き性能を確保しつつ、コルゲート形状を有する被着体に貼付した場合にも浮き剥がれが生じにくい粘着シートが提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態の粘着シートの断面図である。
【図2】図1に示す粘着シートの粘着剤層の、凹条溝が形成された面(基材シートとは反対側の面)の平面図である。
【図3】実施例1において形成された剥離シートを走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した写真である。
【図4】比較例1において形成された剥離シートを走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した写真である。
【図5】実施例において浮き剥がれを評価する目的で用いたコルゲート板の形状および寸法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態の粘着シートの断面図である。図1に示すように、粘着シート10は、まず、粘着シート本体11を有する。この粘着シート本体11は、基材シート12と粘着剤層13とが積層されてなる。本実施形態の粘着シート10では、粘着シート本体11に、剥離シート14がさらに積層されている。
【0016】
[基材シート]
図1に示す形態において、基材シート12は、例えばポリ塩化ビニルフィルムからなる。ただし、基材シート12としては特に制限はなく、粘着シートの基材シートとして慣用されているプラスチックシートや合成紙の中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。
【0017】
プラスチックシートとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂およびこれらの樹脂の混合物または積層物からなるシートが挙げられる。
【0018】
合成紙としては、例えばポリエステル系合成紙やポリプロピレン系発泡合成紙などが用いられうる。
【0019】
基材シートの表面には、所望により印刷が施される。印刷の種類は、オンデマンド印刷が可能な、インクジェット、熱転写が好ましい。
【0020】
基材シート12の厚さは特に制限されず、使用目的や状況に応じて適宜定められる。基材シート12の厚さは、通常10〜300μmの範囲であり、好ましくは50〜150μmの範囲である。
【0021】
[粘着剤層]
(粘着剤)
粘着剤層13は、粘着剤(図示せず)を含む。当該粘着剤層13の形成に用いられる粘着剤としては特に制限はなく、従来粘着シートの粘着剤層に慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤およびポリエステル系粘着剤などが用いられうる。粘着剤層13の厚さ(後述する凹条溝が形成されていない部位の厚さ)は、通常5〜100μmの範囲であり、好ましくは10〜60μmの範囲である。
【0022】
(凹条溝)
粘着剤層13においては、基材シート12とは反対側の面(図1に示す粘着剤層13の下面)に、複数の凹条溝13aが形成されている。本発明の粘着シート10は、この複数の凹条溝13aが形成される形態に特徴がある。
【0023】
図2は、図1に示す粘着シート10の粘着剤層13の、凹条溝13aが形成された面(基材シート12とは反対側の面)の平面図である。図2に示すように、本実施形態においては、粘着剤層13の表面に、複数の凹条溝13aが形成されている。この凹条溝13aは、基材シート12の端縁部に開口するように形成されている。また、複数の凹条溝13aは、互いに平行に形成されており、これにより互いに連通しないようになっている。そして、この互いに平行な複数の凹条溝13aは、基材シート12の流れ方向(図2に示す矢印方向および中心軸C)に対して45°の角度(図2に示す角度θ)をもつように形成されている。図2において、角度θは流れ方向に対して右側にとっているが、左側にとることもできる。
【0024】
図2に示すように、基材シート12の端縁部に開口するように凹条溝13aが形成されることで、空気の流通経路が確保され、粘着シート10の被着体への貼付時にこの流通経路を通って空気が抜けるために、空気の溜まりが発生することがなく、粘着シートを被着体に密着性よく、きれいに貼付することができる。
【0025】
また、従来技術(例えば特許文献1)のように粘着剤層の表面に設けられた複数の凹条溝が互いに連通していると、当該凹条溝どうしが連通する部位において粘着剤層からなる角部が生じることになる。かような角部が存在すると、そこから粘着剤層が剥離しやすくなるため、例えば凹凸構造を有する被着体の凹部に貼付したときに、一定時間経過後に当該凹部において浮き剥がれが発生してしまう。これに対し、本実施形態では、図2に示すように、複数の凹条溝13aが互いに連通しないように形成されることでかような角部が存在しないことになる。その結果、浮き剥がれが生じにくい粘着シートが提供されうる。
【0026】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、複数の凹状溝13aが基材シートの流れ方向に対して斜めに形成されていることで、基材シートに残留している収縮応力を緩和することができるという利点もある。基材シートは、流れ方向に引き伸ばされながら形成されるため、流れ方向に縮もうとする応力が残留している。また、コルゲート形状を有する被着体に貼付される際には、コルゲート形状の稜線部に垂直な方向に引き伸ばされるため、基材シートには、稜線部に垂直な方向に縮もうとする応力が残留する。粘着剤層の表面に凹状溝が形成されている部分では、基材シートが被着体に固定されていないため、収縮応力が緩和する。凹状溝が基材シートの流れ方向に対して斜めに形成されていることにより、基材シートの流れ方向がコルゲート形状の稜線部に垂直になるように貼付される場合、及び平行になるように貼付される場合のいずれも応力を緩和することができる。
【0027】
なお、それぞれの凹条溝13aの形状やサイズ、互いの位置関係については、特許請求の範囲に規定された条件を満足する限り、特に制限はない。一例を挙げると、それぞれの凹条溝13aの形状としては、例えば断面形状がV字型、逆台形型、テーパー状U字型などが挙げられる。また、空気の抜けやすさおよび粘着力のバランスなどの観点から、各凹条溝13aの開口幅は、10〜200μm、好ましくは20〜100μmであり、さらに好ましくは30〜70μmである。また、各凹条溝13aの深さは、粘着剤層13の厚さの5〜100%であり、10〜80%であることが好ましい。また、複数の凹条溝13aが図2に示すように互いに平行に形成されている場合において、隣接する凹条溝13aどうしの間隔(ピッチ)についても特に制限はないが、好ましくは100〜1000μmであり、より好ましくは300〜800μmである。さらに、粘着剤層13の表面における凹条溝13aが形成されていない部位(平坦部)の面積の割合は、好ましくは50〜90%であり、より好ましくは70〜90%である。
【0028】
また、図2に示す形態では、複数の凹条溝13aは基材シート12の流れ方向(図2に示す矢印方向および中心軸)に対して45°の角度をもつように形成されているが、本発明の技術的範囲はかような形態にも限定されない。つまり、複数の凹条溝13aは、その少なくとも一部(1つの凹条溝13aの一部分、または、複数の凹条溝13aのサブセット)が前記基材シートの流れ方向に対して0°超90°未満の角度をもつように形成されていればよいのである。ここで、複数の凹条溝13aが図2に示すように互いに平行に形成されている場合において、これらの凹条溝13aが基材シート12の流れ方向(図2に示す矢印方向)に対してもつ角度(図2に示す角度θ)は、好ましくは20〜70°であり、より好ましくは30〜60°であり、さらに好ましくは40〜50°であり、最も好ましくは45°である。かような形態とする(複数の凹条溝13aを基材シートの流れ方向に対して斜めになるように形成する)ことで、上述したような収縮応力の緩和作用が十分に発揮され、粘着シート10の浮き剥がれを抑制することが可能となる。
【0029】
[粘着シートの製造方法]
本発明の粘着シート10の製造方法としては、複数の凹条溝13aが上述した構成の規定を満足するように形成された粘着剤層13を基材シート12の表面に配置することができるのであれば、いかなる方法であっても用いられうる。製造方法の一例としては、凹条溝に対応する凸条部を有する剥離シートの表面に、粘着剤層を形成した後、該粘着剤層に基材シートを貼り合わせる方法が挙げられる。この際、以下の本発明の製造方法に従えば、効率よく目的の粘着シートを製造することができる。
【0030】
すなわち、本発明に係る粘着シートの製造方法は、
(a)剥離シート14の剥離処理層面に、複数の凸条部14aを所定形状に形成する工程、
(b)剥離シート14の凸条部14aが設けられた側に、粘着剤層13を形成する工程、および、
(c)前記(b)工程で形成された粘着剤層13を基材シート12に積層する工程
を有することを特徴とする。
((a)工程)
この(a)工程は、剥離シート用基材に、金属ロールなどを用いる公知の方法により形状加工を施し、複数の凸条部を所定形状に形成し、これにシリコーンなどの剥離剤を塗布して剥離処理層を設け、形状転写面を形成する工程である。
【0031】
((b)工程)
この(b)工程は、上述した(a)工程において、形状転写面(複数の凸条部)が設けられた剥離シートの剥離処理層上に、粘着剤層を、従来公知の方法により形成する工程である。このようにして、剥離シート付き粘着剤層が得られる。
【0032】
((c)工程)
この(c)工程においては、上述した(b)工程で得られた剥離シート付き粘着剤層に基材シートを貼合することにより、当該粘着剤層を基材シートに積層する工程である。このようにして、図1に示すように、基材シート12と、複数の凹条溝13aが所定の形状および位置関係で形成された粘着剤層13と、剥離シート14と、を有する本発明の粘着シート10を製造することができる。なお、このようにして製造された粘着シート10を使用する際には、剥離シート14を剥がし、粘着剤層13を被着体に当接し、スキージや指などで圧をかけながら貼ることにより、各凹条溝13aが空気流通経路となって、空気が抜け出し、空気溜まりが発生することがないので、容易に密着性よくきれいに貼付することができる。また、粘着シート10が凹凸構造を有する被着体の凹部に貼付された場合において、長期間が経過した際にも、シートの浮き剥がれが抑制される。
【0033】
(剥離シート)
なお、本発明において用いられる剥離シート14としては、例えば上質紙、グラシン紙、コート紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムに、シリコーンなどの剥離剤を塗布し剥離剤層を設けたものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常30〜180μm程度である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、下記の実施例のみに限定されるべきではない。
【0035】
[実施例1]
坪量110g/cm2の上質紙に厚さ30μmのポリエチレンをラミネートし、前記ポリエチレン側にエンボスロールを用いて所定の形状の凸条部を形成し、さらにシリコーンを厚さ0.1μmに塗布することによって、形状転写面を有する剥離シートを形成した。凸条部は、断面が高さ22μm、幅90μmの凸形状で、間隔600μmで互いに平行に形成した。なお、このようにして形成された剥離シートを走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した写真を図3に示す。
【0036】
次いで、この剥離シートの剥離処理層上に、アクリル系粘着剤[日本合成化学工業社製、「コーポニールN−2147」100質量部、日本ポリウレタン工業社製、「コロネートL」1質量部含有]により、厚さ30μmの粘着剤層を形成したのち、この粘着剤層に基材シートとして厚さ80μmのカレンダー法により製膜した塩化ビニルフィルムを貼合し、図1に示す形態の粘着シートを作製した。この際、粘着剤層への基材シートの貼合は、粘着剤層の表面に形成された平行な凹条溝13が、基材シートの流れ方向(図2に示す矢印方向および中心軸C)に対して45°の角度をもつように行った。
【0037】
このようにして作製した粘着シートを用いて、以下の手法により、エア抜き性能および浮き剥がれを評価した。
【0038】
まず、厚さ500μmのアルミニウム板を、図5(数字の単位は[mm])に示す形状に折り曲げ、コルゲート形状を有する被着体を作成した。
【0039】
続いて、上記で作製した粘着シートを被着体に載せ、コルゲート形状の稜線部に仮固定した後、スキージを用いて、稜線部から谷部に向かって、粘着シートを引き伸ばしながら貼付した。この際、被着体への貼付時には、基材シートの流れ方向が被着体の稜線に直交するように貼付した。粘着剤層に形成された凹条溝は、被着体の稜線に対して45°をなす。
【0040】
そして、被着体への貼付の際に、スキージを当てる際の空気の抜けやすさを観察することで、エア抜き性能を評価した。また、貼付から1日、12日、および30日経過後にそれぞれ、谷部での粘着シートの浮き剥がれの有無を観察した。結果を下記の表1に示す。なお、後述する比較例1〜5についても同様の試験を行った。これらについても結果を下記の表1に示す。
【0041】
[比較例1]
剥離シートに形成される凸条部の形状を変更したこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、粘着シートを作製した。具体的には、凸条部の断面形状を、高さ22μm、幅60μmの凸形状とし、複数の凸条部を間隔570μmで直交する格子状に形成した。なお、このようにして形成された剥離シートを走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した写真を図4に示す。また、粘着剤層への基材シートの貼合は、粘着剤層の表面に形成された格子状の凹条溝群のすべてが、基材シートの流れ方向(図2に示す矢印方向および中心軸C)に対して45°および135°の角度をもつように行った。なお、被着体への貼付時には、基材シートの流れ方向が被着体の稜線に直交するように貼付した。粘着剤層の表面に形成された直交格子状溝は、被着体の稜線に対して45°及び135°をなす。
【0042】
[比較例2]
剥離シートとして、凸条部が形成されていないものを用いたこと以外は、上述した実施例1と同様の手法により、粘着シートを作製した。
【0043】
[比較例3]
凸条部が実施例1と同じ寸法で、かつ、基材シートの流れ方向に平行に(つまり、図2に示すθ=0°となるように)形成されたものを用いた。なお、被着体への貼付時には、粘着剤層に形成された凹条溝が上述した被着体の稜線に直交するように貼付した。
【0044】
[比較例4]
上述した比較例3と同様の粘着シートを用いた。なお、被着体への貼付時には、粘着剤層に形成された凹条溝が上述した被着体の稜線と平行になるように貼付した。
【0045】
[比較例5]
凸条部が比較例1と同じ寸法で、かつ、格子状を構成する互いに直交する2つの凹条溝群の一方が基材シートの流れ方向に平行に(つまり、図2に示すθ=0°となるように)形成され、他方が基材シートの流れ方向に直交するように(つまり、図2に示すθ=90°となるように)形成されたものを用いた。なお、被着体への貼付時には、基材シートの流れ方向が被着体の稜線に直交するように貼付した。粘着剤層の表面に形成された直交格子溝は、被着体の稜線に対して平行および直交する。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示すように、本発明の粘着シートによれば、被着体への貼付時のエア抜き性能を確保しつつ、コルゲート形状を有する被着体に貼付した場合にも浮き剥がれが生じないことがわかる。
【0048】
なお、凹条溝が格子状に設けられた比較例1および5では、エア抜き性能は確保されたものの浮き剥がれが生じる結果となった。これは、直交する凹条溝どうしが連通する部位に存在する粘着剤層の角部から粘着剤層が剥離しやすいためであると考えられた。
【0049】
また、凸条部が基材シートの流れ方向に平行に設けられた比較例3でも同様に、エア抜き性能は確保されたものの浮き剥がれが生じる結果となった。これは、被着体への貼付時に伸ばされた基材シートに対して時間の経過とともに作用する収縮応力が十分に緩和されなかったことによるものと考えられた。
【0050】
さらに、凸条部が基材シートの流れ方向に直交するように設けられた比較例4では、浮き剥がれは生じないが、空気を巻き込んでしまうために、貼付作業に時間がかかった。
【符号の説明】
【0051】
10 粘着シート、
11 粘着シート本体、
12 基材シート、
13 粘着剤層、
13a 凹条溝、
14 剥離シート、
14a 凸条部、
C 流れ方向中心軸、
θ 凹条溝と流れ方向とがなす角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、
前記基材シートの一方の面に配置され、粘着剤を含有する粘着剤層と、
を有し、
前記粘着剤層の前記基材シートとは反対側の面に、複数の凹条溝が、
(1)前記基材シートの端縁部に開口するように、かつ、
(2)互いに連通しないように、かつ、
(3)前記複数の凹条溝のうちの少なくとも一部が前記基材シートの流れ方向に対して0°超90°未満の角度をもつように、
形成されていることを特徴とする、粘着シート。
【請求項2】
前記複数の凹条溝が、互いに平行に形成されている、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記(3)の角度が40〜50°である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着シートの製造方法であって、
(a)剥離シートの剥離処理層面に、複数の凸条部を所定形状に形成する工程、
(b)剥離シートの凸条部が設けられた側に、粘着剤層を形成する工程、および、
(c)前記(b)工程で形成された粘着剤層を基材シートに積層する工程、
を含むことを特徴とする、粘着シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−49818(P2013−49818A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189765(P2011−189765)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】